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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127888
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】光学部材
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/00 20060101AFI20230907BHJP
   G02B 5/04 20060101ALI20230907BHJP
   G02B 5/08 20060101ALI20230907BHJP
   B60R 1/04 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
G02B5/00 Z
G02B5/04 B
G02B5/08 A
B60R1/04 H
G02B5/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022031841
(22)【出願日】2022-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻 真俊
(72)【発明者】
【氏名】安藤 浩
【テーマコード(参考)】
2H042
【Fターム(参考)】
2H042AA02
2H042AA03
2H042AA09
2H042AA16
2H042AA21
2H042CA01
2H042CA06
2H042DA11
2H042DA12
2H042DB01
2H042DE01
(57)【要約】
【課題】死角領域の光景の視認性を向上させる光学部材を提供する。
【解決手段】光学部材10は、外景光が入射する入射面25と、入射面25からの光を反射する第1反射面31と、第1反射面31で反射された光を反射する第2反射面32と、入射面25からの光および第2反射面32で反射された光を外部に射出する射出面42および射出面42に接続されているとともに入射面25からの光および第2反射面32で反射された光が入射する遮光面45を含むプリズム40と、を有する導光体20を備え、遮光面45は、射出面42に接続されている粗面453を含み、粗面453の表面粗さは、射出面42の表面粗さよりも大きくなっている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
死角領域からの外景光(Lo)が入射する入射面(25)と、前記入射面からの光を反射する第1反射面(31)と、前記第1反射面で反射された光を反射する第2反射面(32)と、前記入射面からの光および前記第2反射面で反射された光を外部に射出する射出面(42)および前記射出面と交差して接続されているとともに前記入射面からの光および前記第2反射面で反射された光が入射する遮光面(45)を含むプリズム(40)と、を有する導光体(20)を備え、
前記遮光面は、粗面(453)を含み、
前記粗面の表面粗さは、前記射出面の表面粗さよりも大きくなっている光学部材。
【請求項2】
死角領域からの外景光(Lo)が入射する入射面(72)および前記入射面に接続されているとともに前記外景光が入射する遮光面(75)を含む第1プリズム(70)と、前記入射面からの光を反射する第1反射面(31)と、前記第1反射面で反射された光を反射する第2反射面(32)と、前記入射面からの光および前記第2反射面で反射された光を外部に射出する射出面(42)および前記射出面と交差して接続されているとともに前記遮光面からの光が入射する面(45)を含む第2プリズム(40)と、を有する導光体(20)を備え、
前記遮光面は、粗面(753)を含み、
前記粗面の表面粗さは、前記入射面の表面粗さよりも大きくなっている光学部材。
【請求項3】
前記遮光面は、前記粗面に接続されているとともに表面粗さが前記粗面よりも小さい平坦面(451)を有し、
前記遮光面の面積に対する前記粗面の面積の割合は、50%以上になっている請求項1または2に記載の光学部材。
【請求項4】
前記粗面の2乗平均平方根高さは、0.1μm以上になっている請求項1ないし3のいずれか1つに記載の光学部材。
【請求項5】
前記粗面を覆うとともに前記導光体の外部からの光を遮る遮光部(60、80)をさらに備える請求項1ないし4のいずれか1つに記載の光学部材。
【請求項6】
前記遮光部は、光を吸収する光吸収膜である請求項5に記載の光学部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光学部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載されているように、半透過ミラーと、ミラーと、透光性部材と、複数のプリズムと、を備える死角補助装置が知られている。半透過ミラーは、視認者側に設けられる。ミラーは、光を半透過ミラーへ反射する。透光性部材は、半透過ミラーおよびミラーの間に設けられる。複数のプリズムは、半透過ミラーおよび視認者の間に設けられる。また、それぞれのプリズムは、透光性部材の光の入射面と対向しない面に遮光層を備えている。この遮光層によって視認者側から入射する光が遮られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6372305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明者等の検討によれば、特許文献1に記載された死角補助装置の構成では、視認者側から入射する光が迷光となることに加えて、透光性部材の入射面を通過してプリズムと遮光層との境界面で反射した光が透光性部材の射出面を通過することで迷光になる。この迷光により、死角領域の光景の視認性が低下する。
【0005】
本開示は、死角領域の光景の視認性を向上させる光学部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、死角領域からの外景光(Lo)が入射する入射面(25)と、入射面からの光を反射する第1反射面(31)と、第1反射面で反射された光を反射する第2反射面(32)と、入射面からの光および第2反射面で反射された光を外部に射出する射出面(42)および射出面と交差して接続されているとともに入射面からの光および第2反射面で反射された光が入射する遮光面(45)を含むプリズム(40)と、を有する導光体(20)を備え、遮光面は、粗面(453)を含み、粗面の表面粗さは、射出面の表面粗さよりも大きくなっている光学部材である。
【0007】
これにより、入射面からの光および第2反射面で反射された光が遮光面に入射した場合に、その入射した光は、遮光面の粗面にて散乱される。このため、遮光面から射出面に向かって進行する光の量が低下する。したがって、遮光面で反射された光は、射出面に到達しにくくなる。よって、迷光が視認者に到達しにくくなることから、死角領域の光景の視認性が向上する。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、死角領域からの外景光(Lo)が入射する入射面(72)および入射面に接続されているとともに外景光が入射する遮光面(75)を含む第1プリズム(70)と、入射面からの光を反射する第1反射面(31)と、第1反射面で反射された光を反射する第2反射面(32)と、入射面からの光および第2反射面で反射された光を外部に射出する射出面(42)および射出面と交差して接続されているとともに遮光面からの光が入射する面(45)を含む第2プリズム(40)と、を有する導光体(20)を備え、遮光面は、粗面(753)を含み、粗面の表面粗さは、入射面の表面粗さよりも大きくなっている光学部材である。
【0009】
これにより、外景光が遮光面に入射した場合に、その入射した光は、粗面にて散乱される。このため、射出面に接続されている面に遮光面から向かって進行する光の量が低下する。したがって、射出面に接続されている面に遮光面からの光が到達しにくくなる。よって、射出面に接続されている面で遮光面からの光が反射されにくくなることから、射出面に接続されている面で反射された光は、射出面に到達しにくくなる。このため、迷光が視認者に到達しにくくなることから、死角領域の光景の視認性が向上する。
【0010】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態の光学部材が用いられる車両の構成図。
図2】光学部材の斜視図。
図3】光学部材の断面図。
図4図3のIV部拡大図。
図5】光学部材の入射面に外景光が入射したときを示す模式断面図。
図6】比較用光学部材の入射面に外景光が入射したときを示す模式断面図。
図7図6のVII部拡大図。
図8】比較用平坦面に入射する光の入射角および反射率の関係図。
図9】光学部材の粗面に光が入射したときを示す模式断面図。
図10】2乗平均平方根高さおよび反射率の関係図。
図11】光学部材の外部からの光が遮光層に入射するときを示す模式断面図。
図12】第2実施形態の光学部材の断面図。
図13図12のXIII部拡大図。
図14】第3実施形態の光学部材の断面図。
図15図14のXV部拡大図。
図16】光学部材の入射用遮光面に外景光が入射したときを示す模式断面図。
図17図16のXVII部拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0013】
(第1実施形態)
本実施形態の光学部材10は、例えば、車両1に用いられる。この車両1は、図1に示すように、ステアリングホイール2、フロントウィンドウ3、サイドウィンドウ4、ピラー5および光学部材10等を備えている。そして、光学部材10は、例えば、ピラー5に取り付けられており、ピラー5により死角となる領域からの外景光Loを車両1の乗員に導光することにより、死角領域の光景を車両1の乗員に視認させる。なお、車両1の乗員は、視認者に対応する。
【0014】
具体的には、光学部材10は、図2図4に示すように、導光体20および遮光層60を備えている。なお、図3図4および後述の断面図において、理解がされやすい図とするために光学部材10の断面ハッチングが省略されている。
【0015】
導光体20は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレンおよびアクリル等の樹脂材料やガラスなどの透光性材料で形成されている。また、導光体20は、入射面25、第1反射面31、第2反射面32および複数のプリズム40を有する。
【0016】
入射面25は、外景光Loが入射する面である。第1反射面31は、車両1の乗員側に配置されているとともに、入射面25と交差している。また、第1反射面31では、入射面25からの光が反射される。第2反射面32は、入射面25のうち第1反射面31とは反対側に接続されているとともに、第1反射面31と平行になっている。さらに、第2反射面32では、第1反射面31で反射された光が反射される。
【0017】
ここで、第1反射面31を通る法線の方向を法線方向Dnとする。そして、入射面25は、法線方向Dnに対して傾いている。さらに、法線方向Dnに対する入射面25の傾斜角度である入射面角度Asiは、鋭角になっている。また、導光体20の屈折率をn1とする。また、導光体20の外部媒質の屈折率をn2とする。さらに、入射面25からの光が第1反射面31で反射されるときの入射角度および第1反射面31で反射された光が第2反射面32で反射されるときの入射角度をθiとする。このとき、導光体20は、下記関係式(1)を満たすように形成されている。これにより、導光体20が半透過ミラーを有さなくても、入射面25からの光が第1反射面31および第2反射面32で全反射される。
【0018】
sinθi≧n2/n1 ・・・(1)
【0019】
次に、プリズム40は、導光体20の形成の際において成形加工、切削加工、ブラスト加工等およびこれらの組み合わせにより形成されている。また、プリズム40は、第1反射面31から突出しており、三角柱形状に形成されている。さらに、プリズム40は、所定の間隔を空けて配列されている。これにより、第1反射面31がプリズム40の配列方向に所定の間隔を空けて配列されている。また、プリズム40は、プリズム射出面42およびプリズム遮光面45を含む。
【0020】
プリズム射出面42は、第1反射面31に接続されている。また、プリズム射出面42は、入射面25と平行になっている。このため、プリズム射出面42は、法線方向Dnに対して入射面角度Asiで傾いている。さらに、プリズム射出面42の2乗平均平方根高さは、例えば、0.005μmになっている。また、プリズム射出面42から、入射面25からの光および第2反射面32で反射した光が射出される。なお、2乗平均平方根高さは、例えば、ISO25178およびJISB0601に準拠した測定法によって測定される。
【0021】
プリズム遮光面45は、後述するように、入射面25からの光および第2反射面32で反射した光が入射する面であるところ、この入射する光を遮る。これにより、プリズム遮光面45は、その光が迷光GLとなることを抑制する。具体的には、プリズム遮光面45は、プリズム射出面42と交差して接続されている。また、プリズム遮光面45は、図4に示すように、平坦面451および粗面453を含む。
【0022】
平坦面451は、第1反射面31に接続されている。さらに、平坦面451の2乗平均平方根高さは、例えば、0.005μmになっている。
【0023】
粗面453は、プリズム射出面42および平坦面451に接続されている。また、粗面453の2乗平均平方根高さがプリズム射出面42および平坦面451の2乗平均平方根高さよりも高くなっている。したがって、粗面453の表面粗さは、プリズム射出面42および平坦面451の表面粗さよりも大きくなっている。さらに、粗面453の2乗平均平方根高さは、0.1μm以上になっている。また、プリズム遮光面45の面積に対する粗面453の面積の割合は、50%以上になっている。なお、図4において、プリズム遮光面45の面積に対する粗面453の面積の割合は、50%とされている。また、プリズム遮光面45の面積に対する粗面453の面積の割合が50%以上になっているところ、プリズム遮光面45の幅に対する粗面453の幅の割合が50%以上であってもよい。
【0024】
遮光層60は、光を99%以上吸収する光吸収膜である。また、遮光層60は、例えば、黒色の樹脂で塗装、印刷および蒸着等により形成されている。さらに、遮光層60は、それぞれのプリズム遮光面45の全面を覆っている。これにより、遮光層60は、後述するように、車両1の乗員側からプリズム遮光面45に向かって入射する光SLを遮る。なお、遮光層60は、プリズム遮光面45の全面を覆っているところ、これに限定されないで、粗面453の少なくとも一部を覆っていてもよい。また、遮光層60は、黒色の樹脂で形成されているところ、黒色の樹脂に限定されないで、例えば、金属で形成されてもよい。
【0025】
以上のように、第1実施形態の光学部材10は、構成されている。本実施形態の光学部材10では、ピラー5による死角領域の光景が車両1の乗員に視認されるとともに、その視認性が向上する。次に、図5を参照して、死角領域の光景の視認について説明する。
【0026】
例えば、外景光Loが入射角θoで入射面25に入射すると、導光体20内で屈折することにより、入射光Liとなる。なお、入射角θoは、外景光Loの進行方向と法線方向Dnとのなす角度である。
【0027】
さらに、入射光Liの一部は、入射角θiで第1反射面31に向かって進行して、第1反射面31に到達する。その到達した入射光Liは、第1反射面31で全反射し、第1反射光Lr1となる。また、第1反射光Lr1は、入射角θiで第2反射面32に向かって進行して、第2反射面32に到達する。その到達した第1反射光Lr1は、第2反射面32で全反射し、第2反射光Lr2となる。さらに、第2反射光Lr2は、プリズム射出面42に向かって進行して、プリズム射出面42に到達する。その到達した第2反射光Lr2は、プリズム射出面42から、入射角θoと同じとなる射出角θuで射出されて、射出光Luとなる。そして、射出光Luが車両1の乗員に向かって進行して到達することにより、ピラー5による死角領域の光景が視認される。なお、入射角θiは、入射光Liの進行方向と法線方向Dnとのなす角度である。射出角θuは、射出光Luの進行方向と法線方向Dnとのなす角度である。また、Asi<π/2-θiが満たされていることから、入射角θiは、入射角θoよりも大きくなっている。これにより、入射光Liは、第1反射面31の広範囲に向かって進行する。さらに、法線方向Dnに対するプリズム遮光面45の傾斜角度は、入射角θo以上となっている。このため、射出光Luがプリズム遮光面45に遮られることなく外部に射出されることから、射出における光量のロスが低減されている。
【0028】
また、入射光Liの一部は、プリズム射出面42に向かって進行して、プリズム射出面42に到達する。その到達した入射光Liは、プリズム射出面42から、入射角θoと同じとなる射出角θuで射出されて、射出光Luとなる。そして、射出光Luが車両1の乗員に向かって進行して到達することにより、ピラー5による死角領域の光景が視認される。
【0029】
以上のように、ピラー5による死角領域の光景が車両1の乗員に視認される。次に、死角領域の光景の視認性向上について説明する。
【0030】
ここで、光学部材10による視認性向上を説明するため、比較例としての比較用光学部材900について説明する。比較用光学部材900は、図6および図7に示すように、比較用導光体920および比較用遮光層960を備えている。比較用導光体920は、導光体20に対応し、比較用入射面925、比較用第1反射面931、比較用第2反射面932および複数の比較用プリズム940を有する。比較用入射面925は、入射面25に対応する。比較用第1反射面931は、第1反射面31に対応する。比較用第2反射面932は、第2反射面32に対応する。比較用プリズム940は、比較用射出面942を有する。比較用射出面942は、プリズム射出面42に対応する。比較用遮光層960は、遮光層60に対応する。したがって、これらの詳細な説明は、省略する。
【0031】
また、比較用プリズム940は、比較用射出面942に加えて、比較用平坦面945を有する。比較用平坦面945は、第1反射面31および比較用射出面942に接続されているとともに、比較用遮光層960に覆われている。さらに、比較用平坦面945の2乗平均平方根高さは、比較用射出面942の2乗平均平方根高さ以下になっている。
【0032】
また、ここで、比較用導光体920の屈折率を1.49とする。比較用遮光層960の屈折率を1.59とする。このとき、比較用導光体920と比較用遮光層960との屈折率差は、0.1である。そして、この場合において、外景光Loが入射面25に入射すると、比較用入射面925からの光および比較用第2反射面932で反射された光が比較用平坦面945で反射されることがある。このとき、フレネルの反射式を用いて比較用平坦面945で反射される反射率Rを算出したところ、図7および図8に示すように、比較用平坦面945に到達した光の入射角θsが大きくなることに伴って、その反射率Rが大きくなる。また、例えば、入射角θsが86°であるとき、反射率Rが40%にもなる。なお、ここでは、反射率Rは、光のp波の振幅反射率と、光のs波の振幅反射率との和である。
【0033】
さらに、比較用平坦面945で反射された光は、比較用射出面942に進行して到達する。この到達した光は、比較用射出面942から射出されて、車両1の乗員に向かって進行すると、迷光GLになる。この迷光GLにより、死角領域の光景の視認性が低下する。
【0034】
これに対して、本実施形態の光学部材10では、粗面453の表面粗さは、プリズム射出面42の表面粗さよりも大きくなっている。これにより、図9に示すように、入射面25からの光および第2反射面32で反射された光がプリズム遮光面45に入射した場合に、その入射した光は、プリズム遮光面45の粗面453にて散乱される。このため、プリズム遮光面45からプリズム射出面42に向かって進行する光の量が低下する。したがって、プリズム遮光面45で反射された光は、プリズム射出面42に到達しにくくなる。よって、迷光GLが車両1の乗員に到達しにくくなることから、死角領域の光景の視認性が向上する。
【0035】
また、第1実施形態の光学部材10では、以下に記載する効果も奏する。
【0036】
[1-1]プリズム遮光面45は、平坦面451および粗面453を含む。また、プリズム遮光面45の面積に対する粗面453の面積の割合は、50%以上になっている。これにより、プリズム遮光面45に含まれる粗面453の面積が平坦面451の面積以上となることから、入射面25からの光および第2反射面32で反射された光が粗面453で反射される確率が高くなる。このため、プリズム遮光面45に入射する光が散乱されやすくなることから、プリズム遮光面45からプリズム射出面42に向かって進行する光の量が低下しやすくなる。したがって、プリズム遮光面45で反射された光は、プリズム射出面42に到達しにくくなる。よって、迷光GLが車両1の乗員に到達しにくくなることから、死角領域の光景の視認性が向上する。
【0037】
[1-2]ここで、導光体20の屈折率を1.49とする。遮光層60の屈折率を1.59とする。このとき、導光体20と遮光層60との屈折率差は、0.1である。また、入射面25からの光および第2反射面32で反射された光のどちらかが入射角θs=86°で粗面453に入射したとする。この場合において、図10に示すように、粗面453の2乗平均平方根高さが高くなることに伴って、プリズム遮光面45における反射率Rが急激に減少する。また、粗面453の2乗平均平方根高さが0.005μmであるとき、反射率Rは、40%である。さらに、粗面453の2乗平均平方根高さが0.1μm以上であるとき、プリズム遮光面45における反射率Rは、20%以下であって、粗面453の2乗平均平方根高さが0.005μmであるときの半分以下になる。
【0038】
そこで、光学部材10では、粗面453の2乗平均平方根高さは、0.1μm以上になっている。これにより、粗面453が平滑な面とされる場合と比較して、反射率Rが半分以下なる。このため、プリズム遮光面45で反射された光がプリズム射出面42に到達しにくくなる。したがって、迷光GLが車両1の乗員に到達しにくくなることから、死角領域の光景の視認性が向上する。
【0039】
[1-3]光学部材10は、遮光部に対応する遮光層60をさらに備えている。遮光層60は、粗面453を覆うとともに導光体20の外部からの光を遮る。これにより、プリズム40側における導光体20の外部からの光が遮られるため、図11に示すように、プリズム40側における導光体20の外部からの光SLが迷光となることが抑制される。
【0040】
また、2乗平均平方根高さがプリズム射出面42よりも高い粗面453により、粗面453に到達する光の入射角が微視的に小さくなる。このため、粗面453に到達した光は、屈折して遮光層60に向かって進行しやすくなる。遮光層60に進行した光は、遮光層60により遮られるため、プリズム遮光面45からプリズム射出面42に向かって進行する光の量が低下しやすくなる。したがって、プリズム遮光面45で反射された光がプリズム射出面42に到達しにくくなる。よって、迷光GLが車両1の乗員に到達しにくくなることから、死角領域の光景の視認性が向上する。
【0041】
[1-4]遮光層60は、光を吸収する光吸収膜である。これにより、プリズム40側における導光体20の外部からの光が吸収される。このため、プリズム40側における導光体20の外部からの光が遮られやすくなる。したがって、導光体20の外部からの光SLが迷光となることが抑制される。
【0042】
(第2実施形態)
第2実施形態では、図12に示すように、光学部材10は、遮光層60を備えていない。これ以外は、第1実施形態と同様である。
【0043】
この第2実施形態では、図13に示すように、車両1の乗員側から入射する光SLが粗面453に進行して到達すると、その到達した光SLの一部が粗面453で反射され、残りの一部は、散乱される。これにより、光SLの光量が減少することから、光SLが遮られる。したがって、粗面453が遮光層60に代えて光SLを遮ることから、第2実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏する。また、第2実施形態では、以下に記載する効果も奏する。
【0044】
[2]光学部材10が遮光層60を備えていないため、光学部材10の製造が遮光層60の形成工程分短縮される。これにより、光学部材10の製造時間が短縮されるとともに、光学部材10のコストが削減される。
【0045】
(第3実施形態)
第3実施形態では、導光体20は、入射面25を有さない。また、導光体20は、図14および15に示すように、第1反射面31、第2反射面32および複数のプリズム40に加えて、複数の入射用プリズム70をさらに有する。また、光学部材10は、導光体20および遮光層60に加えて、入射用遮光層80をさらに備える。これら以外は、第1実施形態と同様である。なお、入射用プリズム70は、第1プリズムに対応し、プリズム40が第2プリズムに対応する。
【0046】
入射用プリズム70は、導光体20の形成の際において成形加工、切削加工、ブラスト加工等およびこれらの組み合わせにより形成されている。また、入射用プリズム70は、導光体20の内部から外部に向かって突出しており、三角柱形状に形成されている。さらに、入射用プリズム70は、所定の間隔で配列されている。また、入射用プリズム70は、プリズム入射面72および入射用遮光面75を含む。
【0047】
プリズム入射面72は、外景光Loが入射する面である。また、プリズム入射面72は、プリズム射出面42と平行になっているとともに、第1反射面31および第2反射面32と交差している。さらに、プリズム入射面72の2乗平均平方根高さは、例えば、0.005μmになっている。また、法線方向Dnに対するプリズム入射面72の傾斜角度は、上記入射面角度Asiと同じになっている。
【0048】
入射用遮光面75は、後述するように、外景光Loが入射する面であるところ、この入射する光を遮る。これにより、入射用遮光面75は、その光が入射用遮光面75で反射しプリズム射出面42から射出されて迷光GLoとなることを抑制する。具体的には、入射用遮光面75は、プリズム入射面72と交差して接続されている。また、入射用遮光面75は、入射用平坦面751および入射用粗面753を含む。
【0049】
複数の入射用平坦面751のうち第2反射面32側の1つは、第2反射面32に接続されている。それ以外の入射用平坦面751は、プリズム入射面72の導光体20内側の部位に接続されている。さらに、入射用平坦面751の2乗平均平方根高さは、例えば、0.005μmになっている。
【0050】
入射用粗面753は、プリズム入射面72の導光体20外側の部位および入射用平坦面751に接続されている。また、入射用粗面753の2乗平均平方根高さは、プリズム入射面72および入射用平坦面751の2乗平均平方根高さよりも高くなっている。したがって、入射用粗面753の表面粗さは、プリズム入射面72および入射用平坦面751の表面粗さよりも大きくなっている。さらに、入射用粗面753の2乗平均平方根高さは、0.1μm以上になっている。また、入射用遮光面75の面積に対する入射用粗面753の面積の割合は、50%以上になっている。なお、図15において、入射用遮光面75の面積に対する入射用粗面753の面積の割合は、50%とされている。また、入射用遮光面75の面積に対する入射用粗面753の面積の割合が50%以上になっているところ、入射用遮光面75の幅に対する入射用粗面753の幅の割合が50%以上であってもよい。
【0051】
入射用遮光層80は、光を99%以上吸収する光吸収膜である。また、入射用遮光層80は、例えば、黒色の樹脂で塗装、印刷および蒸着等により形成されている。さらに、入射用遮光層80は、それぞれの入射用遮光面75の全面を覆っている。また、入射用遮光層80は、後述するように、死角領域側から入射用プリズム70に向かって進行する光を遮る。なお、入射用遮光層80は、入射用遮光面75の全面を覆っているところ、これに限定されないで、入射用粗面753の少なくとも一部を覆っていてもよい。また、入射用遮光層80は、黒色の樹脂で形成されているところ、黒色の樹脂に限定されないで、例えば、金属で形成されてもよい。
【0052】
以上のように、第3実施形態の光学部材10は、構成されている。この第3実施形態に対しても、第1実施形態同様の効果を奏する。また、第3実施形態では、以下に記載する効果も奏する。
【0053】
[3-1]ここで、図16に示すように、外景光Loがプリズム入射面72ではなく入射用遮光面75に入射して、その入射した光がプリズム遮光面45で反射することがある。その反射した光は、プリズム射出面42から射出されて、車両1の乗員に向かって進行すると、迷光GLoになる。
【0054】
そこで、第3実施形態の光学部材10では、入射用粗面753の表面粗さは、プリズム入射面72の表面粗さよりも大きくなっている。これにより、図17に示すように、外景光Loが入射用遮光面75に入射した場合に、その入射した光は、入射用粗面753にて反射および散乱される。このため、入射用遮光面75からプリズム遮光面45に向かって進行する光の量が低下する。したがって、入射用遮光面75からの光がプリズム遮光面45に到達しにくくなる。よって、入射用遮光面75からの光がプリズム遮光面45で反射されにくくなることから、プリズム遮光面45で反射された光は、プリズム射出面42に到達しにくくなる。このため、迷光GLoが車両1の乗員に到達しにくくなることから、死角領域の光景の視認性が向上する。
【0055】
[3-2]入射用遮光面75は、入射用平坦面751および入射用粗面753を含む。また、入射用遮光面75の面積に対する入射用粗面753の面積の割合は、50%以上になっている。これにより、入射用遮光面75に含まれる入射用粗面753の面積が入射用平坦面751の面積以上となることから、外景光Loが入射用粗面753で反射される確率が高くなる。このため、入射用遮光面75に入射する外景光Loが反射および散乱されやすくなる。このため、入射用遮光面75からプリズム遮光面45に向かって進行する光の量が低下しやすくなる。したがって、入射用遮光面75からの光がプリズム遮光面45に到達しにくくなる。よって、入射用遮光面75からの光がプリズム遮光面45で反射されにくくなることから、プリズム遮光面45で反射された光は、プリズム射出面42に到達しにくくなる。このため、迷光GLoが車両1の乗員に到達しにくくなることから、死角領域の光景の視認性が向上する。
【0056】
[3-3]入射用粗面753の2乗平均平方根高さは、0.1μm以上になっている。これにより、入射用遮光面75に入射する外景光Loが反射および散乱されやすくなる。このため、入射用遮光面75からプリズム遮光面45に向かって進行する光の量が低下しやすくなる。したがって、入射用遮光面75からの光がプリズム遮光面45に到達しにくくなる。よって、入射用遮光面75からの光がプリズム遮光面45で反射されにくくなることから、プリズム遮光面45で反射された光は、プリズム射出面42に到達しにくくなる。このため、迷光GLoが車両1の乗員に到達しにくくなることから、死角領域の光景の視認性が向上する。
【0057】
[3-4]光学部材10は、遮光部に対応する入射用遮光層80をさらに備えている。入射用遮光層80は、入射用粗面753を覆うとともに導光体20の外部からの光を遮る。これにより、死角領域側における導光体20の外部からの光が遮られるため、外景光Loが迷光GLoとなることが抑制される。
【0058】
[3-5]入射用遮光層80は、光を吸収する光吸収膜である。これにより、入射用遮光面75に向かって進行する外景光Loが吸収される。このため、入射用遮光面75に向かって進行する外景光Loが遮られやすくなる。したがって、外景光Loが迷光GLoとなることが抑制される。
【0059】
(他の実施形態)
本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、上記実施形態に対して、適宜変更が可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0060】
上記各実施形態では、表面粗さとして2乗平均平方根高さが挙げられている。これに対して、表面粗さは、2乗平均平方根高さであることに限定されないで、最大山高さ、最大谷高さ、最大高さおよび算出平均高さ等であってもよい。なお、最大山高さ、最大谷高さ、最大高さおよび算出平均高さ等は、例えば、ISO25178およびJISB0601に準拠した測定法によって測定される。
【0061】
上記第3実施形態では、導光体20のプリズム40におけるプリズム遮光面45は、粗面453を含み、導光体20の入射用プリズム70における入射用遮光面75が入射用粗面753を含む。これに対して、入射用遮光面75が入射用粗面753を含むため、プリズム遮光面45は、粗面453を含まなくてもよい。
【0062】
上記第3実施形態では、光学部材10は、入射用遮光層80を備えている。これに対して、光学部材10は、入射用遮光層80を備えていなくてもよい。この場合、第2実施形態と同様に、入射用粗面753が入射用遮光層80に代えて外景光Loを遮る。また、光学部材10が入射用遮光層80を備えていないため、光学部材10の製造が入射用遮光層80の形成工程分短縮される。これにより、光学部材10の製造時間が短縮されるとともに、光学部材10のコストが削減される。
【0063】
上記各実施形態では、プリズム40および入射用プリズム70は、三角柱形状であるところ、三角柱形状であることに限定されないで、例えば、台形柱形状であってもよい。
【0064】
上記各実施形態では、遮光層60および入射用遮光層80は、光吸収膜で形成されているところ、光吸収膜で形成されていることに限定されないで、光拡散材および再帰性反射材等で形成されてもよい。
【0065】
上記各実施形態では、第2反射面32は、第1反射面31と平行になっている。これに対して、第2反射面32は、第1反射面31と平行になっていることに限定されないで、光学部材10から視認者までの距離に応じて、第1反射面31と平行にならない形態であってもよい。
【符号の説明】
【0066】
10 光学部材
20 導光体
25、75 入射面
31 第1反射面
32 第2反射面
40、70 プリズム
42 射出面
45、75 遮光面
453、753 粗面
60、80 遮光層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17