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特開2023-128033疾患評価支援方法および疾患評価支援装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128033
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】疾患評価支援方法および疾患評価支援装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/48 20060101AFI20230907BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20230907BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20230907BHJP
   C12Q 1/04 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
G01N33/48 M
G01N33/48 P
G01N33/53 Y
G01N33/574 D
C12Q1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022032079
(22)【出願日】2022-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100110847
【弁理士】
【氏名又は名称】松阪 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100136526
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100136755
【弁理士】
【氏名又は名称】井田 正道
(72)【発明者】
【氏名】荻 寛志
(72)【発明者】
【氏名】末木 博
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
【Fターム(参考)】
2G045AA24
2G045AA25
2G045AA26
2G045BA13
2G045BB20
2G045BB25
2G045CB01
2G045CB02
2G045FB03
2G045JA01
2G045JA07
4B063QA01
4B063QA18
4B063QA20
4B063QQ08
4B063QS32
4B063QS36
4B063QS39
4B063QX02
(57)【要約】
【課題】患者の疾患の適切な評価を支援する。
【解決手段】疾患評価支援方法は、対象患者の疾患組織の一部を三次元的に培養した細胞を用いて、所定の薬剤に対する薬効評価試験のデータを得る工程と、対象患者の疾患組織から作製した組織標本の多重免疫染色のデータを得る工程と、薬効評価試験の結果と多重免疫染色の解析結果とをディスプレイに並べて表示する工程とを備える。これにより、対象患者の疾患の適切な評価を支援することができる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
疾患評価支援方法であって、
a)対象患者の疾患組織の一部を三次元的に培養した細胞を用いて、所定の薬剤に対する薬効評価試験のデータを得る工程と、
b)前記対象患者の前記疾患組織から作製した組織標本の多重免疫染色のデータを得る工程と、
c)前記薬効評価試験の結果と前記多重免疫染色の解析結果とをディスプレイに並べて表示する工程と、
を備えることを特徴とする疾患評価支援方法。
【請求項2】
請求項1に記載の疾患評価支援方法であって、
前記疾患組織が、がん組織であることを特徴とする疾患評価支援方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の疾患評価支援方法であって、
前記a)工程における前記疾患組織の前記一部と、前記b)工程にて前記組織標本の作製に利用される前記疾患組織の部位とが、互いに近接することを特徴とする疾患評価支援方法。
【請求項4】
疾患評価支援方法であって、
a)対象患者の血液循環がん細胞を三次元的に培養した細胞を用いて、所定の薬剤に対する薬効評価試験のデータを得る工程と、
b)前記対象患者の疾患組織であるがん組織から作製した組織標本の多重免疫染色のデータを得る工程と、
c)前記薬効評価試験の結果と前記多重免疫染色の解析結果とをディスプレイに並べて表示する工程と、
を備えることを特徴とする疾患評価支援方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1つに記載の疾患評価支援方法であって、
前記薬効評価試験の結果と前記多重免疫染色の解析結果とを用いて前記所定の薬剤の評価値を求め、前記ディスプレイに表示する工程をさらに備えることを特徴とする疾患評価支援方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1つに記載の疾患評価支援方法であって、
複数の患者に対する、前記薬効評価試験の結果、前記多重免疫染色の解析結果、治療情報、および、治療結果情報が予め準備されており、
前記疾患評価支援方法が、
前記複数の患者のうち、前記薬効評価試験の結果および前記多重免疫染色の解析結果が前記対象患者と近い患者を参照患者として特定し、前記参照患者の前記治療情報および前記治療結果情報を前記ディスプレイに表示する工程をさらに備えることを特徴とする疾患評価支援方法。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1つに記載の疾患評価支援方法であって、
前記a)工程において、複数種類の薬剤に対する前記薬効評価試験が、イメージング装置を用いて同時に行われることを特徴とする疾患評価支援方法。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1つに記載の疾患評価支援方法であって、
前記a)工程において、前記所定の薬剤の複数の濃度に対する前記薬効評価試験が、イメージング装置を用いて同時に行われることを特徴とする疾患評価支援方法。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1つに記載の疾患評価支援方法であって、
前記多重免疫染色の解析結果が、免疫細胞または/および腫瘍細胞の解析結果を含むことを特徴とする疾患評価支援方法。
【請求項10】
請求項9に記載の疾患評価支援方法であって、
前記多重免疫染色の解析結果が、免疫細胞の各種類の割合または個数を含むことを特徴とする疾患評価支援方法。
【請求項11】
請求項9または10に記載の疾患評価支援方法であって、
前記多重免疫染色の解析結果が、腫瘍やその周囲の各種領域における免疫細胞の解析結果を含むことを特徴とする疾患評価支援方法。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれか1つに記載の疾患評価支援方法であって、
前記多重免疫染色の解析結果が、少なくとも1種類の薬剤の効果の予測を含むことを特徴とする疾患評価支援方法。
【請求項13】
疾患評価支援装置であって、
対象患者の疾患組織の一部を三次元的に培養した細胞を用いた、所定の薬剤に対する薬効評価試験のデータと、前記対象患者の前記疾患組織から作製した組織標本の多重免疫染色のデータとを記憶する記憶部と、
前記薬効評価試験の結果と前記多重免疫染色の解析結果とをディスプレイに並べて表示する表示制御部と、
を備えることを特徴とする疾患評価支援装置。
【請求項14】
疾患評価支援装置であって、
対象患者の血液循環がん細胞を三次元的に培養した細胞を用いた、所定の薬剤に対する薬効評価試験のデータと、前記対象患者の疾患組織であるがん組織から作製した組織標本の多重免疫染色のデータとを記憶する記憶部と、
前記薬効評価試験の結果と前記多重免疫染色の解析結果とをディスプレイに並べて表示する表示制御部と、
を備えることを特徴とする疾患評価支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疾患評価支援方法および疾患評価支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な疾患は、同一の診断名が付く場合においても患者自身の生体環境に大きく依存し、治療に対する効果も差が生じることが多い。従来、本邦においては、過去のエビデンス(患者の臨床情報と治療結果の積み重ね)に基づき治療のガイドラインが定められ、血液検査等の臨床検査とガイドラインに沿って治療法が決定される。しかしながら、エビデンスを構築するもととなっている情報は、これまでの技術的あるいは倫理的な制約等から、個人の疾患状況を同定し、治療方針の決定に利用するには十分ではない。例えば、がん治療の化学療法においては、多くのがんで複数種類の選択肢が存在するが、投薬後の治療効果や有害事象の状況をもとに薬剤を変更していくといった方法がとられる。
【0003】
このような状況は患者の身体的負担と治療費の増大を招くため、近年、個人の生体環境・疾患状況を的確に把握し、それらを元に最適な治療を施す「患者の層別化」「個別化医療」といった取り組みが注目されている。そういった技術の一つが、がん治療における次世代シーケンサーを用いた遺伝子パネル検査である。これは切除した腫瘍組織を溶解し、多数の遺伝子発現量を解析する方法であるが、技術的な欠点や適用対象の制約などを理由に、残念ながら本邦では2021年時点で治療に結びついた例は10%に満たない。遺伝子パネル検査の欠点として、直接的に薬剤の効果を調べることができないこと、細胞毎の情報が得られないこと、細胞の空間的な情報が得られないこと等があげられる。
【0004】
直接的に薬剤の効果を調べる方法として、患者由来の生体材料から三次元的に細胞を培養し、薬剤効果を調べる手法が研究されている(例えば、特許文献1および非特許文献1参照)。当該手法を用いることで、患者の生体環境はわからぬものの、薬剤効果があるか無いかという点は、高い精度で予測できることが予想される。
【0005】
遺伝子パネル検査での他の欠点である「細胞毎の情報」および「空間情報」に関連して、近年、腫瘍の不均一性と腫瘍微小環境が腫瘍の特性と治療効果に大きく関係することが研究によって明らかになりつつあり、それらを解析する手法の一つとして多重免疫染色法が構築されてきた(例えば、特許文献2および非特許文献2~4参照)。多重免疫染色法では、遺伝子パネル検査のような多数の遺伝子についての解析はできないが、単一細胞レベルでかつ位置空間を含めた情報を得ることが可能であり、疾患組織(腫瘍組織)の状態をより詳細に得ることが可能となる。
【0006】
なお、特許文献3では、免疫組織化学法(IHC)によって測定されたPD-L1腫瘍状態が、抗PD-L1抗体治療を使用したがん療法に応答する可能性がより高い患者を同定するための予測的マーカーであり得ることが記載されている。また、非特許文献5および6では、イメージング装置を用いた、ウェルプレート内の3次元腫瘍スフェロイドの観察について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2021-164483号公報
【特許文献2】国際公開第2017/087847号
【特許文献3】特許第6845840号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Nicolas Boucherit et al., "3D Tumor Models and Their Use for the Testing of Immunotherapies", Frontiers in Immunology, December 2020, Volume 11, Article 603640
【非特許文献2】Takahiro Tsujikawa et al., "Quantitative Multiplex Immunohistochemistry Reveals Myeloid-Inflamed Tumor-Immune Complexity Associated with Poor Prognosis", Cell Reports, April 2017, Volume 19, pp.203-217
【非特許文献3】Takahiro Tsujikawa et al., "Prognostic significance of spatial immune profiles in human solid cancers", Cancer Science, 2020, Volume 111, pp.3426-3434
【非特許文献4】Kanako Yoshimura et al., "Spatial Profiles of Intratumoral PD-1+ Helper T Cells Predict Prognosis in Head and Neck Squamous Cell Carcinoma", Frontiers in Immunology, October 2021, Volume 12, Article 769534
【非特許文献5】Leena Mol Thuruthippallil et al., "High-throughput, bright-field imaging of 3D tumor spheroid growth and morphology for therapeutic and efficacy screening: A study using chemotherapeutic compounds", American Association for Cancer Research, December 2015, Volume 14, Issue 12 Supplement 2, B75
【非特許文献6】Sarah Kessel et al., "Real-Time Viability and Apoptosis Kinetic Detection Method of 3D Multicellular Tumor Spheroids Using the Celigo Image Cytometer", Cytometry Part A, 2017, Volume 91A, pp.883-892
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、患者の治療には、治療薬の効果の予測を含む、患者の疾患の適切な評価が重要である。上述のように、三次元的に培養した細胞を用いて薬効評価試験を行う場合、培養自体に時間を要するため、治療開始までに評価できる薬剤の数には制限がある。また、疾患組織の状態を把握することができないため、患者の疾患の十分な評価は困難である。一方、多重免疫染色法では、疾患組織の状態を把握することが可能であるが、直接的に薬剤の効果を調べることはできないため、患者の疾患の評価としては不十分な場合がある。したがって、いずれの場合も、患者の疾患を適切に評価することができない場合がある。
【0010】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、患者の疾患の適切な評価を支援することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明は、疾患評価支援方法であって、a)対象患者の疾患組織の一部を三次元的に培養した細胞を用いて、所定の薬剤に対する薬効評価試験のデータを得る工程と、b)前記対象患者の前記疾患組織から作製した組織標本の多重免疫染色のデータを得る工程と、c)前記薬効評価試験の結果と前記多重免疫染色の解析結果とをディスプレイに並べて表示する工程とを備える。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の疾患評価支援方法であって、前記疾患組織が、がん組織である。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の疾患評価支援方法であって、前記a)工程における前記疾患組織の前記一部と、前記b)工程にて前記組織標本の作製に利用される前記疾患組織の部位とが、互いに近接する。
【0014】
請求項4に記載の発明は、疾患評価支援方法であって、a)対象患者の血液循環がん細胞を三次元的に培養した細胞を用いて、所定の薬剤に対する薬効評価試験のデータを得る工程と、b)前記対象患者の疾患組織であるがん組織から作製した組織標本の多重免疫染色のデータを得る工程と、c)前記薬効評価試験の結果と前記多重免疫染色の解析結果とをディスプレイに並べて表示する工程とを備える。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の疾患評価支援方法であって、前記薬効評価試験の結果と前記多重免疫染色の解析結果とを用いて前記所定の薬剤の評価値を求め、前記ディスプレイに表示する工程をさらに備える。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項1ないし5のいずれか1つに記載の疾患評価支援方法であって、複数の患者に対する、前記薬効評価試験の結果、前記多重免疫染色の解析結果、治療情報、および、治療結果情報が予め準備されており、前記疾患評価支援方法が、前記複数の患者のうち、前記薬効評価試験の結果および前記多重免疫染色の解析結果が前記対象患者と近い患者を参照患者として特定し、前記参照患者の前記治療情報および前記治療結果情報を前記ディスプレイに表示する工程をさらに備える。
【0017】
請求項7に記載の発明は、請求項1ないし6のいずれか1つに記載の疾患評価支援方法であって、前記a)工程において、複数種類の薬剤に対する前記薬効評価試験が、イメージング装置を用いて同時に行われる。
【0018】
請求項8に記載の発明は、請求項1ないし7のいずれか1つに記載の疾患評価支援方法であって、前記a)工程において、前記所定の薬剤の複数の濃度に対する前記薬効評価試験が、イメージング装置を用いて同時に行われる。
【0019】
請求項9に記載の発明は、請求項1ないし8のいずれか1つに記載の疾患評価支援方法であって、前記多重免疫染色の解析結果が、免疫細胞または/および腫瘍細胞の解析結果を含む。
【0020】
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の疾患評価支援方法であって、前記多重免疫染色の解析結果が、免疫細胞の各種類の割合または個数を含む。
【0021】
請求項11に記載の発明は、請求項9または10に記載の疾患評価支援方法であって、前記多重免疫染色の解析結果が、腫瘍やその周囲の各種領域における免疫細胞の解析結果を含む。
【0022】
請求項12に記載の発明は、請求項1ないし11のいずれか1つに記載の疾患評価支援方法であって、前記多重免疫染色の解析結果が、少なくとも1種類の薬剤の効果の予測を含む。
【0023】
請求項13に記載の発明は、疾患評価支援装置であって、対象患者の疾患組織の一部を三次元的に培養した細胞を用いた、所定の薬剤に対する薬効評価試験のデータと、前記対象患者の前記疾患組織から作製した組織標本の多重免疫染色のデータとを記憶する記憶部と、前記薬効評価試験の結果と前記多重免疫染色の解析結果とをディスプレイに並べて表示する表示制御部とを備える。
【0024】
請求項14に記載の発明は、疾患評価支援装置であって、対象患者の血液循環がん細胞を三次元的に培養した細胞を用いた、所定の薬剤に対する薬効評価試験のデータと、前記対象患者の疾患組織であるがん組織から作製した組織標本の多重免疫染色のデータとを記憶する記憶部と、前記薬効評価試験の結果と前記多重免疫染色の解析結果とをディスプレイに並べて表示する表示制御部とを備える。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、薬効評価試験の結果と多重免疫染色の解析結果とを並べて表示することにより、患者の疾患の適切な評価を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】疾患評価支援装置の構成を示す図である。
図2】コンピュータの構成を示す図である。
図3】対象患者の疾患の評価を支援する処理の流れを示す図である。
図4】ディスプレイの表示画像の一例を示す図である。
図5】多重免疫染色の解析結果の他の例を示す図である。
図6】治療結果情報の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、本発明の一の実施の形態に係る疾患評価支援装置1の構成を示す図である。図1では、疾患評価支援装置1以外の構成(記憶部40、イメージング装置41および免疫染色装置42)も破線のブロックにて示している。疾患評価支援装置1は、医師による患者の疾患の評価を支援する装置である。疾患評価支援装置1は、記憶部21と、表示制御部22と、演算部23と、ディスプレイ35とを備える。疾患評価支援装置1は、コンピュータが、所定のプログラムに従って演算処理等を実行することにより実現される。
【0028】
図2はコンピュータ3の構成を示す図である。コンピュータ3は、CPU31と、ROM32と、RAM33と、固定ディスク34と、ディスプレイ35と、入力部36と、読取装置37と、通信部38と、GPU39と、バス30とを含む一般的なコンピュータシステムの構成を有する。CPU31は、各種演算処理を行う。GPU39は、画像処理に関する各種演算処理を行う。ROM32は、基本プログラムを記憶する。RAM33は、各種情報を記憶する。固定ディスク34は、情報記憶を行う。ディスプレイ35は、画像等の各種情報の表示を行う。入力部36は、操作者からの入力を受け付けるキーボード36aおよびマウス36bを備える。読取装置37は、光ディスク、磁気ディスク、光磁気ディスク、メモリカード等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体81から情報の読み取りを行う。通信部38は、外部の装置との間で信号を送受信する。バス30は、CPU31、GPU39、ROM32、RAM33、固定ディスク34、ディスプレイ35、入力部36、読取装置37および通信部38を接続する信号回路である。
【0029】
コンピュータ3では、事前に読取装置37を介して記録媒体81からプログラム811が読み出されて固定ディスク34に記憶されている。プログラム811はネットワークを介して固定ディスク34に記憶されてもよい。コンピュータ3がプログラム811に従って演算処理等を実行することにより、図1の疾患評価支援装置1が実現される。すなわち、コンピュータ3のCPU31、GPU39、ROM32、RAM33、固定ディスク34およびこれらの周辺構成が、疾患評価支援装置1を実現する。疾患評価支援装置1の機能の全部または一部は専用の電気回路により実現されてもよい。また、複数のコンピュータによりこれらの機能が実現されてもよい。
【0030】
図1の記憶部21は、後述の薬効評価試験および多重免疫染色により得られるデータ(すなわち、薬効評価試験データ211および多重免疫染色データ212)を記憶する。演算部23は、多重免疫染色のデータの解析等を行う。表示制御部22は、薬効評価試験の結果および多重免疫染色の解析結果をディスプレイ35に表示する。
【0031】
次に、一の患者(以下、「対象患者」という。)の疾患の評価を支援する処理について、図3を参照しつつ説明する。まず、培養に用いる細胞が準備される。一例では、生検や手術等により対象患者の疾患組織が部分的に摘出され、当該疾患組織から培養に用いる細胞が採取される。対象患者の疾患が、がんである場合には、対象患者の血液循環がん細胞が培養用に採取されてもよい。
【0032】
採取された細胞は、三次元的に培養され、三次元培養細胞が得られる。細胞の三次元的な培養は、特開2021-164483号公報(上記特許文献1)に記載の手法や、Nicolas Boucheritらによる「3D Tumor Models and Their Use for the Testing of Immunotherapies」(Frontiers in Immunology, December 2020, Volume 11, Article 603640)(上記非特許文献1)に記載の手法等と同様にして行われる。例えば、細胞層を順次積層させる手法等が用いられる。対象患者の疾患組織が、がん組織である場合、三次元培養細胞は、がん細胞を含む。
【0033】
続いて、三次元培養細胞を用いた、所定の薬剤に対する薬効評価試験が行われる。本実施の形態では、複数種類の薬剤が準備され、各種類の薬剤の濃度を複数通りに変更したものが、ウェルプレート(例えば、96ウェルプレートや386ウェルプレート等)におけるウェル内の三次元培養細胞にそれぞれ投与される。すなわち、複数のウェル内の三次元培養細胞に対して、種類および濃度が異なる薬剤がそれぞれ投与される。これらの薬剤の投与は、短時間に行われる。なお、三次元培養細胞は、ウェルプレート内で培養されてもよく、薬剤の投与時にウェルプレート内に配置されてもよい。
【0034】
薬剤の投与から所定時間経過後、複数のウェル内の三次元培養細胞が、イメージング装置41を用いて観察される。イメージング装置41は、撮像部および移動機構を有する。移動機構により撮像部を複数のウェルの上方に順に配置することにより、各ウェル内の三次元培養細胞の撮像画像が取得される。複数のウェル内の三次元培養細胞の撮像は、短時間で完了する。イメージング装置41の演算部では、細胞染色による三次元培養細胞の蛍光強度が撮像画像から算出され、当該蛍光強度に基づいて三次元培養細胞の細胞生存率が求められる。このとき、各ウェルの三次元培養細胞に対して、患者、薬剤の種類、薬剤の濃度等が紐付けられており、細胞生存率にも患者、薬剤の種類、薬剤の濃度等が紐付けられる。複数種類の薬剤の複数の濃度における細胞生存率を示すデータは、疾患評価支援装置1に入力され、記憶部21において薬効評価試験データ211として記憶される(ステップS11)。以上のようにして、複数種類の薬剤に対する複数の濃度での薬効評価試験が、イメージング装置41を用いてほぼ同時に行われる。三次元培養細胞の細胞生存率は、Leena Mol Thuruthippallilらによる「High-throughput, bright-field imaging of 3D tumor spheroid growth and morphology for therapeutic and efficacy screening: A study using chemotherapeutic compounds」(American Association for Cancer Research, December 2015, Volume 14, Issue 12 Supplement 2, B75)(上記非特許文献5)に記載のように、明視野撮影と明視野画像から算出されるスフェロイドサイズによって求められてもよい。また、三次元培養細胞の細胞生存率は、疾患評価支援装置1の演算部23により求められてもよい。イメージング装置41を用いることなく、薬効評価試験が行われてもよい。
【0035】
また、対象患者の疾患組織から多重免疫染色用の組織標本が作製される。当該疾患組織は生検や手術等により摘出される。対象患者の疾患が、がんである場合には、当該疾患組織はがん組織であり、組織標本は、がんを含む。上述の三次元培養に用いる細胞が、疾患組織から採取される場合には、多重免疫染色用の組織標本も同じ疾患組織から採取される。このとき、三次元培養に用いる細胞を採取する部位と、多重免疫染色用の組織標本の作製に利用される部位とを、当該疾患組織の異なる領域から採取することも可能であるが、上記2つの部位は互いに近接した部位であることが好ましい。例えば、対象患者の疾患組織が大腸がん等である場合には、上記2つの部位間の距離が10cm以下であることが好ましい。あるいは、上記2つの部位は、生検針で一度に採取される組織、または、メスにより一度に切除される組織に含まれることが好ましい。組織標本は、凍結切片とすることも可能であるが、細胞や組織の形状情報を保全するという観点では、パラフィン包埋される(パラフィン切片とする)ことが好ましい。
【0036】
組織標本が作製されると、多重免疫染色が行われる。多重免疫染色は、例えば、国際公開第2017/087847号(上記特許文献2)に記載の手法や、Takahiro Tsujikawaらによる「Quantitative Multiplex Immunohistochemistry Reveals Myeloid-Inflamed Tumor-Immune Complexity Associated with Poor Prognosis」(Cell Reports, April 2017, Volume 19, pp.203-217)(上記非特許文献2)に記載の手法等と同様にして行われる。本実施の形態では、免疫染色装置42において、使用する抗体の種類を変更しつつ、組織標本に対して免疫染色と撮像とが繰り返される。一例では、AECやDAB等の発色基質を用いて色付けされ、可視光による明視野観察により画像が取得される。これにより、複数種類のタンパク質にそれぞれ対応する複数の画像が取得される。当該複数の画像のデータは、免疫染色装置42から疾患評価支援装置1に入力され、多重免疫染色データ212として記憶部21において記憶される(ステップS12)。
【0037】
続いて、表示制御部22により、薬効評価試験の結果と多重免疫染色の解析結果とがディスプレイ35に並べて表示される(ステップS13)。図4は、ディスプレイ35の表示画像6の一例を示す図である。表示画像6は、第1表示領域61と第2表示領域62とを含む。第1表示領域61には、薬効評価試験の結果が表示され、第2表示領域62には、多重免疫染色の解析結果が表示される。薬効評価試験の結果は、薬効評価試験データ211から求められ、図4の例では、各薬剤における濃度と細胞生存率との関係を示すグラフ、および、細胞生存率が50%となる当該薬剤の濃度(50%阻害濃度とも呼ばれ、以下、「IC50」とも表記する。)が、薬効評価試験の結果として表示される。IC50は、各薬剤の効きやすさを示す値であり、IC50により当該薬剤の効果を精度よく予測することが可能となる。
【0038】
多重免疫染色の解析結果を表示する際には、演算部23により多重免疫染色データ212の解析が行われる。多重免疫染色データ212の解析手法については、様々なものが知られており、例えば、Takahiro Tsujikawaらによる「Prognostic significance of spatial immune profiles in human solid cancers」(Cancer Science, 2020, Volume 111, pp.3426-3434)(上記非特許文献3)に記載の手法や、Kanako Yoshimuraらによる「Spatial Profiles of Intratumoral PD-1+ Helper T Cells Predict Prognosis in Head and Neck Squamous Cell Carcinoma」(Frontiers in Immunology, October 2021, Volume 12, Article 769534)(上記非特許文献4)に記載の手法等が利用可能である。
【0039】
図4の例では、腫瘍細胞および複数種類の免疫細胞(例えば、T細胞やB細胞)の配置を示す画像と、腫瘍の境界領域および腫瘍内(境界領域を除く)のそれぞれにおける複数種類の免疫細胞の個数の割合とが、多重免疫染色データ212の解析により得られ、第2表示領域62に表示されている。なお、図4の第2表示領域62の上段の画像では、実際には、細胞の種類毎に異なる色が用いられている。以上のように、図4の例では、多重免疫染色の解析結果が、免疫細胞および腫瘍細胞の特定を含み、腫瘍の各種領域における、免疫細胞の各種類の割合も含んでいる。これにより、対象患者の疾患組織(ここでは、腫瘍組織)の細胞レベルでの状態を精度よく把握することが可能となる。図4の第2表示領域62において、腫瘍の周囲や腫瘍外に位置する免疫細胞の各種類の割合がさらに表示されてもよく、割合に代えて免疫細胞の個数が表示されてもよい。上記画像の領域、および、免疫細胞の割合を求める領域は、操作者等により設定される。
【0040】
多重免疫染色の解析結果では、免疫細胞の各種類において、所定のタンパク質の発現の有無により、その機能が発揮される状態であるか否か(すなわち、機能的な状態)がさらに区別されてもよい。また、多重免疫染色の解析結果は、細胞の種類の特定を含んでなくてもよい。図5では、第2表示領域62の他の例として、複数種類のタンパク質(マーカー)について陽性である細胞の割合を示す表、および、2種類のタンパク質の各組合せに対する二次元ヒストグラムを示している。
【0041】
さらに、多重免疫染色の解析結果が、薬剤の効果の予測を含んでもよい。例えば、抗PD-L1抗体薬等の効果の予測が、PD-L1免疫染色による腫瘍細胞における陽性率により判定可能である(例えば、特許第6845840号公報(上記特許文献3)等参照)。多重免疫染色の解析により効果が予測される薬剤は、薬効評価試験が行われる薬剤と同じであってもよく、異なっていてもよい。効果が予測される薬剤は、2種類以上であってもよい。多重免疫染色の解析結果は、少なくとも1種類の薬剤の効果の予測を含むことが好ましい。
【0042】
続いて、演算部23では、薬効評価試験が行われた各種類の薬剤に対する評価値が、薬効評価試験の結果と多重免疫染色の解析結果とを用いて求められる。評価値は、当該薬剤の対象患者における薬効予測の値である。以下の評価値の算出例では、一の種類の細胞(以下、「対象細胞」という。)の母集団が、所定の複数のタンパク質の陽性細胞で構成されるものとする。また、注目するタンパク質を「CDa」、「CDb」、「CDc」と表記する。評価値の算出では、対象細胞のうち、CDa陽性細胞の割合HTa、CDb陽性細胞の割合HTb、および、CDc陽性細胞の割合HTcが求められる。そして、薬剤AのIC50(既述の50%阻害濃度)の値DA、薬剤BのIC50の値DB、および、薬剤CのIC50の値DCを用いて、薬剤Aの評価値が数1により求められる。数1中のα0~α6は過去の投薬結果データを集め、多変量解析することにより予め決定されている。
【0043】
(数1)
薬剤Aの評価値=α0+α1*HTa+α2*HTb+α3*HTc+α4*DA+α5*DB+α6*DC
薬剤Bの評価値および薬剤Cの評価値も同様にして求められ、薬剤Aの評価値、薬剤Bの評価値、および、薬剤Cの評価値がディスプレイ35に表示される(ステップS14)。評価値の表示は、必ずしも評価値そのものの表示である必要はない。例えば、評価値が取り得る数値範囲に対して予め設定された複数の区分のうち、各薬剤の評価値が含まれる区分が特定され、当該区分に対して割り当てられた色等の表示により、当該薬剤の評価値が実質的に表示されてもよい。薬剤の評価値を求める式は、数1以外であってもよい。ステップS14における評価値の表示は、評価値の表示を指示する操作者の入力により行われてもよい(後述のステップS15についても同様)。
【0044】
また、疾患評価支援装置1では、薬効評価試験の結果および多重免疫染色の解析結果が対象患者と近い患者が参照患者として特定され、参照患者の治療情報および治療結果情報がディスプレイ35に表示される(ステップS15)。詳細には、外部のサーバ等の記憶部40には、患者データベース401が記憶されて準備されている。患者データベース401では、過去に薬効評価試験データおよび多重免疫染色データを取得し、かつ、治療を行った複数の患者に対して、薬効評価試験の結果、多重免疫染色の解析結果、治療情報、および、治療結果情報が関連付けられている。
【0045】
演算部23では、当該複数の患者のそれぞれに対して、薬効評価試験における各薬剤のIC50の値や、多重免疫染色における免疫細胞の各種類の割合等を変数とする多次元ベクトルが求められる(予め求められていてもよい。)。また、対象患者における当該多次元ベクトルも求められる。続いて、当該複数の患者のそれぞれの多次元ベクトルが示す位置と、対象患者の多次元ベクトルが示す位置との間のユークリッド距離が求められ、当該距離が所定値未満である患者が参照患者として特定される。そして、参照患者が実際に行った治療の情報(服用した薬剤等も含む。)、および、治療結果情報がディスプレイ35に表示される。治療結果情報は、例えば、服用した薬剤の効果を示す情報や、参照患者の生存日数等である。図6の例では、複数の参照患者における各治療法での生存率と日数との関係を治療結果情報として示している。
【0046】
以上に説明したように、上述の疾患評価支援方法は、対象患者の疾患組織の一部を三次元的に培養した細胞を用いて、所定の薬剤に対する薬効評価試験のデータを得る工程(ステップS11)と、対象患者の疾患組織から作製した組織標本の多重免疫染色のデータを得る工程(ステップS12)と、薬効評価試験の結果と多重免疫染色の解析結果とをディスプレイ35に並べて表示する工程(ステップS13)とを備える。これにより、疾患組織の状態の把握や治療薬の効果の予測を精度よく行うことが可能となる。すなわち、疾患評価支援方法では、医師による対象患者の疾患の適切な評価を支援することができる。ステップS11において、対象患者の血液循環がん細胞を三次元的に培養した細胞を用いて、薬効評価試験のデータを取得する場合も同様である。
【0047】
ところで、薬効評価試験は、不特定多数の細胞に作用する薬剤(例えば、通常抗がん剤)の選定に有効であるが、培養自体に時間を要するため、治療開始までに評価できる薬剤の数には制限がある。多重免疫染色法は、特定の状態の細胞特異的に効果を示す薬剤の選定に特に有効であるが、それ以外の薬剤については疾患状態の情報を補助的に示すにとどまる。これに対し、薬効評価試験の結果と多重免疫染色の解析結果とを並べて表示する上記疾患評価支援方法では、様々な薬剤の有効性を検討することができ、対象患者に即した適切な治療薬や治療法を選定することが可能となる。
【0048】
好ましくは、三次元培養に用いられる疾患組織の部位と、多重免疫染色の組織標本の作製に利用される疾患組織の部位とが互いに近接する。これにより、薬効評価試験データ211と多重免疫染色データ212とを実質的に同じ部位に対して取得することができ、より適切な治療薬や治療法を選定することができる。
【0049】
好ましくは、上記疾患評価支援方法が、薬効評価試験の結果と多重免疫染色の解析結果とを用いて所定の薬剤の評価値を求め、ディスプレイ35に表示する工程(ステップS14)をさらに備える。このように、薬効評価試験の結果および多重免疫染色の解析結果の双方に基づく評価値を表示することにより、より適切な治療薬を選定することが可能となる。
【0050】
好ましくは、複数の患者に対する、薬効評価試験の結果、多重免疫染色の解析結果、治療情報、および、治療結果情報が予め準備される。そして、上記疾患評価支援方法が、複数の患者のうち、薬効評価試験の結果および多重免疫染色の解析結果が対象患者と近い患者を参照患者として特定し、参照患者の治療情報および治療結果情報をディスプレイ35に表示する工程(ステップS15)をさらに備える。このように、疾患の状態等が対象患者に近い他の患者の情報を表示することにより、より適切な治療薬や治療法を選定することが可能となる。
【0051】
上述のように、ステップS11では、複数種類の薬剤に対する薬効評価試験が、イメージング装置41を用いて同時に行われることが好ましい。これにより、複数の薬剤に対して薬効評価試験を効率よく行うことができる。また、所定の薬剤の複数の濃度に対する薬効評価試験が、イメージング装置41を用いて同時に行われることが好ましい。これにより、薬剤の複数の濃度に対して薬効評価試験を効率よく行うことができる。
【0052】
好ましくは、多重免疫染色の解析結果が、免疫細胞および腫瘍細胞の解析結果を含む。これにより、免疫細胞と腫瘍細胞との関係を確認することができ、疾患組織(腫瘍組織)の状態を適切に把握することができる。また、多重免疫染色の解析結果が、免疫細胞の各種類の割合または個数を含むことにより、疾患組織の状態を容易に把握することができる。さらに、多重免疫染色の解析結果が、腫瘍やその周囲の各種領域における免疫細胞の解析結果を含む。これにより、腫瘍に対する免疫細胞の位置関係、すなわち、免疫細胞についての空間的な情報を容易に把握することができる。多重免疫染色の解析結果が、少なくとも1種類の薬剤の効果の予測を含む場合には、より適切な治療薬や治療法を選定することができる。
【0053】
上述の疾患評価支援装置1の記憶部21は、対象患者の疾患組織の一部を三次元的に培養した細胞を用いた、所定の薬剤に対する薬効評価試験のデータと、対象患者の疾患組織から作製した組織標本の多重免疫染色のデータとを記憶する。そして、表示制御部22により、薬効評価試験の結果と多重免疫染色の解析結果とがディスプレイ35に並べて表示される。これにより、対象患者の疾患の適切な評価を支援することができ、対象患者に即した適切な治療薬や治療法を選定することができる。対象患者の血液循環がん細胞を三次元的に培養した細胞を用いて、薬効評価試験のデータを取得する場合も同様である。
【0054】
上記疾患評価支援方法および疾患評価支援装置1では様々な変形が可能である。
【0055】
対象患者の疾患の種類等によっては、多重免疫染色の解析結果が、免疫細胞または腫瘍細胞の一方の解析結果のみを含んでもよい。多重免疫染色の解析結果は、免疫細胞または/および腫瘍細胞の解析結果を含むことが好ましい。
【0056】
多重免疫染色は、免疫染色装置42を用いることなく行われてもよい。この場合、作業者により染色作業が実施され、標本スキャナ(イメージング装置41と併用されてもよい。)によりデジタル化される。その後、コンピュータ3においてデジタルデータ(多重免疫染色データ212)が画像解析される。また、多重免疫染色の解析結果が、外部の装置(例えば、免疫染色装置42の演算部)により取得され、当該解析結果が多重免疫染色データ212として記憶部21に記憶されてもよい。
【0057】
図3の処理において、薬効評価試験のデータを得る工程(ステップS11)と、多重免疫染色のデータを得る工程(ステップS12)とは、必ずしも並行して(略同時に)行われる必要はなく、両工程が時間を空けて行われてもよい。例えば、がんの初期状態のときに生検を行い、多重免疫染色のみが実施され(ステップS12)、治療が行われる。その後、がんが進行し、再度生検を実施し、培養細胞による薬効評価試験が実施される(ステップS11)。そして、初期時の多重免疫染色の解析結果と、最新の培養細胞による薬効評価試験の結果とがディスプレイ35に並べて表示される(ステップS13)。この場合も、患者の疾患の適切な評価を支援することができる。薬効評価試験が、多重免疫染色よりも先に実施されてもよい。また、採取される組織量が少ない場合等に、薬効評価試験と多重免疫染色とが時間を空けて行われてもよい。薬効評価試験および多重免疫染色にそれぞれ用いられる疾患組織の部位は、空間的に離れていてもよく、時間的に離れて採取されてもよい。
【0058】
上記疾患評価支援方法(および疾患評価支援装置1)では、ステップS14における各薬剤の評価値の表示が省略されてもよい。ステップS15における参照患者の治療情報および治療結果情報の表示についても同様である。また、ステップS13における薬効評価試験の結果および多重免疫染色の解析結果の表示が省略され、ステップS11,S12に続いて、ステップS14または/およびステップS15が行われてもよい。
【0059】
上記疾患評価支援方法および疾患評価支援装置1は、対象患者の疾患ががんである場合以外に、感染症や炎症等である場合にも利用可能である。
【0060】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【符号の説明】
【0061】
1 疾患評価支援装置
21 記憶部
22 表示制御部
35 ディスプレイ
41 イメージング装置
211 薬効評価試験データ
212 多重免疫染色データ
401 患者データベース
S11~S15 ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6