(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127896
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】採取キット及び採取方法
(51)【国際特許分類】
G01N 1/10 20060101AFI20230907BHJP
G01N 1/00 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
G01N1/10 N
G01N1/00 101L
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022031849
(22)【出願日】2022-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】小林 岳聖
(72)【発明者】
【氏名】山崎 裕輔
(72)【発明者】
【氏名】岡部 博
【テーマコード(参考)】
2G052
【Fターム(参考)】
2G052AA30
2G052AB16
2G052AC14
2G052AD06
2G052BA02
2G052BA14
2G052CA02
2G052CA13
(57)【要約】 (修正有)
【課題】培養ボトルに採取する液体試料の量に過不足を生じさせることがある。また、空気を混入させるリスクがある。上記した課題を解決する。
【解決手段】採取キット10は、液体試料を収容した医療用バッグが接続可能な接続用チューブ12と、医療用バッグからの所定量の液体試料を収容する第1シリンジ14と、医療用バッグからの所定量の液体試料を収容する第2シリンジ16と、培養ボトル90が接続可能なサンプリング用ホルダ18と、接続用チューブ12と、第1シリンジ14と、第2シリンジ16と、サンプリング用ホルダ18とを接続する4方コック20と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体試料を収容した医療用バッグが接続可能な接続用チューブと、
前記医療用バッグからの所定量の前記液体試料を収容する第1シリンジと、
前記医療用バッグからの前記所定量の前記液体試料を収容する第2シリンジと、
培養ボトルが接続可能なサンプリング用ホルダと、
前記接続用チューブと、前記第1シリンジと、前記第2シリンジと、前記サンプリング用ホルダと、を接続する4方コックと、
を備えた、採取キット。
【請求項2】
請求項1記載の採取キットであって、前記4方コックは、
前記接続用チューブが接続される第1ポートと、
前記第1シリンジが接続される第2ポートと、
前記サンプリング用ホルダが接続される第3ポートと、
前記第2シリンジが接続される第4ポートと、
回転することにより、前記第1ポート、前記第2ポート、前記第3ポート及び前記第4ポートのいずれか2つを選択的に連通させる流路が形成されたプラグと、
を有する、採取キット。
【請求項3】
請求項2記載の採取キットであって、前記プラグは、
第1位置において、前記第1ポートと前記第2ポートとを連通させ、かつ前記第3ポート及び前記第4ポートを閉塞し、
第2位置において、前記第2ポートと前記第3ポートとを連通させ、かつ前記第1ポート及び前記第4ポートを閉塞し、
第3位置において、前記第3ポートと前記第4ポートとを連通させ、かつ前記第1ポート及び前記第2ポートを閉塞し、
第4位置において、前記第4ポートと前記第1ポートとを連通させ、かつ前記第2ポート及び前記第3ポートを閉塞する、採取キット。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の採取キットであって、前記第1シリンジ及び前記第2シリンジの各々は、
先端に小径のノズルを有する筒状のバレル本体と、
前記バレル本体の内周面と液密及び気密に当接しつつ摺動するガスケットと、
前記ガスケットの基端に接続されたプランジャと、を有し、
前記ガスケットは、先端に前記ノズルに挿入されて前記ノズルの内部空間を減少させる充填突起を有する、採取キット。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の採取キットを用いた採取方法であって、
前記接続用チューブに血液製剤を収容する前記医療用バッグを接続するバッグ接続工程と、
前記医療用バッグの前記液体試料を前記第1シリンジに収容する第1収容工程と、
前記医療用バッグの前記液体試料を前記第2シリンジに収容する第2収容工程と、
前記接続用チューブから前記医療用バッグを分離させるバッグ分離工程と、
前記4方コックにより前記第1シリンジと前記サンプリング用ホルダとを連通させ、かつ前記第2シリンジを前記サンプリング用ホルダから流体的に分離させた状態で、前記サンプリング用ホルダに好気培養ボトルを接続して前記第1シリンジの前記液体試料を前記好気培養ボトルに採取する第1採取工程と、
前記4方コックにより、前記第2シリンジと前記サンプリング用ホルダとを連通させ、かつ前記第1シリンジを前記サンプリング用ホルダから流体的に分離させた状態で、前記サンプリング用ホルダに嫌気培養ボトルを接続し、前記第2シリンジの前記液体試料を前記嫌気培養ボトルに採取する第2採取工程と、
を有する、採取方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液製剤を検査用に採取する採取キット及び採取方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血液製剤の安全性を担保するために、血液製剤の出荷前に少量の液体試料を採取して培養検査が行われる。培養検査は、所定量の液体試料(血液製剤)を培養ボトルに採取し、培養ボトルを細菌の増殖に好適な30~40℃の温度環境で所定期間保管し、その後、培養ボトルの中の細菌の増殖を確認する。
【0003】
培養ボトルへの液体試料の採取には、専用の採取キットが用いられる。例えば、特許文献1は、血液バッグから液体試料を採取するための採取キットを開示する。この採取キットは、サンプル採取管に予め所定量の液体試料を採取する。次に、そのサンプル採取管の標線で液体試料の移送量を確認しながら、培養ボトルに液体試料を移送する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の採取キットは、培養ボトルの負圧による吸引で採取ボトルの液体試料の液面が素早く変化する。そのため、経験が浅い作業者は、一定量の液体試料を培養ボトルに計り採ることが難しく、培養ボトルに採取する液体試料の量に過不足を生じさせることがある。また、従来の採取キットでは、嫌気培養ボトルへの液体試料の移送の際に、使用者が誤って空気を混入させるリスクがある。
【0006】
本発明は、上記した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下の開示の一観点は、液体試料を収容した医療用バッグが接続可能な接続用チューブと、前記医療用バッグからの所定量の前記液体試料を収容する第1シリンジと、前記医療用バッグからの前記所定量の前記液体試料を収容する第2シリンジと、培養ボトルが接続可能なサンプリング用ホルダと、前記接続用チューブと、前記第1シリンジと、前記第2シリンジと、前記サンプリング用ホルダと、を接続する4方コックと、を備えた、採取キットにある。
【0008】
別の一観点は、上記観点の採取キットを用いた採取方法であって、前記接続用チューブに血液製剤を収容する前記医療用バッグを接続するバッグ接続工程と、前記医療用バッグの前記液体試料を前記第1シリンジに収容する第1収容工程と、前記医療用バッグの前記液体試料を前記第2シリンジに収容する第2収容工程と、前記接続用チューブから前記医療用バッグを分離させるバッグ分離工程と、前記4方コックにより前記第1シリンジと前記サンプリング用ホルダとを連通させ、かつ前記第2シリンジを前記サンプリング用ホルダから流体的に分離させた状態で、前記サンプリング用ホルダに好気培養ボトルを接続して前記第1シリンジの液体試料を前記好気培養ボトルに採取する第1採取工程と、前記4方コックにより、前記第2シリンジと前記サンプリング用ホルダとを連通させ、かつ前記第1シリンジを前記サンプリング用ホルダから流体的に分離させた状態で、前記サンプリング用ホルダに嫌気培養ボトルを接続し、前記第2シリンジの前記液体試料を前記嫌気培養ボトルに採取する第2採取工程と、を有する、採取方法にある。
【発明の効果】
【0009】
上記観点の採取キット及び採取方法は、経験が浅い作業者であっても正確な量の液体試料を培養ボトルに計り採ることができる。また、上記観点の採取キット及び採取方法は、嫌気培養ボトルへの液体試料の移送の際に、使用者が誤って空気を混入させるリスクを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態に係る採取キットの構成図である。
【
図3】
図3Aは、プラグの第1位置での
図1の4方コックの断面図であり、
図3Bはプラグの第2位置での4方コックの断面図であり、
図3Cはプラグの第3位置での4方コックの断面図であり、
図3Dはプラグの第4位置での4方コックの断面図である。
【
図4】
図4Aは、バッグ接続工程の説明図であり、
図4Bは第1収容工程の説明図である。
【
図5】
図5Aは、第2収容工程の説明図であり、
図5Bはバッグ分離工程及び第1採取工程の説明図である。
【
図6】
図6Aは、嫌気培養ボトルをサンプリング用ホルダに接続する工程の説明図であり、
図6Bは第2採取工程の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に示す本実施形態に係る採取キット10は、例えば、血液製剤を製造する血液センター等の事業所において、血液製剤の安全性を確認するための培養試験に用いられる。培養試験は、嫌気性菌の培養及び好気性菌の培養を行う。したがって、培養試験には、好気培養と嫌気培養とのそれぞれに用いる培養ボトル90(
図5B、
図6A参照)が用いられる。採取キット10は、液体試料として、例えば血小板製剤を採取し、所定量(例えば、8ml又は10ml)ずつ好気培養ボトル92(
図5B)及び嫌気培養ボトル94(
図6A)に採取するために使用される。
【0012】
図1に示すように採取キット10は、接続用チューブ12と、第1シリンジ14と、第2シリンジ16と、サンプリング用ホルダ18と、4方コック20と、を備える。接続用チューブ12は、例えば、塩化ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂よりなる半透明の医療用チューブである。接続用チューブ12は、無菌接合装置を使用することで、内部を外気に曝すことなく他の医療用チューブとの接続を行うことができる。また、接続用チューブ12は、チューブシーラーを使用することで、内部を外気に曝すことなく他の医療用チューブからの分離と端部の封止を行える。
【0013】
接続用チューブ12は、上流側の第1端部12aと下流側の第2端部12bとを有する。第1端部12aは、初期状態(製品提供当初の状態)において溶着されて封止されている。第2端部12bは、4方コック20の第1ポート201に接続されている。
【0014】
図2A及び
図2Bに示すように、第1シリンジ14及び第2シリンジ16は、同一のシリンジ22により構成される。シリンジ22は、バレル本体24と、ガスケット26と、プランジャ28とを有する。バレル本体24は、透明な樹脂材料等により形成される。バレル本体24は、円筒状の本体部30を有している。本体部30の内部には収容空間36が形成される。
【0015】
収容空間36は、ガスケット26及びプランジャ28を収容する。収容空間36の基端は、本体部30の基端部において開口する。本体部30の先端には、首部32が形成されている。首部32は、先端に向かうにつれて外径及び内径が徐々に縮径するように円錐状に傾斜した形状を有する。収容空間36の先端は、首部32により覆われる。首部32の中央付近には、ノズル34が形成されている。ノズル34は、収容空間36と連通する開口部34aを有する。
【0016】
なお、
図7に示すように、第1シリンジ14及び第2シリンジ16は、本体部30の基端部と、プランジャ28とを接続する封止部材49をさらに備えてもよい。封止部材49は、柔軟な樹脂シート等によって形成された筒状の部材である。封止部材49は、一端が本体部30の基端部に接続され、他端がプランジャ28の基端に接続される。封止部材49は、蛇腹状に形成されている。封止部材49は、プランジャ28の位置に応じて蛇腹状に折り畳まれた形状から、筒状に伸長した形状に変形する。すなわち、封止部材49は、蛇腹が伸展することで、プランジャ28の変位に追随する。封止部材49は、プランジャ28と本体部30との隙間を外気から封止して、収容空間36の無菌性を維持する。封止部材49は、本体部30の内壁への菌付着を阻止することにより、血液製剤が無菌であるのにもかかわらず汚染があるとされる検査の擬陽性の発生を防止する。
【0017】
図2A及び
図2Bに示すように、ガスケット26とプランジャ28とは互いに組み付けられてプランジャ組立体35を構成する。プランジャ28は、基端がバレル本体24の基端側に突出する。プランジャ28は、ガスケット26と一体的に変位する。プランジャ28は、使用者の操作力をガスケット26に伝える。
【0018】
ガスケット26は、バレル本体24の収容空間36に挿入可能な外径を有している。ガスケット26は、バレル本体24の内周面24aと液密及び気密に当接しつつ摺動する。ガスケット26の先端側に、液体試料を収容可能な収容部38が形成される。収容部38の容積はガスケット26の位置に応じて変化する。収容部38の容積は、本体部30に付された標線に基づいて視認可能となっている。
【0019】
ガスケット26は、先端に突出部26aと充填突起26bとを有する。突出部26aは、円錐状に形成されており、首部32に隙間なく当接する。充填突起26bは、突出部26aの中心から先端に向けて突出する。充填突起26bは、ノズル34の開口部34aの内部に挿入されることで、開口部34aの内部の容積を減少させる。充填突起26bは、ノズル34の気泡が残留し得るスペースを減らし、シリンジ22からの気泡の除去を容易にする。なお、充填突起26bの形状は図示の例に限定されず、ノズル34の開口部34aの形状に応じて種々の変更が可能である。
【0020】
サンプリング用ホルダ18は、培養ボトル90の首部を収容するホルダ部18aと、培養ボトル90の栓体を貫通可能な針管18bと、蓋体18cとを有する。培養ボトル90の首部をホルダ部18aに挿入することで、培養ボトル90がサンプリング用ホルダ18に接続される。針管18bは、培養ボトル90の栓体を貫通して培養ボトル90の内部と連通する。蓋体18cは、ヒンジを介してホルダ部18aに取り付けられている。蓋体18cは、初期状態においてホルダ部18aの開口を覆うことで、ホルダ部18aを密封する。蓋体18cは、針管18bへの菌付着を防止する。
【0021】
4方コック20は、接続用チューブ12と、第1シリンジ14と、第2シリンジ16と、サンプリング用ホルダ18とを接続する。
図3Aに示すように、4方コック20は、第1ポート201と、第2ポート202と、第3ポート203と、第4ポート204と、プラグ206とを有する。第1ポート201には、サンプリング用ホルダ18が接続される。第2ポート202には、第1シリンジ14が接続される。第3ポート203には、接続用チューブ12が接続される。第4ポート204には、第2シリンジ16が接続される。
【0022】
プラグ206は、
図3Aに示すように、屈曲したL字形状の流路208を有する。プラグ206が回転することで、流路208は第1ポート201、第2ポート202、第3ポート203及び第4ポート204の中から2つを選択的に連通させる。
図3Aに示すプラグ206の第1位置において、流路208は、第1ポート201と第2ポート202とを連通させる。また、第1位置において、プラグ206は、第3ポート203及び第4ポート204を閉塞する。したがって、第1位置において、4方コック20は、
図1のサンプリング用ホルダ18と第1シリンジ14とを連通させる。
【0023】
図3Bに示すプラグ206の第2位置において、流路208は、第2ポート202と第3ポート203とを連通させる。また、第2位置において、プラグ206は、第1ポート201及び第4ポート204を閉塞する。したがって、第2位置において、4方コック20は、
図1の第1シリンジ14と接続用チューブ12とを連通させる。
【0024】
図3Cに示すプラグ206の第3位置において、流路208は、第3ポート203と第4ポート204とを連通させる。また、第3位置において、プラグ206は、第1ポート201及び第2ポート202を閉塞する。したがって、第3位置において、4方コック20は、
図1の第2シリンジ16と接続用チューブ12とを連通させる。
【0025】
図3Dに示すプラグ206の第4位置において、流路208は、第4ポート204と第1ポート201とを連通させる。また、第4位置において、プラグ206は、第2ポート202及び第3ポート203を閉塞する。したがって、第4位置において、4方コック20は、
図1のサンプリング用ホルダ18と第2シリンジ16とを連通させる。
【0026】
上記のように、採取キット10において、第1シリンジ14と、第2シリンジ16とは、4方コック20の隣接しないポートに接続される。そのため、第1シリンジ14と第2シリンジ16とは、4方コック20の第1~第4位置のいずれにおいても直接連通しない配置となる。また、採取キット10において、接続用チューブ12とサンプリング用ホルダ18とは、4方コック20の隣接しないポートに接続される。そのため、接続用チューブ12とサンプリング用ホルダ18とは、4方コック20の第1~第4位置のいずれにおいても直接連通しない配置となる。
【0027】
本実施形態の採取キット10は、以上のように構成される。この採取キット10は、以下のように使用される。
【0028】
図4Aに示すように、まず、バッグ接続工程が行われる。この工程は、採取キット10の接続用チューブ12に、血小板製剤を収容した医療用バッグ100(血小板バッグ)を接続する工程を有する。この工程は、医療用バッグ100から延びるチューブ102と、接続用チューブ12とを無菌接合装置を用いて接合する操作を含む。
【0029】
次に、
図4Bに示すように、第1収容工程が行われる。第1収容工程は、第1シリンジ14に液体試料(例えば、血小板製剤)を収容する工程である。第1収容工程は、4方コック20のプラグ206を、第2位置として行う。この工程は、第1シリンジ14のプランジャ28を基端側に引き込み、チューブ102及び接続用チューブ12を通じて第1シリンジ14に所定量の液体試料を収容する。
【0030】
第1収容工程は、気泡除去操作を含んでもよい。気泡除去操作は、プランジャ28を往復移動させる操作及び/又は接続用チューブ12(チューブ102)を圧迫する操作により行われる。気泡の除去を容易にするために、医療用バッグ100を採取キット10よりも上方に配置することが好ましい。気泡除去操作により、4方コック20、接続用チューブ12及びチューブ102の内部の気泡が取り除かれ、これらの内部が液体試料で置換される。
【0031】
第1収容工程により、第1シリンジ14に、1本分の培養ボトル90に採取する量の液体試料が収容される。この液体試料の量は、例えば、8ml(又は10ml)である。
【0032】
次に、
図5Aに示すように、第2収容工程が行われる。第2収容工程は、第2シリンジ16に液体試料(所定量の液体試料)を収容する工程である。第2収容工程は、4方コック20のプラグ206を第3位置として行う。これにより、医療用バッグ100と、第2シリンジ16とが連通する。この工程は、第1収容工程と同様のシリンジ22の操作によって行うことができる。
【0033】
第2収容工程により、第2シリンジ16に1本分の培養ボトル90に採取する量の液体試料が収容される。この液体試料の量は、例えば、8ml(又は10ml)である。
【0034】
次に、採取方法は、バッグ分離工程に進む。バッグ分離工程は、チューブシーラー(不図示)を用いて接続用チューブ12を溶融させつつ切断する操作を含む。バッグ分離工程により、
図5Bに描かれるように、接続用チューブ12から医療用バッグ100が切り離される。切り離された医療用バッグ100は、培養試験が完了するまで、血液センターで保管される。血液製剤の安全が確認された医療用バッグ100は、利用に供される。
【0035】
次に、
図5Bに示すように、採取方法は、第1採取工程に進む。第1採取工程は、1本目の培養ボトル90に液体試料を採取する工程である。第1採取工程は、培養ボトル90のうち、好気培養に使用する好気培養ボトル92に液体試料を採取する。第1採取工程は、4方コック20のプラグ206を第1位置に回動させる操作と、好気培養ボトル92をサンプリング用ホルダ18に接続する操作とを含む。
【0036】
この操作により、好気培養ボトル92と第1シリンジ14とが連通する。好気培養ボトル92は、内部が負圧に保たれている。好気培養ボトル92は、負圧により第1シリンジ14の液体試料を吸引する。第1シリンジ14の液体試料の全量が好気培養ボトル92に採取されると、第1採取工程が完了する。第1採取工程において、必要に応じて、第1シリンジ14のプランジャ28の押圧操作が行われてもよい。
【0037】
第1採取工程により、好気培養ボトル92に所定量(8ml又は10ml)の液体試料が採取される。また、第1採取工程では、サンプリング用ホルダ18に残留する気泡が好気培養ボトル92に吸い出される。したがって、第1採取工程は、サンプリング用ホルダ18の流路の内部の空気を液体試料で置換するプライミング工程を兼ねる。これにより、第1採取工程は、後の第2採取工程での嫌気培養ボトル94への空気の混入を防止できる。
【0038】
図6Aに示すように、第1採取工程の終了後に、好気培養ボトル92はサンプリング用ホルダ18から取り外される。その後、第2採取工程が行われる。第2採取工程は、2本目の培養ボトル90に液体試料を採取する工程である。本実施形態の採取方法において2本目の培養ボトル90は、嫌気培養ボトル94である。第2採取工程は、嫌気培養ボトル94をサンプリング用ホルダ18に接続する操作を含む。
【0039】
図6Bに示すように、第2採取工程は、その後、4方コック20のプラグ206を第3位置に回動させる操作を含む。プラグ206が第4位置に回動すると、第2シリンジ16と嫌気培養ボトル94とが連通する。嫌気培養ボトル94は、負圧により第2シリンジ16の内部の液体試料を吸引する。その結果、第2シリンジ16の内部の液体試料の全量が嫌気培養ボトル94に移送される。第2採取工程は、第1採取工程において、必要に応じて、第1シリンジ14のプランジャ28の押圧操作が行われてもよい。第1採取工程により、嫌気培養ボトル94に所定量(8ml又は10ml)の液体試料が採取される。
【0040】
その後、嫌気培養ボトル94がサンプリング用ホルダ18から取り外され、本実施形態の採取キット10を用いた採取方法が完了する。液体試料を採取した好気培養ボトル92及び嫌気培養ボトル94は、培養検査に供される。
【0041】
本実施形態の採取キット10及び採取方法は、以下にまとめられる。
【0042】
本実施形態の一観点は、液体試料を収容した医療用バッグ100が接続可能な接続用チューブ12と、前記医療用バッグからの所定量の前記液体試料を収容する第1シリンジ14と、前記医療用バッグからの前記所定量の前記液体試料を収容する第2シリンジ16と、培養ボトル90が接続可能なサンプリング用ホルダ18と、前記接続用チューブと、前記第1シリンジと、前記第2シリンジと、前記サンプリング用ホルダと、を接続する4方コック20と、を備えた、採取キット10にある。
【0043】
上記の採取キットは、経験の浅い使用者であっても、シリンジ操作といった慣れた操作で簡単に液体試料を培養ボトルに採取できる。また、上記の採取キットは、正確な量の液体試料を採取できるため、採取量不足による再採取を防止でき、貴重な血小板製剤のロスを抑制できる。また、上記の採取キットは、嫌気培養ボトルへの空気混入を防止できる。
【0044】
上記の採取キットにおいて、前記4方コックは、前記接続用チューブが接続される第1ポート201と、前記第1シリンジが接続される第2ポート202と、前記サンプリング用ホルダが接続される第3ポート203と、前記第2シリンジが接続される第4ポート204と、回転することにより、前記第1ポート、前記第2ポート、前記第3ポート及び前記第4ポートのいずれか2つを選択的に連通させる流路208が形成されたプラグ206と、を有してもよい。この採取キットは、第1シリンジから培養ボトルへの液体試料の移送を行う際に、第2シリンジが流体的に分離されるため、液体試料の定量性を高めることができる。
【0045】
上記の採取キットにおいて、前記プラグは、第1位置において、前記第1ポートと前記第2ポートとを連通させ、かつ前記第3ポート及び前記第4ポートを閉塞し、第2位置において、前記第2ポートと前記第3ポートとを連通させ、かつ前記第1ポート及び前記第4ポートを閉塞し、第3位置において、前記第3ポートと前記第4ポートとを連通させ、かつ前記第1ポート及び前記第2ポートを閉塞し、第4位置において、前記第4ポートと前記第1ポートとを連通させ、かつ前記第2ポート及び前記第3ポートを閉塞してもよい。この採取キットは、4方コックのプラグの回転操作で、流路を切り換えることができるため、操作性に優れる。
【0046】
上記の採取キットにおいて、前記第1シリンジ及び前記第2シリンジの各々は、先端に小径のノズル34を有する筒状のバレル本体24と、前記バレル本体の内周面24aと液密及び気密に当接しつつ摺動するガスケット26と、前記ガスケットの基端に接続されたプランジャ28と、を有し、前記ガスケットは、先端に前記ノズルに挿入されて前記ノズルの内部空間を減少させる充填突起26bを有してもよい。この採取キットは、第1シリンジ及び第2シリンジのノズル付近で気泡が残留するスペースを減らすことで、液体試料を収容する際の気泡の除去を容易にする。
【0047】
本実施形態の別の一観点は、採取キットを用いた採取方法であって、前記接続用チューブに血液製剤を収容する前記医療用バッグを接続するバッグ接続工程と、前記医療用バッグの前記液体試料を前記第1シリンジに収容する第1収容工程と、前記医療用バッグの前記液体試料を前記第2シリンジに収容する第2収容工程と、前記接続用チューブから前記医療用バッグを分離させるバッグ分離工程と、前記4方コックにより前記第1シリンジと前記サンプリング用ホルダとを連通させ、かつ前記第2シリンジを前記サンプリング用ホルダから流体的に分離させた状態で、前記サンプリング用ホルダに好気培養ボトルを接続して前記第1シリンジの前記液体試料を前記好気培養ボトルに採取する第1採取工程と、前記4方コックにより、前記第2シリンジと前記サンプリング用ホルダとを連通させ、かつ前記第1シリンジを前記サンプリング用ホルダから流体的に分離させた状態で、前記サンプリング用ホルダに嫌気培養ボトルを接続し、前記第2シリンジの前記液体試料を前記嫌気培養ボトルに採取する第2採取工程と、を有する、採取方法にある。
【0048】
上記の採取方法は、経験の浅い使用者であっても、採取量のばらつきを防ぎつつ液体試料を好気培養ボトル及び嫌気培養ボトルに採取できる。
【0049】
なお、本発明は、上記した実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を取り得る。
【符号の説明】
【0050】
10…採取キット 12…接続用チューブ
14…第1シリンジ 16…第2シリンジ
18…サンプリング用ホルダ 20…4方コック
22…シリンジ 24…バレル本体
26…ガスケット 26b…充填突起
28…プランジャ 34…ノズル
90…培養ボトル 206…プラグ