(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023127980
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】電池および電池製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/184 20210101AFI20230907BHJP
H01M 50/107 20210101ALI20230907BHJP
H01M 50/152 20210101ALI20230907BHJP
H01M 6/02 20060101ALI20230907BHJP
H01M 50/186 20210101ALI20230907BHJP
H01M 50/548 20210101ALI20230907BHJP
【FI】
H01M50/184 D
H01M50/107
H01M50/152
H01M6/02 Z
H01M50/186
H01M50/548 201
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022031988
(22)【出願日】2022-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000237721
【氏名又は名称】FDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松井 隼司
(72)【発明者】
【氏名】國谷 繁之
(72)【発明者】
【氏名】都築 秀典
【テーマコード(参考)】
5H011
5H024
5H043
【Fターム(参考)】
5H011AA03
5H011BB03
5H011CC06
5H011DD06
5H011FF02
5H011GG02
5H011HH02
5H024AA03
5H024AA14
5H024BB05
5H024CC02
5H024CC07
5H024CC14
5H024DD02
5H024DD04
5H024EE01
5H024EE09
5H024FF09
5H024HH13
5H043AA05
5H043BA04
5H043CA03
5H043CA15
5H043HA08D
5H043KA01D
(57)【要約】
【課題】正極が配置される空間を増加させる。
【解決手段】電池1は、筒形に形成される正極缶11と、正極缶11の内側に配置される正極3と、負極5と、負極5に埋め込まれる集電棒6と、正極缶11の開口部を塞ぐ負極端子板12と、封口ガスケット14とを備え、封口ガスケット14は、負極端子板12と正極缶11との間に形成される隙間を封止する周縁部31と、集電棒6が固定されるボス部32と、ボス部32が周縁部31に固定されるようにボス部32と周縁部31との間に配置される接続部33とを有し、正極缶11には、正極缶11の内周面から突出するビーディング部21が形成され、封口ガスケット14は、周縁部31がビーディング部21に接触することにより、正極缶11に固定されている。ビーディング部21のうちの内周面から最も突出している頂上部分24と正極3との間の距離は、接続部33と正極3との間の距離より大きい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒形に形成される正極缶と、
前記正極缶の内側に配置される正極と、
負極と、
前記負極に埋め込まれる集電棒と、
前記正極缶の開口部を塞ぐ負極端子板と、
ガスケットとを備え、
前記ガスケットは、
前記負極端子板と前記正極缶との間に形成される隙間を封止する周縁部と、
前記集電棒が固定されるボス部と、
前記ボス部が前記周縁部に固定されるように前記ボス部と前記周縁部との間に配置される接続部とを有し、
前記正極缶には、前記正極缶の内周面から突出するビーディング部が形成され、
前記ガスケットは、前記周縁部が前記ビーディング部に引っかかることにより、前記正極缶に固定され、
前記ビーディング部のうちの前記内周面から最も突出している頂上部分と前記正極との間の距離は、前記接続部と前記正極との間の距離より大きい
電池。
【請求項2】
前記接続部と前記正極との間の距離は、4mm以下である
請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記周縁部には、前記ビーディング部に嵌合する凹部が形成される
請求項1または請求項2に記載の電池。
【請求項4】
前記ビーディング部は、
前記頂上部分の前記正極に近い側に形成される第1傾斜部と、
前記頂上部分の前記正極から遠い側に形成される第2傾斜部とを有し、
前記第1傾斜部が前記頂上部分に近づくにつれて前記内周面から突出する変化率は、前記第2傾斜部が前記頂上部分に近づくにつれて前記内周面から突出する変化率より大きい
請求項3に記載の電池。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の電池
を製造する電池製造方法であり、
前記正極缶に前記正極が挿入された後に前記正極缶に前記ビーディング部を形成することと、
前記ビーディング部が形成された後に前記周縁部が前記ビーディング部に適切に接触するように前記ガスケットを前記正極缶に挿入することと、
前記ガスケットが前記正極缶に挿入された後に、前記ガスケットと前記負極端子板とが前記正極缶に固定されるように、前記正極缶にカール部を形成すること
とを備える電池製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、電池および電池製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
正極缶と負極端子板とにより囲まれる空間に発電要素が配置され、正極缶と負極端子板との間の隙間を封止するガスケットを備えるアルカリ乾電池が知られている(特許文献1)。ガスケットは、正極缶に形成されるビーディング部に接触して、正極缶に対して適切な位置に配置され、正極缶に適切に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このようなアルカリ乾電池は、正極缶にビーディング部が形成されていることにより、正極缶と負極端子板とにより囲まれる空間に正極が配置されないデッドスペースがガスケットの近傍に形成されることがある。
【0005】
開示の技術は、かかる点に鑑みてなされたものであって、正極が配置される空間を増加させる電池および電池製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様による電池は、筒形に形成される正極缶と、前記正極缶の内側に配置される正極と、負極と、前記負極に埋め込まれる集電棒と、前記正極缶の開口部を塞ぐ負極端子板と、ガスケットとを備え、前記ガスケットは、前記負極端子板と前記正極缶との間に形成される隙間を封止する周縁部と、前記集電棒が固定されるボス部と、前記ボス部が前記周縁部に固定されるように前記ボス部と前記周縁部との間に配置される接続部とを有し、前記正極缶には、前記正極缶の内周面から突出するビーディング部が形成され、前記ガスケットは、前記周縁部が前記ビーディング部に接触することにより、前記正極缶に固定され、前記ビーディング部のうちの前記内周面から最も突出している頂上部分と前記正極との間の距離は、前記接続部と前記正極との間の距離より大きい。
【発明の効果】
【0007】
開示の電池および電池製造方法は、正極が配置される空間を増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態の電池を示す断面図である。
【
図2】
図2は、実施形態の電池製造方法を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、比較例1、2、3の電池を示す拡大断面図である。
【
図4】
図4は、比較例4、5の電池を示す拡大断面図である。
【
図5】
図5は、他の実施形態の電池を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本願が開示する実施形態にかかる電池について、図面を参照して説明する。なお、以下の記載により本開示の技術が限定されるものではない。また、以下の記載においては、同一の構成要素に同一の符号を付与し、重複する説明を省略する。
【0010】
[実施形態の電池1]
実施形態の電池1は、アルカリ乾電池であり、
図1に示されているように、電池ケース2と正極3と負極5と集電棒6とセパレータ7とを備えている。
図1は、実施形態の電池1を示す断面図である。電池ケース2は、正極缶11と負極端子板12と封口ガスケット14とを備えている。正極缶11は、金属に例示される導体から形成されている。正極缶11は、有底円筒形に形成され、側面部分15と底面部分16とを備えている。側面部分15は、円柱の側面に沿うように、筒形に形成されている。底面部分16は、概ね円板状に形成され、円柱の一方の底面に沿うように配置されている。底面部分16は、底面部分16の縁が側面部分15の一方の端に隣接するように、側面部分15に一体に形成されている。
【0011】
底面部分16の中央には、正極端子部分17が形成されている。正極端子部分17は、正極缶11の内側から外側に向かって突出するように形成されている。正極缶11には、開口部18が形成されている。開口部18は、側面部分15のうちの円柱の他方の底面に対応する部位に形成されている。正極缶11の内部は、開口部18を介して正極缶11の外部に繋がっている。
【0012】
側面部分15には、ビーディング部21とカール部22とが形成されている。ビーディング部21は、側面部分15のうちの開口部18が形成される側の開口側端23の近傍に形成されている。ビーディング部21は、側面部分15の内周面から突出するように、すなわち、側面部分15のうちのビーディング部21が形成されている部分の内径が他の部分より小さくなるように、形成されている。ビーディング部21は、頂上部分24と開口側傾斜部分25と正極側傾斜部分26とを備えている。ビーディング部21は、頂上部分24が側面部分15の内周面から最も突出するように、形成されている。開口側傾斜部分25は、頂上部分24の開口側端23に近い側に形成されている。開口側傾斜部分25は、円錐面に沿うように形成され、頂上部分24に近づくにつれて内周面から突出する突出量が大きくなるように、形成されている。正極側傾斜部分26は、頂上部分24の開口側端23から遠い側に形成され、頂上部分24の正極3に近い側に形成されている。正極側傾斜部分26は、円錐面に沿うように形成され、頂上部分24に近づくにつれて内周面から突出する突出量が大きくなるように、形成されている。
【0013】
ビーディング部21は、さらに、開口側傾斜部分25が側面部分15に対して傾斜している程度が、正極側傾斜部分26が側面部分15に対して傾斜している程度と等しくなるように、形成されている。すなわち、ビーディング部21は、開口側傾斜部分25が頂上部分24に近づくにつれて突出する変化率が、正極側傾斜部分26が頂上部分24に近づくにつれて突出する変化率に等しくなるように、形成されている。言い換えると、側面部分15が沿う円柱の側面の母線と、開口側傾斜部分25が沿う円錐面の母線とがなす角は、側面部分15が沿う円柱の側面の母線と、正極側傾斜部分26が沿う円錐面の母線とがなす角と等しい。
【0014】
カール部22は、ビーディング部21と開口側端23との間に形成されている。カール部22は、開口側端23に近づくにつれて側面部分15の内径が小さくなるように、形成されている。
【0015】
負極端子板12は、金属に例示される導体から形成され、概ね円板状に形成されている。負極端子板12は、円柱の他方の底面に沿うように配置され、正極缶11の開口部18を塞いでいる。電池ケース2の内部には、負極端子板12が開口部18を塞ぐことにより、正極缶11と負極端子板12とに囲まれる内部空間29が形成されている。
【0016】
封口ガスケット14は、ナイロンに例示される絶縁体から形成されている。封口ガスケット14は、周縁部31とボス部32と接続部33とを備えている。周縁部31は、概ね筒状に形成されている。周縁部31は、負極端子板12の縁を取り囲み、負極端子板12の縁と正極缶11とに挟まれ、負極端子板12の縁と正極缶11との間に形成される隙間を塞いでいる。周縁部31には、周縁部31のうちの正極缶11の側面部分15に対向する外周面から窪む凹部34が形成されている。凹部34には、奥底部35と開口側傾斜面36と正極側傾斜面37とが形成されている。凹部34は、奥底部35が周縁部31の外周面から最も深くなるように、形成されている。開口側傾斜面36は、奥底部35の開口部18に近い側に形成されている。正極側傾斜面37は、奥底部35の開口部18から遠い側に形成されている。開口側傾斜面36と正極側傾斜面37とは、奥底部35から離れるにつれて凹部34の深さが浅くなるように、形成されている。
【0017】
周縁部31は、ビーディング部21が凹部34に嵌合することにより、周縁部31が開口部18から遠ざからないように、正極缶11に固定されている。凹部34は、奥底部35が頂上部分24に対向し、開口側傾斜面36が開口側傾斜部分25に対向し、正極側傾斜面37が正極側傾斜部分26に対向するときに、ビーディング部21に適切に嵌合される。周縁部31は、周縁部31の開口部18に近い側の一端がカール部22に接触することにより、周縁部31が正極缶11の内部から抜け出ないように、正極缶11に固定されている。
【0018】
ボス部32は、管状に形成されている。接続部33は、概ね円板状に形成されている。接続部33は、接続部33の開口部18から遠い側の正極側端38が、凹部34の奥底部35より開口部18から遠くなるように、配置されている。すなわち、接続部33は、正極缶11のビーディング部21が周縁部31の凹部34に適切に嵌合されているときに、正極側端38がビーディング部21の頂上部分24より開口部18から遠くなるように、配置されている。
【0019】
接続部33は、接続部33の外周縁が周縁部31の内周面に隣接するように、周縁部31に一体に接合されている。接続部33は、さらに、接続部33がボス部32の外周面に隣接するように、ボス部32に一体に接合されている。すなわち、ボス部32は、接続部33に固定され、接続部33を介して周縁部31に固定されている。接続部33には、安全弁39が形成されている。安全弁39は、接続部33のうちのボス部32の近傍に形成されている。安全弁39は、接続部33のうちの厚さが薄い部分であり、安全弁39の厚さは、接続部33のうちの安全弁39と異なる部分の厚さより薄い。
【0020】
正極3は、正極合剤から形成されている。正極合剤は、正極作用物質とバインダーと水酸化カリウム水溶液とを含んでいる。正極作用物質は、二酸化マンガンMnO2と黒鉛Cとを含んでいる。バインダーは、たとえば、高分子化合物を含有し、正極作用物質から形成される粉体を互いに接着させて固形物に形成する。正極3は、管状に形成され、電池ケース2の内部空間29に配置されている。正極3は、正極作用物質が正極缶11に電気的に接続されるように、正極缶11の側面部分15の内周面に密着している。正極3の大きさは、予め定められた値に距離Aが等しくなるように設定される。距離Aは、正極3と封口ガスケット14の接続部33との間の距離を示し、正極3の開口部18に近い側の活物質上面と封口ガスケット14の接続部33の正極側端38との間の距離を示している。正極3に含まれる正極作用物質の量は、距離Aの値が小さいほど多くなる。
【0021】
負極5は、負極作用物質を含有し、ゲル状に形成されている。負極作用物質は、亜鉛粉と水酸化カリウム水溶液とを含んでいる。負極5は、電池ケース2の内部空間29のうちの正極3の内側に配置されている。なお、負極作用物質に含まれる亜鉛粉は、亜鉛を含有する亜鉛合金から形成される亜鉛合金粉に置換されてもよい。
【0022】
集電棒6は、導体から形成され、棒状に形成されている。集電棒6は、側面部分15が沿う円柱の中心軸に沿うように内部空間29に配置されている。集電棒6は、さらに、負極5に埋め込まれ、負極5の負極作用物質に電気的に接続されている。集電棒6は、さらに、封口ガスケット14のボス部32貫通し、封口ガスケット14に固定され、封口ガスケット14を介して正極缶11に固定されている。集電棒6の一端は、集電棒6が負極端子板12に電気的に接続されるように、負極端子板12に接合されている。
【0023】
セパレータ7は、ビニロンやパルプ等に例示される絶縁体から形成されている。セパレータ7は、有底中空円筒形に形成されている。セパレータ7は、内部空間29のうちの正極3と負極5との間に配置され、内部空間29のうちの負極5と正極缶11の底面部分16との間に配置されている。セパレータ7は、正極3と負極5とを隔て、負極5と正極缶11とを隔てている。負極5は、セパレータ7が正極3と負極5とを隔てていることにより、正極3から電気的に絶縁され、セパレータ7が負極5と正極缶11とを隔てていることにより、正極缶11から電気的に絶縁されている。
【0024】
電池1は、電解液をさらに備えている。電解液は、水酸化カリウムKOHを含有する水溶液から形成されている。電解液は、正極3と負極5とが電解液に浸漬されるように、内部空間29に配置され、セパレータ7に染み込み、正極3に染み込んでいる。
【0025】
[実施形態の電池製造方法]
図2は、実施形態の電池製造方法を示すフローチャートである。実施形態の電池製造方法は、電池1を製造する方法である。電池製造方法では、正極3が準備され、カール部22とビーディング部21とが形成されていない正極缶11が準備される。正極3は、正極3の外周面が正極缶11に内周面に接触するように、開口部18を介して正極缶11の内部に挿入される(ステップS1)。
【0026】
正極缶11は、正極3が正極缶11の内部に挿入された後に、ビーディング部21が形成されるように、加工される(ステップS2)。ビーディング部21は、正極3が開口部18を介して正極缶11から抜け出ることを防止する。
【0027】
電池製造方法では、さらに、セパレータ7が準備される。正極3が正極缶11の内部に挿入された後に、セパレータ7が開口部18を介して正極3の内側に挿入される(ステップS3)。
【0028】
電池製造方法では、さらに、電解液が準備される。電解液は、予め定められた濃度で水酸化カリウムKOHが溶解している水溶液に調製されている。セパレータ7が正極3の内側に挿入された後に、電解液が開口部18を介して正極3の内側に注入される(ステップS4)。電解液が正極3の内側に注入されることにより、電解液は、セパレータ7に染み込み、正極3に染み込む。
【0029】
電池製造方法では、さらに、負極5が準備される。負極5は、亜鉛粉と水酸化カリウム水溶液とを含み、ゲル状に調製されている。負極5は、電解液がセパレータ7と正極3とに染み込んだ後に、予め定められた量だけセパレータ7の内側に注入される(ステップS5)。
【0030】
電池製造方法では、さらに、集電棒6と負極端子板12と封口ガスケット14とが準備される。封口ガスケット14は、予め定められた値(たとえば、1.5%)に封口ガスケット14の吸水率が等しいときに、ビーディング部21が凹部34に適切に嵌合するように、作製されている。集電棒6が負極端子板12に電気的に接触するように、かつ、負極端子板12の縁が封口ガスケット14の周縁部31に覆われるように、集電棒6と負極端子板12と封口ガスケット14とが組み立てられ、封口体が作製される。負極5が注入された後に、集電棒6が負極5に埋め込まれるように、かつ、封口ガスケット14の凹部34がビーディング部21に嵌合するように、封口体が正極缶11に取り付けられる(ステップS6)。封口体は、封口ガスケット14の凹部34がビーディング部21に適切に嵌合することにより、正極缶11に対して適切な位置に配置される。
【0031】
封口体が正極缶11に取り付けられた後に、正極缶11にカール部22が形成される(ステップS7)。正極缶11にカール部22が形成されることにより、封口ガスケット14の周縁部31が正極缶11と負極端子板とに挟まれて変形し、封口体が正極缶11から抜け出ないように、封口体が正極缶11に固定される。正極缶11にカール部22が形成されることにより、さらに、負極端子板12と正極缶11との間に形成される隙間が封口ガスケット14により封止され、内部空間29が外部から密閉され、電池1が作製される。
【0032】
[電池1の評価試験]
実施形態の電池1の効果を確認するために、複数の電池試料が作製され、複数の電池試料の各々に複数の評価試験が実行されている。表1は、複数の電池試料に対応する複数の作製条件と複数の評価結果とを示している。
【表1】
複数の電池試料は、実施例1の電池と実施例2の電池と実施例3の電池と比較例1の電池と比較例2の電池と比較例3の電池と比較例4の電池と比較例5の電池とを含んでいる。
【0033】
図3は、比較例1、2、3の電池100を示す拡大断面図である。比較例1、2、3の電池100は、既述の電池1の正極缶11が他の正極缶101に置換されているものである。正極缶101は、既述の正極缶11の側面部分15が他の側面部分102に置換され、他の部分は、既述の正極缶11と同じである。側面部分102は、既述の側面部分15のビーディング部21に置換して他のビーディング部103が形成され、側面部分102の他の部分は、既述の側面部分15と同じである。ビーディング部103は、既述の正極缶11のビーディング部21が形成されている領域より開口側端23から遠い他の領域に形成され、ビーディング部103のうちの最も突出している頂上部分が正極側端38の開口部18から遠い側に配置されるように、形成されている。ビーディング部103の形状は、既述のビーディング部21の形状と同じである。
【0034】
比較例1、2、3の電池100は、既述の電池1の封口ガスケット14が他の封口ガスケット104にさらに置換されているものである。封口ガスケット104は、既述の封口ガスケット14の周縁部31が他の周縁部105に置換され、他の部分は、既述の封口ガスケット14と同じである。周縁部105には、既述の周縁部31の凹部34に置換して他の凹部106が形成されている。凹部106は、既述の凹部34が形成されている領域より開口側端23から遠い他の領域に形成され、凹部106の形状は、既述の凹部34の形状と同じである。凹部106は、ビーディング部103に嵌合している。すなわち、周縁部105の正極3に近い側の端107は、ビーディング部103より正極3に近く、既述の周縁部31の正極3に近い側の端より正極3に近い。
【0035】
図4は、比較例4、5の電池110を示す拡大断面図である。比較例4、5の電池110は、既述の電池100の封口ガスケット104が他の封口ガスケット114に置換され、他の部分は、既述の電池100と同じである。封口ガスケット114は、既述の封口ガスケット14の周縁部31が他の周縁部115に置換され、他の部分は、既述の封口ガスケット14と同じである。周縁部115には、ビーディング部103に嵌合する凹部が形成されておらず、封口ガスケット114は、周縁部115の開口部18から遠い側の端117がビーディング部103に接触している。封口ガスケット114は、端117がビーディング部103に接触することにより、封口ガスケット114が正極3に接近しないように、正極缶101に固定されている。
【0036】
複数の電池試料は、作製条件が互いに異なるように、作製されている。作製条件は、くぼみ有無とくぼみ位置とくぼみ形状と活物質上面位置とにより示される。
【0037】
くぼみ有無は、「あり」または「なし」を示している。すなわち、ある電池試料のくぼみ有無が「あり」を示すときに、その電池試料は、
図1に示される電池1と同様に封口ガスケット14に凹部34が形成され、または、
図3に示される電池と同様に封口ガスケット104に凹部106が形成されている。その電池試料は、さらに、正極缶11のビーディング部21が封口ガスケット14の凹部34に嵌合し、または、正極缶101のビーディング部103が封口ガスケット104の凹部106に嵌合している。
【0038】
くぼみ位置は、「接続部横」または「接続部下」を示している。すなわち、ある電池試料のくぼみ位置が「接続部横」を示すときに、その電池試料は、
図1に示される電池1と同様に、凹部34の奥底部35が接続部33の正極側端38の開口部18に近い側に配置されている。すなわち、その電池試料は、正極缶11のビーディング部21の頂上部分24が接続部33の正極側端38の開口部18に近い側に配置されている。ある電池試料のくぼみ位置が「接続部下」を示すときに、その電池試料は、
図4に示される電池と同様に、凹部106の奥底部が接続部33の正極側端38の正極3に近い側に配置されている。すなわち、その電池試料は、正極缶11のビーディング部21の頂上部分24が接続部33の正極側端38の正極3に近い側に配置されている。
【0039】
ある電池試料の活物質上面位置は、その電池試料の距離Aを示している。すなわち、ある電池試料の活物質上面位置が「Xmm」を示すときに、その電池試料の正極3の活物質上面と接続部33の正極側端38との間の距離AがXmmに等しいことを示している。
【0040】
複数の電池試料は、その作製条件が互いに異なること以外は、互いに同様になるように、既述の電池製造方法により作製されている。たとえば、複数の電池試料は、それぞれ、封口ガスケットの質量に対する、封口ガスケットに含まれている水分の質量の比率を示すガスケット吸水率が1.5%に等しい封口ガスケットを用いて、作製されている。
【0041】
実施例1の電池のくぼみ有無は、「あり」を示している。実施例1の電池のくぼみ位置は、「接続部横」を示している。実施例1の電池の活物質上面位置は、「1mm」を示している。すなわち、実施例1の電池は、
図1に示される電池1のように作製され、かつ、距離Aが1mmに等しくなるように形成されている。
【0042】
実施例2の電池のくぼみ有無は、「あり」を示している。実施例2の電池のくぼみ位置は、「接続部横」を示している。実施例2の電池の活物質上面位置は、「4mm」を示している。すなわち、実施例2の電池は、
図1に示される電池1のように作製され、かつ、距離Aが4mmに等しくなるように形成されている。
【0043】
実施例3の電池のくぼみ有無は、「あり」を示している。実施例3の電池のくぼみ位置は、「接続部横」を示している。実施例3の電池の活物質上面位置は、「5mm」を示している。すなわち、実施例3の電池は、
図1に示される電池1のように作製され、かつ、距離Aが5mmに等しくなるように形成されている。
【0044】
比較例1の電池のくぼみ有無は、「あり」を示している。比較例1の電池のくぼみ位置は、「接続部下」を示している。比較例1の電池の活物質上面位置は、「1mm」を示している。すなわち、比較例1の電池は、
図3に示される電池のように作製され、かつ、距離Aが1mmに等しくなるように形成されている。
【0045】
比較例2の電池のくぼみ有無は、「あり」を示している。比較例2の電池のくぼみ位置は、「接続部下」を示している。比較例2の電池の活物質上面位置は、「4mm」を示している。すなわち、比較例2の電池は、
図3に示される電池のように作製され、かつ、距離Aが4mmに等しくなるように形成されている。
【0046】
比較例3の電池のくぼみ有無は、「あり」を示している。比較例3の電池のくぼみ位置は、「接続部下」を示している。比較例3の電池の活物質上面位置は、「5mm」を示している。すなわち、比較例3の電池は、
図3に示される電池のように作製され、かつ、距離Aが5mmに等しくなるように形成されている。
【0047】
比較例4の電池のくぼみ有無は、「なし」を示している。比較例4の電池の活物質上面位置は、「1mm」を示している。すなわち、比較例4の電池は、
図4に示される電池のように作製され、かつ、距離Aが1mmに等しくなるように形成されている。
【0048】
比較例5の電池のくぼみ有無は、「なし」を示している。比較例5の電池の活物質上面位置は、「5mm」を示している。すなわち、比較例5の電池は、
図4に示される電池のように作製され、かつ、距離Aが5mmに等しくなるように形成されている。
【0049】
複数の評価結果は、複数の目視評価結果と複数の充電漏液評価結果と複数の放電破裂評価結果と複数の放電性能評価結果とを含んでいる。
複数の目視評価結果は、複数の電池試料に対応している。複数の目視評価結果のうちのある電池試料に対応する目視評価結果は、その電池試料に対して目視試験が実行されることにより導出されている。ある電池試料に対して実行される目視試験では、その電池試料として100個の電池が作製され、作製中に発生した不具合が導出され、封口体が正極缶に対して適切に配置されていない封口体ずれ電池の個数が導出されている。複数の目視評価結果のうちのある電池試料に対応する目視評価結果は、その電池試料として作製された電池に発生した不具合を示し、または、その電池試料としてされた100個の電池のうちの封口体ずれ電池の個数を100で除算した割合を示している。複数の目視評価結果は、小さい値を示す目視評価結果に対応する電池試料ほど封口体が正極缶に対してずれにくいことを示している。
【0050】
複数の目視評価結果は、実施例1~3の電池として作製された電池に不具合が発生しなかったことを示し、実施例1~3の電池として作製された複数の電池に封口体ずれ電池が含まれていないことを示している。複数の目視評価結果は、比較例1、2の電池として作製された複数の電池に関して、封口ガスケット104の周縁部105の端107が正極3に接触することにより、封口体が正極缶101の開口部18を封口することができない不具合が発生したことを示している。複数の目視評価結果は、比較例3の電池として作製された電池に不具合が発生しなかったことを示し、比較例3の電池として作製された複数の電池に封口体ずれ電池が含まれていないことを示している。複数の目視評価結果は、比較例4の電池として作製された複数の電池に関して、ビーディング部103が正極3に干渉して正極3が割れることにより正極3が適切に充填できない不具合が発生したことを示している。複数の目視評価結果は、比較例5の電池として作製された電池に不具合が発生しなかったことを示し、比較例5の電池として作製された100個の電池に1個の封口体ずれ電池が含まれていたことを示している。すなわち、複数の目視評価結果は、距離Aが4mm以下であるときに
図1の電池1が適切に作製されることを示し、距離Aが4mm以下であるときに
図3の電池と
図4の電池とが適切に作製されないことを示している。
【0051】
複数の充電漏液評価結果は、複数の電池試料に対応している。複数の充電漏液評価結果のうちのある電池試料に対応する充電漏液評価結果は、その電池試料が充電される充電試験が実行されることにより導出されている。電池は、誤使用により充電されたときに、内部空間29の圧力が上昇することがある。電池は、内部空間29の圧力が上昇したときに、安全弁39が破断する漏液が発生したり、漏液が発生せずに封口体が正極缶から外れる破裂が発生したりすることがある。電池は、内部空間29の圧力が上昇したときに、漏液が発生することにより、内部空間29の圧力を降下させることができ、破裂が発生することを防止することができる。
【0052】
ある電池試料に対して実行される充電試験では、その電池試料としてされた100個の電池が充電され、その充電された100個の電池のうちの漏液が発生した漏液電池の個数が導出されている。複数の充電漏液評価結果のうちのある電池試料に対応する充電漏液評価結果は、その電池試料としてされた100個の電池のうちの漏液電池の個数を100で除算した値を示している。複数の充電漏液評価結果は、大きい値を示す充電漏液評価結果に対応する電池試料ほど、安全弁39が適切に作動する可能性が高いことを示している。
【0053】
複数の充電漏液評価結果は、実施例1~3の電池と比較例3、5の電池とが充電により漏液が発生することを示している。すなわち、複数の充電破裂評価結果は、
図1、3、4に示される電池の安全弁39が充電時に適切に破断することを示している。
【0054】
複数の充電破裂評価結果は、複数の電池試料に対応している。複数の充電破裂評価結果のうちのある電池試料に対応する充電破裂評価結果は、複数の充電漏液評価結果と同様に、その電池試料に対して充電試験が実行されることにより導出されている。ある電池試料に対して実行される充電試験では、その電池試料としてされた100個の電池が充電され、その充電された100個の電池のうちの漏液が発生せずに破裂が発生した破裂電池の個数が導出されている。複数の充電破裂評価結果のうちのある電池試料に対応する充電破裂評価結果は、その電池試料としてされた100個の電池のうちの破裂電池の個数を100で除算した値を示している。複数の充電破裂評価結果は、小さい値を示す充電破裂評価結果に対応する電池試料ほど封口体が正極缶に適切に固定されていることを示している。
【0055】
複数の充電破裂評価結果は、実施例1~3の電池と比較例3、5の電池とが充電による破裂が発生しなかったことを示している。すなわち、複数の充電破裂評価結果は、
図1、3、4に示される電池の封口体が正極缶に適切に固定されていることを示している。
【0056】
複数の放電性能評価結果は、複数の電池試料に対応している。複数の放電性能評価結果のうちのある電池試料に対応する放電性能評価結果は、その電池試料に対して放電試験が実行されることにより導出されている。ある電池試料に対して実行される放電試験では、その電池試料としてされた複数の電池が、互いに異なる6つのモードで放電され、平均放電容量が導出されている。6つのモードは、JIS(Japanese Industrial Standards)規格JIS8515の6.1.4項に記載されているものである。平均放電容量は、6つのモードでそれぞれ放電された複数の電池についてそれぞれ導出された6つの放電容量の平均を示している。複数の放電性能評価結果のうちのある電池試料に対応する放電性能評価結果は、その電池試料の平均放電容量を比較例5の電池の平均放電容量で除算した値に100を乗算した値を示している。複数の放電性能評価結果は、大きい値を示す放電性能評価結果に対応する電池試料ほど放電容量が大きいことを示し、放電性能が良好であることを示している。
【0057】
複数の放電性能評価結果は、実施例3の電池の放電性能評価結果が比較例3の電池の放電性能評価結果と同等であり、実施例3の電池の放電性能評価結果が比較例5の電池の放電性能評価結果と同等であることを示している。すなわち、複数の放電性能評価結果は、距離Aが同等である複数の電池の放電性能が同等であることを示している。
【0058】
複数の放電性能評価結果は、さらに、実施例1の電池の放電性能評価結果が実施例2の電池の放電性能評価結果より良好であることを示し、実施例2の電池の放電性能評価結果が実施例3の電池の放電性能評価結果より良好であることを示している。すなわち、複数の放電性能評価結果は、距離Aが短いほど放電性能が良好であることを示している。距離Aが短いほど放電性能が良好であることは、距離Aが短いほど正極3に含まれる正極活物質の量が多いことによるものと考えられる。
【0059】
[実施形態の電池1の効果]
実施形態の電池1は、筒形に形成される正極缶11と、正極缶11の内側に配置される正極3と、負極5と、負極5に埋め込まれる集電棒6と、正極缶11の開口部を塞ぐ負極端子板12と、封口ガスケット14とを備えている。封口ガスケット14は、負極端子板12と正極缶11との間に形成される隙間を封止する周縁部31と、集電棒6が固定されるボス部32と、ボス部32が周縁部31に固定されるようにボス部32と周縁部31との間に配置される接続部33とを備えている。正極缶11には、正極缶11の内周面から突出するビーディング部21が形成されている。封口ガスケット14は、周縁部31がビーディング部21に引っかかることにより、正極缶11に固定されている。ビーディング部21のうちの内周面から最も突出している頂上部分24と正極3との間の距離は、接続部33と正極3との間の距離より大きい。このとき、実施形態の電池1は、内部空間29のうちの正極3が配置されないデッドスペースを減少させることができ、内部空間29のうちの正極3が配置される空間を増加させることができる。
【0060】
また、実施形態の電池1の接続部33と正極3との間の距離Aは、4mm以下である。たとえば、実施形態の電池1は、距離Aが4mmより大きくする必要がある他の電池より、電池1に充填される正極3の量を増加させることができる。実施形態の電池1は、正極3が充填される量が増加することにより、正極3に含まれる正極活物質の量を増加させることができ、放電容量を増加させ、放電性能を向上させることができる。
【0061】
また、実施形態の電池1の周縁部31には、ビーディング部21に嵌合する凹部34が形成されている。このとき、実施形態の電池1は、封口体を正極缶11に対して適切に配置させることができ、適切に作製される。
【0062】
[他の実施形態の電池]
他の実施形態の電池40は、
図5に示されているように、既述の電池1の正極缶11が他の正極缶41に置換され、封口ガスケット14が他の封口ガスケット51に置換され、他の部分は、既述の電池1既述の電池1と同じである。
図5は、他の実施形態の電池40の一部を示す拡大断面図である。正極缶41は、既述の正極缶11の側面部分15が他の側面部分43に置換され、他の部分は、既述の正極缶11と同じである。側面部分43は、既述の側面部分15のビーディング部21が他のビーディング部44に置換され、側面部分43の他の部分は、既述の側面部分15と同じである。ビーディング部44は、頂上部分45と開口側傾斜部分46と正極側傾斜部分47とを備えている。ビーディング部44は、頂上部分45が側面部分43の内周面から最も突出するように、形成されている。開口側傾斜部分46は、頂上部分45の開口側端23に近い側に形成されている。開口側傾斜部分46は、円錐面に沿うように形成され、頂上部分45に近づくにつれて内周面から突出する突出量が大きくなるように、形成されている。正極側傾斜部分47は、頂上部分45の正極3に近い側に形成されている。正極側傾斜部分47は、円錐面に沿うように形成され、頂上部分45に近づくにつれて内周面から突出する突出量が大きくなるように、形成されている。
【0063】
ビーディング部44は、さらに、開口側傾斜部分46が側面部分43に対して傾斜している程度が、正極側傾斜部分47が側面部分43に対して傾斜している程度より急峻になるように、形成されている。すなわち、ビーディング部44は、側面部分43が沿う円柱の側面の母線と、開口側傾斜部分46が沿う円錐面の母線とがなす角が、側面部分43が沿う円柱の側面の母線と、正極側傾斜部分47が沿う円錐面の母線とがなす角より大きくなるように、形成されている。ビーディング部44は、さらに、側面部分43が沿う円柱の側面の母線と、開口側傾斜部分46が沿う円錐面の母線とがなす角が、
図1に示される既述の電池1の側面部分15が沿う円柱の側面の母線と、開口側傾斜部分25が沿う円錐面の母線とがなす角より大きくなるように、形成されている。たとえば、ビーディング部44は、側面部分43が沿う円柱の側面の母線と、開口側傾斜部分46が沿う円錐面の母線とがなす角が45度より大きくなるように形成されている。
【0064】
封口ガスケット51は、既述の封口ガスケット14の凹部34に置換して他の凹部52が形成され、封口ガスケット51の他の部分は、既述の封口ガスケット14と同じである。凹部52には、奥底部53と開口側傾斜面54と正極側傾斜面55とが形成されている。凹部52は、奥底部53が周縁部31の外周面から最も深くなるように、形成されている。開口側傾斜面54は、奥底部53の開口部18に近い側に形成されている。正極側傾斜面55は、奥底部53の開口部18から遠い側に形成されている。
【0065】
封口ガスケット51は、ビーディング部44が凹部52に嵌合することにより、ビーディング部44が開口部18から遠ざからないように、正極缶41に固定されている。凹部52は、奥底部53が頂上部分45に対向し、開口側傾斜面54が開口側傾斜部分46に対向し、正極側傾斜面55が正極側傾斜部分47に対向するときに、ビーディング部44に適切に嵌合される。すなわち、封口ガスケット51の周縁部31の外周面が沿う円柱の側面の母線と、開口側傾斜面54が沿う円錐面の母線とがなす角は、周縁部31の外周面が沿う円柱の側面の母線と、正極側傾斜面55が沿う円錐面の母線とがなす角より大きい。ビーディング部44の周縁部31は、周縁部31の一端がカール部22に接触することにより、封口ガスケット51が正極缶41の内部から抜け出ないように、正極缶41に固定されている。このとき、封口ガスケット14の周縁部31は、負極端子板12の縁を取り囲み、負極端子板12の縁と正極缶11とに挟まれ、負極端子板12の縁と正極缶11との間に形成される隙間を塞いでいる。
【0066】
電池40は、ビーディング部44と凹部52とがこのように形成されることにより、既述の電池1に比較して、封口ガスケット51が所定の位置から正極3の側に移動しないように、正極缶41に適切に固定されることができる。
【0067】
[実施形態の電池40の評価試験]
実施形態の電池40の効果を確認するために、複数の電池試料がさらに作製され、複数の電池試料の各々に他の複数の評価試験がさらに実行されている。表2は、複数の電池試料に対応する複数の作製条件と複数の評価結果とを示している。
【表2】
複数の電池試料は、実施例4の電池と実施例5の電池と実施例6の電池と実施例7の電池と実施例8の電池と実施例9の電池とを含んでいる。
【0068】
複数の電池試料は、作製条件が互いに異なるように、作製されている。作製条件は、くぼみ形状とガスケット吸水率とにより示される。複数の電池試料は、その作製条件が互いに異なること以外は、互いに同様に作製されている。
【0069】
くぼみ形状は、「傾きあり」または「傾きなし」を示している。ある電池試料のくぼみ形状が「傾きあり」を示すときに、その電池試料には、
図5に示される電池40と同様に、ビーディング部44と凹部52とが形成されている。ある電池試料のくぼみ形状が「傾きなし」を示すときに、その電池試料には、
図1に示される電池1と同様に、ビーディング部21と凹部34とが形成されている。
【0070】
ある電池試料のガスケット吸水率は、その電池試料に用いられる封口ガスケットの吸水率を示し、その電池試料に用いられる封口ガスケットの質量に対する、封口ガスケットに含まれている水分の質量の比率を示している。すなわち、ある電池試料のガスケット吸水率が「X%」を示すときに、その電池試料の封口ガスケットに含まれている水分の質量を、封口ガスケットの質量で除算した値に100を乗算した値がXの値に等しいことを示している。封口ガスケットのサイズは、ガスケット吸水率が変化することにより変化し、たとえば、ガスケット吸水率が小さいほど小さくなる。封口ガスケットのサイズが変化したときに、封口ガスケットの凹部は、正極缶のビーディング部に適切に嵌合しないことがある。封口ガスケットは、凹部がビーディング部に適切に嵌合しないときに、正極缶に対して適切な位置に配置されていない状態で正極缶に固定されることがある。
【0071】
実施例4の電池のくぼみ形状は、「傾きあり」を示している。実施例4の電池のガスケット吸水率は、「0.0%」を示している。すなわち、実施例4の電池は、
図5に示される電池40のように形成され、かつ、封口ガスケット51の吸水率が0.0%に等しい封口ガスケット51を用いて作製されている。
【0072】
実施例5の電池のくぼみ形状は、「傾きあり」を示している。実施例5の電池のガスケット吸水率は、「1.5%」を示している。すなわち、実施例5の電池は、
図5に示される電池40のように形成され、かつ、吸水率が1.5%に等しい封口ガスケット51を用いて作製されている。
【0073】
実施例6の電池のくぼみ形状は、「傾きあり」を示している。実施例6の電池のガスケット吸水率は、「3.0%」を示している。すなわち、実施例6の電池は、
図5に示される電池40のように形成され、かつ、吸水率が3.0%に等しい封口ガスケット51を用いて作製されている。
【0074】
実施例7の電池のくぼみ形状は、「傾きなし」を示している。実施例7の電池のガスケット吸水率は、「0.0%」を示している。すなわち、実施例7の電池は、
図1に示される電池1のように形成され、かつ、吸水率が0.0%に等しい封口ガスケット14を用いて作製されている。
【0075】
実施例8の電池のくぼみ形状は、「傾きなし」を示している。実施例8の電池のガスケット吸水率は、「1.5%」を示している。すなわち、実施例8の電池は、
図1に示される電池1のように形成され、かつ、吸水率が1.5%に等しい封口ガスケット14を用いて作製されている。
【0076】
実施例9の電池のくぼみ形状は、「傾きなし」を示している。実施例9の電池のガスケット吸水率は、「3.0%」を示している。すなわち、実施例9の電池は、
図1に示される電池1のように形成され、かつ、吸水率が3.0%に等しい封口ガスケット14を用いて作製されている。
【0077】
表2の複数の評価結果は、複数の目視評価結果と複数の充電漏液評価結果と複数の放電破裂評価結果とを含んでいる。
複数の目視評価結果は、複数の電池試料に対応している。複数の目視評価結果のうちのある電池試料に対応する目視評価結果は、表1の複数の目視評価結果と同様に、その電池試料としてされた100個の電池のうちの封口体ずれ電池の個数を100で除算した値を示している。
【0078】
複数の目視評価結果は、実施例4、5、6、8の電池として作製された100個の電池に封口体ずれ電池が含まれていないことを示している。複数の目視評価結果は、さらに、実施例7電池として作製された100個の電池に、封口体が適切な位置から正極3に近い側にずれる5個の封口体ずれ電池が含まれていることを示している。複数の目視評価結果は、さらに、実施例9電池として作製された100個の電池に、封口体が適切な位置から正極3から遠い側にずれる3個の封口体ずれ電池が含まれていることを示している。すなわち、複数の目視評価結果は、
図5に示される電池40が、封口ガスケット51の吸水率が変化しても封口体が正極缶41に対してずれにくいことを示している。複数の目視評価結果は、
図1に示される電池1が、封口ガスケット14の吸水率が変化すると封口体が正極缶に対してずれることがあることを示している。
【0079】
複数の目視評価結果は、さらに、
図5に示される電池40が、
図1に示される電池1に比較して、封口ガスケットのサイズが変化しても封口体が正極缶に対してずれにくいことを示している。すなわち、複数の目視評価結果は、ビーディング部44の開口側傾斜部分46の傾斜が急峻であるときに、封口ガスケットのサイズが変化しても封口体が正極缶に対してずれにくいことを示している。
【0080】
複数の充電漏液評価結果は、複数の電池試料に対応している。複数の充電漏液評価結果のうちのある電池試料に対応する充電漏液評価結果は、表1の複数の充電漏液評価結果と同様に、その電池試料としてされた100個の電池のうちの漏液電池が発生した割合を示している。
【0081】
複数の充電漏液評価結果は、実施例4~6、8の電池として作製された100個の電池のすべてに漏液が発生することを示し、実施例4~6、8の電池の安全弁39が適切に作動することを示している。複数の充電漏液評価結果は、実施例7の電池として作製された100個の電池のうちの98個の電池に漏液が発生したことを示している。複数の充電漏液評価結果は、さらに、漏液が発生しなかった2個の電池が、実施例7の電池として作製された100個の電池のうちの5個の封口体ずれ電池に含まれていたことを示している。複数の充電漏液評価結果は、実施例9の電池として作製された100個の電池のうちの99個の電池に漏液が発生したことを示している。複数の充電漏液評価結果は、さらに、漏液が発生しなかった1個の電池が、実施例9の電池として作製された100個の電池のうちの3個の封口体ずれ電池に含まれていたことを示している。
【0082】
複数の充電漏液評価結果は、
図5に示される電池40が、サイズが変化した封口ガスケットを用いて作製された場合でも、安全弁39が適切に作動することを示している。複数の充電漏液評価結果は、さらに、
図1に示される電池1が、サイズが変化した封口ガスケットを用いて作製されたときに、安全弁39が適切に作動しないことがあることを示している。
【0083】
複数の充電破裂評価結果は、複数の電池試料に対応している。複数の充電破裂評価結果のうちのある電池試料に対応する充電破裂評価結果は、表1の複数の充電破裂評価結果と同様に、その電池試料としてされた100個の電池のうちの破裂電池が発生した割合を示している。
【0084】
複数の充電破裂評価結果は、実施例4~6、8の電池として作製された100個の電池のすべてに破裂が発生しないことを示している。複数の充電破裂評価結果は、実施例7の電池として作製された100個の電池のうちの2個の電池に漏液が発生しないで破裂が発生したことを示している。複数の充電破裂評価結果は、実施例9の電池として作製された100個の電池のうちの1個の電池に漏液が発生しないで破裂が発生したことを示している。
【0085】
複数の充電破裂評価結果は、
図5に示される電池40が、サイズが変化した封口ガスケットを用いて作製された場合でも、破裂を防止することができることを示している。複数の充電破裂評価結果は、さらに、サイズが変化した封口ガスケットを用いて作製されたときに、
図1に示される電池1に破裂が発生することがあることを示している。表2の複数の評価結果は、サイズが変化した封口ガスケットを用いて作製された場合でも、
図5に示される電池40が、
図1に示される電池1に比較して、封口体が適切に正極缶に固定されることを示している。
【0086】
封口ガスケット14、51の凹部34、52は、封口体が正極缶11、41に対してずれているときに、ビーディング部21、44に適切に嵌合していないことがある。封口ガスケット14、51は、凹部34、52がビーディング部21、44に適切に嵌合していないときに、不適切に変形することがある。安全弁39は、封口ガスケット14、51が不適切に変形することにより、内部空間29の圧力が上昇した場合でも、破断しないことがある。電池は、内部空間29の圧力が上昇したときで、安全弁39が破断しないときに、内部空間29の圧力を降下させることができず、破裂が発生することがある。すなわち、表2の複数の評価結果は、
図5に示される電池40が、吸水率が変化した封口ガスケット51を用いて作製された場合でも、封口ガスケット51が不適切に変形しないように、封口体が正極缶41に適切に取り付けられることができることを示している。
【0087】
ところで、既述の電池1の封口ガスケット14には、ビーディング部21に嵌合する凹部34が形成されているが、凹部34が形成されていない他の封口ガスケットに置換されてもよい。このとき、その置換された封口ガスケットは、周縁部の正極3に近い側の端が接続部33の正極側端38の正極3から遠い側に配置されてビーディング部21に接触することにより、正極3に向かって移動しないように正極缶11に固定される。この場合でも、電池は、内部空間29のうちの正極3が配置されないデッドスペースを減少させ、内部空間29のうちの正極3が配置される空間を増加させることができる。
【0088】
以上、実施例を説明したが、前述した内容により実施例が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、実施例の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換及び変更のうち少なくとも1つを行うことができる。
【符号の説明】
【0089】
1 :電池
3 :正極
5 :負極
6 :集電棒
11:正極缶
12:負極端子板
14:封口ガスケット
15:側面部分
18:開口部
21:ビーディング部
22:カール部
24:頂上部分
25:開口側傾斜部分
26:正極側傾斜部分
29:内部空間
31:周縁部
32:ボス部
33:接続部
34:凹部
39:安全弁
40:電池
41:正極缶
43:側面部分
44:ビーディング部
45:頂上部分
46:開口側傾斜部分
47:正極側傾斜部分
51:封口ガスケット
52:凹部