(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127890
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】ニトロチロシン減少剤およびその使用、肌の黄ぐすみの改善剤、ならびに肌の弾力低下の改善剤
(51)【国際特許分類】
C07D 307/00 20060101AFI20230907BHJP
C07D 311/94 20060101ALI20230907BHJP
C07H 13/08 20060101ALI20230907BHJP
C07H 17/075 20060101ALI20230907BHJP
C07H 17/07 20060101ALI20230907BHJP
C07D 311/62 20060101ALI20230907BHJP
C07D 493/04 20060101ALI20230907BHJP
C07D 307/94 20060101ALI20230907BHJP
A61K 31/352 20060101ALI20230907BHJP
A61K 31/343 20060101ALI20230907BHJP
A61K 31/7024 20060101ALI20230907BHJP
A61K 31/704 20060101ALI20230907BHJP
A61K 31/37 20060101ALI20230907BHJP
A61K 31/05 20060101ALI20230907BHJP
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A61K 31/60 20060101ALI20230907BHJP
A61K 31/235 20060101ALI20230907BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230907BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20230907BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20230907BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20230907BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20230907BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20230907BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230907BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20230907BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20230907BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230907BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20230907BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20230907BHJP
A61K 8/35 20060101ALI20230907BHJP
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A61Q 19/08 20060101ALI20230907BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230907BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
C07D307/00 CSP
C07D311/94 101
C07H13/08
C07H17/075
C07H17/07
C07D311/62
C07D493/04 106A
C07D307/94
A61K31/352
A61K31/343
A61K31/7024
A61K31/704
A61K31/37
A61K31/05
A61K31/11
A61K31/192
A61K31/60
A61K31/235
A61P17/00
A61P9/10 101
A61P9/00
A61P25/28
A61P9/12
A61P11/06
A61P29/00 101
A61P13/12
A61P29/00
A61P1/04
A61P43/00 105
A61P3/10
A61K8/34
A61K8/35
A61K8/368
A61K8/37
A61K8/60
A61Q19/08
A61Q19/00
A61K8/49
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022031843
(22)【出願日】2022-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】591230619
【氏名又は名称】株式会社ナリス化粧品
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156122
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 剛
(72)【発明者】
【氏名】齊藤(奥田) 奈緒美
【テーマコード(参考)】
4C057
4C071
4C083
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C057DD01
4C057DD03
4C057HH04
4C057KK08
4C057KK09
4C071AA02
4C071AA07
4C071BB01
4C071CC12
4C071EE07
4C071FF17
4C071GG03
4C071HH09
4C071JJ01
4C071LL01
4C071LL10
4C083AC471
4C083AC472
4C083AC841
4C083AC842
4C083AD201
4C083AD202
4C083AD531
4C083AD532
4C083CC01
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4C083EE16
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BA05
4C086BA08
4C086BA19
4C086DA17
4C086EA03
4C086EA11
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA36
4C086ZA42
4C086ZA45
4C086ZA59
4C086ZA68
4C086ZA81
4C086ZA89
4C086ZA91
4C086ZB11
4C086ZB15
4C086ZB21
4C086ZC35
4C086ZC52
4C206AA01
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4C206CB09
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4C206NA14
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4C206ZA68
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4C206ZB11
4C206ZB15
4C206ZB21
4C206ZC35
4C206ZC52
(57)【要約】 (修正有)
【課題】既に生成したニトロ化タンパク質を直接的に分解等することが可能な、優れたニトロチロシン減少剤を提供する。
【解決手段】以下の(1)~(3)からなる群から選択される少なくとも1種の化合物からなる、ニトロチロシン減少剤。
(1)ベンゼン環上に少なくとも3つの置換基を有し、次の(A)~(C)のいずれかを満たす化合物、
(A)該少なくとも3つの置換基のうち、すべてが-OH
(B)該少なくとも3つの置換基のうち、第1の置換基が-C(=O)H、-C(=O)OHまたは-C(=O)Raであり、第2の置換基が-OHであり、第3の置換基が-OHまたは-Rbである
(C)第1の置換基および第2の置換基が、ベンゼン環上の隣接する炭素原子に結合し、それらが結合する炭素原子と一緒になって縮合複素環を形成し、第3の置換基が-OHまたは-Rcである
(2)ジベレリン、および
(3)ゲニピン
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)ベンゼン環上に少なくとも3つの置換基を有し、次の(A)~(C):
(A)該少なくとも3つの置換基のうち、第1の置換基、第2の置換基および第3の置換基が-OHである、
(B)該少なくとも3つの置換基のうち、
第1の置換基が-C(=O)H、-C(=O)OHまたは-C(=O)R
aであり、
第2の置換基が-OHであり、
第3の置換基が-OHまたは-R
bである、
または、
(C)該少なくとも3つの置換基のうち、
第1の置換基および第2の置換基が、ベンゼン環上の隣接する炭素原子に結合し、それらが結合する炭素原子と一緒になって、式(y1)または(y2):
【化1】
[式中、Yは、式(ya)~(yc):
【化2】
〔式(ya)中、Xは互いに独立して、水素原子、-OH、置換基を有していてもよい芳香族環、もしくは糖類骨格の1個の水酸基から水素原子を除いた基のいずれかを表すか、または、2つのXが、それらが結合する炭素原子と一緒になってスピロ環を形成し、
式(yb)および(yc)中、Xは互いに独立して、水素原子、-OH、置換基を有していてもよい芳香族環、もしくは糖類骨格の1個の水酸基から水素原子を除いた基のいずれかを表すか、または、隣接する炭素原子に結合する2つのXが、それらが結合する炭素原子と一緒になって6員の飽和もしくは不飽和の炭化水素環を形成し、
式(ya)~(yc)中、*は結合手を表す〕
を表す]
で表される複素環を形成し、
第3の置換基が-OHまたは-R
cである、
ここで、R
a、R
bおよびR
cは、互いに独立に、C
1-3アルコキシ基、またはフラバン-3-オール骨格、糖類骨格、没食子酸骨格、もしくは糖類骨格と没食子酸骨格とが脱水縮合した骨格のいずれかの骨格における1個の水酸基から水素原子を除いた基を表す、
のいずれかを満たす化合物(1)、
但し、(B)または(C)を満たす化合物は(A)を満たす化合物に含まれず、(C)を満たす化合物は(B)を満たす化合物に含まれない、
(2)式(II):
【化3】
で表される化合物(2)、および
(3)式(III):
【化4】
で表される化合物(3)
からなる群から選択される少なくとも1種の化合物からなる、ニトロチロシン減少剤。
【請求項2】
前記(A)を満たす化合物は、式(IA):
【化5】
[式(IA)中、
R
1A~R
6Aは、互いに独立して、水素原子または-OHを表し、
但し、R
1A~R
6Aの少なくとも3つが-OHを表す]
で表される化合物であり、前記(B)を満たす化合物は、式(IB):
【化6】
[式(IB)中、
R
1Bは、-C(=O)H、-C(=O)OHまたは-C(=O)R
aを表し、
R
2B~R
6Bは、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、-OH、C
1-3アルキル基、または-R
dのいずれかを表し、
但し、
R
2B~R
6Bの少なくとも1つが-OHを表し、少なくとも1つが-R
dを表すか、
または、
R
2B~R
6Bの少なくとも2つが-OHを表し、
R
aおよびR
dは、互いに独立して、C
1-3アルコキシ基、またはフラバン-3-オール骨格、糖類骨格、没食子酸骨格、もしくは糖類骨格と没食子酸骨格とが脱水縮合した骨格のいずれかの骨格における1個の水酸基から水素原子を除いた基を表す]
で表される化合物であり、前記(C)を満たす化合物は、式(IC):
【化7】
[式(IC)中、
R
1CおよびR
2Cは、それらが結合する炭素原子と一緒になって、式(c1)~(c6):
【化8】
〔式(c1)~(c4)中、
R
7C~R
14Cは、
互いに独立して、水素原子、-OH、置換基を有していてもよい芳香族環、もしくは糖類骨格の1個の水酸基から水素原子を除いた基のいずれかを表す、
または
R
7CおよびR
8C、R
9CおよびR
10C、R
11CおよびR
12C、または、R
13CおよびR
14Cが、それらが結合する炭素原子と一緒になって6員の飽和もしくは不飽和の炭化水素環を形成し、
式(c5)および(c6)中、
R
15C~R
18Cは、
互いに独立して、水素原子、-OH、置換基を有していてもよい芳香族環、もしくは糖類骨格の1個の水酸基から水素原子を除いた基のいずれかを表す、
または
R
15CおよびR
16C、または、R
17CおよびR
18Cが、それらが結合する炭素原子と一緒になってスピロ環を形成する〕
のいずれかで表される複素環を形成し、
R
3C~R
6Cは、
互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、-OH、C
1-3アルキル基または-R
eのいずれかを表し、但し、R
3C~R
6Cの少なくとも1つは-OHまたは-R
eを表し、R
eは、C
1-3アルコキシ基、またはフラバン-3-オール骨格、糖類骨格、没食子酸骨格、もしくは糖類骨格と没食子酸骨格とが脱水縮合した骨格のいずれかの骨格における1個の水酸基から水素原子を除いた基を表す、
または
R
3C~R
6Cのうち3つが、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、-OH、C
1-3アルキル基または-R
eのいずれかを表し、R
3C~R
6Cのうち1つが*-C(=O)-O-*または*-O-C(=O)-*の2価の連結基(*は結合手である)を表す、但し、この場合、R
1CおよびR
2Cは、それらが結合する炭素原子と一緒になって、式(c1)~(c4)のいずれかで表される複素環を形成し、式(c1)~(c4)中のR
7CおよびR
8C、R
9CおよびR
10C、R
11CおよびR
12C、または、R
13CおよびR
14Cは、それらが結合する炭素原子と一緒になって6員の飽和もしくは不飽和の炭化水素環を形成し、前記2価の連結基は、前記炭化水素環を構成する炭素原子と式(IC)のベンゼン環上の炭素原子とを連結する]
で表される化合物である、請求項1に記載のニトロチロシン減少剤。
【請求項3】
前記式(IB)で表される化合物は、
R
1Bが、-C(=O)H、-C(=O)OH、または-C(=O)-O-CH
3を表し、
R
2B~R
6Bのうち、
3つが水素原子であり、2つが-OHであるか、
3つが水素原子であり、1つが-OHであり、1つがC
1-3アルコキシ基であるか、
2つが水素原子であり、3つが-OHであるか、
2つが水素原子であり、2つが-OHであり、1つがC
1-3アルコキシ基であるか、
または
2つが水素原子であり、1つが-OHであり、2つがC
1-3アルコキシ基である
化合物、および/または、
式(b13):
【化9】
で表される化合物
である、請求項2に記載のニトロチロシン減少剤。
【請求項4】
前記式(IC)中のR1CおよびR2Cは、
それらが結合する炭素原子と一緒になって式(c1)の複素環を形成するか、
それらが結合する炭素原子と一緒になって式(c2)の複素環を形成するか、
それらが結合する炭素原子と一緒になって式(c3)の複素環を形成するか、または
それらが結合する炭素原子と一緒になって式(c5)の複素環を形成する、
請求項2または3に記載のニトロチロシン減少剤。
【請求項5】
前記式(IA)で表される化合物は、式(a1)および(a2):
【化10】
で表される化合物からなる群から選択され、前記式(IB)で表される化合物は、式(b1)~(b13):
【化11】
で表される化合物からなる群から選択され、前記式(IC)で表される化合物は、式(c7)~(c16):
【化12】
で表される化合物からなる群から選択される、
請求項2~4のいずれかに記載のニトロチロシン減少剤。
【請求項6】
ニトロチロシンを有するタンパク質に起因する疾患または症状の予防または改善のための、請求項1~5のいずれかに記載のニトロチロシン減少剤の使用。
【請求項7】
前記疾患または症状が、肌の黄ぐすみ、肌の弾力低下、動脈硬化、脳虚血性疾患、神経変性疾患、高血圧、喘息、慢性関節リウマチ、糖尿病性腎症、および炎症性腸疾患からなる群から選択される、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
(1)ベンゼン環上に少なくとも3つの置換基を有し、次の(A)~(C):
(A)該少なくとも3つの置換基のうち、第1の置換基、第2の置換基および第3の置換基が-OHである、
(B)該少なくとも3つの置換基のうち、
第1の置換基が-C(=O)H、-C(=O)OHまたは-C(=O)R
aであり、
第2の置換基が-OHであり、
第3の置換基が-OHまたは-R
bである、
または、
(C)該少なくとも3つの置換基のうち、
第1の置換基および第2の置換基が、ベンゼン環上の隣接する炭素原子に結合し、それらが結合する炭素原子と一緒になって、式(y1)または(y2):
【化13】
[式中、Yは、式(ya)~(yc):
【化14】
〔式(ya)中、Xは互いに独立して、水素原子、-OH、置換基を有していてもよい芳香族環、もしくは糖類骨格の1個の水酸基から水素原子を除いた基のいずれかを表すか、または、2つのXが、それらが結合する炭素原子と一緒になってスピロ環を形成し、
式(yb)および(yc)中、Xは互いに独立して、水素原子、-OH、置換基を有していてもよい芳香族環、もしくは糖類骨格の1個の水酸基から水素原子を除いた基のいずれかを表すか、または、隣接する炭素原子に結合する2つのXが、それらが結合する炭素原子と一緒になって6員の飽和もしくは不飽和の炭化水素環を形成し、
式(ya)~(yc)中、*は結合手を表す〕
を表す]
で表される複素環を形成し、
第3の置換基が-OHまたは-R
cである、
ここで、R
a、R
bおよびR
cは、互いに独立に、C
1-3アルコキシ基、またはフラバン-3-オール骨格、糖類骨格、没食子酸骨格、もしくは糖類骨格と没食子酸骨格とが脱水縮合した骨格のいずれかの骨格における1個の水酸基から水素原子を除いた基を表す、
のいずれかを満たす化合物(1)、
但し、(B)または(C)を満たす化合物は(A)を満たす化合物に含まれず、(C)を満たす化合物は(B)を満たす化合物に含まれない、
(2)式(II):
【化15】
で表される化合物(2)、および
(3)式(III):
【化16】
で表される化合物(3)
からなる群から選択される少なくとも1種の化合物からなる、肌の黄ぐすみの改善剤。
【請求項9】
(1)ベンゼン環上に少なくとも3つの置換基を有し、次の(A)~(C):
(A)該少なくとも3つの置換基のうち、第1の置換基、第2の置換基および第3の置換基が-OHである、
(B)該少なくとも3つの置換基のうち、
第1の置換基が-C(=O)H、-C(=O)OHまたは-C(=O)R
aであり、
第2の置換基が-OHであり、
第3の置換基が-OHまたは-R
bである、
または、
(C)該少なくとも3つの置換基のうち、
第1の置換基および第2の置換基が、ベンゼン環上の隣接する炭素原子に結合し、それらが結合する炭素原子と一緒になって、式(y1)または(y2):
【化17】
[式中、Yは、式(ya)~(yc):
【化18】
〔式(ya)中、Xは互いに独立して、水素原子、-OH、置換基を有していてもよい芳香族環、もしくは糖類骨格の1個の水酸基から水素原子を除いた基のいずれかを表すか、または、2つのXが、それらが結合する炭素原子と一緒になってスピロ環を形成し、
式(yb)および(yc)中、Xは互いに独立して、水素原子、-OH、置換基を有していてもよい芳香族環、もしくは糖類骨格の1個の水酸基から水素原子を除いた基のいずれかを表すか、または、隣接する炭素原子に結合する2つのXが、それらが結合する炭素原子と一緒になって6員の飽和もしくは不飽和の炭化水素環を形成し、
式(ya)~(yc)中、*は結合手を表す〕
を表す]
で表される複素環を形成し、
第3の置換基が-OHまたは-R
cである、
ここで、R
a、R
bおよびR
cは、互いに独立に、C
1-3アルコキシ基、またはフラバン-3-オール骨格、糖類骨格、没食子酸骨格、もしくは糖類骨格と没食子酸骨格とが脱水縮合した骨格のいずれかの骨格における1個の水酸基から水素原子を除いた基を表す、
のいずれかを満たす化合物(1)、
但し、(B)または(C)を満たす化合物は(A)を満たす化合物に含まれず、(C)を満たす化合物は(B)を満たす化合物に含まれない、
(2)式(II):
【化19】
で表される化合物(2)、および
(3)式(III):
【化20】
で表される化合物(3)
からなる群から選択される少なくとも1種の化合物からなる、肌の弾力低下の改善剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の成分からなるニトロチロシン減少剤およびその使用、肌の黄ぐすみの改善剤、ならびに肌の弾力低下の改善剤に関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質のニトロ化とは、生体内で発生した活性窒素種によって生じるタンパク質翻訳後修飾のひとつであり、タンパク質を構成する芳香族アミノ酸のチロシン、トリプトファンの残基中のベンゼン環にニトロ基が付与されたものである。ニトロ化反応はアミノ酸中のベンゼン環が、活性窒素種により形成されるニトロニウムイオン(NO2
+)や二酸化窒素ラジカルなどと求電子置換反応を起こすことで生じる(非特許文献1)。生体内に存在する多くのタンパク質中のトリプトファンの含有率はチロシンのそれよりもはるかに小さく、タンパク質のニトロ化反応は主にチロシン残基に生じると考えられている(非特許文献2)。
【0003】
タンパク質のニトロ化が起きると、酵素やチロシンキナーゼ型受容体の機能低下を引き起こすことで、細胞機能に影響を及ぼすことが報告されている(非特許文献3)。また、タンパク質中のニトロチロシンは、動脈硬化や脳虚血性疾患などの加齢に伴う数々の疾患で蓄積し、これらの疾患に関与することが報告されている(非特許文献4)。
【0004】
さらに皮膚では、加齢に伴い、シワ、たるみ、シミ、くすみ等の変化が生じる。くすみにはさまざまな種類があり、透明感の減少によるくすみ(皮膚表面の凹凸による影によるもの、角層肥厚による光透過性の低下によるもの、皮膚表面での乱反射によるつやの低下によるものなど)、皮膚の赤みの低下によるくすみ(血行不良による)、皮膚の色ムラによるくすみ(メラニンの不均一性)、加齢に伴う皮膚の黄みの増加によるくすみなどがある(非特許文献5)。中でも加齢に伴う皮膚色の黄み(b*)の増加は、黄ぐすみとして知られ、老化に伴う特徴的な皮膚の色調変化である。従来、黄ぐすみの主な原因は、真皮中に存在するエラスチンやコラーゲン等のタンパク質の糖化物(特許文献1)やタンパク質のカルボニル化物(特許文献2)であると考えられていたが、本発明者は真皮中タンパク質だけではなく、角層中に存在するタンパク質を構成するアミノ酸がニトロ化されることによって生じるニトロ化タンパク質も黄ぐすみの大きな原因であることを解明した(特許文献3、非特許文献6)。これら糖化、カルボニル化、ニトロ化等、タンパク質の翻訳後修飾は全てその生成および分解機序が異なるため、効果的に黄ぐすみを改善するためにはそれぞれの要因に対処する必要がある。
また、長年紫外線に暴露された肌では、皮膚の柔軟性、弾力性に寄与する弾性線維(エラスチン線維)が異常に蓄積しており、この異常が皮膚の強度や柔軟性・弾力性の喪失をもたらし、ハリの低下や、たるみ、シワ等の皮膚性状の変化に繋がることが知られている。これまで、弾性線維の異常蓄積を改善する成分はほぼ提案されておらず、皮膚の弾力性の喪失に対する効果的な対処法の開発が望まれていた。
【0005】
なかでも、ニトロ化タンパク質に対しては、ニトロ化タンパク質の生成に伴う各種疾患を改善するため、タンパク質のチロシン残基をニトロ化するペルオキシナイトライトを消去する効果成分の提案(特許文献4)、チオール基を持つ物質によりペルオキシナイトライトを補足する効果成分の提案(特許文献5)がなされてきた。しかしながら、これらは全てニトロ化タンパク質の生成を抑制するのみであり、既に生成してしまったニトロ化タンパク質に対しては何らの改善もされておらず、ニトロ化タンパク質の生成に伴う各種疾患の根本的な解決に至っていなかった。そのような状況の中、本発明者は碁石茶(登録商標)抽出物およびハイビスカス抽出物にニトロ化タンパク質分解効果を見出し、これを肌に適用することでニトロ化タンパク質の存在に伴う黄ぐすみを改善できることを見出していた(特許文献3、非特許文献6、特許文献8)。さらに、肌の弾力低下、神経変性疾患、高血圧、喘息、慢性関節リウマチ、糖尿病性腎症、および炎症性腸疾患にニトロ化タンパク質が関与し得ることも報告されている(特許文献9及び非特許文献7~12)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Chem Res Toxicol.、22(5):894-898、2009
【非特許文献2】Front Chem.、3:70、2016
【非特許文献3】Diabetes、57(4):889-98、2008
【非特許文献4】Science、290(5493):985-9、2000
【非特許文献5】日本化粧品工業連合会技術資料、101、148、1995
【非特許文献6】FRAGRANCE JOURNAL、vol.45/No.8、2017
【非特許文献7】Int J Neurosci.、130(10):1047-1062、2020
【非特許文献8】JAMA.、289(13):1675-80、2003
【非特許文献9】Free Radic Res.、38(1):49-57、2004
【非特許文献10】Osteoarthritis Cartilage.、21(1):151-6、2013
【非特許文献11】Kidney Int.、57(5):1968-72、2000
【非特許文献12】J Pathol.、186(4):416-21、1998
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013-133303号公報
【特許文献2】特開2012-32287号公報
【特許文献3】特開2017-178899号公報
【特許文献4】特開2002-326922号公報
【特許文献5】特開2005-170849号公報
【特許文献6】特開平11-106336号公報
【特許文献7】特開2006-160630号公報
【特許文献8】特開2021-147335号公報
【特許文献9】特開2021-124313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、既に生成したニトロ化タンパク質を直接的に分解等することが可能な、優れたニトロチロシン減少作用を有するニトロチロシン減少剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、ニトロチロシンを効果的に減少させる成分を見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は以下の好適な態様を含む。
〔1〕(1)ベンゼン環上に少なくとも3つの置換基を有し、次の(A)~(C):
(A)該少なくとも3つの置換基のうち、第1の置換基、第2の置換基および第3の置換基が-OHである、
(B)該少なくとも3つの置換基のうち、
第1の置換基が-C(=O)H、-C(=O)OHまたは-C(=O)R
aであり、
第2の置換基が-OHであり、
第3の置換基が-OHまたは-R
bである、
または、
(C)該少なくとも3つの置換基のうち、
第1の置換基および第2の置換基が、ベンゼン環上の隣接する炭素原子に結合し、それらが結合する炭素原子と一緒になって、式(y1)または(y2):
【化1】
[式中、Yは、式(ya)~(yc):
【化2】
〔式(ya)中、Xは互いに独立して、水素原子、-OH、置換基を有していてもよい芳香族環、もしくは糖類骨格の1個の水酸基から水素原子を除いた基のいずれかを表すか、または、2つのXが、それらが結合する炭素原子と一緒になってスピロ環を形成し、
式(yb)および(yc)中、Xは互いに独立して、水素原子、-OH、置換基を有していてもよい芳香族環、もしくは糖類骨格の1個の水酸基から水素原子を除いた基のいずれかを表すか、または、隣接する炭素原子に結合する2つのXが、それらが結合する炭素原子と一緒になって6員の飽和もしくは不飽和の炭化水素環を形成し、
式(ya)~(yc)中、*は結合手を表す〕
を表す]
で表される複素環を形成し、
第3の置換基が-OHまたは-R
cである、
ここで、R
a、R
bおよびR
cは、互いに独立に、C
1-3アルコキシ基、またはフラバン-3-オール骨格、糖類骨格、没食子酸骨格、もしくは糖類骨格と没食子酸骨格とが脱水縮合した骨格のいずれかの骨格における1個の水酸基から水素原子を除いた基を表す、
のいずれかを満たす化合物(1)、
但し、(B)または(C)を満たす化合物は(A)を満たす化合物に含まれず、(C)を満たす化合物は(B)を満たす化合物に含まれない、
(2)式(II):
【化3】
で表される化合物(2)、および
(3)式(III):
【化4】
で表される化合物(3)
からなる群から選択される少なくとも1種の化合物からなる、ニトロチロシン減少剤。
〔2〕前記(A)を満たす化合物は、式(IA):
【化5】
[式(IA)中、
R
1A~R
6Aは、互いに独立して、水素原子または-OHを表し、
但し、R
1A~R
6Aの少なくとも3つが-OHを表す]
で表される化合物であり、前記(B)を満たす化合物は、式(IB):
【化6】
[式(IB)中、
R
1Bは、-C(=O)H、-C(=O)OHまたは-C(=O)R
aを表し、
R
2B~R
6Bは、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、-OH、C
1-3アルキル基、または-R
dのいずれかを表し、
但し、
R
2B~R
6Bの少なくとも1つが-OHを表し、少なくとも1つが-R
dを表すか、
または、
R
2B~R
6Bの少なくとも2つが-OHを表し、
R
aおよびR
dは、互いに独立して、C
1-3アルコキシ基、またはフラバン-3-オール骨格、糖類骨格、没食子酸骨格、もしくは糖類骨格と没食子酸骨格とが脱水縮合した骨格のいずれかの骨格における1個の水酸基から水素原子を除いた基を表す]
で表される化合物であり、前記(C)を満たす化合物は、式(IC):
【化7】
[式(IC)中、
R
1CおよびR
2Cは、それらが結合する炭素原子と一緒になって、式(c1)~(c6):
【化8】
〔式(c1)~(c4)中、
R
7C~R
14Cは、
互いに独立して、水素原子、-OH、置換基を有していてもよい芳香族環、もしくは糖類骨格の1個の水酸基から水素原子を除いた基のいずれかを表す、
または
R
7CおよびR
8C、R
9CおよびR
10C、R
11CおよびR
12C、または、R
13CおよびR
14Cが、それらが結合する炭素原子と一緒になって6員の飽和もしくは不飽和の炭化水素環を形成し、
式(c5)および(c6)中、
R
15C~R
18Cは、
互いに独立して、水素原子、-OH、置換基を有していてもよい芳香族環、もしくは糖類骨格の1個の水酸基から水素原子を除いた基のいずれかを表す、
または
R
15CおよびR
16C、または、R
17CおよびR
18Cが、それらが結合する炭素原子と一緒になってスピロ環を形成する〕
のいずれかで表される複素環を形成し、
R
3C~R
6Cは、
互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、-OH、C
1-3アルキル基または-R
eのいずれかを表し、但し、R
3C~R
6Cの少なくとも1つは-OHまたは-R
eを表し、R
eは、C
1-3アルコキシ基、またはフラバン-3-オール骨格、糖類骨格、没食子酸骨格、もしくは糖類骨格と没食子酸骨格とが脱水縮合した骨格のいずれかの骨格における1個の水酸基から水素原子を除いた基を表す、
または
R
3C~R
6Cのうち3つが、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、-OH、C
1-3アルキル基または-R
eのいずれかを表し、R
3C~R
6Cのうち1つが*-C(=O)-O-*または*-O-C(=O)-*の2価の連結基(*は結合手である)を表す、但し、この場合、R
1CおよびR
2Cは、それらが結合する炭素原子と一緒になって、式(c1)~(c4)のいずれかで表される複素環を形成し、式(c1)~(c4)中のR
7CおよびR
8C、R
9CおよびR
10C、R
11CおよびR
12C、または、R
13CおよびR
14Cは、それらが結合する炭素原子と一緒になって6員の飽和もしくは不飽和の炭化水素環を形成し、前記2価の連結基は、前記炭化水素環を構成する炭素原子と式(IC)のベンゼン環上の炭素原子とを連結する]
で表される化合物である、〔1〕に記載のニトロチロシン減少剤。
〔3〕前記式(IB)で表される化合物は、
R
1Bが、-C(=O)H、-C(=O)OH、または-C(=O)-O-CH
3を表し、
R
2B~R
6Bのうち、
3つが水素原子であり、2つが-OHであるか、
3つが水素原子であり、1つが-OHであり、1つがC
1-3アルコキシ基であるか、
2つが水素原子であり、3つが-OHであるか、
2つが水素原子であり、2つが-OHであり、1つがC
1-3アルコキシ基であるか、
または
2つが水素原子であり、1つが-OHであり、2つがC
1-3アルコキシ基である
化合物、および/または、
式(b13):
【化9】
で表される化合物
である、〔2〕に記載のニトロチロシン減少剤。
〔4〕前記式(IC)中のR
1CおよびR
2Cは、
それらが結合する炭素原子と一緒になって式(c1)の複素環を形成するか、
それらが結合する炭素原子と一緒になって式(c2)の複素環を形成するか、
それらが結合する炭素原子と一緒になって式(c3)の複素環を形成するか、または
それらが結合する炭素原子と一緒になって式(c5)の複素環を形成する、
〔2〕または〔3〕に記載のニトロチロシン減少剤。
〔5〕前記式(IA)で表される化合物は、式(a1)および(a2):
【化10】
で表される化合物からなる群から選択され、前記式(IB)で表される化合物は、式(b1)~(b13):
【化11】
で表される化合物からなる群から選択され、前記式(IC)で表される化合物は、式(c7)~(c16):
【化12】
で表される化合物からなる群から選択される、
〔2〕~〔4〕のいずれかに記載のニトロチロシン減少剤。
〔6〕ニトロチロシンを有するタンパク質に起因する疾患または症状の予防または改善のための、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載のニトロチロシン減少剤の使用。
〔7〕前記疾患または症状が、肌の黄ぐすみ、肌の弾力低下、動脈硬化、脳虚血性疾患、神経変性疾患、高血圧、喘息、慢性関節リウマチ、糖尿病性腎症、および炎症性腸疾患からなる群から選択される、〔6〕に記載の使用。
〔8〕(1)ベンゼン環上に少なくとも3つの置換基を有し、次の(A)~(C):
(A)該3つの置換基が-OHである、
(B)該3つの置換基のうち、
第1の置換基が-C(=O)H、-C(=O)OHまたは-C(=O)R
aであり、
第2の置換基が-OHであり、
第3の置換基が-OHまたは-R
bである、
または、
(C)該3つの置換基のうち、
第1の置換基および第2の置換基が、ベンゼン環上の隣接する炭素原子に結合し、それらが結合する炭素原子と一緒になって、式(y1)または(y2):
【化13】
[式中、Yは、式(ya)~(yc):
【化14】
〔式(ya)中、Xは互いに独立して、水素原子、-OH、置換基を有していてもよい芳香族環、もしくは糖類骨格の1個の水酸基から水素原子を除いた基のいずれかを表すか、または、2つのXが、それらが結合する炭素原子と一緒になってスピロ環を形成し、
式(yb)および(yc)中、Xは互いに独立して、水素原子、-OH、置換基を有していてもよい芳香族環、もしくは糖類骨格の1個の水酸基から水素原子を除いた基のいずれかを表すか、または、隣接する炭素原子に結合する2つのXが、それらが結合する炭素原子と一緒になって6員の飽和もしくは不飽和の炭化水素環を形成し、
式(ya)~(yc)中、*は結合手を表す〕
を表す]
で表される複素環を形成し、
第3の置換基が-OHまたは-R
cである、
ここで、R
a、R
bおよびR
cは、互いに独立に、C
1-3アルコキシ基、またはフラバン-3-オール骨格、糖類骨格、没食子酸骨格、もしくは糖類骨格と没食子酸骨格とが脱水縮合した骨格のいずれかの骨格における1個の水酸基から水素原子を除いた基を表す、
のいずれかを満たす化合物(1)、
但し、(B)または(C)を満たす化合物は(A)を満たす化合物に含まれず、(C)を満たす化合物は(B)を満たす化合物に含まれない、
(2)式(II):
【化15】
で表される化合物(2)、および
(3)式(III):
【化16】
で表される化合物(3)
からなる群から選択される少なくとも1種の化合物からなる、肌の黄ぐすみの改善剤。
〔9〕(1)ベンゼン環上に少なくとも3つの置換基を有し、次の(A)~(C):
(A)該少なくとも3つの置換基のうち、第1の置換基、第2の置換基および第3の置換基が-OHである、
(B)該少なくとも3つの置換基のうち、
第1の置換基が-C(=O)H、-C(=O)OHまたは-C(=O)R
aであり、
第2の置換基が-OHであり、
第3の置換基が-OHまたは-R
bである、
または、
(C)該少なくとも3つの置換基のうち、
第1の置換基および第2の置換基が、ベンゼン環上の隣接する炭素原子に結合し、それらが結合する炭素原子と一緒になって、式(y1)または(y2):
【化17】
[式中、Yは、式(ya)~(yc):
【化18】
〔式(ya)中、Xは互いに独立して、水素原子、-OH、置換基を有していてもよい芳香族環、もしくは糖類骨格の1個の水酸基から水素原子を除いた基のいずれかを表すか、または、2つのXが、それらが結合する炭素原子と一緒になってスピロ環を形成し、
式(yb)および(yc)中、Xは互いに独立して、水素原子、-OH、置換基を有していてもよい芳香族環、もしくは糖類骨格の1個の水酸基から水素原子を除いた基のいずれかを表すか、または、隣接する炭素原子に結合する2つのXが、それらが結合する炭素原子と一緒になって6員の飽和もしくは不飽和の炭化水素環を形成し、
式(ya)~(yc)中、*は結合手を表す〕
を表す]
で表される複素環を形成し、
第3の置換基が-OHまたは-R
cである、
ここで、R
a、R
bおよびR
cは、互いに独立に、C
1-3アルコキシ基、またはフラバン-3-オール骨格、糖類骨格、没食子酸骨格、もしくは糖類骨格と没食子酸骨格とが脱水縮合した骨格のいずれかの骨格における1個の水酸基から水素原子を除いた基を表す、
のいずれかを満たす化合物(1)、
但し、(B)または(C)を満たす化合物は(A)を満たす化合物に含まれず、(C)を満たす化合物は(B)を満たす化合物に含まれない、
(2)式(II):
【化19】
で表される化合物(2)、および
(3)式(III):
【化20】
で表される化合物(3)
からなる群から選択される少なくとも1種の化合物からなる、肌の弾力低下の改善剤。
【発明の効果】
【0011】
特定の成分からなる本発明のニトロチロシン減少剤によれば、ニトロチロシンを効果的に減少させることができる。また、本発明のニトロチロシン減少剤によれば、ニトロ化タンパク質に起因する動脈硬化や脳虚血性疾患、細胞機能低下、黄ぐすみ等の各種症状を改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本発明の範囲はここで説明する実施態様に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更をすることができる。
【0013】
本発明のニトロチロシン減少剤は、
(1)ベンゼン環上に少なくとも3つの置換基を有し、次の(A)~(C):
(A)該少なくとも3つの置換基のうち、第1の置換基、第2の置換基および第3の置換基が-OHである、
(B)該少なくとも3つの置換基のうち、
第1の置換基が-C(=O)H、-C(=O)OHまたは-C(=O)R
aであり、
第2の置換基が-OHであり、
第3の置換基が-OHまたは-R
bである、
または、
(C)該少なくとも3つの置換基のうち、
第1の置換基および第2の置換基が、ベンゼン環上の隣接する炭素原子に結合し、それらが結合する炭素原子と一緒になって、式(y1)または(y2):
【化21】
[式中、Yは、式(ya)~(yc):
【化22】
〔式(ya)中、Xは互いに独立して、水素原子、-OH、置換基を有していてもよい芳香族環、もしくは糖類骨格の1個の水酸基から水素原子を除いた基のいずれかを表すか、または、2つのXが、それらが結合する炭素原子と一緒になってスピロ環を形成し、
式(yb)および(yc)中、Xは互いに独立して、水素原子、-OH、置換基を有していてもよい芳香族環、もしくは糖類骨格の1個の水酸基から水素原子を除いた基のいずれかを表すか、または、隣接する炭素原子に結合する2つのXが、それらが結合する炭素原子と一緒になって6員の飽和もしくは不飽和の炭化水素環を形成し、
式(ya)~(yc)中、*は結合手を表す〕
を表す]
で表される複素環を形成し、
第3の置換基が-OHまたは-R
cである、
ここで、R
a、R
bおよびR
cは、互いに独立に、C
1-3アルコキシ基、またはフラバン-3-オール骨格、糖類骨格、没食子酸骨格、もしくは糖類骨格と没食子酸骨格とが脱水縮合した骨格のいずれかの骨格における1個の水酸基から水素原子を除いた基を表す、
のいずれかを満たす化合物(1)、
但し、(B)または(C)を満たす化合物は(A)を満たす化合物に含まれず、(C)を満たす化合物は(B)を満たす化合物に含まれない、
(2)式(II):
【化23】
で表される化合物(2)、および
(3)式(III):
【化24】
で表される化合物(3)
からなる群から選択される少なくとも1種の化合物からなる、ニトロチロシン減少剤である。本発明のニトロチロシン減少剤は、上記の化合物(1)、化合物(2)及び化合物(3)からなる群から選択される少なくとも1種の化合物からなる剤であり、1種類または2種類以上の化合物(1)からなる剤であってもよいし、化合物(2)からなる剤であっても、化合物(3)からなる剤であってもよいし、これらの混合物からなる剤であってもよい。
【0014】
本発明において、ニトロチロシン減少剤は、既に生成されたニトロチロシンを減少させる効果を有する剤である。ニトロチロシンの生成抑制については、これまでにも検討がなされているものの、既に生成されたニトロチロシンを減少させる効果を有する特定の成分からなる剤はこれまでにほとんど検討されていない。また、ニトロチロシンを減少させる効果を有する抽出物は、本発明者によってこれまでに検討されてはいるが、抽出物は種々の成分を含んでいるため、製品に配合する際に製品の貯蔵安定性に影響を及ぼしたりする場合があった。また、抽出物の場合には、所望の効果を得るために比較的多量の抽出物を配合する必要もあった。これに対し本発明は、既に生成されたニトロチロシンを減少させる効果を有する、特定の化合物(1)、化合物(2)及び化合物(3)からなる群から選択される少なくとも1種の化合物からなるニトロチロシン減少剤を提供するものである。上記の化合物(1)、化合物(2)及び化合物(3)からなる群から選択される少なくとも1種の化合物からなる剤が、ニトロチロシンを減少させる効果を有する理由は明らかではないが、これらの化合物は、ニトロチロシンと相互作用しやすい構造を有し得ると考えられる。その結果、ニトロチロシンに効果的に接近し、効率的にニトロチロシンを分解する、またはニトロチロシンを不活性化していると考えられる。このような効果を有するニトロチロシン減少剤を用いることにより、既に生成されてしまったニトロ化タンパク質におけるニトロチロシンを効率的に減少させることができ、その結果、ニトロ化タンパク質に起因する現象、具体的には肌の黄ぐすみ、エラスチン異常蓄積等による肌の弾力低下、動脈硬化、脳虚血性疾患、神経変性疾患、高血圧、喘息、慢性関節リウマチ、糖尿病性腎症、および炎症性腸疾患等の種々の現象を、根本から解決することが可能となると考えられる。なお、本発明は上記のメカニズムに何ら限定されない。
【0015】
<化合物(1)>
化合物(1)は、ベンゼン環上に少なくとも3つの置換基を有し、次の(A)~(C):
(A)該少なくとも3つの置換基のうち、第1の置換基、第2の置換基および第3の置換基が-OHである、
(B)該少なくとも3つの置換基のうち、
第1の置換基が-C(=O)H、-C(=O)OHまたは-C(=O)R
aであり、
第2の置換基が-OHであり、
第3の置換基が-OHまたは-R
bである、
または、
(C)該少なくとも3つの置換基のうち、
第1の置換基および第2の置換基が、ベンゼン環上の隣接する炭素原子に結合し、それらが結合する炭素原子と一緒になって、式(y1)または(y2):
【化25】
[式中、Yは、式(ya)~(yc):
【化26】
〔式(ya)中、Xは互いに独立して、水素原子、-OH、置換基を有していてもよい芳香族環、もしくは糖類骨格の1個の水酸基から水素原子を除いた基のいずれかを表すか、または、2つのXが、それらが結合する炭素原子と一緒になってスピロ環を形成し、
式(yb)および(yc)中、Xは互いに独立して、水素原子、-OH、置換基を有していてもよい芳香族環、もしくは糖類骨格の1個の水酸基から水素原子を除いた基のいずれかを表すか、または、隣接する炭素原子に結合する2つのXが、それらが結合する炭素原子と一緒になって6員の飽和もしくは不飽和の炭化水素環を形成し、
式(ya)~(yc)中、*は結合手を表す〕
を表す]
で表される複素環を形成し、
第3の置換基が-OHまたは-R
cである、
ここで、R
a、R
bおよびR
cは、互いに独立に、C
1-3アルコキシ基、またはフラバン-3-オール骨格、糖類骨格、没食子酸骨格、もしくは糖類骨格と没食子酸骨格とが脱水縮合した骨格のいずれかの骨格における1個の水酸基から水素原子を除いた基を表す、
のいずれかを満たす化合物である。但し、(B)または(C)を満たす化合物は(A)を満たす化合物に含まれず、(C)を満たす化合物は(B)を満たす化合物に含まれない。
【0016】
化合物(1)は、ベンゼン環と、該ベンゼン環上に特定の3つの置換基とを有する化合物であり、このような化合物は、ベンゼン環部分においてチロシンのベンゼン環部分とπ-π相互作用をしやすいと考えられる。さらに、驚くべきことに、特定の3つの置換基をベンゼン環上に有することにより、ニトロチロシンのベンゼン環上のニトロ基などに作用しやすいと考えられ、その結果、ニトロチロシンの減少率を高めやすいと考えられる。
【0017】
((A)を満たす化合物)
化合物(1)のうち、上記の(A)を満たす化合物は、ベンゼン環上に少なくとも3つの置換基を有し、該少なくとも3つの置換基のうち、第1の置換基、第2の置換基および第3の置換基が-OHである化合物である。(A)を満たす化合物は、ベンゼン環上に上記の特定の第1~第3の置換基(-OH)を有する限り、さらなる置換基を有していてもよいし、有していなくてもよい。さらなる置換基は、-OHであってもよいし、-OHとは異なる他の置換基であってもよい。他の置換基としては、特に限定されないが、C1-3アルキル基、C1-3アルコキシ基、またはハロゲン基が挙げられる。なお、本明細書において、C1-3アルキル基は、炭素数が1~3のアルキル基を表し、該アルキル基は直鎖状であっても分枝鎖状であってもよい。また、C1-3アルコキシ基は、炭素数が1~3のアルコキシ基を表し、該アルコキシ基に含まれるアルキル基も、直鎖状であっても分枝鎖状であってもよい。
【0018】
C1-3アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基が挙げられ、好ましくはメチル基およびエチル基、より好ましくはメチル基である。C1-3アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基が挙げられ、好ましくはメトキシ基およびエトキシ基、より好ましくはメトキシ基である。ハロゲン基としては、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基が挙げられる。
【0019】
(A)を満たす化合物がベンゼン環上に有し得る-OH以外の他の置換基の数は、好ましくは2個以下、より好ましくは1個以下であり、(A)を満たす化合物は、-OH以外の他の置換基を有さないことがさらに好ましい。
【0020】
本発明の好ましい一実施形態において、(A)を満たす化合物は、式(IA):
【化27】
[式(IA)中、
R
1A~R
6Aは、互いに独立して、水素原子または-OHを表し、
但し、R
1A~R
6Aの少なくとも3つが-OHを表す]
で表される化合物である。
【0021】
上記の式(IA)中、R
1A~R
6Aは、互いに独立して、水素原子または-OHを表し、R
1A~R
6Aは、これらのうちの好ましくは3~5つ、より好ましくは3~4つ、さらに好ましくは3つが-OHを表す。式(IA)で表される化合物は、好ましくはトリヒドロキシベンゼンであり、より好ましくは1,2,3-ベンゼントリオール、1,2,4-ベンゼントリオール、および1,3,5-ベンゼントリオールからなる群から選択され、さらに好ましくは式(a1)で表される1,2,3-ベンゼントリオール、および式(a2)で表される1,2,4-ベンゼントリオールからなる群から選択される。
【化28】
【0022】
((B)を満たす化合物)
化合物(1)のうち、上記の(B)を満たす化合物は、ベンゼン環上に少なくとも3つの置換基を有し、該少なくとも3つの置換基のうち、第1の置換基が-C(=O)H、-C(=O)OHまたは-C(=O)Raであり、第2の置換基が-OHであり、第3の置換基が-OHまたは-Rbである化合物である。ここで、RaおよびRbは、互いに独立に、C1-3アルコキシ基、またはフラバン-3-オール骨格、糖類骨格、没食子酸骨格、もしくは糖類骨格と没食子酸骨格とが脱水縮合した骨格のいずれかの骨格における1個の水酸基から水素原子を除いた基を表す。
【0023】
化合物(1)のうち、上記の(B)を満たす化合物は、ベンゼン環上に少なくとも3つの置換基を有し、該少なくとも3つの置換基のうちの第1の置換基、第2の置換基、および第3の置換基が特定の基を表す化合物である限り特に限定されず、該第1~第3の置換基以外に、さらなる置換基を有していてもよい。
【0024】
(B)を満たす化合物がベンゼン環上に有する第1の置換基は、-C(=O)H、-C(=O)OHまたは-C(=O)Raであり、Raは、C1-3アルコキシ基、またはフラバン-3-オール骨格、糖類骨格、没食子酸骨格、もしくは糖類骨格と没食子酸骨格とが脱水縮合した骨格のいずれかの骨格における1個の水酸基から水素原子を除いた基を表す。
【0025】
RaにおけるC1-3アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基が挙げられ、好ましくはメトキシ基およびエトキシ基、より好ましくはメトキシ基である。
【0026】
Raにおけるフラバン-3-オール骨格、糖類骨格、没食子酸骨格、もしくは糖類骨格と没食子酸骨格とが脱水縮合した骨格のいずれかの骨格における1個の水酸基から水素原子を除いた基に関し、これらの骨格はいずれも少なくとも1個の水酸基(-OH)を有する。そして、該1個の-OHの水素原子を除いた-O-を介して、(B)を満たす化合物のベンゼン環上に結合するカルボニル炭素に結合している。これらの骨格は、上記の1個の-OH以外に、さらなる置換基を有していてもよい。さらなる置換基としては、-OH、C1-3アルキル基、C1-3アルコキシ基、またはハロゲン基が挙げられる。C1-3アルキル基およびC1-3アルコキシ基の例としては、上記に記載した基が挙げられる。
【0027】
フラバン-3-オール骨格における1個の水酸基から水素原子を除いた基は、好ましくは式(d1):
【化29】
[式(d1)中、
R
19およびR
20は、互いに独立に、-OHまたはC
1-3アルコキシ基、好ましくは-OHまたは-OCH
3、より好ましくは-OHを表し、mは0~4の整数、好ましくは2または3の整数を表し、nは0~5の整数、好ましくは1~3の整数を表し、*は結合手を表す]
で表され、より好ましくは式(d1-1):
【化30】
[式(d1-1)中、*は結合手を表す]
で表される。
【0028】
糖類骨格における1個の水酸基から水素原子を除いた基に関し、糖類骨格は単糖または多糖のいずれであってもよいが、好ましくは単糖または二糖である。糖類骨格としては、ペントース、ヘキトース、デオキシペントース、デオキシヘキソースなどの単糖、またはこれらの多糖が挙げられ、例えば五炭糖アルドース、六炭糖アルドース、これらのデオキシ糖等の単糖、またはこれらの多糖が挙げられる。五炭糖アルドースとしては、リボース、アラビノース、アラビノフラロース、キシロース、リキソースが挙げられ、六炭糖アルドースとしては、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロースが挙げられる。また、五炭糖アルドースのデオキシ糖としては、上記の五炭糖のヒドロキシ基の1つが水素原子に置き換わったデオキシペントース、具体的にはデオキシリボース等が挙げられ、六炭糖アルドースのデオキシ糖としては、上記の六炭糖のヒドロキシ基の1つが水素原子に置き換わったデオキシヘキソース、具体的にはフコース、フクロース、ラムノース等が挙げられる。
【0029】
糖類骨格における1個の水酸基から水素原子を除いた基としては、好ましくは式(d2-1):
【化31】
[式(d2-1)中、R
21は-CH
2-OHまたは-CH
3を表す]
で表される基、または式(d2-2):
【化32】
[式(d2-2)中、R
22は-CH
2-OHまたは-CH
3を表し、*は結合手を表す]
で表される基、または式(d2-3):
【化33】
[式(d2-3)中、R
23およびR
24は、互いに独立して、-CH
2-OHまたは-CH
3を表し、*は結合手を表す]
で表される基が挙げられる。なお、上記の糖類骨格の立体異性は特に限定されない。
【0030】
没食子酸骨格における1個の水酸基から水素原子を除いた基としては、式(d3-1):
【化34】
[式(d3-1)中、*は結合手を表す]
で表される基が挙げられる。
【0031】
糖類骨格と没食子酸骨格とが脱水縮合した骨格における1個の水酸基から水素原子を除いた基に関し、該骨格は、1以上の糖類骨格と1以上の没食子酸骨格とが脱水縮合した骨格である。このような骨格としては、例えば、単環の糖類骨格における-OHと、没食子酸骨格のカルボキシル基部分の-OHとが脱水縮合した骨格、および、単環の糖類骨格における-OHと、没食子酸骨格のカルボキシル基部分の-OHとが脱水縮合し、さらに、没食子酸骨格のベンゼン環上の-OHとさらなる没食子酸骨格のカルボキシル基部分の-OHとが脱水縮合した骨格が挙げられる。このような基としては、例えば、式(d4-1):
【化35】
[式(d4-1)中、*は結合手を表す]
で表される基、ならびにその立体異性体が挙げられる。
【0032】
Raは、好ましくはC1-3アルコキシ基、フラバン-3-オール骨格における1個の水酸基から水素原子を除いた基、または糖類骨格と没食子酸骨格とが脱水縮合した骨格における1個の水酸基から水素原子を除いた基であり、より好ましくはメトキシ基、式(d1)で表される基、または、式(d4-1)で表される基である。
【0033】
(B)を満たす化合物がベンゼン環上に有する第3の置換基は、-OHまたは-Rbである。Rbは、C1-3アルコキシ基、またはフラバン-3-オール骨格、糖類骨格、没食子酸骨格、もしくは糖類骨格と没食子酸骨格とが脱水縮合した骨格のいずれかの骨格における1個の水酸基から水素原子を除いた基を表す。
【0034】
RbにおけるC1-3アルコキシ基としては、RaにおけるC1-3アルコキシ基について上記に述べた基が挙げられ、好ましい基が同様に当てはまる。
【0035】
Rbにおけるフラバン-3-オール骨格、糖類骨格、没食子酸骨格、もしくは糖類骨格と没食子酸骨格とが脱水縮合した骨格のいずれかの骨格における1個の水酸基から水素原子を除いた基に関し、上記の骨格はいずれも少なくとも1個の水酸基(-OH)を有する。そして、該1個の-OHの水素原子を除いた-O-を介して、(B)を満たす化合物のベンゼン環上の炭素原子に結合している。これらの骨格は、上記の1個の水酸基以外に、さらなる置換基を有していてもよい。さらなる置換基としては、-OH、C1-3アルキル基、C1-3アルコキシ基、またはハロゲン基が挙げられる。C1-3アルキル基およびC1-3アルコキシ基の例は、上記に記載した通りである。
【0036】
Rbにおけるフラバン-3-オール骨格、糖類骨格、没食子酸骨格、もしくは糖類骨格と没食子酸骨格とが脱水縮合した骨格のいずれかの骨格における1個の水酸基から水素原子を除いた基としては、Raについて上記に述べた基が挙げられる。
【0037】
Rbは、好ましくはC1-3アルコキシ基であり、より好ましくはメトキシ基またはエトキシ基である。
【0038】
上記の(B)を満たす化合物は、上記の第1~第3の置換基以外に、さらなる置換基を有していてもよく、該さらなる置換基としては、-OH、ハロゲン基、C1-3アルキル基、C1-3アルコキシ基、または、フラバン-3-オール骨格、糖類骨格、没食子酸骨格、もしくは糖類骨格と没食子酸骨格とが脱水縮合した骨格のいずれかの骨格における1個の水酸基から水素原子を除いた基が挙げられる。ハロゲン基、C1-3アルキル基、C1-3アルコキシ基、および上記のフラバン-3-オール骨格等の骨格における1個の水酸基から水素原子を除いた基としては、上記に述べた基が挙げられる。
【0039】
本発明の好ましい一実施形態において、上記の(B)を満たす化合物は、式(IB):
【化36】
[式(IB)中、
R
1Bは、-C(=O)H、-C(=O)OHまたは-C(=O)R
aを表し、
R
2B~R
6Bは、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、-OH、C
1-3アルキル基、または-R
dのいずれかを表し、
但し、
R
2B~R
6Bの少なくとも1つが-OHを表し、少なくとも1つが-R
dを表すか、
または、
R
2B~R
6Bの少なくとも2つが-OHを表し、
R
aおよびR
dは、互いに独立して、C
1-3アルコキシ基、またはフラバン-3-オール骨格、糖類骨格、没食子酸骨格、もしくは糖類骨格と没食子酸骨格とが脱水縮合した骨格のいずれかの骨格における1個の水酸基から水素原子を除いた基を表す]
で表される化合物である。
【0040】
上記の式(IB)中、R1Bは、上記の(B)を満たす化合物がベンゼン環上に有する第1の置換基に相当し、-C(=O)H、-C(=O)OHまたは-C(=O)Raを表す。Raについては、第1の置換基に関するRaについての記載が同様に当てはまる。
【0041】
R2B~R6Bは、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、-OH、C1-3アルキル基、または-Rdのいずれかを表す。C1-3アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基が挙げられ、好ましくはメチル基およびエチル基、より好ましくはメチル基である。
【0042】
式(IB)中、R2B~R6Bの少なくとも1つが-OHを表し、少なくとも1つが-Rdを表すか、または、R2B~R6Bの少なくとも2つが-OHを表す。言い換えると、R2B~R6Bのうちの1つが-OHであり、R2B~R6Bのうちの1つが-OHまたは-Rdであり、R2B~R6Bのうちの残りの3つは、水素原子、ハロゲン原子、-OH、C1-3アルキル基、または-Rdのいずれかを表す。Rdにおけるフラバン-3-オール骨格、糖類骨格、没食子酸骨格、もしくは糖類骨格と没食子酸骨格とが脱水縮合した骨格のいずれかの骨格における1個の水酸基から水素原子を除いた基に関し、上記の骨格はいずれも少なくとも1個の水酸基(-OH)を有する。そして、該1個の-OHの水素原子を除いた-O-を介して、式(IB)を満たす化合物のベンゼン環上の炭素原子に結合している。これらの骨格は、該1個の-OH以外のさらなる置換基を有していてもよい。さらなる置換基としては、-OH、C1-3アルキル基、C1-3アルコキシ基、またはハロゲン基が挙げられる。C1-3アルキル基、C1-3アルコキシ基およびハロゲン基の例は、上記に記載した通りである。
【0043】
Rdは、好ましくはC1-3アルコキシ基または糖類骨格における1個の水酸基から水素原子を除いた基であり、より好ましくはC1-3アルコキシ基である。
【0044】
式(IB)で表される化合物は、ニトロチロシン減少効果をより高めやすい観点から、好ましくは、式(IB)中の、
R
1Bが、-C(=O)H、-C(=O)OH、または-C(=O)-O-CH
3を表し、
R
2B~R
6Bのうち、
3つが水素原子であり、2つが-OHであるか、
3つが水素原子であり、1つが-OHであり、1つがC
1-3アルコキシ基であるか、
2つが水素原子であり、3つが-OHであるか、
2つが水素原子であり、2つが-OHであり、1つがC
1-3アルコキシ基であるか、
または
2つが水素原子であり、1つが-OHであり、2つがC
1-3アルコキシ基である
化合物、および/または、
式(b13):
【化37】
で表される化合物である。
【0045】
式(IB)で表される化合物は、より好ましくは以下:
R1Bが-C(=O)Hを表し、R2B~R6Bの2つが-OHを表し、R2B~R6Bの残りの4つが水素原子を表す、ジヒドロキシベンズアルデヒド、
R1Bが-C(=O)Hを表し、R2B~R6Bの1つが-OHを表し、R2B~R6Bの別の1つが-Rdを表し、Rdは上記に記載の通りであり、R2B~R6Bの残りの4つが水素原子を表す、ジヒドロキシベンズアルデヒド誘導体、
R1Bが-C(=O)OHを表し、R2B~R6Bの2つが-OHを表し、R2B~R6Bの残りの4つが水素原子を表す、ジヒドロキシ安息香酸、
R1Bが-C(=O)OHを表し、R2B~R6Bの1つが-OHを表し、R2B~R6Bの別の1つが-Rdを表し、Rdは上記に記載の通りであり、R2B~R6Bの残りの4つが水素原子を表す、ジヒドロキシ安息香酸誘導体、
R1Bが-C(=O)Hを表し、R2B~R6Bの3つが-OHを表し、R2B~R6Bの残りの2つが水素原子を表す、トリヒドロキシベンズアルデヒド、
R1Bが-C(=O)Hを表し、R2B~R6Bの1つが-OHを表し、R2B~R6Bの別の1つが-Rdを表し、R2B~R6Bの別の1つが-OHまたは-Rdを表し、Rdは上記に記載の通りであり、R2B~R6Bの残りの2つが水素原子を表す、トリヒドロキシベンズアルデヒド誘導体、
R1Bが-C(=O)OHを表し、R2B~R6Bの3つが-OHを表し、R2B~R6Bの残りの2つが水素原子を表す、トリヒドロキシ安息香酸、
R1Bが-C(=O)OHを表し、R2B~R6Bの1つが-OHを表し、R2B~R6Bの別の1つが-Rdを表し、R2B~R6Bの別の1つが-OHまたは-Rdを表し、Rdは上記に記載の通りであり、R2B~R6Bの残りの2つが水素原子を表す、トリヒドロキシ安息香酸誘導体
が挙げられる。
【0046】
式(IB)で表される化合物は、さらに好ましくは次の式(b1)~(b13):
【化38】
で表される化合物からなる群から選択される化合物である。
【0047】
式(IB)で表される化合物は、好ましくは、少なくとも2つのヒドロキシル基を有する、または、少なくとも1つのヒドロキシル基と少なくとも1つのアルコキシ基を有する、ベンズアルデヒド、安息香酸、安息香酸エステル(安息香酸アルキルエステル、安息香酸とエピガロカテキンとのエステル、安息香酸と糖類骨格とのエステルなど)であり、例えば式(b1)の3,4-ジヒドロキシベンズアルデヒド、式(b2)の2,5-ジヒドロキシ安息香酸、式(b3)の3,5-ジヒドロキシ安息香酸、式(b4)の2,5-ジヒドロキシ安息香酸メチル、式(b5)の3-メトキシ-4-ヒドロキシベンズアルデヒド、式(b6)の3-メトキシ-2-ヒドロキシベンズアルデヒド、式(b7)の3-エトキシ-4-ヒドロキシベンズアルデヒド、式(b8)の2,3,4-トリヒドロキシベンズアルデヒド、(b9)の没食子酸、(b10)の3,5-ジメトキシ-4-ヒドロキシベンズアルデヒド、(b11)の没食子酸プロピル、(b12)の没食子酸エピガロカテキン、および(b13)のタンニン酸である。
【0048】
((C)を満たす化合物)
化合物(1)のうち、上記の(C)を満たす化合物は、ベンゼン環上に少なくとも3つの置換基を有し、該少なくとも3つの置換基のうち、第1の置換基および第2の置換基が、ベンゼン環上の隣接する炭素原子に結合し、それらが結合する炭素原子と一緒になって、式(y1)または(y2):
【化39】
[式中、Yは、式(ya)~(yc):
【化40】
〔式(ya)中、Xは互いに独立して、水素原子、-OH、置換基を有していてもよい芳香族環、もしくは糖類骨格の1個の水酸基から水素原子を除いた基のいずれかを表すか、または、2つのXが、それらが結合する炭素原子と一緒になってスピロ環を形成し、
式(yb)および(yc)中、Xは互いに独立して、水素原子、-OH、置換基を有していてもよい芳香族環、もしくは糖類骨格の1個の水酸基から水素原子を除いた基のいずれかを表すか、または、隣接する炭素原子に結合する2つのXが、それらが結合する炭素原子と一緒になって6員の飽和もしくは不飽和の炭化水素環を形成し、
式(ya)~(yc)中、*は結合手を表す〕
を表す]
で表される複素環を形成し、
第3の置換基が-OHまたは-R
cである化合物である。ここで、R
cは、C
1-3アルコキシ基、またはフラバン-3-オール骨格、糖類骨格、没食子酸骨格、もしくは糖類骨格と没食子酸骨格とが脱水縮合した骨格のいずれかの骨格における1個の水酸基から水素原子を除いた基を表す。
【0049】
化合物(1)のうち、上記の(C)を満たす化合物は、ベンゼン環上に少なくとも3つの置換基を有し、該少なくとも3つの置換基のうちの第1の置換基および第2の置換基が特定の構造を形成し、第3の置換基が特定の基を表す化合物である限り特に限定されず、該第1~第3の置換基以外に、さらなる置換基を有していてもよい。
【0050】
第1の置換基および第2の置換基は、ベンゼン環上の隣接する炭素原子に結合し、それらが結合する炭素原子と一緒になって、式(y1)または(y2):
【化41】
[式中、Yは、式(ya)~(yc):
【化42】
〔式(ya)中、Xは互いに独立して、水素原子、-OH、置換基を有していてもよい芳香族環、もしくは糖類骨格の1個の水酸基から水素原子を除いた基のいずれかを表すか、または、2つのXが、それらが結合する炭素原子と一緒になってスピロ環を形成し、
式(yb)および(yc)中、Xは互いに独立して、水素原子、-OH、置換基を有していてもよい芳香族環、もしくは糖類骨格の1個の水酸基から水素原子を除いた基のいずれかを表すか、または、隣接する炭素原子に結合する2つのXが、それらが結合する炭素原子と一緒になって6員の飽和もしくは不飽和の炭化水素環を形成し、
式(ya)~(yc)中、*は結合手を表す〕
を表す]
で表される複素環を形成する。
【0051】
式(ya)におけるXは互いに独立して、水素原子、-OH、置換基を有していてもよい芳香族環、もしくは糖類骨格の1個の水酸基から水素原子を除いた基のいずれかを表すか、または、2つのXが、それらが結合する炭素原子と一緒になってスピロ環を形成し、
式(yb)および(yc)中、Xは互いに独立して、水素原子、-OH、置換基を有していてもよい芳香族環、もしくは糖類骨格の1個の水酸基から水素原子を除いた基のいずれかを表すか、または、隣接する炭素原子に結合する2つのXが、それらが結合する炭素原子と一緒になって6員の飽和もしくは不飽和の炭化水素環を形成する。
【0052】
置換基を有していてもよい芳香族環としては、0~5個の-OHおよび/またはC1-3アルコキシ基を有するベンゼン環、好ましくは0~3個の-OHおよび/またはC1-3アルコキシ基を有するベンゼン環、より好ましくは0~2個の-OHおよび/またはC1-3アルコキシ基を有するベンゼン環が挙げられる。
【0053】
糖類骨格の1個の水酸基から水素原子を除いた基としては、Raについて上記に述べた糖類骨格における1個の水酸基から水素原子を除いた基が挙げられ、好ましくは式(d2-1)~(d2-3)で表される基が挙げられる。なお、糖類骨格の立体異性は特に限定されない。
【0054】
(C)を満たす化合物がベンゼン環上に有する第3の置換基は、-OHまたは-Rcであり、Rcは、C1-3アルコキシ基、またはフラバン-3-オール骨格、糖類骨格、没食子酸骨格、もしくは糖類骨格と没食子酸骨格とが脱水縮合した骨格のいずれかの骨格における1個の水酸基から水素原子を除いた基を表す。
【0055】
RcにおけるC1-3アルコキシ基としては、RaにおけるC1-3アルコキシ基について上記に述べた基が挙げられ、好ましい基が同様に当てはまる。
【0056】
Rcにおけるフラバン-3-オール骨格、糖類骨格、没食子酸骨格、もしくは糖類骨格と没食子酸骨格とが脱水縮合した骨格のいずれかの骨格における1個の水酸基から水素原子を除いた基に関し、上記の骨格はいずれも少なくとも1個の水酸基(-OH)を有する。そして、該1個の-OHの水素原子を除いた-O-を介して、(C)を満たす化合物のベンゼン環上の炭素原子に結合している。これらの骨格は、上記の1個の水酸基以外に、さらなる置換基を有していてもよい。さらなる置換基としては、-OH、C1-3アルキル基、C1-3アルコキシ基、またはハロゲン基が挙げられる。C1-3アルキル基およびC1-3アルコキシ基の例は、上記に記載した通りである。
【0057】
Rcにおけるフラバン-3-オール骨格、糖類骨格、没食子酸骨格、もしくは糖類骨格と没食子酸骨格とが脱水縮合した骨格のいずれかの骨格における1個の水酸基から水素原子を除いた基としては、Raについて上記に述べた基が挙げられる。
【0058】
Rcは、好ましくはC1-3アルコキシ基または糖類骨格における1個の水酸基から水素原子を除いた基であり、より好ましくは糖類骨格における1個の水酸基から水素原子を除いた基であり、さらに好ましくは式(d2-1)~(d2-3)で表される基であり、さらにより好ましくは式(d2-1)または式(d2-3)で表される基である。
【0059】
上記の(C)を満たす化合物は、上記の第1~第3の置換基以外に、さらなる置換基を有していてもよく、該さらなる置換基としては、-OH、ハロゲン基、C1-3アルキル基、C1-3アルコキシ基、または、フラバン-3-オール骨格、糖類骨格、没食子酸骨格、もしくは糖類骨格と没食子酸骨格とが脱水縮合した骨格のいずれかの骨格における1個の水酸基から水素原子を除いた基が挙げられる。ハロゲン基、C1-3アルキル基、C1-3アルコキシ基、および上記のフラバン-3-オール骨格等の骨格における1個の水酸基から水素原子を除いた基としては、上記に述べた基が挙げられる。
【0060】
本発明の好ましい一実施形態において、(C)を満たす化合物は、式(IC):
【化43】
[式(IC)中、
R
1CおよびR
2Cは、それらが結合する炭素原子と一緒になって、式(c1)~(c6):
【化44】
〔式(c1)~(c4)中、
R
7C~R
14Cは、
互いに独立して、水素原子、-OH、置換基を有していてもよい芳香族環、もしくは糖類骨格の1個の水酸基から水素原子を除いた基のいずれかを表す、
または
R
7CおよびR
8C、R
9CおよびR
10C、R
11CおよびR
12C、または、R
13CおよびR
14Cが、それらが結合する炭素原子と一緒になって6員の飽和もしくは不飽和の炭化水素環を形成し、
式(c5)および(c6)中、
R
15C~R
18Cは、
互いに独立して、水素原子、-OH、置換基を有していてもよい芳香族環、もしくは糖類骨格の1個の水酸基から水素原子を除いた基のいずれかを表す、
または
R
15CおよびR
16C、または、R
17CおよびR
18Cが、それらが結合する炭素原子と一緒になってスピロ環を形成する〕
のいずれかで表される複素環を形成し、
R
3C~R
6Cは、
互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、-OH、C
1-3アルキル基または-R
eのいずれかを表し、但し、R
3C~R
6Cの少なくとも1つは-OHまたは-R
eを表し、R
eは、C
1-3アルコキシ基、またはフラバン-3-オール骨格、糖類骨格、没食子酸骨格、もしくは糖類骨格と没食子酸骨格とが脱水縮合した骨格のいずれかの骨格における1個の水酸基から水素原子を除いた基を表す、
または
R
3C~R
6Cのうち3つが、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、-OH、C
1-3アルキル基または-R
eのいずれかを表し、R
3C~R
6Cのうち1つが*-C(=O)-O-*または*-O-C(=O)-*の2価の連結基(*は結合手である)を表す、但し、この場合、R
1CおよびR
2Cは、それらが結合する炭素原子と一緒になって、式(c1)~(c4)のいずれかで表される複素環を形成し、式(c1)~(c4)中のR
7CおよびR
8C、R
9CおよびR
10C、R
11CおよびR
12C、または、R
13CおよびR
14Cは、それらが結合する炭素原子と一緒になって6員の飽和もしくは不飽和の炭化水素環を形成し、前記2価の連結基は、前記炭化水素環を構成する炭素原子と式(IC)のベンゼン環上の炭素原子とを連結する]
で表される化合物である。
【0061】
式(IC)中の置換基R1C~R6Cのうち、R1CおよびR2Cは、隣接する炭素原子に結合する基であり、それらが結合する炭素原子と一緒になって、上記の式(c1)~(c6)のいずれかで表される複素環を形成する。前記式(IC)中のR1CおよびR2Cは、好ましくは、
それらが結合する炭素原子と一緒になって式(c1)の複素環を形成するか、
それらが結合する炭素原子と一緒になって式(c2)の複素環を形成するか、
それらが結合する炭素原子と一緒になって式(c3)の複素環を形成するか、または
それらが結合する炭素原子と一緒になって式(c5)の複素環を形成する。
【0062】
式(c1)~(c4)において、
(a-i)R7C~R14Cは、互いに独立して、水素原子、-OH、置換基を有していてもよい芳香族環、もしくは糖類骨格の1個の水酸基から水素原子を除いた基のいずれかを表すか、または
(a-ii)R7CおよびR8C、R9CおよびR10C、R11CおよびR12C、または、R13CおよびR14Cが、それらが結合する炭素原子と一緒になって6員の飽和もしくは不飽和の炭化水素環を形成する。但し、(a-ii)の場合、2組のR11CおよびR12Cが共に上記の炭化水素環を形成する態様、および2組のR13CおよびR14Cが共に上記の炭化水素環を形成する態様は含まない。
【0063】
上記(a-i)の場合にR7C~R14Cが表し得る、置換基を有していてもよい芳香族環としては、0~5個の-OHおよび/またはC1-3アルコキシ基を有するベンゼン環、好ましくは0~3個の-OHおよび/またはC1-3アルコキシ基を有するベンゼン環、より好ましくは0~2個の-OHおよび/またはC1-3アルコキシ基を有するベンゼン環が挙げられる。糖類骨格の1個の水酸基から水素原子を除いた基としては、Raについて上記に述べた糖類骨格における1個の水酸基から水素原子を除いた基が挙げられ、好ましくは式(d2-1)~(d2-3)で表される基が挙げられる。なお、糖類骨格の立体異性は特に限定されない。
【0064】
上記(a-ii)の場合、R7CおよびR8C、R9CおよびR10C、R11CおよびR12C、または、R13CおよびR14Cが、それらが結合する炭素原子と一緒になって形成する6員の飽和もしくは不飽和の炭化水素環は置換基を有していてもよく、好ましくは置換基を有していてもよい不飽和の6員環(ベンゼン環)であり、より好ましくは-OHを有するベンゼン環である。置換基としては、-OH、ハロゲン基、C1-3アルキル基、C1-3アルコキシ基、または、フラバン-3-オール骨格、糖類骨格、没食子酸骨格、もしくは糖類骨格と没食子酸骨格とが脱水縮合した骨格のいずれかの骨格における1個の水酸基から水素原子を除いた基が挙げられる。ハロゲン基、C1-3アルキル基、C1-3アルコキシ基、および上記のフラバン-3-オール骨格等の骨格における1個の水酸基から水素原子を除いた基としては、上記に述べた基が挙げられる。
【0065】
式(c5)および(c6)において、
(b-i)R15C~R18Cは、互いに独立して、水素原子、-OH、置換基を有していてもよい芳香族環、もしくは糖類骨格の1個の水酸基から水素原子を除いた基のいずれかを表すか、または
(b-ii)R15CおよびR16C、または、R17CおよびR18Cが、それらが結合する炭素原子と一緒になってスピロ環を形成する。
【0066】
上記(b-i)の場合にR15C~R18Cが表し得る、置換基を有していてもよい芳香族環としては、上記(a-i)の場合にR7C~R14Cが表し得る、置換基を有していてもよい芳香族環に関する記載が同様に当てはまる。また、糖類骨格の1個の水酸基から水素原子を除いた基についても、上記(a-i)の場合にR7C~R14Cが表し得る該基に関する記載が同様に当てはまる。
【0067】
上記(b-ii)の場合に、R
15CおよびR
16C、または、R
17CおよびR
18Cが、それらが結合する炭素原子と一緒になって形成するスピロ環は、好ましくは式(s):
【化45】
[式(s)中、*が付される炭素原子は、R
15CおよびR
16C、または、R
17CおよびR
18Cが結合するスピロ炭素原子を表す]
で表されるスピロ環である。
【0068】
式(IC)中の置換基R1C~R6Cのうち、R1CおよびR2Cが上記に記載の特徴を満たすと共に、さらに、
(c-i)R3C~R6Cは、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、-OH、C1-3アルキル基または-Reのいずれかを表し、但し、R3C~R6Cの少なくとも1つは-OHまたは-Reを表し、Reは、C1-3アルコキシ基、またはフラバン-3-オール骨格、糖類骨格、没食子酸骨格、もしくは糖類骨格と没食子酸骨格とが脱水縮合した骨格のいずれかの骨格における1個の水酸基から水素原子を除いた基を表す、
または
(c-ii)R3C~R6Cのうち3つが、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、-OH、C1-3アルキル基または-Reのいずれかを表し、R3C~R6Cのうち1つが*-C(=O)-O-*または*-O-C(=O)-*の2価の連結基(*は結合手である)を表す、但し、この場合、R1CおよびR2Cは、それらが結合する炭素原子と一緒になって、式(c1)~(c4)のいずれかで表される複素環を形成し、式(c1)~(c4)中のR7CおよびR8C、R9CおよびR10C、R11CおよびR12C、または、R13CおよびR14Cは、それらが結合する炭素原子と一緒になって6員の飽和もしくは不飽和の炭化水素環を形成し、前記2価の連結基は、前記炭化水素環を構成する炭素原子と式(IC)のベンゼン環上の炭素原子とを連結する。
【0069】
上記(c-i)の場合にR3C~R6Cが表し得るC1-3アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基が挙げられ、好ましくはメチル基およびエチル基、より好ましくはメチル基である。
【0070】
上記(c-i)の場合にR3C~R6Cが表し得る-ReにおけるC1-3アルコキシ基としては、RaにおけるC1-3アルコキシ基について上記に述べた基が挙げられ、好ましい基が同様に当てはまる。
【0071】
Reにおけるフラバン-3-オール骨格、糖類骨格、没食子酸骨格、もしくは糖類骨格と没食子酸骨格とが脱水縮合した骨格のいずれかの骨格における1個の水酸基から水素原子を除いた基としては、Raについて上記に述べた基が挙げられる。
【0072】
Reは、好ましくはC1-3アルコキシ基または糖類骨格における1個の水酸基から水素原子を除いた基である。
【0073】
上記(c-ii)の場合、R3C~R6Cが表し得る-ReにおけるC1-3アルコキシ基については、RaにおけるC1-3アルコキシ基について上記に述べた基が挙げられ、好ましい基が同様に当てはまる。
【0074】
また、Reにおけるフラバン-3-オール骨格、糖類骨格、没食子酸骨格、もしくは糖類骨格と没食子酸骨格とが脱水縮合した骨格のいずれかの骨格における1個の水酸基から水素原子を除いた基としては、Raについて上記に述べた基が挙げられ、Reは、好ましくはC1-3アルコキシ基または糖類骨格における1個の水酸基から水素原子を除いた基である。
【0075】
また、上記(c-ii)の場合、R3C~R6Cのうちの1つの基は、*-C(=O)-O-*または*-O-C(=O)-*の2価の連結基(*は結合手である)を表し、この場合、R1CおよびR2Cは、それらが結合する炭素原子と一緒になって、式(c1)~(c4)のいずれかで表される複素環を形成し、式(c1)~(c4)中のR7CおよびR8C、R9CおよびR10C、R11CおよびR12C、または、R13CおよびR14C(好ましくは式(c2)中のR9CおよびR10Cまたは式(c4)中のR13CおよびR14C、より好ましくは式(c2)中のR9CおよびR10C)は、それらが結合する炭素原子と一緒になって6員の飽和もしくは不飽和の炭化水素環(好ましくは6員の不飽和炭化水素環)を形成し、前記2価の連結基は、前記炭化水素環を構成する炭素原子と式(IC)のベンゼン環上の炭素原子とを連結する。
【0076】
式(IC)中のR
1CおよびR
2Cが、それらが結合する炭素原子と一緒になって式(c1)の複素環を形成する式(IC)で表される化合物は、クロモン骨格を有する化合物であり、好ましくは式(IC-c1):
【化46】
[式(IC-c1)中、
R
7c’およびR
8c’は、式(c1)中のR
7cおよびR
8cについて記載した基を表し、好ましくは水素原子、-OH、置換基を有していてもよい芳香族環、または糖類骨格の1個の水酸基から水素原子を除いた基のいずれかを表し、より好ましくはR
7c’が水素原子、-OH、または糖類骨格の1個の水酸基から水素原子を除いた基のいずれかを表し、R
8c’が置換基を有していてもよい芳香族環を表し、
R
3C’~R
6C’は、式(IC)中のR
3C~R
6Cについて記載した基を表す]
で表される化合物であり、さらに好ましくは式(c7)~(c11)で表される化合物である。
【0077】
式(IC)中のR
1CおよびR
2Cが、それらが結合する炭素原子と一緒になって式(c2)の複素環を形成する式(IC)で表される化合物は、クマリン骨格を有する化合物であり、好ましくは式(IC-c21):
【化47】
[式(IC-c21)中、
R
9c’およびR
10c’は、(c2)中のR
9cおよびR
10cについて記載した基を表し、好ましくは水素原子、-OH、置換基を有していてもよい芳香族環、または糖類骨格の1個の水酸基から水素原子を除いた基のいずれかを表し、より好ましくはR
9c’が水素原子、-OH、または糖類骨格の1個の水酸基から水素原子を除いた基のいずれかを表し、R
10c’が水素原子、または置換基を有していてもよい芳香族環を表し、
R
3C’~R
6C’は、式(IC)中のR
3C~R
6Cについて記載した基を表す]
で表される化合物、または、式(IC-c22):
【化48】
[式(IC-c22)中、
R
19c’、R
20c’およびR
21c’は、好ましくは水素原子または-OHを表し、R
3C’~R
5C’は、式(IC)中のR
3C~R
5Cについて記載した基を表し、より好ましくは水素原子または-OHを表す]
で表される化合物であり、さらに好ましくは式(c12)~(c14)で表される化合物である。
【0078】
式(IC)中のR
1CおよびR
2Cが、それらが結合する炭素原子と一緒になって式(c3)の複素環を形成する、式(IC)で表される化合物は、4-クロマノン骨格を有する化合物であり、好ましくは式(IC-c3):
【化49】
[式(IC-c3)中、
R
11c’およびR
12c’は、式(c3)中のR
11cおよびR
12cについて記載した基を表し、好ましくは水素原子、-OH、置換基を有していてもよい芳香族環、または糖類骨格の1個の水酸基から水素原子を除いた基のいずれかを表し、より好ましくは2つのR
11c’が互いに独立に水素原子または-OHを表し、R
12c’の1つが水素原子を表し、R
12c’の別の1つが置換基を有していてもよい芳香族環を表し、
R
3C’~R
6C’は、式(IC)中のR
3C~R
6Cについて記載した基を表す]
で表される化合物であり、さらに好ましくは式(c15)で表される化合物である。
【0079】
式(IC)中のR
1CおよびR
2Cが、それらが結合する炭素原子と一緒になって式(c5)の複素環を形成する、式(IC)で表される化合物は、クマラノン骨格を有する化合物であり、好ましくは式(IC-c5):
【化50】
[式(IC-c5)中、
R
15c’およびR
16c’は、式(c5)中のR
15cおよびR
16cについて記載した基を表し、好ましくはそれらが結合する炭素原子と一緒になって、上記の式(s)で表されるスピロ環を形成し、
R
3C’~R
6C’は、式(IC)中のR
3C~R
6Cについて記載した基を表す]
で表される化合物であり、さらに好ましくは式(c16)で表される化合物である。
【0080】
式(IC)で表される化合物は、さらに好ましくは次の式(c7)~(c16):
【化51】
で表される化合物からなる群から選択される化合物である。
【0081】
式(IC)で表される化合物として好ましい式(c7)~(c16)の化合物は、それぞれ、(c7)ケルセチン、(c8)3,3',4',7-テトラヒドロキシフラボン、(c9)バイカレイン、(c10)クエルシトリン、(c11)アビキュラリン、(c12)エスクレチン、(c13)エスクリン、(c14)エラグ酸、(c15)ネオヘスペリジン、(c16)グリセオフルビンである。
【0082】
化合物(1)は、当業者に既知の化学合成方法により製造することも可能であるし、市販されている化合物を使用することもできる。
【0083】
<化合物(2)>
化合物(2)は、式(II):
【化52】
で表される化合物である。該化合物は、縮合環部分において化合物(1)と同様にニトロチロシンと相互作用しやすいと考えられる。また、該縮合環部分に結合した-C(=O)-OHと、-OHを有することで、ニトロチロシンを分解等することができると考えられるが、本発明は上記のメカニズムに何ら限定されない。化合物(2)は、ジベレリンとも称され、市販されている化合物である。
【0084】
<化合物(3)>
化合物(3)は、式(III):
【化53】
で表される化合物である。該化合物も、縮合環部分において化合物(1)と同様にニトロチロシンと相互作用しやすいと考えられる。また、該縮合環部分に結合した-C(=O)-O-CH
3と、-OHを有すると共に、ヘテロ環部分を有することで、ニトロチロシンを分解等することができると考えられるが、本発明は上記のメカニズムに何ら限定されない。化合物(3)は、ゲニピンとも称され、市販されている化合物である。
【0085】
〔ニトロチロシン減少剤の使用〕
上記の化合物(1)、化合物(2)および化合物(3)からなる群から選択される少なくとも1種の化合物からなるニトロチロシン減少剤は、既に生成したニトロチロシンを減少させることができるため、ニトロチロシンを有するタンパク質に起因する疾患または症状を予防または改善することができる。したがって、本発明は、ニトロチロシンを有するタンパク質に起因する疾患または症状の予防または改善のための、上記の化合物からなるニトロチロシン減少剤の使用も提供する。ニトロチロシンを有するタンパク質に起因する疾患または症状としては、肌の黄ぐすみ、肌の弾力低下、動脈硬化、脳虚血性疾患、神経変性疾患、高血圧、喘息、慢性関節リウマチ、糖尿病性腎症、および炎症性腸疾患からなる群から選択される疾患または症状が挙げられる。なお、上記の疾患または症状は、タンパク質を構成するチロシンがニトロチロシンへ変性されることに起因すると考えられる疾患または症状である。本発明におけるニトロチロシンとは、ニトロチロシン化合物に加えて、タンパク質のアミノ酸残基としてのチロシンがニトロ化された、ニトロチロシン残基も包含する。
【0086】
〔肌の黄ぐすみの改善剤〕
本発明は、上記の化合物(1)、化合物(2)および化合物(3)からなる群から選択される少なくとも1種の化合物からなる、肌の黄ぐすみの改善剤も提供する。該肌の黄ぐすみの改善剤を、必要に応じて化粧品又は医薬品等に添加して、肌に作用させることで、ニトロチロシンの生成に起因して生じた肌の黄ぐすみを改善することができる。
【0087】
〔肌の弾力低下の改善剤〕
本発明は、上記の化合物(1)、化合物(2)および化合物(3)からなる群から選択される少なくとも1種の化合物からなる、肌の弾力低下の改善剤も提供する。該肌の弾力低下の改善剤を、必要に応じて化粧品または医薬品等に添加して、肌に作用させることで、ニトロチロシンの生成に起因して生じた肌の弾力低下を改善することができる。
【0088】
〔化粧品または医薬品〕
上記の特定の化合物(1)、化合物(2)及び化合物(3)からなる群から選択される少なくとも1種の化合物からなる本発明のニトロチロシン減少剤、肌の黄ぐすみの改善剤または肌の弾力低下の改善剤を使用する方法は特に限定されないが、例えば化粧品または医薬品等の組成物に添加して、肌に作用させてよい。本発明のニトロチロシン減少剤、肌の黄ぐすみの改善剤または肌の弾力低下の改善剤を上記の組成物に添加する場合、該剤には特定の成分以外の他の成分が含まれないため、例えば該組成物の貯蔵安定性を高めることができたり、該組成物に含まれる他の添加剤との望ましくない副反応を抑制することができる。本発明のニトロチロシン減少剤、肌の黄ぐすみの改善剤または肌の弾力低下の改善剤を、化粧品または医薬品等の組成物に添加する際の添加量は特に限定されず、所望される効果などに応じて適宜設定してよい。該添加量は、化粧品または医薬品等の組成物の総重量に基づいて、例えば0.00001質量%~30質量%であってよく、好ましくは0.001質量%~10質量%、さらに好ましくは0.01質量%~1質量%であってよい。また、該組成物の形態も何ら限定されず、固形組成物、水系組成物、油系組成物、エマルジョン、クリーム等のいずれであってもよい。このような組成物は、例えば、軟膏、錠剤、栄養ドリンク、化粧水、ファンデーションとして使用されるものであってよい。
【0089】
上記の特定の化合物(1)、化合物(2)及び化合物(3)からなる群から選択される少なくとも1種の化合物からなる本発明のニトロチロシン減少剤、肌の黄ぐすみの改善剤または肌の弾力低下の改善剤を、例えば化粧品または医薬品等の組成物に添加して、化粧品または医薬品等を製造する場合、該化粧品または医薬品等の組成物には、本発明の目的または効果を損なわない範囲において、本発明のニトロチロシン減少剤等以外の、化粧品または医薬品等(例えば皮膚外用剤等)に用いられる他の任意の成分が含まれていてよい。このような成分としては、油脂、ロウ類、炭化水素油、高級脂肪酸、高級アルコール、合成エステル油、シリコーン油、油相増粘剤、界面活性剤、水溶性紫外線吸収剤、キレート剤、低級アルコール、多価アルコール、pH調整剤、酸化防止剤、防腐剤、粉末成分、香料、水等を必要に応じて適宜配合することができる。ただし、これら例示に限定されるものでない。
【実施例0090】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。また、特記しない限り配合量は質量%で示す。また、特記しない限りエタノールは試薬特級(99.5%)を用いた。
【0091】
<被験物質の調製>
被験物質としては、実施例1~27において、次の式(a1)~(a2)、(b1)~(b13)、(c7)~(c16)、(II)、(III)で表される化合物を使用し、比較例1~25においては、次の式(x1)~(x25)で表される化合物を使用した。各化合物を、エタノール(Fujifilm社)または蒸留水に溶解し、100mMの溶液を調製した。また、対照物質としては、蒸留水またはエタノールを使用した。
【0092】
<ニトロチロシン分解活性試験>
ニトロチロシン(SIGMA社)を400μMの濃度になるよう1M リン酸緩衝液 (pH7.4)に溶解し、被験物質を濃度10mMになるよう添加した。溶液を37℃で3日間インキュベート後、HPLCにて溶液中のニトロチロシン量を次の分析条件で測定した。
(分析条件)
分析カラム:Chemcobond 5-ODS-W(150×6mm)
検出波長:355nm
移動相:10mM リン酸緩衝液(pH2.8)-メタノール (9:1(v/v))
カラム温度:40℃
流速:1.0mL/min
【0093】
得られた溶液中のニトロチロシン量から、次の式に従い、ニトロチロシン分解率(%)を算出した。得られた結果を表1および表2に示す。なお、ニトロチロシン分解率が5%以上である場合、ニトロチロシン減少効果が得られたと判断し、5%未満である場合には、ニトロチロシン減少効果が得られなかったと判断した。また、ニトロチロシン分解率が大きい程、ニトロチロシン減少効果が高いといえる。
(ニトロチロシン分解率)
ニトロチロシン分解率(%)={1-(A/B)}×100
A:被験物質を添加した反応溶液中のニトロチロシン量
B:対照物質を添加した反応溶液中のニトロチロシン量
【0094】
<被験物質>
【化54】
【化55】
【化56】
【化57】
【化58】
【化59】
【化60】
【0095】
【0096】
【0097】
特定の化合物(1)、化合物(2)及び化合物(3)からなる群から選択される少なくとも1種の化合物からなるニトロチロシン減少剤を用いる実施例1~27の場合、高いニトロチロシン減少効果が得られた。これに対し、ベンゼン環部分を有さない比較例1~5および10の化合物の場合や、ベンゼン環部分を有するものの、本発明の特定の置換基を有さない比較例6~9および11~25の場合には、ニトロチロシン減少効果が得られなかった。
【0098】
上記の結果より、特定の化合物(1)、化合物(2)及び化合物(3)からなる群から選択される少なくとも1種の化合物からなる剤は、ニトロチロシン減少作用を有することが確認され、該剤はニトロチロシン減少剤として有用であることがわかった。このような剤を使用することで、ニトロチロシンを有するタンパク質に起因する疾患または症状、具体的には、肌の黄ぐすみ、肌の弾力低下、動脈硬化、脳虚血性疾患、神経変性疾患、高血圧、喘息、慢性関節リウマチ、糖尿病性腎症、および炎症性腸疾患などを予防または改善することが可能である。また、該剤は、ニトロ化タンパク質に起因する、肌の黄ぐすみの改善剤および肌の弾力低下の改善剤としても有効であることがわかる。