(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127922
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】RFIDラベルおよびRFIDラベルの製造方法
(51)【国際特許分類】
G06K 19/077 20060101AFI20230907BHJP
【FI】
G06K19/077 144
G06K19/077 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022031909
(22)【出願日】2022-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000110217
【氏名又は名称】TOPPANエッジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100206999
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 綾夏
(72)【発明者】
【氏名】梅津 駿
(72)【発明者】
【氏名】吉田 享平
(72)【発明者】
【氏名】水沼 義博
(57)【要約】
【課題】通信性能の低下を抑制できるRFIDラベルおよびRFIDラベルの製造方法を提供する。
【解決手段】RFIDラベル10は、インレット2と、導電性を有する導電性層体4と、接着層3とを備える。インレット2は、ICチップ21、およびICチップ21に電気的に接続されたアンテナを有する。導電性層体4は、導電性を有する。接着層3は、インレット2と導電性層体4との間に介在して、インレット2と導電性層体4とを接着する。接着層3は、非極性のオレフィン系樹脂と非極性の合成ゴム系樹脂とのうち少なくとも一方を含む。接着層3の厚みは、200μm~800μmである。RFIDラベル10の全体の厚みは、300μm~1200μmである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICチップ、および前記ICチップに電気的に接続されたアンテナを有するインレットと、
導電性を有する導電性層体と、
前記インレットと前記導電性層体との間に介在して、前記インレットと前記導電性層体とを接着する接着層と、
を備え、
前記接着層は、非極性のオレフィン系樹脂と非極性の合成ゴム系樹脂とのうち少なくとも一方を含み、
前記接着層の厚みは、200μm~800μmであり、
全体の厚みは、300μm~1200μmである、RFIDラベル。
【請求項2】
前記導電性層体は、金属層と、前記金属層に積層された樹脂層とを有する、請求項1記載のRFIDラベル。
【請求項3】
前記導電性層体の厚さは、10μm~100μmである、請求項2記載のRFIDラベル。
【請求項4】
ICチップ、および前記ICチップに電気的に接続されたアンテナを有するインレットと、導電性を有する導電性層体と、を準備する工程と、
前記インレットと前記導電性層体のうち少なくとも一方に接着材を塗布する工程と、
前記インレットと前記導電性層体とを、前記接着材によって接着することによって、全体の厚みが300μm~1200μmであるRFIDラベルを得る工程と、
を有し、
前記接着材は、非極性のオレフィン系樹脂と非極性の合成ゴム系樹脂とのうち少なくとも一方を含み、
前記接着材によって形成された接着層の厚みは、200μm~800μmである、RFIDラベルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFIDラベルおよびRFIDラベルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、流通管理などを目的として、RFID(Radio Frequency IDentification)タグが用いられている。RFIDタグは、リーダライタとの間で近距離の無線通信を行うことができる。
特許文献1に記載のRFIDタグは、導電性シートと、発泡スチロールなどで形成されたスペーサ部材と、ICタグとが重ねられて構成されている。スペーサ部材は、導電性シートとICタグとの間に介挿されている。このRFIDタグは、スペーサ部材を備えるため、金属製の物品への設置にも対応できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述のRFIDタグは、押圧されることなどによるスペーサ部材の厚さ変化などにより、通信距離、周波数特性などの通信性能に影響が出る可能性がある。
【0005】
本発明の一態様は、通信性能の低下を抑制できるRFIDラベルおよびRFIDラベルの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、ICチップ、および前記ICチップに電気的に接続されたアンテナを有するインレットと、導電性を有する導電性層体と、前記インレットと前記導電性層体との間に介在して、前記インレットと前記導電性層体とを接着する接着層と、を備え、前記接着層は、非極性のオレフィン系樹脂と非極性の合成ゴム系樹脂とのうち少なくとも一方を含み、前記接着層の厚みは、200μm~800μmであり、全体の厚みは、300μm~1200μmである、RFIDラベルを提供する。
【0007】
前記導電性層体は、金属層と、前記金属層に積層された樹脂層とを有することが好ましい。
【0008】
前記導電性層体の厚さは、10μm~100μmであってよい。
【0009】
本発明の他の態様は、ICチップ、および前記ICチップに電気的に接続されたアンテナを有するインレットと、導電性を有する導電性層体と、を準備する工程と、前記インレットと前記導電性層体のうち少なくとも一方に接着材を塗布する工程と、前記インレットと前記導電性層体とを、前記接着材によって接着することによって、全体の厚みが300μm~1200μmであるRFIDラベルを得る工程と、を有し、前記接着材は、非極性のオレフィン系樹脂と非極性の合成ゴム系樹脂とのうち少なくとも一方を含み、前記接着材によって形成された接着層の厚みは、200μm~800μmである、RFIDラベルの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、通信性能の低下を抑制できるRFIDラベルおよびRFIDラベルの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態に係るRFIDラベルの断面図である。
【
図2】第1実施形態に係るRFIDラベルの平面図である。
【
図4】第1実施形態に係るRFIDラベルの製造方法を説明する工程図である。
【
図7】第1実施形態に係るRFIDラベルの使用方法を説明する図である。
【
図10】アンテナの第1の例の一部の平面図である。
【
図11】アンテナの第2の例の一部の平面図である。
【
図12】第2実施形態に係るRFIDラベルの使用状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態によるRFIDラベルについて詳細に説明する。
なお、以下で説明する実施形態は、本発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであって、本発明を限定しない。以下で参照する図面においては、理解を容易にするために、必要に応じて各部材の寸法を適宜変えて図示する。
【0013】
[RFIDラベル](第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るRFIDラベル10の断面図である。
図2は、RFIDラベル10の平面図である。
図1は、
図2のI-I線に沿う断面矢視図である。
以下、
図1に基づいてRFIDラベル10の姿勢を仮に定める。例えば、インレット2は、導電性層体4に対して上に位置する。ここで定めた位置関係は、RFIDラベル10の使用時の姿勢を限定しない。平面視は、RFIDラベル10の厚さ方向から見ることをいう。
【0014】
図1に示すように、RFIDラベル10は、表面基材1と、インレット2と、接着層3と、導電性層体4と、粘着層5と、剥離シート6とを備えている。RFIDラベル10は、表面基材1、インレット2、接着層3、導電性層体4、粘着層5、および剥離シート6が、この順に積層されている。RFIDラベル10は「非接触型データ受送信体(RFIDタグ)」の一例である。
【0015】
表面基材1の表面(上面)には、文字、図形、記号などにより情報が表示される。情報表示は、印刷などにより形成される。表面基材1は、例えば、紙、樹脂などで形成される。表面基材1はシート状に形成されている。表面基材1は、粘着剤などによりインレット2の上面に貼り付けられる。
【0016】
図2に示すように、表面基材1の平面視形状は矩形状である。表面基材1の平面視形状は、インレット2の平面視形状と同じである。表面基材1は、全面にわたってインレット2の上面に重ねられている。
【0017】
インレット2は、基材20と、ICチップ21と、回路22と、アンテナ23とを備える。
基材20は、板状とされている。基材20としては、例えば、樹脂からなる基材が挙げられる。基材20を構成する樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミドなどがある。基材20としては、ガラス繊維の布にエポキシ樹脂を含浸させて熱硬化させた基材を用いてもよい。基材20は、紙基材、セラミックス基材等でもよい。基材20は、例えば、リジッド基板である。基材20の平面視形状は矩形状(詳しくは、長方形状)である。
【0018】
ICチップ21は、例えば、回路22およびアンテナ23を介して外部と無線通信を行って非接触で情報の書き込みおよび読み出しを行う半導体集積回路である。ICチップ21は、例えば、外部から非接触で回路22およびアンテナ23を介して供給される電力によって動作する。ICチップ21は、板状または直方体状とされる。ICチップ21は、平面視において矩形状である。
【0019】
図1に示すように、ICチップ21は、基材20の下面(接着層3が形成された面)に形成されている。ICチップ21は、基材20の下面から下方に突出する。ICチップ21の厚みは、例えば、100μm~300μmである。ICチップ21は、接着層3に埋設されている。ICチップ21は、下面21aおよび4つの側面21bが接着層3に覆われている。ICチップ21の下面21aおよび4つの側面21bは、それぞれ全面にわたって接着層3に接し、接着層3に接着している。
【0020】
ICチップ21は、基材20の下面に形成されていることにより、外力が加えられにくい。例えば、上からの厚さ方向の押圧力(外力)がRFIDラベル10に加えられた場合、その力は基材20によって分散されるため、ICチップ21に及ぶ力は小さくなる。そのため、ICチップ21を保護し、ICチップ21の正常な機能を確保することができる。
【0021】
図2に示すように、回路22は、基材20の一方の面に層状に形成される。回路22は、基材20の下面に形成されるのが好ましい。回路22は、ICチップ21と電気的に接続される。回路22は、ループ状(環状)であってよい。
【0022】
アンテナ23は、ブースター用のアンテナである。アンテナ23は、基材20の一方の面に層状に形成される。アンテナ23は、基材20の下面に形成されるのが好ましい。アンテナ23は、例えば、中央部23Aと、一対の323B,23Bとを備える。一対の放射部23B,23Bは、それぞれ中央部23Aから基材20の一方および他方の端部に向けて延出する。中央部23Aの内縁および放射部23B,23Bの内縁は、回路22の外縁に近接している。アンテナ23は、回路22と電磁結合できる。そのため、アンテナ23は、回路22と電気的に接続される。
【0023】
回路22およびアンテナ23は、例えば、金属箔、金属薄膜、金属板等によって形成される。金属薄膜は、例えば、メッキによって形成される。金属薄膜は、例えば、金属蒸着等の薄膜形成法によって形成される。回路22およびアンテナ23を構成する金属は、例えば、銅、銀、金、白金、アルミニウムなどである。回路22およびアンテナ23は、ポリマー型導電インク、銀インク組成物等の導電性インクによって形成されてもよい。導電インクは、金属、カーボン材料などで形成される導電性粒子を含んでいてもよい。
【0024】
図1に示すように、接着層3は、インレット2と導電性層体4との間に介在して、インレット2と導電性層体4とを接着する。接着層3は、例えば、液状または半固形状の硬化型接着材によって形成される。
【0025】
接着層3は、非極性のオレフィン系樹脂と非極性の合成ゴムとのうち少なくとも一方を含む。
非極性のオレフィン系樹脂は、極性を有してないオレフィン系樹脂であり、具体的には、分子内で電子的な分極が発生していないオレフィン系樹脂である。非極性のオレフィン系樹脂は、例えば、極性を有する官能基を持たない。非極性のオレフィン系樹脂は、例えば、永久双極子を持たない。非極性のオレフィン系樹脂は、例えば、炭素原子と水素原子のみからなる不飽和炭化水素であってもよい。
【0026】
ここでいう「非極性」は、厳密に極性がないことを意味しない。すなわち、非極性のオレフィン系樹脂は、極性が低いオレフィン系樹脂(具体的には、分子内での電子的な分極が小さいオレフィン系樹脂)も含む。非極性のオレフィン系樹脂は、例えば、極性を有する官能基が少ない。
【0027】
非極性のオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリスチレン、シクロオレフィンなどを挙げることができる。非極性オレフィン系樹脂としては、エチレン酢酸ビニル共重合体を挙げることもできる。エチレン酢酸ビニル共重合体は極性を有するが、その極性は低いため、非極性のオレフィン系樹脂に含めることができる。
これらのオレフィン系樹脂は、1つのみを使用してもよいし、2以上を併用してもよい。
【0028】
非極性のオレフィン系樹脂は、例えば、溶解度パラメータ(SP値)が6~10(cal/cm3)1/2であることが好ましい。SP値は、7~9(cal/cm3)1/2であることが好ましい。SP値は、例えば、次式で求められる。
SP=(ΔH/V)1/2
(ΔHはモル蒸発熱(cal/mol)である。Vはモル体積(cm3/mol)である。)
【0029】
SP値は、例えば、Fedorsの方法を用いて測定できる(SP値基礎・応用と計算、2005年3月31日 第1版、発行者 谷口彰敏、発行 株式会社情報機構、66,67頁を参照)。
【0030】
非極性のオレフィン系樹脂は、誘電正接(例えば、JIS C2138を参照)が0.001以下であることが好ましい。非極性のオレフィン系樹脂は、誘電率(例えば、JIS K6911またはASTM D150を参照)が3以下であることが好ましい。
【0031】
非極性の合成ゴムは、極性を有してない合成ゴムであり、具体的には、分子内で電子的な分極が発生していない合成ゴムである。非極性の合成ゴムは、例えば、極性を有する官能基を持たない。非極性の合成ゴムは、例えば、永久双極子を持たない。
【0032】
合成ゴムについても、「非極性」は、厳密に極性がないことを意味しない。すなわち、非極性の合成ゴムは、極性が低い合成ゴム、(具体的には、分子内での電子的な分極が小さい合成ゴム)も含む。非極性の合成ゴムは、例えば、極性を有する官能基が少ない。
【0033】
非極性の合成ゴムとしては、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、イソブチレンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム等を挙げることができる。これらの合成ゴムは、1つのみを使用してもよいし、2以上を併用してもよい。
【0034】
非極性の合成ゴムは、例えば、SP値が6~10(cal/cm3)1/2であることが好ましい。SP値は、7~9(cal/cm3)1/2であることが好ましい。非極性の合成ゴムは、誘電正接が0.001以下であることが好ましい。誘電率は3以下であることが好ましい。
【0035】
接着層3は、非極性のオレフィン系樹脂と非極性の合成ゴムのうち一方のみを含んでいてもよいし、両方を含んでいてもよい。
接着層3におけるオレフィン系樹脂と合成ゴムとの含有比(質量比)は、例えば、1:9~9:1(オレフィン系樹脂:合成ゴム)であってよい。
【0036】
接着層3は、非極性のオレフィン系樹脂と非極性の合成ゴムのうち少なくとも一方を含むため、接着層3の誘電正接は小さい。そのため、誘電損失による通信距離の低下を抑制できる。よって、RFIDラベル10に要求される通信特性(通信距離、周波数帯域)に適した電気的特性が得られる。
これに対し、接着層3が極性材料で形成されていると、分極の影響により接着層3の誘電正接が大きくなる。そのため、本来、通信に使用されるはずの電気エネルギーが熱エネルギーに変換されることにより損失が生じ、RFIDラベル10の通信特性が低くなる可能性がある。例えば、通信距離が短くなる可能性がある。
【0037】
インレット2と接着層3とは直接、接着されているため、インレット2と接着層3との間に、これらを互いに接着するための接着層、粘着層等はない。そのため、インレット2と接着層3とは全面にわたって直接、接触している。
導電性層体4と接着層3とは直接、接着されているため、導電性層体4と接着層3との間に、これらを互いに接着するための接着層、粘着層等はない。そのため、導電性層体4と接着層3とは全面にわたって直接、接触している。
【0038】
インレット2と接着層3とは接着されているため、インレット2と接着層3との剥離強度P1は、他の層間の剥離強度より高い。例えば、剥離強度P1は、表面基材1とインレット2との間の剥離強度より高い。剥離強度P1は、導電性層体4と粘着層5との間の剥離強度より高い。
【0039】
導電性層体4と接着層3とは接着されているため、導電性層体4と接着層3との剥離強度P2は、他の層間の剥離強度より高い。例えば、剥離強度P2は、表面基材1とインレット2との間の剥離強度より高い。剥離強度P2は、導電性層体4と粘着層5との間の剥離強度より高い。
剥離強度の測定方法としては、JIS Z0237:2009に規定された90度剥離試験法および180度剥離試験法が挙げられる。
【0040】
接着層3の厚みは、200μm~800μmである。
接着層3の厚みは、200μm以上であることによって、インレット2と導電性層体4との距離を十分に確保し、RFIDラベル10の通信性能を良好にできる。接着層3の厚みは、800μm以下であることによって、RFIDラベル10の全体の厚さを抑えることができる。そのため、RFIDラベル10は、表面基材1に印刷を施すためのラベル用プリンタに対応しやすくなる。接着層3の厚みは800μm以下であると、RFIDラベル10の全体厚さを抑え、RFIDラベル10の可撓性を高めることができる。したがって、対象物品の表面に凹凸がある場合でもRFIDラベル10を設置しやすくなる。
【0041】
図3は、導電性層体4の第1の例の断面図である。
図3に示すように、導電性層体4は、金属層4Bと、樹脂層4Aとを備える。樹脂層4Aは、金属層4Bの上面に積層されている。導電性層体4は、金属層4Bを備えるため、導電性を有する。
【0042】
樹脂層4Aを構成する樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリエステル樹脂;ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂などが挙げられる。
【0043】
金属層4Bは、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス、銅、金、銀、銀パラジウムなどの金属で形成されている。金属層4Bは、金属箔、金属薄膜、金属板等によって形成される。金属薄膜は、例えば、メッキによって形成される。金属薄膜は、例えば、金属蒸着等の各種薄膜形成法によって形成される。金属層4Bは、導電性層である。金属層4Bに代えて、ポリマー型導電インク、銀インク組成物等の導電性インクなどを含む導電性層を用いてもよい。
【0044】
導電性層体4の厚みは、例えば、10μm~100μmである。
導電性層体4の厚みは、10μm以上であることによって、導電性層体としての機能を高め、RFIDラベル10の通信性能を良好にできる。導電性層体4の厚みは、100μm以下であることによって、RFIDラベル10の全体の厚さを抑えることができる。
【0045】
樹脂層4Aの厚みは、例えば、5μm~50μmである。金属層4Bの厚みは、例えば、5μm~50μmである。
【0046】
導電性層体4は、樹脂層4Aが金属層4Bに対して上に設けられているため、接着層3は樹脂層4Aに接する。そのため、接着層3と導電性層体4との間の接着強度を適正化しやすくなる。
導電性層体4は樹脂層4Aを備えるため、引張強度が高められる。そのため、加工時などに導電性層体4に引張力が加えられた場合に金属層4Bが破損しにくくなる。
【0047】
図1に示すように、粘着層5としては、一般にラベルに用いられる粘着剤を使用できる。
剥離シート6は、例えば、紙、樹脂シートなどで形成されている。
【0048】
接着層3、導電性層体4および粘着層5の平面視形状は矩形状である。接着層3、導電性層体4および粘着層5の平面視形状は、インレット2の平面視形状と同じである。接着層3、導電性層体4および粘着層5は、平面視においてインレット2と重なる。
【0049】
RFIDラベル10の全体の厚み(表面基材1から粘着層5までの厚さ)T1は、300μm~1200μmである。
RFIDラベル10の全体の厚みは、300μm以上であることによって、インレット2と導電性層体4との距離を十分に確保し、RFIDラベル10の通信性能を良好にできる。RFIDラベル10の全体の厚みが1200μm以下であることによって、RFIDラベル10は、表面基材1に印刷を施すためのラベル用プリンタに対応しやすくなる。RFIDラベル10の全体の厚みが1200μm以下であると、RFIDラベル10の可撓性を高めることができる。そのため、対象物品の表面に凹凸がある場合でもRFIDラベル10を設置しやすくなる。
【0050】
[RFIDラベルの製造方法](第1実施形態)
次に、RFIDラベル10の製造方法について説明する。
【0051】
(第1工程:準備工程)
図4に示すように、インレット2と、導電性層体4とを準備する。
【0052】
(第2工程:接着材塗布工程)
図5に示すように、インレット2の下面と、導電性層体4の上面とのうち少なくとも一方に、接着材7を塗布する。接着材7は、例えば、未硬化の液状硬化型の接着材である。接着材7は、半固形状の硬化型の接着材であってもよい。本実施形態では、接着材7を導電性層体4の上面に塗布する。接着材7は、非極性のオレフィン系樹脂と非極性の合成ゴム系樹脂とのうち少なくとも一方を含む。
【0053】
(第3工程:接着工程)
図6に示すように、接着材7をインレット2の下面に接触させ、インレット2と導電性層体4とを接着材7を介して接着する。これにより、インレット2と、接着材7と、導電性層体4とを積層した積層体8を得る。この際、インレット2のICチップ21は、接着材7に埋め込まれる。ICチップ21の下面21aおよび4つの側面21bは接着材7に覆われる。ICチップ21の下面21aおよび4つの側面21bは、全面にわたって接着材7に接する。
【0054】
冷却、乾燥、加熱、エネルギー線放射などにより接着材7を硬化させて接着層3(
図1参照)とする。接着層3は、接着材7の硬化物である。接着層3は、インレット2と導電性層体4とを接着する。
【0055】
図1に示すように、インレット2の上面に表面基材1を形成する。導電性層体4の下面に粘着層5を形成し、粘着層5に剥離シート6を貼り付ける。表面基材1は、インレット2と導電性層体4とを接着材7を介して接着するに先だってインレット2の上面に形成してもよい。粘着層5および剥離シート6は、インレット2と導電性層体4とを接着材7を介して接着するに先だって導電性層体4の下面側に形成してもよい。
これにより、
図1に示すRFIDラベル10を得る。
【0056】
[RFIDラベルの使用方法]
RFIDラベル10は、例えば、次のように使用することができる。
剥離シート6を粘着層5から剥がす。
図7に示すように、粘着層5が露出したRFIDラベル10を、対象物品30の表面に貼り付ける。対象物品30は、少なくとも表面が金属で形成されていてもよい。
【0057】
[第1実施形態のRFIDラベルが奏する効果]
図1に示すRFIDラベル10は、インレット2と導電性層体4との間に接着層3が設けられているため、インレット2と導電性層体4との距離の変動が起こりにくい。そのため、電波の減衰、周波数特性の変化などを抑え、良好な通信性能を確保できる。例えば、通信距離の変動を抑えることができる。
RFIDラベル10は、インレット2と導電性層体4との間に接着層3が設けられているため、対象物品30の表面が金属で形成されている場合でも、良好な通信性能を確保できる。そのため、RFIDラベル10は、金属物品に対応可能な「金属物品対応ラベル」である。
【0058】
RFIDラベル10では、インレット2と導電性層体4との間に、これらを接着する接着層3が設けられている。接着層3は、インレット2と導電性層体4とを離隔させるスペーサとして機能する。そのため、接着層3は、インレット2と導電性層体4とを接着する機能と、これらを離隔させるスペーサとしての機能を併せ持つ。
【0059】
RFIDラベル10は、インレットと導電性層体との間に設置した板状のスペーサをインレットおよび導電性層体にそれぞれ接着する従来構造のRFIDタグに比べ、構造が簡略である。そのため、RFIDラベル10は、従来構造のRFIDタグに比べ、製造工程が簡略であり、製造が容易となる。
【0060】
導電性層体4は、金属層4Bと樹脂層4Aとを有するため、金属層のみからなる導電性層体に比べて機械的強度(例えば、引張強度)が高い。そのため、導電性層体4は、取り扱いが容易となる。
【0061】
[第1実施形態のRFIDラベルの製造方法が奏する効果]
図4~
図6に示すRFIDラベル10の製造方法によれば、インレット2と導電性層体4との間に接着層3を設けるため、インレット2と導電性層体4との距離の変動が起こりにくいRFIDラベル10を作製できる。よって、良好な通信性能を有するRFIDラベル10を製造できる。
【0062】
前記製造方法によれば、インレット2と導電性層体4との間に接着層3を設けるため、板状のスペーサをインレットおよび導電性層体にそれぞれ接着する従来構造のRFIDタグを製造する場合に比べ、製造工程が簡略であり、製造が容易となる。
【0063】
前記製造方法は、インレット2と導電性層体4のうち少なくとも一方に接着材7を塗布する工程を有する。この製造方法によれば、接着材7を塗布する際に接着材7の塗布厚さを調節することによって、接着層3の厚さを容易に調整できる。よって、用途に応じた通信特性を持つRFIDラベルを製造することができる。
【0064】
[導電性層体](第2の例)
図8は、導電性層体の第2の例である導電性層体14の断面図である。
図8に示すように、導電性層体14は、金属層4Bと、樹脂層4Aとを備える。導電性層体14は、樹脂層4Aが金属層4Bの下面に積層されている点で、
図3に示す導電性層体4と異なる。導電性層体14は、金属層4Bを備えるため、導電性を有する。
【0065】
導電性層体14は、金属層4Bが樹脂層4Aに対して上に設けられているため、接着層3は金属層4Bに接する。そのため、接着層3と導電性層体14との間の接着強度を適正化しやすくなる場合がある。
導電性層体14は樹脂層4Aを備えるため、引張強度が高められる。そのため、加工時などに導電性層体14に引張力が加えられた場合に金属層4Bは破損しにくくなる。
【0066】
[導電性層体](第3の例)
図9は、導電性層体の第3の例である導電性層体24の断面図である。
図9に示すように、導電性層体24は、金属層4Bのみで構成される。導電性層体24は、金属層4Bのみで構成されるため、RFIDラベル10を薄型化するうえで有利となる。
【0067】
[アンテナ](第1の例)
図10は、
図2に示すアンテナ23の第1の例であるアンテナ123の一部(例えば、放射部の一部)の平面図である。
図10に示すように、アンテナ123は、基材20の一方の面に層状に形成される。アンテナ123は、孔部はなく、全面にわたって均一に形成されている。アンテナ123は、例えば、金属箔、金属薄膜、金属板等によって形成される。アンテナ123は、面積が大きいため、放射特性の点で優れている。
【0068】
[アンテナ](第2の例)
図11は、
図2に示すアンテナ23の第2の例であるアンテナ223の一部(例えば、放射部の一部)の平面図である。
図11に示すように、アンテナ223は、基材20の一方の面に層状に形成される。アンテナ223は、例えば、金属箔、金属薄膜、金属板等によって形成される。アンテナ223には、複数の孔部25が形成されている。孔部25は、四角形状(例えば、ひし形状)とされている。複数の孔部25が縦横に並んで形成されていることにより、アンテナ223は、複数の金属配線が交差するメッシュ状のパターンを有する形状となっている。詳しくは、
図11において、アンテナ223は、互いに平行な複数の右上がりの傾斜配線26と、互いに平行な複数の左上がりの傾斜配線27とが交差するメッシュ状となっている。
【0069】
図11の左右方向をX方向という。
図11の上下方向をY方向という。孔部25は、平面視において、2つの対角線がそれぞれX方向およびY方向に沿うひし形である。
図11に示す孔部25は、X方向の寸法がY方向の寸法より大きいが、孔部25は、X方向の寸法とY方向の寸法とが等しくてもよい。
【0070】
アンテナ223は、複数の孔部25が形成されているため、孔部がないアンテナ123(
図10参照)に比べ、曲げ剛性が低くなる。そのため、RFIDラベル10の可撓性を高めることができる。よって、対象物品の表面に凹凸がある場合でもRFIDラベル10を設置しやすくなる。
【0071】
[RFIDラベル](第2実施形態)
図12は、第2実施形態に係るRFIDラベル110の使用状態の断面図である。なお、第1実施形態との共通構成については同じ符号を付して説明を省略する。
図12に示すように、RFIDラベル110は、表面基材1に代えて表面基材101を用いる点で、
図1に示す第1実施形態のRFIDラベル10と異なる。インレット2から粘着層5までの積層体を積層体9という。
RFIDラベル110は「非接触型データ受送信体(RFIDタグ)」の一例である。
【0072】
表面基材101は、
図1に示す表面基材1に比べ、平面視における面積が大きい。表面基材101の外周縁101aを含む矩形枠状部分(外周部分102)は、平面視において積層体9の外周縁から外方に張り出している。外周部分102は、粘着剤などにより対象物品30の表面に貼り付けられる。
【0073】
対象物品30の表面に凹凸がある場合、RFIDラベルの一部は対象物品30の表面から剥離しやすくなるが、RFIDラベル110では、表面基材101によって積層体9を対象物品30に押さえつけることができる。よって、積層体9が広い面積で対象物品30に接するようにRFIDラベル110を設置することができる。
【0074】
[インレット](変形例)
図13は、インレット2の変形例であるインレット302の平面図である。
図13に示すように、インレット302は、基材20と、ICチップ21と、回路322と、アンテナ323とを備える。回路322は、給電部324を有する。アンテナ323は、複数の放射部325を有する。回路322およびアンテナ323は、金属箔などにより基材20の一方の面に形成される。回路322とアンテナ323とは一体に形成されている。
【0075】
以上、本発明の実施形態を説明したが、実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されない。
例えば、
図1に示すように、第1実施形態のRFIDラベル10では、ICチップ21は基材20の下面に形成されているが、ICチップ21を形成する基材20の面は特に限定されない。ICチップ21は基材20の上面に形成してもよい。
【0076】
図2に示すように、RFIDラベル10は平面視において矩形状であるが、RFIDラベルの平面視形状は特に限定されない。RFIDラベルの平面視形状は、円形状、楕円形状、多角形状などでもよい。
図1に示すRFIDラベル10は、表面基材1と、インレット2と、接着層3と、導電性層体4と、粘着層5と、剥離シート6とを備えるが、RFIDラベルの層構成はこれに限定されない。例えば、表面基材1とインレット2との間に他の層が形成されていてもよい。導電性層体4と粘着層5との間に他の層が形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0077】
2,302…インレット、3…接着層、4…導電性層体、4A…樹脂層、4B…金属層、7…接着材、10,110…RFIDラベル、21…ICチップ、23,123,223,323…アンテナ、T1…全体の厚み。