(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127919
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】各層水質調査方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/18 20060101AFI20230907BHJP
【FI】
G01N33/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022031904
(22)【出願日】2022-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】515057056
【氏名又は名称】中島工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】吉田 光臣
(72)【発明者】
【氏名】荒井 昭
(57)【要約】 (修正有)
【課題】複数の帯水層から流入する地下水の水質を簡易に調査することができる。
【解決手段】井戸Wに流入する地下水Sの水質を調査するための各層水質調査方法である。第1帯水層T1よりも上方の位置の地下水Sを揚水ポンプ2で汲み上げる揚水工程Aと、揚水工程A中において、採水ポンプ3で地下水Sを採水する採水工程Bと、採水工程Bで採水された地下水Sの水質を調査する調査工程Cとを含んでいる。調査工程は、第1帯水層T1よりも上方の位置の地下水Sを分析する第1分析工程と、第1帯水層T1と第2帯水層T2との間の地下水Sを分析する第2分析工程と、第1分析工程で得た分析結果と第2分析工程で得た分析結果との差から第1帯水層T1から流入する第1地下水S1の水質を求める第1算出工程とを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
井戸に流入する地下水の水質を調査するための各層水質調査方法であって、
前記井戸は、複数の帯水層が上下に並ぶ地盤に設けられており、
前記複数の帯水層は、最も上方に配される第1帯水層と、前記第1帯水層の下方に配される第2帯水層とを含んでおり、
前記地下水は、前記第1帯水層から流入する第1地下水と、前記第2帯水層から流入する第2地下水とを含んでおり、
前記第1帯水層よりも上方の位置の前記地下水を揚水ポンプで汲み上げる揚水工程と、前記揚水工程中において、前記地下水を採水ポンプで採取する採水工程と、前記採水工程で採取された前記地下水の水質を調査する調査工程とを含み、
前記採水工程は、前記第1帯水層よりも上方の位置の前記地下水を採取する第1採水工程と、前記第1帯水層と前記第2帯水層との間の前記地下水を採取する第2採水工程とを含み、
前記調査工程は、前記第1採水工程で採取された前記地下水を分析する第1分析工程と、前記第2採水工程で採取された前記地下水を分析する第2分析工程と、前記第1分析工程で得た第1分析結果と前記第2分析工程で得た第2分析結果との差から前記第1地下水の水質を求める第1算出工程とを含む、
各層水質調査方法。
【請求項2】
前記複数の帯水層は、前記第2帯水層の下方に配される第3帯水層をさらに含んでおり、
前記地下水は、前記第3帯水層から流入する第3地下水をさらに含んでおり、
前記採水工程は、前記第2帯水層と前記第3帯水層との間の前記地下水を採取する第3採水工程をさらに含み、
前記調査工程は、前記第3採水工程で採取された前記地下水を分析する第3分析工程と、前記第3分析工程で得た第3分析結果と前記第2分析結果との差から前記第2地下水の水質を求める第2算出工程とを含む、請求項1に記載の各層水質調査方法。
【請求項3】
前記複数の帯水層は、前記第1帯水層から下方へ向かって(n-2)番目(nは、3以上の自然数)の第(n-2)帯水層と、前記第1帯水層から下方へ(n-1)番目の第(n-1)帯水層と、前記第1帯水層から下方へn番目の第n帯水層とを含んでおり、
前記地下水は、前記第(n-1)帯水層から流入する第(n-1)地下水を含んでおり、
前記採水工程は、前記第(n-2)帯水層と前記第(n-1)帯水層との間の前記地下水を採取する第(n-1)採水工程と、前記第(n-1)帯水層と前記第n帯水層との間の前記地下水を採取する第n採水工程とを含み、
前記調査工程は、前記第(n-1)採水工程で採取された前記地下水を分析する第(n-1)分析工程と、前記第n採水工程で採取された前記地下水を分析する第n分析工程と、前記第(n-1)分析工程で得た第(n-1)分析結果と前記第n分析工程で得た第n分析結果との差から前記第(n-1)地下水の水質を求める第(n-1)算出工程とを含む、請求項1又は2に記載の各層水質調査方法。
【請求項4】
前記複数の帯水層のそれぞれから流入する前記地下水の流入量を測定する水量測定工程をさらに含む、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の各層水質調査方法。
【請求項5】
前記水量測定工程は、前記揚水工程とともになされる、請求項4に記載の各層水質調査方法。
【請求項6】
前記採水ポンプは、前記地下水を取り入れるための吸水管が下端に設けられたポンプハウスに収納される、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の各層水質調査方法。
【請求項7】
前記ポンプハウスは、前記井戸内を上下に移動可能に保持されている、請求項6に記載の各層水質調査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各層水質調査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、井戸孔へ流入する地下水の流入状況を帯水層ごとに把握することができる井戸揚水量調査システムが記載されている。前記井戸揚水量調査システムは、揚水ポンプと第1水温検知手段と第2水温検知手段と第3水温検知手段とを含んでいる。前記第1水温検知手段は、第1帯水層に設けられた第1ストレーナ部の上下方向中央部に存在する水の初期水温を検知する。前記第2水温検知手段は、前記第1ストレーナ部の上端部に存在する水の揚水時の水温を検知する。第3水温検知手段は、第2帯水層に設けられた第2ストレーナ部の上端部に存在する水の揚水時の水温を検知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の帯水層を含む地盤に設けられた井戸には、前記複数の帯水層のそれぞれから前記井戸に異なった水質の地下水が流入する。このため、前記井戸内の地下水は、各帯水層からの前記地下水が混ざった状態となる。したがって、各帯水層の前記地下水ごとの水質を簡易に調査することには、困難性があった。
【0005】
本開示は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、井戸に流入する地下水毎の水質を簡易に調査することができる各層水質調査方法を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、井戸に流入する地下水を調査するための各層水質調査方法であって、前記井戸は、複数の帯水層が上下に並ぶ地盤に設けられており、前記複数の帯水層は、最も上方に配される第1帯水層と、前記第1帯水層の下方に配される第2帯水層とを含んでおり、前記地下水は、前記第1帯水層から流入する第1地下水と、前記第2帯水層から流入する第2地下水とを含んでおり、前記第1帯水層よりも上方の位置の前記地下水を揚水ポンプで汲み上げる揚水工程と、前記揚水工程中において、前記地下水を採水ポンプで採取する採水工程と、前記採水工程で採取された前記地下水の水質を調査する調査工程とを含み、前記採水工程は、前記第1帯水層よりも上方の位置の前記地下水を採取する第1採水工程と、前記第1帯水層と前記第2帯水層との間の前記地下水を採取する第2採水工程とを含み、前記調査工程は、前記第1採水工程で採取された前記地下水を分析する第1分析工程と、前記第2採水工程で採取された前記地下水を分析する第2分析工程と、前記第1分析工程で得た第1分析結果と前記第2分析工程で得た第2分析結果との差から前記第1地下水の水質を求める第1算出工程とを含む、各層水質調査方法である。
【発明の効果】
【0007】
本開示の各層水質調査方法は、上記の構成を採用することによって、井戸に流入する地下水毎の水質を簡易に調査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一実施形態の各層水質調査方法に用いられる各層水質調査装置を概念的に示す側面図である。
【
図2】(a)は、採水ポンプが収容されるポンプハウスを示す側面図、(b)は、他の実施形態のポンプハウスを示す側面図である。
【
図6】他の実施形態の井戸での各層水質調査方法を概念的に説明するための側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本実施形態の各層水質調査方法(以下、調査方法という場合がある)を概念的に示す側面図である。
図1に示されるように、本実施形態の調査方法には、各層水質調査装置(以下、装置という場合がある)1が使用される。本開示の調査方法では、井戸Wに流入する地下水S毎に水質を調査することができる。
【0010】
井戸Wは、複数の帯水層Tが上下に並ぶ地盤Gに設けられている。地盤Gは、本実施形態では、帯水層Tと不透水層Hとが交互に並べられている。帯水層Tは、不透水層Hよりも地下水Sが流れやすい性質を有している。
【0011】
帯水層Tは、本実施形態では、最も上方に配される第1帯水層T1と、第1帯水層T1の下方に配される第2帯水層T2とを含んでいる。帯水層Tは、例えば、第2帯水層T2の下方に配設される第3帯水層T3をさらに含んでいる。不透水層Hは、本実施形態では、第1不透水層H1と第2不透水層H2と第3不透水層H3と第4不透水層H4とを含んでいる。第1不透水層H1は、第1帯水層T1の上方に隣接している。第2不透水層H2は、第1帯水層T1と第2帯水層T2との間に配されている。第3不透水層H3は、第2帯水層T2と第3帯水層T3との間に配されている。第4不透水層H4は、第3帯水層T3の下方に配されている。
【0012】
井戸Wは、本実施形態では、地表から第4不透水層H4まで延びている。井戸Wの内周面は、例えば、井戸Wを補強するためのケーシング管K及びストレーナ管Nで形成されている。ケーシング管Kは、井戸W内に土砂や地下水S等の流入を防止する機能を有する周知構造で構成され、各不透水層Hに配されている。ストレーナ管Nは、地下水Sを井戸Wに流入させるとともに、土砂の流入を防止する機能を有する周知構造で構成され、各帯水層Tに配されている。ケーシング管K及びストレーナ管Nは、例えば、合成樹脂や金属で形成されている。井戸Wは、特に限定されるものではないが、30~300mの深さ、及び、150~500mmの内径dを有している。
【0013】
第1帯水層T1は、第1地下水S1を井戸W内に流入させている。第2帯水層T2は、第2地下水S2を井戸W内に流入させている。第3帯水層T3は、第3地下水S3を井戸W内に流入させている。第1地下水S1ないし第3地下水S3は、それぞれ異なる水質の場合もあり、同じ水質の場合もある。
【0014】
装置1は、井戸W内の地下水Sを汲み上げるための揚水ポンプ2と採水ポンプ3とを含んでいる。揚水ポンプ2及び採水ポンプ3は、本実施形態では、地下水S内に配される周知構造の水中ポンプである。揚水ポンプ2は、地表に配置されるものでも良い。装置1は、例えば、揚水ポンプ2で汲み上げられた地下水Sの揚水量を測定するための周知構造の測定具(図示省略)と、採水ポンプ3で汲み上げられた地下水Sの水質を分析するための周知構造の分析具(図示省略)とを含んでいる。前記分析具では、地下水Sに溶解している物質α、例えば、硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素、アンモニア性窒素、マンガン及びその化合物、鉄及びその化合物、色度、濁度、水素イオン指数(pH)、酸化還元電位(ORP)、及び、残留塩素の濃度等が測定される。なお、物質αは、これらに限定されるものではない。なお、第1地下水S1ないし第3地下水S3の各水質(物質αの濃度等)は、経時変化が実質的にないとされる。
【0015】
採水ポンプ3は、例えば、ポンプハウス4に収容されている。ポンプハウス4は、井戸W内を上下に移動可能とされている。ポンプハウス4は、本実施形態では、地表に置かれた周知構造の巻取リール8に巻き付けられた揚水管7によって、保持されている。揚水管7は、本実施形態では、採水ポンプ3の吐出口(図示省略)に繋がっている。揚水管7は、例えば、可撓性を有するポリエチレン管で形成されている。
【0016】
図2(a)は、本実施形態のポンプハウス4を詳細する縦断面図である。
図2(a)に示されるように、ポンプハウス4は、円筒状に形成されている。ポンプハウス4は、本実施形態では、上下方向の中央部から両端に向かって横断面の開口面積が段差状に小さくなるハウス本体5と、ハウス本体5の下端に設けられた吸水管6とを含んでいる。ハウス本体5は、例えば、採水ポンプ3が位置する中央部5aと、吸水管6が接続される下端部5bと、揚水管7が延びる上端部5cとを含んでいる。下端部5b及び上端部5cは、中央部5aよりも小さな開口面積である。採水ポンプ3は、例えば、吸水管6を通して採水ポンプ3の吸込口から取り入れられた地下水Sを地表へ揚水管7を介して汲み上げる。中央部5aには、例えば、揚水管7を保持するゴム部材9が配されている。ポンプハウス4及び吸水管6は、この実施形態では、塩化ビニールで形成されている。
【0017】
図2(b)は、他の実施形態のポンプハウス4の縦断面図である。
図2(a)のポンプハウス4と同じ構成には、同じ符号が付されてその説明が省略される場合がある。
図4(b)に示されるように、ポンプハウス4は、この実施形態では、採水ポンプ3を収容する円筒状のハウス本体5と、ハウス本体5の下端に配される吸水管6とを含んでいる。この実施形態のハウス本体5は、横断面の開口面積が上下に一定の円筒状である。ハウス本体5は、この実施形態では、ステンレスで形成されている。
【0018】
次に、このような装置1を用いた調査方法が説明される。この調査方法では、各地下水Sに溶解している物質αの濃度が調査される。本実施形態の調査方法は、揚水工程Aと採水工程Bと調査工程Cとを含んでいる。
図1に示されるように、揚水工程Aは、地下水Sを揚水ポンプ2で汲み上げる工程である。採水工程Bは、揚水工程A中において、採水ポンプ3で地下水Sを採取する工程である。調査工程Cは、採水工程Bで採取された地下水Sの水質を調査する工程である。採水ポンプ3で汲み上げられる採水量は、水質を調査するための水量が必要であり、例えば、1~40L/minである。
【0019】
揚水工程Aにおいて、揚水ポンプ2は、例えば、第1帯水層T1よりも上方、かつ、揚水によって低下する揚水水位よりも下方に配される。揚水ポンプ2の揚水量は、全ての地下水S、本実施形態では、第1地下水S1ないし第3地下水S3が、ストレーナ管Nを通過して井戸W内に流入する水量とされる。これにより、第1地下水S1、第2地下水S2及び第3地下水S3のそれぞれを、揚水ポンプ2に向かって上方に移動させて汲み上げることができる。このように、揚水工程Aでは、第1不透水層H1の高さ位置の地下水Sが、第1地下水S1、第2地下水S2及び第3地下水S3が混じった第1混合地下水M1となる。換言すると、揚水工程Aにおいて、揚水ポンプ2は、第1混合地下水M1を汲み上げる。また、第2不透水層H2の高さ位置の地下水Sは、第2地下水S2及び第3地下水S3が混じった第2混合地下水M2となる。さらに、第3不透水層H3の高さ位置の地下水S及び第4不透水層H4の高さ位置の地下水Sは、第3地下水S3のみで形成される。このような揚水ポンプ2の揚水量Vaは、例えば、100~4000L/minである。揚水ポンプ2は、例えば、揚水工程A中において、実質的に同じ水量で汲み上げる。
【0020】
採水工程Bは、第1採水工程B1と第2採水工程B2(
図3に示す)とを含んでいる。また、本実施形態の採水工程Bは、第3採水工程B3(
図4に示す)を含んでいる。第1採水工程B1、第2採水工程B2及び第3採水工程B3は、本実施形態では、揚水ポンプ2で第1混合地下水M1を汲み上げつつ行われる。
【0021】
第1採水工程B1では、第1帯水層T1よりも上方の位置の地下水Sが採取される。第1採水工程B1は、本実施形態では、ポンプハウス4の吸水管6が第1不透水層H1の高さ位置に配されている。これにより、本実施形態の第1採水工程B1では、第1混合地下水M1が汲み上げられる。
【0022】
図3は、第2採水工程B2を示す側面図である。
図3に示されるように、第2採水工程B2では、第1帯水層T1と第2帯水層T2との間の地下水Sが採取される。第2採水工程B2は、本実施形態では、ポンプハウス4の吸水管6が第2不透水層H2の高さ位置に配されている。これにより、本実施形態の第2採水工程B2では、第2混合地下水M2が汲み上げられる。
【0023】
図4は、第3採水工程B3を示す側面図である。
図4に示されるように、第3採水工程B3では、第2帯水層T2と第3帯水層T3との間の地下水Sが採取される。第3採水工程B3は、本実施形態では、ポンプハウス4の吸水管6が第3不透水層H3の高さ位置に配されている。これにより、本実施形態の第3採水工程B3では、第3地下水S3が汲み上げられる。
【0024】
本実施形態の調査方法では、井戸W内に流入する各地下水S1ないしS3のそれぞれの流入量(単位時間当たりの流入量)Vを測定する水量測定工程(図示省略)が含まれている。各流入量Vは、本実施形態では、井戸W内の地下水Sの上下方向の流速vと井戸Wの内径d(断面積)との積から算出される。流速vは、例えば、周知構造の微流速検層器(スピンナー検層器)で測定される。微流速検層器としては、例えば、応用地質株式会社製の改良型微流速計が好適である。本実施形態では、流速vは、揚水工程A中に測定される。換言すると、水量測定工程は、例えば、揚水工程Aとともになされ、流速vは、揚水ポンプ2によって引き起こされる。
【0025】
水量測定工程で測定される流速vは、例えば、第1不透水層H1の高さ位置での第1流速v1、第2不透水層H2の高さ位置での第2流速v2、及び、第3不透水層H3の高さ位置での第3流速v3(
図4に示す)を含んでいる。第1流速v1は、この実施形態では、第3地下水S3と第2地下水S2と第1地下水S1とが流れる流速、すなわち、第1混合地下水M1の流速となる。第2流速v2は、この実施形態では、第3地下水S3と第2地下水S2とが流れる流速、すなわち、第2混合地下水M2の流速となる。第3流速v3は、この実施形態では、第3地下水S3のみが流れる流速となる。第3地下水S3の流入量V3は、第3流速v3と第3不透水層H3の高さ位置での内径d(井戸Wの断面積)との積K3で求められる。第2地下水S2の流入量V2は、第2流速v2と第2不透水層H2の高さ位置での井戸Wの断面積との積K2から第3地下水S3の流入量V3を除いた値となる。第1地下水S1の流入量V1は、第1流速v1と第1不透水層H1の高さ位置での井戸Wの断面積との積K1から第2地下水S2の流入量V2と第3地下水S3の流入量V3とを除いた値となる。
【0026】
ここで、第1流速v1と第1不透水層H1の高さ位置での断面積との積K1が、揚水ポンプ2での揚水量Vaとなる。しかしながら、測定誤差等により、積K1が、揚水ポンプの揚水量Vaと異なる(小さい)場合がある。この場合、各地下水S1~S3の流入量は、積K1と揚水量Vaとの比(Va/K1)と、微流速検層器で計測されて算出された各流入量(V1~V3)との積とする。なお、各地下水S1ないしS3のそれぞれの流入量Vを求める方法は、このような態様に限定されるものではなく、種々の方法が採用される。本明細書では、以下、積K1と揚水ポンプ2の揚水量Vaとが同じであるとして説明される。
【0027】
次に調査工程Cが行われる。
図5は、調査工程Cのフローチャートである。
図5に示されるように、調査工程Cは、第1分析工程C1と第2分析工程C2と第1算出工程C4とを含んでいる。また、本実施形態の調査工程Cは、第3分析工程C3と第2算出工程C5とをさらに含んでいる。なお、各分析工程C1、C2及びC3は、算出工程C4、C5の前に行われればよい。各分析工程C1、C2及びC3は、順不同でもよい。各算出工程C4、C5も順不同でよい。各分析工程C1、C2及びC3では、前記分析具によって地下水Sに溶解している物質αの濃度が分析される。
【0028】
本実施形態の第1分析工程C1では、第1採水工程B1で採取された第1混合地下水M1が分析されて第1分析結果X1が得られる。換言すると、第1分析工程C1では、第1地下水S1、第2地下水S2及び第3地下水S3が混じった地下水Sが分析される。第1分析結果X1は、第1混合地下水M1に含まれる物質αの濃度を含んでいる。
【0029】
本実施形態の第2分析工程C2では、第2採水工程B2で採取された第2混合地下水M2が分析されて第2分析結果X2が得られる。換言すると、第2分析工程C2では、第2地下水S2及び第3地下水S3が混じった地下水Sが分析される。第2分析結果X2は、第2混合地下水M2に含まれる物質αの濃度を含んでいる。
【0030】
本実施形態の第3分析工程C3では、第3採水工程B3で採取された第3地下水S3が分析されて第3分析結果X3が得られる。換言すると、第3分析工程C3では、第3地下水S3のみが分析される。本実施形態の第3分析結果X3は、第3地下水S3に含まれる物質αの濃度(水質)を含んでいる。
【0031】
次に、各算出工程C4、C5が行われる。第1算出工程C4では、第1分析結果X1と第2分析結果X2との差から第1地下水S1の水質が求められる。第1算出工程C4は、本実施形態では、第1分析結果X1による第1混合地下水M1の物質αの濃度と、各地下水S1ないしS3の流入量の和(V1+V2+V3=積K1)との積によって、第1混合地下水M1(単位時間当たりの流量)に含まれる物質αの質量a1が算出される。また、第2分析結果X2による第2混合地下水M2の物質αの濃度と、各地下水S2及びS3の流入量の和(V2+V3=積K2)との積によって、第2混合地下水M2(単位時間当たりの流量)に含まれる物質αの質量a2が算出される。質量a1と質量a2との差(a1-a2)は、第1地下水S1に含まれる物質αの質量である。したがって、差(a1-a2)と第1地下水S1の流入量V1との比((a1-a2)/V1)が、第1地下水S1に溶解した物質αの濃度(水質)として示される。
【0032】
また、第2算出工程C5では、第3分析工程C3で得た第3分析結果X3と第2分析結果X2との差から第2地下水S2の水質が求められる。第2算出工程C5では、第3分析結果X3による第3地下水S3に溶解している物質αの濃度と、第3地下水S3の流入量V3との積によって、第3地下水S3(単位時間当たりの流量)に含まれる物質αの質量a3が算出される。第1算出工程C4で得られた第2混合地下水M2に含まれる物質αの質量a2と質量a3との差(a2-a3)は、第2地下水S2に含まれる物質αの質量である。したがって、差(a2-a3)と第2地下水S2の流入量V2との比((a2-a3)/V2)が、第2地下水S2に溶解した物質αの濃度(水質)として示される。このように本実施形態の調査方法では、各地下水S1ないしS3の水質(物質αの濃度)を簡易に調査することができる。
【0033】
図6は、他の実施形態の井戸Wにおける調査方法を説明するための側面図である。本実施形態の井戸Wでの調査方法と同じ構成には、同じ符号が付されてその説明が省略される場合がある。
図6に示されるように、この実施形態の井戸Wは、n個の帯水層Tが設けられた地盤Gに配されている(nは、3以上の自然数)。この実施形態の帯水層Tは、第1帯水層T1から下方へn-2番目の第(n-2)帯水層T(n-2)と、第1帯水層T1から下方へ(n-1)番目の第(n-1)帯水層T(n-1)と、第1帯水層T1から下方へn番目の第n帯水層Tnとを含んでいる。
【0034】
本明細書では、第(n-1)帯水層T(n-1)から流入する第(n-1)地下水S(n-1)の水質を調査する調査方法が説明される。なお、第(n-α)帯水層T(n-α)から流入する第(n-α)地下水S(n-α)の水質を調査する方法(1<α<nの自然数)も同様である。
【0035】
この調査方法においても、揚水工程Aと採水工程Bと調査工程Cとが含まれている。また、井戸W内に流入する第n地下水Sn、及び、第(n-1)地下水S(n-1)のそれぞれの流入量Vn、V(n-1)を求める工程が含まれている。
【0036】
この実施形態の採水工程Bも、揚水工程A中に行われる。この実施形態の採水工程Bは、第(n-2)帯水層T(n-2)と第(n-1)帯水層T(n-1)との間の地下水Sを採取する第(n-1)採水工程B(n-1)と、第(n-1)帯水層T(n-1)と第n帯水層Tnとの間の地下水Sを採取する第n採水工程Bnとを含んでいる。第(n-1)採水工程B(n-1)では、第n地下水Snと第(n-1)地下水S(n-1)とが混じった地下水Sが採取される。第n採水工程Bnでは、第n地下水Snのみが採取される。
【0037】
調査工程は、図示しない第(n-1)分析工程と、第n分析工程と、第(n-1)算出工程とを含んでいる。第(n-1)分析工程では、第(n-1)採水工程B(n-1)で採取された地下水Sが分析される。第(n-1)分析工程は、この実施形態では、第n地下水Snと第(n-1)地下水S(n-1)とが混じった地下水Sの水質(物質αの濃度)が分析される。第n分析工程では、第n採水工程Bnで採取された地下水Sの水質(物質αの濃度)が分析される。第n分析工程は、この実施形態では、第n地下水Snのみが分析される。
【0038】
第(n-1)算出工程では、第(n-1)分析工程で得た第(n-1)分析結果と、第n分析工程で得た第n分析結果との差から第(n-1)地下水S(n-1)の水質が求められる。第(n-1)算出工程は、この実施形態では、第(n-1)分析結果による第(n-1)混合地下水M(n-1)の物質αの濃度と、各地下水Sn及びS(n-1)の流入量の和(Vn+V(n-1))との積によって、第(n-1)混合地下水M(n-1)に含まれる物質αの質量a(n-1)が算出される。また、第(n-1)算出工程では、第n分析結果による第n地下水Snに溶解している物質αの濃度と、第n地下水Snの流入量Vnとの積によって、第n地下水Sn(単位時間当たりの流量)に含まれる物質αの質量anが算出される。質量a(n-1)と質量anとの差(a(n-1)-an)は、第(n-1)地下水S(n-1)に含まれる物質αの質量である。したがって、差(a(n-1)-an)と第(n-1)地下水S(n-1)の流入量V(n-1)との比((a(n-1)-an)/V(n-1))が、第(n-1)地下水S(n-1)に溶解した物質αの濃度を示す。
【0039】
以上、本開示の特に好ましい実施形態について詳述したが、本開示は、図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施し得る。
【0040】
[付記]
本開示は以下の態様を含む。
【0041】
[本開示1]
井戸に流入する地下水の水質を調査するための各層水質調査方法であって、
前記井戸は、複数の帯水層が上下に並ぶ地盤に設けられており、
前記複数の帯水層は、最も上方に配される第1帯水層と、前記第1帯水層の下方に配される第2帯水層とを含んでおり、
前記地下水は、前記第1帯水層から流入する第1地下水と、前記第2帯水層から流入する第2地下水とを含んでおり、
前記第1帯水層よりも上方の位置の前記地下水を揚水ポンプで汲み上げる揚水工程と、前記揚水工程中において、前記地下水を採水ポンプで採取する採水工程と、前記採水工程で採取された前記地下水の水質を調査する調査工程とを含み、
前記採水工程は、前記第1帯水層よりも上方の位置の前記地下水を採取する第1採水工程と、前記第1帯水層と前記第2帯水層との間の前記地下水を採取する第2採水工程とを含み、
前記調査工程は、前記第1採水工程で採取された前記地下水を分析する第1分析工程と、前記第2採水工程で採取された前記地下水を分析する第2分析工程と、前記第1分析工程で得た第1分析結果と前記第2分析工程で得た第2分析結果との差から前記第1地下水の水質を求める第1算出工程とを含む、
各層水質調査方法。
[本開示2]
前記複数の帯水層は、前記第2帯水層の下方に配される第3帯水層をさらに含んでおり、
前記地下水は、前記第3帯水層から流入する第3地下水をさらに含んでおり、
前記採水工程は、前記第2帯水層と前記第3帯水層との間の前記地下水を採取する第3採水工程をさらに含み、
前記調査工程は、前記第3採水工程で採取された前記地下水を分析する第3分析工程と、前記第3分析工程で得た第3分析結果と前記第2分析結果との差から前記第2地下水の水質を求める第2算出工程とを含む、本開示1に記載の各層水質調査方法。
[本開示3]
前記複数の帯水層は、前記第1帯水層から下方へ向かって(n-2)番目(nは、3以上の自然数)の第(n-2)帯水層と、前記第1帯水層から下方へ(n-1)番目の第(n-1)帯水層と、前記第1帯水層から下方へn番目の第n帯水層とを含んでおり、
前記地下水は、前記第(n-1)帯水層から流入する第(n-1)地下水を含んでおり、
前記採水工程は、前記第(n-2)帯水層と前記第(n-1)帯水層との間の前記地下水を採取する第(n-1)採水工程と、前記第(n-1)帯水層と前記第n帯水層との間の前記地下水を採取する第n採水工程とを含み、
前記調査工程は、前記第(n-1)採水工程で採取された前記地下水を分析する第(n-1)分析工程と、前記第n採水工程で採取された前記地下水を分析する第n分析工程と、前記第(n-1)分析工程で得た第(n-1)分析結果と前記第n分析工程で得た第n分析結果との差から前記第(n-1)地下水の水質を求める第(n-1)算出工程とを含む、本開示1又は2に記載の各層水質調査方法。
[本開示4]
前記複数の帯水層のそれぞれから流入する前記地下水の流入量を測定する水量測定工程をさらに含む、本開示1ないし3のいずれかに記載の各層水質調査方法。
[本開示5]
前記水量測定工程は、前記揚水工程とともになされる、本開示4に記載の各層水質調査方法。
[本開示6]
前記採水ポンプは、前記地下水を取り入れるための吸水管が下端に設けられたポンプハウスに収納される、本開示1ないし5のいずれかに記載の各層水質調査方法。
[本開示7]
前記ポンプハウスは、前記井戸内を上下に移動可能に保持されている、本開示6に記載の各層水質調査方法。
【符号の説明】
【0042】
2 揚水ポンプ
3 採水ポンプ
A 揚水工程
B 採水工程
C 調査工程
C1 第1分析工程
C2 第2分析工程
C4 第1算出工程
T1 第1帯水層
T2 第2帯水層
S 地下水
S1 第1地下水