(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127895
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】自動車のセンターピラーの側面衝突試験装置、試験条件決定方法、および側面衝突試験方法
(51)【国際特許分類】
G01M 7/08 20060101AFI20230907BHJP
G01M 17/007 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
G01M7/08 A
G01M17/007 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022031848
(22)【出願日】2022-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100218132
【弁理士】
【氏名又は名称】近田 暢朗
(72)【発明者】
【氏名】鎮西 将太
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 憲一
(72)【発明者】
【氏名】内藤 純也
(72)【発明者】
【氏名】史 棟勇
(57)【要約】
【課題】自動車のセンターピラーの側面衝突試験装置、試験条件決定方法、および側面衝突試験方法において、簡易な構成でフルビークル試験に近いセンターピラーの変形状態を再現する。
【解決手段】側面衝突試験装置1は、センターピラー110に衝突させる衝突体10と、一対の第1支持部材31のそれぞれの第1末端部32にてロッカー模擬部130の前端部131および後端部132を支持するロッカー支持体30と、ルーフレール模擬部120を支持するルーフレール支持体20とを備える。一対の第1支持部材31のそれぞれは、衝突体10をセンターピラー110に衝突させると第1薄肉部34が屈曲することによって、第1末端部32が第1薄肉部34を起点として第1基端部33に対して回転するように構成されている。ロッカー模擬部130は、第1末端部32に連れて車両幅方向に並進および車両前後方向まわりに回転するように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のセンターピラーと、前記センターピラーの下端部に接続された前記自動車のロッカーを模擬したロッカー模擬部と、前記センターピラーの上端部に接続された前記自動車のルーフレールを模擬したルーフレール模擬部とを有する被試験体を用いて、前記センターピラーの側面衝突試験を行う自動車のセンターピラーの側面衝突試験装置であって、
下段が上段よりも突出した段差状の衝突面を有し、前記センターピラーに衝突させる衝突体と、
車両幅方向外側端部の第1末端部、車両幅方向内側端部の第1基端部、および、前記第1末端部と前記第1基端部との間に位置して前記第1末端部と前記第1基端部よりも厚みが薄い第1薄肉部をそれぞれ有する一対の第1支持部材を含み、前記一対の第1支持部材のそれぞれの前記第1末端部にて前記ロッカー模擬部の前端部および後端部を支持するロッカー支持体と、
前記ルーフレール模擬部を支持するルーフレール支持体と
を備え、
前記一対の第1支持部材のそれぞれは、前記衝突体を前記センターピラーに衝突させると前記第1薄肉部が屈曲することによって、前記第1末端部が前記第1薄肉部を起点として前記第1基端部に対して回転するように構成されており、
前記ロッカー模擬部は、前記第1末端部に連れて車両幅方向に並進および車両前後方向まわりに回転するように構成されている、自動車のセンターピラーの側面衝突試験装置。
【請求項2】
前記第1薄肉部は、車両上下方向において上向きに開口するように切り欠かれた第1切欠きの残肉部として形成されており、前記第1切欠きは上方ほど開口量が大きい、請求項1に記載の自動車のセンターピラーの側面衝突試験装置。
【請求項3】
前記ルーフレール支持体は、前記ルーフレール模擬部の車両幅方向の並進を止めるとともに車両上下方向の並進および車両前後方向まわりの回転を許容するように、前記ルーフレール模擬部を単純支持する壁面部材を含む、請求項1または請求項2に記載の自動車のセンターピラーの側面衝突試験装置。
【請求項4】
前記ルーフレール支持体は、車両幅方向外側端部の第2末端部、車両幅方向内側端部の第2基端部、および、前記第2末端部と前記第2基端部との間に位置して前記第2末端部と前記第2基端部よりも厚みが薄い第2薄肉部をそれぞれ有する一対の第2支持部材を含み、前記一対の第2支持部材のそれぞれの前記第2末端部にて前記ルーフレール模擬部の前端部および後端部を支持し、
前記一対の第2支持部材のそれぞれは、前記衝突体を前記センターピラーに衝突させると前記第2薄肉部が屈曲することによって、前記第2末端部が前記第2薄肉部を起点として前記第2基端部に対して回転するように構成されており、
前記ルーフレール模擬部は、前記第2末端部とともに回転することにより車両幅方向に並進および車両前後方向まわりに回転するように構成されている、請求項1または請求項2に記載の自動車のセンターピラーの側面衝突試験装置。
【請求項5】
前記第2薄肉部は、車両上下方向において下向きに開口するように切り欠かれた第2切欠きの残肉部として形成されており、前記第2切欠きは下方ほど開口量が大きい、請求項4に記載の自動車のセンターピラーの側面衝突試験装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の自動車のセンターピラーの側面衝突試験装置における前記衝突体、前記ロッカー支持体、および前記ルーフレール支持体の少なくとも1つの材料特性、形状、および寸法の少なくとも1つを試験条件として決定する試験条件決定方法であって、
自動車全体をモデル化して側面衝突全体解析を行うことにより第1変形状態を取得し、
前記被試験体と前記側面衝突試験装置とをモデル化した側面衝突部分解析を行うことにより第2変形状態を取得し、
前記第1変形状態と前記第2変形状態とを比較した差分が所定値以下となるまで、前記衝突体、前記ロッカー支持体、および前記ルーフレール支持体の少なくとも1つの材料特性、形状、および寸法の少なくとも1つを変更して前記側面衝突部分解析を繰り返し行い、
前記差分が前記所定値以下となったときの、前記衝突体、前記ロッカー支持体、および前記ルーフレール支持体の少なくとも1つの材料特性、形状、および寸法の少なくとも1つを試験条件として決定する
ことを含む、試験条件決定方法。
【請求項7】
自動車のセンターピラーと、前記センターピラーの下端部に接続された前記自動車のロッカーを模擬したロッカー模擬部と、前記センターピラーの上端部に接続された前記自動車のルーフレールを模擬したルーフレール模擬部とを有する被試験体を準備し、
下段が上段よりも突出した段差状の衝突面を有し、前記センターピラーに衝突させる衝突体と、車両幅方向外側端部の第1末端部、車両幅方向内側端部の第1基端部、および、前記第1末端部と前記第1基端部との間に位置して前記第1末端部と前記第1基端部よりも厚みが薄い第1薄肉部をそれぞれ有する一対の第1支持部材を含み、前記一対の第1支持部材のそれぞれの前記第1末端部にて前記ロッカー模擬部の前端部および後端部を支持するロッカー支持体と、前記ルーフレール模擬部を支持するルーフレール支持体とを備える側面衝突試験装置を準備し、
前記被試験体を前記側面衝突試験装置にセットし、
前記センターピラーに前記衝突体を衝突させ、
前記第1薄肉部を屈曲させることにより、前記第1薄肉部を起点として前記第1末端部を前記第1基端部に対して回転させ、
前記ロッカー模擬部を前記第1末端部に連れて車両幅方向に並進および車両前後方向まわりに回転させる
ことを含む、自動車のセンターピラーの側面衝突試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のセンターピラーの側面衝突試験装置、試験条件決定方法、および側面衝突試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の側面衝突は、衝突物と乗員との距離が小さいため、乗員傷害の危険性が高い衝突形態である。従って、自動車には、側面衝突に対する高い安全性能が求められる。この側面衝突においては、Bピラーとも称されるセンターピラーが高い安全性能を確保するための重要部品となっている。このため、センターピラーの構造検討および評価試験が重要となる。
【0003】
しかし、自動車全体を使用した衝突試験(フルビークル試験)を実施するのは、多大な時間、コスト、および労力を要し、非効率である。従って、フルビークル試験と同等の評価を行うことのできるセンターピラーの評価試験を考案し、構造検討の高速化および高効率化を図ることが求められている。
【0004】
特許文献1には、自動車のセンターピラーの側面衝突試験装置が開示されている。この側面衝突試験装置は、ロッカーおよびルーフレールに対する回転機構と回転制動機構とを有している。フルビークル試験では、ロッカーおよびルーフレールが回転する挙動が見られるため、ロッカーおよびルーフレールを完全に拘束して試験することは妥当でなく、ロッカーおよびルーフレールの回転を再現できることが好ましい。当該側面衝突試験装置においては、ロッカーの前端部および後端部と、ルーフレールの前端部および後端部とにおける並進を拘束しつつ回転を許容する回転機構が設けられている。また、ロッカーおよびルーフレールの回転挙動についてフルビークル試験を再現するために、板材の引張抵抗力を利用して回転抵抗を調整できるようにした回転制動機構が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、回転機構と回転制動機構が別体で構成されているため、側面衝突試験装置の構造が複雑である。また、フルビークル試験では、ロッカーおよびルーフレールは、回転だけでなく並進挙動も見られる。具体的には、側面衝突によってセンターピラーの変形が進行すると、車両上下方向において、ロッカーは上方へ引き込まれ、ルーフレールは下方へ引き込まれるようにそれぞれ並進する。しかし、特許文献1では、ロッカーおよびルーフレールの並進が拘束されているため、このようなロッカーおよびルーフレールが引き込まれる現象は再現されない。これにより、センターピラーには車両上下方向において過度な引張力が発生し、フルビークル試験とは乖離した結果となるおそれがある。特に、ロッカーは、ルーフレールと比較して大断面であり、回転および並進の程度が大きく、ロッカーの挙動を正確に再現できることが重要である。
【0007】
本発明は、自動車のセンターピラーの側面衝突試験装置、試験条件決定方法、および側面衝突試験方法において、簡易な構成でフルビークル試験に近いセンターピラーの変形状態を再現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、
自動車のセンターピラーと、前記センターピラーの下端部に接続された前記自動車のロッカーを模擬したロッカー模擬部と、前記センターピラーの上端部に接続された前記自動車のルーフレールを模擬したルーフレール模擬部とを有する被試験体を用いて、前記センターピラーの側面衝突試験を行う自動車のセンターピラーの側面衝突試験装置であって、
下段が上段よりも突出した段差状の衝突面を有し、前記センターピラーに衝突させる衝突体と、
車両幅方向外側端部の第1末端部、車両幅方向内側端部の第1基端部、および、前記第1末端部と前記第1基端部との間に位置して前記第1末端部と前記第1基端部よりも厚みが薄い第1薄肉部をそれぞれ有する一対の第1支持部材を含み、前記一対の第1支持部材のそれぞれの前記第1末端部にて前記ロッカー模擬部の前端部および後端部を支持するロッカー支持体と、
前記ルーフレール模擬部を支持するルーフレール支持体と
を備え、
前記一対の第1支持部材のそれぞれは、前記衝突体を前記センターピラーに衝突させると前記第1薄肉部が屈曲することによって、前記第1末端部が前記第1薄肉部を起点として前記第1基端部に対して回転するように構成されており、
前記ロッカー模擬部は、前記第1末端部に連れて車両幅方向に並進および車両前後方向まわりに回転するように構成されている、自動車のセンターピラーの側面衝突試験装置を提供する。
【0009】
この構成によれば、ロッカー模擬部は第1薄肉部が屈曲することによって車両幅方向に並進および車両前後方向まわりに回転するようにロッカー支持体に支持されているため、フルビークル試験のロッカーの回転および並進を再現可能となっている。特に、ロッカー模擬部が上方へ引き込まれるように並進する現象を再現できるため、フルビークル試験に近いセンターピラーの変形状態を再現できる。また、第1薄肉部を屈曲させる簡易な構成でロッカー模擬部の回転および並進を可能としているため、複雑な構成を回避できる。回転抵抗については、第1薄肉部の厚みまたは材料特性等を変更することによって調整できる。好ましくは、フルビークル試験またはこれを模擬した側面衝突全体解析を行い、ロッカーの回転軌跡から回転中心を求め、その回転中心に第1薄肉部を配置し、再現性を向上させる。また好ましくは、フルビークル試験またはこれを模擬した側面衝突全体解析の結果に合わせて第1薄肉部の厚みまたは材料特性等を調整する。第1薄肉部の厚みが大きいほど回転抵抗は大きくなり、第1薄肉部の材料特性が硬いほど回転抵抗は大きくなる。また、衝突体は段差状の衝突面を有するため、フルビークル試験のバンパーを含む自動車の前部形状を模擬できる。
【0010】
前記第1薄肉部は、車両上下方向において上向きに開口するように切り欠かれた第1切欠きの残肉部として形成されており、前記第1切欠きは上方ほど開口量が大きくてもよい。
【0011】
この構成によれば、第1切欠きが上向きに開口しているため、衝突体の衝突により、第1末端部が上方へ持ち上がるように第1薄肉部が屈曲する。従って、ロッカー模擬部が上方へ引き込まれるように並進する現象を一層確実に再現できる。また、第1切欠きは上方ほど開口量が大きいため、第1薄肉部の屈曲に伴って第1切欠きが意図せず閉じてロッカー模擬部の回転および並進が意図せず止まることを抑制できる。
【0012】
前記ルーフレール支持体は、前記ルーフレール模擬部の車両幅方向の並進を止めるとともに車両上下方向の並進および車両前後方向まわりの回転を許容するように、前記ルーフレール模擬部を単純支持する壁面部材を含んでもよい。
【0013】
この構成によれば、壁面部材によって、ルーフレール模擬部の車両幅方向の並進を止めるとともに車両上下方向の並進および車両前後方向まわりの回転を許容する構成を容易に実現できる。これはフルビークル試験に近しく、高い再現性を確保できる。また、ルーフレール支持体を簡易かつ安価に構成できる。また、ルーフレールは、ロッカーと比較して小断面であり、回転抵抗が小さいため、単純支持(自由回転)としてもセンターピラーの変形状態の再現性はある程度保たれる。
【0014】
前記ルーフレール支持体は、車両幅方向外側端部の第2末端部、車両幅方向内側端部の第2基端部、および、前記第2末端部と前記第2基端部との間に位置して前記第2末端部と前記第2基端部よりも厚みが薄い第2薄肉部をそれぞれ有する一対の第2支持部材を含み、前記一対の第2支持部材のそれぞれの前記第2末端部にて前記ルーフレール模擬部の前端部および後端部を支持してもよく、
前記一対の第2支持部材のそれぞれは、前記衝突体を前記センターピラーに衝突させると前記第2薄肉部が屈曲することによって、前記第2末端部が前記第2薄肉部を起点として前記第2基端部に対して回転するように構成されていてもよく、
前記ルーフレール模擬部は、前記第2末端部とともに回転することにより車両幅方向に並進および車両前後方向まわりに回転するように構成されていてもよい。
【0015】
この構成によれば、ルーフレール模擬部は、第2薄肉部が屈曲することによって車両幅方向に並進および車両前後方向まわりに回転するようにルーフレール支持体に支持されているため、フルビークル試験のルーフレールの回転および並進を再現可能となっている。特に、ルーフレール模擬部が下方へ引き込まれるように並進する現象を再現できるため、フルビークル試験に近いセンターピラーの変形状態を再現できる。また、第2薄肉部を屈曲させる簡易な構成でルーフレール模擬部の回転および並進を可能としているため、複雑な構成を回避できる。回転抵抗については、第2薄肉部の厚みまたは材料特性等を変更することによって調整できる。好ましくは、フルビークル試験またはこれを模擬した側面衝突全体解析を行い、ルーフレールの回転軌跡から回転中心を求め、その回転中心に第2薄肉部を配置し、再現性を向上させる。また好ましくは、フルビークル試験またはこれを模擬した側面衝突全体解析の結果に合わせて第2薄肉部の厚みまたは材料特性等を調整する。第2薄肉部の厚みが大きいほど回転抵抗は大きくなり、第2薄肉部の材料特性が硬いほど回転抵抗は大きくなる。
【0016】
前記第2薄肉部は、車両上下方向において下向きに開口するように切り欠かれた第2切欠きの残肉部として形成されており、前記第2切欠きは下方ほど開口量が大きくてもよい。
【0017】
この構成によれば、第2切欠きが下向きに開口するため、衝突体の衝突により、第2末端部が下方へ倒れるように第2薄肉部が屈曲する。従って、ルーフレール模擬部が下方へ引き込まれるように並進する現象を一層確実に再現できる。また、第2切欠きは下方ほど開口量が大きいため、第2薄肉部の屈曲に伴って第2切欠きが意図せず閉じてルーフレール模擬部の回転および並進が意図せず止まることを抑制できる。
【0018】
本発明の第2の態様は、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の自動車のセンターピラーの側面衝突試験装置における前記衝突体、前記ロッカー支持体、および前記ルーフレール支持体の少なくとも1つの材料特性、形状、および寸法の少なくとも1つを試験条件として決定する試験条件決定方法であって、
自動車全体をモデル化して側面衝突全体解析を行うことにより第1変形状態を取得し、
前記被試験体と前記側面衝突試験装置とをモデル化した側面衝突部分解析を行うことにより第2変形状態を取得し、
前記第1変形状態と前記第2変形状態とを比較した差分が所定値以下となるまで、前記衝突体、前記ロッカー支持体、および前記ルーフレール支持体の少なくとも1つの材料特性、形状、および寸法の少なくとも1つを変更して前記側面衝突部分解析を繰り返し行い、
前記差分が前記所定値以下となったときの、前記衝突体、前記ロッカー支持体、および前記ルーフレール支持体の少なくとも1つの材料特性、形状、および寸法の少なくとも1つを試験条件として決定する
ことを含む、試験条件決定方法を提供する。
【0019】
この方法によれば、側面衝突全体解析と側面衝突部分解析とを比較することにより、衝突体、ロッカー支持体、およびルーフレール支持体の少なくとも1つの材料特性、形状、および寸法の少なくとも1つを試験条件として簡易に決定できる。第1変形状態と第2変形状態とを比較した差分は、単に変形量の差分としてもよいし、曲げモーメントのように変形に寄与するパラメータの差分としてもよい。
【0020】
本発明の第3の態様は、
自動車のセンターピラーと、前記センターピラーの下端部に接続された前記自動車のロッカーを模擬したロッカー模擬部と、前記センターピラーの上端部に接続された前記自動車のルーフレールを模擬したルーフレール模擬部とを有する被試験体を準備し、
下段が上段よりも突出した段差状の衝突面を有し、前記センターピラーに衝突させる衝突体と、車両幅方向外側端部の第1末端部、車両幅方向内側端部の第1基端部、および、前記第1末端部と前記第1基端部との間に位置して前記第1末端部と前記第1基端部よりも厚みが薄い第1薄肉部をそれぞれ有する一対の第1支持部材を含み、前記一対の第1支持部材のそれぞれの前記第1末端部にて前記ロッカー模擬部の前端部および後端部を支持するロッカー支持体と、前記ルーフレール模擬部を支持するルーフレール支持体とを備える側面衝突試験装置を準備し、
前記被試験体を前記側面衝突試験装置にセットし、
前記センターピラーに前記衝突体を衝突させ、
前記第1薄肉部を屈曲させることにより、前記第1薄肉部を起点として前記第1末端部を前記第1基端部に対して回転させ、
前記ロッカー模擬部を前記第1末端部に連れて車両幅方向に並進および車両前後方向まわりに回転させる
ことを含む、自動車のセンターピラーの側面衝突試験方法を提供する。
【0021】
この方法によれば、前述と同様に、簡易な構成でフルビークル試験に近いセンターピラーの変形状態を再現できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、自動車のセンターピラーの側面衝突試験装置、試験条件決定方法、および側面衝突試験方法において、簡易な構成でフルビークル試験に近い変形状態を再現できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る自動車のセンターピラーの側面衝突試験装置の斜視図。
【
図2】
図1の側面衝突試験装置によるセンターピラーの変形前の側面図。
【
図3】
図1の側面衝突試験装置によるセンターピラーの変形後の側面図。
【
図6】第2実施形態に係る自動車のセンターピラーの側面衝突試験装置の斜視図。
【
図7】
図6の側面衝突試験装置によるセンターピラーの変形前の側面図。
【
図8】
図6の側面衝突試験装置によるセンターピラーの変形後の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0025】
(第1実施形態)
【0026】
図1は、本発明の第1実施形態に係る自動車のセンターピラー110の側面衝突試験装置1の斜視図を示している。側面衝突試験装置1は、センターピラー110を含む被試験体100を用いて、センターピラー110の側面衝突試験を行うものである。
【0027】
図1では、側面衝突試験におけるセンターピラー110の姿勢が自動車に組み付けられた場合と同一となるように、センターピラー110が起立した状態で示されている。図において、車両幅方向の内向き(内側)を符号Xで示し、その反対の向きを外向き(外側)として示している。また、車両上下方向の上向き(上側)を符号Yで示し、その反対の向きを下向き(下側)として示している。また、車両前後方向の後向き(後側)を符号Zで示し、その反対の向きを前向き(前側)として示している。これは、以降の図でも同様である。
【0028】
被試験体100の構成について説明する。
【0029】
被試験体100は、自動車のセンターピラー110と、センターピラー110の上端部111に接続されたルーフレール模擬部120と、センターピラー110の下端部112に接続されたロッカー模擬部130とを有している。
【0030】
センターピラー110は、側面衝突試験装置1による側面衝突試験の評価対象となる部品である。本実施形態では、センターピラー110は、車両幅方向から見て概略T字型を有しており、車両幅方向外側に位置するアウターパネル110aと車両幅方向内側に位置するインナーパネル110bとが貼り合わされて構成されている。アウターパネル110aおよびインナーパネル110bは、例えば鋼板などの金属板製である。センターピラー110は内部に補強部品を有する多重構造になっていたり、上下が分割されている構造でもよい。
【0031】
ルーフレール模擬部120は、自動車のルーフレールを模擬した車両前後方向に延びる部材である。ルーフレール模擬部120は、例えば実車両のルーフレールをセンターピラー110の上端部111との接続部の前後で車両前後方向に垂直な面で切断したものである。但し、ルーフレール模擬部120の態様については特に限定されない。
【0032】
ロッカー模擬部130は、自動車のロッカーを模擬した車両前後方向に延びる部材である。ロッカー模擬部130は、例えば実車両のロッカーをセンターピラー110の下端部112との接続部の前後で車両前後方向に垂直な面で切断したものである。但し、ロッカー模擬部130の態様については特に限定されない。
【0033】
側面衝突試験装置1の構成について説明する。
【0034】
側面衝突試験装置1は、衝突体10と、ルーフレール支持体20と、ロッカー支持体30とを有している。
【0035】
衝突体10は、下段11が上段12よりも突出した段差状の衝突面13を有している。下段11は、自動車のバンパーを模擬している。上段12は、自動車の車両本体を模擬している。試験では、衝突面13をセンターピラー110に押し当てるように、衝突体10を被試験体100の側方(車両幅方向外側)から水平方向に移動させてセンターピラー110の側面に衝突させる。
【0036】
図示の例では、衝突体10の下段11と上段12は、別体で構成されているが、一体的に構成されてもよい。好ましくは、上段12と下段11の寸法は調整可能である。例えば、上段12に対する下段11の突出量を調整できるように構成してもよい。
【0037】
ルーフレール支持体20は、ルーフレール模擬部120を支持している。ルーフレール支持体20は、ルーフレール模擬部120の車両幅方向の並進を止めるとともに車両上下方向の並進および車両前後方向まわりの回転を許容するように、ルーフレール模擬部120を単純支持する壁面部材21を含んでいる。
【0038】
壁面部材21は、車両前後方向においてルーフレール模擬部120よりも長い、概略直方体状である。壁面部材21は、ルーフレール模擬部120と車両前後方向の全体わたって当接し、単純支持している。好ましくは、図示のように壁面部材21の車両幅方向外側下端部は面取りされた面取部21aとなっている。これにより、後述するセンターピラー110の変形に伴ってセンターピラー110と壁面部材21との干渉を回避しやすくなる。
【0039】
ロッカー支持体30は、ロッカー模擬部130を支持する一対の第1支持部材31を含んでいる。
【0040】
本実施形態では、一対の第1支持部材31のそれぞれは、車両幅方向に延びる概略四角柱状である。一対の第1支持部材31のそれぞれは、例えば鋼鉄などの金属製である。一対の第1支持部材31のそれぞれは、車両幅方向外側端部の第1末端部32、車両幅方向内側端部の第1基端部33、および、第1末端部32と第1基端部33との間に位置して第1末端部32と第1基端部33よりも厚みが薄い第1薄肉部34を有している。
【0041】
本実施形態では、第1薄肉部34は、車両上下方向において上向きに開口するように切り欠かれた第1切欠き35の残肉部として形成されている。第1切欠き35は上方ほど開口量が大きい。詳細には、第1切欠き35は上方ほど車両幅方向に大きく開口している。図示の例では、第1切欠き35は、車両前後方向から見て概略三角形状である。
【0042】
ロッカー支持体30は、一対の第1支持部材31のそれぞれの第1末端部32にてロッカー模擬部130の前端部131および後端部132を、固定板36を介して支持している。固定板36は、支持を安定させるための矩形の金属板であり、必要に応じて省略され得る。
【0043】
詳細は後述するが、上記構成により、一対の第1支持部材31のそれぞれは、衝突体10をセンターピラー110に衝突させると第1薄肉部34が屈曲することによって、第1末端部32が第1薄肉部34を起点として第1基端部33に対して回転するように構成されている。そして、ロッカー模擬部130は、第1末端部32に連れて車両幅方向に並進および車両前後方向まわりに回転するように構成されている。
【0044】
図2,3を参照して、側面衝突試験装置1を使用した側面衝突試験方法について説明する。
【0045】
図2は、側面衝突試験装置1によるセンターピラー110の変形前の側面図を示している。
図3は、側面衝突試験装置1によるセンターピラー110の変形後の側面図を示している。
図2,3では、破線円で囲まれた部分が拡大して示されている。
【0046】
図2を参照して、第1薄肉部34の厚みt1は、第1末端部32の厚みt2と第1基端部33の厚みt3よりも小さい(t1<t2,t1<t3)。なお、本実施形態では、第1末端部32の厚みt2と第1基端部33の厚みt3は、同じ大きさである(t2=t3)。
【0047】
まず、被試験体100と側面衝突試験装置1とを準備し、被試験体100を側面衝突試験装置1にセットする(
図2参照)。次いで、センターピラー110の側面に衝突体10の衝突面13を衝突させる(
図3参照)。すると、第1薄肉部34が屈曲することによって、第1末端部32が第1薄肉部34を起点として第1基端部33に対して回転する。そして、ロッカー模擬部130は、第1末端部32に連れて車両幅方向に並進および車両前後方向まわりに回転する。このとき、ロッカー模擬部130は、上方へ引き込まれるように動く。また、ルーフレール模擬部120は、壁面部材21によって車両幅方向の並進を止められる。このとき、ルーフレール模擬部120は、車両上下方向の並進および車両前後方向まわりの回転を許容されているため、車両前後方向まわりに回転するとともに下方へ引き込まれるように動く。
【0048】
図4を参照して、試験条件決定方法について説明する。
【0049】
図4は、試験条件決定方法を示すフローチャートを示している。
【0050】
当該試験条件決定方法は、側面衝突試験装置1における衝突体10、ロッカー支持体30、およびルーフレール支持体20の少なくとも1つの材料特性、形状、および寸法の少なくとも1つを試験条件として決定するものである。
【0051】
当該試験条件決定方法を開始すると、自動車全体をモデル化して側面衝突全体解析を行うことにより第1変形状態を取得する(ステップS1)。側面衝突全体解析は、フルビークル試験を模擬した解析であり、例えば有限要素法などの既存の解析手法を用いることができる。
【0052】
次いで、被試験体100と側面衝突試験装置1とをモデル化した側面衝突部分解析を行うことにより第2変形状態を取得する(ステップS2)。側面衝突部分解析は、本実施形態の側面衝突試験装置1による衝突試験を模擬した解析であり、例えば有限要素法などの既存の解析手法を用いることができる。
【0053】
次いで、第1変形状態と第2変形状態とを比較した差分が所定値以下であるか否かを判断する(ステップS3)。ここでの判断基準となる差分は、単に変形量の差分としてもよいし、曲げモーメントのように変形に寄与するパラメータの差分としてもよい。
【0054】
上記差分が所定値以下でない場合(N:ステップS3)、衝突体10、ロッカー支持体30、およびルーフレール支持体20の少なくとも1つの材料特性、形状、および寸法の少なくとも1つをパラメータとして変更する(ステップS4)。上記差分が所定値以下である場合(Y:ステップS3)、衝突体10、ロッカー支持体30、およびルーフレール支持体20の少なくとも1つの材料特性、形状、および寸法の少なくとも1つを試験条件として決定する(ステップS5)。これにより、当該試験条件決定方法を終了する。
【0055】
図5を参照して、試験条件決定方法について例を使用して説明する。
【0056】
図5は、3つの解析結果を比較したグラフを示している。縦軸はセンターピラー110の高さ[mm]を示し、横軸はセンターピラー110にかかる曲げモーメント[kNm]を示している。
【0057】
丸印を実線で繋いだグラフは、側面衝突全体解析の結果を示している。四角印を荒い破線で繋いだグラフは、段差形状を有する衝突体10を使用した側面衝突部分解析の結果を示している。三角印を細かい破線で繋いだグラフは、段差形状を有していない(衝突面13が平坦な)衝突体10を使用した側面衝突部分解析の結果を示している。いずれの結果もセンターピラー110の決められた複数の高さにおける曲げモーメントを示しており、変形状態を視覚的および数値的に確認できる。
【0058】
上記試験条件決定方法では、まず、側面衝突全体解析の結果(丸印を実線で繋いだグラフ)として第1変形状態を取得する(
図4のステップS1)。次いで、段差形状を有していない(衝突面13が平坦な)衝突体10を使用した側面衝突部分解析の結果(三角印を細かい破線で繋いだグラフ)として第2変形状態を取得する(
図4のステップS2)。そして、それぞれの解析結果について複数の高さにおける曲げモーメントの合計値を算出して差分をとり、これを第1変形状態と第2変形状態とを比較した差分とする。図示の例では、上記差分が所定値以下でないと判断し(N:ステップS3)、衝突体10の衝突面13の形状を段差形状に変更する(
図4のステップS4)。そして、段差形状を有する衝突体10を使用した側面衝突部分解析の結果(四角印を荒い破線で繋いだグラフ)として第2変形状態を取得する(
図4のステップS2)。再び、同様に差分を算出して差分が所定値以下であると判断し(Y:ステップS3)、衝突体10の形状を試験条件として決定する(
図4のステップS5)。
【0059】
上記例では、衝突体10の形状を試験条件として決定しているが、同様にして、衝突体10、ロッカー支持体30、およびルーフレール支持体20の少なくとも1つの材料特性、形状、および寸法の少なくとも1つを試験条件として決定できる。
【0060】
本実施形態によれば、以下の有利な効果を奏する。
【0061】
ロッカー模擬部130は第1薄肉部34が屈曲することによって車両幅方向に並進および車両前後方向まわりに回転するようにロッカー支持体30に支持されているため、フルビークル試験のロッカーの回転および並進を再現可能となっている。特に、ロッカー模擬部130が上方へ引き込まれるように並進する現象を再現できるため、フルビークル試験に近いセンターピラー110の変形状態を再現できる。また、第1薄肉部34を屈曲させる簡易な構成でロッカー模擬部130の回転および並進を可能としているため、複雑な構成を回避できる。回転抵抗については、第1薄肉部34の厚みまたは材料特性等を変更することによって調整できる。好ましくは、フルビークル試験またはこれを模擬した側面衝突全体解析を行い、ロッカーの回転軌跡から回転中心を求め、その回転中心に第1薄肉部34を配置し、再現性を向上させる。また好ましくは、フルビークル試験またはこれを模擬した側面衝突全体解析の結果に合わせて第1薄肉部34の厚みまたは材料特性等を調整する。第1薄肉部34の厚みが大きいほど回転抵抗は大きくなり、第1薄肉部34の材料特性が硬いほど回転抵抗は大きくなる。また、衝突体10は段差状の衝突面13を有するため、フルビークル試験のバンパーを含む自動車の前部形状を模擬できる。
【0062】
また、第1切欠き35が上向きに開口しているため、衝突体10の衝突により、第1末端部32が上方へ持ち上がるように第1薄肉部34が屈曲する。従って、ロッカー模擬部130が上方へ引き込まれるように並進する現象を一層確実に再現できる。また、第1切欠き35は上方ほど開口量が大きいため、第1薄肉部34の屈曲に伴って第1切欠き35が意図せず閉じてロッカー模擬部130の回転および並進が意図せず止まることを抑制できる。
【0063】
また、壁面部材21によって、ルーフレール模擬部120の車両幅方向の並進を止めるとともに車両上下方向の並進および車両前後方向まわりの回転を許容する構成を容易に実現できる。これはフルビークル試験に近しく、高い再現性を確保できる。また、ルーフレール支持体20を簡易かつ安価に構成できる。また、ルーフレールは、ロッカーと比較して小断面であり、回転抵抗が小さいため、単純支持(自由回転)としてもセンターピラー110の変形状態の再現性はある程度保たれる。
【0064】
また、側面衝突全体解析と側面衝突部分解析とを比較することにより、衝突体10、ロッカー支持体30、およびルーフレール支持体20の少なくとも1つの材料特性、形状、および寸法の少なくとも1つを試験条件として簡易に決定できる。
【0065】
(第2実施形態)
【0066】
図6に示す第2実施形態の自動車のセンターピラー110の側面衝突試験装置1は、ルーフレール支持体20の構成が第1実施形態と異なる。これに関する構成以外は、第1実施形態と実質的に同じである。従って、第1実施形態にて示した部分については説明を省略する場合がある。
【0067】
本実施形態では、ルーフレール支持体20は、ルーフレール模擬部120を支持する一対の第2支持部材22を含んでいる。なお、本実施形態では、ルーフレール支持体20は、第1実施形態における壁面部材21(
図1参照)を含んでいない。
【0068】
本実施形態では、一対の第2支持部材22のそれぞれは、車両幅方向に延びる概略四角柱状である。一対の第2支持部材22のそれぞれは、例えば鋼鉄などの金属製である。一対の第2支持部材22のそれぞれは、車両幅方向外側端部の第2末端部23、車両幅方向内側端部の第2基端部24、および、第2末端部23と第2基端部24との間に位置して第2末端部23と第2基端部24よりも厚みが薄い第2薄肉部25を有している。
【0069】
本実施形態では、第2薄肉部25は、車両上下方向において下向きに開口するように切り欠かれた第2切欠き26の残肉部として形成されている。第2切欠き26は下方ほど開口量が大きい。詳細には、第2切欠き26は下方ほど車両幅方向に大きく開口している。図示の例では、第2切欠き26は、車両前後方向から見て概略三角形状である。
【0070】
ルーフレール支持体20は、一対の第2支持部材22のそれぞれの第2末端部23にてルーフレール模擬部120の前端部121および後端部122を、固定板27を介して支持している。固定板27は、支持を安定させるための矩形の金属板であり、必要に応じて省略され得る。
【0071】
一対の第2支持部材22のそれぞれは、衝突体10をセンターピラー110に衝突させると第2薄肉部25が屈曲することによって、第2末端部23が第2薄肉部25を起点として第2基端部24に対して回転するように構成されている。そして、ルーフレール模擬部120は、第2末端部23に連れて車両幅方向に並進および車両前後方向まわりに回転するように構成されている。
【0072】
図7,8を参照して、側面衝突試験装置1を使用した側面衝突試験方法を説明する。
【0073】
図7は、側面衝突試験装置1によるセンターピラー110の変形前の側面図を示している。
図8は、側面衝突試験装置1によるセンターピラー110の変形後の側面図を示している。
図7,8では、破線円で囲まれた部分が拡大して示されている。
【0074】
図7を参照して、第2薄肉部25の厚みt4は、第2末端部23の厚みt5と第2基端部24の厚みt6よりも小さい(t4<t5,t4<t6)。なお、本実施形態では、第2末端部23の厚みt5と第2基端部24の厚みt6は、同じ大きさである(t5=t6)。
【0075】
まず、被試験体100と側面衝突試験装置1とを準備し、被試験体100を側面衝突試験装置1にセットする(
図7参照)。次いで、センターピラー110の側面に衝突体10の衝突面13を衝突させる(
図8参照)。すると、第2薄肉部25が屈曲することによって、第2末端部23が第2薄肉部25を起点として第2基端部24に対して回転する。そして、ルーフレール模擬部120は、第2末端部23に連れて車両幅方向に並進および車両前後方向まわりに回転する。このとき、ルーフレール模擬部120は、下方へ引き込まれるように動く。なお、ロッカー模擬部130は、第1実施形態と同様に動く。
【0076】
本実施形態によれば、以下の有利な効果を奏する。
【0077】
ルーフレール模擬部120は、第2薄肉部25が屈曲することによって車両幅方向に並進および車両前後方向まわりに回転するようにルーフレール支持体20に支持されているため、フルビークル試験のルーフレールの回転および並進を再現可能となっている。特に、ルーフレール模擬部120が下方へ引き込まれるように並進する現象を再現できるため、フルビークル試験に近いセンターピラー110の変形状態を再現できる。また、第2薄肉部25を屈曲させる簡易な構成でルーフレール模擬部120の回転および並進を可能としているため、複雑な構成を回避できる。回転抵抗については、第2薄肉部25の厚みまたは材料特性等を変更することによって調整できる。好ましくは、フルビークル試験またはこれを模擬した側面衝突全体解析を行い、ルーフレールの回転軌跡から回転中心を求め、その回転中心に第2薄肉部25を配置し、再現性を向上させる。また好ましくは、フルビークル試験またはこれを模擬した側面衝突全体解析の結果に合わせて第2薄肉部25の厚みまたは材料特性等を調整する。第2薄肉部25の厚みが大きいほど回転抵抗は大きくなり、第2薄肉部25の材料特性が硬いほど回転抵抗は大きくなる。
【0078】
また、第2切欠き26が下向きに開口するため、衝突体10の衝突により、第2末端部23が下方へ倒れるように第2薄肉部25が屈曲する。従って、ルーフレール模擬部120が下方へ引き込まれるように並進する現象を一層確実に再現できる。また、第2切欠き26は下方ほど開口量が大きいため、第2薄肉部25の屈曲に伴って第2切欠き26が意図せず閉じてルーフレール模擬部120の回転および並進が意図せず止まることを抑制できる。
【0079】
以上より、本発明の具体的な実施形態について説明したが、本発明は上記形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0080】
1 側面衝突試験装置
10 衝突体
11 下段
12 上段
13 衝突面
20 ルーフレール支持体
21 壁面部材
21a 面取部
22 第2支持部材
23 第2末端部
24 第2基端部
25 第2薄肉部
26 第2切欠き
27 固定板
30 ロッカー支持体
31 第1支持部材
32 第1末端部
33 第1基端部
34 第1薄肉部
35 第1切欠き
36 固定板
100 被試験体
110 センターピラー
110a アウターパネル
110b インナーパネル
111 上端部
112 下端部
120 ルーフレール模擬部
121 前端部
122 後端部
130 ロッカー模擬部
131 前端部
132 後端部