(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127827
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】エネルギー取引管理装置及びエネルギー取引管理方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/06 20120101AFI20230907BHJP
G06Q 30/08 20120101ALI20230907BHJP
【FI】
G06Q50/06
G06Q30/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022031751
(22)【出願日】2022-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 秀輝
(72)【発明者】
【氏名】越智 公友
(72)【発明者】
【氏名】河西 英一
(72)【発明者】
【氏名】藤河 智己
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049BB73
5L049CC06
(57)【要約】
【課題】需要者と供給者とのエネルギー取引を仲介する際に、CO
2排出量を考慮した適切な割り当てを実行する。
【解決手段】エネルギー取引管理装置は、複数の需要者それぞれのエネルギー消費量と、取引時に需要者が支払うオプション料金に係る情報を保持する需要者情報保持部と、複数の供給者のエネルギー供給量と、エネルギー生成時のCO
2排出特性に係る情報を保持する供給者情報保持部と、需要者情報保持部に保持されたオプション料金に係る情報に基づいて、需要者毎の供給者との対応付けの優先順位を決定すると共に、供給者情報保持部に保持されたCO
2排出特性に係る情報に基づいて、供給者毎の需要者との対応付けの優先順位を決定する優先順位決定部と、優先順位決定部における決定結果に基づいて、優先順位が高い需要者及び供給者から優先して、需要者と供給者との対応付けを行う割当部と、を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の需要者と複数の供給者との間でのエネルギーの取引を管理するエネルギー取引管理装置であって、
前記複数の需要者それぞれについて、エネルギー消費量と、取引時に前記需要者が支払うオプション料金に係る情報を保持する需要者情報保持部と、
前記複数の供給者それぞれについて、エネルギー供給量と、エネルギー生成時のCO2排出特性に係る情報を保持する供給者情報保持部と、
前記需要者情報保持部に保持された前記複数の需要者それぞれにおける前記オプション料金に係る情報に基づいて、前記複数の需要者それぞれにおける前記供給者との対応付けの優先順位を決定すると共に、前記供給者情報保持部に保持された前記複数の供給者それぞれにおける前記CO2排出特性に係る情報に基づいて、前記複数の供給者それぞれにおける前記需要者との対応付けの優先順位を決定する優先順位決定部と、
前記優先順位決定部における決定結果に基づいて、前記優先順位が高い前記需要者及び前記供給者から優先して、前記需要者と前記供給者との対応付けを行う、割当部と、
を含む、エネルギー取引管理装置。
【請求項2】
前記需要者情報保持部は、前記需要者の前記エネルギーの取引の契約開始時期に係る情報を保持し、
前記優先順位決定部は、前記複数の需要者それぞれにおける前記エネルギーの取引の契約開始時期に係る情報にも基づいて、前記複数の需要者それぞれにおける前記供給者との対応付けの優先順位を決定する、請求項1に記載のエネルギー取引管理装置。
【請求項3】
複数の需要者と複数の供給者との間でのエネルギーの取引を管理するエネルギー取引管理装置であって、
前記複数の需要者それぞれについて、エネルギー消費量と、前記需要者による過去の取引実績に係る情報を保持する需要者情報保持部と、
前記複数の供給者それぞれについて、エネルギー供給量と、エネルギー生成時のCO2排出特性に係る情報を保持する供給者情報保持部と、
前記需要者情報保持部に保持された前記複数の需要者それぞれにおける前記取引実績に係る情報に基づいて、前記複数の需要者それぞれにおける前記供給者との対応付けの優先順位を決定すると共に、前記供給者情報保持部に保持された前記複数の供給者それぞれにおける前記CO2排出特性に係る情報に基づいて、前記複数の供給者それぞれにおける前記需要者との対応付けの優先順位を決定する優先順位決定部と、
前記優先順位決定部における決定結果に基づいて、前記優先順位が高い前記需要者及び前記供給者から優先して、前記需要者と前記供給者との対応付けを行う、割当部と、
を含む、エネルギー取引管理装置。
【請求項4】
前記供給者情報保持部は、前記エネルギーの生成方法に係る情報を保持し、
前記優先順位決定部は、前記複数の供給者それぞれにおける前記エネルギーの生成方法に係る情報にも基づいて、前記複数の供給者それぞれにおける前記需要者との対応付けの優先順位を決定する、請求項1~3のいずれか一項に記載のエネルギー取引管理装置。
【請求項5】
前記割当部は、前記需要者と前記供給者との対応付けを行う際に、前記優先順位が最上位の前記需要者の前記エネルギー消費量と、前記優先順位が最上位の前記供給者の前記エネルギー供給量との差分に対応する電力について、前記優先順位が次点となる前記需要者または前記供給者によって補完する対応付けを行う、請求項1~4のいずれか一項に記載のエネルギー取引管理装置。
【請求項6】
複数の需要者と複数の供給者との間でのエネルギーの取引を管理するエネルギー取引管理方法であって、
前記複数の需要者それぞれについて、エネルギー消費量と、取引時に前記需要者が支払うオプション料金に係る情報を保持することと、
前記複数の供給者それぞれについて、エネルギー供給量と、エネルギー生成時のCO2排出特性に係る情報を保持することと、
前記複数の需要者それぞれにおける前記オプション料金に係る情報に基づいて、前記複数の需要者それぞれにおける前記供給者との対応付けの優先順位を決定すると共に、前記複数の供給者それぞれにおける前記CO2排出特性に係る情報に基づいて、前記複数の供給者それぞれにおける前記需要者との対応付けの優先順位を決定することと、
決定された前記優先順位に基づいて、前記優先順位が高い前記需要者及び前記供給者から優先して、前記需要者と前記供給者との対応付けを行うことと、
を含む、エネルギー取引管理方法。
【請求項7】
複数の需要者と複数の供給者との間でのエネルギーの取引を管理するエネルギー取引管理方法であって、
前記複数の需要者それぞれについて、エネルギー消費量と、前記需要者による過去の取引実績に係る情報を保持することと、
前記複数の供給者それぞれについて、エネルギー供給量と、エネルギー生成時のCO2排出特性に係る情報を保持することと、
前記複数の需要者それぞれにおける前記取引実績に係る情報に基づいて、前記複数の需要者それぞれにおける前記供給者との対応付けの優先順位を決定すると共に、前記複数の供給者それぞれにおける前記CO2排出特性に係る情報に基づいて、前記複数の供給者それぞれにおける前記需要者との対応付けの優先順位を決定することと、
決定された前記優先順位に基づいて、前記優先順位が高い前記需要者及び前記供給者から優先して、前記需要者と前記供給者との対応付けを行うことと、
を含む、エネルギー取引管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エネルギー取引管理装置及びエネルギー取引管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、需要者と供給者との間の電力取引、所謂P2P取引を支援するシステムが知られている。例えば、特許文献1では、再生可能エネルギーのトレーサビリティを担保することを目的として、複数の発電所の供給量と、複数の需要者における受電量と、に基づいて各発電所から需要者へ送られる送電量を計算する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、CO2排出量の削減の観点から、需要者は、供給者の発電時のCO2排出量に着目してP2P取引を行うことが検討されている。しかしながら、従来は需要者と供給者とのマッチングの際に、CO2排出量の削減をより強く希望する需要者に対してCO2排出量の少ない供給者を適切に割り当てるというような適切なマッチングを行う方法について検討されていなかった。
【0005】
本開示は上記を鑑みてなされたものであり、需要者と供給者とのエネルギー取引を仲介する際に、CO2排出量を考慮した適切な割り当てを実行することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一形態に係るエネルギー取引管理装置は、複数の需要者と複数の供給者との間でのエネルギーの取引を管理するエネルギー取引管理装置であって、前記複数の需要者それぞれについて、エネルギー消費量と、取引時に前記需要者が支払うオプション料金に係る情報を保持する需要者情報保持部と、前記複数の供給者それぞれについて、エネルギー供給量と、エネルギー生成時のCO2排出特性に係る情報を保持する供給者情報保持部と、前記需要者情報保持部に保持された前記複数の需要者それぞれにおける前記オプション料金に係る情報に基づいて、前記複数の需要者それぞれにおける前記供給者との対応付けの優先順位を決定すると共に、前記供給者情報保持部に保持された前記複数の供給者それぞれにおける前記CO2排出特性に係る情報に基づいて、前記複数の供給者それぞれにおける前記需要者との対応付けの優先順位を決定する優先順位決定部と、前記優先順位決定部における決定結果に基づいて、前記優先順位が高い前記需要者及び前記供給者から優先して、前記需要者と前記供給者との対応付けを行う、割当部と、を含む。
【0007】
本開示の一形態に係るエネルギー取引管理方法は、複数の需要者と複数の供給者との間でのエネルギーの取引を管理するエネルギー取引管理方法であって、前記複数の需要者それぞれについて、エネルギー消費量と、取引時に前記需要者が支払うオプション料金に係る情報を保持することと、前記複数の供給者それぞれについて、エネルギー供給量と、エネルギー生成時のCO2排出特性に係る情報を保持することと、前記複数の需要者それぞれにおける前記オプション料金に係る情報に基づいて、前記複数の需要者それぞれにおける前記供給者との対応付けの優先順位を決定すると共に、前記複数の供給者それぞれにおける前記CO2排出特性に係る情報に基づいて、前記複数の供給者それぞれにおける前記需要者との対応付けの優先順位を決定することと、決定された前記優先順位に基づいて、前記優先順位が高い前記需要者及び前記供給者から優先して、前記需要者と前記供給者との対応付けを行うことと、を含む。
【0008】
上記のエネルギー取引管理装置及びエネルギー取引管理方法によれば、需要者については、需要者が支払うオプション料金に基づいて供給者との対応付けに係る優先順位が決定されると共に、供給者については、エネルギー生成時のCO2排出特性に基づいて需要者との対応付けに係る優先順位が決定される。そして、決定された優先順位に基づいて、優先順位が高い需要者及び供給者から優先して、需要者と供給者との対応付けが行われる。このような構成とすることで、需要者が支払うオプション料金に基づいて設定された需要者の優先順位と、CO2排出特性に基づいて設定された優先順位に基づいた供給者の優先順位と、を考慮して、需要者と供給者との対応付けを行うことができる。したがって、需要者と供給者とのエネルギー取引を仲介する際に、CO2排出量を考慮した適切な割り当てを実行することが可能となる。
【0009】
ここで、前記需要者情報保持部は、前記需要者の前記エネルギーの取引の契約開始時期に係る情報を保持し、前記優先順位決定部は、前記複数の需要者それぞれにおける前記エネルギーの取引の契約開始時期に係る情報にも基づいて、前記複数の需要者それぞれにおける前記供給者との対応付けの優先順位を決定する態様としてもよい。
【0010】
このような構成とすることで、例えば、オプション料金が同じ需要者が複数いる場合に、エネルギーの取引の契約開始時期が早い需要者の優先順位を高く設定することなどが可能となる。このように、エネルギーの取引の契約開始時期を考慮した優先順位の調整が可能となる。
【0011】
本開示の別の一形態に係るエネルギー取引管理装置は、複数の需要者と複数の供給者との間でのエネルギーの取引を管理するエネルギー取引管理装置であって、前記複数の需要者それぞれについて、エネルギー消費量と、前記需要者による過去の取引実績に係る情報を保持する需要者情報保持部と、前記複数の供給者それぞれについて、エネルギー供給量と、エネルギー生成時のCO2排出特性に係る情報を保持する供給者情報保持部と、前記需要者情報保持部に保持された前記複数の需要者それぞれにおける前記取引実績に係る情報に基づいて、前記複数の需要者それぞれにおける前記供給者との対応付けの優先順位を決定すると共に、前記供給者情報保持部に保持された前記複数の供給者それぞれにおける前記CO2排出特性に係る情報に基づいて、前記複数の供給者それぞれにおける前記需要者との対応付けの優先順位を決定する優先順位決定部と、前記優先順位決定部における決定結果に基づいて、前記優先順位が高い前記需要者及び前記供給者から優先して、前記需要者と前記供給者との対応付けを行う、割当部と、を含む。
【0012】
また、本開示の別の一形態に係るエネルギー取引管理方法は、複数の需要者と複数の供給者との間でのエネルギーの取引を管理するエネルギー取引管理方法であって、前記複数の需要者それぞれについて、エネルギー消費量と、前記需要者による過去の取引実績に係る情報を保持することと、前記複数の供給者それぞれについて、エネルギー供給量と、エネルギー生成時のCO2排出特性に係る情報を保持することと、前記複数の需要者それぞれにおける前記取引実績に係る情報に基づいて、前記複数の需要者それぞれにおける前記供給者との対応付けの優先順位を決定すると共に、前記複数の供給者それぞれにおける前記CO2排出特性に係る情報に基づいて、前記複数の供給者それぞれにおける前記需要者との対応付けの優先順位を決定することと、決定された前記優先順位に基づいて、前記優先順位が高い前記需要者及び前記供給者から優先して、前記需要者と前記供給者との対応付けを行うことと、を含む。
【0013】
上記のエネルギー取引管理装置及びエネルギー取引管理方法によれば、需要者については、需要者による過去の取引実績に基づいて供給者との対応付けに係る優先順位が決定されると共に、供給者については、エネルギー生成時のCO2排出特性に基づいて需要者との対応付けに係る優先順位が決定される。そして、決定された優先順位に基づいて、優先順位が高い需要者及び供給者から優先して、需要者と供給者との対応付けが行われる。このような構成とすることで、需要者による過去の取引実績に基づいて設定された需要者の優先順位と、CO2排出特性に基づいて設定された優先順位に基づいた供給者の優先順位と、を考慮して、需要者と供給者との対応付けを行うことができる。したがって、需要者と供給者とのエネルギー取引を仲介する際に、CO2排出量を考慮した適切な割り当てを実行することが可能となる。
【0014】
前記供給者情報保持部は、前記エネルギーの生成方法に係る情報を保持し、前記優先順位決定部は、前記複数の供給者それぞれにおける前記エネルギーの生成方法に係る情報にも基づいて、前記複数の供給者それぞれにおける前記需要者との対応付けの優先順位を決定する態様としてもよい。
【0015】
このような構成とすることで、例えば、特定のエネルギーの生成方法によってエネルギー生成を行う供給者の優先順位を高く設定することなどが可能となる。このように、エネルギーの生成方法を考慮した優先順位の調整が可能となる。
【0016】
前記割当部は、前記需要者と前記供給者との対応付けを行う際に、前記優先順位が最上位の前記需要者の前記エネルギー消費量と、前記優先順位が最上位の前記供給者の前記エネルギー供給量との差分に対応する電力について、前記優先順位が次点となる前記需要者または前記供給者によって補完する対応付けを行う態様としてもよい。
【0017】
このような構成とすることで、優先順位が最上位の需要者のエネルギー消費量と、優先順位が最上位の供給者のエネルギー供給量とが一致しない場合であっても、優先順位が次点となる需要者または供給者によって補完する対応付けを行うことができる。したがって、優先順位が最上位の需要者のエネルギー消費量と、優先順位が最上位の供給者のエネルギー供給量とが一致しない場合にも適切な割り当てを実現することができる。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、需要者と供給者とのエネルギー取引を仲介する際に、CO2排出量を考慮した適切な割り当てを実行することが可能な技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、電力取引支援システムの一例を示す図である。
【
図2】
図2は、電力取引管理装置の装置構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3(a)、
図3(b)は、優先順位が決定された需要者または供給者のリストの例を示す図である。
【
図4】
図4(a)、
図4(b)、
図4(c)は、優先順位の決定の仕方の別の例を説明する図である。
【
図5】
図5は、電力取引管理方法の一例を説明するフローチャートである。
【
図6】
図6は、電力取引管理方法の一例を説明するフローチャートである。
【
図7】
図7は、需要者-供給者間のマッチングを行う際の詳細手順の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、需要者-供給者間のマッチングを行う際の詳細手順の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、需要者-供給者間のマッチングを行う際の詳細手順の一例を示す図である。
【
図10】
図10は、需要者-供給者間のマッチングを行う際の詳細手順の一例を示す図である。
【
図11】
図11は、需要者-供給者間のマッチングを行う際の詳細手順の一例を示す図である。
【
図12】
図12は、電力取引管理装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して、本開示に係る例示的実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0021】
[電力取引支援システム]
図1は、一実施形態に係るエネルギー取引支援システムの一種である電力取引支援システム1の概略構成図である。
図1に示すように、電力取引支援システム1は、エネルギー取引管理装置の一種としての電力取引管理装置10と、複数の需要者91と、複数の供給者92と、複数の需要者兼供給者93と、基幹系統94と、を含んで構成される。基幹系統94とは、需要者91、供給者92、需要者兼供給者93とは異なる、外部の電力系統である。
【0022】
需要者91とは、電力を使用する者であり、電力取引支援システム1の供給者92または基幹系統94から供給される電力を消費する。供給者92とは、発電能力を有する者であり、需要者91等が使用する電力を供給する。需要者兼供給者93とは、発電機能を有する一方で発電量よりも消費量が大きくなり得る者である。したがって、需要者として電力の供給を受ける側と、供給者として電力を供給する側と、のいずれにもなり得る者である。ある時間帯で区切った場合、当該時間帯における電力の消費量または発電量に基づいて、需要者兼供給者93は、需要者または供給者とみなすことができる。したがって、以下の説明では、需要者兼供給者93は、時間帯に応じて需要者または供給者のいずれかに属することができることを前提に説明する。すなわち、需要者に関する説明は需要者と同様の状態である需要者兼供給者に関する説明に相当し、供給者に関する説明は供給者と同様の状態である需要者兼供給者に関する説明に相当する。
【0023】
電力取引支援システム1は、複数の需要者91、複数の供給者92、及び、複数の需要者兼供給者93の間での電力の取引を管理する機能を有する。具体的には、単位時間毎に、電力取引支援システム1に参加する複数の需要者91、複数の供給者92、及び、複数の需要者兼供給者93の中で、どの需要者とどの供給者とが取引したか(電力の授受を行ったか)を特定する。さらに、電力の需給バランスに由来して基幹系統94から供給される電力を需要者に供給する場合もある。このように、基幹系統94は、供給者と同様に、電力供給を行う場合がある。
【0024】
実際には、電力取引支援システム1に含まれる複数の需要者91、複数の供給者92、複数の需要者兼供給者93、及び、基幹系統94は、それぞれが個別に電力の授受を行っているわけではないが、トレーサビリティの観点から、どの需要者とどの供給者とが電力の授受を行ったかを特定していく処理が行われる。電力取引支援システム1では、電力取引管理装置10が、この需要者と供給者とのマッチングを行う機能を有する。具体的には、電力取引支援システム1では、電力取引管理装置10が、需要者91からそれぞれにおける電力消費量A1を取得し、供給者92からそれぞれにおける発電量A2を取得し、複数の需要者兼供給者93からはそれぞれにおける電力消費量A1または発電量A2を取得する。さらに、基幹系統94からの電力を使用している場合には、基幹系統94からの電力の使用量A3を取得する。これらの情報に基づいて、電力取引管理装置10は、需要者-供給者間での電力取引のマッチング(割り当て)を行う。なお、需要者-供給者間での電力取引のマッチング(割り当て)は、所定の時間(例えば、30分)を1単位として、単位時間毎の複数の需要者91、複数の供給者92、及び複数の需要者兼供給者93の電力使用量及び発電量の実績に基づいて行われる。したがって、電力消費量A1及び発電量A2としては、単位時間毎の情報が用いられる。
【0025】
なお、電力取引管理装置10における需要者-供給者間での電力取引のマッチングは、CO2排出量を考慮したものである。電力取引管理装置10によってマッチングを行う対象の需要者には、CO2排出量の削減を希望する者が含まれる。そこで、電力取引管理装置10では、供給者の発電時のCO2排出特性を考慮したマッチングを実施する。また、近年は、環境問題等を鑑みて、需要者にもCO2排出量のための努力が望まれる傾向にある。そこで、電力取引管理装置10では、過去の実績に基づき,需要家の電気の利用方法を考慮したマッチングを実施する。
【0026】
[電力取引管理装置]
図2を参照しながら、電力取引管理装置10についてさらに説明する。
図2に示すように、電力取引管理装置10は、電力情報取得部11、電力情報DB12、契約管理DB13、優先順位決定部14、電力割当部15、割当結果DB16、及び結果出力部17を含んで構成される。
【0027】
電力情報取得部11は、需要者91、供給者92、及び需要者兼供給者93から、電力消費量A1及び発電量A2を取得する。需要者91、供給者92、及び需要者兼供給者93から取得した情報は、需要者電力情報と、供給者電力情報とに区分けして、電力情報DB12にて保持される。
【0028】
電力情報DB12は、需要者電力情報D1及び供給者電力情報D2を保持する。需要者電力情報D1とは、需要者毎且つ単位時間毎に収集された電力消費量に係る情報である。また、供給者電力情報D2とは、供給者毎且つ単位時間毎に収集された発電量に係る情報である。これらの情報は、需要者-供給者間の電力の割当に使用される。
【0029】
契約管理DB13は、需要者及び供給者(需要者兼供給者も含まれる)に関する契約情報を管理する機能を有する。契約管理DB13は、需要者及び供給者の契約情報のうち、少なくとも需要者及び供給者のマッチングを行う際に、需要者及び供給者のそれぞれについてマッチングを行う優先順位を決定するために必要な、優先度に関する情報を保持する。
【0030】
需要者に関する契約情報としては、需要者が電力購入時に支払うオプション料金、契約開始時期等が含まれ得る。本実施形態において需要者が支払うオプション料金とは、CO2排出量の少ない電気を優先して利用するためのものである。本実施形態に係る電力取引支援システム1では、オプション料金を多く支払った需要者から優先してCO2排出量の少ない供給者とのマッチングが行われる。この点は後述する。なお、オプション料金とは異なる情報に基づいて、優先する需要者を決定してもよい。この点は、後述する。このように、契約管理DB13には、供給者とのマッチングに使用される情報が、需要者の契約情報として保持されていてもよい。
【0031】
一方、供給者に関する契約情報としては、供給者が発電する際の発電量に対するCO2排出量、契約開始時期等が含まれ得る。CO2排出量に関する情報は、上述のように需要者がCO2排出量に基づいて供給者を選択する場合に使用される。本実施形態に係る電力取引支援システム1では、CO2排出量の少ない供給者から優先して需要者とのマッチングが行われる。この点は後述する。なお、供給者の契約情報には、過去の発電量の実績情報等が含まれていてもよい。そのほか、契約管理DB13には、需要者とのマッチングに使用される情報が、供給者の契約情報として保持されていてもよい。
【0032】
なお、供給者に関する契約情報には、基幹系統94に関する情報も含まれていてもよい。上記のように、CO2排出量に基づいて優先順位を決定する場合、基幹系統94も供給者の一つとして考慮される。このように、優先順位を決定する際に必要な基幹系統94の優先度に関する情報も契約管理DB13に保持され得る。ただし、基幹系統94については、CO2排出量以外の情報として、例えばダミーの情報を用いることもできる。例えば、基幹系統94について、他の供給者よりも優先度を下げたい場合には、優先度を下げることが可能なダミーの情報を契約管理DB13において保持することによって、優先度の調整を行ってもよい。
【0033】
上記のように、電力情報DB12及び契約管理DB13は、複数の需要者それぞれについて、エネルギー消費量(電力消費量)と取引時に需要者が支払うオプション料金に係る情報を保持する需要者情報保持部としての機能を有する。同時に、電力情報DB12及び契約管理DB13は、複数の供給者それぞれについて、エネルギー供給量(発電量)と、エネルギー生成時のCO2排出特性に係る情報を保持する供給者情報保持部としての機能を有する。
【0034】
優先順位決定部14は、契約管理DB13に保持される情報に基づいて、需要者及び供給者についてマッチングを行う際の優先順位を決定する機能を有する。上述のように、契約管理DB13に保持される情報は、需要者及び供給者毎の、マッチングの優先度を示す情報である。例えば、CO2排出量に着目したマッチングを行う場合、上述のように、需要者についてはオプション料金が高い需要者から順に優先順位を設定し、供給者についてはCO2排出量が少ない供給者から順に優先順位を設定してもよい。
【0035】
図3には、優先順位決定部14によって優先順位が決定された需要者及び供給者の例を示している。
図3(a)は、需要者を優先順位が高い順に並べた需要者リストD11の一例を示していて、
図3(b)は、供給者を優先順位が高い順に並べた供給者リストD12の一例を示している。また、
図3では、電力情報DB12において保持される需要者の電力消費量及び供給者の発電量に係る情報も併せて示している。
【0036】
図3(a)に示す需要者リストD11では、需要者毎のオプション料金に応じて優先順位が定められている。具体的には、オプション料金が5円の需要者Aの優先順位が1位と設定されていて、1円の需要者B、0円の需要者Bが、2位、3位に設定されている。一方、
図3(b)に示す供給者リストD12では、供給者毎のCO
2排出量に応じて優先順位が定められている。具体的には、1kWhあたりのCO
2排出量が最も少ない供給者Dの優先順位が1位と設定されていて、1kWhあたりのCO
2排出量に応じて、供給者E、基幹系統、供給者Fの順に、2位、3位、4位に設定されている。なお、CO
2排出量に着目して優先順位を決定しているので、基幹系統にもCO
2排出量に基づく優先順位が設定されている。
【0037】
図4(a)~
図4(c)は、
図3に示す例とは別の基準によって優先順位を設定する例を示している。
図4(a)は、需要者リストD11の別の例であり、需要者B及び需要者Cのオプション料金がどちらも0円であって同一である例を示している。この場合、オプション料金の次に優先度を決める情報として取り扱う情報を予め設定しておいて、両者の優先順位を決定してもよい。
図4(a)に示す例では、需要者毎の契約時期が示されている。契約時期の早い需要者を優先するという基準を予め持っている場合、
図4(a)に示すように、需要者B、需要者Cの順に優先順位を設定してもよい。
【0038】
図4(b)は、需要者リストD11の別の例である。
図4(b)に示す例では、オプション料金とは別の基準として、取引実績として、過去の所定期間(例えば、直近の1週間、など)において各需要者が取引した電力量が示されている。過去の所定期間における取引実績が多い需要者について、マッチングを優先するという基準を予め持っている場合、
図4(b)に示すように、取引実績のみを用いて優先順位を設定してもよい。なお、ここでは取引実績として取引した電力量を用いた例を示したが、取引実績として取引額を用いることもできる。
【0039】
図4(c)は、供給者リストD12の別の例であり、供給者E及び基幹系統のCO
2排出量が同一である例を示している。この場合、CO
2排出量の次に優先度を決める基準として取り扱う情報を予め設定しておいて、両者の優先順位を決定してもよい。
図4(c)に示す例では、供給者毎の契約時期が示されている。なお、基幹系統の契約時期はダミーの情報であり、直近の年月が設定されているとする。契約時期の早い供給者を優先するという基準を予め持っている場合、
図4(c)に示すように、供給者E、基幹系統の順に優先順位を設定してもよい。また、CO
2排出量が同一の供給者がほかにいる場合、基幹系統よりもその供給者の優先順位が高くなるように、基幹系統の優先度に係る情報としてダミーの情報を使用することとしてもよい。
【0040】
なお、需要者の優先順位の決定方法としては、上記で説明したオプション料金に着目した方法、契約期間の長さに着目した方法、過去の所定期間における取引実績に着目した方法とは異なる方法を用いてもよい。一例としては、過去の所定期間(例えば、一週間)の電力消費量の変動が小さい需要者の優先順位を高く設定する、等の方法を用いてもよい。さらに、これらの手法を組み合わせてもよい。さらに、上述の手法のいずれかのみを用いて優先順位を決めてもよいし、いくつかの手法を組み合わせて優先順位を決めてもよい。
【0041】
また、供給者の優先順位の決定方法としては、上記で説明したCO2排出量に着目した方法、CO2排出量及び契約期間の長さに着目した方法とは異なる方法を用いてもよい。一例としては、エネルギー生成方法に応じて優先順位を設定する方法を用いてもよい。電力の場合、風力、太陽光、バイオマス、蓄電池、ガスエンジン、ガスタービン、EV等の種々の発電方法がある。これらについて、予め優先順位を決めておき、供給者毎の発電方法に基づいて、供給者の優先順位を決めてもよい。また、これに類似の方法として、燃料の種類(例えば、アンモニア、水素、LNG、バイオマス等)に応じて、優先順位を設定することとしてもよい。さらに、過去の所定期間(例えば、一週間)の発電状況の変動(例えば、周波数変動、電圧変動等)が小さい需要者の優先順位を高く設定することとしてもよい。さらに、供給者の発電量の最大値(発電容量)、非常時への対応能力(例えば、非常時に自身に対して電力を供給できる機能を有するか)等に基づいて優先順位を設定することを採用してもよい。さらに、上述の手法のいずれかのみを用いて優先順位を決めてもよいし、いくつかの手法を組み合わせて優先順位を決めてもよい。
【0042】
図2に戻り、電力割当部15は、需要者-供給者間のマッチングを行う機能を有する。マッチングの詳細については後述するが、電力割当部15は、
図3に示す情報を用いてマッチングを実施する。電力割当部15は、優先順位決定部14における決定結果に基づいて、優先順位が高い需要者及び供給者から優先して、需要者と供給者との対応付けを行う割当部としての機能を有する。
【0043】
割当結果DB16は、電力割当部15によるマッチングの結果(割当結果)を保持する機能を有する。割当結果DB16に保持される情報は、必要に応じて、結果出力部17から出力される。
【0044】
結果出力部17は、割当結果DB16に保持される割当結果を出力する機能を有する。出力先は特に限定されず、例えば、需要者または供給者、割当結果に基づいた金銭授受を管理する外部装置等が挙げられる。また、出力方法も特に限定されない。
【0045】
[電力取引管理方法]
次に、
図5~
図11を参照しながら、エネルギー取引管理方法の一例として電力取引管理装置10による電力取引管理方法について説明する。具体的には、電力取引管理装置10により需要者-供給者間のマッチングを行う方法について説明する。
図5及び
図6は上記の手順を説明するフローチャートであり、
図7~
図11は、需要者-供給者間のマッチングを行う際の詳細手順の一例を示す図である。
【0046】
図5に示すように、電力取引管理装置10では、電力情報取得部11が電力消費量・発電量を取得し、電力情報DB12において取得した情報を保管する(ステップS01)。電力情報取得部11は、電力取引管理装置10においてマッチングを行う複数の需要者91、複数の供給者92、複数の需要者兼供給者93のそれぞれから、単位時間毎に電力消費量A1または発電量A2に係る情報を取得する。取得した情報は、電力情報DB12において、需要者電力情報D1及び供給者電力情報D2のいずれかに含まれる状態で保持される。なお、電力情報取得部11が電力消費量・発電量を取得するタイミングは、例えば、単位時間が経過する毎(例えば、30分毎)であってもよいし、所定の間隔毎(例えば、数時間~数日毎)に定期的に過去の複数の単位時間の情報を全て取得する構成であってもよい。
【0047】
次に、電力取引管理装置10では、優先順位決定部14において、契約管理DB13に基づいて需要者及び供給者のそれぞれについて、マッチングの優先順位を決定する(ステップS02)。なお、優先順位の決定(S02)は、単位時間毎に毎回行ってもよいし、特定のタイミングにおいてのみ優先順位を決定する構成としてもよい。例えば、契約管理DB13の情報が更新された際のみ実行することとしてもよい。また、マッチングを行う対象の中に需要者兼供給者が含まれている場合には、単位時間毎に需要者及び供給者のどちらとして取り扱うかが変更される場合があるので、需要者及び供給者の両方に需要者兼供給者が該当することとして、両方の立場での優先順位を決定しておくこととしてもよい。
【0048】
次に、電力取引管理装置10では、電力割当部15において、優先順位に基づいて電力消費量と発電量のマッチング、すなわち、需要者-供給者のマッチングを行う(ステップS03)。マッチングに関する詳細の手順は、後述する。
【0049】
次に、電力取引管理装置10では、割当結果DB16において、割当結果を保持すると共に、必要に応じて結果出力部17から割当結果を出力する(ステップS04)。割当結果の出力タイミングは、例えば、割当結果を取得したい外部装置等からの指示に基づいて行われる構成としてもよいし、単位時間毎の割当結果が得られる度に所定の出力先に出力する構成としてもよい。
【0050】
(需要者-供給者間のマッチングの詳細手順)
電力割当部15による需要者-供給者間のマッチング(割り当て)の詳細手順について説明する。ここでは、
図3において例示した需要者及び供給者の間でマッチングを行う場合について説明する。
【0051】
図6に示すように、電力割当部15は、基幹系統94から供給される電力の使用量を決定する(ステップS11)。
図3(b)では、基幹系統94から調達した電力量が発電量:250kWhとして示されているが、実際の手順としては、基幹系統94からの電力の使用量は、需要者による電力消費量に対する供給者による発電量の不足分が基幹系統94からの電力の使用量となる。したがって、この段階で、電力割当部15は基幹系統94から供給される電力の使用量を確定させる。なお、上記の不足分を算出する方法とは別の方法で、単位時間毎の基幹系統94からの電力の使用量が別途正確に把握できる場合には、このステップは省略してもよい。
【0052】
次に、電力割当部15は、需要者それぞれに決定された優先順位に基づいて需要者を並べると共に、電力情報DB12に保持されている情報に基づいて、各需要者に対応する電力消費量を並べる(ステップS12)。
図3(a)に示す例では、優先順位の上位から順に需要者が並べられているが、優先順位決定部14において需要者毎の優先順位が決定された段階では、優先順位の順には需要者は並べられていない。そこで、電力割当部15では、優先順位に基づいて需要者を並べ、さらに各需要者の電力消費量を対応付ける。この結果、
図3(a)に示す需要者リストD11に対応する情報が得られる。なお、
図7に示す例では、需要者リストD11のうち、供給者とのマッチングに使用しないオプション料金に関する情報は省略されている。このように、マッチングの際には、使用しない情報は需要者リストD11から削除されていてもよい。
【0053】
次に、電力割当部15は、供給者それぞれに決定された優先順位に基づいて供給者を並べると共に、電力情報DB12に保持されている情報に基づいて、各供給者に対応する発電量を並べる(ステップS13)。
図3(a)と同様に、
図3(b)に示す例も優先順位に基づいて供給者を並べたものとなっている。電力割当部15は、優先順位の上位から供給者を並べた後に、各供給者に対応する発電量を対応付ける。この結果、
図3(b)に示す供給者リストD12に対応する情報が得られる。なお、
図7に示す例では、供給者リストD12のおけるCO
2排出量も省略されずに示されている。これは、CO
2排出量自体はマッチングに使用しないものの、需要者毎に対応付けられた電力に応じたCO
2排出量を算出する際に使用されるためである。
【0054】
なお、上記のステップS12,S13は、順序を入れ替えてもよい。また、優先順位決定部14において需要者及び供給者の並び替えを行ってもよく、その場合には、電力割当部15では、ステップS12,S13に対応する処理として、需要者毎の電力消費量及び供給者毎の発電量の対応付けのみを行うこととしてもよい。
【0055】
上記のステップS11~S13を行うことで、電力割当部15では、
図7に示す需要者リストD11、供給者リストD12が作成される。電力割当部15には、この2つのリストに含まれる需要者及び供給者のマッチングを行い、その結果を融通リストD13に当てはめていく処理を行う。融通リストD13は、供給者から需要者への電力の供給量及び当該電力によるCO
2排出量を示すリストである。
図7に示す例では具体的な情報がなく空欄とされているが、この融通リストD13に具体的な需要者-供給者間の対応付けに係る情報を追加していくことでマッチングを実施する。
【0056】
図6に戻り、電力割当部15はステップS14~S16に示す処理を行うことでマッチングを実施する。まず、電力割当部15は優先順位が最上位の需要者と供給者とをマッチングする(ステップS14)。
図7に示す例では、需要者Aと供給者Dとをマッチングさせる。このとき、マッチングさせた結果を、融通リストD13に反映させる。すなわち、
図8の融通リストD13に示すように、供給者Dから需要者Aへ250kWhの電力が供給された、という情報を追加する。なお、このときに、電力割り当てに伴うCO
2排出量を算出して併せて追加してもよい。一例として、
図8では、CO
2排出量(50g-CO2/kWh×250kWh=)12500g-CO2であるという情報が追加されている。
【0057】
次に、マッチングさせた需要者の電力消費量と、供給者の発電量との大小を比較し(ステップS15)、その結果に応じて以降の手順を変更する。
図7に示す例のように需要者Aの電力消費量が、供給者Dの発電量より大きい場合(電力消費量>発電量)、まず、供給者の発電量を需要者に全量割り当て(ステップS21)、これにより、この供給者については割り当て、すなわち、需要者との対応付けが完了したとする(ステップS22)。すなわち、供給者リストD12から、当該供給者Dの行を削除する。一方、需要者については、電力消費量の全てに対して供給者が割り当てられていないため、差分となる割り当てが完了していない電力消費量(割り当て前電力消費量)を算出する(ステップS23)、この結果に基づいて、需要者リストD11における需要者の電力消費量を更新する。この結果、
図7に示すように、需要者リストD11では、需要者Aの電力消費量が更新され、供給者リストD12では供給者Dの行が削除される。一方、融通リストD13には、供給者D-需要者A間での電力の割り当てに係る情報が追加されている。
【0058】
一連の処理(ステップS21~23)の後、割り当て前の電力消費量・発電量がある場合には、電力割当部15は上記の割り当てを繰り返す(ステップS16)。ここでは、ステップS14からの処理を繰り返す。ステップS14からの処理を繰り返すことで、上述の差分となる割り当てが完了していない電力消費量(割り当て前電力消費量)が、次点となる供給者(ここでは供給者E)によって割り当てられることになる。
【0059】
次に、
図8に示す状態で、ステップS14からの処理を行って、最上位の需要者Aと供給者Eとをマッチングさせ、融通リストD13にマッチングの結果を反映する。このとき、需要者Aの電力消費量と、供給者Eの発電量との大小を比較すると、需要者Aの電力消費量が、最上位の供給者Eの発電量よりも小さくなる。この場合(電力消費量<発電量)、まず、需要者の電力消費量全量を供給者の発電量によって割り当て(ステップS24)、これにより、この需要者については割り当て、すなわち、供給者との対応付けが完了したとする(ステップS25)。したがって、需要者リストD11から、当該需要者Aの行を削除する。一方、供給者については、まだ割り当てが完了していない電力があるため、差分となる発電量、すなわち割り当てが完了していない発電量(割り当て前発電量)を算出する(ステップS26)、この結果に基づいて、供給者リストD12における供給者の発電量を更新する。この結果、
図9に示すように、需要者リストD11では、需要者Aの行が削除され、供給者リストD12では供給者Eの発電量が更新される。一方、融通リストD13には、供給者E-需要者A間での電力の割り当てに係る情報が追加される。
【0060】
その後、再び、割り当て前の電力消費量・発電量がある場合には、電力割当部15は上記の割り当てを繰り返す(ステップS16)。ここでは、ステップS14からの処理を繰り返す。ステップS14からの処理を繰り返すことで、上述の差分となる割り当てが完了していない発電量(割り当て前発電量)が、次点となる需要者(ここでは需要者B)によって割り当てられることになる。
【0061】
なお、マッチングさせた需要者の電力消費量と、供給者との発電量とを比較した結果、両者が一致する場合(電力消費量=発電量)、需要者の電力消費量全量を供給者の発電量全量によって割り当てる(ステップS27)。これにより、最上位の需要者及び供給者の両方について割り当て、すなわち対応付けが完了したとする(ステップS28)。したがって、需要者リストD11及び供給者リストD12から、最上位の需要者または供給者の行を削除する。併せて、融通リストD13を更新する。
【0062】
図9に示す状態から、再び、最上位の需要者Bと供給者Eとをマッチングさせ、融通リストD13にマッチングの結果を反映し、さらに、需要者Bの電力消費量と、供給者Eの発電量との大小を比較し、その結果に応じて、需要者リストD11及び供給者リストD12を更新する。この結果、
図10に示すように、融通リストD13に供給者E-需要者B間での電力の割り当てに係る情報が追加されると共に、需要者リストD11及び供給者リストD12が更新される。さらに、この処理を、需要者リストD11から需要者の列が全て削除されると共に供給者リストD12から供給者の列が全て削除されるまで繰り返す。この結果、
図11に示すように、融通リストD13に、全ての需要者及び供給者に係る割り当ての情報が記載された状態となる。これにより、全ての需要者及び供給者に係る割り当てが終了する。
【0063】
[ハードウェア構成]
図12を参照して、電力取引管理装置10のハードウェア構成について説明する。
図12は、電力取引管理装置10のハードウェア構成の一例を示す図である。電力取引管理装置10は、1または複数のコンピュータ100を含む。コンピュータ100は、CPU(Central Processing Unit)101と、主記憶部102と、補助記憶部103と、通信制御部104と、入力装置105と、出力装置106とを有する。電力取引管理装置10は、これらのハードウェアと、プログラム等のソフトウェアとにより構成された1または複数のコンピュータ100によって構成される。
【0064】
電力取引管理装置10が複数のコンピュータ100によって構成される場合には、これらのコンピュータ100はローカルで接続されてもよいし、インターネット又はイントラネットなどの通信ネットワークを介して接続されてもよい。この接続によって、論理的に1つの電力取引管理装置10が構築される。
【0065】
CPU101は、オペレーティングシステムやアプリケーション・プログラムなどを実行する。主記憶部102は、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)により構成される。補助記憶部103は、ハードディスク及びフラッシュメモリなどにより構成される記憶媒体である。補助記憶部103は、一般的に主記憶部102よりも大量のデータを記憶する。電力取引管理装置10を構成する各部の少なくとも一部は、補助記憶部103によって実現される。通信制御部104は、ネットワークカード又は無線通信モジュールにより構成される。電力取引管理装置10を構成する各部の少なくとも一部は、通信制御部104によって実現されてもよい。入力装置105は、キーボード、マウス、タッチパネル、及び、音声入力用マイクなどにより構成される。出力装置106は、ディスプレイ及びプリンタなどにより構成される。例えば、電力取引管理装置10は、結果出力部17による出力内容等をディスプレイ等に表示してもよい。
【0066】
補助記憶部103は、予め、プログラム110及び処理に必要なデータを格納している。プログラム110は、電力取引管理装置10の各機能要素をコンピュータ100に実行させる。プログラム110によって、例えば、上述したステップS01からステップS04に係る処理がコンピュータ100において実行される。例えば、プログラム110は、CPU101又は主記憶部102によって読み込まれ、CPU101、主記憶部102、補助記憶部103、通信制御部104、入力装置105、及び出力装置106の少なくとも1つを動作させる。例えば、プログラム110は、主記憶部102及び補助記憶部103におけるデータの読み出し及び書き込みを行う。
【0067】
プログラム110は、例えば、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリなどの有形の記録媒体に記録された上で提供されてもよい。プログラム110は、データ信号として通信ネットワークを介して提供されてもよい。
【0068】
なお、プログラム110は、具体的には、複数の需要者それぞれについて、エネルギー消費量と、取引時に需要者が支払うオプション料金に係る情報を保持することと、複数の供給者それぞれについて、エネルギー供給量と、エネルギー生成時のCO2排出特性に係る情報を保持することと、複数の需要者それぞれにおけるオプション料金に係る情報に基づいて、複数の需要者それぞれにおける供給者との対応付けの優先順位を決定すると共に、複数の供給者それぞれにおけるCO2排出特性に係る情報に基づいて、複数の供給者それぞれにおける需要者との対応付けの優先順位を決定することと、決定された優先順位に基づいて、優先順位が高い需要者及び供給者から優先して、需要者と供給者との対応付けを行うことと、をコンピュータ100に実行させるプログラムであってもよい。
【0069】
また、プログラム110の別の例として、複数の需要者それぞれについて、エネルギー消費量と、需要者による過去の取引実績に係る情報を保持することと、複数の供給者それぞれについて、エネルギー供給量と、エネルギー生成時のCO2排出特性に係る情報を保持することと、複数の需要者それぞれにおける取引実績に係る情報に基づいて、複数の需要者それぞれにおける供給者との対応付けの優先順位を決定すると共に、複数の供給者それぞれにおけるCO2排出特性に係る情報に基づいて、複数の供給者それぞれにおける需要者との対応付けの優先順位を決定することと、決定された優先順位に基づいて、優先順位が高い需要者及び供給者から優先して、需要者と供給者との対応付けを行うことと、をコンピュータ100に実行させるプログラムであってもよい。
【0070】
[作用]
上記の電力取引管理装置10及び電力取引管理方法によれば、需要者については、需要者が支払うオプション料金に基づいて供給者との対応付けに係る優先順位が決定される。また、供給者については、エネルギー生成時のCO2排出特性に基づいて需要者との対応付けに係る優先順位が決定される。そして、決定された優先順位に基づいて、優先順位が高い需要者及び供給者から優先して、需要者と供給者との対応付けが行われる。このような構成とすることで、需要者が支払うオプション料金に基づいて設定された需要者の優先順位と、CO2排出特性に基づいて設定された優先順位に基づいた供給者の優先順位と、を考慮して、需要者と供給者との対応付けを行うことができる。したがって、需要者と供給者とのエネルギー取引を仲介する際に、CO2排出量を考慮した適切な割り当てを実行することが可能となる。
【0071】
従来から需要者と供給者との取引を支援する方法が種々検討されているが、CO2排出量に着目した対応付けについては十分な検討が行われていなかった。これに対して、上記のように、需要者及び供給者についてそれぞれ優先順位を設定し、優先順位の高い者から対応付けを行う構成とし、特に、供給者についてはCO2排出特性に基づく優先順位の設定を行うことで、CO2排出量を考慮した対応付けを実現することができる。また、需要者の優先順位をオプション料金に基づいて設定することで、例えば、オプション料金が高く設定している需要者についてはCO2排出量の削減が可能な供給者を割り当てることが可能となるなど、需要者の要望にも対応した割り当てが可能となる。
【0072】
ここで、優先順位決定部14において、複数の需要者それぞれにおけるエネルギーの取引の契約開始時期に係る情報にも基づいて、優先順位を決定してもよい。このような構成とすることで、例えば、オプション料金が同じ需要者が複数いる場合に、エネルギーの取引の契約開始時期が早い需要者の優先順位を高く設定することなどが可能となる。
【0073】
また、
図4(b)でも説明したように、電力取引管理装置10及び電力取引管理方法では、需要者に係る優先順位を決定する際に、複数の需要者それぞれにおける取引実績に係る情報を用いることも可能である。この場合も、オプション料金を考慮した優先順位を設定する場合と同様に、需要者と供給者とのエネルギー取引を仲介する際に、CO
2排出量を考慮した適切な割り当てを実行することが可能となる。また、需要者の優先順位を取引実績に基づいて設定することで、例えば、取引実績が多い需要者についてはCO
2排出量の削減が可能な供給者を割り当てることが可能となるなど、需要者の取引状況にも対応した割り当てが可能となる。
【0074】
優先順位決定部14では、複数の供給者それぞれにおけるエネルギーの生成方法に係る情報にも基づいて、前記複数の供給者それぞれにおける需要者との対応付けの優先順位を決定してもよい。このような構成とすることで、例えば、特定のエネルギーの生成方法によってエネルギー生成を行う供給者の優先順位を高く設定することなどが可能となる。このように、エネルギーの生成方法を考慮した優先順位の調整が可能となる。
【0075】
電力割当部15は、需要者と供給者との対応付けを行う際に、優先順位が最上位の需要者の前記エネルギー消費量と、優先順位が最上位の前記供給者の前記エネルギー供給量との差分がある場合に、優先順位が次点となる需要者または供給者によって補完する対応付けを行ってもよい。このような構成とすることで、優先順位が最上位の需要者のエネルギー消費量と、優先順位が最上位の供給者のエネルギー供給量とが一致しない場合であっても、優先順位が次点となる需要者または供給者によって補完する対応付けを行うことができる。したがって、優先順位が最上位の需要者のエネルギー消費量と、優先順位が最上位の供給者のエネルギー供給量とが一致しない場合にも適切な割り当てを実現することができる。
【0076】
[変形例]
以上、本開示は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0077】
例えば、上記実施形態では、エネルギーとして電力を取り扱う場合について説明したが、上述のエネルギー取引管理装置は、例えば、ガス等の電力以外のエネルギーに係る需要者-供給者間の取引にも適用することができる。
【0078】
また、上記実施形態において説明したマッチングの方法(
図6~
図11で示した方法)は一例であり、マッチングの詳細の手順は適宜変更することができる。
【0079】
また、上記実施形態では、CO2排出特性が良好である(CO2排出量が少ない)供給者について優先順位を高く設定したが、優先順位は、CO2排出特性の高低の順に設定されていればよく、例えば、CO2排出特性が低い(CO2排出量が多い)供給者について優先順位を高くしてもよい。この場合、CO2排出量が大きくなることを許容する需要者について優先順位を高くするように優先順位を決定した上で、上記実施形態と同様に優先順位が高い需要者・供給者からマッチングを行えばよい。この場合も、CO2排出量の削減が望まれる需要者に対して、CO2排出特性が良好な供給者をマッチングすることが可能となる。
【0080】
[その他]
本開示は、CO2排出量を考慮した需要者-供給者間の対応付けを行うことによって、CO2排出量を低減したエネルギーの拡大に対してインセンティブを与えられる可能性がある。このため、本開示は、持続可能な開発目標(SDGs)の目標7「すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する」に貢献することができる。
【符号の説明】
【0081】
1 電力取引支援システム
10 電力取引管理装置(エネルギー取引管理装置)
11 電力情報取得部
12 電力情報DB(需要者情報保持部、供給者情報保持部)
13 契約管理DB(需要者情報保持部、供給者情報保持部)
14 優先順位決定部
15 電力割当部(割当部)
17 結果出力部
91 需要者
92 供給者
93 需要者兼供給者
94 基幹系統