(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127899
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】太陽電池モジュール
(51)【国際特許分類】
H01L 31/05 20140101AFI20230907BHJP
H01L 31/048 20140101ALI20230907BHJP
【FI】
H01L31/04 570
H01L31/04 560
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022031856
(22)【出願日】2022-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】寺下 徹
【テーマコード(参考)】
5F151
5F251
【Fターム(参考)】
5F151EA19
5F151JA03
5F151JA04
5F151JA05
5F251EA19
5F251JA03
5F251JA04
5F251JA05
(57)【要約】
【課題】太陽電池セルの端部における配線部材と受光側保護部材との距離の低下を抑制する太陽電池モジュールを提供する。
【解決手段】太陽電池モジュール100は、曲面状であって、平板状の太陽電池セル2と、ワイヤ形状の複数の配線部材6とを備える。太陽電池セル2において、受光面が曲面の凸側の凸側主面2aであり、裏面が曲面の凹側の凹側主面2bであり、配線部材6は、一方の太陽電池セル2の凹側主面2bと他方の太陽電池セル2の凸側主面2aとを、一方の太陽電池セル2の他方端部2dと他方の太陽電池セル2の一方端部2cとの間を介してインターコネクションする。配線部材6は、他方の太陽電池セル2の一方端部2cに対応する第1部分と、一方の太陽電池セル2の凹側主面2bおよび他方の太陽電池セル2の凸側主面2aに対応する第2部分とを有し、第2部分は断面円形状であり、第1部分は断面平板形状である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲面状の太陽電池モジュールであって、
平板状の両面電極型の複数の太陽電池セルと、
前記複数の太陽電池セルにおける隣り合う太陽電池セルをインターコネクションするワイヤ形状の複数の配線部材を含む配線部材群であって、1または複数の配線部材群と、
前記複数の太陽電池セルの受光面側を保護するための受光側保護部材であって、透明性を有するガラス部材または樹脂部材を含む前記受光側保護部材と、
前記複数の太陽電池セルの裏面側を保護するための裏側保護部材と、
前記受光側保護部材と前記裏側保護部材との間において、前記複数の太陽電池セルを封止するための封止材と、
を備え、
前記隣り合う太陽電池セルにおいて、一方の太陽電池セルの他方端部と他方の太陽電池セルの一方端部とが相対し、前記一方の太陽電池セルおよび前記他方の太陽電池セルの受光面が、前記太陽電池モジュールの曲面の凸側の凸側主面であり、前記一方の太陽電池セルおよび前記他方の太陽電池セルの裏面が、前記太陽電池モジュールの曲面の凹側の凹側主面であり、
前記配線部材群における前記複数の配線部材は、前記一方の太陽電池セルの前記凹側主面と前記他方の太陽電池セルの前記凸側主面とを、前記一方の太陽電池セルの前記他方端部と前記他方の太陽電池セルの前記一方端部との間を介してインターコネクションし、
前記配線部材群における前記複数の配線部材の各々は、前記他方の太陽電池セルの前記一方端部に対応する第1部分と、前記一方の太陽電池セルの前記凹側主面および前記他方の太陽電池セルの前記凸側主面に対応する第2部分とを有し、
前記第2部分は、断面円形状または断面多角形状であり、
前記第1部分は、断面平板形状である、
太陽電池モジュール。
【請求項2】
前記第1部分は、前記他方の太陽電池セルの前記一方端部から前記一方の太陽電池セルの前記他方端部までに対応する部分である、請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項3】
前記第1部分は、前記他方の太陽電池セルにおける前記一方端部側の端から中央に向けて5mmの部分を含む、請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項4】
前記第1部分は、前記他方の太陽電池セルにおける前記一方端部側の端から中央に向けて5mmの部分、および、前記一方の太陽電池セルにおける前記他方端部側の端から中央に向けて5mmの部分を含む、請求項2に記載の太陽電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
平角形状のタブ等の配線部材によってインターコネクションされた複数の太陽電池セルを、ガラスまたは透明樹脂等の保護部材および封止材によって封止した太陽電池モジュールが知られている。このような太陽電池モジュールにおいて、配線部材として、平角形状のタブに代えて、断面円形状または断面多角形状であるワイヤ形態の複数の配線材を用いる技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1には、
・ワイヤ形態の配線材を使用して乱反射などによって光損失を最小化でき、
・配線材の個数を増やし配線材のピッチを減らして、キャリヤの移動経路を減らすことができ、
・配線材の幅または直径を減らして材料費用を大きく低減でき、
・これらによって、太陽電池の効率及び太陽電池パネルの出力を向上できる、
ことが記載されている。また、特許文献1には、
・小さな幅を有する配線材においてカバー部材から再反射されて太陽電池に入射される光量を最大化できる角度で光を反射して、太陽電池に入射される光量を最大化でき、
・これによって、太陽電池パネルの出力を向上できる、
ことが記載されている。
【0004】
また、このような太陽電池モジュールを、車両または建造物等の曲面に配置する技術が知られている(例えば、特許文献2を参照)。このような太陽電池モジュールでは、複数の太陽電池セルが曲面に沿ってマトリクス状に配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-169711号公報
【特許文献2】特開2019-33302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
平板状の太陽電池セルを曲面状に配置すると、太陽電池セルの端部において、配線部材と受光側保護部材との距離が小さくなることがある。これにより、耐湿性試験において、湿潤漏れ電流試験の抵抗値が低下してしまうことがある(JISC61215、IEC61215)。
【0007】
本発明は、曲面状の太陽電池モジュールにおいて、太陽電池セルの端部における配線部材と受光側保護部材との距離の低下を抑制することができる太陽電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者に係る太陽電池モジュールは、曲面状の太陽電池モジュールであって、平板状の両面電極型の複数の太陽電池セルと、前記複数の太陽電池セルにおける隣り合う太陽電池セルをインターコネクションするワイヤ形状の複数の配線部材を含む配線部材群であって、1または複数の配線部材群と、前記複数の太陽電池セルの受光面側を保護するための受光側保護部材であって、透明性を有するガラス部材または樹脂部材を含む前記受光側保護部材と、前記複数の太陽電池セルの裏面側を保護するための裏側保護部材と、前記受光側保護部材と前記裏側保護部材との間において、前記複数の太陽電池セルを封止するための封止材とを備える。前記隣り合う太陽電池セルにおいて、一方の太陽電池セルの他方端部と他方の太陽電池セルの一方端部とが相対し、前記一方の太陽電池セルおよび前記他方の太陽電池セルの受光面が、前記太陽電池モジュールの曲面の凸側の凸側主面であり、前記一方の太陽電池セルおよび前記他方の太陽電池セルの裏面が、前記太陽電池モジュールの曲面の凹側の凹側主面である。前記配線部材群における前記複数の配線部材は、前記一方の太陽電池セルの前記凹側主面と前記他方の太陽電池セルの前記凸側主面とを、前記一方の太陽電池セルの前記他方端部と前記他方の太陽電池セルの前記一方端部との間を介してインターコネクションする。前記配線部材群における前記複数の配線部材の各々は、前記他方の太陽電池セルの前記一方端部に対応する第1部分と、前記一方の太陽電池セルの前記凹側主面および前記他方の太陽電池セルの前記凸側主面に対応する第2部分とを有し、前記第2部分は、断面円形状または断面多角形状であり、前記第1部分は、断面平板形状である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、曲面状の太陽電池モジュールにおいて、太陽電池セルの端部における配線部材と受光側保護部材との距離の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態に係る太陽電池モジュールの断面図である。
【
図2】
図1に示す太陽電池モジュールにおける太陽電池セルおよび配線部材群を受光面側から示す平面図である。
【
図3】規定サイズの大判半導体基板(Wafer)およびハーフカットの太陽電池セルを示す概略図である。
【
図4】
図2のIV部分の拡大図であって、配線部材群における配線部材を示す概略図である。
【
図5】比較例の太陽電池モジュールの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態の一例について説明する。なお、各図面において同一または相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。また、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、他の図面を参照するものとする。
【0012】
図1は、本実施形態に係る太陽電池モジュールの断面図であり、
図2は、
図1に示す太陽電池モジュールにおける太陽電池セルおよび配線部材群を受光面側から示す平面図である。
図1および
図2に示す太陽電池モジュール100は、車両または建造物等の曲面に配置される曲面状の太陽電池モジュールである。太陽電池モジュール100は、曲面に沿って配置された複数の太陽電池セル2を備える。
【0013】
太陽電池セル2は、受光側保護部材3と裏側保護部材4とによって挟み込まれている。受光側保護部材3と裏側保護部材4との間には、液体状または固体状の封止材5が充填されており、これにより、太陽電池セル2は封止される。
【0014】
封止材5は、太陽電池セル2を封止して保護するもので、太陽電池セル2の受光側の面と受光側保護部材3との間、および、太陽電池セル2の裏側の面と裏側保護部材4との間に介在する。封止材5の形状としては、特に限定されるものではなく、例えばシート状が挙げられる。シート状であれば、面状の太陽電池セル2の表面および裏面を被覆しやすいためである。
【0015】
封止材5の材料としては、特に限定されるものではないが、光を透過する特性(透光性)を有すると好ましい。また、封止材5の材料は、太陽電池セル2と受光側保護部材3と裏側保護部材4とを接着させる接着性を有すると好ましい。このような材料としては、例えば、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン/α-オレフィン共重合体、エチレン/酢酸ビニル/トリアリルイソシアヌレート(EVAT)、ポリビニルブチラート(PVB)、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、または、シリコーン樹脂等の透光性樹脂が挙げられる。
【0016】
受光側保護部材3は、封止材5を介して、太陽電池セル2の表面(受光面)を覆って、その太陽電池セル2を保護する。受光側保護部材3の形状としては、特に限定されるものではないが、面状の受光面を間接的に覆う点から、板状またはシート状が好ましい。
【0017】
受光側保護部材3の材料としては、特に限定されるものではないが、封止材5同様に、透光性を有しつつも紫外光に耐性の有る材料が好ましく、例えば、ガラス、または、アクリル樹脂若しくはポリカーボネート樹脂等の透明樹脂が挙げられる。また、受光側保護部材3の表面は、凹凸状に加工されていても構わないし、反射防止コーティング層で被覆されていても構わない。これらのようになっていると、受光側保護部材3は、受けた光を反射させ難くして、より多くの光を太陽電池セル2に導けるためである。
【0018】
裏側保護部材4は、封止材5を介して、太陽電池セル2の裏面を覆って、その太陽電池セル2を保護する。裏側保護部材4の形状としては、特に限定されるものではないが、受光側保護部材3同様に、面状の裏面を間接的に覆う点から、板状またはシート状が好ましい。
【0019】
裏側保護部材4の材料としては、特に限定されるものではないが、水等の浸入を防止する(遮水性の高い)材料が好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、オレフィン系樹脂、含フッ素樹脂、若しくは含シリコーン樹脂等の樹脂フィルム、またはガラス、ポリカーボネート、アクリル等の透光性を有する板状の樹脂部材と、アルミニウム箔等の金属箔との積層体が挙げられる。
【0020】
次に、太陽電池セルおよび配線部材群について説明する。
【0021】
太陽電池セル2は、両面電極型(両面接合型ともいう。)のセルであって、平板状の太陽電池セルである。また、太陽電池セル2は、
図3に示すように、規定サイズ(例えば、6インチのセミスクエア形状)の大判半導体基板(Wafer)をL1に沿って2つに切断したハーフカットセルである。なお、太陽電池セル2は、ハーフカットセルに限定されず、規定サイズの半導体基板であってもよい。
【0022】
太陽電池セル2は、太陽電池セルの配列方向(X方向:第1方向)に相対する2つの端部として、一方端部2cと他方端部2dとを有する。また、太陽電池セル2は、受光側の主面として、太陽電池モジュール100の曲面の凸側の凸側主面2aを有し、裏面側の主面として、太陽電池モジュール100の曲面の凹側の凹側主面2bとを有する。
【0023】
太陽電池セル2は、所定の絶縁距離で離間して、また一方端部2cおよび他方端部2dの配置方向が規則的に揃うように、X方向に曲面状に配列されている。すなわち、隣り合う太陽電池セル2,2において、一方の太陽電池セル2の他方端部2dと他方の太陽電池セル2の一方端部2cとが相対している。隣り合う太陽電池セル2,2は、配線部材群によってインターコネクションされている。
【0024】
配線部材群は、ワイヤ形状の複数の配線部材6を含む。配線部材6は、太陽電池セルの配列方向と交差する方向(Y方向:第2方向)に等間隔に並んでいる。これにより、太陽電池セル2の受光面側の透明電極におけるY方向のキャリヤの移動経路を短くすることができ、比較的に抵抗が大きい透明電極に起因する損失を低減することができる。なお、配線部材群は、複数のワイヤを含むことから、マルチワイヤとも称される。
【0025】
配線部材群における配線部材6は、隣り合う太陽電池セル2,2のうち、一方の太陽電池セル2の凹側主面2bと他方の太陽電池セル2の凸側主面2aとを、一方の太陽電池セル2の他方端部2dと他方の太陽電池セル2の一方端部2cとの間を介してインターコネクションする。
【0026】
図4に示すように、配線部材6は、他方の太陽電池セル2の一方端部2cに対応する第1部分6a(実線部分)と、一方の太陽電池セル2の凹側主面2bおよび他方の太陽電池セル2の凸側主面2aに対応する第2部分6bとを有する。
【0027】
第2部分6bは、断面円形状または断面多角形状のワイヤである。これにより、従来の平角タブと比較して、受光面側の配線部材に向けて入射する入射光を、受光面に導くように反射させることができる。また、裏面側の配線部材に向けて再入射する入射光を、裏面に導くように反射させることができる。これにより、配線部材による遮光に起因する光損失を低減することができ、光電変換効率を向上することができる。
【0028】
一方、第1部分6aは、断面平板形状である。第1部分6aは、他方の太陽電池セル2における一方端部2c側の端から中央に向けて5mmの部分を含む。これにより、太陽電池セル2の端部2cにおける配線部材6と受光側保護部材3との距離の低下を抑制することができる。この詳細は後述する。
【0029】
或いは、配線部材6は、他方の太陽電池セル2の一方端部2cから一方の太陽電池セル2の他方端部2dまでに対応する部分を第1部分6a(破線部分)としてもよい。第1部分6aは、他方の太陽電池セル2における一方端部2c側の端から中央に向けて5mmの部分を含み、また、一方の太陽電池セル2における他方端部2d側の端から中央に向けて5mmの部分を含む。これにより、太陽電池セルの間隔を低減することができる。
【0030】
ここで、
図5は、比較例の太陽電池モジュール100Xを示す断面図である。この比較例の太陽電池モジュール100Xは、
図1に示す本実施形態の太陽電池モジュール100と比較して、配線部材群、すなわち配線部材6が異なる。具体的には、配線部材群における配線部材6は、断面平板形状の第1部分6aがなく、全体的に断面円形状または断面多角形状の第2部分6bのワイヤである。
【0031】
ここで、一般に、シート形状の封止材5の厚みが400μm程度であるのに対し、ワイヤ形状の配線部材6の径がΦ350μm程度(5本バスバーセル等に用いられている平角形状のタブ線では200μm程度)である。そのため、平板状の太陽電池セル2を曲面形状に配置すると、封止時の加圧により、他方の太陽電池セル2の一方端部2cにおいて、配線部材6と受光側保護部材3との距離が小さくなる。これにより、耐湿性試験において、湿潤漏れ電流試験の抵抗値が低下してしまうことがある(JISC61215、IEC61215)。なお、本願発明者(ら)の試験実施によれば、湿潤漏れ電流試験の抵抗値が低下しても、規格値40MΩを十分に満たす値であったが、改善の余地がある。
【0032】
この点に関し、本実施形態の太陽電池モジュール100によれば、他方の太陽電池セル2の一方端部2cに対応する配線部材6の第1部分6aにおいて、断面円形状または断面多角形状のワイヤがフラット化されている。これにより、他方の太陽電池セル2の一方端部2cにおける配線部材6と受光側保護部材3との距離の低下を抑制することができ、耐湿性試験において、湿潤漏れ電流試験の抵抗値の低下を抑制することができる。
【0033】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、種々の変更および変形が可能である。
【符号の説明】
【0034】
2 太陽電池セル
2a 凸側主面(受光面)
2b 凹側主面(裏面)
2c 一方端部
2d 他方端部
3 受光側保護部材
4 裏側保護部材
5 封止材
6 配線部材(配線部材群)
6a 第1部分
6b 第2部分
100,100X 太陽電池モジュール