(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127933
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理システム、情報処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G09B 19/16 20060101AFI20230907BHJP
G09B 19/00 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
G09B19/16
G09B19/00 G
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022031925
(22)【出願日】2022-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】東 康太
(57)【要約】
【課題】ペダルの踏み替えにおける計測データに基づいて運転挙動を好適に分析できる情報処理装置、情報処理システム、情報処理方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】情報処理装置10は、運転者の足裏の移動状態に関する時系列の計測データを取得する取得部11と、計測データから、周波数が所定値以上である高周波成分を有する区間を、踏み替え区間として特定する区間特定部13と、踏み替え区間における計測データの特徴に少なくとも基づいて、運転者の運転挙動を分析する分析部14と、分析の結果を出力する出力部16とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者の足裏の移動状態に関する時系列の計測データを取得する取得部と、
前記計測データから、周波数が所定値以上である高周波成分を有する区間を、踏み替え区間として特定する区間特定部と、
前記踏み替え区間における前記計測データの特徴に少なくとも基づいて、前記運転者の運転挙動を分析する分析部と、
前記分析の結果を出力する出力部と
を備える情報処理装置。
【請求項2】
前記分析部は、
所定期間に含まれる、前記踏み替え区間の出現回数を算出し、
前記出現回数が所定回数以上である場合、異常な運転挙動であると判定する
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記分析部は、
所定期間に含まれる、隣接する前記踏み替え区間の間の時間間隔をそれぞれ算出し、
前記時間間隔の平均又は前記時間間隔のばらつきに基づいて、運転挙動が異常であるかを判定する
請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記計測データは、前記足裏の幅方向における移動状態に関するX軸データと、前記足裏の長さ方向における移動状態に関するY軸データと、前記足裏の法線方向における状態に関するZ軸データとを含み、
前記区間特定部は、前記Y軸データ及びZ軸データの少なくとも一方から、前記踏み替え区間を特定する
請求項1から3のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記分析部は、
前記計測データに含まれるY軸データ及びZ軸データの少なくとも一方の、各踏み替え区間における振幅を算出し、
各踏み替え区間における前記振幅に基づいて、運転挙動が異常であるかを判定する
請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記分析部は、前記踏み替え区間における前記計測データの特徴と、前記運転者が運転する車両の車両情報とに基づいて、前記運転者の運転挙動を分析する
請求項1から5のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
運転者の足裏の移動状態を計測する慣性センサと、
情報処理装置と
を備え、
前記情報処理装置は、
前記慣性センサが計測した時系列の計測データを取得する取得部と、
前記計測データから、所定周波数以上の高周波成分を有する区間を、踏み替え区間として特定する区間特定部と、
前記踏み替え区間における前記計測データの特徴に少なくとも基づいて、前記運転者の運転挙動を分析する分析部と、
前記分析の結果を出力する出力部と
を有する
情報処理システム。
【請求項8】
前記慣性センサは、前記運転者のシューズのインソールに実装される
請求項7に記載の情報処理システム。
【請求項9】
運転者の足裏の移動状態に関する時系列の計測データを取得し、
前記計測データから、所定周波数以上の高周波成分を有する区間を、踏み替え区間として特定し、
前記踏み替え区間における前記計測データの特徴に少なくとも基づいて、前記運転者の運転挙動を分析し、
前記分析の結果を出力する
情報処理方法。
【請求項10】
運転者の足裏の移動状態に関する時系列の計測データを取得する取得機能と、
前記計測データから、所定周波数以上の高周波成分を有する区間を、踏み替え区間として特定する特定機能と、
前記踏み替え区間における前記計測データの特徴に少なくとも基づいて、前記運転者の運転挙動を分析する分析機能と、
前記分析の結果を出力する出力機能と
をコンピュータに実現させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理装置、情報処理システム、情報処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
運送事業者にとって、事故への社会的損失及び経済的損失は多大であり、運転者の運転挙動の管理が重要視されている。例えば営業車5台以上を保有する運送事業者には安全運転管理者を選任する義務が課されている。安全運転管理者は、運転者の運転スキルを見極め、安全運転指導を実施する。
【0003】
例えば特許文献1には、車載器の検知データに基づいて指導情報を生成し、運転者による指導情報の視聴時間を計測する方法が開示されている。検知データは、車両の位置、時刻及び速度等である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし上述の特許文献1に記載の方法では、運転者によるペダルの踏み替え時の特徴を、運転挙動に考慮することができない。
【0006】
本開示の目的は、上述した課題に鑑み、ペダルの踏み替えにおける計測データに基づいて運転挙動を好適に分析できる情報処理装置、情報処理システム、情報処理方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様にかかる情報処理装置は、運転者の足裏の移動状態に関する時系列の計測データを取得する取得部と、前記計測データから、周波数が所定値以上である高周波成分を有する区間を、踏み替え区間として特定する区間特定部と、前記踏み替え区間における前記計測データの特徴に少なくとも基づいて、前記運転者の運転挙動を分析する分析部と、前記分析の結果を出力する出力部とを備える。
【0008】
本開示の一態様にかかる情報処理システムは、運転者の足裏の移動状態を計測する慣性センサと、情報処理装置とを備える。前記情報処理装置は、前記慣性センサが計測した時系列の計測データを取得する取得部と、前記計測データから、所定周波数以上の高周波成分を有する区間を、踏み替え区間として特定する区間特定部と、前記踏み替え区間における前記計測データの特徴に少なくとも基づいて、前記運転者の運転挙動を分析する分析部と、前記分析の結果を出力する出力部とを有する。
【0009】
本開示の一態様にかかる情報処理方法は、運転者の足裏の移動状態に関する時系列の計測データを取得し、前記計測データから、所定周波数以上の高周波成分を有する区間を、踏み替え区間として特定し、前記踏み替え区間における前記計測データの特徴に少なくとも基づいて、前記運転者の運転挙動を分析し、前記分析の結果を出力する。
【0010】
本開示の一態様にかかるプログラムは、運転者の足裏の移動状態に関する時系列の計測データを取得する取得機能と、前記計測データから、所定周波数以上の高周波成分を有する区間を、踏み替え区間として特定する特定機能と、前記踏み替え区間における前記計測データの特徴に少なくとも基づいて、前記運転者の運転挙動を分析する分析機能と、前記分析の結果を出力する出力機能とをコンピュータに実現させる。
【発明の効果】
【0011】
本開示により、ペダルの踏み替えにおける計測データに基づいて運転挙動を好適に分析できる情報処理装置、情報処理システム、情報処理方法及びプログラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態1にかかる情報処理装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】実施形態2にかかる情報処理システムの概略構成を示すブロック図である。
【
図3】実施形態2にかかるセンサの使用状況を示す図である。
【
図4】実施形態2にかかる計測データの一例を示す図である。
【
図5】ペダルの踏み替え時の足裏の挙動を説明するための図である。
【
図6】実施形態2にかかるサーバの構成を示すブロック図である。
【
図7】実施形態2にかかるサーバによる区間特定及び分析の一例を説明するための図である。
【
図8】実施形態2にかかるサーバによる情報処理方法の流れを示すフローチャートである。
【
図9】実施形態2にかかる管理者端末の構成を示すブロック図である。
【
図10】実施形態2にかかる管理者端末に表示される画像の一例を示す図である。
【
図11】実施形態3にかかる情報処理システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図面において、同一又は対応する要素には同一の符号が付されており、説明の明確化のため、必要に応じて重複説明は省略される。
【0014】
<実施形態1>
まず、本開示の実施形態1について説明する。
図1は、実施形態1にかかる情報処理装置10の構成を示すブロック図である。情報処理装置10は、運転者の運転挙動を分析するコンピュータである。情報処理装置10は、取得部11と、区間特定部13と、分析部14と、出力部16とを備える。
【0015】
本実施形態1で分析の基礎とする計測データは、運転者の足裏の移動状態を表す物理量を計測した時系列データである。足裏の移動状態を表す物理量は、足裏の変位、速度、及び加速度のうち少なくとも1つである。計測データは、運転者がペダルに足裏を置いて踏み込んでいる場合のみならず、踏み替え区間の足裏の挙動を示している。踏み替え区間は、踏み込み後ペダルから足裏が離れるまで、離れた後、及び次に踏み込むまでの区間である。踏み替え区間は、運転者が、アクセルペダルからブレーキペダルに踏み替える区間と、ブレーキペダルからアクセルペダルに踏み替える区間とに分けられる。
【0016】
踏み替え区間の足裏の挙動を分析することで、デジタルタコグラフ等が記録する走行距離や走行速度等の車両情報からでは得られない踏み替え区間の運転挙動を取得できる。
【0017】
まず取得部11は、計測データを取得する。
【0018】
次に区間特定部13は、取得部11が取得した計測データから、踏み替え区間を特定する。具体的には、区間特定部13は、高周波成分を有する区間を踏み替え区間として特定する。高周波成分は、計測データのうち、波形の周波数が所定値以上であるデータを指す。
【0019】
次に分析部14は、踏み替え区間の計測データの特徴に少なくとも基づいて、運転者の運転挙動を分析する。例えば分析部14は、踏み替え区間の計測データの特徴として、踏み替え区間の出現回数、踏み替え区間同士の時間間隔、又は踏み替え区間の振幅若しくは周波数を分析し、これらの少なくとも1つに基づいて運転者の運転挙動を分析する。運転挙動は、例えば急加速、急ブレーキ、運転の不安定さ、又は粗さ等である。
【0020】
次に出力部16は、分析結果を出力する。
【0021】
このように実施形態1によれば、情報処理装置10は、ペダルの踏み替え区間における足裏の挙動に基づいて、運転者の運転挙動を好適に分析できる。これにより安全運転管理者は、運転者の運転操作を的確に把握し、適切な運転指導を実施できる。
【0022】
<実施形態2>
次に、本開示の実施形態2について説明する。
図2は、実施形態2にかかる情報処理システム1の概略構成を示すブロック図である。情報処理システム1は、安全運転管理者による運転指導を支援するための1又は複数のコンピュータを含むシステムである。
【0023】
情報処理システム1は、センサ20と、通信制御装置30と、サーバ40と、管理者端末50とを備える。通信制御装置30、サーバ40及び管理者端末50は、ネットワークNに接続されている。
【0024】
ネットワークNは、インターネット等の通信ネットワークである。
【0025】
センサ20は、運転者の足裏の変位を計測する慣性センサである。一例としてセンサ20は、加速度センサ、特に3軸加速度センサである。尚、センサ20は、加速度センサに加えてジャイロセンサを含んでいてもよい。
センサ20は、計測データを通信制御装置30に送信する。センサ20と通信制御装置30との間の通信は、有線通信であってもよいし、無線通信であってもよい。例えばセンサ20は、Bluetooth(登録商標)等の近距離無線通信を用いて、通信制御装置30に計測データを供給する。
【0026】
通信制御装置30は、車載の通信装置である。例えば通信制御装置30は、車載ナビゲーション装置、専用通信機、又は運転者が使用するスマートフォン若しくはタブレット端末である。通信制御装置30は、センサ20からサーバ40へのデータ送信を中継する。具体的には、通信制御装置30は、センサ20から計測データを受信し、計測データをネットワークNを介してサーバ40に送信する。
【0027】
サーバ40は、実施形態1の情報処理装置10の一例である。サーバ40は、ネットワークNを介して通信制御装置30からセンサ20の計測データを受信する。次にサーバ40は、計測データに基づいて、運転者の運転挙動を分析する。そしてサーバ40は、分析結果を管理者端末50に送信する。
【0028】
管理者端末50は、安全運転管理者が使用する情報端末である。管理者端末50は、ネットワークNを介してサーバ40から運転者の運転挙動の分析結果を受信し、分析結果を出力する。出力の一例として、管理者端末50は、分析結果を表示部(不図示)に表示する。出力された分析結果を閲覧することで、安全運転管理者は、運転者の運転操作を把握し、運転指導に役立てる。
【0029】
図3は、実施形態2にかかるセンサ20の使用状況を示す図である。センサ20は、運転者の足裏SLの動きと連動する部位に実装される。例えばセンサ20は、運転者のシューズ300のインソール310に実装される。一例としてセンサ20は、インソール310のうち、運転者のかかとに接する部分に実装される。尚、センサ20は、シューズ300のミドルソール又はアウトソールに実装されてもよいし、運転者の靴下や足裏SL自体に貼り付けられてもよい。
【0030】
ここでセンサ20のX軸方向は、足裏SLの幅方向である。またセンサ20のY軸方向は、足裏SLの長さ方向である。またセンサ20のZ軸方向は、X軸及びY軸に垂直な方向、つまり足裏SLの面の法線方向である。センサ20は、各軸方向の加速度を検出し、加速度に基づいて各軸方向の変位を計測する。尚、計測データのうち、X軸方向における変位をX軸データと称し、Y軸方向における変位をY軸データと称し、Z軸方向における変位をZ軸データと称する。
【0031】
図4は、実施形態2にかかる計測データの一例を示す図である。
図4の縦軸はセンサ出力であり、横軸は時間である。
図4の実線はX軸データであり、斜線はY軸データであり、一点鎖線はZ軸データである。
【0032】
ここでX軸データの値から、運転者の足裏SLがX軸正方向のブレーキペダルに位置するか、X軸負方向のアクセルペダルに位置するかを把握できる。例えば区間1では、X軸データは正の値を示すため、運転者はブレーキペダルを踏みこんでいる。また区間3では、X軸データは負の値を示すため、運転者はアクセルペダルを踏みこんでいる。したがって区間1と区間3との間の区間2は、運転者がブレーキペダルからアクセルペダルへと踏み替える踏み替え区間である。同様に区間4は、運転者がアクセルペダルからブレーキペダルへと踏み替える踏み替え区間である。
【0033】
図5は、ペダルの踏み替え時の足裏SLの挙動を説明するための図である。
図5(a)に示すように、運転者は、踏み替え前のペダルから足裏SLを離す。このとき足裏SLはY軸負方向に、そしてZ軸正方向に移動する。また
図5(b)に示すように、運転者は、足裏SLをX軸方向に移動しながら、又は移動させた後、ペダルに足裏SLを置く。このとき足裏SLはY軸正方向に、そしてZ軸負方向に移動する。
【0034】
したがって
図4に示すように、踏み替え区間では、Y軸データ及びZ軸データの値が正負に大きく揺らいでいる。尚、運転者の踏み替えが粗い場合は、Y軸データ及びZ軸データの値がより大きく、またより短時間に変化する。このような現象を利用することで、計測データから踏み替え区間を検出でき、ひいては運転者の運転挙動を解析できる。
【0035】
図6は、実施形態2にかかるサーバ40の構成を示すブロック図である。サーバ40は、通信部41と、制御部42と、出力部46と、記憶部47とを備える。
【0036】
通信部41は、ネットワークNに接続するための通信インタフェースであり、実施形態1の取得部11の一例である。通信部41は、ネットワークNを介して通信制御装置30から、センサ20の計測データを受信する。計測データは、X軸データ、Y軸データ、及びZ軸データを含んでいる。通信部41は、取得した計測データを、制御部42の区間特定部43に供給する。
【0037】
また通信部41は、実施形態1の出力部16の一例である。通信部41は、出力制御部45から分析結果の供給を受け、ネットワークNを介して管理者端末50に送信する。
【0038】
制御部42は、サーバ40が有するハードウェアを制御する。制御部42は、区間特定部43と、分析部44と、出力制御部45とを備える。
【0039】
区間特定部43は、実施形態1の区間特定部13の一例である。区間特定部43は、通信部41が取得した計測データのうち、Y軸データ及びZ軸データの少なくとも一方から、踏み替え区間を特定する。
【0040】
分析部44は、実施形態1の分析部14の一例である。分析部44は、踏み替え区間のY軸データ及びZ軸データの少なくとも一方の特徴に基づいて、運転者の運転挙動を分析する。
【0041】
出力制御部45は、分析結果を所定の出力形式に変換し、通信部41又は出力部46を介して出力する。
【0042】
出力部46は、実施形態1の出力部16の一例である。出力部46は、出力制御部45から分析結果の供給を受け、外部に出力する。
【0043】
記憶部47は、制御部42による処理に必要な情報を記憶する記憶装置である。
【0044】
図7は、実施形態2にかかるサーバ40による区間特定及び分析の一例を説明するための図である。
図7は、分析対象期間である時刻T0~T1までのY軸データの一例を示している。
【0045】
図7では、区間特定部43は、通信部41が取得したY軸データから、高周波成分を有する区間を特定し、これを踏み替え区間とする。
【0046】
例えば区間特定部43は、Y軸データの波形に対して、フーリエ変換等を用いて周波数解析を行う。そして区間特定部43は、振幅が所定値以上でかつ周波数が所定値f0以上の高周波成分を有する区間を特定する。尚、区間特定部43は、Y軸データのノイズを除去するために、周波数fn(≫f0)以上のノイズをローパスフィルタ等で除去した後、残った波形から、f0以上の周波数を有する区間を特定してよい。
【0047】
あるいは、例えば区間特定部43は、Y軸データの波形から、最大値が所定値以上のピークを検出し、検出したピークのうち、ピーク幅又は半値幅が所定幅以下のピークが存在する区間を、高周波成分を有する区間として特定する。ここでも、区間特定部43は、Y軸データの波形に対してノイズ除去を行ってから、ピーク検出を行ってよい。
【0048】
図7では、区間特定部43は、区間2、区間4及び区間6を、踏み替え区間として検出する。
【0049】
そして分析部44は、踏み替え区間のY軸データの特徴に少なくとも基づいて、運転者の運転挙動を分析する。
【0050】
例えば分析部44は、分析対象期間に含まれる、踏み替え区間の出現回数を算出する。
図7では、時刻T0~T1までの期間に含まれる踏み替え区間は3回である。そして分析部44は、出現回数が所定回数以上である場合、異常な運転挙動であると判定する。尚、分析部44は、出現回数が多いほど、運転者の運転操作が粗いと判定してよい。
【0051】
また例えば分析部44は、分析対象期間に含まれる、隣接する踏み替え区間の間の時間間隔をそれぞれ算出する。
図7では、分析部44は、区間2と区間4との間の期間、つまり区間3の持続時間と、区間4と区間6との間の期間、つまり区間5の持続時間とを算出する。
【0052】
そして分析部44は、算出した時間間隔の平均又は時間間隔のばらつきに基づいて、運転挙動が異常であるかを判定する。具体的には分析部44は、算出した時間間隔の平均が所定閾値以下である場合、運転者の運転操作が不適切であると判定してよい。また分析部44は、算出した時間間隔のばらつきが所定閾値以上である場合、運転者の運転操作が粗い傾向にあるか、煽り運転等の異常な運転を行っているか、飲酒運転や居眠り運転等で不安定な運転を行っていると判定してよい。
【0053】
また例えば、分析部44は、Y軸データの各踏み替え区間における振幅を算出する。ここで算出される振幅は、1つの踏み替え区間に含まれる波形の振幅の最大値から最小値を差し引いたものであってもよい。周波数解析をした場合は、1つの踏み替え区間について周波数解析により抽出された高周波成分の振幅の最大値又は平均であってもよい。ピーク検出した場合は、1つの踏み替え区間について検出したピーク高さの最大値又は平均であってもよい。
【0054】
そして分析部44は、各踏み替え区間について算出した振幅に基づいて、運転挙動が異常であるかを判定する。具体的には分析部44は、複数の踏み替え区間において算出した振幅の平均が所定閾値以上である場合、運転者の運転操作が粗いと判定してよい。また分析部44は、複数の踏み替え区間において算出した振幅のばらつきが所定閾値以上である場合、不安定な運転を行っていると判定してよい。
【0055】
また例えば分析部44は、計測データに含まれるY軸データの、各踏み替え区間における周波数を算出する。ここで算出される周波数は、周波数解析をした場合は、1つの踏み替え区間について周波数解析により抽出された高周波成分の周波数の最大値又は平均であってもよい。ピーク検出した場合は、1つの踏み替え区間について検出したピーク幅又は半値幅の、最大値の逆数又は平均の逆数であってもよい。
【0056】
そして分析部44は周波数に基づいて、運転挙動が異常であるかを判定する。具体的には分析部44は、複数の踏み替え区間において算出した周波数の平均が所定閾値以上である場合、運転者の運転操作が粗いと判定してよい。また分析部44は、複数の踏み替え区間において算出した周波数のばらつきが所定閾値以上である場合、不安定な運転を行っていると判定してよい。
【0057】
このように踏み替え区間に関する各種分析を行うことで、運転挙動を詳細に分析できる。尚、分析部44は、上述した踏み替え区間の出現回数、時間間隔、及び振幅等の分析項目を組み合わせて、運転挙動を総合的に分析してもよい。
【0058】
尚、
図7ではY軸データを用いて分析する例を説明したが、Z軸データを用いて分析してもよい。Z軸データを用いた分析方法は、Y軸データを用いた分析方法と同様であるため、説明を省略する。また分析部44は、Y軸データを用いた分析とZ軸データを用いた分析とを組合わせて、総合的に分析してもよい。
【0059】
また分析には、アクセルペダルからブレーキペダルへの踏み替えか、ブレーキペダルからアクセルペダルへの踏み替えかを示す踏み替えの種別が用いられてよい。この場合、まず区間特定部43は、各踏み替え区間の前後のX軸データの値に基づいて、各踏み替え区間が、アクセルペダルからブレーキペダルへの踏み替えであるか、ブレーキペダルからアクセルペダルへの踏み替えであるかの種別を特定する。そして分析部44は、各踏み替え区間に対応する踏み替えの種別にさらに基づいて、運転者の運転挙動を分析する。これにより、運転者の運転の癖をより詳細に把握できる。
【0060】
また分析には、運転者が運転する車両の車両情報が用いられてもよい。車両情報は、デジタルタコグラフから取得可能なデータ又はCAN(Controller Area Network)を介して収集可能な各種センシングデータであり、走行距離、走行速度、走行時間、急加速や急減速の情報、ドアの開閉の情報、及びアイドリング情報のうち少なくとも1つを含む。この場合、通信制御装置30は、デジタルタコグラフやその他の車載センサから車両情報を取得し、サーバ40に送信してよい。
【0061】
そしてサーバ40の分析部44は、計測データの踏み替え区間の各種特徴と、運転者が運転する車両の車両情報とに基づいて、運転者の運転挙動を分析してよい。車両情報から得られる特徴と、計測データの踏み替え区間の特徴とを照らし合わせることにより、運転挙動を多面的に分析できる。このような多面的な分析は、交通事故が発生した場合の事故発生時の状況分析にも応用できる。
【0062】
図8は、実施形態2にかかるサーバ40による情報処理方法の流れを示すフローチャートである。まずサーバ40の通信部41は、センサ20の計測データを取得する(S20)。次に制御部42の区間特定部43は、周波数解析やピーク解析を行うことにより、高周波成分を検出する(S21)。次に区間特定部43は、検出した高周波成分を有する区間を、踏み替え区間として特定する(S22)。
【0063】
次に分析部44は、踏み替え区間の特徴(例えば踏み替え区間の出現回数、時間間隔、振幅、又は周波数)を分析する(S23)。そして分析部44は、踏み替え区間の特徴に基づいて、運転挙動が異常であるかを判定する(S24)。
【0064】
最後に、出力制御部45は、通信部41を介して判定結果を含む分析結果を、管理者端末50に送信する(S25)。
【0065】
図9は、実施形態2にかかる管理者端末50の構成を示すブロック図である。管理者端末50は、通信部51と、制御部52と、表示部56と、記憶部57とを備える。
【0066】
通信部51は、ネットワークNに接続するための通信インタフェースである。制御部52は、管理者端末50が有するハードウェアを制御する。表示部56は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の表示装置である。表示部56は、通信部51がネットワークNを介してサーバ40から受信した分析結果を表示する。記憶部57は、制御部52による処理に必要な情報を記憶する記憶装置である。
【0067】
図10は、実施形態2にかかる管理者端末50に表示される画像500の一例を示す図である。画像500は、分析結果として、運転者ごとの運転挙動状況を示している。例えば画像500は、運転者Aが1時間で3回も急加速を行っており、異常な運転をしていることを示している。一方、画像500は、運転者B及びCについては、1時間で異常な運転挙動が見られず、安全に運転していることを示している。
【0068】
安全運転管理者は、画像500に基づいて、運転者1人1人の運転スキルを把握できる。これにより運転者1人1人に対して運転指導の計画を個別に立てることが容易となる。
【0069】
このように実施形態2によれば、サーバ40は、ペダルの踏み替え区間における足裏の移動の安定性を分析することで、その時点での運転状況や運転者の運転傾向を詳細に分析できる。これにより運転指導をより好適に支援できる。
【0070】
<実施形態3>
次に、本開示の実施形態3について説明する。実施形態3では、サーバに代えて管理者端末が、運転者の運転挙動を分析する。
図11は、実施形態3にかかる情報処理システム1aの構成を示すブロック図である。情報処理システム1aは、外部記憶装置25と、管理者端末50aとを備える。
【0071】
外部記憶装置25は、センサ20の計測データを記憶する記憶装置である。外部記憶装置25は、例えばSDカード又はUSBメモリ等のフラッシュメモリである。
【0072】
管理者端末50aは、実施形態1の情報処理装置10の一例である。管理者端末50aは、通信部51、表示部56及び記憶部57を備える点で管理者端末50と同様である。しかし管理者端末50aは、入力部58と、制御部52に代えて制御部52aとを備える点で管理者端末50と相違する。尚、管理者端末50aにおいて通信部51は必須ではない。
【0073】
入力部58は、外部記憶装置25から計測データを読み出して、計測データを制御部52aの区間特定部53に供給する。
【0074】
制御部52aは、管理者端末50aが有するハードウェアを制御する。制御部52aは、区間特定部53と、分析部54と、出力制御部55とを備える。
【0075】
区間特定部53、分析部54、及び出力制御部55は、サーバ40の区間特定部43、分析部44、及び出力制御部45と同様の機能を有する。尚、出力制御部55は、分析部54による分析結果を、表示部56に表示する。
【0076】
このようにオフラインで分析を行った場合も、実施形態2と同様の効果を奏する。
【0077】
上述の実施形態では、ハードウェアの構成として説明したが、これに限定されるものではない。本開示は、任意の処理を、プロセッサにコンピュータプログラムを実行させることにより実現することも可能である。
【0078】
上述の例において、プログラムは、コンピュータに読み込まれた場合に、実施形態で説明された1又はそれ以上の機能をコンピュータに行わせるための命令群(又はソフトウェアコード)を含む。プログラムは、非一時的なコンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体に格納されてもよい。限定ではなく例として、コンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体は、random-access memory(RAM)、read-only memory(ROM)、フラッシュメモリ、solid-state drive(SSD)又はその他のメモリ技術、CD-ROM、digital versatile disc(DVD)、Blu-ray(登録商標)ディスク又はその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又はその他の磁気ストレージデバイスを含む。プログラムは、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体上で送信されてもよい。限定ではなく例として、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体は、電気的、光学的、音響的、またはその他の形式の伝搬信号を含む。
【0079】
尚、本開示は上記実施形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、センサ20は足裏の変位を測定するとしたが、測定対象は、速度又は加速度であってもよい。
【0080】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
運転者の足裏の移動状態に関する時系列の計測データを取得する取得部と、
前記計測データから、周波数が所定値以上である高周波成分を有する区間を、踏み替え区間として特定する区間特定部と、
前記踏み替え区間における前記計測データの特徴に少なくとも基づいて、前記運転者の運転挙動を分析する分析部と、
前記分析の結果を出力する出力部と
を備える情報処理装置。
(付記2)
前記分析部は、
所定期間に含まれる、前記踏み替え区間の出現回数を算出し、
前記出現回数が所定回数以上である場合、異常な運転挙動であると判定する
付記1に記載の情報処理装置。
(付記3)
前記分析部は、
所定期間に含まれる、隣接する前記踏み替え区間の間の時間間隔をそれぞれ算出し、
前記時間間隔の平均又は前記時間間隔のばらつきに基づいて、運転挙動が異常であるかを判定する
付記1又は2に記載の情報処理装置。
(付記4)
前記計測データは、前記足裏の幅方向における移動状態に関するX軸データと、前記足裏の長さ方向における移動状態に関するY軸データと、前記足裏の法線方向における状態に関するZ軸データとを含み、
前記区間特定部は、前記Y軸データ及びZ軸データの少なくとも一方から、前記踏み替え区間を特定する
付記1から3のいずれか一項に記載の情報処理装置。
(付記5)
前記分析部は、
前記計測データに含まれるY軸データ及びZ軸データの少なくとも一方の、各踏み替え区間における振幅を算出し、
各踏み替え区間における前記振幅に基づいて、運転挙動が異常であるかを判定する
付記4に記載の情報処理装置。
(付記6)
前記分析部は、
前記計測データに含まれるY軸データ及びZ軸データの少なくとも一方の、前記踏み替え区間における周波数を算出し、
前記周波数に基づいて、運転挙動が異常であるかを判定する
付記4又は5に記載の情報処理装置。
(付記7)
前記区間特定部は、各踏み替え区間の前後のX軸データの値に基づいて、各踏み替え区間が、アクセルペダルからブレーキペダルへの踏み替えであるか、ブレーキペダルからアクセルペダルへの踏み替えであるかの種別を特定し、
前記分析部は、各踏み替え区間に対応する踏み替えの種別にさらに基づいて、前記運転者の運転挙動を分析する
付記4から6のいずれか一項に記載の情報処理装置。
(付記8)
前記分析部は、前記踏み替え区間における前記計測データの特徴と、前記運転者が運転する車両の車両情報とに基づいて、前記運転者の運転挙動を分析する
付記1から7のいずれか一項に記載の情報処理装置。
(付記9)
運転者の足裏の移動状態を計測する慣性センサと、
情報処理装置と
を備え、
前記情報処理装置は、
前記慣性センサが計測した時系列の計測データを取得する取得部と、
前記計測データから、所定周波数以上の高周波成分を有する区間を、踏み替え区間として特定する区間特定部と、
前記踏み替え区間における前記計測データの特徴に少なくとも基づいて、前記運転者の運転挙動を分析する分析部と、
前記分析の結果を出力する出力部と
を有する
情報処理システム。
(付記10)
前記慣性センサは、前記運転者のシューズのインソールに実装される
付記9に記載の情報処理システム。
(付記11)
前記情報処理システムは、管理者端末をさらに備え、
前記出力部は、前記管理者端末の表示部に前記分析の結果を出力する
付記9又は10に記載の情報処理システム。
(付記12)
運転者の足裏の移動状態に関する時系列の計測データを取得し、
前記計測データから、所定周波数以上の高周波成分を有する区間を、踏み替え区間として特定し、
前記踏み替え区間における前記計測データの特徴に少なくとも基づいて、前記運転者の運転挙動を分析し、
前記分析の結果を出力する
情報処理方法。
(付記13)
運転者の足裏の移動状態に関する時系列の計測データを取得する取得機能と、
前記計測データから、所定周波数以上の高周波成分を有する区間を、踏み替え区間として特定する特定機能と、
前記踏み替え区間における前記計測データの特徴に少なくとも基づいて、前記運転者の運転挙動を分析する分析機能と、
前記分析の結果を出力する出力機能と
をコンピュータに実現させるためのプログラム。
【符号の説明】
【0081】
1,1a 情報処理システム
10 情報処理装置
11 取得部
13 区間特定部
14 分析部
16 出力部
20 センサ
25 外部記憶装置
30 通信制御装置
40 サーバ
41 通信部
42 制御部
43 区間特定部
44 分析部
45 出力制御部
46 出力部
47 記憶部
50 管理者端末
51 通信部
52,52a 制御部
53 区間特定部
54 分析部
55 出力制御部
56 表示部
57 記憶部
58 入力部
120 ペダル
140 マット
300 シューズ
310 インソール
500 画像
N ネットワーク
SL 足裏