(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127943
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】発泡粒子の製造方法及び発泡粒子成形体の製造方法。
(51)【国際特許分類】
C08J 9/18 20060101AFI20230907BHJP
B29C 44/00 20060101ALI20230907BHJP
B29C 44/44 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
C08J9/18 CES
C08J9/18 CET
B29C44/00 G
B29C44/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022031940
(22)【出願日】2022-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000131810
【氏名又は名称】株式会社ジェイエスピー
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】島田 智仁
(72)【発明者】
【氏名】太田 肇
【テーマコード(参考)】
4F074
4F214
【Fターム(参考)】
4F074AA09A
4F074AA17B
4F074AA24
4F074AA26B
4F074AA32
4F074AA32A
4F074AA32B
4F074AA32E
4F074AA98
4F074AB01
4F074AB03
4F074AB05
4F074AC02
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4F074AG10
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4F074CA39
4F074CA42
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4F074DA23
4F074DA32
4F074DA33
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4F074DA45
4F214AA11
4F214AB02
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4F214UA21
4F214UB01
4F214UC02
4F214UC14
4F214UC18
4F214UC30
4F214UF01
(57)【要約】
【課題】型内成形性に優れる、発泡粒子の製造方法及び発泡粒子、並びに該発泡粒子を型内成形してなる発泡粒子成形体を提供する。
【解決手段】ポリプロピレン系樹脂の融点が140℃以上であり、ポリプロピレン系樹脂の融点TmPPとポリスチレン系樹脂のガラス転移温度TgPSとの差TmPP-TgPSが35℃以上60℃以下であり、ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレイトが4g/10min以上10g/10min以下であり、ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレイトMFRPPとポリスチレン系樹脂のメルトフローレイトMFRPSとの差MFRPP-MFRPSが-3g/10min以上3g/10min以下であり、ポリプロピレン系樹脂とポリスチレン系樹脂との質量比が60:40~90:10であり、樹脂粒子のMFRRPが5g/10min以上10g/10min以下である、発泡粒子の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン系樹脂とポリスチレン系樹脂とを混練してなる混合樹脂を基材樹脂とする樹脂粒子を発泡させて、嵩密度が10kg/m3以上200kg/m3以下である発泡粒子を製造する発泡粒子の製造方法であって、
前記ポリプロピレン系樹脂の融点TmPPが140℃以上であり、
前記ポリプロピレン系樹脂の融点TmPPと、前記ポリスチレン系樹脂のガラス転移温度TgPSとの差TmPP-TgPSが35℃以上60℃以下であり、
温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定される前記ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレイトMFRPPが4g/10min以上10g/10min以下であり、
前記ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレイトMFRPPと、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定される前記ポリスチレン系樹脂のメルトフローレイトMFRPSとの差MFRPP-MFRPSが-3g/10min以上3g/10min以下であり、
前記ポリプロピレン系樹脂と前記ポリスチレン系樹脂との質量比が60:40~90:10であり、
温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定される前記樹脂粒子のメルトフローレイトMFRRPが5g/10min以上10g/10min以下である、
発泡粒子の製造方法。
【請求項2】
前記ポリプロピレン系樹脂の融点TmPPと、前記ポリスチレン系樹脂のガラス転移温度TgPSとの差TmPP-TgPSが45℃以上60℃以下である、請求項1に記載の発泡粒子の製造方法。
【請求項3】
前記樹脂粒子が、表面にポリプロピレン系樹脂(S)を基材樹脂とする樹脂層を有し、
前記ポリプロピレン系樹脂(S)の融点TmSと、前記ポリスチレン系樹脂のガラス転移温度TgPSとの差TmS-TgPSが15℃以上45℃以下である、請求項1又は2に記載の発泡粒子の製造方法。
【請求項4】
前記樹脂粒子の平均アスペクト比L/Dが1.4以上5.0以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の発泡粒子の製造方法。
【請求項5】
前記樹脂粒子が臭素系難燃剤を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の発泡粒子の製造方法。
【請求項6】
前記発泡粒子の嵩密度が15kg/m3以上35kg/m3以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載の発泡粒子の製造方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の発泡粒子の製造方法により製造された発泡粒子を型内成形する、発泡粒子成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡粒子の製造方法及び発泡粒子成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を型内成形してなるポリプロピレン系発泡粒子成形体は、耐薬品性、耐衝撃性、圧縮歪回復性等に優れているため、衝撃吸収材、断熱材、各種包装材等として、食品の運搬容器、電気・電子部品の包装材又は緩衝材、自動車バンパー等の車両用部材、住宅用断熱材等の建築部材、雑貨等の種々の用途に使用されている。
【0003】
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体は、例えば、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を成形型内に充填し、スチーム等の加熱媒体で加熱することにより、発泡粒子を二次発泡させると共に発泡粒子同士を相互に融着させて、所望の形状に成形するという型内成形法によって製造される。
【0004】
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の型内成形性を向上させるために、例えば、特許文献1には、ポリプロピレン系樹脂とポリスチレン系樹脂と相溶化剤とからなるポリプロピレン系樹脂組成物を発泡してなる発泡粒子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を型内成形することにより発泡粒子成形体を製造する際においては、発泡粒子の型内成形性を高めるために、例えば、空気等により発泡粒子を加圧し、発泡粒子の気泡内の圧力を高める等の前処理を行う場合がある。一方で、発泡粒子成形体の生産性を高める観点からは、このような前処理をしなくとも、良好な型内成形性を有する発泡粒子であることが望ましい。
しかしながら、特許文献1に記載される組成物を発泡してなる発泡粒子は、型内成形性が十分に向上したものではなく、特に、発泡粒子の嵩密度を低くした場合に、前処理をしなくとも良好な型内成形性を有する発泡粒子を得ることは困難であった。
【0007】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、型内成形性に優れ、空気等による加圧処理を発泡粒子に行わなくとも、型内成形性が良好な発泡粒子の製造方法及び該製造方法により製造された発泡粒子を型内成形する発泡粒子成形体の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、以下に示す構成を採用することにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
<1> ポリプロピレン系樹脂とポリスチレン系樹脂とを混練してなる混合樹脂を基材樹脂とする樹脂粒子を発泡させて、嵩密度が10kg/m3以上200kg/m3以下である発泡粒子を製造する発泡粒子の製造方法であって、前記ポリプロピレン系樹脂の融点TmPPが140℃以上であり、前記ポリプロピレン系樹脂の融点TmPPと、前記ポリスチレン系樹脂のガラス転移温度TgPSとの差TmPP-TgPSが35℃以上60℃以下であり、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定される前記ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレイトMFRPPが4g/10min以上10g/10min以下であり、前記ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレイトMFRPPと、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定される前記ポリスチレン系樹脂のメルトフローレイトMFRPSとの差MFRPP-MFRPSが-3g/10min以上3g/10min以下であり、前記ポリプロピレン系樹脂と前記ポリスチレン系樹脂との質量比が60:40~90:10であり、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定される前記樹脂粒子のメルトフローレイトMFRRPが5g/10min以上10g/10min以下である、発泡粒子の製造方法。
<2> 前記ポリプロピレン系樹脂の融点TmPPと、前記ポリスチレン系樹脂のガラス転移温度TgPSとの差TmPP-TgPSが45℃以上60℃以下である、<1>に記載の発泡粒子の製造方法。
<3> 前記樹脂粒子が、表面にポリプロピレン系樹脂(S)を基材樹脂とする樹脂層を有し、前記ポリプロピレン系樹脂(S)の融点TmSと、前記ポリスチレン系樹脂のガラス転移温度TgPSとの差TmS-TgPSが15℃以上45℃以下である、<1>又は<2>に記載の発泡粒子の製造方法。
<4> 前記樹脂粒子の平均アスペクト比L/Dが1.4以上5.0以下である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の発泡粒子の製造方法。
<5> 前記樹脂粒子が臭素系難燃剤を含む、<1>~<4>のいずれか1つに記載の発泡粒子の製造方法。
<6> 前記発泡粒子の嵩密度が15kg/m3以上35kg/m3以下である、<1>~<5>のいずれか1つに記載の発泡粒子の製造方法。
<7> <1>~<6>のいずれか1つに記載の発泡粒子の製造方法により製造された発泡粒子を型内成形する、発泡粒子成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、型内成形性に優れ、空気等による加圧処理を発泡粒子に行わなくとも、型内成形性が良好な発泡粒子の製造方法及び該製造方法により製造された発泡粒子を型内成形する発泡粒子成形体の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】発泡粒子の高温ピークの求め方を説明するための図である。
【
図2】実施例1の樹脂粒子の押出方向に沿った断面写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[発泡粒子の製造方法]
本発明の発泡粒子の製造方法(以下、単に発泡粒子の製造方法又は本発明の製造方法ともいう)は、ポリプロピレン系樹脂とポリスチレン系樹脂とを混練してなる混合樹脂を基材樹脂とする樹脂粒子を発泡させて、嵩密度が10kg/m3以上200kg/m3以下である発泡粒子を製造する発泡粒子の製造方法であって、前記ポリプロピレン系樹脂の融点TmPPが140℃以上であり、前記ポリプロピレン系樹脂の融点TmPPと、前記ポリスチレン系樹脂のガラス転移温度TgPSとの差TmPP-TgPSが35℃以上60℃以下であり、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定される前記ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレイトMFRPPが4g/10min以上10g/10min以下であり、前記ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレイトMFRPPと、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定される前記ポリスチレン系樹脂のメルトフローレイトMFRPSとの差MFRPP-MFRPSが-3g/10min以上3g/10min以下であり、前記ポリプロピレン系樹脂と前記ポリスチレン系樹脂との質量比が60:40~90:10であり、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定される前記樹脂粒子のメルトフローレイトMFRRPが5g/10min以上10g/10min以下である。
【0012】
本発明の発泡粒子の製造方法においては、ポリプロピレン系樹脂の融点TmPPが特定値以上であり、ポリプロピレン系樹脂の融点TmPPと、ポリスチレン系樹脂のガラス転移温度TgPSとの差TmPP-TgPSが特定の範囲であり、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定されるポリプロピレン系樹脂のメルトフローレイトMFRPPが特定の範囲であり、ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレイトMFRPPと、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定される前記ポリスチレン系樹脂のメルトフローレイトMFRPSとの差MFRPP-MFRPSが特定の範囲であり、ポリプロピレン系樹脂とポリスチレン系樹脂との質量比が特定の範囲であり、また、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定される前記樹脂粒子のメルトフローレイトMFRRPが特定の範囲である。これにより、型内成形性に優れる発泡粒子を得ることができる。
【0013】
本発明の発泡粒子の製造方法は、少なくとも以下の工程(A)~(C)を含むことが好ましい。
工程(A):ポリプロピレン系樹脂とポリスチレン系樹脂とを混練して、ポリプロピレン系樹脂とポリスチレン系樹脂との混合樹脂を基材樹脂とする樹脂粒子を得る工程、
工程(B):樹脂粒子に発泡剤を含浸させて発泡性樹脂粒子を得る工程、及び
工程(C):発泡性樹脂粒子を発泡させて発泡粒子を得る工程。
【0014】
(ポリプロピレン系樹脂)
ポリプロピレン系樹脂とは、プロピレンに由来する構成単位の含有量が50質量%以上であるポリマーを意味する。ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体、プロピレン系共重合体又はその混合物等が例示され、プロピレン系共重合体を好ましく用いることができる。プロピレン系共重合体としては、プロピレンと、エチレン及び炭素数4~20の1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、4-メチル-1-ブテンなどのα-オレフィンからなる群より選ばれる少なくとも1種との共重合体が例示され、好ましくはプロピレンとエチレンとの共重合体及び/又はプロピレンとエチレンとブテンとの共重合体であり、より好ましくはプロピレンとエチレンとの共重合体である。
【0015】
≪融点TmPP≫
ポリプロピレン系樹脂の融点TmPPは、140℃以上である。ポリプロピレン系樹脂の融点TmPPが低すぎると、得られる発泡粒子を型内成形した際に、成形直後の発泡粒子成形体が収縮して変形しやすくなり、発泡粒子の型内成形性が低下するおそれがある。ポリプロピレン系樹脂の融点TmPPが上記値以上であることで、成形直後の発泡粒子成形体の過度な変形を抑制でき、型内成形性に優れる発泡粒子が得られると共に、金型に対する寸法変化率が小さい成形体を得やすくなる。かかる観点から、ポリプロピレン系樹脂の融点TmPPは、好ましくは142℃以上、より好ましくは145℃以上、更に好ましくは148℃以上、特に好ましくは150℃以上である。
また、ポリプロピレン系樹脂の融点TmPPは、成形圧力が低い条件における発泡粒子の型内成形性を高めやすくなる観点から、好ましくは165℃以下、より好ましくは160℃以下、更に好ましくは155℃以下である。
ポリプロピレン系樹脂の融点TmPPは、ポリプロピレン系樹脂を試験片として、JIS K 7121:2012に基づいて測定される。具体的には、試験片の状態調節としては「(2)一定の熱処理を行なった後、融解温度を測定する場合」を採用し、試験片を、10℃/minの加熱速度で30℃から200℃まで加熱し、200℃に達した後、200℃から30℃まで10℃/分の速度で降温した後、再度30℃から200℃まで10℃/分の速度で2回目の加熱をすることによりDSC曲線(2回目加熱時のDSC曲線)を取得する。2回目加熱時のDSC曲線上の樹脂の融解に伴う融解ピークの頂点温度をポリプロピレン系樹脂の融点TmPPとする。なお、DSC曲線に複数の融解ピークが現れる場合は、最も大きな面積を有する融解ピークの頂点温度をポリプロピレン系樹脂の融点TmPPとして採用する。この際、各融解ピークの頂点温度の間に位置するDSC曲線の谷間の温度を境にして各融解ピークを区別して各融解ピークの面積(融解熱量)を比較することで、最も大きな面積を有する融解ピークを判断することができる。DSC曲線の谷間の温度は、DSCの微分曲線(DDSC)を参照して、微分曲線の縦軸の値が0となる温度から判断することができる。
【0016】
≪メルトフローレイトMFRPP≫
温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定される、ポリプロピレン系樹脂のMFRPPは、4g/10min以上である。MFRPPが低すぎると、発泡粒子の二次発泡性が低下し、発泡粒子の型内成形性が低下する傾向にある。二次発泡性に優れ、型内成形性に優れる発泡粒子を安定して得やすくなる観点から、ポリプロピレン系樹脂のMFRPPは、好ましくは5g/10min以上、より好ましくは6g/10min以上である。
また、ポリプロピレン系樹脂のMFRPPは、10g/10min以下である。MFRppが高すぎると、型内成形後の発泡粒子成形体が過度に収縮しやすくなり、型内成形性が低下する傾向にある。発泡粒子成形体の成形直後の過度な収縮を安定して抑制しやすくなる観点から、好ましくは9g/10min以下、より好ましくは8g/10min以下である。
ポリプロピレン系樹脂のMFRPPは、JIS K 7210-1:2014に準拠し、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定される。
【0017】
≪曲げ弾性率FPP≫
ポリプロピレン系樹脂の曲げ弾性率FPPは、型内成形後の発泡粒子成形体の収縮をより抑制し、発泡粒子の型内成形性を高める観点から、好ましくは800MPa以上、より好ましくは1000MPa以上、更に好ましくは1100MPa以上、特に好ましくは1200MPa以上である。また、発泡粒子の二次発泡性を高め、型内成形性を高めやすくなる観点から、ポリプロピレン系樹脂の曲げ弾性率FPPは、好ましくは1600MPa以下、より好ましくは1500MPa以下、更に好ましくは1400MPa以下である。
ポリプロピレン系樹脂の曲げ弾性率FPPは、JIS K 7171:2016に基づき、求めることができる。
【0018】
≪全融解熱量≫
ポリプロピレン系樹脂の全融解熱量は、得られる成形体の機械的物性を高める観点からは、好ましくは60J/g以上、より好ましくは70J/g以上、更に好ましくは80J/g以上である。また、ポリプロピレン系樹脂の全融解熱量は、発泡粒子の型内成形性を高める観点からは、好ましくは120J/g以下、より好ましくは110J/g以下、更に好ましくは100J/g以下である。
ポリプロピレン系樹脂の全融解熱量は、ポリプロピレン系樹脂に対して、JIS K 7122:2012に準拠した示差走査熱量測定(DSC)を行うことにより得られるDSC曲線から求めることができる。具体的には、まず、上記した融点の測定と同様にして、ポリプロピレン系樹脂の2回目加熱時のDSC曲線を得る。得られた2回目加熱時のDSC曲線上の温度80℃での点をαとし、融解終了温度に相当するDSC曲線上の点をβとする。点αと点βの区間におけるDSC曲線と、線分(α-β)とによって囲まれる部分の面積を測定し、これをポリプロピレン系樹脂の全融解熱量とする。
【0019】
(ポリスチレン系樹脂)
ポリスチレン系樹脂とは、スチレンに由来する構成単位の含有量が50質量%以上である熱可塑性樹脂を意味する。ポリスチレン系樹脂としては、ポリスチレン(汎用ポリスチレン:GPPS)、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸-メタクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、スチレン-メタクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリル酸ブチル共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)や、これらの混合物等が例示される。これらの中でも、ポリスチレンを用いることが好ましい。
また、ポリスチレン系樹脂としては、ポリスチレン系樹脂製品等をリサイクルして得られる、ポリスチレン系樹脂製品由来のリサイクル原料を用いることもできる。本発明においては、ポリスチレン系樹脂製品由来のリサイクル原料を含むポリスチレン系樹脂を用いた場合であっても、型内成形性に優れる発泡粒子を安定して得ることができる。
ポリスチレン系樹脂製品由来のリサイクル原料としては、例えば、魚箱などに使用されているポリスチレン系樹脂発泡粒子成形体のリサイクル原料、食品容器等に使用されている発泡シートやその端材等のポリスチレン系樹脂押出発泡体のリサイクル原料などを使用することができる。リサイクル原料は、例えば、発泡体の粉砕物等を押出機に供給し、溶融混練して樹脂溶融物を形成した後、樹脂溶融物を押出機から押出し、所定形状にペレタイズすること等により製造される。
【0020】
≪ガラス転移温度TgPS≫
ポリスチレン系樹脂のガラス転移温度TgPSは、後述するポリプロピレン系樹脂の融点TmPPとの差TmPP-TgPSが特定の範囲内であれば特に限定されないが、成形直後の発泡粒子成形体の収縮を抑制しやすくなる観点からは、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上、更に好ましくは95℃以上、より更に好ましくは98℃以上である。また、ポリスチレン系樹脂のガラス転移温度TgPSは、発泡粒子の型内成形性を高めやすくなる観点からは、好ましくは130℃以下、より好ましくは120℃以下、更に好ましくは110℃以下、より更に好ましくは105℃以下である。
ポリスチレン系樹脂のガラス転移温度TgPSは、JIS K 7121:2012により熱流束示差走査熱量測定にて得られるDSC曲線の中間点ガラス転移温度として求めることができる。なお、ガラス転移温度の測定においては、JIS K 7121:2012の「3.試験片の状態調節(3)」に記載の『一定の熱処理を行った後、ガラス転移温度を測定する場合』に準拠して試験片の状態調節を行い、ガラス転移温度を測定することができる。
【0021】
≪差TmPP-TgPS≫
ポリプロピレン系樹脂の融点TmPPとポリスチレン系樹脂のガラス転移温度TgPSとの差TmPP-TgPSは35℃以上である。差TmPP-TgPSが小さすぎると、発泡粒子の二次発泡性が低下しやすくなり、発泡粒子の型内成形性が低下する傾向がある。この理由としては定かではないが、二次発泡によるポリプロピレン系樹脂の伸びにポリスチレン系樹脂が追従して変形しにくくなることが考えられる。二次発泡性に優れ、型内成形性に優れる発泡粒子を安定して得ることができる観点や、金型に対する寸法変化率が小さい成形体を得やすくなる観点から、差TmPP-TgPSは、好ましくは38℃以上、より好ましくは40℃以上、更に好ましくは42℃以上、特に好ましくは45℃以上である。また、差TmPP-TgPSは、60℃以下である。差TmPP-TgPSが大きすぎると、成形直後に発泡粒子成形体が過度に収縮しやすくなり、発泡粒子の型内成形性が低下する傾向がある。この理由としては定かではないが、成形型に充填された発泡粒子を加熱した後、冷却する際に上記混合樹脂が固化しにくくなり、混合樹脂が固化するまでの時間が長くなることが考えられる。発泡粒子成形体の成形直後の過度な収縮を抑制し、型内成形性に優れる発泡粒子を安定して得ることができる観点から、差TmPP-TgPSは、好ましくは58℃以下、より好ましくは55℃以下である。
【0022】
≪メルトフローレイトMFRPS≫
温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定される、ポリスチレン系樹脂のメルトフローレイトMFRPSは、後述するポリプロピレン系樹脂のメルトフローレイトMFRPPとの差MFRPP-MFRPSが特定の範囲内であれば特に限定されないが、得られる発泡粒子の二次発泡性を高めやすくなる観点から、好ましくは3g/10min以上、より好ましくは4g/10min以上、更に好ましくは5g/10min以上、より更に好ましくは6g/10min以上である。また、ポリスチレン系樹脂のメルトフローレイトMFRPSは、得られる発泡粒子を型内成形した際に、発泡粒子成形体の成形直後の収縮を抑制しやすくなる観点から、好ましくは10g/10min以下、より好ましくは9g/10min以下、更に好ましくは8g/10min以下である。
ポリスチレン系樹脂のMFRPSは、JIS K 7210-1:2014に準拠し、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定される。
【0023】
≪差MFRPP-MFRPS≫
ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレイトMFRPPとポリスチレン系樹脂のメルトフローレイトMFRPSとの差MFRPP-MFRPSは-3g/10min以上3g/10min以下である。差MFRPP-MFRPSが大きすぎると、ポリプロピレン系樹脂とポリスチレン系樹脂とを溶融混練して樹脂粒子を得る際に、両者が十分に混合せず、樹脂粒子を発泡させた際に、独立気泡率の高い発泡粒子を得ることが困難となるおそれがある。また、得られる発泡粒子を型内成形した際に、発泡粒子同士の融着性の低下や型内成形後の発泡粒子成形体の収縮が生じやすくなり、発泡粒子の型内成形性が低下するおそれがある。型内成形性に優れる発泡粒子を安定して得ることができる観点からは、差MFRPP-MFRPSは、好ましくは-2.0g/10min以上2.0g/10min以下であり、より好ましくは-1.5g/10min以上1.5g/10min以下である。
【0024】
≪重量平均分子量Mw≫
ポリスチレン系樹脂の重量平均分子量Mwは、発泡粒子の型内成形性を安定して高めやすくなる観点から、好ましくは18万以上、より好ましくは20万以上である。また、同様の観点から、ポリスチレン系樹脂の重量平均分子量Mwは、好ましくは35万以下、より好ましくは32万以下、更に好ましくは30万以下、より更に好ましくは28万以下である。
なお、本発明におけるポリスチレン系樹脂の平均分子量(Mw、Mn)は、ポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定される、ポリスチレン換算平均分子量(相対平均分子量)である。
【0025】
≪数平均分子量Mnに対する重量平均分子量Mwの比Mw/Mn≫
ポリスチレン系樹脂の数平均分子量Mnに対する、ポリスチレン系樹脂の重量平均分子量Mwの比Mw/Mnは、樹脂粒子製造時におけるポリプロピレン系樹脂中へのポリスチレン系樹脂の分散性を良好にし、ポリプロピレン系樹脂とポリスチレン系樹脂とが良好に混合した樹脂粒子を得ることができると共に、樹脂粒子を発泡させて得られる発泡粒子の型内成形性を安定して高めやすくなる観点から、好ましくは2.0以上、より好ましくは2.2以上である。また、同様の観点から、比Mw/Mnは、好ましくは4.0以下、より好ましくは3.5以下、更に好ましくは3.2以下、より更に好ましくは3.0以下である。
【0026】
≪曲げ弾性率FPS≫
ポリスチレン系樹脂の曲げ弾性率FPSは、曲げ弾性率の差FPP-FPSを特定の範囲内にすることができれば特に限定されないが、発泡粒子の型内成形性を高めやすくなる観点から、好ましくは2500MPa以上、より好ましくは2800MPa以上、更に好ましくは3000MPa以上である。また、同様の観点から、ポリスチレン系樹脂の曲げ弾性率FPSは、好ましくは4000MPa以下、より好ましくは3700MPa以下、更に好ましくは3500MPa以下である。
ポリスチレン系樹脂の曲げ弾性率は、JIS K 7171:2016に基づき、求めることができる。
【0027】
≪曲げ弾性率の差FPS-FPP≫
ポリスチレン系樹脂の曲げ弾性率FPSとポリプロピレン系樹脂の曲げ弾性率FPPとの差FPS-FPPは、成形直後の発泡粒子成形体の過度な収縮を抑制しやすくなる観点から、好ましくは1600MPa以上、より好ましくは1700MPa以上、更に好ましくは1800MPa以上である。また、差FPS-FPPは、発泡粒子の二次発泡性を高めやすくなる観点や、金型に対する寸法変化率が小さい成形体を得やすくなる観点から、好ましくは2400MPa以下、より好ましくは2100MPa以下、更に好ましくは2000MPa以下である。
【0028】
<工程(A):混合樹脂を基材樹脂とする樹脂粒子の製造>
混合樹脂は、上記ポリプロピレン系樹脂と上記ポリスチレン系樹脂とを混練してなる。混合樹脂は、例えば、押出機で上記ポリプロピレン系樹脂と上記ポリスチレン系樹脂とを溶融混練することにより得ることができる。
また、混合樹脂を基材樹脂とする樹脂粒子は、例えば、押出機でポリプロピレン系樹脂とポリスチレン系樹脂とを混練して、ポリプロピレン系樹脂とポリスチレン系樹脂との混合樹脂溶融物を形成すると共に、この混合樹脂溶融物を押出機から押出し、所定の形状及び質量となるようにペレタイズすることにより得ることができる。なお、ポリプロピレン系樹脂とポリスチレン系樹脂との混合物を押出機に供給して、混合樹脂溶融物を形成してもよい。
混合樹脂は、ポリプロピレン系樹脂により形成される連続相中に、ポリスチレン系樹脂により構成される分散相が分散したモルフォロジーを示し、樹脂粒子の押出方向に沿った樹脂粒子断面において、ポリスチレン系樹脂により構成される分散相が筋状に分散していることが好ましい。
なお、樹脂粒子を製造するためのペレタイズの方法としては、押出装置の下流側に付設されたダイの小孔から混合樹脂溶融物をストランド状に押出し、水中で冷却した後、切断するストランドカット法、混合樹脂溶融物を水中に押出して切断するアンダーウォーターカット法、混合樹脂溶融物を空気中に押出した直後に切断するホットカット法等を採用することができる。
【0029】
(添加剤)
混合樹脂には、必要に応じて、気泡調整剤、難燃剤、難燃助剤、気泡核剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、光安定剤、導電材、着色剤等の添加剤が添加されていてもよい。
【0030】
難燃剤としては、臭素系難燃剤が好ましく用いられ、樹脂粒子が臭素系難燃剤を含むことが好ましい。上記混合樹脂を基材樹脂とする発泡粒子を型内成形してなる成形体は燃えやすい傾向にあり、特に発泡倍率の高い成形体を得ようとすると、この傾向が顕著になる。また、成形体の難燃性を高めるために、難燃剤を多く配合すると、発泡粒子の型内成形性が低下するおそれがある。一方、臭素系難燃剤を用いることにより、発泡粒子の型内形成を大きく損なうことなく、成形体に安定的に難燃性を付与することができる。臭素系難燃剤としては、例えば、臭素化ビスフェノール系難燃剤や、臭素化スチレン-ブタジエン系共重合体等を用いることができる。臭素化ビスフェノール系難燃剤としては、ビスフェノールA骨格を有する臭素化物、ビスフェノールF骨格を有する臭素化物及びビスフェノールS骨格を有する臭素化物等が挙げられる。より具体的には、2,2-ビス(4-(2、3-ジブロモ-2-メチルプロポキシ)-3,5-ジブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(2,3-ジブロモプロポキシ)-3,5-ジブロモフェニル)プロパン等の臭素化ビスフェノールA系難燃剤や、ビス[3,5-ジブロモ-4-(2,3-ジブロモプロポキシ)フェニル]スルホン等の臭素化ビスフェノールS系難燃剤等を臭素化ビスフェノール系難燃剤として用いることができる。また、臭素化スチレン-ブタジエン系共重合体としては、臭素化スチレン-ブタジエンブロック共重合体が挙げられる。臭素系難燃剤は、臭素化スチレン-ブタジエン系共重合体及び/又は臭素化ビスフェノール系難燃剤を主成分とすることが好ましく、臭素化スチレン-ブタジエンブロック共重合体を主成分とすることがより好ましい。なお、主成分とするとは、難燃剤中の当該臭素系難燃剤の割合が50質量%以上であることを意味する。また、難燃剤中の当該臭素系難燃剤の割合は、好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上である。
また、上記樹脂粒子には、混合樹脂100質量部に対して、臭素系難燃剤が0.1質量部以上3質量部以下配合されていることが好ましく、0.5質量部以上2質量部以下配合されることが好ましい。この場合、発泡粒子の型内成形性を維持しつつ、得られる成形体に安定して難燃性を付与することができる。
【0031】
着色剤としては、カーボンブラックが好ましく用いられる。カーボンブラックとしては、チャンネルブラック、ローラーブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック等が挙げられる。これらの中でも、カーボンブラックは、混合樹脂への分散性の観点から、好ましくはファーネスブラックである。発泡粒子の型内成形性を維持しつつ、発泡粒子成形体に良好な黒色を付与できる観点から、混合樹脂中のカーボンブラックの含有量は、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは2質量%以上である。また、同様の観点から、混合樹脂中のカーボンブラックの含有量は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、更に好ましくは3質量%以下である。
【0032】
(他の重合体)
混合樹脂は、本発明の目的効果を阻害しない範囲で、ポリプロピレン系樹脂及びポリスチレン系樹脂以外の他の重合体を含んでいてもよい。
この場合、混合樹脂における他の重合体の含有量は、ポリプロピレン系樹脂とポリスチレン系樹脂との合計100重量部に対して、好ましくは30質量部以下であり、より好ましくは20質量部以下であり、さらに好ましくは10質量部以下である。
また、ポリプロピレン系樹脂中にポリスチレン系樹脂を安定して分散させるために、混合樹脂は、他の重合体として、相溶化剤を含んでいてもよい。相溶化剤としては、スチレン系エラストマー等が挙げられ、具体的には、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体(SIS)や、それらの水素添加物である、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体(SEBS)等が挙げられる。相溶化剤としては、これらの中では、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体(SEBS)を好ましく用いることができる。
上記スチレン系エラストマー中のスチレンに由来する成分の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは65質量%以上である。また、上記スチレン系エラストマー中のスチレンに由来する成分の割合は、好ましくは80質量%以下であり、より好ましくは75質量%以下である。
また、上記スチレン系エラストマーの、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定される、メルトフローレイトは、好ましくは0.5g/10min以上5g/10min以下であり、より好ましくは1g/10min以上3g/min以下である。
混合樹脂における相溶化剤の含有量は、発泡粒子の型内成形性を高める観点から、ポリプロピレン系樹脂とポリスチレン系樹脂との合計100質量部に対して、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは8質量部以下である。なお、発泡粒子は相溶化剤を含有していなくてもよいが、相溶化剤を用いる場合、発泡粒子における相溶化剤の含有量は、ポリプロピレン系樹脂中にポリスチレン系樹脂を安定して分散させる観点からは、ポリプロピレン系樹脂とポリスチレン系樹脂との合計100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上である。
【0033】
(ポリプロピレン系樹脂とポリスチレン系樹脂との質量比)
ポリプロピレン系樹脂とポリスチレン系樹脂との質量比(ポリスチレン系樹脂:ポリスチレン系樹脂)は、60:40~90:10である。混合樹脂中のポリスチレン系樹脂の割合が少なすぎると、型内成形後の発泡粒子成形体が過度に収縮しやすくなり、発泡粒子の型内成形性が低下する傾向にある。また、混合樹脂中のポリスチレン系樹脂の割合が多すぎると、発泡粒子同士の融着性が低下し、融着状態が良好な発泡粒子成形体を得ることが困難となる。
発泡粒子同士の融着性が良好であると共に、型内成形後の発泡粒子成形体の収縮が抑制された、型内成形性に優れる発泡粒子を安定して得ることができる観点から、ポリプロピレン系樹脂とポリスチレン系樹脂との質量比は、好ましくは60:40~85:15であり、より好ましくは60:40~80:20である。
【0034】
(メルトフローレイトMFRRP)
温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定される、樹脂粒子のメルトフローレイトMFRRPは、5g/10min以上である。樹脂粒子のメルトフローレイトMFRRPが低すぎると、発泡粒子同士の融着性が低下しやすくなり、発泡粒子の型内成形性が低下する傾向にある。発泡粒子同士の融着性が良好で、型内成形性に優れる発泡粒子を安定して得ることができる観点から、樹脂粒子のメルトフローレイトMFRRPは、好ましくは6g/10min以上、より好ましくは7g/10min以上である。
また、樹脂粒子のメルトフローレイトMFRRPは、10g/10min以下である。樹脂粒子のMFRRPが高すぎると、型内成形後の発泡粒子成形体が過度に収縮しやすくなり、発泡粒子の型内成形性が低下する傾向にある。型内成形後の発泡粒子成形体の収縮を抑制し、型内成形性に優れる発泡粒子を得る観点から、樹脂粒子のメルトフローレイトMFRRPは、好ましくは9g/10min以下、より好ましくは8g/10min以下である。
樹脂粒子のMFRRPは、樹脂粒子を測定サンプルとして、JIS K 7210-1:2014に準拠し、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定される。
【0035】
(ポリプロピレン系樹脂の融点TmPPMR)
混合樹脂におけるポリプロピレン系樹脂の融点TmPPMRは、型内成形後の発泡粒子成形体の収縮を抑制して型内成形性に優れる発泡粒子を得る観点から、好ましくは140℃以上、より好ましくは145℃以上、更に好ましくは148℃以上、特に好ましくは150℃以上である。また、ポリプロピレン系樹脂の融点TmPPMRは、成形圧力が低い条件における発泡粒子の型内成形性を高めやすくなる観点から、好ましくは165℃以下、より好ましくは160℃以下、更に好ましくは155℃以下である。
混合樹脂におけるポリプロピレン系樹脂の融点TmPPMRは、発泡粒子を試験片として、JIS K 7121:2012に基づいて測定される。具体的には、試験片の状態調節としては「(2)一定の熱処理を行なった後、融解温度を測定する場合」を採用し、試験片である発泡粒子を、10℃/minの加熱速度で30℃から200℃まで加熱し、200℃に達した後、200℃から30℃まで10℃/分の速度で降温した後、再度30℃から200℃まで10℃/分の速度で2回目の加熱をすることによりDSC曲線(2回目加熱時のDSC曲線)を取得する。2回目加熱時のDSC曲線上のポリプロピレン系樹脂に由来する成分の融解に伴う融解ピークの頂点温度を、混合樹脂におけるポリプロピレン系樹脂の融点TmPPMRとする。なお、DSC曲線に複数の融解ピークが現れる場合は、最も大きな面積を有する融解ピークの頂点温度を、混合樹脂におけるポリプロピレン系樹脂の融点TmPPMRとして採用する。
【0036】
(ポリスチレン系樹脂のガラス転移温度TgPSMR)
混合樹脂におけるポリスチレン系樹脂のガラス転移温度TgPSMRは、後述するポリプロピレン系樹脂の融点TmPPとの差TmPP-TgPSが特定の範囲内であれば特に限定されないが、成形直後の発泡粒子成形体の収縮を抑制して発泡粒子の型内成形性を高めやすくなる観点から、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上、更に好ましくは95℃以上、より更に好ましくは98℃以上である。また、ポリスチレン系樹脂のガラス転移温度TgPSMRは、発泡粒子の二次発泡性を向上させて型内成形性を高めやすくなる観点から、好ましくは130℃以下、より好ましくは120℃以下、更に好ましくは110℃以下、より更に好ましくは105℃以下である。
混合樹脂におけるポリスチレン系樹脂のガラス転移温度TgPSMRは、発泡粒子を試験片として、JIS K 7121:2012により熱流束示差走査熱量測定を行い、得られるDSC曲線の、ポリスチレン系樹脂に由来する成分の中間点ガラス転移温度として求めることができる。なお、混合樹脂におけるポリスチレン系樹脂のガラス転移温度は、混合樹脂を形成するために用いるポリスチレン系樹脂のガラス転移温度と概ね一致する。また、DSC曲線において、ポリスチレン系樹脂に由来する成分のガラス転移温度の判断が容易ではないときは、DSC曲線の微分曲線における頂点温度を参考にして、ポリスチレン系樹脂のガラス転移温度を判断してもよい。
ガラス転移温度の測定においては、JIS K 7121:2012の「3.試験片の状態調節(3)」に記載の『一定の熱処理を行った後、ガラス転移温度を測定する場合』に準拠して試験片の状態調節を行い、ガラス転移温度を測定することができる。
【0037】
(差TmPPMR-TgPSMR)
混合樹脂におけるポリプロピレン系樹脂の融点TmPPMRとポリスチレン系樹脂のガラス転移温度TgPSMRとの差TmPPMR-TgPSMRは、発泡粒子の二次発泡性を向上し、型内成形性を高める観点から、好ましくは35℃以上で、より好ましくは37℃以上、更に好ましくは40℃以上、より更に好ましくは42℃以上、特に好ましくは45℃以上である。また、差TmPPMR-TgPSMRは、発泡粒子成形体の成形直後の過度な収縮を抑制し、発泡粒子の型内成形性を高める観点から、好ましくは60℃以下、より好ましくは58℃以下、更に好ましくは55℃以下である。
【0038】
(曲げ弾性率FMR)
混合樹脂の曲げ弾性率FMRは、型内成形後の発泡粒子成形体の収縮を抑制し、発泡粒子の型内成形性を高める観点から、好ましくは1000MPa以上、より好ましくは1100MPa以上、更に好ましくは1200MPa以上、より更に好ましくは1500MPa以上である。また、発泡粒子の二次発泡性を高め、発泡粒子の型内成形性を高める観点から、混合樹脂の曲げ弾性率FMRは、好ましくは2000MPa以下、より好ましくは1900MPa以下、更に好ましくは1800MPa以下である。
混合樹脂の曲げ弾性率FMRは、JIS K 7171:2016に基づき、求めることができる。この際の試験片は、樹脂粒子あるいは発泡粒子を用いて作製することができる。具体的には、樹脂粒子あるいは発泡粒子をヒートプレスすることにより、非発泡状態のシートを作製し、所定の寸法(例えば、長さ80mm×幅10mm×厚さ4mm)に切り出すことにより、試験片を作製することができる。なお、樹脂粒子から作製された試験片を用いて測定された混合樹脂の曲げ弾性率と、発泡粒子から作製された試験片を用いて測定された混合樹脂の曲げ弾性率とは、概ね一致する。
【0039】
(平均アスペクト比L/D)
上記のように、押出機を用いて樹脂粒子を得る場合には、樹脂粒子の形状は、略円柱状であることが好ましい。また、この場合、樹脂粒子の平均アスペクト比L/Dは、成形型への充填性が良好な発泡粒子を得やすくなる観点から、好ましくは1.4以上、より好ましくは1.6以上、更に好ましくは1.8以上、より更に好ましくは2.0以上である。上記混合樹脂から構成される樹脂粒子は、ポリプロピレン系樹脂から構成される樹脂粒子に比べ、発泡時に樹脂粒子の押出方向において収縮が生じやすく、得られる発泡粒子が扁平化しやすい。そのため、発泡粒子の成形型への充填性が低下して、型内成形性が低下する傾向にあるが、樹脂粒子の平均アスペクト比L/Dを上記値以上にすることで、平均アスペクト比L/Dが1に近く、成形型への充填性が良好な発泡粒子を得やすくなる。同様の観点から、樹脂粒子の平均アスペクト比L/Dは、好ましくは5.0以下、より好ましくは4.0以下、更に好ましくは3.0以下、より更に好ましくは2.5以下である。
樹脂粒子の平均アスペクト比L/Dは、無作為に選択した30個の樹脂粒子について、樹脂粒子の押出方向における最大長(L)と最大長の長さ方向と直交する方向における当該粒子の断面の断面最大径(D)を測定して、比(L/D)を算出し、その値を算術平均した値として求められる。
【0040】
(樹脂層)
樹脂粒子は、発泡粒子の型内成形性を高める観点から、表面にポリプロピレン系樹脂(S)を基材樹脂とする樹脂層を有することが好ましい。この場合、樹脂粒子は、混合樹脂を基材樹脂とする樹脂粒子本体と、樹脂粒子本体を被覆する、ポリプロピレン系樹脂(S)を基材樹脂とする樹脂層とを有することとなる。なお、樹脂層は、粒子本体の一部を覆っていてもよく、粒子本体の外表面全体を覆っていてもよい。具体的には、樹脂層は、粒子本体の50%以上を覆うことが好ましく、70%以上を覆うことがより好ましく、80%以上を覆うことがさらに好ましい。
樹脂粒子の表面に樹脂層を形成する方法としては、例えば、共押出法により、樹脂粒子本体と、樹脂層とを有する多層構造の樹脂粒子を製造する方法や、予め作製した樹脂粒子本体に、樹脂層を被覆する方法等が挙げられる。
共押出法においては、樹脂粒子本体を形成するための樹脂粒子本体形成用押出機と、樹脂層を形成するための樹脂層形成用押出機と、これらの押出機の下流側で連結された多層ストランド形成用ダイ等の共押出用ダイとを有する押出装置を用いることができる。樹脂粒子本体形成用押出機には、混合樹脂(樹脂粒子本体)を形成するためのポリプロピレン系樹脂及びポリスチレン系樹脂と、必要に応じて添加される添加剤とを供給して溶融混練して混合樹脂溶融物とする。樹脂層形成用押出機には、樹脂層を形成するためのポリプロピレン系樹脂と、必要に応じて添加される添加剤とを供給して溶融混練して樹脂層形成用樹脂溶融物とする。混合樹脂溶融物と樹脂層形成用樹脂溶融物とを共押出用ダイに導入して合流させ、押出装置から押出すと共に所定の形状及び質量となるようにペレタイズすることで、表面に樹脂層を有する、多層構造の樹脂粒子を得ることができる。
また、樹脂粒子本体に樹脂層を被覆する方法としては、例えば、混合機能及び加熱機能を有する混合装置等に、樹脂粒子本体と、樹脂層を構成するための材料とを入れ、加熱、混合する方法等を採用することができる。
【0041】
(添加剤)
樹脂層には、必要に応じて、気泡調整剤、難燃剤、難燃助剤、気泡核剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、光安定剤、導電材、着色剤等の添加剤が添加されていてもよい。
着色剤としては、カーボンブラックが好ましく用いられる。カーボンブラックとしては、チャンネルブラック、ローラーブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック等が挙げられる。これらの中でも、カーボンブラックは、ポリプロピレン系樹脂への分散性の観点から、好ましくはファーネスブラックである。発泡粒子の型内成形性を維持しつつ、発泡粒子成形体に良好な黒色を付与できる観点から、樹脂層中のカーボンブラックの含有量は、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは2質量%以上である。また、同様の観点から、混合樹脂中のカーボンブラックの含有量は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、更に好ましくは3質量%以下である。
また難燃剤としては、上述した樹脂粒子に添加できる難燃剤として例示した、臭素系難燃剤を好ましく用いることができ、臭素化スチレン-ブタジエン系共重合体及び臭素化ビスフェノール系難燃剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を主成分とする臭素系難燃剤をより好ましく用いることができ、臭素化スチレン-ブタジエンブロック共重合体を主成分とする臭素系難燃剤を更に好ましく用いることができる。
また、発泡粒子の型内成形性を維持しつつ、得られる成形体に安定して難燃性を付与しやすくなる観点からは、上記樹脂層中の難燃剤の配合量は、好ましくは0.1質量%以上3質量%以下である。
【0042】
≪樹脂層を構成するポリプロピレン系樹脂(S)≫
ポリプロピレン系樹脂(S)としては、上述した樹脂粒子に用いられるポリプロピレン系樹脂として例示したポリプロピレン系樹脂を用いることができる。
ポリプロピレン系樹脂(S)としては、プロピレン系共重合体を好ましく用いることができ、好ましくはプロピレンとエチレンとの共重合体及びプロピレンとエチレンとブテンとの共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることができ、より好ましくはプロピレンとエチレンとブテンとの共重合体を用いることができる。
【0043】
-融点TmS-
樹脂層を構成するポリプロピレン系樹脂(S)の融点TmSは、後述する差TmS-TgPSが特定範囲となるような融点であると好ましい。得られる成形体の機械的強度を高めやすくなる観点から、好ましくは100℃以上、より好ましくは110℃以上、更に好ましくは120℃以上、より更に好ましくは130℃である。また、ポリプロピレン系樹脂(S)の融点TmSは、発泡粒子同士の融着性を高めやすくなる観点から、好ましくは150℃以下、より好ましくは145℃以下である。
樹脂層を構成するポリプロピレン系樹脂(S)の融点TmSは、ポリプロピレン系樹脂の融点TmPPと同様の方法により求めることができる。
【0044】
-差TmS-TgPS-
樹脂層を構成するポリプロピレン系樹脂(S)の融点TmSと、混合樹脂を形成するために用いられるポリスチレン系樹脂のガラス転移温度TgPSとの差TmS-TgPSは、機械的強度に優れると共に、寸法変化率の小さい発泡粒子成形体を安定して得られる発泡粒子を得やすい観点から、好ましくは15℃以上、より好ましくは18℃、更に好ましくは20℃である。また、差TmS-TgPSは、発泡粒子の融着性を向上させ、型内成形性を高める観点から、好ましくは45℃以下、より好ましくは40℃以下である。
【0045】
-差TmPP-TmS-
混合樹脂を形成するために用いられるポリプロピレン系樹脂の融点TmPPと、樹脂層を構成するポリプロピレン系樹脂(S)の融点TmSとの差TmPP-TmSは、発泡粒子の融着性を高め、発泡粒子の型内成形性を高める観点から、好ましくは5℃以上である。また、機械的強度に優れると共に、寸法変化率の小さい発泡粒子成形体を安定して得られる発泡粒子を得やすくなる観点から、差TmPP-TmSは、好ましくは35℃以下、より好ましくは30℃以下、更に好ましくは25℃以下である。
【0046】
≪樹脂粒子本体と樹脂層との質量比≫
樹脂粒子が表面に樹脂層を有する場合、混合樹脂を基材樹脂とする樹脂粒子本体と樹脂層との質量比(樹脂粒子本体:樹脂層)は、発泡粒子の融着性と、得られる成形体の物性とのバランスにより優れる観点から、好ましくは99.5:0.5~90:10であり、より好ましくは99:1~92:8であり、更に好ましくは98:2~94:6である。
【0047】
<工程(B):発泡性樹脂粒子の製造>
発泡性樹脂粒子は、発泡剤を樹脂粒子に含浸させることで得ることができる。例えば、オートクレーブ等の密閉可能であり加熱及び加圧に耐えられる密閉容器内に分散媒と樹脂粒子とを入れ、撹拌機等を用いて樹脂粒子を分散媒中に分散させると共に、密閉容器内に発泡剤を添加し、必要に応じて密閉容器を加熱及び/又は加圧して、保持することで、樹脂粒子に発泡剤を含浸させることができる。
【0048】
(分散媒)
分散媒は、樹脂粒子を溶解しない分散媒であれば、特に限定されず、例えば、水、エチレングリコール、グリセリン、メタノール、エタノール等のアルコールが挙げられ、中でも水が好ましい。
【0049】
(分散剤)
樹脂粒子同士の合着を防止するために、分散剤を分散媒に更に添加することが好ましい。分散剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース等の有機系分散剤;酸化アルミニウム、酸化亜鉛、カオリン、マイカ、リン酸マグネシウム、リン酸三カルシウム等の難溶性無機塩等が挙げられる。これらは、単独で又は2種類以上組み合わせて使用することができる。これらの中でも、取り扱いの容易さから、難溶性無機塩を用いることが好ましく、カオリンを用いることがより好ましい。分散剤を添加する場合、分散剤は、樹脂粒子100質量部に対して、0.001~5質量部程度添加することが好ましい。
【0050】
(界面活性剤)
分散媒には、界面活性剤を更に添加することもできる。界面活性剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、その他懸濁重合で一般的に使用されるアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等が挙げられる。界面活性剤を添加する場合、界面活性剤は、樹脂粒子100質量部に対して、0.001~1質量部程度添加することが好ましい。
【0051】
(発泡剤)
発泡剤は、樹脂粒子を発泡させることができるものであれば、特に限定されない。発泡剤としては、例えば、空気、窒素、二酸化炭素、アルゴン、ヘリウム、酸素、ネオン等の無機物理発泡剤、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ノルマルヘキサン等の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン、シクロペンタン等の脂環式炭化水素、エチルクロライド、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン等のハロゲン化炭化水素、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル等のジアルキルエーテル等の有機物理発泡剤等が挙げられる。これらの中でも、環境への負荷が少なく、かつ安価な無機物理発泡剤を用いることが好ましく、窒素、空気、二酸化炭素を用いることがより好ましく、二酸化炭素を用いることが特に好ましい。これらは、単独で又は2種類以上組み合わせて使用することができる。
【0052】
発泡剤の添加量は、所望の発泡粒子の嵩密度、ポリプロピレン系樹脂の種類、発泡剤の種類等を考慮して決定されるが、有機物理発泡剤を用いる場合、樹脂粒子100質量部に対して、好ましくは5~50質量部である。また、無機物理発泡剤を用いる場合、その添加量は、樹脂粒子100質量部に対して、好ましくは0.1~30質量部であり、より好ましくは0.5~15質量部である。
【0053】
<工程(C):発泡粒子の製造>
発泡粒子は、発泡性樹脂粒子を発泡させることで得ることができる。例えば、密閉容器内の分散媒中に分散させた上記発泡性樹脂粒子を、分散媒と共に、密閉容器内から密閉容器内の圧力よりも低い圧力の雰囲気下に放出することで、発泡性樹脂粒子を発泡させることができる。より具体的には、密閉容器内の圧力を発泡剤の蒸気圧以上の圧力に保持しながら、密閉容器内の水面下の一端を開放し、発泡性樹脂粒子を分散媒と共に密閉容器内から密閉容器内の圧力よりも低圧の雰囲気下、通常は大気圧下に放出し、発泡性樹脂粒子を発泡させることにより、発泡粒子を作製することができる。なお、樹脂粒子が樹脂層を有する場合には、少なくとも樹脂粒子本体を発泡させることにより、混合樹脂を基材樹脂とする発泡粒子本体と、発泡粒子本体を被覆する樹脂層とを有する多層構造の発泡粒子を得ることができる。
なお、工程(B)で得られた発泡性樹脂粒子を、温風、スチーム等の加熱媒体により加熱して発泡させることにより発泡粒子を作製することもできる。
【0054】
密閉容器内から密閉容器内の圧力よりも低い圧力の雰囲気下に発泡性樹脂粒子を放出して発泡させる場合、発泡時の温度は、好ましくは110℃~170℃であり、より好ましくは130℃~160℃である。また、密閉容器内の圧力は、好ましくは0.5MPa(G)~5MPa(G)であり、より好ましくは1MPa(G)~3MPa(G)である。なお、(G)を付した圧力は、ゲージ圧、つまり、大気圧を基準とした圧力の値である。
【0055】
[発泡粒子]
本発明の製造方法により製造される発泡粒子は、以下のような態様であることが好ましい。
ポリプロピレン系樹脂とポリスチレン系樹脂とを混練してなる混合樹脂を基材樹脂とする発泡粒子であって、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定される前記ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレイトMFRPPが4g/10min以上10g/10min以下であり、前記ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレイトMFRPPと、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定される前記ポリスチレン系樹脂のメルトフローレイトMFRPSとの差MFRPP-MFRPSが-3g/10min以上3g/10min以下であり、前記ポリプロピレン系樹脂と前記ポリスチレン系樹脂との質量比が60:40~90:10であり、前記混合樹脂におけるポリプロピレン系樹脂の融点TmPPMRが140℃以上であり、前記混合樹脂におけるポリプロピレン系樹脂の融点TmPPMRと、前記混合樹脂におけるポリスチレン系樹脂のガラス転移温度TgPSMRとの差TmPPMR-TgPSMRが35℃以上60℃以下であり、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定される前記発泡粒子のメルトフローレイトMFREPが5g/10min以上10g/10min以下であり、前記発泡粒子の嵩密度が10kg/m3以上200kg/m3以下であることが好ましい。
前記態様を満たす発泡粒子は、型内成形性に優れ、空気等による加圧処理を発泡粒子に行わなくとも、型内成形性が良好な発泡粒子となる。
【0056】
発泡粒子は、表面にポリプロピレン系樹脂(S)を基材樹脂とする樹脂層を有することが好ましい。表面にポリプロピレン系樹脂(S)を基材樹脂とする樹脂層を有する発泡粒子は、上述した、表面にポリプロピレン系樹脂(S)を基材樹脂とする樹脂層を有する樹脂粒子を用いて、上記工程(S)に記載の方法で発泡性樹脂粒子を作製し、上記工程(C)に記載の方法で該発泡性樹脂粒子を発泡させることにより、得ることができる。また、混合機能及び加熱機能を有する混合装置等に、発泡粒子本体と、樹脂層を構成するための材料とを入れ、加熱、混合すること等により、得ることもできる。
発泡粒子が表面に樹脂層を有する場合、混合樹脂を基材樹脂とする発泡粒子本体と樹脂層との質量比(発泡粒子本体:樹脂層)は、発泡粒子の融着性と、得られる成形体の物性とのバランスにより優れる観点から、好ましくは99.5:0.5~90:10であり、より好ましくは99:1~92:8であり、更に好ましくは98:2~94:6である。
【0057】
<発泡粒子の物性等>
(嵩密度)
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の嵩密度は、10kg/m3以上である。ポリプロピレン系発泡粒子の嵩密度が低すぎると、発泡粒子を型内成形してなる発泡粒子成形体の機械的強度が劣る傾向にある。発泡粒子成形体の機械的強度を高める観点から、ポリプロピレン系発泡粒子の嵩密度は、好ましくは15kg/m3以上、より好ましくは20kg/m3以上である。また、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の嵩密度は、200kg/m3以下である。ポリプロピレン系発泡粒子の嵩密度が高すぎると、発泡粒子成形体の軽量性に劣る傾向がある。発泡粒子成形体の軽量性を高める観点からは、ポリプロピレン系発泡粒子の嵩密度は、好ましくは100kg/m3以下、より好ましくは70kg/m3以下、更に好ましくは50kg/m3以下、より更に好ましくは35kg/m3以下である。
発泡粒子の嵩密度は、次のように求められる。まず、質量W1[g]の発泡粒子群をメスシリンダーに充填し、メスシリンダー底面で床面を数度、軽く叩くことにより、メスシリンダー内の発泡粒子群の充填高さを安定させる。次いで、メスシリンダーの目盛りが指す発泡粒子群の容積V1([L])を読み取る。発泡粒子群の質量W1を容積V1で除して(W1/V1)、単位を[kg/m3]に換算することにより、発泡粒子の嵩密度が求められる。
【0058】
(平均アスペクト比L/D)
発泡粒子の形状は、本発明の目的効果を阻害しなければ、特に限定されないが、例えば、略真球状であってもよく、略円柱状であってもよい。また、発泡粒子の平均アスペクト比L/Dは、成形型への充填性を高め、発泡粒子の型内成形性をより高める観点から、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.8以上、更に好ましくは0.9以上であり、そして、好ましくは1.3以下、より好ましくは1.2以下、更に好ましくは1.1以下である。
発泡粒子の形状が略円柱状である場合、発泡粒子の平均アスペクト比L/Dは、無作為に選択した30個の発泡粒子について、発泡粒子の軸方向(円柱の高さ方向)の最大長(発泡粒子の長径)(L)と、最大長の長さ方向と直交する方向における当該発泡粒子の断面の断面最大径(D)とを測定して、各発泡粒子の比(L/D)を算出し、その値を算術平均した値として求められる。
なお、発泡粒子が略真球状であること等により、発泡粒子の軸方向を判断することが難しい場合には、発泡粒子の最大長を発泡粒子の長径Lとする。
【0059】
(高温ピーク)
発泡粒子は、発泡粒子を加熱速度10℃/分で23℃から200℃まで加熱した際に得られるDSC曲線において、第一融解ピークと、該第一融解ピークよりも高温側に現れる第二融解ピーク(高温ピーク)とを有する融解ピークを示すことが好ましい。発泡粒子が前記DSC曲線において高温ピークを有することで、型内成形性を高めることができる。前記DSC曲線は、発泡粒子1~3mgを試験サンプルとして用いて、JIS K 7122:2012に準拠した示差走査熱量測定(DSC)を行うことにより得られる。
【0060】
加熱速度10℃/分で23℃から200℃まで加熱した際に得られるDSC曲線において、第一融解ピークと、該第一融解ピークよりも高温側に現れる第二融解ピーク(高温ピーク)とを有する融解ピークを示す発泡粒子は、例えば、次のようにして得られる。
まず、密閉容器内の分散媒中に分散させた樹脂粒子を、(混合樹脂を形成するために用いられるポリプロピレン系樹脂の融点-15℃)から(混合樹脂を形成するために用いられるポリプロピレン系樹脂の融解終了温度+10℃)の温度に加熱すると共に、この温度で十分な時間、好ましくは10~60分間程度保持する(保持工程)。次いで、この保持工程を経た樹脂粒子を発泡させることで上述の融解ピークを示す発泡粒子を得ることができる。上記保持工程は、上記工程(B)の一部として行うことができる。
発泡粒子の生産性を高める観点からは、発泡剤の存在下で、密閉容器内の分散媒中に分散させた樹脂粒子を加熱して上記保持工程を行った後、密閉容器の内容物を密閉容器内から低圧下に放出して発泡させることにより、上述の融解ピークを示す発泡粒子を得ることが好ましい。
【0061】
(高温ピークの融解熱量ΔH2)
発泡粒子の高温ピークの融解熱量ΔH2は、発泡粒子の機械的強度を高めると共に、型内成形性を高める観点から、好ましくは5J/g以上、より好ましくは7J/g以上である。また、同様の観点から、発泡粒子の高温ピークの融解熱量ΔH2は、好ましくは30J/g以下、より好ましくは20J/g以下、更に好ましくは16J/g以下である。
高温ピークの融解熱量ΔH2は、次のようにして求めることができる。まず、DSC曲線上の温度80℃での点をαとし、融解終了温度に相当するDSC曲線上の点をβとして、これらを結ぶ直線(α-β)を引く。次に樹脂固有ピーク(第一融解ピーク)と高温ピークとの間の谷部に当たるDSC曲線上の点γからグラフの縦軸と平行な直線を引き、前記直線(α-β)と交わる点をδとする。DSC曲線の高温ピーク部分の曲線と、線分(δ-β)と、線分(γ-δ)とによって囲まれる部分の面積を高温ピークの面積とし、この面積から高温ピークの融解熱量ΔH2を求めることができる。
【0062】
(全融解熱量ΔH)
発泡粒子の全融解熱量ΔHは、発泡粒子成形体の機械的強度を高める観点から、好ましくは25J/g以上、より好ましくは35J/g以上、更に好ましくは40J/g以上である。また、発泡粒子の全融解熱量ΔHは、発泡粒子の型内成形性を高める観点から、好ましくは120J/g以下、より好ましくは100J/g以下、更に好ましくは90J/g以下、より更に好ましくは80J/g以下である。
発泡粒子の全融解熱量ΔHは、発泡粒子の1回目の加熱時のDSC曲線において、点αと点βの区間におけるDSC曲線と、前記線分(α-β)とによって囲まれる部分の面積から求めることができる。
【0063】
(独立気泡率)
発泡粒子の独立気泡率は、発泡粒子の型内成形性を高める観点及び発泡粒子成形体の機械的強度を高める観点から、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは92%以上である。発泡粒子の独立気泡率は、ASTM-D2856-70の手順Cに基づき空気比較式比重計を用いて測定することができる。
【0064】
(メルトフローレイトMFREP)
温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定される、発泡粒子のメルトフローレイトMFREPは、5g/10min以上であることが好ましい。発泡粒子のメルトフローレイトMFREPが低すぎると、発泡粒子同士の融着性が低下しやすくなり、発泡粒子の型内成形性が低下する傾向にある。発泡粒子同士の融着性が良好で、型内成形性に優れる発泡粒子を安定して得ることができる観点から、発泡粒子のメルトフローレイトMFREPは、好ましくは6g/10min以上、より好ましくは7g/10min以上である。また、発泡粒子のメルトフローレイトMFREPは、10g/10min以下であることが好ましい。発泡粒子のメルトフローレイトMFREPが高すぎると、型内成形後の発泡粒子成形体が過度に収縮しやすくなり、発泡粒子の型内成形性が低下する傾向にある。型内成形後の発泡粒子成形体の収縮を抑制し、型内成形性に優れる発泡粒子を得る観点から、発泡粒子のメルトフローレイトMFREPは、好ましくは9g/10min以下、より好ましくは8g/10min以下である。
発泡粒子のメルトフローレイトMFREPは、発泡粒子を測定サンプルとして、JIS K 7210-1:2014に準拠し、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定される。なお、測定においては、混合樹脂の物性を大きく損なわない範囲で、必要に応じてヒートプレス等による脱泡処理を行った発泡粒子を、測定サンプルとして使用してもよい。
【0065】
(差TmS-TgPS)
発泡粒子が、表面にポリプロピレン系樹脂(S)を基材樹脂とする樹脂層を有する場合、樹脂層を構成するポリプロピレン系樹脂(S)の融点TmSと混合樹脂におけるポリスチレン系樹脂のガラス転移温度TgPSとの差TmS-TgPSは、機械的強度に優れる発泡粒子成形体を安定して得られる発泡粒子を得やすい観点から、好ましくは15℃以上、より好ましくは18℃、更に好ましくは20℃である。また、発泡粒子の融着性を向上させ、型内成形性を高める観点から、好ましくは45℃以下、より好ましくは40℃以下である。
【0066】
従来、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を型内成形することにより発泡粒子成形体を製造する際においては、嵩密度の低い発泡粒子(特に、嵩密度が30kg/m3以下の発泡粒子)を用いて成形を行う場合や、複雑な形状を有する成形型を用いて成形体を成形する場合等、良好な成形体を得にくい条件で成形を行う際には、空気等による加圧処理を発泡粒子に行い、発泡粒子の気泡内の圧力を高める等の前処理を行わないと、発泡粒子の型内成形性が低下し、良好な成形体を得ることが困難となる場合があった。一方で、本発明の製造方法により得られる発泡粒子や本発明の発泡粒子は、加圧処理を行なわなくても、発泡粒子同士の融着性が良好であると共に、型内成形後の発泡粒子成形体の過度な収縮を抑制でき、型内成形性に優れたものとなる。その結果として、生産性にも優れる発泡粒子となる。
【0067】
[発泡粒子成形体]
発泡粒子成形体は、本発明の製造方法により製造される発泡粒子を型内成形してなるものである。型内成形は、発泡粒子を成形型内に充填し、スチーム等の加熱媒体を用いて加熱成形することにより行うことができる。具体的には、発泡粒子を成形型内に充填した後、成形型内にスチーム等の加熱媒体を導入することにより、発泡粒子を加熱して膨張(二次発泡)させると共に、発泡粒子を相互に融着させて成形空間の形状が賦形された発泡粒子成形体を得ることができる。
本発明の発泡粒子は、型内成形性に優れるため、加圧処理を行なわなくても、良好な成形体を得ることができる。一方で、発泡粒子の型内成形性をより高めるために、例えば、発泡粒子を空気等の加圧気体により予め加圧処理して発泡粒子の気泡内の圧力を高めて、発泡粒子内の圧力を大気圧よりも0.01~0.3MPa高い圧力に調整した後、大気圧下又は減圧下で該発泡粒子を成形型内に充填し、次いで型内にスチーム等の加熱媒体を供給して発泡粒子を加熱融着させる加圧成形法(例えば、特公昭51-22951号公報)により成形してもよい。また、圧縮ガスにより大気圧以上に加圧した成形型内に、当該圧力以上に加圧した発泡粒子を充填した後、キャビティ内にスチーム等の加熱媒体を供給して加熱を行い、発泡粒子を加熱融着させる圧縮充填成形法(特公平4-46217号公報)により成形してもよい。その他に、特殊な条件にて得られる二次発泡力の高い発泡粒子を、大気圧下又は減圧下で成形型のキャビティ内に充填した後、次いでスチーム等の加熱媒体を供給して加熱を行い、発泡粒子を加熱融着させる常圧充填成形法(特公平6-49795号公報)又は上記の方法を組み合わせた方法(特公平6-22919号公報)などによって成形してもよい。
【0068】
<密度>
発泡粒子成形体の密度は、機械的強度を高める観点から、好ましくは10kg/m3以上、より好ましくは15kg/m3以上、更に好ましくは20kg/m3以上である。また、発泡粒子成形体の密度は、軽量性を高める観点から、好ましくは200kg/m3以下、より好ましくは100kg/m3以下、更に好ましくは50kg/m3以下、より更に好ましくは35kg/m3以下である。
発泡粒子成形体の密度は、発泡粒子成形体の質量[g]を成形体の外形寸法から求められる体積[L]で除し、単位換算することにより算出される。
【0069】
<50%圧縮応力>
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体の50%圧縮応力は、機械的強度を高める観点から、好ましくは50kPa以上、より好ましくは100kPa以上、更に好ましくは150kPa以上である。一方、発泡粒子成形体の50%圧縮応力の上限は、特に限定されないが、1MPa以下であり、好ましくは500kPa以下である。
発泡粒子成形体の50%圧縮応力は、JIS K 6767:1999に基づき測定される。
【0070】
<難燃性>
発泡粒子成形体は、FMVSS(Federal Motor Vehicle Safety Standard)No.302に規定された燃焼性試験を行った場合に、FMVSS No.302規格に適合することが好ましい。この規格を満たす発泡粒子成形体は、高い難燃性が求められる用途にも好適に使用でき、例えば自動車部材や建築部材等の用途に好適である。
より難燃性を高める観点からは、発泡粒子成形体は、上記燃焼性試験を行った場合の燃焼速度が、80mm/分以下であることが好ましく、40mm/分以下であることがより好ましく、0mm/分以下、つまり、記燃焼性試験を行った場合に発泡粒子成形体が自己消火性を示すことが更に好ましい。
【実施例0071】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの例によりなんら限定されるものではない。
【0072】
実施例及び比較例に使用した樹脂、発泡粒子及び発泡粒子成形体について、以下の測定又は評価を行った。なお、発泡粒子の物性測定は、50%RH、23℃、1atmの条件にて24時間静置して状態調節した発泡粒子を用いて行った。また、発泡粒子成形体の物性測定及び評価は、離型後の発泡粒子成形体を50%RH、80℃、1atmの条件にて12時間静置して状態調節した成形体を用いて行った。
【0073】
[測定方法]
<ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、及び混合樹脂>
(融点)
ポリプロピレン系樹脂の融点TmPPは、JIS K 7121:2012に基づいて測定した。試験片の状態調節として「(2)一定の熱処理を行なった後、融解温度を測定する場合」を採用した。具体的には、23℃、50%RHで24時間以上状態調節した約5mgの樹脂を試験片とし、該試験片を、熱流束示差走査熱量測定装置(株式会社島津製作所製、型番:DSC-60A)を用いて、10℃/分の加熱速度で30℃から200℃まで加熱し、次に10℃/分の冷却速度で200℃から30℃まで冷却し、再度10℃/minの加熱速度で30℃から200℃まで加熱することによりDSC曲線を取得し、該DSC曲線上の樹脂の融解に伴う融解ピークの頂点温度として求めた。ポリプロピレン系樹脂において、DSC曲線に複数の融解ピークが現れる場合は、最も大きな面積を有する融解ピークの頂点温度を、ポリプロピレン系樹脂の融点として採用した。
また、混合樹脂におけるポリプロピレン系樹脂の融点TmPPMRは、発泡粒子を試験片として用いて、上述した測定を行って求めた。なお、発泡粒子が樹脂層を有する場合は、発泡粒子から、発泡粒子の表層部を除く部分(樹脂層を含まない部分)を試験片として切り出し、この試験片を用いて上述した測定を行った。
【0074】
(ポリプロピレン系樹脂の全融解熱量)
ポリプロピレン系樹脂の全融解熱量は、ポリプロピレン系樹脂に対して、JIS K 7122:2012に準拠した示差走査熱量測定(DSC)を行うことにより得られるDSC曲線から求めた。具体的には、まず、上記した融点の測定と同様にして、ポリプロピレン系樹脂の2回目加熱時のDSC曲線を得た。得られた2回目加熱時のDSC曲線上の温度80℃での点をαとし、融解終了温度に相当するDSC曲線上の点をβとした。点αと点βの区間におけるDSC曲線と、線分(α-β)とによって囲まれる部分の面積からポリプロピレン系樹脂の全融解熱量を算出した。
【0075】
(メルトフローレイト)
ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、樹脂粒子及び発泡粒子のメルトフローレイトは、JIS K 7210-1:2014に準拠し、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定した。
なお、実施例及び比較例において、樹脂粒子及び発泡粒子が樹脂層を有する場合には、後述する樹脂粒子本体形成用押出機のみを用い、表面に樹脂層を形成せずに樹脂粒子を得たこと、また、この樹脂粒子を用いたこと以外は、対応する実施例及び比較例と同じ条件で樹脂粒子及び発泡粒子を得て、樹脂層を有しない、これらの樹脂粒子及び発泡粒子を用いて、上記測定を行った。また、脱泡処理を行った発泡粒子を測定サンプルとして用いて、発泡粒子のメルトフローレイトの測定を行った。
【0076】
(曲げ弾性率)
ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、及び混合樹脂の曲げ弾性率は、JIS K 7171:2016に準拠して測定した。まず、前記樹脂あるいは樹脂粒子を230℃でヒートプレスして厚さ4mmのシートを作製し、該シートから長さ80mm×幅10mm×厚さ4mm(標準試験片)を切り出した。この試験片を用いると共に、圧子の半径R1及び支持台の半径R2は共に5mm、支点間距離は64mmとし、試験速度は2mm/minとして、曲げ試験を行った。
なお、実施例及び比較例において、樹脂粒子が樹脂層を有する場合には、後述する樹脂粒子本体形成用押出機のみを用い、表面に樹脂層を形成せずに樹脂粒子を得たこと以外は、対応する実施例及び比較例と同じ条件で樹脂粒子を得て、この樹脂層を有しない樹脂粒子を用いて試験片を作製して上記測定を行うことで、混合樹脂の曲げ弾性率を求めた。
【0077】
(ガラス転移温度)
ポリスチレン系樹脂のガラス転移温度TgPSは、JIS K 7121:2012により熱流束示差走査熱量測定にて得られるDSC曲線の中間点ガラス転移温度として求めた。ガラス転移温度の測定においては、JIS K 7121:2012の「3.試験片の状態調節(3)」に記載の『一定の熱処理を行った後、ガラス転移温度を測定する場合』に準拠し、試験片約5mgをDSC装置の容器に入れ、200℃まで10℃/分の加熱速度で加熱溶解させ、直ちに0℃まで10℃/分の冷却速度で冷却して状態調整を行い、ガラス転移温度の測定を行った。
また、混合樹脂におけるポリスチレン系樹脂のガラス転移温度TgPSMRは、発泡粒子を試験片として用いて、上述した測定を行って求めた。なお、発泡粒子が樹脂層を有する場合は、発泡粒子から、発泡粒子の表層部を除く部分(樹脂層を含まない部分)を試験片として切り出し、この試験片を用いて上述した測定を行った。
【0078】
(重量平均分子量及び数平均分子量)
ポリスチレン系樹脂の重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnは、ポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により求めた。
具体的には、ポリスチレン系樹脂10mgをテトラヒドロフラン(THF)10mLに溶解させ、GPC法により測定し、ポリスチレンを標準物質とした相対平均分子量を算出した。GPC分析条件の詳細は以下の通りである。
・使用機器: 株式会社ジーエルサイエンス製GPC仕様高速液体クロマトグラフ
・カラム: 昭和電工株式会社製カラム、商品名Shodex GPC KF-806、同KF-805、同KF-803をこの順に直列に連結して使用
・カラム温度:40℃
・溶媒:THF
・流速:1.0mL/分
・濃度:0.15w/v%
・注入量:0.2mL
・検出器:株式会社ジーエルサイエンス製紫外可視検出器、商品名UV702型(測定波長254nm)
【0079】
<樹脂粒子及び発泡粒子>
(混合樹脂のモルフォロジー)
樹脂粒子(樹脂粒子本体)の混合樹脂のモルフォロジーを電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)にて確認した。具体的には、まず、樹脂粒子を切り出し、樹脂粒子中心部付近において、樹脂粒子の押出方向に沿った断面を露出させた観察用サンプルを作製した。なお、この際、クライオミクロトームを用い、雰囲気温度-120℃で、観察用サンプルにおける樹脂粒子の押出方向に沿った断面を平滑に切り出した。次いで、四酸化ルテニウム蒸気を断面に15分間暴露させ、電子染色を行った後、オスミウムコーターにより、断面の導電処理を行った。その後、FE-SEM(株式会社日立ハイテク製SU8220)により、倍率5000倍における断面のSEM写真を撮影した。SEM写真から、混合樹脂におけるポリプロピレン系樹脂の相とポリスチレン系樹脂の相のモルフォロジーを目視にて観察した。
【0080】
(平均アスペクト比L/D)
樹脂粒子及び発泡粒子の平均アスペクト比L/Dは、無作為に選択した30個の粒子について、最大長(L)と最大長の長さ方向と直交する方向における当該粒子の断面の断面最大径(D)を測定して、比(L/D)を算出し、その値を算術平均した値として求めた。
【0081】
(嵩密度)
発泡粒子の嵩密度は、以下のように求めた。まず、質量W1[g]の発泡粒子群をメスシリンダーに充填し、メスシリンダー底面で床面を数度、軽く叩くことにより、メスシリンダー内の発泡粒子群の充填高さを安定させた。次いで、メスシリンダーの目盛りが指す発泡粒子群の容積V1[L]を読み取った。発泡粒子群の質量W1[g]を容積V1[L]で除して(W1/V1)、単位を[kg/m3]に換算することにより、発泡粒子の嵩密度を求めた。
【0082】
(高温ピークの融解熱量ΔH2及び全融解熱量ΔH)
発泡粒子の高温ピークの融解熱量ΔH2は、以下のように求めた。まず、発泡粒子群から約2mg分の発泡粒子を採取した。この発泡粒子を試験片として用い、試験片を示差熱走査熱量計(具体的には、株式会社島津製作所製、型番:DSC-60A)によって23℃から200℃まで加熱速度10℃/分で加熱したときのDSC曲線を得た。なお、発泡粒子が樹脂層を有する場合は、発泡粒子から、発泡粒子の表層部を除く部分(樹脂層を含まない部分)を試験片として切り出し、この試験片を用いて上記測定を行った。得られたDSC曲線は、第一融解ピークと、該第一融解ピークよりも高温側に現れる第二融解ピーク(高温ピーク)とを有していた。DSC曲線上における温度80℃での点αと、発泡粒子の融解終了温度Tでの点βとを結び線分L1を引いた。次に、上記の第一融解ピークと第二融解ピーク(高温ピーク)との間の谷部に当たるDSC曲線上の点γからグラフの縦軸と平行な直線L2を引き、直線L1と直線L2との交わる点をδとした。高温ピークの融解熱量ΔH2を、高温ピークを示すDSC曲線と、線分(δ-β)と、線分(γ-δ)とによって囲まれる部分の面積から算出した。上記測定を5個の発泡粒子について行い、得られた値を算術平均した値を高温ピークの融解熱量ΔH2とした。
また、点αと点βの区間におけるDSC曲線と、線分L1とによって囲まれる部分の面積から、各発泡粒子の全融解熱量を求めた。上記測定を5個の発泡粒子について行い、得られた値を算術平均した値を発泡粒子の全融解熱量ΔHとした。
発泡粒子における融解ピークの融解熱量の算出にあたっては、
図1に例示されるDSC曲線を参照することができる。
【0083】
(独立気泡率)
発泡粒子の独立気泡率は、ASTM-D2856-70の手順Cに基づき空気比較式比重計を用いて測定した。具体的には、まず、状態調節後の嵩体積約20cm3の発泡粒子を測定用サンプルとし、発泡粒子の質量Wと、発泡粒子をメスシリンダー中のエタノールに沈めた際の水位上昇分から測定される、発泡粒子の見掛けの体積Vaを測定した。次に、見掛けの体積Vaを測定した発泡粒子を十分に乾燥させた後、ASTM-D2856-70に記載されている手順Cに準じ、株式会社島津製作所社製アキュピックII1340を用いて、発泡粒子の真の体積の値Vxを測定した。そして、これらの体積値Va及びVxを基に、下記の式(I)により独立気泡率を計算し、サンプル5個(N=5)の平均値を発泡粒子の独立気泡率とした。
独立気泡率(%)=(Vx-W/ρ)×100/(Va-W/ρ)・・・(I)
ただし、
Vx:上記方法で測定される発泡粒子の真の体積、即ち、発泡粒子を構成する樹脂の容積と、発泡粒子内の独立気泡部分の気泡全容積との和(単位:cm3)
Va:発泡粒子を、メスシリンダー中のエタノールに沈めた際の水位上昇分から測定される発泡粒子の見掛けの体積(単位:cm3)
W:発泡粒子の質量(単位:g)
ρ:発泡粒子を構成する樹脂の密度(単位:g/cm3)
【0084】
<発泡粒子成形体>
(成形体密度)
発泡粒子成形体の密度は、発泡粒子成形体の質量を、成形体寸法に基づいて算出される体積で除することにより3つの試験片の密度を算出して、その算術平均値として求めた。
【0085】
(50%圧縮応力)
発泡粒子成形体の50%圧縮応力は、以下のように求めた。
後述する方法により得られた縦400mm×横250mm×厚さ60mmの発泡粒子成形体からスキン層を除いて、縦50mm×横50mm×厚み25mmの直方体状となるように試験片を切り出した。この試験片に対し、株式会社エー・アンド・デイ製のRTF‐1350を用いて、JIS K 6767:1999に基づいて、10mm/分の速度で圧縮した際の50%ひずみ時の荷重を求め、これを試験片の受圧面積で除して算出することにより、50%圧縮応力[kPa]を求めた。
【0086】
(難燃性)
発泡粒子成形体の難燃性は、FMVSS(Federal Motor Vehicle Safety Standards)No.302の規定に準じた方法により燃焼性試験を行った。
まず、発泡粒子成形体から縦356mm×横102mm×厚さ13mmの平板状の試験片を切り出し、試験片を5つ準備した。次に、FMVSS No.302に準拠した燃焼性試験機(スガ試験機株式会社製「MVSS-2」)の取り付け具に試験片の縦方向の一端を取り付け、試験片を水平に保持した。この試験片の縦方向の他端、つまり、取り付け具により保持されていない端部の下方にバーナーの炎を15秒間あてた後、バーナーの炎を試験片から外した。なお、バーナーの炎の高さは38mmとし、バーナーの先端から試験片の下面までの距離は19mmとした。そして、試験片から生じた炎が、試験片の開放端(つまり、試験片の縦方向における、取り付け具により保持されていない端部)からの距離が38mmである位置に到達した時点で燃焼時間の計測を開始した。試験片から生じた炎が、試験片の固定端(つまり、試験片の縦方向における、クランプ等により保持されている端部)からの距離が38mmである位置に到達した場合には、炎が当該位置に到達した時点で燃焼時間の計測を完了した。また、試験片の燃焼が、試験片の固定端からの距離が38mmである位置に到達する前に終了した場合には、燃焼が終了した時点で燃焼時間の計測を完了した。なお、試験片の固定端からの距離が38mmである位置に到達する前に試験片の燃焼が終了した場合には、当該試験片の燃焼時間が0秒であるとして取り扱った。
以上の試験を5個の試験片を用いて行い、これらの試験結果に基づいて難燃性(燃焼速度)の評価を行った。
燃焼速度は、5個の試験片に対して行った燃焼性試験における試験片の燃焼速度を相加平均した値である。評価に用いる燃焼速度を算出するに当たり、燃焼性試験において自己消火性を示した試験片については、当該試験片の燃焼速度が0mm/分であるとして取り扱った。なお、自己消火性を示さない試験片の燃焼速度は、下記式(II)により算出した。
B=60×D/T (II)
ただし、上記式(II)における記号Bは燃焼速度(単位:mm/分)を意味し、記号Dは炎が進行した距離(単位:mm)を意味し、記号Tは炎がD(単位:mm)進行するために要した時間(単位:秒)を意味する。
【0087】
[評価方法]
<成形可能な成形圧の範囲>
発泡粒子の成形性について、以下の評価を行った。後述する発泡粒子成形体の作製において、成形圧(スチーム圧)0.32~0.40MPa(G)の範囲で、成形圧を0.01MPa(G)刻みで変更して発泡粒子成形体の成形を行った。下記の融着性、外観、及び回復性のすべての評価に合格する発泡粒子成形体を得ることができた成形圧の範囲を、成形可能な成形圧の範囲とした。なお、成形圧により成形温度が調節されるため、成形可能な成形圧の下限値から上限値までの幅が広いものほど、成形可能な成形加熱温度の範囲が広いことを意味する。
【0088】
(融着性)
発泡粒子成形体の融着性は、以下の方法により評価した。板状の成形体を折り曲げて破断させ、破断面に存在する発泡粒子の数(C1)と破壊した発泡粒子の数(C2)とを求めた。上記発泡粒子に対する破壊した発泡粒子の比率(C2/C1×100)を材料破壊率として算出し、その値が60%以上であった場合を合格とした。
【0089】
(外観(間隙の度合い))
発泡粒子成形体の縦400mm×横250mmの面の中央部付近に100mm×100mmの矩形を描き、矩形状のエリアの角から対角線上に線を引き、その線上の1mm×1mmの大きさ以上のボイド(間隙)の数を数えた。間隙の数が、5個未満である場合を合格とした。
【0090】
(回復性)
発泡粒子成形体の表面を観察し、発泡粒子にしわが生じていないか確認した。また、発泡粒子成形体の中央部分及び四隅部分の厚みをそれぞれ測定し、四隅部分のうち最も厚みが厚い部分に対する中央部分の厚みの比を算出した。発泡粒子成形体の表面に位置する発泡粒子にしわが散見されないと共に、厚み比が95%以上の場合を合格とした。
【0091】
<金型寸法に対する発泡粒子成形体寸法の変化率>
最も低い成形圧力で成形された発泡粒子成形体に対して、養生後の発泡粒子成形体の縦方向の寸法(LB)を測定した。成形型の縦方向の寸法(LA)に対する、成形型の縦方向の寸法と発泡粒子成形体の縦方向の寸法との差の比率([LA-LB]/LA×100)を算出し、金型寸法に対する発泡粒子成形体の寸法変化率とした。
なお、上記寸法変化率は、値が小さいほど成形体の収縮が少なく、成形型の寸法に近い良好な成形体が得られていることを意味する。上記寸法変化率は、3.0%以下であることが好ましく、2.5%以下であることがより好ましい。
【0092】
[原料]
実施例及び比較例に用いたポリプロピレン系樹脂及びポリスチレン系樹脂を、それぞれ表1及び表2に示す。なお、表1中のPP1~PP4はプロピレン-エチレンランダム共重合体であり、PP5、PP6はプロピレン-エチレン-ブテンランダム共重合体である。また、表2中のPS3は、ポリスチレン系樹脂押出発泡体の粉砕物を押出機で溶融混練した後、ペレット化することにより製造されたリサイクル原料である。
【0093】
【0094】
【0095】
実施例1、5、6、9及び10、並びに比較例1~3、6及び7
<樹脂粒子の調製>
内径50mmの樹脂粒子本体形成用押出機、該樹脂粒子本体形成用押出機の下流側に付設された多層ストランド形成用ダイ及び内径30mmの樹脂層形成用押出機を備える製造装置を準備した。なお、製造装置は、樹脂層形成用押出機の下流側と、多層ストランド形成用ダイとが接続されており、ダイ内で混合樹脂溶融物の表面に樹脂層形成用溶融物の積層が可能であると共に、共押出が可能な構成とした。
表3に記載のポリプロピレン系樹脂と、ポリスチレン系樹脂と、相溶化剤としてのスチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体(SEBS)(旭化成株式会社製タフテックH1043、ポリプロピレン系樹脂とポリスチレン系樹脂との合計100質量部に対して5質量部)と、気泡調整剤としてのホウ酸亜鉛(混合樹脂100重量部に対して0.1重量部)と、カーボンブラック(具体的には、ファーネスブラック、混合樹脂100質量部に対して2.7質量部)と、難燃剤としての臭素化スチレン-ブタジエン共重合体(ケムチュラ社製Emerald3000、混合樹脂100質量部に対して0.8質量部)を樹脂粒子本体形成用押出機に供給し、溶融混練した。
また、表1に記載のポリプロピレン系樹脂(PP5)と、カーボンブラック(具体的には、ファーネスブラック、樹脂層を形成するためのポリプロピレン系樹脂100質量部に対して2.7質量部)とを樹脂層形成用押出機に供給して溶融混練した。
上述のとおり溶融混練して得られた混合樹脂溶融物及び樹脂層形成用溶融物を、複数のストランド形成用孔を有する多層ストランド形成用ダイ(ストランド形成用孔径:3mm)に導入してダイ内で合流させ、表面に樹脂層を有し、2層(芯鞘)構造である多層ストランドを押出した(吐出量:150kg/h、ストランド引取速度:71m/min)。押出されたストランドを水冷し、ペレタイザーにて切断し、1個当たりの平均質量が2mgの円柱状の樹脂粒子(樹脂粒子本体と樹脂層との質量比は、樹脂粒子本体:樹脂層=95:5)を得た。樹脂粒子の直径Dは1.1mmであり、樹脂粒子の押出方向における長さLは2.5mmであり、平均アスペクト比L/Dは2.3であった。
また、上述した方法で、実施例の樹脂粒子のモルフォロジーを観察したところ、ポリプロピレン系樹脂により形成される連続相中に、ポリスチレン系樹脂により構成される分散相が分散したモルフォロジーが形成されており、樹脂粒子の押出方向に沿った樹脂粒子断面において、ポリスチレン系樹脂により構成される分散相が筋状に分散していた。実施例1の樹脂粒子の押出方向に沿った断面写真を
図2に示す。なお、写真中、白い部分がポリスチレン系樹脂である。
<発泡粒子の調製>
得られた樹脂粒子1kgを、水性分散媒である水3Lと共に、内容量5Lの密閉容器内に供給した。また、樹脂粒子100質量部に対して、無機分散剤としてカオリン0.3質量部、界面活性剤(商品名:ネオゲン、第一工業製薬株式会社製、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)0.004質量部(有効成分として)をそれぞれ密閉容器内に添加した。
次いで、密閉容器内に発泡剤として二酸化炭素を圧入し、ゲージ圧で2.0MPa(G)となるまで加圧した。尚、(G)を付した圧力は、ゲージ圧、つまり、大気圧を基準とした圧力の値である。その後、密閉容器内を撹拌しながら2℃/分の加熱速度で、発泡温度(158.0℃)になるまで加熱昇温し、同温度で15分間保持した。これにより、得られる発泡粒子のDSC測定による吸熱曲線に高温ピークが現れるよう調整した。
その後、密閉容器の内容物(樹脂粒子及び水)を大気圧下に放出して、嵩密度60kg/m
3の発泡粒子(一段発泡粒子)を得た。なお、上述する工程と同様の工程を数サイクル繰り返して、上述した評価に供する発泡粒子を確保した。
上述のとおり得た一段発泡粒子を気温23℃、相対湿度50%、1atmの環境に24時間放置して養生を行った。そして加圧可能な密閉容器に養生後の一段発泡粒子を充填し、当該密閉容器内の圧力を常圧から上昇させて発泡粒子を加圧した。発泡粒子を加圧した状態を所定時間維持して空気を発泡粒子の気泡内に含浸させた。その後、密閉容器から一段発泡粒子を取り出し、発泡粒子の気泡の内圧が0.5MPa(G)である一段発泡粒子を得た。その後、この一段発泡粒子を二段発泡装置に供給した。該装置内にスチームを供給して一段発泡粒子を発泡させて、嵩密度26kg/m
3の発泡粒子を得た。なお、発泡粒子における、発泡粒子本体と樹脂層との質量比は、発泡粒子本体:樹脂層=95:5である。二段発泡により得られた当該発泡粒子を、上述した測定や発泡粒子成形体の製造等に用いた。測定結果を表3又は表4に示す。
【0096】
<発泡粒子成形体の製造(無加圧成形)>
得られた発泡粒子を、縦400mm×横250mm×厚さ60mmの板状の成形体を成形可能な成形キャビティを有する金型内に充填して以下の加熱方法で加熱を行った。加熱方法は、金型の両面に設けられたドレン弁を開放した状態で当該金型にスチームを供給して予備加熱(排気工程)を行った。その後、金型の一方側からスチームを供給して加熱し、さらに金型の他方側からスチームを供給して加熱を行った。続いて、所定の成形加熱スチーム圧力で、金型の両側からスチームを供給して加熱した(本加熱)。本加熱終了後、放圧し、金型の成形面に生じる圧力が0.04MPa(G)になるまで水冷したのち、金型を開放し発泡粒子成形体を取り出した。得られた発泡粒子成形体を80℃のオーブンにて12時間養生した後、室温まで徐冷して上記板状の形状を有する発泡粒子成形体を得た。該発泡粒子成形体について、上述した評価を行った。その結果を表3又は表4に示す。なお、比較例では、融着性、外観、及び回復性のすべての評価に合格する成形体を成形することができなかったため、成形体密度、50%圧縮応力、燃焼性の測定を行わなかった。
また、実施例1において、最低成形圧力(0.38MPa)で成形した際に得られた成形体の融着率は80%であった。
【0097】
実施例2
樹脂粒子本体形成用押出機のみを用いて、表面に樹脂層を形成せずに樹脂粒子を得たこと以外は、実施例1と同様にして、発泡粒子及び発泡粒子成形体を得た。
実施例2において、最低成形圧力(0.38MPa)で成形した際に得られた成形体の融着率は60%であった。
【0098】
実施例3
樹脂層を形成する樹脂を、PP6に変更した以外は、実施例1と同様に発泡粒子及び発泡粒子成形体を得た。
【0099】
実施例4
難燃剤を、ヒンダードアミン系難燃剤(商品名:NОR116、BASF社製)に変更した以外は、実施例1と同様に発泡粒子及び発泡粒子成形体を得た。
【0100】
実施例7、8
表2に記載のポリプロピレン系樹脂及びポリスチレン系樹脂を用いると共に、発泡温度を149.5℃としたこと以外は実施例1と同様にして、発泡粒子、発泡粒子成形体の作製を行った。
【0101】
比較例4
表2に記載のポリプロピレン系樹脂及びポリスチレン系樹脂を用いると共に、発泡温度を143.0℃としたこと以外は実施例1と同様にして、発泡粒子、発泡粒子成形体の作製を行った。
【0102】
比較例5
樹脂粒子本体形成用押出機のみを用いて、表面に樹脂層を形成せずに樹脂粒子を得たこと以外は比較例4と同様にして、発泡粒子及び発泡粒子成形体を得た。
【0103】
実施例11
嵩密度が18kg/m3の発泡粒子を作製したこと以外は実施例1と同様にして、発泡粒子、発泡粒子成形体の作製を行った。
【0104】
実施例12
嵩密度が18kg/m3の発泡粒子を作製したこと以外は実施例7と同様にして、発泡粒子、発泡粒子成形体の作製を行った。
【0105】
【0106】
【0107】
表3からわかるように、本発明の発泡粒子によれば、発泡粒子に加圧処理を行なわなくても、成形可能な成形圧力の範囲が広い。したがって、本発明の発泡粒子によれば、発泡粒子成形体の製造効率を向上できる。
表4からわかるように、差MFRPP-MFRPSが過度に大きい比較例1は、発泡粒子の独立気泡率が低かった。また、二次発泡性が低下する傾向にあり、良好な成形体を成形可能な成形圧の範囲がなかった。差TmPP-TgPS及び差MFRPP-MFRPSが過度に大きい比較例2は、成形体の外観が良好になるまで成形圧を高めて成形すると、型内成形直後の成形体が過度に収縮して、成形体の中央部が大きくヒケてしまい、良好な成形体を成形可能な成形圧の範囲がなかった。MFRPPが低く、かつ差MFRPP-MFRPSが大きい比較例3は、二次発泡性が低下し、その結果として、発泡粒子の外観性が劣り、良好な成形体を成形可能な成形圧の範囲がなかった。ポリプロピレン系樹脂の融点TmPPが低く、かつ差TmPP-TgPSが小さい比較例4、5は、成形体の外観が良好になるまで成形圧を高めて成形すると、型内成形直後に、成形体の中央部が大きくヒケてしまい、良好な成形体を成形可能な成形圧の範囲がなかった。ポリスチレン系樹脂の含有量が少ない比較例6は、成形体の外観が良好になるまで成形圧を高めて成形すると、型内成形直後の成形体の中央部にヒケが発生し、良好な成形体を成形可能な成形圧の範囲がなかった。ポリスチレン系樹脂の含有量が多い比較例7は、融着性に劣り、成形体を成形可能な成形圧の範囲がなかった。