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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127921
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】端子カバー
(51)【国際特許分類】
   H01H 71/08 20060101AFI20230907BHJP
   H01H 73/02 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
H01H71/08
H01H73/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022031908
(22)【出願日】2022-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】508296738
【氏名又は名称】富士電機機器制御株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】君島 芳幸
(72)【発明者】
【氏名】千竈 哲矢
【テーマコード(参考)】
5G030
【Fターム(参考)】
5G030BA01
5G030BA02
5G030BA05
5G030EA01
5G030EA02
5G030EA05
5G030FA01
5G030FA02
5G030XX20
5G030YY04
(57)【要約】
【課題】発生したアークガスの漏れを抑制すること。
【解決手段】一対である第1カバー構成部31及び第2カバー構成部32からなる2分割構造であり、かつ電線12,13が接続される負荷側端子11を覆うための端子カバー30であって、第1カバー構成部31及び第2カバー構成部32は、電線12,13を挿通させるためにそれぞれに形成された切欠(48A等)の開口部が互いに対向する態様で、幅方向の両側壁36A,36Bの少なくとも先端部361,362同士が互いに重なり合うようにして配置されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対である第1カバー構成部及び第2カバー構成部からなる2分割構造であり、かつ電線が接続される端子を覆うための端子カバーであって、
前記第1カバー構成部及び前記第2カバー構成部は、前記電線を挿通させるためにそれぞれに形成された切欠の開口部が互いに対向する態様で、幅方向の両側壁の少なくとも先端部同士が互いに重なり合うようにして配置されたことを特徴とする端子カバー。
【請求項2】
前記第1カバー構成部及び前記第2カバー構成部の一方の両側壁の先端部は、外側部分が内側部分よりも前記第1カバー構成部及び前記第2カバー構成部の他方に向けて突出することにより段差が形成され、
前記第1カバー構成部及び前記第2カバー構成部の他方の両側壁の先端部は、内側部分が外側部分よりも前記第1カバー構成部及び前記第2カバー構成部の一方に向けて突出することにより段差が形成され、
前記第1カバー構成部及び前記第2カバー構成部は、一方の両側壁の先端部における前記外側部分が他方の両側壁の先端部における前記内側部分に重なり合うようにして配置されたことを特徴とする請求項1に記載の端子カバー。
【請求項3】
前記第1カバー構成部及び前記第2カバー構成部は、前記両側壁の先端部における段差が、前記幅方向に直交する該両側壁の延在方向においてそれぞれ異なる位置に形成されたことを特徴とする請求項2に記載の端子カバー。
【請求項4】
前記端子は回路遮断器の端子であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1つに記載の端子カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線が接続される端子を覆う端子カバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
回路遮断器は、配電盤等に設けられており、電源側の端子と負荷側の端子との間を接続及び遮断する。端子のまわりは、異物、工具及び指等(以下、異物等ともいう)が入ることのないようにカバーで覆われていることが望ましい。カバーには電線が通るための切欠が設けられているが、異物等の進入を防止するためには切欠と電線との間は十分に狭くなっていることが望ましい。
【0003】
特許文献1に記載の端子カバーは、端面に電線を通すU字状の切欠溝を形成した第1カバー部と、この第1カバー部と一対となる第2カバー部との2分割構造となっており、第1カバー部に形成した切欠溝の開放端を第2カバー部で閉塞するようにしていることから電線との隙間を狭くすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-067728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記端子カバーでは、第1カバー部の幅方向の両側壁と、第2カバー部の幅方向の両側壁とを互いに突き当てるようにしていたために、回路遮断器にて短絡電流遮断時にアークガスが発生した場合、かかるアークガスにより第1カバー部の両側壁と第2カバー部の両側壁とが撓んでしまい、アークガスが漏れてしまう虞れがあった。このようなアークガスの漏れは、幅方向に互いに隣り合う回路遮断器の端子の周囲へのアークガスの侵入を誘発し、相間短絡を生じさせるために好ましいものではない。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みて、発生したアークガスの漏れを抑制することができる端子カバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る端子カバーは、一対である第1カバー構成部及び第2カバー構成部からなる2分割構造であり、かつ電線が接続される端子を覆うための端子カバーであって、前記第1カバー構成部及び前記第2カバー構成部は、前記電線を挿通させるためにそれぞれに形成された切欠の開口部が互いに対向する態様で、幅方向の両側壁の少なくとも先端部同士が互いに重なり合うようにして配置されたことを特徴とする。
【0008】
また本発明は、上記端子カバーにおいて、前記第1カバー構成部及び前記第2カバー構成部の一方の両側壁の先端部は、外側部分が内側部分よりも前記第1カバー構成部及び前記第2カバー構成部の他方に向けて突出することにより段差が形成され、前記第1カバー構成部及び前記第2カバー構成部の他方の両側壁の先端部は、内側部分が外側部分よりも前記第1カバー構成部及び前記第2カバー構成部の一方に向けて突出することにより段差が形成され、前記第1カバー構成部及び前記第2カバー構成部は、一方の両側壁の先端部における前記外側部分が他方の両側壁の先端部における前記内側部分に重なり合うようにして配置されたことを特徴とする。
【0009】
また本発明は、上記端子カバーにおいて、前記第1カバー構成部及び前記第2カバー構成部は、前記両側壁の先端部における段差が、前記幅方向に直交する該両側壁の延在方向においてそれぞれ異なる位置に形成されたことを特徴とする。
【0010】
また本発明は、上記端子カバーにおいて、前記端子は回路遮断器の端子であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、2分割構造である第1カバー構成部及び第2カバー構成部が、電線を挿通させるためにそれぞれに形成された切欠の開口部が互いに対向する態様で、幅方向の両側壁の少なくとも先端部同士が互いに重なり合うようにして配置されているので、両側壁の強度を向上させることができ、アークガスが発生した場合でも、アークガスにより第1カバー部の両側壁と第2カバー部の両側壁とが撓んでしまうことを防止でき、発生したアークガスの漏れを抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の実施の形態である端子カバーが適用された回路遮断器を示す斜視図である。
図2図2は、図1に示した回路遮断器において一部の構成要素を取り外した状態で示す分解斜視図である。
図3図3は、図1に示した回路遮断器において一部の構成要素を取り外した状態で示す分解斜視図である。
図4図4は、図1に示した回路遮断器の使用例を示す斜視図である。
図5図5は、図1に示した回路遮断器に電線及びブスバーを接続した状態を示す斜視図である。
図6図6は、端子カバーの一部を拡大して示す正面図である。
図7図7は、図1図3に示した端子カバーが並列された場合を示す正面図である。
図8図8は、本発明の実施の形態である端子カバーの変形例が適用された回路遮断器において、一部の構成要素を取り外した状態で示す分解斜視図である。
図9図9は、図8に示した端子カバーが並列された場合を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る端子カバーの好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施の形態である端子カバーが適用された回路遮断器を示す斜視図であり、図2及び図3は、それぞれ図1に示した回路遮断器において一部の構成要素を取り外した状態で示す分解斜視図である。
【0015】
ここで例示する回路遮断器1は、例えば配線用遮断器又は漏電遮断器等であり、大電流が流れることを検知して電路を自動的に遮断するものである。より詳細には、回路遮断器1は、図示せぬ電源側端子と負荷側端子11との間を接続及び遮断するものである。また回路遮断器1は、図4に示すように、他の回路遮断器1と互いに隣接する態様で左右に並設されて用いられる。
【0016】
以下においては、1つの回路遮断器1について説明するものとし、負荷側端子11が設けられた側を下側としつつその反対側を上側とし、レバーLが設けられる操作面側を表側としつつその反対側を裏側とし、上下方向及び表裏方向に直交する方向、すなわち回路遮断器1の幅方向を左右方向として説明する。
【0017】
上記操作面には、レバーLの他、トリップボタンT等が設けられている。各図においては、適宜矢印で方向を示すが、これらの方向を示す表記は説明上の便宜的なものであって、回路遮断器1の取り付け向きは限定されない。
【0018】
回路遮断器1は、表カバー20aと裏カバー20bとで覆われた遮断器本体20の内部に消弧装置、開閉機構及び引き外し機構等を有している。裏カバー20bにおける下方部には、3つの負荷側端子11が左右に並列して設けられている。
【0019】
ここで回路遮断器1は、三相仕様であり負荷側端子11が3つ設けられているが、本発明においては、1端子型、2端子型又は4端子型等のものであってもよい。3つの負荷側端子11は、端子カバー30で覆われている。
【0020】
裏カバー20bにおける上方部には、3つの電源側端子が左右に並列して設けられている。これら電源側端子についても端子カバー30により覆われていてもよい。裏カバー20bには、例えば配電盤における所定のレール等に取り付け可能な取付部21が裏面に形成されている。
【0021】
図2及び図3に示すように、各負荷側端子11は両側一対の側壁部22及び負荷側端子11の相互間の中間隔壁部23によって区画された領域内に設けられている。側壁部22は、裏カバー20bから表カバー20aに亘って連続して形成されている。負荷側端子11は、ねじ式であって、台座部11aと、該台座部11aのねじ孔に螺入されるねじ11bとによって構成されている。
【0022】
ねじ11bは、裏側に向かって螺入され、表側に向かって抜ける。負荷側端子11は、ねじアップ式又はスプリング式等のものであってもよい。負荷側端子11は、台座部11aとねじ11bのヘッド部とによって電線を固定し導通するものである。
【0023】
各負荷側端子11には、所定の許容仕様に従って、図5に示すように、太い電線12、この太い電線12よりも外径の小さい細い電線13、並びにブスバー14等が固定可能である。また、細い電線13については、表裏方向に重ねて複数本(図5の例では2本)をまとめて固定することも可能である。固定された電線12,13は、負荷側端子11の近傍では上下方向に沿って延在する。
【0024】
次に、端子カバー30について説明する。端子カバー30は、3つの負荷側端子11を覆うものであり、第1カバー構成部31及び第2カバー構成部32の2分割構造となっている。第1カバー構成部31及び第2カバー構成部32は、樹脂成型品であって絶縁性を有する。端子カバー30における各部の隙間は、異物等が進入しない程度に十分狭くなっており負荷側端子11を保護している。端子カバー30における保護等級は、例えばJIS C 0920で規定されるIP20相当である。
【0025】
第1カバー構成部31と第2カバー構成部32とは、互いに組み合わされて用いられる。第1カバー構成部31は、負荷側端子11を基準として、表側部分及び表寄りの下方部分を覆うものである。第2カバー構成部32は、負荷側端子11を基準として、裏側部分及び裏寄りの下方部分を覆うものである。
【0026】
以下の説明では、理解を容易なものとするため、第1カバー構成部31の構成要素の符号には、適宜「A」を付すものとし、第2カバー構成部32における対応する構成要素の符号には、適宜「B」を付すものとする。尚、端子カバー30単体の説明では、端子カバー30の「正面」を、図1図3における下側の面とする。
【0027】
第1カバー構成部31は、表壁34、左右一対の側壁36A、一対の中間隔壁38A及び正面部40Aを備えて構成されている。
【0028】
表壁34は、3つの負荷側端子11の表側(換言すれば、ねじ11bが抜ける方向)をまとめて覆うためのものである。表壁34には、3つの負荷側端子11に対応した位置に操作孔34aが設けられているとともに、スナップフィット部34bが設けられている。
【0029】
操作孔34aは、円形の貫通孔であり、検電器やドライバー等の棒状器具が挿入されて負荷側端子11の一部に当接することを許容しつつ、棒状器具がねじ11bのヘッド部に当接する適正な向きとなるように案内する機能を有している。これら操作孔34aを通じて棒状器具が挿入されて負荷側端子11の一部に当接されることにより、検電や増し締め等の操作が可能となっている。
【0030】
そのような操作孔34aは、回路遮断器1の表面に外部操作ハンドル装置が取り付けられた際に、外部操作ハンドル装置を回路遮断器1に取り付けた取付けねじに棒状器具が接触することを防止し、通電時における作業者の地絡・感電を防止する機能を備えている。スナップフィット部34bは、遮断器本体20に対する取り付け部である。
【0031】
左右一対の側壁36Aは、それぞれ側壁部22の延長面を形成しており、外部領域と負荷側端子11とを隔てるためのものである。これら側壁36Aは、それぞれ表壁34の左右の両端部から裏側に向けて延在しており、左側の側壁36Aの方が右側の側壁36Aよりも裏側に向けて延在している。ここで左右一対の側壁36Aにおいては、互いに近接する方向を内側と称し、互いに離隔する方向を外側と称して説明する。
【0032】
これら両側壁36Aは、裏側の延在端部が先端部361を成しており、かかる先端部361において外側部分361aが内側部分361bよりも裏側に向けて突出して段差361cが形成されている。
【0033】
つまり、両側壁36Aにおいては、それぞれの先端部361において外側部分361aが内側部分361bよりも裏側に向けて突出して段差361cが形成されており、該両側壁36Aの延在方向(表裏方向)において異なる位置に段差361cが形成されている。
【0034】
中間隔壁38Aは、中間隔壁部23の延長面を形成しており、各負荷側端子11の相互間を隔てるためのものである。中間隔壁38Aの裏側端部には、裏側に向けて突出する突起381が形成されている。
【0035】
正面部40Aは、表側が表壁34と接続され、両側が側壁36Aと接続された部分であり、各負荷側端子11に対応して設けられた3つの電線径調整部42Aを有している。3つの電線径調整部42Aは、負荷側端子11の並びに対応して並列している。正面部40Aにおける電線径調整部42A以外の個所は、外枠44Aを形成している。
【0036】
端子カバー30は、電線12,13が挿通するための挿通部46(図1及び図5参照)を有する。挿通部46は、3つの負荷側端子11に対して個別に設けられ、それぞれ負荷側端子11を臨むことが可能なように設けられている。電線径調整部42Aは、負荷側端子11に接続される電線12,13の径及び本数に応じて挿通部46の面積を調整する部分である。
【0037】
図6は、端子カバー30の一部を拡大して示す正面図である。この図6に示すように、第1カバー構成部31における電線径調整部42Aは、外枠44Aに形成された外枠切欠48Aと、外枠切欠48Aの内側に設けられた第1内枠50Aと、第1内枠50Aに形成された第1内枠切欠52Aと、第1内枠切欠52Aの内側に設けられた第2内枠54Aと、第2内枠54Aに形成された第2内枠切欠56Aと、第2内枠切欠56Aの内側に設けられた第3内枠58Aと、第3内枠58Aに形成された第3内枠切欠60Aとを有する。
【0038】
外枠切欠48Aの最も表側の部分と外枠44Aとの間には、ヒレ62が設けられている。ヒレ62は、遮断器本体20から第1カバー構成部31を取り外す際に指を掛ける部分である。
【0039】
第1内枠50A、第2内枠54A及び第3内枠58Aは、それぞれU字形状である。第1内枠50A、第2内枠54A及び第3内枠58Aは、この順に小さくなっており、それぞれ略相似形状でいわゆる入れ子構造になっている。
【0040】
外枠44Aと第1内枠50Aとの隙間、第1内枠50Aと第2内枠54Aとの隙間、並びに第2内枠54Aと第3内枠58Aとの隙間は、それぞれ略同じ幅であり、異物等が進入しない程度に十分狭くなっている。
【0041】
外枠切欠48A、第1内枠切欠52A、第2内枠切欠56A及び第3内枠切欠60Aは、それぞれ略相似形のU字形状であり、裏側に開口している。外枠切欠48A、第1内枠切欠52A、第2内枠切欠56A及び第3内枠切欠60Aは、この順に小さくなっている。
【0042】
第1内枠50Aは、外枠44Aに対して、外枠切欠48Aの開口側(図6において裏側)の両端位置に設けられた一対の開口部接続片64Aと、最奥部の奥側接続片66Aとの3か所で接続されており、適度な接続強度があって安定している。
【0043】
尚、開口部接続片64Aは、外枠切欠48Aの開口側端部よりはやや奥まった位置に設けられて隙間が形成されている。隙間は後述する切断工具での切り離しの際、切り取りの力が弱くても出来る様に辺を短くカットしたものである。第1内枠50Aは、最奥部で奥側接続片66Aによりヒレ62を介して外枠44Aと接続されている。
【0044】
開口部接続片64A及び奥側接続片66Aには、ニッパ、カッター等の動力を必要としない切断工具によって切断可能な部位が形成されている。そのような部位を切断すると、第1内枠50Aは外枠44Aから離間する。
【0045】
第1内枠50Aと第2内枠54Aとの間、第2内枠54Aと第3内枠58Aとの間も外枠44Aと第1内枠50Aとの接続形態と同様に接続されている。すなわち、第2内枠54Aは第1内枠50Aに対して、第1内枠切欠52Aの開口側の一対の開口部接続片68Aと、最奥部の奥側接続片70Aとの3か所で接続されている。第3内枠58Aは、第2内枠54Aに対して、第2内枠切欠56Aの開口側の一対の開口部接続片72Aと、最奥部の奥側接続片74Aとの3か所で接続されている。
【0046】
開口部接続片68A、奥側接続片70A、開口部接続片72A、奥側接続片74Aには、切断工具によって切断可能な部位が形成されている。
【0047】
次に、第2カバー構成部32について説明する。図2及び図3に示したように、第2カバー構成部32は、裏壁35、左右一対の側壁36B、一対の中間隔壁38B及び正面部40Bを備えて構成されている。
【0048】
裏壁35は、3つの負荷側端子11の裏側をまとめて覆うためのものである。裏壁35には、図には明示しないが、3つのねじ11bのそれぞれの裏側部分に切取壁が形成されており、切断工具等により切取壁を切り取った個所からはブスバー14が挿入されて負荷側端子11に接続可能となっている。ブスバー14は、一般的に配電盤内で回路遮断器1よりも裏面側で延在するように設けられていることから、裏壁35の切取壁を切り取った個所から挿入可能とすることにより接続が容易となる。裏壁35は、接続が想定されるブスバー14等の導電材の断面積に応じて少なくとも一部が切取壁として形成されているとよい。
【0049】
左右一対の側壁36Bは、それぞれ側壁部22の延長面を形成しており、外部領域と負荷側端子11とを隔てるためのものである。これら側壁36Bは、それぞれ裏壁35の左右の両端部から表側に向けて延在しており、右側の側壁36Bの方が左側の側壁36Bよりも表側に向けて延在している。ここでこれら左右一対の側壁36Bにおいても、上述した第1カバー構成部31を構成する側壁36Aと同様に、互いに近接する方向を内側と称し、互いに離隔する方向を外側と称して説明する。
【0050】
これら両側壁36Bは、表側の延在端部が先端部362を成しており、かかる先端部362において内側部分362bが外側部分362aよりも表側に突出して段差362cが形成されている。
【0051】
つまり、両側壁36Bにおいては、それぞれの先端部362において内側部分362bが外側部分362aよりも表側に向けて突出して段差362cが形成されており、該両側壁36Bの延在方向(表裏方向)において異なる位置に段差362cが形成されている。
【0052】
中間隔壁38Bは、上記中間隔壁38Aと一部が重なって中間隔壁部23の延長面を形成し、各負荷側端子11の相互間を隔てるためのものである。中間隔壁38Bの表側端部には、上記突起381に適合可能な凹部382が形成されている。
【0053】
正面部40Bは、裏側が裏壁35と接続され、両側が側壁36Bと接続された部分であり、各負荷側端子11に対応して設けられた3つの電線径調整部42Bを有している。3つの電線径調整部42Bは、負荷側端子11の並びに対応して並列している。正面部40Bにおける電線径調整部42B以外の個所は、外枠44Bを形成している。
【0054】
図6に示すように、電線径調整部42Bは、細部を除いて基本的に上記電線径調整部42Bに対して表裏対称形状となっている。電線径調整部42Bの構成要素は、上記の電線径調整部42Bの構成要素が「A」を付しているところを「B」を付しており、対応が識別可能となっていることから個々の詳細な説明は省略する。
【0055】
そのような第1カバー構成部31と第2カバー構成部32とは、中間隔壁38Aの裏側端部に形成された突起381が、対応する中間隔壁38Bの表側端部に形成された凹部382に進入して嵌合し、左側の側壁36Aの先端部361における外側部分361aが左側の側壁36Bの先端部362における内側部分362bに重なり合うとともに、右側の側壁36Aの先端部361における外側部分361aが右側の側壁36Bの先端部362における内側部分362bに重なり合うことにより、端子カバー30を構成している。
【0056】
この場合において、第1内枠50A,50B、第2内枠54A,54B、第3内枠58A,58Bのいずれもが切り取られていない初期状態では、最も内側の第3内枠切欠60A,60Bの開口部が互いに対向して挿通部46を形成しており、左側の側壁36Aの先端部361における外側部分361aの裏側の端面が左側の側壁36Bの先端部362における外側部分362aの表側の端面に当接し、右側の側壁36Aの先端部361における外側部分361aの裏側の端面が右側の側壁36Bの先端部362における外側部分362aの表側の端面に当接している。
【0057】
つまり、端子カバー30は、一対である第1カバー構成部31及び第2カバー構成部32からなる2分割構造であり、第1カバー構成部31及び第2カバー構成部32は、それぞれに形成された切欠の開口部が互いに対向する態様で、幅方向の両側壁36A,36Bの先端部361,362同士が互いに重なり合うようにして配置されて構成されている。
【0058】
そして、負荷側端子11に接続される電線12,13の径の大きさに応じて、該電線12,13の径よりも僅かに大きい挿通部46が切欠の開口部により形成されるように、該当する各接続片の部位を切断することにより、端子カバー30は、該挿通部46を通じて電線12,13を挿通させている。これにより、電線12,13と挿通部46との隙間を十分に狭くすることができ、異物等が進入することを抑制することができる。
【0059】
以上説明したように、本発明の実施の形態である端子カバー30によれば、第1カバー構成部31及び第2カバー構成部32が、電線12,13を挿通させるためにそれぞれに形成された切欠の開口部が互いに対向する態様で、幅方向の両側壁36A,36Bの先端部361,362同士が互いに重なり合うようにして配置されているので、両側壁36A,36Bの強度を向上させることができる。これにより、回路遮断器1にて短絡電流遮断時にアークガスが発生した場合でも、アークガスにより第1カバー構成部31の両側壁36Aと第2カバー構成部32の両側壁36Bとが撓んでしまうことを防止でき、発生したアークガスの漏れを抑制することができる。
【0060】
上記端子カバー30によれば、第1カバー構成部31の両側壁36Aの先端部361に形成された段差361cの外側部分361aが、第2カバー構成部32の両側壁36Bの先端部362に形成された段差362cの内側部分362bに重なり合うようにして配置されているので、互いに重なり合う部分の厚み寸法の増大を抑制でき、端子カバー30自体が大型化することを抑制することができる。
【0061】
また上記端子カバー30によれば、第1カバー構成部31及び第2カバー構成部32の両側壁36A,36Bの延在方向(表裏方向)において異なる位置に段差361c,362cが形成されているので、図7に示すように、回路遮断器1が左右に並列されることにより端子カバー30も他の端子カバー30と互いに接した状態で左右に並列された場合、第1カバー構成部31の外側部分361aが、他の端子カバー30の第1カバー構成部31における段差361cよりも基端側(表側)の厚みが十分に確保された部分に接することとなり、該外側部分361aを含む両側壁36A,36Bが撓むことを抑制することができる。これにより、アークガスが他の端子カバー30に侵入することもなく、相間短絡を生じさせる虞れがない。
【0062】
図8は、本発明の実施の形態である端子カバー30の変形例が適用された回路遮断器1aにおいて、一部の構成要素を取り外した状態で示す分解斜視図である。尚、上述した実施の形態である端子カバー30及びこれを備えた回路遮断器1と同一の構成要素には同一の符号を付して重複した説明を適宜省略する。
【0063】
ここで例示する端子カバー30aは、第1カバー構成部31a及び第2カバー構成部32aの2分割構造となっている。第1カバー構成部31a及び第2カバー構成部32aは、樹脂成型品であって絶縁性を有する。端子カバー30aにおける各部の隙間は、異物等が進入しない程度に十分狭くなっており負荷側端子11を保護している。端子カバー30aにおける保護等級は、例えばJIS C 0920で規定されるIP20相当である。
【0064】
第1カバー構成部31aと第2カバー構成部32aとは、互いに組み合わされて用いられる。第1カバー構成部31aは、負荷側端子11を基準として、表側部分及び表寄りの下方部分を覆うものである。第2カバー構成部32aは、負荷側端子11を基準として、裏側部分及び裏寄りの下方部分を覆うものである。
【0065】
第1カバー構成部31aは、表壁34、左右一対の側壁36A′、一対の中間隔壁38A及び正面部40Aを備えて構成されている。左右一対の側壁36A′は、それぞれ側壁部22の延長面を形成しており、外部領域と負荷側端子11とを隔てるためのものである。これら側壁36A′は、それぞれ表壁34の左右の両端部から裏側に向けて延在している。これら両側壁36A′は、裏側の延在端部が先端部361′を成している。
【0066】
第2カバー構成部32aは、裏壁35、左右一対の側壁36B′、一対の中間隔壁38B及び正面部40Bを備えて構成されている。左右一対の側壁36B′は、それぞれ側壁部22の延長面を形成しており、外部領域と負荷側端子11とを隔てるためのものである。これら側壁36B′は、それぞれ裏壁35の左右の両端部から表側に向けて延在している。これら側壁36B′においては、内側に一体的に接合された補強板材363が設けられており、この補強板材363の表側端部は、側壁36B′の表側端部よりも表側に突出しており、かかる補強板材363の表側端部が両側壁36Bの先端部363′を成している。
【0067】
そのような第1カバー構成部31a及び第2カバー構成部32aを有する端子カバー30aでは、第1内枠50A,50B、第2内枠54A,54B、第3内枠58A,58Bのいずれもが切り取られていない初期状態では、最も内側の第3内枠切欠60A,60Bの開口部が互いに対向しており、補強板材363の表側端部が第1カバー構成部31aの両側壁36A′の先端部361′の内側に設置されることにより、幅方向の両側壁36A′,36B′の先端部361′,363′同士が互いに重なり合うようにして配置されて構成されている。
【0068】
かかる端子カバー30aによれば、第1カバー構成部31a及び第2カバー構成部32aが、電線12,13を挿通させるためにそれぞれに形成された切欠の開口部が互いに対向する態様で、幅方向の両側壁36A′,36B′の先端部361′,363′同士が互いに重なり合うようにして配置されているので、両側壁36A′,36B′の強度を向上させることができる。これにより、回路遮断器1aにて短絡電流遮断時にアークガスが発生した場合でも、アークガスにより第1カバー構成部31aの両側壁36A′と第2カバー構成部32aの両側壁36B′とが撓んでしまうことを防止でき、発生したアークガスの漏れを抑制することができる。
【0069】
しかも図9に示すように、回路遮断器1aが左右に並列されることにより端子カバー30aも他の端子カバー30aと互いに接した状態で左右に並列された場合でも、アークガスが他の端子カバー30aに侵入することもなく、相間短絡を生じさせる虞れがない。
【0070】
以上、本発明の好適な実施の形態及び代表的な変形例について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、種々の変更を行うことができる。
【0071】
上述した実施の形態では、第1カバー構成部31の両側壁36Aにおける先端部361には、外側部分361aが内側部分361bよりも裏側に向けて突出して段差361cが形成されており、第2カバー構成部32の両側壁36Bにおける先端部362には、内側部分362bが外側部分362aよりも表側に向けて突出して段差362cが形成されていたが、本発明はこれに限定されない。すなわち、第1カバー構成部の両側壁における先端部には、内側部分が外側部分よりも裏側に向けて突出して段差が形成され、第2カバー構成部の両側壁における先端部には、外側部分が内側部分よりも表側に向けて突出して段差が形成されていてもよい。
【0072】
上述した実施の形態では、第1カバー構成部31の両側壁36Aにおける先端部361、並びに第2カバー構成部32の両側壁36Bの先端部362には段差361c,362cが形成されていたが、本発明においては段差が形成されていなくてもよい。
【0073】
上述した実施の形態では、第1カバー構成部31及び第2カバー構成部32の両側壁36A,36Bの延在方向(表裏方向)において異なる位置に段差361c,362cが形成されていたが、本発明においては、段差が両側壁の延在方向の同じ位置に形成されていてもよい。
【0074】
上述した実施の形態では、各接続片の部位が切断工具で切断する形態として説明したが、本発明においては、当該部位が設計条件によっては手で曲げ又は捩じることによって切断できるように形成してもよい。
【0075】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0076】
1…回路遮断器、11…負荷側端子、12,13…電線、20…遮断器本体、20a…表カバー、20b…裏カバー、30…端子カバー、31…第1カバー構成部、32…第2カバー構成部、34…表壁、34a…操作孔、34b…スナップフィット部、35…裏壁、36A,36B…側壁、361,362…先端部、361a,362a…外側部分、361b,362b…内側部分、361c,362c…段差、38A,38B…中間隔壁、40A,40B…正面部、42A,42B…電線径調整部、46…挿通部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9