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特開2023-127891電池劣化度判定装置及びその判定方法
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  • 特開-電池劣化度判定装置及びその判定方法 図1
  • 特開-電池劣化度判定装置及びその判定方法 図2
  • 特開-電池劣化度判定装置及びその判定方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127891
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】電池劣化度判定装置及びその判定方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/392 20190101AFI20230907BHJP
   G01R 31/378 20190101ALI20230907BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20230907BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
G01R31/392
G01R31/378
H02J7/00 Y
H01M10/48 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022031844
(22)【出願日】2022-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000237721
【氏名又は名称】FDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】花川 健二
【テーマコード(参考)】
2G216
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
2G216BA27
2G216BA34
2G216CB34
5G503BA01
5G503BB01
5G503CB16
5G503EA08
5G503GD03
5G503GD06
5H030AS20
5H030FF22
5H030FF52
(57)【要約】
【課題】 使用開始前のニッケル水素電池の劣化度を判定する電池劣化度判定装置及びその方法を提供する。
【解決手段】 電池劣化度判定装置10は、工場から出荷されるニッケル水素電池1と同梱される。判定装置10は、ニッケル水素電池と同梱された時点又は出荷された時点からの経過時間を計測するタイマ17と、ニッケル水素電池の周辺温度を所定時間毎に測定する温度計11と、経過時間と周辺温度の履歴とからニッケル水素電池の劣化度を算出するマイコン12と、劣化度を経過時間と共に記憶するメモリ13と、を備える。劣化度は、ニッケル水素電池1が組み込まれる装置20での寿命予測に用いられる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
出荷対象の少なくとも1つのニッケル水素電池と同梱される電池劣化度判定装置であって、
前記ニッケル水素電池と同梱された時点又は出荷された時点からの経過時間を計測するタイマと、
前記ニッケル水素電池の周辺温度を所定時間毎に測定する温度測定手段と、
前記経過時間と前記周辺温度の履歴とから前記ニッケル水素電池の劣化度を算出するマイコンと、
前記劣化度を前記経過時間と共に記憶するメモリと、
を備え、前記劣化度は、ニッケル水素電池の寿命を使用環境に応じて予測するために用いられる、電池劣化度判定装置。
【請求項2】
前記経過時間と前記劣化度とを寿命予測装置に向けて出力する出力部をさらに備える、請求項1記載の電池劣化度判定装置。
【請求項3】
前記経過時間と前記劣化度とを表示する表示部をさらに備える、請求項1または2に記載の電池劣化度判定装置。
【請求項4】
使用開始前のニッケル水素電池の劣化度を判定する方法であって、
前記ニッケル水素電池が梱包又は出荷された時点からの経過時間を計測する工程と、
前記ニッケル水素電池の周辺温度を所定時間毎に測定する工程と、
前記経過時間と前記周辺温度の履歴とから前記ニッケル水素電池の劣化度を算出する工程と、
前記劣化度を前記経過時間と共に記憶する工程と、
を有する、方法。
【請求項5】
前記劣化度と前記経過時間とを前記ニッケル水素電池の寿命を予測する手段に出力する工程をさらに有する、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記経過時間と前記劣化度とを表示する工程をさらに備える、請求項4または5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池劣化度判定装置及び電池劣化度の判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ニッケル水素電池の劣化は、設置された周辺温度に左右されるので、使用開始後は、周辺温度等のパラメータを監視して電池の交換時期を予測することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-92047号公報
【特許文献2】特開2003-9406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ニッケル水素電池は、様々な分野において使用されるため、工場出荷時から使用開始までの保管状況や輸送手段に応じて、電池の周辺温度は広範囲で変化する。しかしながら、電池の寿命を判定するにあたり、使用開始までの電池の劣化を示す指数として固定値が使用されてきた。そこで、電池を組み込んだ装置の連続的な動作を保証するために、予測される寿命に対し余裕を持たせて、すなわち、短めに電池寿命を計算していた。このため、実際には使用可能であるにも拘らず、電池が交換されてしまい、電池を無駄に使うことにつながっていた。
【0005】
一般に、ニッケル水素電池は、複数個が同時に用いられる場合が多く、保管や使用される場所の周辺温度が低いと劣化する個体数は少なく、逆に、周辺温度が高いと劣化が進む個体数が多いことが知られている。
【0006】
本発明の目的は、使用開始前の電池の劣化度を判定する装置及びその方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、出荷対象の少なくとも1つのニッケル水素電池と同梱される電池劣化度判定装置であって、ニッケル水素電池と同梱された時点又は出荷された時点からの経過時間を計測するタイマと、ニッケル水素電池の周辺温度を所定時間毎に測定する温度測定手段と、経過時間と周辺温度の履歴とからニッケル水素電池の劣化度を算出するマイコンと、劣化度を経過時間と共に記憶するメモリと、を備え、劣化度は、ニッケル水素電池の寿命を使用環境に応じて予測するために用いられる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、同梱されるニッケル水素電池の梱包または出荷から使用開始までの期間及びその期間における周辺温度の履歴に基づいて、ニッケル水素電池の使用開始時における劣化度を精度良く把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施の形態によるニッケル水素電池劣化度判定装置の構成を示すブロック図である。
図2】ニッケル水素電池の劣化度を算出するためのフローチャートである。
図3】ニッケル水素電池の劣化が時間の経過に伴い進行する様子を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
一実施の形態に係るニッケル水素電池用劣化度判定装置を、図面を参照しながら説明する。
【0011】
劣化度判定の対象となるニッケル水素電池1(以下、「電池」と称す)は、二次電池の一種類である。電池1は、オキシ水酸化ニッケルなどのニッケル酸化化合物を含む正極板と、水素を含んだ水素吸蔵合金または水素化合物を含む負極板とを有する。正極板及び負極板を、多孔質のセパレータを介して対向させて渦巻状に巻回して電極群を作製し、この電極群を、濃水酸化カリウム水溶液(KOH)等のアルカリ溶液からなる電解液と共に円筒形の外装缶に封入する。外装缶の一端が正極端子2、他端が負極端子3となる。電池1は、出荷に備え、ニッケル水素電池用劣化度判定装置10とパッケージ4に同梱される。
【0012】
ニッケル水素電池用劣化度判定装置(以下、「判定装置」と称す)10は、図1に示すように、温度計11と、マイコン12と、メモリ13と、通信インターフェース14と、表示部15とを本体16内部に有する。
【0013】
温度計11は、温度測定手段として、測定した温度をマイコン12に向けて出力する。温度計11は、サーミスタやサーモグラフィ、熱電対など適宜の温度測定機器が用いられる。マイコン12は、温度計11によって測定された温度を、本体16と同梱された電池1の周辺温度として扱う。
【0014】
マイコン12は、タイマ17と、プロセッサ18とを備え、本体16と同梱されている電池1の劣化度を判定する。タイマ17は、クロック発生回路など適宜の計時機器からなる。タイマ17は、本体16が電池1と一緒に段ボール箱や包装用フィルム等の梱包材により梱包されてパッケージ4内に収納されたとき、すなわち、梱包作業が終了したときに、手動でまたは自動的に動作を開始し、離散的に、又は周期的にクロック信号を発生する。他の実施の形態では、タイマ17は、電池1と判定装置10とが同梱されたパッケージ4を工場から出荷するときに動作を開始させても良い。
【0015】
プロセッサ18は、クロック信号に同期して、タイマ17の動作開始時点からの経過時間と、この経過時間までに測定された周辺温度の履歴とに基づいて、電池1の劣化度を算出する。算出された劣化度は、経過時間と一緒にメモリ13に保存される。電池1の劣化は、主に、電池1を構成する水素吸蔵合金の腐食により生じる。腐食量に応じて、電池1の金属Ni量の磁化率が変化することから、劣化度が把握可能となる。劣化度は、電池1の完成後の経過時間と、周辺温度の履歴と、電池の充放電状況とに依存して変化することは、当業者には周知である。そこで、メモリに記憶されている、未使用状態における電池1の完成後の経過時間と、周辺温度に基づいて推定される磁化率とに基づいて、電池の劣化度が予測される。
【0016】
本実施の形態において、周辺温度の履歴とは、時間の経過に伴い所定間隔毎に測定されマイコン12に送られてくる周辺温度を、その時点の経過時間の関数として記録したものであり、周辺温度の推移を意味する。
【0017】
メモリ13は、不揮発性メモリ(EEPROM)からなり、プロセッサ18から送られてくる劣化度を経過時間と関連付けて記憶し、経過時間毎に算出される劣化度を蓄積する。
【0018】
通信インターフェース14は、電池1寿命の予測機能21を備えた装置20に、有線または無線で通信可能である。通信インターフェース14は、メモリ13から経過時間と劣化度とを読み出して装置20に向けて送信する。
【0019】
表示部15は、液晶ディスプレイからなる。表示部15は、本体16に設けられた表示ボタン19の操作により、画面に、電池1の梱包または出荷からの経過時間と劣化度とを表示する。
以上のように、判定装置10は構成される。
【0020】
次に、判定装置10の動作について説明する。
判定装置10が出荷される電池と1共に梱包材により梱包されてパッケージ4が完成すると(ステップS1)、手動によりまたは自動的にタイマ17が起動される(ステップS2)。タイマ17の起動から所定の時間が経過する毎に、温度計11は、経過時刻における温度をプロセッサに向けて出力する(ステップS3)。プロセッサ18は、経過時間と経過時刻までの温度履歴とに基づき電池1の劣化度を算出する(ステップS4)。次に、マイコン12は、メモリ13に、劣化度を経過時間に関連つけて格納する(ステップS5)。このように、電池1の梱包完了から時間の経過に伴い、判定装置10は、電池1の劣化度を積算していく。
【0021】
次に、表示ボタン19が操作されると(ステップS6)、マイコン12は、表示部15に劣化量をそれまでの経過時間と共に表示する(ステップS7)。他の実施の形態では、経過時間の表示を省略しても良い。
【0022】
次に、電池1を装置20に組込むために、パッケージ4を開封して電池1がパッケージ4から取り出されると(ステップS8:YES)、すなわち電池1が判定装置10から分離されると、判定装置10のタイマ17は、手動でまたは自動的に停止される(ステップS9)。そして、マイコン12は、手動でまたは自動的に、同梱されていた電池1が組み込まれる予定(または組込み済)の装置20に向けて、劣化度と経過時間とを通信インターフェース14を介して送信するために、メモリ13から読み出して送信に備え待機する(ステップS10)。装置20は、判定装置10から劣化度と経過時間とを受取ると、電池寿命予測機能21は、受け取った経過時間と劣化度とに基づいて、装置20における電池1の寿命を予測することができる。
【0023】
次に、判定装置10は、装置20へ経過時間及び劣化度が送信されたことを確認すると(ステップS10:YES)、手動により、または送信後の所定時間の経過後に自動的に、タイマ17及びメモリ13をリセットする(ステップS11)。従って、判定装置10は、新たな電池との同梱に備えることができる。なお、判定装置10は、パッケージ4が開封された後は、装置20へ経過時間及び劣化度が送信されるまで、これらのデータのメモリ13での記憶を継続する(ステップS10:NO)。
【0024】
一方、マイコン12は、パッケージ4が未開封であると判断すると(ステップS8:N)、周辺温度の測定に戻る。
【0025】
他の実施の形態では、作業者が、表示部15に表示された経過時間及び劣化量を目視で確認し、手動で装置20に入力しても良い。
【0026】
一般に、電池1は、使用開始時の劣化度が異なると、使用開始後の有効電池寿命が、同一タイプの装置に使用される場合であっても異なる傾向がみられる。なお、本開示において、有効電池寿命とは、電池の使用開始から電池の劣化度が寿命閾値に達するまでの期間を意味する。例えば、図3は、工場出荷から使用開始までの期間を6箇月とし、周辺温度が変化する環境に保管してから使用を開始した電池Aと、周辺温度を常時一定(30℃)に保管してから使用を開始した電池B(点線)と、の劣化度が上昇する様子を示したものである。どちらの電池も、組込まれる装置は同じであり、係る装置の使用条件も同じとする。電池の使用開始時点において、既に電池Aの劣化度は、電池Bの劣化度よりも高いことが分かる。また、電池Aは、使用開始時において劣化が進んでいるために、電池Bよりも早期に寿命を迎えていることが分かる。
【0027】
また、電池の梱包完了または出荷から実際の使用開始までの保管期間や、保管時や輸送に係る周辺温度の変化は、需要や用途に応じて電池毎に異なり一律ではない。従って、電池の寿命を予測するためのパラメータの一つである電池の劣化度は、使用開始時であっても、保管期間や保管中の周辺温度の履歴によって変わる。
【0028】
このように電池の使用開始時における劣化度は、使用開始後の電池寿命の長短に影響することから、使用開始までの電池の劣化度を、電池毎に監視して記憶し、各電池の使用対象である装置に伝達することは、当該装置における電池の寿命予測精度の向上に寄与する。これにより、電池の早すぎる交換を抑制して電池の無駄遣いを減らし、電池を最後まで有効に使い切ることを可能とする。
【0029】
また、劣化度は、表示により目視確認できるので、装置への組込前の電池の劣化度を、作業者が大まかに把握できる。
【0030】
さらに、電池の保管期間が同じであったとしても、保管時における電池の周辺温度の履歴を考慮して劣化度を計算している。従って、係る電池を使用する装置における電池の寿命予測の精度を向上させることができる。
【0031】
上記実施の形態では、劣化度を数値化して画面に表示する構成とした。しかし、他の実施の形態では、表示部に、経過時間と劣化度とを、QRコード(登録商標)などのマトリックス型二次元コードにして表示させることもできる。この場合、電池が組み込まれた装置がマトリックス型二次元コードを読み取って経過時間及び劣化度のデータを取得する。このように、マトリックス型二次元コードを使用する場合、装置への劣化度の入力を短時間且つ精度良く行うことができる。
【符号の説明】
【0032】
1 ニッケル水素電池
10 電池劣化度判定装置
11 温度計
12 マイコン
13 メモリ
17 タイマ
図1
図2
図3