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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127955
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】車両用冷却システム
(51)【国際特許分類】
   F01P 3/12 20060101AFI20230907BHJP
   F01P 3/20 20060101ALI20230907BHJP
   F01P 3/18 20060101ALI20230907BHJP
   B60K 11/02 20060101ALI20230907BHJP
   F28F 9/02 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
F01P3/12
F01P3/20 B
F01P3/18 V
B60K11/02
F28F9/02 301D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022031954
(22)【出願日】2022-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三島 惇
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼畑 学之
(72)【発明者】
【氏名】小林 充
【テーマコード(参考)】
3D038
【Fターム(参考)】
3D038AA06
3D038AB01
3D038AC12
3D038AC22
(57)【要約】
【課題】2系統の冷却系補機部品を1系統分にしつつ、高温冷却系から低温冷却系への高温冷却水の流入を最小限にすることができる車両用冷却システムを提供すること。
【解決手段】第1冷却水循環回路21を循環する冷却水と第2冷却水循環回路23を循環する冷却水とを仕切るように、上流側タンク51には第1仕切板51Cが設けられ、下流側タンク52には第2仕切板52Cが設けられている。第1冷却水循環回路21には、冷却水を貯留するデガスタンク56が設けられている。コア部53の複数のチューブ54の内、第1冷却水循環回路21と第2冷却水循環回路23との境界に位置する一部のチューブ54は、その上流側端部が第2冷却水循環回路23に接続されており、その下流側端部が第1冷却水循環回路21に接続されている。第2冷却水循環回路23とデガスタンク56とに連通する分岐回路58を備えている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流側タンクと、下流側タンクと、前記上流側タンクと前記下流側タンクとを接続するコア部と、を有する1つのラジエータと、
エンジンと前記ラジエータとの間で冷却水が循環する第1冷却水循環回路と、
前記第1冷却水循環回路を循環する冷却水の最高温度よりも許容温度が低い電気機器と前記ラジエータとの間で冷却水が循環する第2冷却水循環回路と、を備え、
1つの前記ラジエータにより、前記第1冷却水循環回路を循環する冷却水と前記第2冷却水循環回路を循環する冷却水とを冷却する車両用冷却システムであって、
前記上流側タンクには、前記第1冷却水循環回路を循環する冷却水と前記第2冷却水循環回路を循環する冷却水とを仕切る第1仕切板が設けられ、
前記下流側タンクには、前記第1冷却水循環回路を循環する冷却水と前記第2冷却水循環回路を循環する冷却水とを仕切る第2仕切板が設けられ、
前記第1冷却水循環回路には、冷却水を貯留するデガスタンクが設けられ、
前記コア部は、前記上流側タンクから前記下流側タンクへ冷却水が流れる複数のチューブを有し、
複数の前記チューブの内、前記第1冷却水循環回路と前記第2冷却水循環回路との境界に位置する一部の前記チューブは、その上流側端部が前記第2冷却水循環回路に接続されており、その下流側端部が前記第1冷却水循環回路に接続されており、
前記第2冷却水循環回路と前記デガスタンクとに連通する分岐回路を備えることを特徴とする車両用冷却システム。
【請求項2】
前記分岐回路は、前記デガスタンク内に貯留される冷却水の液面よりも上方の位置において前記デガスタンクに接続されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用冷却システム。
【請求項3】
前記分岐回路と前記デガスタンクとの接続部に弁が備えられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用冷却システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、内燃機関を冷却する第1冷却水循環通路と、電動機を冷却する第2冷却水循環通路と、コア部と第1冷却水循環通路と第2冷却水循環通路とを連通する第1のタンクと第1冷却水循環通路と第2冷却水循環通路とを分ける第2のタンクを有するラジエータと、を備えたハイブリッド車用動力冷却装置が記載されている。また、引用文献1には、第1のタンクの内部に、第1冷却水循環通路と第2冷却水循環通路とを連通する連通部を除いて第1冷却水循環通路と第2冷却水循環通路とを仕切る半仕切板を設ける点が記載されている。
【0003】
特許文献1に記載のものは、ラジエータタンクの共通化をはかることと、リザーブタンクを共通化しても内燃機関側冷却水の電動機側冷却系統への流入を抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-266855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術にあっては、高温冷却系を構成する第1冷却水循環通路から低温冷却系を構成する第2冷却水循環通路への、高温冷却水の流入を十分に抑えることができず、高温冷却水の流入を最小限にすることが求められていた。
【0006】
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたものであり、2系統の冷却系補機部品を1系統分にしつつ、高温冷却系から低温冷却系への高温冷却水の流入を最小限にすることができる車両用冷却システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上流側タンクと、下流側タンクと、前記上流側タンクと前記下流側タンクとを接続するコア部と、を有する1つのラジエータと、エンジンと前記ラジエータとの間で冷却水が循環する第1冷却水循環回路と、前記第1冷却水循環回路を循環する冷却水の最高温度よりも許容温度が低い電気機器と前記ラジエータとの間で冷却水が循環する第2冷却水循環回路と、を備え、1つの前記ラジエータにより、前記第1冷却水循環回路を循環する冷却水と前記第2冷却水循環回路を循環する冷却水とを冷却する車両用冷却システムであって、前記上流側タンクには、前記第1冷却水循環回路を循環する冷却水と前記第2冷却水循環回路を循環する冷却水とを仕切る第1仕切板が設けられ、前記下流側タンクには、前記第1冷却水循環回路を循環する冷却水と前記第2冷却水循環回路を循環する冷却水とを仕切る第2仕切板が設けられ、前記第1冷却水循環回路には、冷却水を貯留するデガスタンクが設けられ、前記コア部は、前記上流側タンクから前記下流側タンクへ冷却水が流れる複数のチューブを有し、複数の前記チューブの内、前記第1冷却水循環回路と前記第2冷却水循環回路との境界に位置する一部の前記チューブは、その上流側端部が前記第2冷却水循環回路に接続されており、その下流側端部が前記第1冷却水循環回路に接続されており、前記第2冷却水循環回路と前記デガスタンクとに連通する分岐回路を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
このように上記の本発明によれば、2系統の冷却系補機部品を1系統分にしつつ、高温冷却系から低温冷却系への高温冷却水の流入を最小限にすることができる車両用冷却システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の一実施例に係る車両用冷却システムを備える車両の構成図である。
図2図2は、本発明の一実施例に係る車両用冷却システムの構成図である。
図3図3は、本発明の一実施例に係る車両用冷却システムのエンジンおよび電動ウォータポンプの作動時の冷却水の流れを示す図である。
図4図4は、本発明の一実施例に係る車両用冷却システムの冷却水の補充作業時の冷却水の流れを示す図である。
図5図5は、本発明の一実施例に係る車両用冷却システムのエア抜き作業時のエアの流れを示す図である。
図6図6は、本発明の一実施例に係る車両用冷却システムの冷却水の抜き取り作業時の冷却水の流れを示す図である。
図7図7は、本発明の一実施例に係る車両用冷却システムの分岐回路とデガスタンクとの接続部に弁を設けた場合の冷却水の補充作業時の冷却水の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施の形態に係る車両用冷却システムは、上流側タンクと、下流側タンクと、上流側タンクと下流側タンクとを接続するコア部と、を有する1つのラジエータと、エンジンとラジエータとの間で冷却水が循環する第1冷却水循環回路と、第1冷却水循環回路を循環する冷却水の最高温度よりも許容温度が低い電気機器とラジエータとの間で冷却水が循環する第2冷却水循環回路と、を備え、1つのラジエータにより、第1冷却水循環回路を循環する冷却水と第2冷却水循環回路を循環する冷却水とを冷却する車両用冷却システムであって、上流側タンクには、第1冷却水循環回路を循環する冷却水と第2冷却水循環回路を循環する冷却水とを仕切る第1仕切板が設けられ、下流側タンクには、第1冷却水循環回路を循環する冷却水と第2冷却水循環回路を循環する冷却水とを仕切る第2仕切板が設けられ、第1冷却水循環回路には、冷却水を貯留するデガスタンクが設けられ、コア部は、上流側タンクから下流側タンクへ冷却水が流れる複数のチューブを有し、複数のチューブの内、第1冷却水循環回路と第2冷却水循環回路との境界に位置する一部のチューブは、その上流側端部が第2冷却水循環回路に接続されており、その下流側端部が第1冷却水循環回路に接続されており、第2冷却水循環回路とデガスタンクとに連通する分岐回路を備えることを特徴とする。これにより、本発明の一実施の形態に係る車両用冷却システムは、2系統の冷却系補機部品を1系統分にしつつ、高温冷却系から低温冷却系への高温冷却水の流入を最小限にすることができる。
【実施例0011】
以下、本発明の一実施例に係る車両用冷却システムについて図面を用いて説明する。図1から図7は、本発明の一実施例に係る車両用冷却システムを示す図である。
【0012】
まず、構成を説明する。図1において、車両1は、エンジン(図中、ENGと記す)2と、トランスミッション(図中、T/Mと記す)3と、電動機(図中、MGUと記す)4と、を備えている。
【0013】
エンジン2は、ガソリンまたはディーゼル燃料を用いる内燃機関型のエンジンであり、走行用の駆動力(エンジントルク)を発生する。エンジン2の内部には冷却水が流通する図示しないウォータジャケットが設けられている。
【0014】
トランスミッション3は、エンジン2に連結されており、エンジン2の発生する駆動力(エンジントルク)が伝達される。トランスミッション3は、図示しない変速機構を備えており、エンジン2から伝達された回転を変速機構によって変速し、図示しない駆動輪に伝達する。
【0015】
電動機4は、インバータ5を介して図示しないバッテリと電気的に接続されている。電動機4は、トランスミッション3における変速機構の後段の部分に内蔵されている。電動機4の発生する走行用の駆動力(モータトルク)は、トランスミッション3の変速機構を介さずに駆動輪に伝達される。
【0016】
電動機4にはオイルクーラ(図中、O/Cと記す)4Aが設けられており、オイルクーラ4Aは、電動機4の内部を流通するオイルを、冷却水との熱交換により冷却する。
【0017】
車両1は、1つのラジエータ50を備えている。ラジエータ50は、走行風との熱交換により冷却水を冷却する。ラジエータ50は、エンジン2から取り込んだ相対的に高温の冷却水を冷却する高温部50Hと、オイルクーラ4Aから取り込んだ相対的に低温の冷却水を冷却する低温部50Lと、を備えている。
【0018】
車両1は第1冷却水循環回路21を備えている。第1冷却水循環回路21は、エンジン2とラジエータ50とを接続しており、エンジン2とラジエータ50との間で冷却水を循環させる。ラジエータ50は、第1冷却水循環回路21を循環する冷却水を冷却する。
【0019】
第1冷却水循環回路21は、エンジン2からラジエータ50に冷却水を送る送り通路21Aを備えており、送り通路21Aはラジエータ50の上流側タンク51に接続されている。
【0020】
第1冷却水循環回路21は、ラジエータ50により冷却された冷却水をエンジン2に戻す戻し通路21Bを備えており、戻し通路21Bはラジエータ50の下流側タンク52に接続されている。
【0021】
車両1は、機械式のウォータポンプ(図中、WPと記す)32を備えている。ウォータポンプ32は、戻し通路21Bのエンジン2側の端部に設けられており、エンジン2によって駆動されることで、戻し通路21Bから吸引した冷却水をエンジン2に送る。
【0022】
エンジン2と送り通路21Aの間にはサーモスタット33が設けられている。サーモスタット33は、冷却水の温度が所定温度より低いときは閉弁し、第1冷却水循環回路21における冷却水の循環を阻止する。サーモスタット33は、冷却水の温度が所定温度より高くなると開弁し、第1冷却水循環回路21における冷却水の循環を許容する。すなわち、サーモスタット33が開弁している時は、ウォータポンプ32によってエンジン2に送られた冷却水は、エンジン2を冷却した後にエンジン2から排出される。そして、冷却水は、送り通路21Aを通ってラジエータ50に導入され、ラジエータ50において冷却された後、戻し通路21Bを通ってウォータポンプ32に戻される。
【0023】
車両1は補機用冷却水循環回路22を備えている。エンジン2には補機用冷却水循環回路22を介してヒータコア31およびEGRクーラ30が接続されている。ヒータコア31はエンジン2から導入された高温の冷却水との熱交換により、図示しない車室を暖房する。EGRクーラ30は、エンジン2から排出された排気ガスを冷却水との熱交換により冷却する。EGRクーラ30により冷却された排気ガスはエンジン2の吸気経路に送られる。
【0024】
補機用冷却水循環回路22は、エンジン2からヒータコア31に冷却水を送る送り通路22Aと、エンジン2からEGRクーラ30に冷却水を送る送り通路22Bと、ヒータコア31およびEGRクーラ30から冷却水をエンジン2に戻す戻し通路22Cとを有している。戻し通路22Cは、ヒータコア31からの冷却水とEGRクーラ30からの冷却水とを合流させるように集合している。送り通路22A、22Bの上流端は、サーモスタット33を介せずにエンジン2に接続されている。戻し通路22Cの下流端は、ウォータポンプ32の吸引側に接続されている。したがって、エンジン2の運転中は、サーモスタット33の閉弁または開弁に関わらず、補機用冷却水循環回路22を冷却水が常に循環する。
【0025】
車両1は、第2冷却水循環回路23を備えている。オイルクーラ4Aは、第2冷却水循環回路23を介してラジエータ50に接続されている。ラジエータ50は、第2冷却水循環回路23を循環する冷却水を冷却する。
【0026】
第2冷却水循環回路23は、オイルクーラ4Aからラジエータ50に冷却水を送る送り通路23Aと、ラジエータ50からオイルクーラ4Aに冷却水を戻す戻し通路23Bとを有している。戻し通路23Bには、電気により作動する電動ウォータポンプ(図中、EWPと記す)37と、インバータ(図中、INVと記す)5とが設けられている。第2冷却水循環回路23を循環する冷却水は、オイルクーラ4Aのオイルとインバータ5とを冷却する。
【0027】
したがって、第2冷却水循環回路23は、オイルクーラ4Aおよびインバータ5と、ラジエータ50との間で冷却水が循環する。オイルクーラ4Aおよびインバータ5は、第1冷却水循環回路21を循環する冷却水の最高温度よりも許容温度が低い電気機器である。
【0028】
ラジエータ50には、第1冷却水循環回路21のラジエータ50への入口51Aと、第2冷却水循環回路23のラジエータ50への入口51Bとが形成されている。ラジエータ50には、第1冷却水循環回路21に対するラジエータ50の出口52Aと、第2冷却水循環回路23に対するラジエータ50の出口52Bとが形成されている。
【0029】
図2において、ラジエータ50は、冷却水が入る上流側タンク51と、冷却水が出る下流側タンク52と、上流側タンク51と下流側タンク52とを接続するコア部53と、を有する。上流側タンク51および下流側タンク52は、冷却水を一時的に貯留するようになっており、コア部53の一端側と他端側にそれぞれ接続されている。コア部53は、走行風との熱交換により冷却水を冷却する。
【0030】
上流側タンク51には、第1冷却水循環回路21のラジエータ50への入口51Aと、第2冷却水循環回路23のラジエータ50への入口51Bとが形成されている。下流側タンク52には、第1冷却水循環回路21に対するラジエータ50の出口52Aと、第2冷却水循環回路23に対するラジエータ50の出口52Bとが形成されている。
【0031】
上流側タンク51には、第1冷却水循環回路21を循環する冷却水と第2冷却水循環回路23を循環する冷却水とを仕切る第1仕切板51Cが設けられている。上流側タンク51には、第1仕切板51Cが設けられることにより、第1冷却水循環回路21を循環する冷却水が一時的に貯留される高温側空間51Hと、第2冷却水循環回路23を循環する冷却水が一時的に貯留される低温側空間51Lとが形成されている。
【0032】
下流側タンク52には、第1冷却水循環回路21を循環する冷却水と第2冷却水循環回路23を循環する冷却水とを仕切る第2仕切板52Cが設けられている。下流側タンク52には、第2仕切板52Cが設けられることにより、第1冷却水循環回路21を循環する冷却水が一時的に貯留される高温側空間52Hと、第2冷却水循環回路23を循環する冷却水が一時的に貯留される低温側空間52Lとが形成されている。第2仕切板52Cは、上下方向において第1仕切板51Cよりも下方に設けられている。
【0033】
下流側タンク52の低温側空間52Lの底部には、開閉可能なドレインコック57が設けられている。冷却水の抜き取り作業時は、このドレインコック57を開くことにより、冷却水をドレインコック57から排出することができる。
【0034】
コア部53は、上流側タンク51から下流側タンク52へ冷却水が流れる複数のチューブ54を有している。複数のチューブ54は、概ね水平に、かつ互いに平行に配置されている。チューブ54の表面には、走行風との接触面積を大きくするためのフィン53Aが設けられている。
【0035】
ラジエータ50内の高温側空間51H、52Hおよびこれらに連通するチューブ54は、ラジエータ50の高温部50Hを構成している。また、高温部50Hは、第1冷却水循環回路21の一部を構成している。ラジエータ50内の低温側空間51L、52Lおよびこれらに連通するチューブ54は、ラジエータ50の低温部50Lを構成している。また、低温部50Lは、第2冷却水循環回路23の一部を構成している。
【0036】
ラジエータ50の高温部50Hには、1つのデガスタンク56が接続されている。つまり、デガスタンク56は第1冷却水循環回路21に設けられている。デガスタンク56は、補充用の冷却水を貯留する。また、デガスタンク56は、冷却水から気体(冷却水に混入したエア)を分離する。デガスタンク56の底部の側面には送り通路21Aが接続されている。デガスタンク56は、エンジン2に連通する送り通路21Aおよび戻し通路21Bに接続されている。デガスタンク56における送り通路21Aとの接続部よりも高い位置には、戻し通路21Bが接続されている。このように、デガスタンク56に対する送り通路21Aの接続部56Bよりも、デガスタンク56に対する戻し通路21Bの接続部56Aの方が、高い位置に設けられている。
【0037】
このように、本実施例では、1つのラジエータ50が第1冷却水循環回路21を循環する冷却水と第2冷却水循環回路23を循環する冷却水とを冷却する。このため、冷却用補機部品であるラジエータ50を、第1冷却水循環回路21と第2冷却水循環回路23とで共用することができるので、2系統の冷却系補機部品を1系統分にすることができる。また、エンジン2から排出された相対的に高温の冷却水と、オイルクーラ4Aおよびインバータ5から排出された相対的に低温の冷却水とを、1つのラジエータ50を用いて冷却水することができ、構造を簡単で小型にすることができる。
【0038】
また、上流側タンク51が第1冷却水循環回路21と第2冷却水循環回路23とを仕切る第1仕切板51Cを備えているため、第1冷却水循環回路21を循環する高温冷却水と第2冷却水循環回路23を循環する低温冷却水とが混ざることを抑制することができる。下流側タンク52が第1冷却水循環回路21と第2冷却水循環回路23とを仕切る第2仕切板52Cを備えているため、第1冷却水循環回路21を循環する高温冷却水と第2冷却水循環回路23を循環する低温冷却水とが混ざることを抑制することができる。
【0039】
ここで、仮に、第1冷却水循環回路21と第2冷却水循環回路23とが完全に遮断されている場合、デガスタンク56から第2冷却水循環回路23に冷却水を補充することができないため、第1冷却水循環回路21に設けられたデガスタンク56とは別に、第2冷却水循環回路23にもデガスタンクが必要になってしまう。第2冷却水循環回路23にもデガスタンクを設けた場合、構造が複雑で大型なものになってしまう。
【0040】
そこで、本実施例では、第2冷却水循環回路23とデガスタンク56とに連通する分岐回路58が設けられている。分岐回路58は、電動ウォータポンプ37に連通する戻し通路23Bに接続されている。分岐回路58を設けたことにより、デガスタンク56から第2冷却水循環回路23に冷却水を補充することができる。したがって、冷却用補機部品であるデガスタンク56を、第1冷却水循環回路21と第2冷却水循環回路23とで共用することができるので、2系統の冷却系補機部品を1系統分にすることができる。デガスタンク56に対する分岐回路58の接続部56Cは、送り通路21Aの接続部56Bおよび戻し通路21Bの接続部56Aよりも高い位置に設けられている。したがって、分岐回路58は、デガスタンク56内に貯留される冷却水の液面よりも上方の位置においてデガスタンク56に接続されている。
【0041】
また、本実施例では、コア部53の複数のチューブ54の内、第1冷却水循環回路21と第2冷却水循環回路23との境界に位置する一部のチューブ54は、第2冷却水循環回路23と第1冷却水循環回路21とを連通する連通チューブ54Rを構成している。つまり、既存の複数のチューブ54のうちの一部(本実施例では、1本)のチューブを連通チューブ54Rとして機能させている。連通チューブ54Rの上流側端部(上流側タンク51側の端部)は、上流側タンク51の第2冷却水循環回路23側(低温側空間51L)に接続されている。連通チューブ54Rの下流側端部(下流側タンク52側の端部)は、下流側タンク52の第1冷却水循環回路21側(高温側空間51H)に接続されている。これにより、上流側タンク51の低温側空間51Lと、下流側タンク52の高温側空間51Hとの間で、冷却水の一部が連通チューブ54Rを通って相互に流通することができる。
【0042】
ここで、エンジン運転時の連通チューブ54R内の冷却水の流れ方向は、第1冷却水循環回路21内の圧力と第2冷却水循環回路23内の圧力との差圧に応じて異なる。第1冷却水循環回路21内の圧力が第2冷却水循環回路23内の圧力よりも高い場合、高温冷却系(高温側空間51H)の冷却水の一部が低温冷却系(低温側空間51L)へ流入することになる。しかし、連通チューブ54Rは、複数のチューブ54の内の一部(本実施例では1本)のチューブ54であることから、連通チューブ54Rを通過する冷却水の量は最小限である。また、第1冷却水循環回路21内の圧力と第2冷却水循環回路23内の圧力との差圧によっては、高温冷却系から低温冷却系へ高温冷却水が流入しない。このため、高温冷却系から低温冷却系への高温冷却水の流入を最小限にすることができる。
【0043】
図3を参照し、エンジン2および電動ウォータポンプ37の作動時の冷却水の流れについて説明する。図3において、実線の矢印は、第1冷却水循環回路21における冷却水の流れを示し、破線の矢印は、第2冷却水循環回路23における冷却水の流れを示している。
【0044】
図3に示すように、エンジン2および電動ウォータポンプ37の作動時は、第1冷却水循環回路21において、冷却水は、ウォータポンプ32の働きにより、ラジエータ50の高温部50Hとエンジン2との間で送り通路21Aおよび戻し通路21Bを通って循環する。また、冷却水は、ラジエータ50とデガスタンク56との間で送り通路21Aおよび戻し通路21Bを通って循環する。
【0045】
また、エンジン2および電動ウォータポンプ37の作動時は、第2冷却水循環回路23において、冷却水は、電動ウォータポンプ37の働きにより、ラジエータ50の低温部50Lとオイルクーラ4Aおよびインバータ5との間で送り通路23Aおよび戻し通路23Bを通って循環する。また、戻し通路23Bを通る冷却水の一部は、分岐回路58に流入する。
【0046】
また、第1冷却水循環回路21内の圧力と第2冷却水循環回路23内の圧力との差圧に応じて、上流側タンク51の低温側空間51Lと、下流側タンク52の高温側空間51Hとの間で、冷却水の一部が連通チューブ54Rを通って相互に流通する。
【0047】
分岐回路58は、デガスタンク56内に貯留される冷却水の液面よりも上方の位置においてデガスタンク56に接続されている。詳しくは、デガスタンク56に対する分岐回路58の接続部56Cの位置を基準として、デガスタンク56内に貯留される冷却水の液面の位置を液面位置Hとし、分岐回路58内の冷却水の液面の位置を液面位置hとした場合、液面位置Hと液面位置hとは概ね同位置となる。デガスタンク56の液面位置Hよりも低い位置に、送り通路21Aの接続部56Bおよび戻し通路21Bの接続部56Aが配置されている。また、デガスタンク56の液面位置Hよりも高い位置に、分岐回路58の接続部56Cが配置されている。このため、エンジン2の運転時に、分岐回路58からデガスタンク56へ冷却水が逆流することを防止することができる。また、エンジン運転時に、デガスタンク56から分岐回路58へ冷却水が流入するのを防止することができる。なお、液面位置Hと液面位置hとは、静的状態では等しくなるが、動的状態では異なる。液面位置Hおよび液面位置hは、十分に余裕を持った値に設定されている。
【0048】
図4を参照し、冷却水補充作業時の冷却水の流れについて説明する。図4において、実線の矢印は、第1冷却水循環回路21および第2冷却水循環回路23における冷却水の流れを示している。
【0049】
図4に示すように、デガスタンク56を介してラジエータ50に冷却水を補充する時は、デガスタンク56に補充された冷却水は、デガスタンク56から送り通路21Aを通って第1冷却水循環回路21に供給される。第1冷却水循環回路21に供給された冷却水は、エアを押し出しながら戻し通路21Bを通ってデガスタンク56に戻る。第1冷却水循環回路21に供給された冷却水は、連通チューブ54Rを通って第2冷却水循環回路23にも供給される。第2冷却水循環回路23に供給された冷却水は、エアを押し出しながら第2冷却水循環回路23を循環する。なお、冷却水補充作業は、エンジン2および電動ウォータポンプ37の停止状態で行われるが、サーモスタット33は僅かに開いているため、冷却水はウォータポンプ32および電動ウォータポンプ37のインペラの隙間を通って流れることができる。
【0050】
図5を参照し、エア抜き作業時のエアの流れについて説明する。図5において、一点鎖線の矢印は、第1冷却水循環回路21および第2冷却水循環回路23におけるエアの流れを示している。なお、エア抜き作業は、冷却水補充作業とは別に行われる。
【0051】
図5に示すように、ラジエータ50内のエアを抜く時は、第2冷却水循環回路23内のエアが連通チューブ54Rを通って第1冷却水循環回路21内に移動する。そして、第1冷却水循環回路21内に移動したエアはデガスタンク56内に移動する。第2冷却水循環回路23内のエアは、分岐回路58を通ってデガスタンク56に移動する。なお、エア抜き作業は、エンジン2および電動ウォータポンプ37の作動状態で行われる。サーモスタット33は、エンジン2の運転開始時でも僅かに開いており、エンジン2の運転時間が長くなると次第に開いていく。また、エア抜き作業時の冷却水の流れ方向は、エアの流れ方向と同じである。
【0052】
図6を参照し、冷却水抜き取り作業時の冷却水の流れについて説明する。図6において、実線の矢印は、第1冷却水循環回路21および第2冷却水循環回路23における冷却水の流れを示している。
【0053】
図6に示すように、ラジエータ50内の冷却水を抜く時は、ドレインコック57が開かれる。これにより、第2冷却水循環回路23内の冷却水はドレインコック57を通ってラジエータ50の外部に排出される。また、第1冷却水循環回路21内の冷却水は、連通チューブ54Rを通って第2冷却水循環回路23内に移動し、ドレインコック57を通ってラジエータ50の外部に排出される。なお、冷却水抜き取り作業は、エンジン2および電動ウォータポンプ37の停止状態で行われるが、サーモスタット33は僅かに開いているため、冷却水はウォータポンプ32および電動ウォータポンプ37のインペラの隙間を通って流れることができる。戻し通路23B等を含む全ての通路は、実際にはドレインコック57よりも上方に配置されているため、戻し通路23B等に冷却水が残ることはない。
【0054】
図7を参照し、分岐回路58とデガスタンク56との接続部56Cに弁59を設けた場合の冷却水補充作業時の冷却水の流れについて説明する。図7において、実線の矢印は、第1冷却水循環回路21および第2冷却水循環回路23における冷却水の流れを示している。
【0055】
図7に示すように、分岐回路58とデガスタンク56との接続部56Cに弁59を設けるようにしてもよい。弁59は、デガスタンク56を介してラジエータ50に冷却水を補充する場合に開かれ、その他の場合は閉じた状態にされる。接続部56Cはデガスタンク56の側面の下部に配置されている。
【0056】
デガスタンク56を介してラジエータ50に冷却水を補充する時は、デガスタンク56に補充された冷却水は、デガスタンク56から送り通路21Aを通って第1冷却水循環回路21に供給される。そして、第1冷却水循環回路21に供給された冷却水は、エアを押し出しながら戻し通路21Bを通ってデガスタンク56に戻る。第1冷却水循環回路21に供給された冷却水は、連通チューブ54Rを通って第2冷却水循環回路23にも供給される。第2冷却水循環回路23に供給された冷却水は、エアを押し出しながら第2冷却水循環回路23を循環する。なお、冷却水補充作業は、エンジン2および電動ウォータポンプ37の停止状態で行われるが、サーモスタット33は僅かに開いているため、冷却水はウォータポンプ32および電動ウォータポンプ37のインペラの隙間を通って流れることができる。また、冷却水補充作業時は弁59が開かれるため、デガスタンク56に補充された冷却水は、デガスタンク56から分岐回路58を通って第2冷却水循環回路23に供給される。なお、デガスタンク56の側面の下部に接続部56Cを配置した上で弁59を設ける構成に限定されず、図2のようにデガスタンク56の側面の上部に接続部56Cを配置した構成において、図7のように弁59を設けるようにしてもよい。
【0057】
以上説明したように、本実施例の車両用冷却システムにおいて、上流側タンク51には、第1冷却水循環回路21を循環する冷却水と第2冷却水循環回路23を循環する冷却水とを仕切る第1仕切板51Cが設けられ、下流側タンク52には、第1冷却水循環回路21を循環する冷却水と第2冷却水循環回路23を循環する冷却水とを仕切る第2仕切板52Cが設けられている。また、第1冷却水循環回路21には、冷却水を貯留するデガスタンク56が設けられている。
【0058】
また、コア部53は、上流側タンク51から下流側タンク52へ冷却水が流れる複数のチューブ54を有し、複数のチューブ54の内、第1冷却水循環回路21と第2冷却水循環回路23との境界に位置する一部のチューブ54は、その上流側端部が第2冷却水循環回路23に接続されており、その下流側端部が第1冷却水循環回路21に接続されている。また、第2冷却水循環回路23とデガスタンク56とに連通する分岐回路58を備えている。
【0059】
これにより、第2冷却水循環回路23の冷却水の一部が連通チューブ54Rを通ってデガスタンク56を循環することができる。したがって、冷却用補機部品であるラジエータ50とデガスタンク56とを、第1冷却水循環回路21と第2冷却水循環回路23とで共用することができるので、2系統の冷却系補機部品を1系統分にすることができる。
【0060】
また、連通チューブ54Rは、複数のチューブ54の内の一部のチューブ54であり、第1冷却水循環回路21内の圧力と第2冷却水循環回路23内の圧力との差圧によっては、高温冷却系から低温冷却系へ高温冷却水が流入しないので、高温冷却系から低温冷却系への高温冷却水の流入を最小限にすることができる。
【0061】
この結果、2系統の冷却系補機部品を1系統分にしつつ、高温冷却系から低温冷却系への高温冷却水の流入を最小限にすることができる。
【0062】
また、本実施例の車両用冷却システムにおいて、分岐回路58は、デガスタンク56内に貯留される冷却水の液面よりも上方の位置においてデガスタンク56に接続されている。
【0063】
これにより、エンジン2の運転時に、分岐回路58からデガスタンク56へ冷却水が逆流することを防止することができる。また、エンジン運転時に、デガスタンク56から分岐回路58へ冷却水が流入するのを防止することができる。
【0064】
また、本実施例の車両用冷却システムにおいて、分岐回路58とデガスタンク56との接続部56Cに弁59が備えられている。
【0065】
このため、弁59を閉じておくことにより、エンジン2の運転時に分岐回路58からデガスタンク56へ冷却水が逆流することを防止することができる。また、弁59を閉じておくことにより、エンジン2の運転時に、デガスタンク56から分岐回路58へ冷却水が流入することを防止することができる。
【0066】
また、デガスタンク56内に貯留される冷却水の液面が上昇した場合や、デガスタンク56内に貯留される冷却水の液面よりも上方に分岐回路58を接続することが困難な場合であっても、弁59を閉じておくことにより、冷却水の逆流を防止することができる。
【0067】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0068】
21...第1冷却水循環回路、23...第2冷却水循環回路、50...ラジエータ、51...上流側タンク、51C...第1仕切板、52...下流側タンク、52C...第2仕切板、53...コア部、54...チューブ、54R...連通チューブ、56...デガスタンク、58...分岐回路、59...弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7