(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127962
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】解析方法、解析システムおよびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 30/20 20200101AFI20230907BHJP
【FI】
G06F30/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022031963
(22)【出願日】2022-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000166948
【氏名又は名称】シチズンファインデバイス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】山口 和晃
【テーマコード(参考)】
5B146
【Fターム(参考)】
5B146AA07
5B146DJ02
5B146DJ05
5B146DJ11
5B146EC04
(57)【要約】
【課題】部材の破壊が生じ得る動作に関して、破壊の影響を反映させた解析を実現する。
【解決手段】コンピュータを用いたCAE(Computer-Aided Engineering)により解析対象物の動作を解析する解析方法において、相互の部材に圧力がかかる状態で動作する第1部材10および第2部材20を含む解析対象物の解析モデルを生成し、この第1部材10および第2部材20の動作に応じた加工解析用のツールを用い、モデルに基づく解析対象物の動作をシミュレーションし、少なくとも一つの部材の破壊を含む解析対象物の状態を解析する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータにより解析対象物の動作を解析する解析方法において、
相互の部材に圧力がかかる状態で動作する複数の部材を含む解析対象物のモデルを生成し、
前記複数の部材の動作に応じた加工解析用のツールを用い、前記モデルに基づく前記解析対象物の動作をシミュレーションし、少なくとも一つの部材の破壊を含む当該解析対象物の状態を解析することを特徴とする、解析方法。
【請求項2】
前記部材の破壊は、一の部材による他の部材の切削であり、当該一の部材を切削加工における工具に見立てたモデルを生成し、
切削加工解析用のツールを用いて、前記解析対象物の動作をシミュレーションすることを特徴とする、請求項1に記載の解析方法。
【請求項3】
前記モデルは、前記工具に見立てる前記一の部材が、当該工具の刃の部位を除く一部を省略して構成されることを特徴とする、請求項2に記載の解析方法。
【請求項4】
前記加工解析用のツールを用いた解析の後、当該解析により得られる前記部材の破壊を反映させたモデルに基づき、前記解析対象物の動作および解析目的に応じたツールを用いて当該解析対象物の状態をさらに解析することを特徴とする、請求項1に記載の解析方法。
【請求項5】
前記部材の破壊は、一の部材による他の部材の切削であり、
前記部材の破壊を反映させたモデルは、切削により生じた部材の切り屑形状や温度分布に関する情報を含むモデルであることを特徴とする、請求項4に記載の解析方法。
【請求項6】
モデルの生成に要する情報の入力を受け付け、相互の部材に圧力がかかる状態で動作する複数の部材のモデルを生成する生成手段と、
前記複数の部材による前記動作をシミュレーションし、少なくとも一つの部材の破壊を含む当該複数の部材の状態を解析する解析手段と、
を備えることを特徴とする、解析システム。
【請求項7】
コンピュータに、
モデルの生成に要する情報の入力を受け付け、相互の部材に圧力がかかる状態で動作する複数の部材のモデルを生成する処理と、
前記複数の部材による前記動作をシミュレーションし、少なくとも一つの部材の破壊を含む当該複数の部材の状態を解析する処理と、
を実行させることを特徴とする、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、解析方法、解析システムおよびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
製造物の設計や加工方法を検討する際に予めCAE(Computer-Aided Engineering)によりシミュレーションや数値解析を実施することが従来から行われている。CAEは、通常、目的の解析の種類に応じて用意された専用のソフトウェアを用いて実行される。
【0003】
特許文献1には、CAEにより、射出成形時に生じる反り変形を解析する成形シミュレーション、成形シミュレーションの結果により得られた翼形状を基に遠心力、熱変形による変位、応力を解析する構造解析シミュレーション、構造解析シミュレーションによって得られた翼形状を空間側から解析する流体解析シミュレーションを個別に順次行うことが開示されている。
【0004】
特許文献2には、異なる故障モードおよび側面を評価するために、異なる数学的分析方法を使用し、異なるデータから成る、システムの異なるモデルを必要とし、各故障モードに対するCAEモデルが、その故障モード専用に構築されることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-353501号公報
【特許文献2】特表2015-533244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
圧力をかけた状態で部材どうしを擦り合わせる動作を考える。そのような動作の一例としては、一の部材の孔に他の部材を圧入する動作が挙げられる。このような動作において部材の状態を解析する場合、例えば、各部材に生じる応力や変形を推定する構造解析が行われる。しかしながら、部材の破壊を伴う場合、CAEによる解析において破壊の影響を反映させることが困難な場合があった。
【0007】
本発明は、部材の破壊が生じ得る動作に関して、破壊の影響を反映させた解析を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成する本発明は、コンピュータにより解析対象物の動作を解析する解析方法において、相互の部材に圧力がかかる状態で動作する複数の部材を含む解析対象物のモデルを生成し、この複数の部材の動作に応じた加工解析用のツールを用い、モデルに基づく解析対象物の動作をシミュレーションし、少なくとも一つの部材の破壊を含む解析対象物の状態を解析することを特徴とする、解析方法である。
ここで、部材の破壊は、一の部材による他の部材の切削であり、一の部材を切削加工における工具に見立てたモデルを生成し、切削加工解析用のツールを用いて、解析対象物の動作をシミュレーションすることとしても良い。
また、このモデルは、工具に見立てる一の部材が、工具の刃の部位を除く一部を省略して構成しても良い。
さらに好ましくは、加工解析用のツールを用いた解析の後、この解析により得られる部材の破壊を反映させたモデルに基づき、解析対象物の動作および解析目的に応じたツールを用いて解析対象物の状態をさらに解析しても良い。
ここで、部材の破壊は、一の部材による他の部材の切削であり、部材の破壊を反映させたモデルは、切削により生じた部材の切り屑形状や温度分布に関する情報を含むモデルとしても良い。
上記の目的を達成する他の本発明は、モデルの生成に要する情報の入力を受け付け、相互の部材に圧力がかかる状態で動作する複数の部材のモデルを生成する生成手段と、複数の部材による動作をシミュレーションし、少なくとも一つの部材の破壊を含む複数の部材の状態を解析する解析手段と、を備えることを特徴とする、解析システムである。
さらに、上記の目的を達成する他の本発明は、コンピュータに、モデルの生成に要する情報の入力を受け付け、相互の部材に圧力がかかる状態で動作する複数の部材のモデルを生成する処理と、複数の部材による動作をシミュレーションし、少なくとも一つの部材の破壊を含む複数の部材の状態を解析する処理と、を実行させることを特徴とする、プログラムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、部材の破壊が生じ得る動作に関して、破壊の影響を反映させた解析を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態によるCAEのデータ処理を実行する解析システムの構成例を示す図である。
【
図2】処理装置のハードウェア構成例を示す図である。
【
図3】本実施形態における解析対象物の構成例を示す図である。
【
図4】
図3に示した解析対象物において、第1部材に第2部材を挿入する際の初期状態を示す図である。
【
図5】
図3に示した解析対象物において、第1部材に第2部材を挿入する動作が完了した状態を示す図である。
【
図6】
図3に示した解析対象物において、第1部材に第2部材を挿入する動作の途中の状態を示す図である。
【
図7】
図3乃至
図6を参照して説明した部材の圧入に対して行った切削加工解析の解析結果の例を示す図である。
【
図8】
図3乃至
図6を参照して説明した部材の圧入に対して行った他の態様による切削加工解析の解析結果の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0012】
<システム構成>
図1は、本実施形態によるCAEのデータ処理を実行する解析システムの構成例を示す図である。この解析システムは、処理装置100と、入力装置200と、出力装置300とを備える。処理装置100は、CAEにおけるシミュレーションや各種の処理を実行する装置である。処理装置100としては、例えば、パーソナルコンピュータ等のコンピュータ装置が用いられる。処理装置100は、CAEにおける処理機能として、前処理部110、解析部120、後処理部130を備える。
【0013】
前処理部110は、プリプロセッサ(preprocessor)である。前処理部110は、解析対象物のCAD(Computer Aided Design)データを読み込み、読み込んだCADデータにより示される解析対象物に対するメッシュの作成、材料物性や境界条件の設定等、各種の解析条件の入力を行い、解析に必要なデータを含む解析対象物のモデル(以下、「解析モデル」と呼ぶ)を生成する。なお、CADデータを読み込むのではなく、各種のパラメータを入力することによって解析モデルを構築しても良い。
【0014】
解析部120は、ソルバー(solver)である。解析部120は、前処理部110により作成された解析モデルを用いてシミュレーションを実行し、解析対象物の状態を解析(計算)する。解析部120は、解析目的に応じて種々の解析を実行し得る。解析の種類については後述する。
【0015】
後処理部130は、ポストプロセッサ(postprocessor)である。後処理部130は、解析部120による解析結果を処理し、視覚的な表現形態にする。視覚的な表現形態としては、例えば、3次元グラフィック、アニメーション、グラフ、リスト等を用い得る。
【0016】
入力装置200は、CADデータ、解析モデルを生成するために必要な解析条件等の情報、処理の実行命令等を入力する装置である。入力装置200としては、例えば、キーボード、マウス等のポインティングデバイス等が用いられる。また、ネットワークを介してCADデータ等を入力する場合、入力装置200に代わる入力手段としてネットワーク・インターフェイスが用いられる。さらに、着脱可能な半導体メモリ等の記憶媒体からCADデータ等を入力する場合、入力装置200に代わる入力手段として、記憶媒体の読み取り装置が用いられる。
【0017】
出力装置300は、処理装置100による処理結果を出力装置である。出力装置300としては、例えば、液晶ディスプレイ等の表示装置が用いられる。出力装置300としての表示装置には、処理装置100の後処理部130により作成された視覚的な表現形態による解析結果を表示し得る。
【0018】
図2は、処理装置100のハードウェア構成例を示す図である。処理装置100は、例えば、コンピュータにより実現される。処理装置100を実現するコンピュータは、演算手段であるCPU(Central Processing Unit)101と、記憶手段であるROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103、記憶装置104とを備える。ROM102には、プログラムや予め用意された設定値等のデータが保持されており、CPU101はROM102から直接プログラムやデータを読み込んで処理を実行することができる。RAM103は、主記憶装置(メイン・メモリ)であり、CPU101が演算処理を行う際の作業用メモリとして用いられる。記憶装置104は、プログラムやデータの保存手段である。記憶装置104にはプログラムが記憶されており、CPU101は記憶装置104に格納されたプログラムを主記憶装置に読み込んで実行する。また、記憶装置104には、CPU101による処理の結果が格納される。記憶装置104としては、例えば磁気ディスク装置やSSD(Solid State Drive)等が用いられる。
【0019】
本実施形態の処理装置100が
図2に示すコンピュータで実現される場合、前処理部110、解析部120、後処理部130の各機能は、例えば、CPU101がプログラムとしてのCAEツールを読み込んで実行することにより実現される。前処理部110により作成された解析モデル、解析部120による解析結果、後処理部130により視覚的な表現形態に変換された解析結果は、それぞれ記憶装置104に格納され、処理装置100の動作の過程で必要に応じて読み出される。
【0020】
<CAEツールの例>
CAEでは、解析目的に応じて様々な解析用のツールを用意することができる。代表的な解析の例としては、構造解析、流体解析、熱伝導解析、電磁場解析、機構解析、音響解析などがある。構造解析では、例えば、各種の解析条件が定義された解析対象物に力が加えられたときに各部に生じる応力、変形、振動等の計算が行われる。流体解析では、例えば、解析対象である流れの場において、流体の速度や圧力等の計算が行われる。熱伝導解析では、例えば、構造物全体における温度分布等の計算が行われる。電磁場解析では、例えば、解析対象の電磁機器等に関して、電束密度や磁束密度の分布、静電容量、インダクタンス等の計算が行われる。機構解析では、例えば、動的な解析対象物に関して、運動の様子、動作時に生じる応力や変形等の計算が行われる。音響解析では、例えば、設定された音源に基づく周囲の音場等の計算が行われる。
【0021】
CAEツールとしては、上記のような種々の条件下における解析対象物の状態の解析用のツールの他、切削や切断等のような様々な加工が行われた場合の解析対象物の状態変化の解析(加工解析)用のツール等も用い得る。
【0022】
<解析対象物の構成例>
図3は、本実施形態における解析対象物の構成例を示す図である。本実施形態の解析対象物は、複数の部材からなる構造体であり、この複数の部材の間に相互に圧力がかかった状態で動作する場合の構造体である。
図3に示す例では、解析対象物の例として、第1部材10の孔に第2部材20を圧入して構成される構造体が示されている。なお、
図3は、全体として円柱形状をなす解析対象物を、中心軸を通る断面で切断した断面図である。第2部材20は、中心軸を合わせて第1部材10の孔に挿入される。
【0023】
図3に示す解析対象物において、第1部材10は円筒形状であり、材質は熱処理された金属であるものとする。第2部材20は円柱形状であり、材質は熱処理されていない金属であるものとする。第2部材20の軸方向の端部20a(少なくとも挿入側端部)は、胴部20bに対しての外径が小さく、テーパー状となっている。より詳細には、第2部材20の端部20aの外径は、筒状の第1部材10の内径よりもわずかに小さい。一方、第2部材20の胴部20bの外径は、第1部材10の内径よりもわずかに大きい。
【0024】
図4は、
図3に示した解析対象物において、第1部材10に第2部材20を挿入する際の初期状態を示す図である。
図4には、第1部材10および第2部材20の中心軸を通り直交する2面で解析対象物を切断した断面図が示されている。第2部材20の端部20aの外径は第1部材10の内径よりも小さいので、
図4に示すように、第1部材10への挿入が誘導される。
【0025】
図5は、
図3に示した解析対象物において、第1部材10に第2部材20を挿入する動作が完了した状態を示す図である。
図5には、第1部材10および第2部材20の中心軸を通り直交する2面で解析対象物を切断した断面図が示されている。
図5に示す例では、第2部材20は、端面が第1部材10の端面と一致するまで、第1部材10の孔に挿入されている。第2部材20の外側面21と第1部材10の内側面11とは、圧力がかかった状態で接している。圧入における第1部材10および第2部材20の状態は、例えば、構造解析用のCAEツールにより解析される。
【0026】
図6は、
図3に示した解析対象物において、第1部材10に第2部材20を挿入する動作の途中の状態を示す図である。
図6には、第1部材10および第2部材20の中心軸を通る断面で解析対象物を切断した断面図が示されている。第2部材20の胴部20bの外径は第1部材10の内径よりも大きいので、第2部材20は、圧力をかけて第1部材10の孔に挿入(圧入)される。ここで、第1部材10は熱処理された金属なので相対的に硬く、第2部材20は熱処理されていない金属なので相対的に軟らかい。このため、この圧入により第2部材20に破壊が発生する場合がある。具体的には、第2部材20の胴部20bの外側面21が第1部材10の端面12の内側エッジにより削られる。
【0027】
このように解析対象物を構成する部材に破壊が発生する場合、構造解析用のCAEツールでは部材の破壊の様子を解析することができない。構造解析用のCAEツールは、通常、各部材に生じる応力や変形は解析できるが、部材の破壊は解析対象となっていない。そこで、本実施形態では、解析対象物の破壊の種類や解析目的に応じて加工解析用のCAEツールを用いて解析対象物の動作をシミュレーションし、破壊を伴う動作を含む解析対象物の状態を解析する。
図3乃至
図6を参照して説明した例のように、相互の部材に圧力がかかる状態で動作し一の部材が他の部材を削る破壊が生じる場合、切削加工解析用のCAEツールを用いてシミュレーションおよび状態の解析を行い得る。
【0028】
相互の部材に圧力がかかる状態で動作する部材の状態を切削加工解析用のCAEツールで解析するには、相手に破壊を生じさせる部材を工具(刃物)に見立てた解析モデルを生成し、破壊の生じる部材をワークとして解析を行う。
図3乃至
図6に示した第1部材10および第2部材20の圧入動作に対して切削加工解析を適用する場合、第1部材10を工具、第2部材20をワークとして解析が行われる。この場合、CAEツールに入力される各部材のパラメータにおいて、工具に見立てる第1部材10の材質を、本来の熱処理あり金属とする他、例えば、超硬合金やセラミック等の工具で用いられる材質に設定して解析を行っても良い。第2部材20の材質に関しては、熱処理なし金属を用い得る。
【0029】
<解析対象物の破壊を伴う動作の解析例>
図7は、
図3乃至
図6を参照して説明した部材の圧入に対して行った切削加工解析の解析結果の例を示す図である。この例では、第2部材20が第1部材10の孔に挿入される際に、第1部材10の内径よりも大きい外径である第2部材20の胴部20bの外側面21が、第1部材10の端面12の内側エッジに接触して削られる。このため、第2部材20が第1部材10の孔に押し込まれるのに伴って、第2部材20の外側面21から切削された切り屑22が発生している(
図7の破線で囲んだ部分参照)。このように、相互の部材に圧力がかかる状態での動作に、CAEによる切削加工解析を適用することにより、圧入に伴って部材が切削されて切り屑22が発生する様子を解析することができる。
【0030】
図8は、
図3乃至
図6を参照して説明した部材の圧入に対して行った他の態様による切削加工解析の解析結果の例を示す図である。この例では、第1部材10を、中心軸方向の長さが小さい円盤状(図では中心軸を含む平面で切った断面が示されている)の刃(工具)と仮定して切削加工解析を行った例を示している。第1部材10と第2部材20との接触において、第2部材20を切削するのは、第1部材10の端面12のエッジ部分のみである。したがって、
図8に示す例のように第1部材10を簡略化し、解析における計算量を軽減しても良い。
【0031】
ところで、上記の動作において発生した切り屑22が第1部材10と第2部材20との間に進入した場合、切り屑22が第1部材10と第2部材20との間に挟まれたことにより、各部材10、20に生じる応力や温度分布等は切り屑22が存在しない場合とは異なる可能性がある。そこで、上記のような切削加工解析を行った後に、この切削加工解析により得られた、切削により生じた部材の切り屑22を含む解析モデルに基づき、さらに構造解析用のCAEツールを用いて解析を行っても良い。
【0032】
また、第1部材10と第2部材20とに挟まれた切り屑22が第2部材20の外側面21をさらに傷つける可能性がある場合、上記の切削加工解析を行った後、この解析に係る動作で発生した切り屑22を含む解析モデルに基づき、さらに切削加工解析を行っても良い。より一般的には、加工解析用のCAEツールを用いた解析を行った後、この解析により得られる部材の破壊を反映させた解析モデルに基づき、解析対象物の動作および解析目的に応じたCAEツールを用いて解析を行い得る。
【0033】
なお、発生した切り屑22の影響を考慮した解析を行う場合、
図8に示すような第1部材10を簡略化した解析モデルではなく、本来の第1部材10の形状を再現した
図7に示す解析モデルを用いて解析を行うことが望ましい。第1部材10および第2部材20に対する切り屑22の影響を適切にシミュレーションするためである。
【0034】
上記の解析例では、第1部材10が第2部材20を切削する場合を例として説明したが、反対に、第2部材20が硬い部材であり、第1部材10が軟らかい部材であって、第2部材20が第1部材10を削る場合も、第2部材20を工具、第1部材10をワークに見立てることにより解析を行うことができる。
【0035】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態には限定されない。例えば、上記の実施形態では、筒状の第1部材10に第2部材20を圧入する動作を切削加工解析したが、本実施形態による解析方法の適用対象は、上記の例に限定されない。本実施形態は、相互に圧力がかかる状態で動作する部材を含む構造物等であって、一方の部材が他方の部材により切削される様々な態様に対して適用し得る。さらに、解析対象物を構成する部材の動作が部材の破壊を伴い、構造解析等の状態解析用のCAEツール等を用いた解析では部材の破壊の様子を解析できない場合、破壊の種類に応じて加工の種類を選択し、加工解析用のCAEツールを用いて解析を行い得る。その他、本発明の技術思想の範囲から逸脱しない様々な変更や構成の代替は、本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0036】
10…第1部材、11…内側面、12…端面、20…第2部材、20a…端部、20b…胴部、21…外側面、22…切り屑、100…処理装置、110…前処理部、120…解析部、130…後処理部、200…入力装置、300…出力装置