(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127834
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】重包装用袋の圧縮耐性試験方法
(51)【国際特許分類】
G01N 3/08 20060101AFI20230907BHJP
【FI】
G01N3/08
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022031762
(22)【出願日】2022-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000201641
【氏名又は名称】全国農業協同組合連合会
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(72)【発明者】
【氏名】柿沼 成二
(72)【発明者】
【氏名】河瀬 直寿
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 正徳
(72)【発明者】
【氏名】井上 高志
(72)【発明者】
【氏名】渡部 智恵美
(72)【発明者】
【氏名】古屋 拓真
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 友香
(72)【発明者】
【氏名】濱田 晋介
(72)【発明者】
【氏名】穂苅 健吾
【テーマコード(参考)】
2G061
【Fターム(参考)】
2G061AA02
2G061AB01
2G061BA15
2G061CA14
2G061CB09
2G061CC11
2G061DA01
2G061EA01
2G061EA10
2G061EB03
(57)【要約】
【課題】重包装用袋の圧縮耐性を適切かつ簡易に評価することが可能な重包装用袋の圧縮耐性試験方法を提供する。
【解決手段】内容物を充填して封緘した状態の重包装用袋8を、平坦な上面6をもつ下部支持台5の上面6に、あらかじめ設定された3段以上の所定段数、上下方向に積み重ね、平坦な下面7をもつ上部水平板4を積み重ね状態の重包装用袋8の上側に配置し、その上部水平板4をプレス機1で下方に押圧することで、積み重ね状態の重包装用袋8に圧縮荷重を負荷し、重包装用袋8が破袋するまで圧縮荷重を負荷したときの圧縮荷重の大きさ、または、所定の圧縮荷重を負荷したときの重包装用袋8の破袋の有無を検査する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クラフト紙またはポリエチレンフィルムで形成された重包装用袋(8)の圧縮耐性を試験する重包装用袋の圧縮耐性試験方法であって、
内容物を充填して封緘した状態の前記重包装用袋(8)を、平坦な上面(6)をもつ下部支持台(5)の前記上面(6)に、あらかじめ設定された3段以上の所定段数、上下方向に積み重ね、
平坦な下面(7)をもつ上部水平板(4)を積み重ね状態の前記重包装用袋(8)の上側に配置し、その上部水平板(4)をプレス機(1)で下方に押圧することで、積み重ね状態の前記重包装用袋(8)に圧縮荷重を負荷し、
前記重包装用袋(8)が破袋するまで前記圧縮荷重を負荷したときの前記圧縮荷重の大きさ、または、所定の前記圧縮荷重を負荷したときの前記重包装用袋(8)の破袋の有無を検査する、
重包装用袋の圧縮耐性試験方法。
【請求項2】
前記所定段数を、5段以下の範囲に設定した請求項1に記載の重包装用袋の圧縮耐性試験方法。
【請求項3】
前記所定段数を、3段に設定した請求項1または2に記載の重包装用袋の圧縮耐性試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、重包装用袋の圧縮耐性試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
米、麦などの穀物や農業用の肥料などの輸送および保管を行なうために、クラフト紙またはポリエチレンフィルムで形成された重包装用袋(いわゆる重袋)が使用される。この重包装用袋は、1袋につき20kg~30kgの内容物を充填して使用されることが多い。そして、
図4に示すように、内容物を充填して封緘した状態の重包装用袋8は、数十段の高さに積み重ねた状態で、数ヶ月~数年といった長期間にわたって保管されることがあり、この使用状態において破袋を生じない圧縮耐性が求められる。
【0003】
ここで一般に、重包装用袋8の圧縮耐性の評価は、内容物を充填して封緘した状態の重包装用袋8を実際に数十段の高さに積み上げて使用し、その使用の結果、現に破袋を生じないかどうかを確認することで行われていた。そのため、例えば、既に使用実績のある重包装用袋8とは異なる新規の仕様をもつ重包装用袋8’の使用を検討する場合、その新規の重包装用袋を、実際の使用状態で使用したときに破袋を生じずに使用できるかどうかを、使用前に適切に評価する方法が無い状況であった。
【0004】
一方、重包装用袋の破袋評価方法として、特許文献1の方法が提案されている。この特許文献1の破袋評価方法は、重包装用袋の袋本体の試験片を準備し、その試験片を引張試験機にかけることで重包装用袋の破袋評価を行なうものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の方法は、袋本体の試験片のみに基づく評価方法なので、実際の使用状態における重包装用袋の圧縮耐性を知ることが難しい。すなわち、実際の使用状態において重包装用袋が破袋するかどうかは、負荷される荷重の大きさと袋本体の材質のみで決まるものではなく、袋本体に充填される内容物の仕様(内容物の粒の大きさ、形状、硬さなど)によっても左右されるので、袋本体の試験片のみに基づいては、実際の使用状態における重包装用袋の圧縮耐性を知ることが難しい。
【0007】
そこで、本願の発明者は、実際に内容物を充填して封緘した状態の重包装用袋のサンプルを準備し、そのサンプルにプレス機で圧縮荷重を負荷することで、重包装用袋の圧縮耐性を評価する試験を社内で行なった。
【0008】
具体的には、平坦な上面をもつ下部支持台の上に、内容物を充填して封緘した状態の重包装用袋のサンプルを載置し、そのサンプルの上方から、平坦な下面をもつ上部水平板をプレス機で下降させ、その上部水平板でサンプルに圧縮荷重を負荷し、サンプルが破袋するまで圧縮荷重を負荷したときの圧縮荷重の大きさを検査する試験を行なった。
【0009】
この試験の結果、内容物を充填して封緘した状態の重包装用袋のサンプルを下部支持台の上面に1袋だけ載置して試験を行なった場合と、下部支持台の上面にサンプルを2段以上積み重ねて試験を行なった場合とで、サンプルが破袋するときの圧縮荷重に大きな差が生じることが明らかとなった。
【0010】
すなわち、サンプルを1段だけ載置して試験を行なったときは、サンプルに負荷する圧縮荷重を大きくしてもなかなか破袋せず、相当に大きい圧縮荷重を負荷しなければ破袋しなかったのに対し、サンプルを2段以上積み重ねて試験を行なったときは、1段だけ載置したときの破袋荷重よりも大幅に小さい荷重(具体的には、1段だけ載置したときの破袋荷重の約7割程度かそれよりも小さい圧縮荷重)で破袋する傾向があることが分かった。
【0011】
このような傾向が生じる原因は、次のように考えられる。すなわち、サンプルを1段だけ載置して試験を行なったとき、そのサンプルは、下部支持台の上面に直接載置され、かつ、上部水平板に直接接触する。ここで、サンプルの下面は、下部支持台の上面(平坦面)で比較的広い面積で均一に分散して支持されるので、サンプルの袋本体に局所的な負荷が加わりにくく、破袋しにくい。また、サンプルの上面は、プレス機で下降する上部水平板の下面(平坦面)で比較的広い面積で均一に分散して押圧されるので、サンプルの袋本体に局所的な負荷が加わりにくく、破袋しにくい。この2つの作用によって、サンプルを1段だけ載置して試験を行なったときは、サンプルに負荷する圧縮荷重を大きくしてもなかなか破袋せず、相当に大きい圧縮荷重を負荷しなければ破袋しなくなったものと考えられる。
【0012】
この発明が解決しようとする課題は、重包装用袋の圧縮耐性を適切かつ簡易に評価することが可能な重包装用袋の圧縮耐性試験方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するため、この発明では、以下の構成の重包装用袋の圧縮耐性試験方法を提供する。
クラフト紙またはポリエチレンフィルムで形成された重包装用袋の圧縮耐性を試験する重包装用袋の圧縮耐性試験方法であって、
内容物を充填して封緘した状態の前記重包装用袋を、平坦な上面をもつ下部支持台の前記上面に、あらかじめ設定された3段以上の所定段数、上下方向に積み重ね、
平坦な下面をもつ上部水平板を、積み重ね状態の前記重包装用袋の上方からプレス機で下降させ、その上部水平板で積み重ね状態の前記重包装用袋に圧縮荷重を負荷し、
前記重包装用袋が破袋するまで前記圧縮荷重を負荷したときの前記圧縮荷重の大きさ、または、所定の前記圧縮荷重を負荷したときの前記重包装用袋の破袋の有無を検査する、
重包装用袋の圧縮耐性試験方法。
【0014】
この構成の重包装用袋の圧縮耐性試験方法を採用すると、内容物を充填して封緘した状態の重包装用袋を3段以上積み重ねるので、最上段の重包装用袋と最下段の重包装用袋の間に位置する重包装用袋は、その下側にある重包装用袋の上面で支持されるとともに、その上側にある重包装用袋の下面で押圧されることとなり、最上段の重包装用袋や最下段の重包装用袋よりも袋本体に局所的な負荷がかかりやすくなる。そして、実際の使用状態に近いのは、最上段や最下段の重包装用袋ではなく、最上段と最下段の間に位置する重包装用袋である。そのため、内容物を充填して封緘した状態の重包装用袋を1段または2段として同様の圧縮耐性試験を行なうよりも、重包装用袋の圧縮耐性を適切に評価することが可能である。しかも、プレス機を使用して圧縮荷重を負荷するので、数十段の高さに重包装用袋を積み上げるといったような重包装用袋の実際の使用状態を再現する必要がなく、重包装用袋の圧縮耐性試験を簡易に行なうことが可能である。
【0015】
前記所定段数は、5段以下の範囲に設定すると好ましい。
【0016】
このようにすると、重包装用袋の圧縮耐性の試験結果を安定させることができる。すなわち、6段以上の高さに重包装用袋を積み重ね、同様の圧縮耐性試験を行なうことも可能であるが、6段以上の高さに積み重ねる場合、6段以上の重包装用袋を上下方向に完全に真っ直ぐに揃えることが難しく、重包装用袋の水平方向の位置ずれが生じやすい。そして、6段以上の高さに積み重ねた重包装用袋に水平方向の位置ずれがあると、その位置ずれによって、重包装用袋の荷重の負荷状態が大きく変化するので、重包装用袋の圧縮耐性の試験結果が不安定となったり、重包装用袋のバランスが崩れて倒壊したりするおそれがある。これに対し、3段以上5段以下の範囲で重包装用袋を積み重ねると、重包装用袋を上下方向に真っ直ぐに揃えることが容易であり、重包装用袋の水平方向の位置ずれが生じにくいので、重包装用袋の圧縮耐性の試験結果が安定し、重包装用袋のバランスが崩れて倒壊する危険性を確実になくすことができる。
【0017】
前記所定段数は、3段に設定すると好ましい。
【0018】
このようにすると、圧縮耐性試験に使用する重包装用袋の袋数を最小限に抑えることができ、経済的である。また、重包装用袋を上下方向に真っ直ぐに揃えることが容易であり、重包装用袋の水平方向の位置ずれが生じにくく、重包装用袋の圧縮耐性の試験結果を最も効果的に安定させることができる。
【発明の効果】
【0019】
この発明の重包装用袋の圧縮耐性試験方法を採用すると、内容物を充填して封緘した状態の重包装用袋を3段以上積み重ねるので、最上段の重包装用袋と最下段の重包装用袋の間に位置する重包装用袋は、その下側にある重包装用袋の上面で支持されるとともに、その上側にある重包装用袋の下面で押圧されることとなり、最上段の重包装用袋や最下段の重包装用袋よりも袋本体に局所的な負荷がかかりやすくなる。そして、実際の使用状態に近いのは、最上段や最下段の重包装用袋ではなく、最上段と最下段の間に位置する重包装用袋である。そのため、内容物を充填して封緘した状態の重包装用袋を1段または2段として同様の圧縮耐性試験を行なうよりも、重包装用袋の圧縮耐性を適切に評価することが可能である。しかも、プレス機を使用して圧縮荷重を負荷するので、数十段の高さに重包装用袋を積み上げるといったような重包装用袋の実際の使用状態を再現する必要がなく、重包装用袋の圧縮耐性試験を簡易に行なうことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】この発明の実施形態にかかる重包装用袋の圧縮耐性試験方法で使用するプレス機に、内容物を充填して封緘した状態の重包装用袋をセットした状態を示す図
【
図2】
図1の上部水平板をプレス機で下降させ、その上部水平板で積み重ね状態の重包装用袋に圧縮荷重を負荷した状態を示す図
【
図3】
図2の上部水平板から重包装用袋に負荷される圧縮荷重を大きくし、重包装用袋が破袋したときの状態を示す図
【
図5】重包装用袋のサンプルを1段だけ載置して圧縮耐性試験を行なったときの破袋前のサンプルを撮影した写真
【
図6】重包装用袋のサンプルを1段だけ載置して圧縮耐性試験を行なったときの破袋後のサンプルを撮影した写真
【
図7】重包装用袋のサンプルを2段積み重ねて圧縮耐性試験を行なったときの破袋前のサンプルを撮影した写真
【
図8】重包装用袋のサンプルを2段積み重ねて圧縮耐性試験を行なったときの破袋後のサンプルを撮影した写真
【
図9】重包装用袋のサンプルを3段積み重ねて圧縮耐性試験を行なったときの破袋前のサンプルを撮影した写真
【
図10】重包装用袋のサンプルを3段積み重ねて圧縮耐性試験を行なったときの破袋後のサンプルを撮影した写真
【
図11】重包装用袋のサンプルを5段積み重ねて圧縮耐性試験を行なったときの破袋前のサンプルを撮影した写真
【
図12】重包装用袋のサンプルを5段積み重ねて圧縮耐性試験を行なったときの破袋後のサンプルを撮影した写真
【
図13】重包装用袋のサンプルを6段積み重ねて圧縮耐性試験を行なったときの圧縮荷重を負荷する前のサンプルを撮影した写真
【
図14】重包装用袋のサンプルを6段積み重ねて圧縮耐性試験を行なったときにサンプルがバランスを崩して倒壊しはじめた状態を撮影した写真
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1に、この発明の実施形態にかかる重包装用袋の圧縮耐性試験方法で使用するプレス機1を示す。このプレス機1は、油圧シリンダ2で昇降するロッド3と、ロッド3の下端に連結された上部水平板4と、上部水平板4の下方に配置された下部支持台5とを有する。ロッド3には、図示しない荷重センサが取り付けられ、ロッド3に負荷される上下方向の圧縮荷重を測定することが可能となっている。下部支持台5の上面6は、突起や溝などのない平坦面とされている。上部水平板4の下面7も、突起や溝などのない平坦面とされている。
【0022】
この実施形態にかかる重包装用袋の圧縮耐性試験は、次のようにして実施することができる。まず、下部支持台5の上面6に、内容物を充填して封緘した状態の重包装用袋8を載置する。重包装用袋8は、クラフト紙またはポリエチレンフィルムからなる扁平な筒体の一端と他端を閉じた袋である。重包装用袋8に充填された内容物は、例えば、米、麦などの穀物や農業用の肥料である。
【0023】
重包装用袋8は、あらかじめ設定された3段以上5段以下(好ましくは3段以上4段以下、より好ましくは3段)の所定段数、下部支持台5の上面6に水平に寝かせた姿勢で、上下方向に積み重ねる。上部水平板4は、寝かせた姿勢の重包装用袋8の上下方向の投影面積よりも大きい面積を有するものを使用している。
【0024】
次に、
図2に示すように、上部水平板4を、重包装用袋8の上方から油圧シリンダ2で下降させ、その上部水平板4で積み重ね状態の重包装用袋8に圧縮荷重を負荷し、この荷重負荷により、重包装用袋8が破袋するまで圧縮荷重を負荷したときの圧縮荷重の大きさを検査する試験(破袋荷重測定試験)、または、所定の圧縮荷重を負荷したときの重包装用袋8の破袋の有無を検査する試験(耐破袋性試験)を行なう。
【0025】
ここで、前者の試験、すなわち重包装用袋8が破袋するまで圧縮荷重を負荷したときの圧縮荷重の大きさを検査する試験(破袋荷重測定試験)は、上部水平板4から積み重ね状態の重包装用袋8に負荷する圧縮荷重の大きさを次第に増加させ、
図3に示すように、重包装用袋8に破袋が生じたときの圧縮荷重の大きさ(以下「破袋荷重」という)を測定する試験である。この試験により、例えば、既に使用実績のある重包装用袋8とは異なる新規の仕様をもつ重包装用袋8’の使用を検討する場合、その新規の重包装用袋8’を、実際の使用状態で使用したときに破袋を生じずに使用できるかどうかを、使用前に適切に評価することが可能となる。具体的には、上述の圧縮耐性試験方法で、既に使用実績のある重包装用袋8の破袋荷重の大きさと、既に使用実績のある重包装用袋8とは仕様の異なる新規の重包装用袋8’の破袋荷重の大きさとを検査する。そして、その検査で得られた、既に使用実績のある重包装用袋8の破袋荷重の大きさと、新規の重包装用袋8’の破袋荷重の大きさとを比較することで、新規の仕様をもつ重包装用袋8’を、実際の使用状態で使用したときに破袋を生じずに使用できるかどうかを、使用前に評価することができる。
【0026】
また、後者の試験、すなわち所定の圧縮荷重を負荷したときの重包装用袋8の破袋の有無を検査する試験(耐破袋性試験)は、実際の使用において負荷されることが想定される圧縮荷重を超える大きさの荷重を、一定時間、上部水平板4から重包装用袋8に継続して負荷したときに、重包装用袋8に破袋が生じないかどうかを検査する試験である。この試験により、例えば、既に使用実績のある重包装用袋8とは異なる新規の仕様をもつ重包装用袋8’の使用を検討する場合、その新規の重包装用袋8’を、実際の使用状態で使用したときに破袋を生じずに使用できるかどうかを、使用前に適切に評価することが可能となる。具体的には、実際の使用実績において負荷されることが想定される圧縮荷重(例えば20kgの内容物を充填した重包装用袋8’を30段の高さに積み重ねることが想定される場合、20kg×(30-1)段=580kg)に安全係数(1よりも大きい値。例えば1.8)を乗じた大きさの荷重(580kg×1.8=1044kg)を、3段に積み重ねた状態の新規の重包装用袋8’
にプレス機1で6時間継続して負荷し、このときに重包装用袋8’に破袋が生じないかどうかを検査することで、新規の仕様をもつ重包装用袋8’を、実際の使用状態で使用したときに破袋を生じずに使用できるかどうかを、使用前に評価することができる。
【0027】
この実施形態の方法で重包装用袋8の圧縮耐性試験を行なうと、重包装用袋8を1段または2段として同様の圧縮耐性試験を行なうよりも、重包装用袋8の圧縮耐性を適切に評価することが可能である。
【0028】
すなわち、重包装用袋8の段数を1段または2段として同様の圧縮耐性試験を行なった場合、重包装用袋8を3段以上積み重ねて圧縮耐性試験を行なった場合よりも、重包装用袋8が破袋しにくい(破袋するときの圧縮荷重が大きい)傾向にある。このような傾向が生じる原因は、次のように考えられる。すなわち、重包装用袋8を複数段積み重ねたとき、最下段の重包装用袋8の下面は、下部支持台5の平坦な上面6で支持されるので、比較的広い面積で均一に分散して支持され、その結果、袋本体に局所的な負荷がかかりにくくなり、破袋を生じにくい。同様に、上部水平板4をプレス機1で下方に押圧することで積み重ね状態の重包装用袋8に圧縮荷重を負荷したとき、最上段の重包装用袋8の上面は、上部水平板4の平坦な下面7で押圧されるので、比較的広い面積で均一に分散して押圧され、その結果、袋本体に局所的な負荷がかかりにくくなり、破袋を生じにくい。これに対し、最上段と最下段の間に位置する重包装用袋8は、その下側にある重包装用袋8の上面で支持されるとともに、その上側にある重包装用袋8の下面で押圧されるので、袋本体に局所的な負荷がかかりやすくなり、その結果、破袋が生じやすくなる。そして、実際の使用状態に近いのは、最上段や最下段の重包装用袋8ではなく、最上段と最下段の間に位置する重包装用袋8であると考えられる。そのため、重包装用袋8を3段以上積み重ねて上記の圧縮耐性試験を行なうと、重包装用袋8を1段または2段として同様の圧縮耐性試験を行なうよりも、重包装用袋8の圧縮耐性を適切に評価することが可能である。
【0029】
また、この実施形態の圧縮耐性試験方法は、プレス機1を使用して圧縮荷重を負荷するので、数十段の高さに重包装用袋8を積み上げるといったような重包装用袋8の実際の使用状態を再現する必要がなく、重包装用袋8の圧縮耐性試験を簡易に行なうことが可能である。
【0030】
また、この実施形態の圧縮耐性試験方法は、重包装用袋8の積み重ねの段数を5段以下(好ましくは4段以下)の範囲に設定しているので、重包装用袋8の圧縮耐性の試験結果が安定している。すなわち、6段以上の高さに重包装用袋8を積み重ね、同様の圧縮耐性試験を行なうことも可能であるが、6段以上の高さに積み重ねる場合、6段以上の重包装用袋8を上下方向に完全に真っ直ぐに揃えることが難しく、重包装用袋8の水平方向の位置ずれが生じやすい。そして、6段以上の高さに積み重ねた重包装用袋8に水平方向の位置ずれがあると、その位置ずれに起因して、重包装用袋8の圧縮耐性の試験結果が不安定となったり、重包装用袋8のバランスが崩れて倒壊したりするおそれがある。これに対し、3段以上5段以下(好ましくは4段以下)の範囲で重包装用袋8を積み重ねると、重包装用袋8を上下方向に真っ直ぐに揃えることが容易であり、重包装用袋8の水平方向の位置ずれが生じにくいので、重包装用袋8の圧縮耐性の試験結果が安定し、重包装用袋8のバランスが崩れて倒壊する危険性を確実になくすことができる。
【0031】
重包装用袋8の積み重ねの段数は、上記実施形態のように、3段に設定すると好ましい。このようにすると、圧縮耐性試験に使用する重包装用袋8の袋数を最小限に抑えることができ、経済的である。また、重包装用袋8を上下方向に真っ直ぐに揃えることが容易であり、重包装用袋8の水平方向の位置ずれが生じにくく、重包装用袋8の圧縮耐性の試験結果を最も効果的に安定させることができる。
【0032】
上記実施形態では、ロッド3の下端に上部水平板4を連結した例を説明したが、ロッド3と上部水平板4が分離した構成を採用してもよい。すなわち、積み重ね状態の重包装用袋8の上端に上部水平板4を載せ、その上部水平板4の上面をロッド3の下端で下方に押圧するようにしてもよい。
【0033】
上記実施形態の圧縮耐性試験方法を採用することで、重包装用袋の圧縮耐性を適切に評価可能となることを確認するため、実際に内容物を充填して封緘した状態の重包装用袋のサンプルを準備し、そのサンプルの積み重ね段数を変更し、それぞれの積み重ね段数において重包装用袋の圧縮耐性を評価する試験を行なった。
【0034】
<試験1>
クラフト紙で形成された袋(米麦用紙袋、第一種)を(23±1)℃、(50±2)%RHの条件で調温調湿し、その後、玄米30kgを充填したものを、重包装用袋8のサンプルとして使用し、上記試験を行なった。その試験結果を以下に示す。
【0035】
【0036】
上記試験結果に示すように、サンプルを1段だけ載置して試験を行なったときは、サンプルに負荷する圧縮荷重を大きくしてもなかなか破袋せず、相当に大きい圧縮荷重(約80kN)を負荷しなければ破袋しなかったのに対し、サンプルを2段以上(具体的には、2段、3段、5段)に積み重ねて試験を行なったときは、1段だけ載置したときの破袋荷重よりも大幅に小さい荷重(具体的には、1段だけ載置したときの破袋荷重の約7割程度かそれよりも小さい圧縮荷重)で破袋した。
【0037】
また、
図13、
図14に示すように、6段のサンプルを積み重ねて試験を行なったときは、サンプルにプレス機で圧縮荷重を負荷し、その圧縮荷重を増加させて27kNに到達した時点で、6段に積み重ねたサンプルがバランスを崩して倒壊しはじめたため、試験を中止した。
【0038】
サンプルを1段だけ載置して試験を行なったときに、相当に大きい圧縮荷重(約80kN)を負荷しなければ破袋しなかった原因は、次のように考えられる。すなわち、
図5、
図6に示すように、サンプルを1段だけ載置して試験を行なったとき、そのサンプルは、下部支持台の上面に直接載置され、かつ、上部水平板に直接接触する。ここで、サンプルの下面は、下部支持台の上面(平坦面)で比較的広い面積で均一に分散して支持されるので、サンプルの袋本体に局所的な負荷が加わりにくく、破袋しにくい。また、サンプルの上面は、プレス機で下降する上部水平板の下面(平坦面)で比較的広い面積で均一に分散して押圧されるので、サンプルの袋本体に局所的な負荷が加わりにくく、破袋しにくい。この2つの作用によって、サンプルを1段だけ載置して試験を行なったときは、サンプルに負荷する圧縮荷重を大きくしてもなかなか破袋せず、相当に大きい圧縮荷重を負荷しなければ破袋しなくなったものと考えられる。
【0039】
また、
図7、
図8に示すように、サンプルを2段積み重ねて試験を行なったときは、2段のサンプルがいずれも破袋し、
図9、
図10に示すように、サンプルを3段積み重ねて試験を行なったときは、上から2段目のサンプルおよび最下段のサンプルが破袋し、
図11、
図12に示すように、サンプルを5段積み重ねて試験を行なったときは、上から2段目のサンプルおよび最下段のサンプルが破袋した。ここで、サンプルを3段以上積み重ねて試験を行なったときに、最下段のサンプルの下面は、下部支持台の上面(平坦面)で比較的広い面積で均一に分散して支持されるので、サンプルの袋本体に局所的な負荷が加わりにくく、また、最上段のサンプルの上面は、上部水平板の下面(平坦面)で比較的広い面積で均一に分散して押圧されるので、サンプルの袋本体に局所的な負荷が加わりにくく、一方、最上段と最下段の間に位置するサンプルは、その下側にあるサンプルの上面で支持されるとともに、その上側にあるサンプルの下面で押圧されるので、袋本体に局所的な負荷がかかりやすくなっていると考えられる。
【0040】
そして、重包装用袋の実際の使用状態における圧縮耐性を最も的確にあらわしているのは、サンプルを3段以上積み重ねたときに、下部支持台に直接載置されるサンプルと、プレス機で下降する上部水平板の下面に直接接触するサンプルとの間に存在するサンプル(例えば、
図10に示す上から2段目の破袋したサンプルや、
図12に示す上から2段目の破袋したサンプル)であると考えられる。
【0041】
<試験2>
ポリエチレンフィルム製で形成された袋(無調湿)に粒状の肥料20kgを充填したものを、重包装用袋8のサンプルとして使用し、上記試験を行なった。その試験結果を以下に示す。
【0042】
【0043】
上記試験結果に示すように、1段だけサンプルを載置して試験を行なったときは、試験機で負荷しうる最大の荷重である99.5kNを負荷したときにも破袋(内容物の漏れを伴う袋の破れ)は生じず、微細な穴が袋に生じるにとどまった。また、サンプルを2段に積み重ねて試験を行なったときは、95.2kNの荷重を負荷したときに破袋が生じた。サンプルを3段に積み重ねて試験を行なったときは、サンプルを2段に積み重ねたときの破袋荷重よりも大幅に小さい荷重(69.98kN)で破袋した。なお、サンプルを6段に積み重ねて試験を行なったときは、42.04kNの荷重を負荷したときに破袋した。
【0044】
1段または2段にサンプルを積み重ねて試験を行なったときに、サンプルが破袋しにくかった原因は、試験1の場合と同様、サンプルの下面が、下部支持台の上面(平坦面)で比較的広い面積で均一に分散して支持されるとともに、サンプルの上面が、プレス機で下降する上部水平板の下面(平坦面)で比較的広い面積で均一に分散して押圧されるためだと考えられる。そして、重包装用袋の実際の使用状態における圧縮耐性を最も的確にあらわしているのは、サンプルを3段以上積み重ねたときに、下部支持台に直接載置されるサンプルと、プレス機で下降する上部水平板の下面に直接接触するサンプルとの間に存在するサンプルであると考えられる。
【0045】
以上より、上記実施形態の圧縮耐性試験方法を採用したときに、重包装用袋の圧縮耐性を適切に評価することが可能であることを確認することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 プレス機
4 上部水平板
6 上面
5 下部支持台
7 下面
8 重包装用袋
【手続補正書】
【提出日】2023-09-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クラフト紙またはポリエチレンフィルムで形成された重包装用袋(8)の圧縮耐性を試験する重包装用袋の圧縮耐性試験方法であって、
内容物を充填して封緘した状態の前記重包装用袋(8)を、平坦な上面(6)をもつ下部支持台(5)の前記上面(6)に、あらかじめ設定された3段以上5段以下の所定段数、上下方向に積み重ね、
平坦な下面(7)をもつ上部水平板(4)を積み重ね状態の前記重包装用袋(8)の上側に配置し、その上部水平板(4)をプレス機(1)で下方に押圧することで、積み重ね状態の前記重包装用袋(8)に圧縮荷重を負荷し、
前記重包装用袋(8)が破袋するまで前記圧縮荷重を負荷したときの前記圧縮荷重の大きさ、または、所定の前記圧縮荷重を負荷したときの前記重包装用袋(8)の破袋の有無を検査する、
重包装用袋の圧縮耐性試験方法。
【請求項2】
前記所定段数を、3段に設定した請求項1に記載の重包装用袋の圧縮耐性試験方法。