(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128007
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】累進屈折力レンズシリーズ
(51)【国際特許分類】
G02C 7/06 20060101AFI20230907BHJP
【FI】
G02C7/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022032033
(22)【出願日】2022-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000219738
【氏名又は名称】東海光学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124420
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 清隆
(72)【発明者】
【氏名】太田 恵介
【テーマコード(参考)】
2H006
【Fターム(参考)】
2H006BD03
(57)【要約】
【課題】コストがより低減され、より効率良くフィッティングポイントでの度数のバリエーション等のニーズに対応可能な累進屈折力レンズシリーズを提供する。
【解決手段】本発明は、近くの距離にある物(近景)を見るための近用部2と、その近くの距離よりも遠くの距離にある物(遠景)を見るための遠用部4と、遠用部4と近用部2との間の部分であって、遠用部4から近用部2にかけて度数が連続的に変化する中間部6と、を有する複数の累進屈折力レンズ1から成る累進屈折力レンズシリーズに関する。各累進屈折力レンズ1において、遠用部4に係る処方遠用度数が共通していると共に、近用部2に係る近用度数が共通している。更に、中間部6にフィッティングポイントFPが配置されており、フィッティングポイントFPにおける度数(特定度数)は、互いに異なっており、各特定度数を換算した視距離に基づいて(視距離が等間隔となるように)設定されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
近くの距離にある物を見るための近用部と、
前記近くの距離よりも遠くの距離にある物を見るための遠用部と、
前記遠用部と前記近用部との間の部分であって、前記遠用部から前記近用部にかけて度数が連続的に変化する中間部と、
を有する複数の累進屈折力レンズから成る累進屈折力レンズシリーズであって、
各前記累進屈折力レンズにおいて、
前記遠用部における度数である遠用度数が共通していると共に、
前記近用部における度数である近用度数が共通しており、
更に、前記中間部にフィッティングポイントが配置されており、前記フィッティングポイントにおける度数である特定度数は、互いに異なっており、各前記特定度数を換算した視距離に基づいて設定されている
ことを特徴とする累進屈折力レンズシリーズ。
【請求項2】
各前記特定度数は、前記視距離が等間隔となるように設定されている
ことを特徴とする請求項1に記載の累進屈折力レンズシリーズ。
【請求項3】
近くの距離にある物を見るための近用部と、
前記近くの距離よりも遠くの距離にある物を見るための遠用部と、
前記遠用部と前記近用部との間の部分であって、前記遠用部から前記近用部にかけて度数が連続的に変化する中間部と、
を有する複数の累進屈折力レンズから成る累進屈折力レンズシリーズであって、
各前記累進屈折力レンズにおいて、
前記遠用部における度数である遠用度数が共通していると共に、
前記近用部において前記遠用度数に対して加入する度数である第1加入度数が共通しており、
更に、前記中間部にフィッティングポイントが配置されており、前記フィッティングポイントにおいて前記遠用度数に対して加入する度数である第1特定加入度数は、互いに異なっており、各前記第1特定加入度数を換算した視距離に基づいて設定されている
ことを特徴とする累進屈折力レンズシリーズ。
【請求項4】
各前記第1特定加入度数は、前記視距離が等間隔となるように設定されている
ことを特徴とする請求項3に記載の累進屈折力レンズシリーズ。
【請求項5】
近くの距離にある物を見るための近用部と、
前記近くの距離よりも遠くの距離にある物を見るための遠用部と、
前記遠用部と前記近用部との間の部分であって、前記遠用部から前記近用部にかけて度数が連続的に変化する中間部と、
を有する複数の累進屈折力レンズから成る累進屈折力レンズシリーズであって、
各前記累進屈折力レンズにおいて、
前記近用部における度数である近用度数が共通していると共に、
前記遠用部において前記近用度数に対して加入する度数である第2加入度数が共通しており、
更に、前記中間部にフィッティングポイントが配置されており、前記フィッティングポイントにおいて前記近用度数に対して加入する度数である第2特定加入度数は、互いに異なっており、各前記第2特定加入度数を換算した視距離に基づいて設定されている
ことを特徴とする累進屈折力レンズシリーズ。
【請求項6】
各前記第2特定加入度数は、前記視距離が等間隔となるように設定されている
ことを特徴とする請求項5に記載の累進屈折力レンズシリーズ。
【請求項7】
各前記累進屈折力レンズにおいて、
幾何学中心を基準とした前記フィッティングポイントの位置は、共通しており、
前記近用部、前記遠用部、及び前記フィッティングポイントにおける各度数を満たす前面及び後面の少なくとも一方の形状は、互いに異なっている
ことを特徴とする請求項1から請求項6の何れかに記載の累進屈折力レンズシリーズ。
【請求項8】
各前記累進屈折力レンズにおいて、
前面及び後面の形状は、前記近用部及び前記遠用部の各度数を満たす状態で共通しており、
幾何学中心を基準とした前記フィッティングポイントの位置は、前記フィッティングポイントにおける度数を満たすように互いに異なっている
ことを特徴とする請求項1から請求項6の何れかに記載の累進屈折力レンズシリーズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数枚の累進屈折力レンズのセットである累進屈折力レンズシリーズに関する。
【背景技術】
【0002】
累進屈折力レンズは、装用状態でレンズの上方に設けられ、比較的遠方視に適した遠用部と、装用状態でレンズの下方に設けられ、比較的近方視に適した近用部と、それらの間に設けられ、遠用部から近用部へと向かって度数が累進する累進部と、を有している。
一般に、累進屈折力レンズに係る受発注等の取扱においては、遠用部内の基準点における度数である遠用処方度数と、近用部内の基準点における遠用処方度数に対する加入度数である処方加入度数とが用いられる。レンズメーカー等のレンズ取扱者(レンズ受注者、レンズ発送者)は、遠用処方度数及び処方加入度数に合致する累進屈折力レンズを、レンズ発注者(レンズ受領者)に送付する。
累進部における度数の分布は、基本的には受注に係る遠用処方度数及び処方加入度数を満たせば任意に設定される。
【0003】
累進屈折力レンズシリーズとして、特許第6604959号公報(特許文献1)に記載のものが知られている。
このシリーズ(累進屈折力レンズ群)は、近用部(近用領域)における近用度数が共通し、累進部(中間領域)の所定部分(例えばフィッティングポイント)の度数が共通して予め設定された目標距離に対応しており、遠用部(特定領域)における度数が互いに異なっている複数の累進屈折力レンズを含んでいる。
フィッティングポイントは、装用時の基準点(瞳孔位置)であり、アイポイントとも呼ばれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記累進屈折力レンズシリーズでは、近用度数及び累進部内の所定位置(フィッティングポイント)の度数が共通しているところ、遠用部の度数が互いに異なっているため、遠用処方度数及びこれに対する加入度数(加入割合)を中心とした一般的な累進屈折力レンズの取扱に馴染み難い。よって、現存する累進屈折力レンズの受発注システムをそのまま使用することは困難で、このシリーズへの対応にはコストがかかる。
そこで、本発明の主な目的は、コストがより低減され、より効率良くフィッティングポイントでの度数のバリエーション等のニーズに対応可能な累進屈折力レンズシリーズを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、累進屈折力レンズシリーズにおいて、近くの距離にある物を見るための近用部と、前記近くの距離よりも遠くの距離にある物を見るための遠用部と、前記遠用部と前記近用部との間の部分であって、前記遠用部から前記近用部にかけて度数が連続的に変化する中間部と、を有する複数の累進屈折力レンズから成る累進屈折力レンズシリーズであって、各前記累進屈折力レンズにおいて、前記遠用部における度数である遠用度数が共通していると共に、前記近用部における度数である近用度数が共通しており、更に、前記中間部にフィッティングポイントが配置されており、前記フィッティングポイントにおける度数である特定度数は、互いに異なっており、各前記特定度数を換算した視距離に基づいて設定されていることを特徴とするものである。
請求項2に記載の発明は、上記発明において、各前記特定度数は、前記視距離が等間隔となるように設定されていることを特徴とするものである。
上記目的を達成するため、請求項3に記載の発明は、累進屈折力レンズシリーズにおいて、近くの距離にある物を見るための近用部と、前記近くの距離よりも遠くの距離にある物を見るための遠用部と、前記遠用部と前記近用部との間の部分であって、前記遠用部から前記近用部にかけて度数が連続的に変化する中間部と、を有する複数の累進屈折力レンズから成る累進屈折力レンズシリーズであって、各前記累進屈折力レンズにおいて、前記遠用部における度数である遠用度数が共通していると共に、前記近用部において前記遠用度数に対して加入する度数である第1加入度数が共通しており、更に、前記中間部にフィッティングポイントが配置されており、前記フィッティングポイントにおいて前記遠用度数に対して加入する度数である第1特定加入度数は、互いに異なっており、各前記第1特定加入度数を換算した視距離に基づいて設定されていることを特徴とするものである。
請求項4に記載の発明は、上記発明において、各前記第1特定加入度数は、前記視距離が等間隔となるように設定されていることを特徴とするものである。
上記目的を達成するため、請求項5に記載の発明は、累進屈折力レンズシリーズにおいて、近くの距離にある物を見るための近用部と、前記近くの距離よりも遠くの距離にある物を見るための遠用部と、前記遠用部と前記近用部との間の部分であって、前記遠用部から前記近用部にかけて度数が連続的に変化する中間部と、を有する複数の累進屈折力レンズから成る累進屈折力レンズシリーズであって、各前記累進屈折力レンズにおいて、前記近用部における度数である近用度数が共通していると共に、前記遠用部において前記近用度数に対して加入する度数である第2加入度数が共通しており、更に、前記中間部にフィッティングポイントが配置されており、前記フィッティングポイントにおいて前記近用度数に対して加入する度数である第2特定加入度数は、互いに異なっており、各前記第2特定加入度数を換算した視距離に基づいて設定されていることを特徴とするものである。
請求項6に記載の発明は、上記発明において、各前記第2特定加入度数は、前記視距離が等間隔となるように設定されていることを特徴とするものである。
請求項7に記載の発明は、上記発明において、各前記累進屈折力レンズにおいて、幾何学中心を基準とした前記フィッティングポイントの位置は、共通しており、前記近用部、前記遠用部、及び前記フィッティングポイントにおける各度数を満たす前面及び後面の少なくとも一方の形状は、互いに異なっていることを特徴とするものである。
請求項8に記載の発明は、上記発明において、各前記累進屈折力レンズにおいて、前面及び後面の形状は、前記近用部及び前記遠用部の各度数を満たす状態で共通しており、幾何学中心を基準とした前記フィッティングポイントの位置は、前記フィッティングポイントにおける度数を満たすように互いに異なっていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の主な効果は、コストがより低減され、より効率良くフィッティングポイントでの度数のバリエーション等のニーズに対応可能な累進屈折力レンズシリーズが提供されることである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1形態に係る累進屈折力レンズシリーズに属する累進屈折力レンズの模式的な前面図である。
【
図2】本発明の第1形態における1つの累進屈折力レンズシリーズ内の累進屈折力レンズのバリエーションの決定に用いられるグラフである。
【
図3】第1形態での第1の設計例に係る累進屈折力レンズ上の上下方向での位置Y[mm](横軸)と加入度数ADD[D](縦軸)との関係を示すグラフである。
【
図4】第1形態での第2の設計例に係る累進屈折力レンズ上の上下方向での位置Y[mm](横軸)と加入度数ADD[D](縦軸)との関係を示すグラフである。
【
図5】第1形態での第2の設計例に係る累進屈折力レンズ上の各種の基準点のレイアウトを示す模式的な前面図である。
【
図6】第2形態での第1の設計例に係る累進屈折力レンズ上の上下方向での位置Y[mm](横軸)と加入度数ADD[D](縦軸)との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る実施の形態の例が、適宜図面に基づいて説明される。尚、本発明の形態は、これらの例に限定されない。
【0010】
[第1形態]
本発明の第1形態に係る累進屈折力レンズシリーズに属する累進屈折力レンズ1は、
図1に示されるように、装用時のレンズの姿勢を基準として、装用者(ユーザー)の前方からみて円形である(丸レンズ)。累進屈折力レンズ1は、右眼用と左眼用とで異なり、
図1では右眼用が示されている。
図1において、上が装用時の上であり、右が装用者の鼻側である。累進屈折力レンズ1は、丸レンズにおいて度数等が調整された後、眼鏡フレームの形状に合わせる玉型加工がなされたうえで、眼鏡フレームに枠入れされる。装用者は、実際には玉型加工後の累進屈折力レンズ1が枠入れされた眼鏡フレームを装用する。尚、玉型加工前の累進屈折力レンズ1は、円形以外であっても良い。又、累進屈折力レンズ1は、右眼用と左眼用とで互いに同一であっても良い。
累進屈折力レンズ1は、近用部2と、遠用部4と、中間部6と、を有する。
【0011】
近用部2は、累進屈折力レンズ1の下部に配置されている。近用部2は、近景に対応する屈折力を有している。近用部2は、近くの距離にある物を見るための部分である。
遠用部4は、累進屈折力レンズ1の上部に配置されている。遠用部4は、遠景に対応する屈折力を有している。遠用部4は、近用部2における近くの距離よりも遠くの距離にある物を見るための部分である。遠景及び近景、並びに遠用及び近用等は、何れも相対的なものである。
中間部6は、近用部2と遠用部4の間に配置されている。中間部6の度数は、近用部2と遠用部4との間において、連続的に変化する。中間部6の度数は、遠用部4から近用部2へと累進する。
【0012】
累進屈折力レンズ1は、各種の基準点を有している。
累進屈折力レンズ1の円形の中心は、幾何学中心GCである。
又、累進屈折力レンズ1は、フィッティングポイントFPを有する。フィッティングポイントFPは、装用時における装用者の前側からみた瞳孔の位置との対応を想定する点である。ここでは、フィッティングポイントFPは、原則として幾何学中心GCから2mm上方の点であり、設計によっては幾何学中心GC等を基準とした位置が変更され得る点である。
更に、累進屈折力レンズ1は、遠用基準点FVを有する。遠用基準点FVは、遠用部4内に配置され、ここでは遠用部4の下辺部であって、幾何学中心GCの16mm上方の点とされる。遠用基準点FVは、累進屈折力レンズ1の遠用度数を測定する基準点である。遠用基準点FVでの屈折力は、例えば、処方により指定された遠用度数(処方遠用度数)に基づいて設定される。
又更に、累進屈折力レンズ1は、近用基準点NVを有する。近用基準点NVは、近用部2内に配置され、ここでは近用部2の上辺部であって、幾何学中心GCの12mm下方、更に2.3mm鼻側の点とされる。近用基準点NVは、累進屈折力レンズ1の近用度数を測定する基準点である。近用基準点NVでの屈折力は、例えば、処方遠用度数、及び処方により指定された加入度数(処方加入度数)に基づいて設定される。
フィッティングポイントFPは、遠用基準点FVと近用基準点NVの間にあり、処方遠用度数に対して所定の加入度数を有している。フィッティングポイントFPにおける加入度数の絶対値は、近用基準点NVにおける処方加入度数の絶対値より小さい。
尚、各種の基準点の配置(レイアウト)、設定の有無等は、上述のものに限られない。
【0013】
一般に、累進屈折力レンズ1は、用途に合わせ、遠近累進、中近累進、及び近近累進の3つのカテゴリに大別される。
遠近累進の累進屈折力レンズ1では、フィッティングポイントFP付近で遠距離を見ることに適した設計が施されている。
中近累進の累進屈折力レンズ1では、フィッティングポイントFP付近で中間距離を見ることに適した設計が施されている。
近近累進の累進屈折力レンズ1では、フィッティングポイントFP付近で近距離を見ることに適した設計が施されている。
例えば、遠近累進の累進屈折力レンズ1におけるフィッティングポイントFPでの加入割合は、0%以上15%未満であり、中近累進の累進屈折力レンズ1におけるフィッティングポイントFPでの加入割合は、15%以上50%未満であり、近近累進の累進屈折力レンズ1におけるフィッティングポイントFPでの加入割合は、50%以上70%以下である。
ここで、加入割合は、処方加入度数に対する、注目する点(例えばフィッティングポイントFP)の加入度数の割合であり、即ち「加入割合=(その点の加入度数/処方加入度数)×100」[%]である。
第1形態は、中近累進に関している。
【0014】
フィッティングポイントFPでの見え方は、装用時の瞳孔位置での見え方となるため比較的重要であり、又同一の処方遠用度数及び処方加入度数に適合した装用者群においても個人差を生じている。そして、累進屈折力レンズ1において、個々の見え方の差に可及的に適合させるニーズが存在する。よって、累進屈折力レンズシリーズにおいて、互いに同じ処方遠用度数及び処方加入度数を有しつつ、フィッティングポイントFPでの度数が互いに異なるバリエーションを持たせることが有用である。
図2は、第1形態におけるバリエーションの決定に関するグラフである。当該グラフの横軸は、フィッティングポイントFPでの加入割合である。当該グラフの縦軸は、フィッティングポイントFPでの視距離[cm]である。ここで、視距離は、ピントの合う距離であり、装用者が見たい距離である。又、以下、複雑さを抑制するため、装用者の調節力は0.00D(ディオプター)であることが、前提とされている。
加入割合と視距離の関係は、加入割合の増加に応じて視距離が常に減少するものであり、その減少の度合(曲線の接線の傾き)が加入割合の増加に応じて減少するものである。尚、度数と視距離の関係は、加入割合と視距離の関係と同様である。
第1形態では、フィッティングポイントFPにおける加入割合を換算して得られる視距離が等分されるような加入割合の群が求められ、その加入割合の群をバリエーションとして持つ累進屈折力レンズシリーズが決定される。
尚、第1形態において、各累進屈折力レンズの処方遠用度数(遠用度数)は共通している。又、各累進屈折力レンズの処方加入度数(第1加入度数)は共通しており、よって各累進屈折力レンズの近用度数は共通している。
【0015】
第1形態では、累進屈折力レンズシリーズに属する累進屈折力レンズ1の群におけるフィッティングポイントFPでの加入割合の下限値,上限値が、順に15%,50%とされる。
又、累進屈折力レンズシリーズに属する累進屈折力レンズ1の数が、8とされる。
尚、第1形態において、処方加入度数は2.00Dであるところ、処方加入度数が他の値であっても、導出される加入割合の群は同じである。
【0016】
かような条件におけるバリエーションは、次の表1に示される通りである。
【0017】
【0018】
即ち、設計タイプ1の累進屈折力レンズ1において、フィッティングポイントFPでの加入割合はシリーズの下限となる15.0%であり、度数は0.30Dで、視距離は333.33cmである。
又、設計タイプ8の累進屈折力レンズ1において、フィッティングポイントFPでの加入割合はシリーズの上限となる50.0%であり、度数は1.00Dで、視距離は100.00cmである。
そして、設計タイプ1~8では、視距離が、隣接する設計タイプに対し等間隔(33.33ステップ)となっている。
又、設計タイプ1~8では、次の設計タイプに対する加入割合の間隔が、設計タイプの番号が増えるほど大きくなっている。例えば、設計タイプ1,2間の加入割合の差は0.03であるのに対し、設計タイプ7,8間の加入割合の差は0.25となっている。
【0019】
仮に、第1形態と異なり、フィッティングポイントFPでの加入割合が互いに等間隔である累進屈折力レンズ1の群を累進屈折力レンズシリーズとした場合、特に加入割合が大きい領域(加入割合の上限値側の領域)において、さほど視距離が変わらず装用者も区別し難い累進屈折力レンズ1が多く存在することとなり、効率が悪い。
又、累進屈折力レンズシリーズ中の累進屈折力レンズ1の数を(例えば9個以下程度に)少なくした場合、比較的に大きな視距離の領域における累進屈折力レンズ1同士の視距離の間隔が大きくなり、大きな視距離の領域のカバーが比較的に不足する。
かような場合に対し、第1形態では、フィッティングポイントFPでの視距離が互いに等間隔であるため、視距離の変化の大きい領域ではバリエーションを密に持ち、視距離の変化の小さい領域ではバリエーションを疎に持つことができ、効率良く加入割合の範囲をカバーすることができる。
【0020】
第1形態において、フィッティングポイントFPでの加入割合の上限値及び下限値、並びに累進屈折力レンズシリーズ中の累進屈折力レンズ1の数(分割数)の少なくとも何れかは、任意に変更可能である。
即ち、設計タイプの番号をnとし(設計タイプn、nは自然数でその最大値は分割数nmax、nが小さいほどフィッティングポイントFPでの加入割合の下限側となる)、番号nにおけるフィッティングポイントFPでの加入割合をAnとし、その加入割合の下限値,上限値を順にAmin,Amaxとし、番号nにおけるフィッティングポイントFPでの視距離をLnとし、処方加入度数をPとし、ステップ(視距離の増分)をδとすると、フィッティングポイントFPでの加入割合Anは次の式(1)~(3)で求められる。
【0021】
【0022】
第1形態における中間部6での加入割合の分布は、設計タイプ(番号n)毎に設定された条件を満たしつつ、様々に設計可能である。
以下、設計例が2例挙げられる。
【0023】
第1の設計例は、累進屈折力レンズ1の群における遠用基準点FV、フィッティングポイントFP及び近用基準点NVの幾何学中心GCに対する位置を互いに不変とした場合に係る。尚、各累進屈折力レンズ1に共通して、屈折率は1.60、遠用基準点FVと近用基準点NVの間の上下方向の距離(累進帯長)は21mm、処方遠用度数はS0.00、処方加入度数は2.00と設定されている。これらの値が変わったとしても、以下と同様に設計可能である。
図3は、第1の設計例に係る累進屈折力レンズ1上の上下方向での位置Y[mm](横軸)と加入度数ADD[D](縦軸)との関係を示すグラフである。位置Yは、幾何学中心GCにおいて0とされ、幾何学中心GCから上方において正の値(
図3のグラフでは左側)をとる。又、位置Yの絶対値は、幾何学中心GCから離れるほど増える。
図3では、設計タイプの番号n=1,5,7の3種の累進屈折力レンズ1が示されている。
【0024】
n=1の累進屈折力レンズ1では、中間部6における上下方向での加入度数の分布は、遠用基準点FVに対応する位置Y=16において加入度数ADD=0となっており、フィッティングポイントFPに対応する位置Y=2において加入度数ADD=0.30(加入割合15.0%,15.0%加入)となっており、近用基準点NVに対応する位置Y=-12において加入度数ADD=2.00近傍となっていて、それらの間における加入度数ADDが滑らかにつながれている。近用基準点NVに対応する位置Y=-12において加入度数ADD=2.00丁度とならないのは、透過光補正が入っているためである。
n=5の累進屈折力レンズ1では、中間部6における上下方向での加入度数の分布は、遠用基準点FVに対応する位置Y=16において加入度数ADD=0となっており、フィッティングポイントFPに対応する位置Y=2において加入度数ADD=0.50(加入割合25.0%,25.0%加入)となっており、近用基準点NVに対応する位置Y=-12において加入度数ADD=2.00近傍となっていて、それらの間における加入度数ADDが滑らかにつながれている。
n=7の累進屈折力レンズ1では、中間部6における上下方向での加入度数の分布は、遠用基準点FVに対応する位置Y=16において加入度数ADD=0となっており、フィッティングポイントFPに対応する位置Y=2において加入度数ADD=0.75(加入割合37.5%,37.5%加入)となっており、近用基準点NVに対応する位置Y=-12において加入度数ADD=2.00近傍となっていて、それらの間における加入度数ADDが滑らかにつながれている。
【0025】
これらの累進屈折力レンズ1において、遠用基準点FVに対応する位置での加入度数ADDは共通して0となっており、近用基準点NVに対応する位置での加入度数ADDは共通して2.00(処方加入度数)となっている。そして、これらの累進屈折力レンズ1において、フィッティングポイントFPでの加入度数ADDに、バリエーションが設けられている(ADD=0.30,0.50,0.75)。
これらの累進屈折力レンズ1では、対応する加入度数ADDの分布を有するように、各中間部6における前面(装用時の物体側の面)及び後面(装用時の眼側の面)の少なくとも一方の形状が設計される。
又、他の番号(n=2~4,6,8)の累進屈折力レンズ1についても、同様にそれぞれ設計される。
【0026】
第2の設計例は、累進屈折力レンズ1の群における中間部6の前面及び後面の形状を互いに不変とした場合に係る。尚、第1の設計例と同様に、各累進屈折力レンズ1に共通して、屈折率は1.60、遠用基準点FVと近用基準点NVの間の上下方向の距離(累進帯長)は21mm、処方遠用度数はS0.00、処方加入度数は2.00と設定されている。これらの値が変わったとしても、以下と同様に設計可能である。
図4は、第2の設計例に係る累進屈折力レンズ1上の上下方向での位置Y[mm](横軸)と加入度数ADD[D](縦軸)との関係を示すグラフである。第2の設計例では、第1の設計例における設計タイプの番号n=5の累進屈折力レンズ1(25.0%加入)と同じ加入度数ADDの分布を、全ての累進屈折力レンズ1が持っている。
第2の設計例では、フィッティングポイントFPの(幾何学中心GCに対する)位置を変えていくことで、バリエーションが得られる。
【0027】
図5には、設計タイプの番号n=1,5,7の3種の累進屈折力レンズ1に係る各種の基準点のレイアウトが示されている。
n=1の累進屈折力レンズ1では、フィッティングポイントFPでの加入度数ADD=0.30としたいところ、
図4の分布において加入度数ADD≒0.30となるのは位置Y=5であるため、フィッティングポイントFPを幾何学中心GCから5mm上方の点(フィッティングポイントFP1)であると設定する。尚、厳密にはフィッティングポイントFP1での加入度数ADD=0.29であるところ、取扱性を向上する観点から、幾何学中心GC等からの距離が整数値等の区切りの良い値となる点が、n=1の累進屈折力レンズ1のフィッティングポイントFP1として指定される。これと異なり、取扱性より正確性を重視して、加入度数ADD=0.30となる位置Yがより正確に定められても良い。
n=5の累進屈折力レンズ1では、フィッティングポイントFPでの加入度数ADD=0.50としたいところ、
図4の分布において加入度数ADD=0.50となるのは位置Y=2であるため、フィッティングポイントFPを幾何学中心GCから2mm上方の点(フィッティングポイントFP5)であると設定する。
n=7の累進屈折力レンズ1では、フィッティングポイントFPでの加入度数ADD=0.75としたいところ、
図4の分布において加入度数ADD≒0.75となるのは位置Y=-1.0であるため、フィッティングポイントFPを幾何学中心GCから1mm下方の点(フィッティングポイントFP7)であると設定する。尚、厳密にはフィッティングポイントFP7での加入度数ADD=0.78であるところ、取扱性を向上する観点から、幾何学中心GC等からの距離が区切りの良い値となる点が、n=7の累進屈折力レンズ1のフィッティングポイントFP7として指定される。これと異なり、取扱性より正確性を重視して、加入度数ADD=0.75となる位置Yがより正確に定められても良い。
【0028】
これらの累進屈折力レンズ1において、遠用基準点FVに対応する位置での加入度数ADDは共通して0となっており、近用基準点NVに対応する位置での加入度数ADDは共通して2.00(処方加入度数)となっている。そして、これらの累進屈折力レンズ1において、フィッティングポイントFP1~FP7に対応する位置での加入度数ADDに、バリエーションが設けられている(ADD≒0.30,0.50,0.75)。
これらの累進屈折力レンズ1では、フィッティングポイントFP1~FP7において番号nに応じた加入度数ADDを有するように、フィッティングポイントFPの位置が設計される。
又、他の番号(n=2~4,6,8)の累進屈折力レンズ1についても、同様にそれぞれ設計される。
【0029】
第1形態では、近くの距離にある物(近景)を見るための近用部2と、その近くの距離よりも遠くの距離にある物(遠景)を見るための遠用部4と、遠用部4と近用部2との間の部分であって、遠用部4から近用部2にかけて度数が連続的に変化する中間部6と、を有する複数の累進屈折力レンズ1から成る累進屈折力レンズシリーズであって、各累進屈折力レンズ1において、遠用部4における度数である処方遠用度数が共通していると共に、近用部2において処方遠用度数に対して加入する度数である第1加入度数としての処方加入度数が共通しており、更に、中間部6にフィッティングポイントFPが配置されており、フィッティングポイントFPにおける処方遠用度数に対する各加入度数(第1特定加入度数)に係る加入割合は、互いに異なっており、各加入割合(に係る第1特定加入度数)を換算した視距離に基づいて設定されている。
よって、コストがより低減され、より効率良くフィッティングポイントFPでの度数のバリエーション等のニーズに対応可能な累進屈折力レンズシリーズが提供される。
【0030】
更に、第1特定加入度数は、視距離が等間隔となるように設定されている。
よって、更に効率良くフィッティングポイントFPでの度数のバリエーション等のニーズに対応可能である。
尚、第1特定加入度数を設定するための視距離は、完全に同一の間隔である必要はない。例えば、各間隔は、全間隔の平均値に対して±20%の値を適用して得られる上下限の範囲内に入っていれば、一部又は全部において離散していても良い。あるいは、±20%に代えて、±10%であっても良いし、±5%であっても良いし、±2%であっても良い。
【0031】
又、処方遠用度数に処方加入度数を加味した度数が近用度数であり、処方遠用度数に第1特定加入度数を加味した度数がフィッティングポイントFPでの度数であるため、第1形態では、近くの距離にある物(近景)を見るための近用部2と、その近くの距離よりも遠くの距離にある物(遠景)を見るための遠用部4と、遠用部4と近用部2との間の部分であって、遠用部4から近用部2にかけて度数が連続的に変化する中間部6と、を有する複数の累進屈折力レンズ1から成る累進屈折力レンズシリーズであって、各累進屈折力レンズ1において、遠用部4における度数である処方遠用度数が共通していると共に、近用部2における度数である近用度数が共通しており、更に、中間部6にフィッティングポイントFPが配置されており、フィッティングポイントFPにおける度数である特定度数は、互いに異なっており、各特定度数を換算した視距離に基づいて(視距離が等間隔となるように)設定されている。
よって、コストがより低減され、より効率良くフィッティングポイントFPでの度数のバリエーション等のニーズに対応可能な累進屈折力レンズシリーズが提供される。
【0032】
更に、第1形態の第1の設計例では、各累進屈折力レンズ1において、幾何学中心GCを基準としたフィッティングポイントFPの位置が共通しており、近用部2、遠用部4、及びフィッティングポイントFPにおける各度数(処方加入度数、処方遠用度数、特定度数)を満たす前面及び後面の少なくとも一方の形状が互いに異なっている。
よって、フィッティングポイントFPの取扱性に一層優れた累進屈折力レンズシリーズが提供される。
【0033】
又、第1形態の第2の設計例では、各累進屈折力レンズ1において、前面及び後面の形状は、近用部2及び遠用部4の各度数(処方加入度数、処方遠用度数)を満たす状態で共通しており、幾何学中心GCを基準としたフィッティングポイントFPの位置は、その度数を満たすように互いに異なっている。
よって、同一形状の累進屈折力レンズ1を用いることでコスト面で一層優れた累進屈折力レンズシリーズが提供される。
【0034】
[第2形態]
本発明の第2形態に係る累進屈折力レンズシリーズは、中近累進に代えて近近累進に関するものとしたことを除き、第1形態と同様に成る。第2形態においても、第1形態と同様、装用者の調節力は0.00Dであることが、前提とされている。
近近累進においても、上記式(1)~(3)は成り立つ。
第2形態では、累進屈折力レンズシリーズに属する累進屈折力レンズ1の群におけるフィッティングポイントFPでの加入割合の下限値Amin,上限値Amaxは、順に50%,70%とされる。又、分割数nmaxは5とされる。第2形態における遠用基準点FVは、幾何学中心GCから14mm上方であり、フィッティングポイントFPは、原則として幾何学中心GCから4mm上方であり、近用基準点NVは、幾何学中心GCから8mm下方で2mm鼻側である。尚、第2形態においても、各種の値は任意に変更可能である。
更に、第2形態では、近用基準点NVでの度数(処方近用度数)及びこれに対する遠用基準点FVでの加入度数(処方加入度数)が処方され、指定される。処方近用度数は、近用部2での見え方を想定して処方される。近用部2での見え方は、装用者が最も良く見たいと望んでいる有限の距離(近用作業距離)による。ここでは、処方近用度数はS0.00Dであり、処方加入度数は-1.50Dである。処方近用度数がS0.00Dとされると、例えば-2.00Dのレンズでの矯正により無限遠方が見える装用者であって希望する近用作業距離が50cm(=2.00D)である装用者(遠近累進で処方遠用度数S-2.00D,処方加入度数ADD2.00Dが適合している装用者)に適合した近近累進となる。近用作業距離が50cmである場合の遠方(遠用部4)の視距離は、処方加入度数が-1.50であることから、50-(-1/1.5)=116.67cmとなる。
又、各累進屈折力レンズ1に共通して、屈折率は1.60、遠用基準点FVと近用基準点NVの間の上下方向の距離(累進帯長)は21mmと設定されている。尚、これらの値が変わったとしても、以下と同様に設計可能である。又、近用作業距離が40cm等に変わったとしても、以下と同様に設計可能である。
【0035】
かような条件におけるバリエーションは、次の表2に示される通りである。
【0036】
【0037】
即ち、第2形態に係るn=1の累進屈折力レンズ1において、フィッティングポイントFPでの加入割合はシリーズの下限となる50.0%であり、度数は-0.75Dであり、度数の逆数(1/度数)は-133.33であり、視距離は「近用作業距離-(1/度数)であることから50-(-133.33)=183.33cmである。
又、第2形態に係るn=5=nmaxの累進屈折力レンズ1において、フィッティングポイントFPでの加入割合はシリーズの上限となる70.0%であり、度数は-1.05Dであり、度数の逆数は-95.24であり、視距離は50-(-95.24)=145.24cmである。
そして、第2形態のn=1~5の累進屈折力レンズ1では、視距離が、隣接する設計タイプに対し等間隔(約9.52ステップ、式(3)参照)となっている。
又、n=1~5の累進屈折力レンズ1では、次の設計タイプに対する度数の間隔が、設計タイプの番号nが増えるほど大きくなっている。例えば、設計タイプ1,2間の度数の差の絶対値は0.06であるのに対し、設計タイプ4,5間の度数の差の絶対値は0.10となっている。
【0038】
仮に、第2形態と異なり、フィッティングポイントFPでの加入割合が互いに等間隔である累進屈折力レンズ1の群を累進屈折力レンズシリーズとした場合、特に加入割合が大きい領域において、さほど視距離が変わらず装用者も区別し難い累進屈折力レンズ1が多く存在することとなり、効率が悪い。
又、累進屈折力レンズシリーズ中の累進屈折力レンズ1の数を少なくした場合、比較的に大きな視距離の領域における累進屈折力レンズ1同士の視距離の間隔が大きくなり、大きな視距離の領域のカバーが比較的に不足する。
かような場合に対し、第2形態では、フィッティングポイントFPでの視距離が互いに等間隔であるため、視距離の変化の大きい領域ではバリエーションを密に持ち、視距離の変化の小さい領域ではバリエーションを疎に持つことができ、効率良く加入割合の範囲をカバーすることができる。
【0039】
第2形態における中間部6での加入割合の分布は、設計タイプ(番号n)毎に設定された条件を満たしつつ、様々に設計可能であり、第1形態と同様、第1,第2の設計例によっても設計可能である。
【0040】
第2形態において第1の設計例を用いた場合、設計タイプの番号n=1,3,4の3種について
図6に示されるように、遠用基準点FVにおいて互いに同じ加入度数ADD=-1.50を持ち、近用基準点NVにおいて互いに同じ加入度数ADD=0.00を持ち、フィッティングポイントFPにおいて互いに相違する加入度数ADD=-0.75,-0.88,-0.95・・を持つ設計がなされる。
【0041】
即ち、n=1の累進屈折力レンズ1では、中間部6における上下方向での加入度数の分布は、遠用基準点FVに対応する位置Y=14において加入度数ADD=-1.50となっており、フィッティングポイントFPに対応する位置Y=4において加入度数ADD=-0.75(加入割合50.0%,50.0%加入)となっており、近用基準点NVに対応する位置Y=-8において加入度数ADD=0.00近傍となっていて、それらの間における加入度数ADDが滑らかにつながれている。
又、n=3の累進屈折力レンズ1では、中間部6における上下方向での加入度数の分布は、遠用基準点FVに対応する位置Y=14において加入度数ADD=-1.50となっており、フィッティングポイントFPに対応する位置Y=4において加入度数ADD=-0.88(加入割合58.3%,58.3%加入)となっており、近用基準点NVに対応する位置Y=-8において加入度数ADD=0.00近傍となっていて、それらの間における加入度数ADDが滑らかにつながれている。
更に、n=4の累進屈折力レンズ1では、中間部6における上下方向での加入度数の分布は、遠用基準点FVに対応する位置Y=14において加入度数ADD=-1.50となっており、フィッティングポイントFPに対応する位置Y=4において加入度数ADD=-0.95(加入割合63.6%,63.6%加入)となっており、近用基準点NVに対応する位置Y=-8において加入度数ADD=0.00近傍となっていて、それらの間における加入度数ADDが滑らかにつながれている。
又、他の番号(n=2~4,6,8)の累進屈折力レンズ1についても、同様にそれぞれ設計される。
【0042】
これらの累進屈折力レンズ1では、対応する加入度数ADDの分布を有するように、各中間部6における前面及び後面の少なくとも一方の形状が設計される。
【0043】
第2形態では、近くの距離にある物(近景)を見るための近用部2と、その近くの距離よりも遠くの距離にある物(遠景)を見るための遠用部4と、遠用部4と近用部2との間の部分であって、遠用部4から近用部2にかけて度数が連続的に変化する中間部6と、を有する複数の累進屈折力レンズ1から成る累進屈折力レンズシリーズであって、各累進屈折力レンズ1において、近用部2における度数である処方近用度数が共通していると共に、遠用部4において処方近用度数に対して加入する度数である第2加入度数としての処方加入度数が共通しており、更に、中間部6にフィッティングポイントFPが配置されており、フィッティングポイントFPにおける処方近用度数に対する各加入度数(第2特定加入度数)に係る加入割合は、互いに異なっており、各加入割合(に係る第2特定加入度数)を換算した視距離に基づいて(視距離が等間隔となるように)設定されている。
よって、コストがより低減され、より効率良くフィッティングポイントFPでの度数のバリエーション等のニーズに対応可能な累進屈折力レンズシリーズが提供される。
【0044】
又、処方近用度数に処方加入度数を加味した度数が近用度数であり、処方近用度数に第2特定加入度数を加味した度数がフィッティングポイントFPでの度数であるため、第1形態では、近くの距離にある物(近景)を見るための近用部2と、その近くの距離よりも遠くの距離にある物(遠景)を見るための遠用部4と、遠用部4と近用部2との間の部分であって、遠用部4から近用部2にかけて度数が連続的に変化する中間部6と、を有する複数の累進屈折力レンズ1から成る累進屈折力レンズシリーズであって、各累進屈折力レンズ1において、近用部2における度数である処方近用度数が共通していると共に、遠用部4における度数である遠用度数が共通しており、更に、中間部6にフィッティングポイントFPが配置されており、フィッティングポイントFPにおける度数である特定度数は、互いに異なっており、各特定度数を換算した視距離に基づいて(視距離が等間隔となるように)設定されている。
よって、コストがより低減され、より効率良くフィッティングポイントFPでの度数のバリエーション等のニーズに対応可能な累進屈折力レンズシリーズが提供される。
【符号の説明】
【0045】
1・・累進屈折力レンズ、2・・近用部、4・・遠用部、6・・中間部、FP・・フィッティングポイント。