(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127934
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】ダブルフェイス設計された靴下または下半身用衣類
(51)【国際特許分類】
A41B 11/00 20060101AFI20230907BHJP
A41B 11/14 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
A41B11/00 F
A41B11/14 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022031926
(22)【出願日】2022-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】角戸 康之
(72)【発明者】
【氏名】大久保 魁馬
(72)【発明者】
【氏名】日和 崇
(72)【発明者】
【氏名】馬場 敦志
【テーマコード(参考)】
3B018
【Fターム(参考)】
3B018AC03
3B018AD01
3B018HB03
3B018HB07
(57)【要約】
【課題】肌側にやさしい綿を使用しつつ、着ぶくれせずスマートな外観で、毛玉になりにくく、ムレにくい、タイツを提供する。
【解決手段】タイツを形成する二重編み構造(ダブルフェイス設計)における肌と反対側の反肌側(外側)の編地は、ウーリーナイロン糸のみで編み目が編成され、二重編み構造編地における肌側の編地は、綿糸とサポート糸とが交互に編み目が編成されている。ウーリーナイロン糸と綿糸とをプレーティング編みして、二重編み構造の編地を形成している。この二重編み構造の編み地を用いてタイツが形成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
足を覆うフット部を備え丈の長さが限定されない靴下、または、パンティ部と少なくとも足首までのレッグ部とを備えた下半身用衣類であって、
肌側の反対側である反肌側に、表糸にウーリーナイロン糸を採用して反肌側編地を編成して、
肌側に、裏糸に綿糸とサポート糸とを採用して肌側編地を編成して、
反肌側がナイロン素材で、かつ、肌側が綿素材で形成されたことを特徴とする、ダブルフェイス設計された靴下または下半身用衣類。
【請求項2】
前記ウーリーナイロン糸と前記綿糸とをプレーティング編みしたことを特徴とする、請求項1に記載のダブルフェイス設計された靴下または下半身用衣類。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として女性用の足を覆うフット部を備え丈の長さが限定されない靴下(パンティ部を備えないストッキングおよびパンティ部を備えないタイツ等を含む)、または、パンティ部と少なくとも足首までのレッグ部とを備えた下半身用衣類である、パンティストッキングまたはパンティストッキング型のタイツ等に関し、特に、肌にやさしい綿を使用しつつ、着ぶくれせずスマートな外観で、毛玉になりにくく、ムレにくい、靴下または下半身用衣類に関する。
【0002】
なお、本発明に係る靴下の形状としては足(足指、足甲、足裏および踵を指す)を覆うフット部を備えさえすればよくその丈の長さは限定されるものではない(丈の長さは限定されないためにこの靴下にはパンティストッキング型ではない左右の両脚部が分離した、パンティ部を備えないストッキングおよびパンティ部を備えないタイツ等を含む)。また、本発明に係る下半身用衣類は、パンティストッキング、パンティストッキング型のタイツを主たる対象とするが(パンティ部を備えるが)、その形状としてはパンティストッキング型のみならず、パンティストッキング型の一部(足首より先の部分等)を欠落させた、スパッツ、レギンスおよびトレンカ等の呼び名を有する形状のものも含む。
【背景技術】
【0003】
冬季に着用する下半身用衣類の代表であるタイツは、大きくは、綿糸を主体とした商品と、ナイロン糸を主体とした商品とがあるが、前者は肌に優しいものの厚ぼったくて着ぶくれが気になるという問題点があるために、肌触りの優しさを諦めて着回しやすくスマートに見える後者のナイロンタイツが多く市場に出回っている。すなわち、綿タイツは、ローゲージで厚みがでるものの敏感肌には好ましく、ナイロンタイツは、ハイゲージで着ぶくれしにくいものの敏感肌には好ましくない場合がある。
【0004】
ところで、特許第6824612号公報(特許文献1)は、吸放湿性、速乾性などの特性に加え、優れたストレッチ性を有する衣服を開示する。この特許文献1に開示された衣服は、セルロース繊維を含む第1繊維からなる1または複数のコースと、弾性繊維を含む第2繊維からなる1または複数のコースとが、経方向に繰り返されて編成された編地を含み、前記第1繊維からなるコースの編みループ長は、前記第2繊維からなるコースの編みループ長より長く、前記第1繊維の使用比率は、50質量%~90質量%であり、かつ、前記第2繊維の使用比率は、10質量%~50質量%であり、前記編地は、前記第1繊維からなる1~3つのコースと、前記第2繊維からなる1つのコースとが、経方向に繰り返されて編成され、前記第1繊維は、主繊維と、ナイロンを含む副繊維とが引きそろえられた複合繊維であり、前記主繊維は、前記セルロース繊維と、ナイロンを含む補助繊維とを含む複合繊維であって、前記第2繊維は、前記弾性繊維であるポリウレタン弾性糸と、ナイロンとの複合繊維であることを特徴とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1に開示された衣服では、肌側にやさしい綿を十分に使用しつつ、着ぶくれを十分に抑制してスマートな外観で、毛玉になりにくく、ムレにくい、靴下または下半身用衣類を提供することができない可能性があった。
また、特許文献1に開示された衣服は、弾性糸を含まない第1繊維と弾性糸を含む第2繊維とを交互に使用して編成される交編(交編編み)であって異なる2種類の糸を使用するために横縞模様が表れざるを得ない点、サポート糸(弾性糸にナイロン糸を巻き付けたカバリング糸)だけで編成されるゾッキ(ゾッキ編み)に比べて、良好なフィット性が得られにくいという点、いわゆる伝線(使用中に編み組織の一部に引掛傷ができ糸が切れると生成される編組織が解編されたはしご状の線)が発生しやすいという点が問題点として
ある。また、第1繊維(セルロース繊維)の使用比率が50質量%以上であると厚みが出過ぎて厚ぼったくなり過ぎて着ぶくれしてスマートな外観を得ることができないという問題点もある。
【0007】
本発明は、従来技術の上述の問題点に鑑みて開発されたものであり、その目的とするところは、肌側にやさしい綿を使用しつつ、着ぶくれせずスマートな外観で、毛玉になりにくく、ムレにくい、ダブルフェイス設計された靴下または下半身用衣類を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係るダブルフェイス設計された靴下または下半身用衣類は以下の技術的手段を講じている。
すなわち、本発明に係るダブルフェイス設計された靴下または下半身用衣類は、足を覆うフット部を備え丈の長さが限定されない靴下、または、パンティ部と少なくとも足首までのレッグ部とを備えた下半身用衣類であって、肌側の反対側である反肌側に、表糸にウーリーナイロン糸を採用して反肌側編地を編成して、肌側に、裏糸に綿糸とサポート糸とを採用して肌側編地を編成して、反肌側がナイロン素材で、かつ、肌側が綿素材で形成されたことを特徴とする。
好ましくは、前記ウーリーナイロン糸と前記綿糸とをプレーティング編みするように構成することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るダブルフェイス設計された靴下または下半身用衣類によれば、肌側にやさしい綿を使用しつつ、着ぶくれせずスマートな外観で、毛玉になりにくく、ムレにくい、靴下または下半身用衣類を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態に係るタイツを平面に載置した状態における概略正面図である。
【
図2】
図1のタイツの構造を説明するためのタイツの編地についての模式的な図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係るダブルフェイス設計された靴下または下半身用衣類の一例として、実施の形態に係るタイツ1を、図面に基づき詳しく説明する。なお、本発明は、肌側の反対側である反肌側に、表糸にウーリーナイロン糸を採用して反肌側編地を編成して、肌側に裏糸に綿糸とサポート糸とを採用して肌側編地を編成して、反肌側がナイロン素材で、かつ、肌側が綿素材で形成されたことを特徴とする、二重編み構造(ダブルフェイス設計と同義)を備える靴下または下半身用衣類(ストッキング、タイツ等)であればよく、以下において説明するタイツ1は一例でしかない。
【0012】
図1に、本発明の実施の形態に係るタイツ1を平面に載置した状態における概略正面図を示す。このタイツ1は、通常のパンティストッキング等の下半身用衣類と同じく、腹部および臀部を被覆するパンティ部3と、脚を被覆するレッグ部2と、足(足指、足甲、足裏および踵を指す)を覆うフット部5とを備えるものである。このタイツ1は、筒状に編成された1対の編地を用い、パンティ部3に相当する部分に切れ目を入れて裁断縁どうしをつき合わせて股部4を縫着して一体化することにより製造される。また、足の爪先部は周知の手段により、袋状に縫着することにより製造される。
【0013】
なお、本実施の形態において、対象をタイツとしているが、部分的にその機能を備えたスパッツ等を含むことは上述した通りである。
本実施の形態に係るタイツ1を構成する編地について、編地についての模式的な図である
図2を参照して以下において詳しく説明する。
図2(A)は肌側の反対側である反肌側の編地を模式的に示した図であって、
図2(B)は肌側の編地を模式的に示した図であって、
図2(C)は
図2(A)に示す編地を反肌側として、
図2(B)に示す編地を肌側として、編糸の一部をプレーティング編みした二重編み構造の編地を模式的に示した(反肌側から見た)図である。
【0014】
図2(A)に示すように、このタイツ1を形成する二重編み構造編地における反肌側の編地は、ウーリーナイロン糸のみで編成されている。ここでは、最も単純な平編み(メリヤス編み)で示しているが、本発明の編み組織がこれに限定されるものではない。
図2(B)に示すように、このタイツ1を形成する二重編み構造編地における肌側の編地は、綿糸とサポート糸とが交互に編成されている。ここでも、最も単純な平編み(メリヤス編み)で示しているが、本発明の編み組織がこれに限定されるものではない。
【0015】
そして、
図2(A)に示すウーリーナイロン糸と
図2(B)に示す綿糸とをプレーティング編みして反肌側の編地と肌側の編地とを一体化して、
図2(C)に示すように二重編み構造の編地を形成している。この二重編み構造の編み地を用いて、
図1のタイツ1が形成されている。なお、このタイツ1において、全ての部位にこの二重編み構造の編み地を用いる必要はなく、一部の部位であっても、全ての部位であっても構わないが、後述する作用効果を効果的に発現させるためには、少なくともレッグ部2はこの二重編み構造の編み地により形成されていることが好ましい。
以下において、さらに具体的な編糸および編成について説明する。
【0016】
<具体的な編糸>
・表糸
ウーリーナイロン糸(56T/1-40F)
・裏糸(1コース、3コース)
サポート糸(SCY):ポリウレタン糸(33T)、ナイロンカバー糸(56T/1-40F)
・裏糸(2コース、4コース)
綿糸(80番手(綿番手))
<具体的な編成>
・表編地のゲージ320N 平編み(プレーティング)
・裏編地のゲージ320N 平編み(プレーティング)
<具体的な作用効果>
以上のようにして、本実施の形態に係る二重編み構造(ダブルフェイス設計)を備えたタイツ1によると、以下に示す(1)~(3)の作用効果を奏する。
【0017】
(1)肌側に肌にやさしい綿を使用して、特に、肌のケアが気になっている人も履けるように肌側に80番手(綿番手)の極細綿を使用して、肌あたりがやさしいタイツを実現することができる。
(2)反肌側にナイロン糸を用いてハイゲージ編みで編成して厚ぼったくすることを抑制するとともに、ハイゲージ編みで編み目が細かく脚が細く見えてスマートな外観を備えたタイツを実現することができる。
(3)反肌側はナイロンで肌側は綿の二重編み構造を備えるために、着ぶくれせず、スマートな外観を実現することができるとともに、(反肌側はナイロンであるために)なめらかな肌触りで、かつ、毛玉になりにくく、(肌側は綿であるために)肌あたりがやさしく、帯電しにくく、ムレにくいタイツを実現することができる。
【0018】
このように、肌側にやさしい綿を使用しつつ、着ぶくれせずスマートな外観で、毛玉になりにくく、ムレにくい、靴下または下半身用衣類の一例であるタイツ1を提供することができる。
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は、靴下または下半身用衣類に好適であり、肌側にやさしい綿を使用しつつ、着ぶくれせずスマートな外観で、毛玉になりにくく、ムレにくい点で特に好適である。
【符号の説明】
【0020】
1 タイツ
2 レッグ部
3 パンティ部
4 股部
5 フット部