(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127824
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】移動棚装置及び移動棚装置の設置方法
(51)【国際特許分類】
B65G 1/10 20060101AFI20230907BHJP
【FI】
B65G1/10 C
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022031742
(22)【出願日】2022-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000109495
【氏名又は名称】テクノロール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】畑中 一辰
(72)【発明者】
【氏名】戸口 智晴
【テーマコード(参考)】
3F022
【Fターム(参考)】
3F022EE02
3F022FF24
3F022JJ12
3F022MM57
3F022NN02
(57)【要約】
【課題】物品の出し入れを容易に行うことができながらも、設置作業を容易に行える移動棚装置及び移動棚装置の設置方法を提供する。
【解決手段】物品を収容可能で、かつ、移動方向に長い棚5と、棚5を格納位置と収容された物品を棚5の移動方向と直交する幅方向から出し入れを行う入出庫位置とに往復移動させる走行ユニット6と、を備えた移動棚2が床8に複数併設され、床8には、回転可能な複数の回転部31が各移動棚2に対応して設けられ、各移動棚2には、複数の回転部31に当接して各移動棚2を移動方向に沿って移動案内するための当接部が設けられ、複数の回転部31は、各移動棚2の格納位置において各移動棚2の下方に位置している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を収容可能で、かつ、移動方向に長い棚と、該棚を格納位置と収容された物品を該棚の移動方向と直交する幅方向から出し入れを行う入出庫位置とに往復移動させる走行ユニットと、を備えた移動棚が床に複数併設され、
前記床には、回転可能な複数の回転部が各移動棚に対応して設けられ、
前記各移動棚には、前記複数の回転部に当接して該各移動棚を移動方向に沿って移動案内するための当接部が設けられ、
前記複数の回転部は、前記各棚の格納位置において該各棚の下方に位置していることを特徴とする移動棚装置。
【請求項2】
前記複数の回転部のそれぞれは、上下方向の軸心回りで回転可能なコロから構成され、前記複数のコロは、前記床に設置される固定部材に前記移動方向に沿って間隔を空けて取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の移動棚装置。
【請求項3】
前記当接部は、前記移動方向に延びて前記幅方向の両側から前記当接する一対の部材を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の移動棚装置。
【請求項4】
前記走行ユニットは、駆動装置と、該駆動装置により少なくとも1個が回転駆動される複数の走行車輪と、を備え、該複数の走行車輪は、合成樹脂で形成される中実のタイヤ部を備えていることを特徴とする請求項1~3のうちのいずれか1項に記載の移動棚装置。
【請求項5】
物品を収容可能で、かつ、移動方向に長い棚と、該棚を格納位置と収容された物品を該移動棚の移動方向と直交する幅方向から出し入れを行う入出庫位置とに往復移動させる走行ユニットと、を備えた移動棚が床に複数併設される移動棚装置を設置する方法において、
回転可能な複数の回転部を各移動棚に対応して前記床に設置する回転部設置工程と、前記複数の回転部に当接して移動方向に沿って移動案内させるための当接部を有する前記走行ユニットを配置する走行ユニット配置工程と、前記走行ユニットに前記棚を載置支持させる棚設置工程と、を備え、
前記回転部設置工程は、前記複数の回転部を前記棚の格納位置において該棚の下方に位置するように前記床に設置する工程であることを特徴とする移動棚装置の設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品を収容し、収容した物品の出し入れができるように格納位置から入出庫位置に移動可能な移動棚装置及び移動棚装置の設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1の移動棚装置が提案されている。この移動棚装置は、複数の移動棚を該移動棚の短手方向に移動可能に併設して構成されている。具体的には、床面に移動棚の移動方向に沿う一対のガイドレールを移動方向と直交する方向に所定間隔を置いて敷設し、これらガイドレール上に各移動棚の下端に備える一対の走行車輪を移動可能に載置している。
【0003】
特許文献1では、物品の出し入れを行う場合には、該当する移動棚及び該移動棚と移動方向で隣り合う移動棚のうちの一方の移動棚を他方の移動棚から離間させて物品の出し入れ作業が行える通路を形成する。この通路に例えばフォークリフト等の荷役車両を侵入させて移動棚から物品を出し入れする場合に、ガイドレールが邪魔になり、物品の出し入れ作業がやり難いという不都合があった。
【0004】
そこで、特許文献2(
図6参照)に、床面にガイドレールの無い移動棚装置が提案されている。特許文献2の移動棚装置は、天井に断面形状I字形状の上部レールを固定し、その上部レールの下側両辺部の上面に移動棚の上端に取り付けられた2つの支持部に備える一対のガイド輪をそれぞれ載置している。したがって、移動棚の下端に備える走行用車輪を走行用モータにより駆動回転させて、一対のガイド輪が上部レールの下側両辺部の上面を移動することで移動棚を上部レールに沿って移動させることができる。
【0005】
特許文献2では、脚立を用いて不安定な姿勢で重量物である上部レールを持ち上げながら天井に固定する設置作業が、非常にやり難いという不都合があり、改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実公平4-18417号公報
【特許文献2】特開2000-152833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、かかる実情に鑑み、物品の出し入れを容易に行うことができながらも、設置作業を容易に行える移動棚装置及び移動棚装置の設置方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る移動棚装置は、物品を収容可能で、かつ、移動方向に長い棚と、該棚を格納位置と収容された物品を該棚の移動方向と直交する幅方向から出し入れを行う入出庫位置とに往復移動させる走行ユニットと、を備えた移動棚が床に複数併設され、前記床には、回転可能な複数の回転部が各移動棚に対応して設けられ、前記各移動棚には、前記複数の回転部に当接して該各移動棚を移動方向に沿って移動案内するための当接部が設けられ、前記複数の回転部は、前記各棚の格納位置において該各棚の下方に位置していることを特徴としている。
【0009】
かかる構成によれば、棚に物品の出し入れを行う場合には、出し入れを行う棚を格納位置から入出庫位置へ走行ユニットにより移動させる。移動後は、入出庫位置へ位置した棚へフォークリフト等の荷役車両を移動させる。このとき、格納位置に位置している他の棚の下方に複数の回転部が位置しているため、前記入出庫位置へ位置した棚の移動方向と直交する両側の床面上には回転部が無い。そのため、入出庫位置へ位置した棚への荷役車両の移動をスムーズに行うことができ、物品を棚の移動方向と直交する幅方向から容易に出し入れすることができる。しかも、複数の回転部を移動棚の数だけ床に設けるだけで済むので、移動棚装置の設置作業を容易に行える。
【0010】
また、本発明に係る移動棚装置は、前記複数の回転部のそれぞれが、上下方向の軸心回りで回転可能なコロから構成され、前記複数のコロは、前記床に設置される固定部材に前記移動方向に沿って間隔を空けて取り付けられていてもよい。
【0011】
上記のように、固定部材に複数のコロが取り付けられているので、固定部材を床に設置するだけで、複数のコロを床に迅速に設置することができる。
【0012】
また、本発明に係る移動棚装置は、前記当接部が、前記移動方向に延びて前記幅方向の両側から前記当接する一対の部材を備えていてもよい。
【0013】
上記のように、一対の部材が、移動方向に延びて移動棚の移動方向と直交する幅方向の両側からそれぞれ当接することによって、移動棚の移動方向を確実に規制することができる。
【0014】
また、本発明に係る移動棚装置は、前記走行ユニットが、駆動装置と、該駆動装置により少なくとも1個が回転駆動される複数の走行車輪と、を備え、該複数の走行車輪は、合成樹脂で形成される中実のタイヤ部を備えていてもよい。
【0015】
上記のように、複数の走行車輪が、合成樹脂で形成される中実のタイヤ部を備えることによって、複数の空気入りタイヤで構成した場合に、一部の空気入りタイヤの空気漏れ等により移動棚が傾いてしまうといったことを抑制することができる。
【0016】
また、本発明に係る移動棚装置の設置方法は、物品を収容可能で、かつ、移動方向に長い棚と、該棚を格納位置と収容された物品を該移動棚の移動方向と直交する幅方向から出し入れを行う入出庫位置とに往復移動させる走行ユニットと、を備えた移動棚が床に複数併設される移動棚装置を設置する方法において、回転可能な複数の回転部を各移動棚に対応して前記床に設置する回転部設置工程と、前記複数の回転部に当接して移動方向に沿って移動案内させるための当接部を有する前記走行ユニットを配置する走行ユニット配置工程と、前記走行ユニットに前記棚を載置支持させる棚設置工程と、を備え、前記回転部設置工程は、前記複数の回転部を前記棚の格納位置において該棚の下方に位置するように前記床に設置する工程であることを特徴としている。
【0017】
かかる構成によれば、回転部設置工程により回転可能な複数の回転部を各移動棚に対応して床に設け、走行ユニット配置工程により回転部に当接して移動方向に沿って移動案内させるための当接部を有する走行ユニットを配置し、棚設置工程により走行ユニットに棚を載置支持させることにより、移動棚装置の設置が完了する。よって、移動棚装置の設置作業を容易に行える。回転部設置工程は、複数の回転部を棚の格納位置において棚の下方に位置するように設けることにより、棚に物品の出し入れを行う場合に、出し入れを行う棚を格納位置から入出庫位置へ走行ユニットにより移動させて、入出庫位置へ位置した棚へフォークリフト等の荷役車両を移動させるときに、格納位置に位置している他の棚の下方に複数の回転部が位置しているため、前記入出庫位置へ移動した棚の移動方向と直交する両側の床面上に回転部が無い。そのため、入出庫位置へ位置した棚への荷役車両の移動をスムーズに行うことができ、物品を棚の移動方向と直交する幅方向から容易に出し入れすることができる。しかも、複数の回転部を移動棚の数だけ床に設けるだけで済むので、移動棚装置の設置作業を容易に行える。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、移動棚を移動案内する複数の回転部を、移動棚の格納位置において移動棚の下方に位置するように床に設けることによって、物品の出し入れを容易に行うことができながらも、設置作業を容易に行える移動棚装置及び移動棚装置の設置方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図3】
図2のIIIで囲まれた領域の拡大図である。
【
図5】同移動棚装置の設置方法を示す側面図である。
【
図6】(a),(b)は案内ユニットを床に取り付ける手順を示す説明図である。
【
図7】案内ユニットを床に取り付けられた状態の斜視図である。
【
図8】案内ユニットに走行ユニットを配置した状態の斜視図である。
【
図9】走行ユニットに棚を載置する直前の状態を示す正面図である。
【
図10】清掃具を備えた別の形態の走行ユニットの側面図である。
【
図12】(a),(b),(c),(d)はタイヤ部の交換手順を示す正面から見た説明図である。
【
図13】(a),(b),(c),(d)はタイヤ部の交換手順を示す側面から見た説明図である。
【
図14】移動棚装置の別の形態を示し、(a)は下端部の側面図、(b)は
図14(a)のXIV-XIVにおける断面図である。
【
図15】案内ユニットの別の形態を示し、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態に係る移動棚装置について、図面を参照しつつ説明する。
図1及び
図2に示す移動棚装置1は、例えば倉庫内に配置される複数(
図2では3台であるが、2台以上であれば、何台でもよい)の移動棚2と、移動棚2を直線状に移動案内する案内ユニット3と、を備えている。尚、移動棚2の移動方向を前後方向とし、移動棚2の移動方向と直交する方向を左右方向(又は幅方向)として説明する。
【0021】
各移動棚2は、平面視長方形状に構成され、その長手方向に移動可能に構成され、短手方向に僅かな間隔を置いて複数(この実施形態では3台(
図2参照))併設されている。各移動棚2は、物品が入った箱4(
図1のみ図示している)を収容可能で、かつ、移動方向に長い棚5と、棚5を載置して格納位置と入出庫位置とに往復移動させる走行ユニット6と、を備えている。移動棚2の格納位置は、
図1の実線で示す位置である。また、移動棚2の入出庫位置は、例えば、
図1の2点鎖線で示す右側に移動した位置を示しているが、
図1の位置から更に右側へ移動した位置であってもよい。要するに、移動棚2に収容されている物品の出し入れができる位置であれば、どのような位置に移動棚2の入出庫位置を設定してもよい。尚、
図1では、実線で示している手前に位置している移動棚2に対して奥側に位置している入出庫予定の移動棚2を、
図1の2点鎖線で示している入出庫位置まで移動した状態である。また、移動棚2を右側だけでなく、左側にも(左右両方に)移動できるように構成してもよい。
【0022】
物品は、
図1に示す箱4内に収納され、各棚5に載置したパレット7上に箱4を置いている。したがって、前記したように、入出庫予定の奥側の移動棚2を、
図1の2点鎖線で示す入出庫位置まで移動させ、その移動棚2に収容した箱4を、左右方向、つまり
図1の手前から奥側に向かう方向からフォークリフト等の荷役車両(図示せず)を用いてパレット7毎持ち上げて取り出すようにしている。各棚5への箱4の出し入れは、前記のようにフォークリフト等の荷役車両を用いて人為的に行う他、ロボット等を用いて自動的に行うようにしてもよいし、荷役車両を用いないで人が直接行うようにしてもよい。尚、入庫した箱4がどの棚5のどこに収容されたかを図示していない操作パネルの記憶部に記憶されており、記憶部に記憶されている情報を操作パネルの表示部に表示することによって、出庫したい箱4の収容位置を確認することができるようにしている。
【0023】
棚5は、
図4に示すように、上下方向に延びる平面視略C字形状の6本の枠部材51と、左右方向で対向する枠部材51,51同士を左右方向で連結する断面形状が矩形状の複数(
図4では21本)の第1連結部材52と、前後方向で対向する枠部材51,51同士を前後方向で連結する断面形状が矩形状の複数(
図4では24本)の第2連結部材53と、左右方向で対向する枠部材51,51同士を斜めに連結して補強する板状の複数(
図4では18本)の補強部材54と、左右方向一端側の3本の枠部材51,51,51の上端を連結する断面形状が矩形状の上端連結部材55と、を備えている。
【0024】
走行ユニット6は、
図8に示すように、駆動装置61と、複数の走行車輪62,63,64(
図1参照)と、を備えている。複数の走行車輪62,63,64は、棚5の前後方向前端部に位置する左右一対の第1走行車輪62,62と、棚5の前後方向後端部に位置する左右一対の第2走行車輪63,63と、棚5の前後方向中間部に位置する左右一対の第3走行車輪64,64と、を備えている。棚5の前後方向中間部に位置する左右一対の走行車輪64,64のうちの一方の走行車輪64が駆動装置61により回転駆動される。
【0025】
図5及び
図8に示すように、駆動装置61は、駆動源である電動モータ61Aと、電動モータ61Aに連結された減速ギヤケース61Bからの出力軸61b(
図5参照)に一体回転可能に取り付けられた第1スプロケット61Cと、前記一方の走行車輪64の車軸に一体回転可能に取り付けられた第2スプロケット61D(
図5参照)と、第1スプロケット61Cと第2スプロケット61Dに巻回される伝導チェーン(図示せず)と、を備えている。したがって、電動モータ61Aを正転方向又は逆転方向に駆動させて、前記一方の走行車輪64を正逆転することによって棚5を前方又は後方へ移動させることができるようにしている。尚、減速ギヤケース61B内に、電動モータ61Aからの駆動力を出力軸61bに伝達する伝達状態と伝達しない遮断状態とに切り替えるクラッチ(図示せず)を設けて、通電時には前記伝達状態を維持し、停電時には前記伝達状態から遮断状態へ切り替えられるように構成してもよい。このように構成しておけば、停電時において手動で棚5の移動を行うことができる。
【0026】
図8及び
図11に示すように、各第1走行車輪62は、下方開放型の第1箱体65で覆われ、第1箱体65を構成する左右の板部65A,65Aに貫通支持された軸65aに回転可能に取り付けられている。また、各第2走行車輪63は、下方開放型の第2箱体66で覆われ、第2箱体66を構成する左右の板部66A,66Aに貫通支持された軸66aに回転可能に取り付けられている。また、各第3走行車輪64は、下方開放型の第3箱体67で覆われ、第3箱体67を構成する左右の板部67A,67Aに貫通支持された軸67aに回転可能に取り付けられている。各第1走行車輪62、各第2走行車輪63、各第3走行車輪64は、合成樹脂(例えば、ポリウレタン)で形成される中実のタイヤ部から構成されている。このように、合成樹脂で形成される中実のタイヤ部から構成することによって、複数の空気入りタイヤで構成した場合に、一部の空気入りタイヤの空気漏れ等により移動棚2が傾いてしまうといったことを抑制することができる。また、各第1走行車輪62、各第2走行車輪63、各第3走行車輪64の表面に、走行時の直進安定性やグリップ力を向上させるための溝を形成して実施してもよい。尚、各第1走行車輪62、各第2走行車輪63、各第3走行車輪64は、例えば印刷用樹脂ローラと同様の製法で形成してもよい。
【0027】
図8に示すように、第1箱体65,65、第2箱体66,66、第3箱体67,67のそれぞれは、左右に長い板状体68,69,70により左右方向で連結されている。これら板状体68,69,70のうちの前後方向中間に位置する板状体70が、前後一対の板状体70A,70Bからなり、これら板状体70A,70B上に減速ギヤケース61Bが載置固定されている。また、板状体68,69,70を前後方向で連結すべく前後方向に延びる左右一対の略逆L字形状の部材71,71で連結されている。これら部材71,71は、後述する複数の回転部31に左右方向(幅方向)の両側から当接して各移動棚2を移動方向に沿って移動案内するための当接部を構成する。各部材71は、
図10にも示すように、板状体68,69,70の下面に当接した状態でビス止めされる水平板部71Aと、水平板部71Aの左右方向内側端から90度折り曲げられて下方に向かう縦板部71Bと、を備え、後述する複数の回転部31に縦板部71Bの内側面71bが当接して各移動棚2を移動方向に沿って移動案内する。
図8には、部材71,71の前端部に位置する板状体68と中間部に位置する板状体70との間及び中間部に位置する板状体70と後端部に位置する板状体69の間のそれぞれに、部材71,71をビスにより連結して補強するためのプレート15を更に備えている。
【0028】
案内ユニット3は、
図7に示すように、各移動棚2に対応して床8に設けられる回転可能な複数(
図7では5個)の回転部31を備えている。これら複数の回転部31は、床8に設置される移動方向(前後方向)に長い長方形で板状の固定部材32に取り付けられるコロから構成されている。各コロは、上下方向の軸心X回りで回転可能に構成され、固定部材32に移動棚2の移動方向に沿って一定間隔を空けて取り付けられている。案内ユニット3は、各棚5の格納位置において平面視において各棚5の下方に位置している。換言すれば、案内ユニット3は、各棚5の格納位置において平面視において各棚5から食み出さないように配置されている。更に、案内ユニット3は、各棚5の入出庫位置においても平面視において各棚5の下方に位置している。つまり、案内ユニット3は、各棚5から外れて床8に露出することがないように配置されている。このため、案内ユニット3は、荷役車両の走行の邪魔にならない。また、前記固定部材32を床から突出するボルトを用いて固定する(取り付ける)ことによって、回転部31の取替を要する時に、固定部材32を取り外すだけで、回転部31ごと新しい固定部材に容易に取り替えることができる。
【0029】
移動棚2は、移動方向に長い構成であるため、移動中に転倒することを防止する転倒防止機構Hを備えている。この転倒防止機構Hは、
図2及び
図3の拡大図に示すように、左右方向で隣り合う移動棚2,2を移動可能に移動棚2,2の側面同士を係合する係合構造が上下方向複数箇所(
図2では2箇所)に設けられて構成されている。具体的には、各係合構造は、
図3に示すように、隣り合う移動棚2,2のうちの一方の移動棚2の対向側面に開口端が他方の移動棚2に対向するように取り付けられる前後方向視略Cの字形状のレール9と、他方の移動棚2に取り付けられ一方の移動棚2に向かって延びる延出部材10の先端部にボルトBにより取り付けられるとともにレール9内に入り込む上下一対の回転体11,11と、を備えている。レール9の前後長さは、移動棚2が移動する移動長さに応じて設定される。例えば、
図3の左側の移動棚2が移動中に左側へ転倒しそうになると、レール9の左右の内側面9A,9B(
図3参照)のうちの一方の内側面9A,9Aに回転体11,11が当接することによって、左側の移動棚2の転倒を防止する。この左側の移動棚2の移動中に、左側の移動棚2が傾いてレール9の左側の内側面9A,9Aに回転体11,11が当接したとしても、回転体11,11が回転することにより、左側の移動棚2に大きな移動抵抗が作用することがない。
【0030】
次に、移動棚装置1を設置する移動棚装置1の設置方法について説明する。移動棚装置1の設置方法は、回転可能な複数の回転部31を各移動棚2に対応して床8に設置する回転部設置工程と、複数の回転部31に当接して移動方向に沿って移動案内させるための当接部71を有する走行ユニット6を配置する走行ユニット配置工程と、走行ユニット6に棚5を載置支持させる棚設置工程と、を備えている。
【0031】
回転部設置工程は、複数の回転部31を移動棚2の格納位置において平面視にて移動棚2の下方に位置するように床8に設置する工程である。詳細には、複数(5個)の回転部(コロ)31が前後方向に長い固定部材32に長手方向に間隔を空けて設けた5個の軸33(
図10参照)に回転可能に取り付けられ、
図6(a),(b)に示すように、複数の回転部31が取り付けられた固定部材32を床8に複数(6本)のアンカーボルト12により固定する。このように、固定部材32を床8に設置するだけで、複数の回転部(コロ)31を床8に迅速に設置することができる。固定部材32の長手方向の長さは、移動棚2の長手方向の長さよりも短くしている。この実施形態では、固定部材32の長手方向の長さは、移動棚2の長手方向の長さの約半分程度にしているが、棚5から食み出すことがない長さであれば、どのような長さにしてもよい。回転部(コロ)31は、回転自在に支持する軸33に嵌め込まれているだけなので、プーリー抜き工具を用いて上方へ容易に引き抜くことができる。尚、当接部71,71が固定部材32の左右端に当接することがないように、固定部材32の左右方向の左右幅を、回転部(コロ)31の左右方向の左右幅よりも狭くしている。
【0032】
走行ユニット配置工程は、
図5に示すように、固定部材32に取り付けた複数の回転部31が、走行ユニット6の左右一対の部材(当接部)71,71間に位置するように走行ユニット6を上方から下降させて床面に配置する工程である。
図8に、案内ユニット3への走行ユニット6の配置が完了した状態を示している。
【0033】
棚設置工程は、
図5及び
図9に示すように、棚5の6本の枠部材51の下端を走行ユニット6の箱体65,66,67の上端にそれぞれ固定されている6個の取付部材13に載置し、この載置した状態で枠部材51の下端51Aと取付部材13とを着脱可能にビス(連結部材)14により連結する工程である。このように、棚5と走行ユニット6とがビス14により着脱可能に構成されているので、棚5と走行ユニット6とを取り外すことでメンテナンス面において有利になるだけでなく、棚5及び走行ユニット6のうちの一方が損傷した場合に、損傷した棚5又は走行ユニット6のみを用意するだけで、移動棚2を構成することができる。
【0034】
また、
図10及び
図11に示すように、移動棚2の走行車輪62,63,64の前方及び後方のそれぞれに、走行車輪62,63,64の移動経路上の塵埃等の異物を掃き出すための清掃具16を備えている。この清掃具16は、ブラシ又はスクレーパ等で構成される。また、清掃具16は、走行車輪62,63,64を覆う箱体65,66,67の前側の板部65B,66B,67B及び後側の板部65C,66C,67Cにビス止めされている。したがって、棚5の往復移動時に、走行車輪62,63,64の移動経路上の塵埃等の異物を清掃具16が掃き出すことによって、走行車輪62,63,64が異物に当接する、又は乗り上げて走行車輪62,63,64を傷付けてしまうことがなく、走行車輪62,63,64の寿命が低下することを防止できる。
【0035】
また、移動棚2の各走行車輪62,63,64を覆う箱体65,66,67の上面に固定された取付部材13,13,13は、
図10及び
図11に示すように、箱体65,66,67の上面に固定された上方開放型のコの字形状の下側部材17と、下側部材17の前後板部17A,17Bに前後方向で重なり合って左右一対のビス20,20により連結される前後板部18A,18Bを有する下方開放型のコの字形状の上側部材18と、上側部材18に対する下側部材17の高さを調整するための高さ調整手段19と、を備えている。
【0036】
高さ調整手段19は、上側部材18の天板部18Cの下面に固定された上下姿勢の第1ネジ軸19Aと、下側部材17の底板部17Cの上面に固定され、第1ネジ軸19Aとは逆ネジに形成された上下姿勢の第2ネジ軸19Bと、上部が第1ネジ軸19Aに螺合され、下部が第2ネジ軸19Bに螺合された縦長状のナット19Cと、を備えている。したがって、ナット19Cを一方に回転させることにより上側部材18の位置が高くなり、ナット19Cを他方に回転させることにより上側部材18の位置が低くなる。したがって、高さ調整手段19により上側部材18の上下方向の位置を調整することにより、棚5の左右方向又は前後方向における高さを一致させることができる。尚、上側部材18の前後板部18A,18Bには、ビス20,20を挿通可能な左右一対の挿通孔18a,18b(
図10参照)を備え、下側部材17の前後板部17A,17Bには、挿通孔18a,18bを挿通したビス20の先端部を螺合させる左右一対のネジ孔17a,17b(
図11参照)が形成されている。前記挿通孔18a,18bは、上側部材18を位置変更させて高さ調整を行う場合に、挿通した締め付ける前のビス20を逃がすために上下方向に長い長孔に形成されている。高さ調整後に、ビス20,20を締め付けて上側部材18の前後板部18A,18Bと下側部材17の前後板部17A,17Bとを連結する。
【0037】
例えば、特定の走行車輪(タイヤ部)62が摩耗等により交換が必要となった場合に、走行車輪62を交換できるように構成されており、走行車輪62を交換する手順について説明する。走行車輪62を覆っている箱体65の前後の板部65B,65Cを複数のビス21(
図8では、前側の板部65Bのビス21を示し、後側の板部65Cのビスは図示していない)を緩めて取り外す(
図12(a)、
図13(a)には板部65B,65Cを取り外した左側の走行車輪62を示している)。次に、
図12(b)及び
図13(b)に示すように、箱体65の天板部65Dと左右の板部65A,65Aと走行車輪62の上面62Aとで形成される空間に、前後方向に長い板状体22を前後方向から挿入し、板状体22の前端部と後端部とをジャッキ23を用いてジャッキアップして走行車輪62を床8から浮かせる。続いて、複数のビス24を緩めて左右方向外側の板部65Aを取り外す(
図12(c)及び
図13(c)参照)。そして、
図12(d)及び
図13(d)に示すように、走行車輪62を軸65aから取り外す。この後、新しい走行車輪62を軸65aに取り付けてから、複数のビス24を締め付けて左右方向外側の板部65Aを取り付ける。続いて、ジャッキ23,23を緩めて板状体22を取り外すことで走行車輪62の交換が完了する。尚、他の走行車輪63,64も同様に交換可能である。
【0038】
また、
図14(a),(b)に示すように、移動棚装置1は、移動棚2の入出庫位置において移動棚2を前後方向及び左右方向並びに上下方向への移動を阻止するための位置決め機構25を備えている。
【0039】
位置決め機構25は、移動棚2の前端に備え、移動棚2の下部の前端から前方へ突出するように固定された金属製の突出部材26と、この突出部材26に前後方向で係合するように移動棚2の入出庫位置に設置された金属製の被係合部材27と、を備えている。
【0040】
突出部材26は、前側の走行車輪62,62を連結する部材である前記板状体68の左右方向中央部に固定されたブラケット28にビス止めされた先端側ほど先細りとなる略円錐形状に構成され、前端面26Aが上下方向に沿うフラット面を有する棒状体から構成されている。被係合部材27は、床8に立設した固定部材29の後端面の上部に取り付けられ、前記突出部材26が入り込む前側ほど大きな径となるすり鉢状形状の凹部27Aが形成された受け部材から構成されている。この凹部27Aの奥側の中心部には、凹部27A内に入り込んだ突出部材26の前端面26Aが当接する弾性材からなる緩衝材27Bを備えている。
【0041】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0042】
前記実施形態では、複数の回転部31が1列に並ぶように配置したが、
図15(a),(b)に示すように、複数の回転部31を移動棚2の移動方向において千鳥状に配置してもよい。このように配置することによって、左側の回転部31を左側の部材71に当接させ、かつ、右側の回転部31を右側の部材71に当接させることで、左右の部材(当接部)71,71と複数の回転部31との間に隙間が発生し難いため、移動棚2の直進性を高めることができる。
【0043】
また、前記実施形態では、複数の回転部31が取り付けられた固定部材32を床8に設置したが、複数の回転部31を床に直接設置してもよい。
【0044】
また、前記実施形態では、当接部を一対の部材71,71から構成したが、例えば下方が開放された略門型形状の部材から構成してもよい。
【符号の説明】
【0045】
1…移動棚装置、2…移動棚、3…案内ユニット、4…箱、5…棚、6…走行ユニット、7…パレット、8…床、9…レール、9A,9B…内側面、10…延出部材、11…回転体、12…アンカーボルト、13…取付部材、14…ビス(連結部材)、15…プレート、16…清掃具、17…下側部材、17A,17B…前後板部、17C…底板部、17a,17b…ネジ孔、18…上側部材、18A,18B…前後板部、18C…天板部、18a,18b…挿通孔、19…高さ調整手段、19C…ナット、20,21…ビス、22…板状体、23…ジャッキ、24…ビス、25…位置決め機構、26…突出部材、26A…前端面、27…被係合部材(受け部材)、27A…凹部、27B…緩衝材、28…ブラケット、29…固定部材、31…回転部(コロ)、32…固定部材、33…軸、51…枠部材、51A…下端、52…第1連結部材、53…第2連結部材、54…補強部材、55…上端連結部材、61…駆動装置、61A…電動モータ、61B…減速ギヤケース、61C…第1スプロケット、61D…第2スプロケット、61b…出力軸、62,63,64…走行車輪(タイヤ部)、62A…上面、65…第1箱体、66…第2箱体、67…第3箱体、65A,66A,67A…左右の板部、65a,66a,67a…軸、65B,66B,67B…前側の板部、65C,66C,67C…後側の板部、65D…天板部、68,69,70…板状体、70A,70B…板状体、71…部材(当接部)、71A…水平板部、71B…縦板部、71b…内側面、B…ボルト、H…転倒防止機構、X…軸心