(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127819
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】管理システム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/09 20060101AFI20230907BHJP
G05D 1/02 20200101ALI20230907BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20230907BHJP
B60W 30/02 20120101ALI20230907BHJP
B60W 40/12 20120101ALI20230907BHJP
【FI】
G08G1/09 R
G05D1/02 P
G05D1/02 S
G08G1/09 V
G08G1/16 D
B60W30/02
B60W40/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022031736
(22)【出願日】2022-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000969
【氏名又は名称】弁理士法人中部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】溝尾 駿
(72)【発明者】
【氏名】岡野 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】高島 亨
(72)【発明者】
【氏名】丸山 俊
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
5H301
【Fターム(参考)】
3D241BA54
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3D241DC41Z
5H181AA01
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5H301GG07
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5H301GG09
5H301KK03
5H301KK08
5H301LL03
5H301LL12
(57)【要約】
【課題】移動体の走行速度を搬送物体に基づいて決まるようにすることである。
【解決手段】本管理システムにおいて、2台以上の移動体が交差点において互いに対向する可能性があると推定された場合に、2台以上の移動体の各々の走行速度が、搬送物体に基づいて決まる抑制すべき振動である抑制振動に基づいて決定される。2台以上の移動体の各々の走行速度が、その決定された抑制振動が抑制される速度に決定されるのである。その結果、搬送物体に加えられる振動を抑制したり、移動体の走行安定性の低下を抑制したりすることができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の移動体の各々と通信可能な管制装置を含み、前記複数の移動体を管理する管理システムであって、
前記管制装置が、
前記複数の移動体の各々が搬送する物体である搬送物体に基づいて、前記複数の移動体の各々について、それぞれ、優先的に抑制されるべき振動である抑制振動をばね上振動とばね下振動とのいずれか一方に決定する抑制振動決定部と、
前記複数の移動体のうちの2台以上の移動体の各々が走行する予定の経路である予定走行経路が互いに交差する交差点において、前記2台以上の移動体の各々が互いに対向する可能性があると推定された場合に、前記2台以上の移動体の各々の走行速度を、それぞれ、前記2台以上の移動体の各々について前記抑制振動決定部により決定された前記抑制振動を抑制可能な速度に決定する走行速度決定部と、
前記走行速度決定部によって決定された前記走行速度を表す情報を含む管制情報を前記2台以上の移動体の各々に送信する管制通信装置と
を含む管理システム。
【請求項2】
前記抑制振動決定部が、前記搬送物体が、人と精密機器との少なくとも一方を含む場合には、前記搬送物体を搬送する移動体についての前記抑制振動をばね上振動に決定するものである請求項1に記載の管理システム。
【請求項3】
前記走行速度決定部が、前記2台以上の移動体の各々の走行速度を、前記抑制振動決定部によって決定された前記抑制振動が抑制されるように、前記2台以上の移動体の各々の前記予定走行経路のうち前記交差点を含む領域の路面の凹凸の状態に基づいて決定するものである請求項1または2に記載の管理システム。
【請求項4】
前記走行速度決定部が、前記複数の移動体の各々の過去の走行速度を表す情報と、前記複数の移動体の各々の過去の上下方向の振動および姿勢の変化に関する情報と、前記複数の移動体の各々の前記予定走行経路の各々の路面の状態に関する情報と、前記複数の移動体の各々の搬送物体を表す情報とに基づいて学習を行い、前記抑制振動決定部によって決定された前記複数の移動体の各々の抑制振動が抑制される前記走行速度の最適解を取得する学習型走行速度決定部を含む請求項1ないし3のいずれか1つに記載の管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の移動体を管理する管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の移動体と通信可能な管制装置を含み、複数の移動体を管理する管理システムが記載されている。
特許文献1に記載の管理システムにおいて、複数の移動体のうちの2台以上の移動体の予定走行経路が互いに交差する交差点において、2台以上の移動体が互いに対向する可能性があると推定された場合には、2台以上の移動体のうち、鉱山の生産性の向上への寄与度が高い移動体が先に交差点を通過するように、2台以上の移動体の各々の走行速度が制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、移動体の走行速度を搬送物体に基づいて決定されるようにすることである。
【課題を解決するための手段、作用および効果】
【0005】
本発明に係る管理システムにおいて、2台以上の移動体が交差点において互いに対向する可能性があると推定された場合に、2台以上の移動体の各々の走行速度が、搬送物体に基づいて決まる抑制すべき振動である抑制振動に基づいて決定される。
【0006】
特許文献1に記載の管理システムにおいては、2台以上の移動体の各々の走行速度が、2台以上の移動体のうち鉱山の生産性の向上への寄与度が高い移動体が先に通過するように決定される。そのため、2台以上の移動体の各々が寄与度に基づいて決定された走行速度で走行した場合に、搬送物体に大きな振動が加えられたり、移動体の走行安定性が大きく低下したりする場合がある。それに対して、本発明に係る管理システムにおいては、2台以上の移動体の各々の走行速度が、搬送物体に基づいて決まる抑制振動が抑制される速度に決定される。その結果、搬送物体に加えられる振動を抑制したり、走行安定性の低下を抑制したりすること等ができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施形態である管理システムが適用される作業領域を概念的に示す図である。
【
図3】上記管理システムの管制装置の管制ECUの記憶部に記憶された走行速度決定プログラムを表すフローチャートである。
【
図4】上記管理システムによる管理される移動体の移動体ECUの記憶部に記憶されたリモート走行制御プログラムを表すフローチャートである。
【
図5】上記移動体ECUの記憶部に記憶された移動体情報作成プログラムを表すフローチャートである。
【
図6】前記管制ECUにおいて決定された走行速度を概念的に示す図である。
【
図7】前記管制ECUの学習部における実行を概念的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態に係る管理システムについて図面に基づいて説明する。
【実施例0009】
本実施例に係る管理システムは、
図1,2に示すように、例えば、鉱山等で作業を行う複数の移動体Vの各々と通信可能な管制装置C、1つ以上のアンテナA等を含む。これら移動体Vと管制装置Cとの間において、直接またはアンテナAを介して無線の通信が行われる。
【0010】
複数の移動体Vの各々は、主として、物体である搬送物体を出発地から目的地まで搬送する作業を行う。搬送物体には、人、土砂、作業用機械、種々のデータの測定等に用いられる測定器等が含まれる。また、作業用機械、測定器等には精密機器が含まれる。
【0011】
複数の移動体Vには、1台以上の大型運搬車両HVと、1台以上のライトビークルLVとが含まれる。大型運搬車両HVは、土砂等を搬送する大型ダンプトラック等が該当する。ライトビークルLVは、作業用機械、測定器、人等を搬送することが多い。
なお、複数の移動体Vに、重機を含めることもできる。重機は、物体を搬送しない場合もある。
【0012】
また、複数の移動体Vの各々は、例えば、運転者による運転操作により走行可能なマニュアル運転移動体であっても、カメラ,ライダー等により取得された移動体Vの周辺の情報と、管制装置Cからの走行指令との少なくとも一方に基づいて走行可能な自動運転移動体であってもよい。
【0013】
1台以上のライトビークルLVの各々は、それぞれ、
図2に示すように、ライトビークルLVを駆動する駆動装置DL,ライトビークルLVを制動する制動装置BL,ライトビークルLVの操舵輪を転舵する転舵装置TL,GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機としてのGPS(Global Positioning System)受信機10L、周辺情報取得装置12L、無線の情報を送信したり受信したりする移動体通信装置14L、慣性計測装置16L、コンピュータを主体とする移動体ECU20L等を含む。
【0014】
駆動装置DLは、例えば、ライトビークルLVの複数の車輪30のうちの複数の駆動輪に連結された駆動源としての電動モータと、電動モータを制御する駆動回路とを含むものとすることができる。駆動回路の制御により電動モータが制御され、駆動輪に加えられる駆動力が制御され、ライトビークルLVの走行速度や加速度が制御される。
【0015】
制動装置BLは、例えば、複数の車輪30の各々に対応して設けられ、摩擦係合部材を車輪30と一体的に回転可能なブレーキ回転体に押し付けることにより車輪30の回転を抑制する摩擦ブレーキと、複数の摩擦ブレーキの各々の押付力を制御可能な押付力制御アクチュエータとを含むものとすることができる。摩擦ブレーキが、押付力としての流体圧により作動可能な流体圧ブレーキである場合には、押付力制御アクチュエータを流体圧制御アクチュエータとすることができる。押付力制御アクチュエータの制御により、複数の車輪30の各々に設けられた摩擦ブレーキの押付力が制御され、複数の車輪30の各々に加えられる制動力が制御される。
【0016】
転舵装置TLは、複数の車輪30のうちの操舵輪である左側車輪30Lと右側車輪30Rとを転舵するものである。転舵装置TLは、例えば、左側車輪30L、右側車輪30Rを連結する一対のタイロッドおよび一対のタイロッドを連結する転舵ロッド、転舵ロッドに設けられた転舵アクチュエータ等を含むものとすることができる。転舵アクチュエータにより転舵ロッドがライトビークルLVの幅方向に移動させられることにより、左側車輪30Lと右側車輪30Rとが転舵される。
【0017】
GPS受信機10Lは、GPS信号を受信するものであり、GPS信号に基づいて、ライトビークルLV自体の位置を取得する。
周辺情報取得装置12Lは、カメラ、ライダー等を含み、その周辺情報取得装置12Lが設けられたライトビークルLV自体の周辺の物体等を認識するとともに、その物体等とライトビークルLV自体との相対位置関係等を取得する。
【0018】
慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)16Lは、慣性計測装置16Lが設けられたライトビークルLV自体の前後方向,横方向および上下方向の加速度、前後方向軸、横方向軸および上下方向軸回りの角速度等を検出するものである。換言すると、慣性計測装置16Lは、ライトビークルLVの前後方向,横方向,上下方向の加速度、ロールレート、ピッチレート、ヨーレート等を検出する。また、これら検出値に基づけば、ライトビークルLVの前後方向の走行速度、上下方向の振動(上下方向の変位の変化)等を取得することができる。
【0019】
移動体通信装置14Lは、移動体ECU20Lにおいて作成された移動体情報を無線で送信したり、管制装置Cから無線で送信された情報である管制情報を受信したりするものである。
【0020】
移動体ECU20Lには、これら駆動装置DLの駆動回路、制動装置BLの押付力制御アクチュエータ、転舵装置TLの転舵アクチュエータ、GPS受信機10L、周辺情報取得装置12L、移動体通信装置14L、慣性計測装置16L等が接続される。また、移動体ECU20Lには、走行経路等記憶部22L、移動体情報作成部24L、走行制御部26L等が含まれる。
【0021】
走行経路等記憶部22Lは、ライトビークルLV自体に設定された予定走行経路、走行速度、加速度等を記憶するものである。例えば、予定走行経路上に設定された複数の地点の各々において、走行速度や加速度が設定されるのが普通である。予定走行経路等の情報は、管制装置Cから供給されるようにすることができる。
【0022】
移動体情報作成部24Lは、移動体通信装置14Lによって無線で送信される情報である移動体情報を作成するものである。移動体情報は、慣性計測装置16Lによる検出値に基づいて取得されたライトビークルLVの走行速度、上下方向の振動、ヨーレート、ロールレート、ピッチレート等の走行状態を表す情報である移動体走行状態情報、GPS受信機10Lにおいて受信したGPS信号に基づいて取得されたライトビークルLVの位置を表す情報である移動体位置情報、ライトビークルLVの識別情報等を含む。識別情報は、移動体Vの各々に対応して予め設定され、記憶されている。作成した移動体情報は、移動体通信装置14Lに出力される。移動体通信装置14Lは移動体情報を無線で送信する。
【0023】
図5に示す移動体情報作成プログラムは、移動体情報作成部24Lにおいて予め定められた設定時間毎に実行される。ステップ51(以下、S51と略称する。他のステップについても同様とする)において、移動体(ライトビークルLV)の走行状態を表す情報(移動体走行状態情報)が取得される。S52において、移動体(ライトビークルLV)の位置を表す移動体位置情報が取得される。S53において、移動体(ライトビークルLV)の識別情報が読み込まれる。そして、S54において、識別情報、移動体位置情報、移動体走行状態情報等を含む移動体情報が作成される。移動体情報は、移動体通信装置14Lに出力されて、送信される。
【0024】
走行制御部26Lは、駆動装置DL,制動装置BL,転舵装置TL等を制御することにより、ライトビークルLVの走行を制御するものである。ライトビークルLVが自動運転移動体である場合には、走行制御部26Lは、移動体通信装置14Lにおいて受信した管制情報に含まれる走行指令と、周辺情報取得装置12Lによって取得されたライトビークルLVの周辺の物体等とライトビークルLVとの相対位置関係等との少なくとも一方に基づいて、駆動装置DL,制動装置BL,転舵装置TL等を制御する。
【0025】
ライトビークルLVがマニュアル運転移動体である場合には、走行制御部26Lは、運転者によって操作可能な図示しない操作部材の操作状態に基づいて駆動装置DL,制動装置BL,転舵装置TL等を制御する。また、ライトビークルLVがマニュアル運転移動体である場合には、走行経路等記憶部22Lは不可欠ではない。運転者は、予め定められた予定走行経路に沿って走行するようライトビークルLVを運転することができる。
【0026】
大型運搬車両HVの各々は、それぞれ、
図2に示すように、駆動装置DH,制動装置BH,転舵装置TH,GPS受信機10H、周辺情報取得装置12H、移動体通信装置14H、慣性計測装置16H、コンピュータを主体とする移動体ECU20H等を含む。これらはライトビークルLVのそれらとほぼ同様の構造を成すため、説明を省略する。本実施例において、大型運搬車両HVは自動運転移動体である。また、移動体ECU20Hの移動体情報作成部24Hにおいては、
図5のフローチャートで表される移動体情報作成プログラムが同様に実行される。
【0027】
管制装置Cは、
図2に示すように、コンピュータを主体とする管制ECU50と管制ECU50に接続された管制通信装置52とを含む。管制ECU50は、管制情報作成部54、作業計画情報記憶部56、移動体情報記憶部58、抑制振動決定部60、対向推定部62、走行速度決定部64等を含む。
【0028】
管制通信装置52は、管制情報作成部54によって作成された管制情報を無線で送信したり、ライトビークルLVの移動体通信装置14L,大型運搬車両HVの移動体通信装置14Hから無線で送信された移動体情報を受信したりするものである。
【0029】
作業計画情報記憶部56は、ライトビークルLV,大型運搬車両HVの各々の作業計画に関する情報を記憶するものである。作業計画情報記憶部56は、ライトビークルLV、大型運搬車両HVの各々の移動計画(予定走行経路、予定走行経路の路面の状態)に関する情報等を記憶する移動計画情報記憶部56a、移動体Vが搬送する搬送物体に関する情報等を記憶する搬送物体情報記憶部56b等が含まれる。これら移動計画に関する情報、搬送物体に関する情報は複数のライトビークルLV,大型運搬車両HVの各々の識別情報と対応付けて記憶されることが多い。
予定走行経路の路面の状態は、地図情報等に基づいて予め取得されるようにしても、移動体Vから送信される移動体情報に基づいて取得されるようにしてもよい。
【0030】
移動体情報記憶部58は、管制通信装置52において受信した移動体情報に含まれるライトビークルLV,大型運搬車両HVの各々の位置情報、移動体走行状態情報(走行速度、加速度、上下方向の振動、ヨーレート、ロールレート、ピッチレート等)等を記憶するものである。これら情報は、今回受信したものに限らず、過去に受信したものも記憶されている。
【0031】
抑制振動決定部60は、複数のライトビークルLV,大型運搬車両HVの各々の搬送物体の種類や特性等に基づいて、ばね上振動とばね下振動とのうちの優先的に抑制すべき振動である抑制振動を決定するものである。例えば、搬送物体が人と精密機器との少なくとも一方を含む場合には、抑制振動はばね上振動に決定され、それ以外の場合には、ばね下振動に決定される。ばね上振動が抑制されることにより、搬送物体に加えられる振動を抑制することが可能となり、人の乗り心地の低下を抑制したり、精密機器の保護を図ったりすること等ができる。ばね下振動が抑制されることにより、路面接地性の低下を抑制し、走行安定性の低下を抑制することができる。
【0032】
対向推定部62は、複数の移動体のうちの2台以上の移動体の各々の予定走行経路が交差する交差点において、2台以上の移動体が互いに対向する可能性があるかどうかを推定するものである。
例えば、作業計画に基づいて2台以上の移動体の各々の予定走行経路が互いに交差する交差点Xの位置は予め取得されている。それら交差点Xの各々において、
図1に示すように、交差点Xに向かって走行している2台以上の移動体Vがある場合には、それらの各々の識別情報が取得される。それら2台以上の移動体の各々の識別情報は、移動計画情報記憶部56aに記憶された移動計画情報と、管制通信装置52において受信した移動体情報に含まれる移動体位置情報、識別情報等とに基づいて特定することができる。
【0033】
そして、それら2台以上の移動体の各々の位置、走行速度等に基づいて、2台以上の移動体の各々が交差点Xで決まる位置に達する時刻である到達時刻(または達するまでに要する時間である到達時間)が取得される。2台以上の移動体の各々の到達時刻(または到達時間)の差が設定時間より短い場合に、2台以上の移動体が交差点において互いに対向する可能性があると推定される。
【0034】
走行速度決定部64は、対向推定部62によって2台以上の移動体の各々が交差点Xにおいて互いに対向する可能性があると推定された場合に、2台以上の移動体の各々の走行速度を決定するものである。
【0035】
例えば、
図1に示すように、交差点Xにおいて、2つの移動体としてライトビークルLVと大型運搬車両HVとが互いに対向する可能性があると推定された場合について説明する。ライトビークルLVの搬送物体に人と精密機器との少なくとも一方が含まれる場合には、ライトビークルLVについての抑制振動がばね上振動に決定され、大型運搬車両HVの搬送物体が土砂である場合には、大型運搬車両HVについての抑制振動がばね下振動に決定される。
【0036】
一般的に、ばね上の固有振動数(ばね上共振周波数)、ばね下の固有振動数(ばね下共振周波数)は、それぞれ、移動体の諸元(ばね上質量またはばね下質量、ばね定数等)によって決まる。ばね上質量とは、サスペンションスプリングにより保持される質量であり、ばね下質量とは、サスペンションスプリングより下方に位置する部分の質量である。ばね上質量には、搬送物体の質量も含まれる。
【0037】
一方、移動体が、凹凸がある路面を走行する場合には、その路面の状態としての路面の凹凸の状態(凹凸の間隔等)と走行速度とで決まる振動数で上下方向に振動する。例えば、路面の凹凸の状態と走行速度とで決まる振動数が、ばね上の固有振動数に近づくと、ばね上が共振する。そこで、走行速度と路面の凹凸の状態とに基づいて決まる振動数が、搬送物体に基づいて決まる抑制振動の固有振動数に近づかないように、走行速度が決定されるのである。
【0038】
なお、移動体について、ばね下の固有振動数はばね上の固有振動数より大きいのが普通であり、およそ、ばね上の固有振動数(共振周波数)は、1.0~2.0Hzであり、ばね下の固有振動数(共振周波数)は、10~20HZである。
【0039】
本実施例においては、ライトビークルLVのばね上の固有振動数、大型運搬車両HVのばね下の固有振動数が取得される。ライトビークルLVのばね上の固有振動数は、搬送物体の質量等を考慮して取得される。大型運搬車両HVのばね下の固有振動数は、予め取得して記憶しておくことができる。
そして、ライトビークルLVにばね上共振が生じると推定される走行速度vA、大型運搬車両HVにばね下共振が生じると推定される走行速度vBが取得される。走行速度vAは、ライトビークルLVの予定走行経路RLの交差点Xを含む領域の路面の凹凸の状態、ばね上の固有振動数等に基づいて取得され、走行速度vBは、大型運搬車両HVの予定走行経路RHの交差点Xを含む領域の路面の凹凸の状態、ばね下の固有振動数等に基づいて取得される。
【0040】
ライトビークルLV,大型運搬車両HVの現在の走行速度がvO、これらばね上共振、ばね下共振が生じると推定される走行速度vA、vBが、
図6(a)に示すように、現在の走行速度vOが、ライトビークルLVにばね上共振が生じると推定される走行速度vAより速く、大型運搬車両HVにばね下共振が生じると推定される走行速度vBより遅い場合(vA<vO<vB)を想定する。
【0041】
ライトビークルLVと大型運搬車両HVとの交差点Xでの対向を回避し、かつ、ライトビークルLV,大型運搬車両HVの各々に搬送物体で決まる抑制振動の共振が生じ難く(ライトビークルLVにばね上共振が生じ難く、大型運搬車両HVにばね下共振が生じ難く)するために、ライトビークルLVの走行速度を速くするか、大型運搬車両HVの走行速度を遅くするかのいずれかが考えられる。ライトビークルLVの走行速度を速くすることが可能であれば、作業効率の向上の観点から、大型運搬車両HVの走行速度を現在の速度vOとし、ライトビークルLVの走行速度を速くすることが望ましい。しかし、現時点の走行速度vOは、作業効率の向上の観点から、安全性を考慮しつつ、走行可能な速い速度に設定されている場合が多く、ライトビークルLVの走行速度を速くすることが難しい場合がある。その場合には、ライトビークルLVの走行速度を現在の速度vOとし、大型運搬車両HVの走行速度を遅くする(v*)ことが望ましい。
【0042】
その結果、ライトビークルLVと大型運搬車両HVとが交差点において対向する可能性があると推定された場合に、ライトビークルLVにおいてばね上共振が抑制されることにより、搬送物体の保護を図り、大型運搬車両HVにおいてばね下共振が抑制されることにより、走行安定性の低下を抑制しつつ、これらの交差点Xにおける対向を回避することができる。
【0043】
同様に、
図6(b)に示すように、現在の走行速度vOが、ライトビークルLVにばね上共振が生じると推定される走行速度vA、大型運搬車両HVにばね下共振が生じると推定される走行速度vBより速い場合(vA<vB<vO)を想定する。この場合には、ライトビークルLVと大型運搬車両HVとの交差点Xにおける対向を回避し、かつ、搬送物体で決まる抑制振動の共振が生じ難くするために、大型運搬車両HVの走行速度を現在の速度vOとし、ライトビークルLVの走行速度を遅くする(v*)ことが考えられる。大型運搬車両HVの走行速度を遅くすると、ばね下共振が生じる可能性が高いからである。
【0044】
また、走行速度決定部64は学習部64a等を含むものとすることができる。
学習部64aは、例えば、AI(Artificial Intelligence)を利用して、複数の移動体Vの各々についての走行速度の最適解を決定するものとすることができる。
具体的には、
図7に示すように、複数の移動体Vの各々について、移動体情報に含まれる移動体走行状態情報(走行速度、上下方向の振動、ヨーレート、ロールレート、ピッチレート等)、移動計画情報記憶部56aに記憶されている予定走行経路の路面の凹凸の状態等を表す情報、搬送物体情報記憶部56bに記憶されている搬送物体に関する情報等との関係を機械学習プログラム等を利用して、複数の移動体の各々が予定走行経路を走行するための走行速度の最適解を求めるのである。そして、2台以上の移動体が交差点において互いに対向する可能性があると推定された場合には、2台以上の移動体の各々の走行速度を、学習部64aによって取得された走行速度の最適解に基づいて決めることができる。
【0045】
管制情報作成部54は、管制情報を作成するものである。管制情報は、例えば、走行速度決定部64において決定された走行速度を表す情報、移動体Vの識別情報等を含むものとすることができる。
【0046】
以上のように構成された管理システムにおいて、管制ECU50においては、
図3のフローチャートで表される走行速度決定プログラムが予め定められた設定時間毎に実行される。
S1において、交差点Xの各々において、それぞれ、交差点Xに向かって走行している2台以上の移動体Vを検出し、2台以上の移動体Vの各々の識別情報を取得するとともに、2台以上の移動体Vの位置、走行速度等を取得する。S2において、これら2台以上の移動体Vが交差点Xにおいて互いに対向する可能性が高いか否かが判定される。判定がYESである場合には、S3において、2台以上の移動体Vの各々の搬送物体が搬送物体情報記憶部56bに記憶された情報に基づいて取得され、S4において、搬送物体に基づいて2台以上の移動体Vの各々についての抑制振動が決定される。
【0047】
S5において、2台以上の移動体Vの各々について決定された抑制振動についての固有振動数(ばね上の固有振動数またはばね下の固有振動数)が取得される、S6において、2台以上の移動体Vの各々に、ばね上共振またはばね下共振が生じると推定される走行速度が取得される。そして、S7において、2台以上の移動体Vの各々の走行速度が、移動体Vに抑制振動の共振が生じない速度に、
図6に示すように決定される。そして、S8において、2台以上の移動体Vの各々について、走行速度、その走行速度が決定された移動体Vの識別情報を含む管制情報が作成されて、管制通信装置52に出力される。管制通信装置52は、管制情報を無線で送信する。
【0048】
ライトビークルLV,大型運搬車両HVの各々の移動体ECU20L,20Hにおいて、
図4のフローチャートで表されるリモート走行制御プログラムが予め定められた設定時間毎に実行される。
S21において、移動体通信装置14L,14Hにおいて、管制情報を受信したか否かが判定され、S22において、管制情報に含まれる識別情報が自身を表す識別情報と一致するか否かが判定される。判定がYESである場合には、S23において、管制情報に速度情報が含まれるか否かが判定される。判定がYESである場合には、S24において、移動体の各々の走行速度がその管制情報に含まれる走行速度に近づくように、駆動装置DL,DHと制動装置BL,BHとの少なくとも一方が制御される。
【0049】
なお、ライトビークルLVがマニュアル運転移動体である場合には、管制情報に含まれる走行速度が図示しない報知装置等を介して運転者に報知されるようにすることができる。運転者は、移動体Vの走行速度が報知装置を介して報知された走行速度に近づくように、アクセル操作部材やブレーキ操作部材の操作を行うことができる。
【0050】
以上のように、本実施例においては、交差点において、2台以上の移動体Vが対向する可能性があると推定された場合に、2台以上の移動体Vの各々の走行速度が、交差点における対向を回避し、かつ、搬送物体で決まる抑制振動の共振が生じ難い大きさに決定される。そのため、搬送物体に大きな振動が加えられ難くしたり、移動体Vの走行安定性の低下を抑制したりしつつ、交差点における2台以上の移動体Vが対向することを回避することができる。
【0051】
以上のように、本実施例においては、管制ECU50の
図3のフローチャートで表される走行速度決定プログラムのS1,2を記憶する部分、実行する部分等により対向推定部が構成され、S3,4を記憶する部分、実行する部分等により抑制振動決定部が構成され、S5-7を記憶する部分、実行する部分等により走行速度決定部が構成され、S8を記憶する部分、実行する部分等により管制情報作成部54が構成される。また、管制ECU50の学習部64a等は、学習型走行速度決定部に対応する。
【0052】
なお、上記実施例において、管理システムが鉱山の作業において利用される場合について説明したが、鉱山の作業に限らず、種々の作業現場において利用することができる。
【0053】
また、駆動装置DL,DH、制動装置BL,BH、転舵装置TL,THの構造は問わない。さらに、学習部64aは不可欠ではない等、本発明は、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
14L,14H:移動体通信装置 50:管制ECU 52:管制通信装置 54:管制情報作成部 56:作業計画情報記憶部 56a:移動計画情報記憶部 56b:搬送物体情報記憶部 58:移動体情報記憶部 60:抑制振動決定部 62:対向推定部 64:走行速度決定部 64a:学習部
本来、移動体において、ばね上振動もばね下振動も抑制されることが望ましい。しかし、例えば、路面が平坦でない場合には、移動体の走行速度によって、ばね上共振やばね下共振が生じる場合がある。また、2台以上の移動体が交差点において互いに対向する可能性があると推定された場合等には、2台以上の移動体のうちの少なくとも1つの走行速度を速くまたは遅くする必要がある。その場合に、移動体の上下方向の振動数がばね上の固有振動数またはばね下の固有振動数に近づき、ばね上共振またはばね下共振が生じ、搬送物体に大きな振動が加えられたり、移動体の走行安定性が低下したりする場合がある。
それに対して、本管理システムにおいては、2台以上の移動体の各々について、優先的に抑制されるべき振動が、ばね上振動であるのかばね下振動であるのかが、搬送物体に基づいて決定される。そして、決定されたばね上振動またはばね下振動が抑制されるように、換言すると、ばね上共振またはばね下共振が生じないように、2台以上の移動体の各々の走行速度が決定されるようにしたのである。
「優先的に抑制されるべき振動」とは、ばね上振動とばね下振動とのいずれか一方を抑制し、いずれか他方を許容するとした場合に、抑制することが望ましい方の振動をいう。
(2)前記抑制振動決定部が、前記搬送物体が、人と精密機器との少なくとも一方を含む場合には、前記搬送物体を搬送する移動体についての前記抑制振動をばね上振動に決定するものである(1)項に記載の管理システム。
(3)前記抑制振動決定部が、前記搬送物体が人または精密機器を含まない場合には、前記搬送物体を搬送する移動体についての前記抑制振動をばね下振動に決定するものである(1)項または(2)項に記載の管理システム。
(4)前記走行速度決定部が、前記抑制振動決定部によって決定された前記抑制振動が抑制されるように、前記2台以上の移動体の各々の前記予定走行経路のうち前記交差点を含む領域の路面の凹凸の状態に基づいて前記2台以上の移動体の各々の走行速度を決定するものである(1)項ないし(3)項のいずれか1つに記載の管理システム。
予定走行経路のうち交差点を含む領域とは、予定走行経路のうち交差点とその交差点の周辺とを含む部分をいう。換言すれば、交差点において2台以上の移動体が互いに対向しないように、2台以上の移動体の各々の走行速度が決定される場合に、その決定された走行速度で移動体が走行すると推定される領域をいう。
(5)前記走行速度決定部が、前記2台以上の移動体の各々の前記交差点での対向を回避するように、前記2台以上の移動体の各々の走行速度を決定するものである(1)項ないし(4)項のいずれか1つに記載の管理システム。
(6)前記管制装置が、前記2台以上の移動体の各々についての前記予定走行経路に関する情報と、前記予定走行経路の各々の路面の状態に関する情報と、前記2台以上の移動体の各々についての搬送物体に関する情報とを含む作業計画情報を記憶する作業計画情報記憶部を含む(1)項ないし(5)項のいずれか1つに記載の管理システム。
(7)前記管制装置が、前記2台以上の移動体の各々の前記予定走行経路と、前記2台以上の移動体の各々の現在の位置と、前記2台以上の移動体の各々の現在の走行速度とに基づいて、前記交差点において前記2台以上の移動体が互いに対向する可能性があるか否かを推定する対向推定部を含む(1)項ないし(6)項のいずれか1つに記載の管理システム。
(8)前記走行速度決定部が、前記複数の移動体の各々の過去の走行速度を表す情報と、前記複数の移動体の各々の過去の上下方向の振動および姿勢の変化に関する情報と、前記複数の移動体の各々の前記予定走行経路の各々の路面の状態に関する情報と、前記複数の移動体の各々の搬送物体を表す情報とに基づいて学習を行い、前記抑制振動決定部によって決定された前記複数の移動体の各々の抑制振動が抑制される前記走行速度の最適解を取得する学習型走行速度決定部を含む(1)項ないし(7)項のいずれか1つに記載の管理システム。