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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023012804
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】酢酸含有調味料
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/00 20160101AFI20230119BHJP
   A23L 29/231 20160101ALI20230119BHJP
   A23L 29/269 20160101ALI20230119BHJP
【FI】
A23L27/00 D
A23L29/231
A23L29/269
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021116497
(22)【出願日】2021-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006770
【氏名又は名称】ヤマサ醤油株式会社
(72)【発明者】
【氏名】嶽山 悠来
(72)【発明者】
【氏名】坂本 健治
【テーマコード(参考)】
4B041
4B047
【Fターム(参考)】
4B041LC10
4B041LD10
4B041LE08
4B041LH05
4B041LH16
4B041LK03
4B041LK07
4B041LK11
4B041LK30
4B041LK31
4B041LK36
4B041LK41
4B047LB07
4B047LB08
4B047LB09
4B047LG09
4B047LG22
4B047LG23
4B047LG26
4B047LG30
4B047LG38
4B047LG42
4B047LG55
4B047LG60
4B047LG62
4B047LP14
(57)【要約】
【課題】調味酢のようなpHの低い酢酸含有調味料であって、つけ・かけ用途のみならず、炒め、焼き用途にも適した物性・調理適性を有する汎用的な酢酸含有調味料を得る。
【解決手段】酢酸含有調味料に対し、キサンタンガムとペクチンを併せて配合することによって、つけ・かけ調理用途のみならず、炒め調理や焼き調理に使用したときにもさらりとした自然な粘性を有して食材によく絡み、様々な調理用途に適した酢酸含有調味料を得られること、さらに、ペクチンとして特にエステル化度の高いもの配合することにより、増粘剤が液中で良好に膨潤・分散し、増粘剤粒子が凝集・沈殿したり、容器壁面に付着したりしてしまうのを防ぐことが可能である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
pH2.0~3.5であり、キサンタンガムおよびエステル化度35%以上のペクチンを含有することを特徴とする、容器詰酢酸含有調味料。
【請求項2】
pH2.0~3.3である、請求項1記載の容器詰酢酸含有調味料。
【請求項3】
前記ペクチンのエステル化度が55%以上である、請求項1記載の容器詰酢酸含有調味料。
【請求項4】
キサンタンガムを0.03~2%(w/v)含有する、請求項1記載の容器詰酢酸含有調味料。
【請求項5】
B型粘度計 No.1ローターを用い25℃、30rpmの条件で測定したときの粘度が14~300mPa・sである、請求項1記載の容器詰酢酸含有調味料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、各種調理用途に適した酢酸含有調味料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食酢と各種調味料を配合した調味酢等の酢酸含有調味料の用途として、従来用いられてきた酢飯や酢の物、サラダ、ピクルス等の調味のみならず、調理済の肉や魚介類、野菜類にかける・絡める、あるいは炒め調理・焼き調理の際に調味料として加えるなど、その使用シーンが拡大しつつある。
【0003】
食酢含有調味料に限らず、液体調味料を各種調理に使用する際の課題として、食材に液をかけても流れ落ちてしまい、食味や外観を好ましく保ちにくいことがしばしば挙げられる。このような課題を解決するための方法として、例えば増粘剤、澱粉およびトレハロースを含有させることで、具材への絡みつきを良くし、照り・つやの長時間維持やドリップの吸収を可能とした調味組成物(特許文献1)等がある。しかしながら、本知見では、調味酢のような著しくpHの低い調味料における配合や、当該調味料の物性、調理適性については検討していない。
【0004】
一方、酢酸含有調味料に増粘剤を含有させる知見としては、食酢と冷水可溶な澱粉分解物とを含有し、食酢含有米飯についての酸味の持続・保持作用を有する調味酢(特許文献2)等が知られる。しかしながら、本知見は酢飯のような食酢含有米飯の調味に関するものであって、例えば炒め調理・焼き調理等に酢酸含有調味料を用いる場合については検討していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-209547号公報
【特許文献2】特開2015-123003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって本願発明の課題は、調味酢のようなpHの低い酢酸含有調味料であって、つけ・かけ用途のみならず、炒め、焼き用途にも適した物性・調理適性を有する汎用的な酢酸含有調味料を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、pHが強酸性である調味料において安定した粘性を保持しようとしたときに、増粘剤としてキサンタンガムが好適である一方、キサンタンガムを配合した食酢含有調味料を、炒め調理や焼き調理時の調味に用いると、加熱処理に際して糸曳きが生じてしまい、調味料として不自然な物性となってしまう場合があることを見出した。
【0008】
そこで、本発明者らはさらなる検討を行った結果、酢酸含有調味料に対し、キサンタンガムとペクチンを併せて配合することによって、つけ・かけ調理用途のみならず、炒め調理や焼き調理に使用したときにもさらりとした自然な粘性を有して食材によく絡み、様々な調理用途に適した酢酸含有調味料を得られること、さらに、ペクチンとして特にエステル化度の高いもの配合することにより、増粘剤が液中で良好に膨潤・分散し、増粘剤粒子が凝集・沈殿したり、容器壁面に付着したりしてしまうのを防ぐことが可能であることを全く新たに見出し、本願発明を完成させた。
【発明の効果】
【0009】
本願発明の酢酸含有調味料は、漬け込み、つけ・かけ用途のみならず、炒め調理・焼き調理等の加熱調理にも適したすぐれた物性を有することから、きわめて汎用的に使用可能なものである。また、本願発明の酢酸含有調味料は、増粘剤の液中での膨潤・分散が良好であるために、保管時においても、増粘剤粒子の凝集・沈殿や容器壁面への付着を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、エステル化度12%のペクチンを添加した酢酸含有調味料(pH2.6~2.7)をPETボトルにて一晩保管した後の液を顕微鏡(150)で観察したときの写真である。右下のスケールは100μmを示す。白い点は増粘剤粒子であり、白い点の塊は増粘剤粒子が凝集している状態を表す。
図2図2は、エステル化度40%のペクチンを添加した酢酸含有調味料(pH2.6~2.7)をPETボトルにて一晩保管した後の液を顕微鏡(150倍)で観察したときの写真である。右下のスケールは100μmを示す。白い点は増粘剤粒子であり、白い点の塊は増粘剤粒子が凝集している状態を表す。
図3図3は、エステル化度72%のペクチンを添加した酢酸含有調味料(pH2.6~2.7)をPETボトルにて一晩保管した後の液を顕微鏡(150倍)で観察したときの写真である。右下のスケールは100μmを示す。白い点は増粘剤粒子であり、増粘剤粒子の凝集はなく、均一に分散している状態であった。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本願発明の酢酸含有調味料は原料として少なくとも、酢酸、キサンタンガムおよびエステル化度35%以上のペクチンを含有する。
【0012】
酢酸は、食用として可能なものであれば、どのような形態のものを配合しても良い。すなわち、米酢、米黒酢、大麦黒酢、粕酢、きび酢などの穀物酢や、リンゴ酢、ぶどう酢、梅酢、柿酢などの果実酢に代表される醸造酢であってもよく、また合成酢であってもよい。本願発明の酢酸含有調味料は、酢酸酸度0.3~2.0%であり、0.8~1.5%であることがさらに好ましい。また、本願発明の酢酸含有調味料は、その求められる食味から、pH2.0~3.5であり、pH2.0~3.3であることがより好ましく、pH2.5~2.9であることがさらに好ましい。
【0013】
本願発明の酢酸含有調味料は、増粘剤として少なくともキサンタンガムおよびエステル化度35%以上のペクチンを含有する。本願発明の酢酸含有調味料に用いるペクチンは、食品原料に使用可能なものを使用することができ、りんご、レモン、ライム、グレープフルーツ、オレンジ、てんさい、ひまわりなど各種の果実・野菜等を原料に製造されるものを例示することができる。
【0014】
ペクチンのエステル化度とは、複合多糖類であるペクチンの主要な構成成分であるガラクツロン酸について、当該ペクチンを構成するガラクツロン酸のうち、カルボキシル基がメチルエステル化されているものの割合を示す数字であり、DE値とも称される。
本願発明の酢酸含有調味料に用いるペクチンは、エステル化度が35%以上であり、55%以上であることがより好ましく、65%以上であることがさらに好ましい。前記ペクチンのエステル化度は、これらの数値の間に示される数値以上であっても良く、エステル化度は40%以上、45%以上、60%以上、70%以上であっても良い。エステル化度の上限は、食品に使用可能な範囲で特に限定されないが、75%以下であってもよく、80%以下、90%以下または100%以下であっても良い。エステル化度が35%未満である場合、増粘剤の凝集・分離による沈殿等がきわめて起こりやすくなってしまい、製品として不適となるリスクが極めて高い。
【0015】
本願発明の酢酸含有調味料に用いるペクチンは、単独のペクチンであってもよく、それぞれエステル化度の異なる複数のペクチンを組み合わせて配合しても良い。このとき、本願発明の酢酸含有調味料におけるペクチンのエステル化度とは、配合した全ガラクツロン酸(mol)に対する全メチルエステル化されたガラクツロン酸(mol)の割合(%)として算出される。
【0016】
本願発明の酢酸含有調味料は、キサンタンガムの重量として、調味料全体に対して好ましくは0.03~0.2%(w/v)、より好ましくは0.04~0.1%(w/v)、さらに好ましくは0.04~0.08%(w/v)含有させることが可能である。キサンタンガムの含有量が上記の範囲よりも多いと、加熱調理時に糸曳きが見られ不自然な見た目となってしまうことがある。
【0017】
またペクチンの重量として、エステル化度50未満のペクチンを配合する場合には、調味料全体に対して好ましくは0.05~0.4%(w/v)、より好ましくは0.10~0.25%(w/v)含有させることが可能である。0.4%よりも多いと、昆布などの原料に由来するミネラル分によりゲル化してしまうことがある。
【0018】
ペクチンとして、エステル化度50以のペクチンを配合する場合には、調味料全体に対して好ましくは0.05~2%(w/v)、より好ましくは0.10~1%(w/v)含有させることが可能である。配合量が2%よりも多い場合、増粘剤自体の味が感じられることから酢酸含有調味料本来の風味を損なうおそれがある。
【0019】
本願発明の酢酸含有調味料の粘度としては、測定機器としてB型粘度計 No.1ローターを用い、25℃、30rpmの条件で測定したときの値が14~300mPa・sであることが好ましく、17~200mPa・s以上であることがさらに好ましい。また、これらの数値の間の任意の範囲であっても良く、粘度は20、30、40、50、75、100、125、150、175mPa・s等から選ばれる任意の2つの数値に挟まれる範囲であっても良い。粘度がこの範囲内であるときには、つけ・かけ用途や調理用途など、様々な調理に用いたときにも、調味料が具材と良好に絡み、調理に適したものとなる。
【0020】
所望の粘度に調整する際、キサンタンガムとペクチンの重量比としては、1:1~1:33であることが好ましく、1:1.5~1:17であることがさらに好ましい。これらの数値に対して、キサンタンガムが多すぎると加熱調理の際に糸曳きが生じるという不具合が、ペクチンが多すぎると多量のペクチンが必要になることによりペクチンの風味が強く出てしまうことから酸性含有調味料本来の風味を損なうという不具合が生じる恐れがある。
【0021】
本願発明の酢酸含有調味料は、前記酢酸、キサンタンガムおよびペクチンの他にも、物性やpHに過剰な影響を及ぼさない範囲で、各種の原料を配合することが可能である。具体的には、濃口醤油、淡口醤油、たまり醤油、濃縮醤油、しろ醤油などの醤油類、味噌、みりん、酒等の各種発酵食品や、食塩、塩化カリウム等の塩類、砂糖、液糖、果糖ぶどう糖液糖、水あめ等の糖類、グルタミン酸ナトリウム、アミノ酸調味料、核酸調味料などの各種調味料、魚節・昆布・しいたけ等のだし原料および当該原料から抽出されるだし類やエキス類、畜肉・魚介・果実・野菜・酵母等由来のエキス類、ゆず、すだち、かぼす、だいだい、レモン、グレープフルーツ、シークワーサー、りんご、パイナップル、パッションフルーツ、あんず、ベリー類等に由来する果汁や果実成分、香料、クエン酸や乳酸等の酢酸以外の酸味料、香辛料などを挙げることができる。また、調味料のpHを調整することを目的として、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウムのような塩類等を配合することも可能である。
【0022】
本願発明の酢酸含有調味料は、前記原料を混合することで得られる。混合する際には、すべての原料を同時に添加しても良く、例えば昆布や魚節のだしを別途抽出してから添加したり、増粘剤を事前に水などの溶媒に溶かしてから添加したりしても良い。原料を混合し、調味料を得た後は、必要に応じて、例えば70℃~120℃程度で2秒~10分程度の加熱殺菌処理を行っても良い。
【0023】
本願発明の酢酸含有調味料は、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の合成樹脂製ボトル、合成樹脂製の袋やバッグインボックス、ガラス瓶、金属缶、紙容器など、通常食品に使用可能な容器に充填する。中でも合成樹脂製ボトル、さらにはPETボトルを用いることが好ましい。容器の容量は任意の範囲から設定でき、例えば5mL~100Lの範囲から選択可能であるが、10mL~5L、または100mL~2L、さらに150mL~800mLとすると、保存性や使い勝手の観点から好ましい。なお、前記の加熱殺菌処理は、容器への充填前に行っても良く、容器への充填と同時に行っても、充填後に行っても良い。
【0024】
上記のような、キサンタンガムとペクチンを併せて配合した酢酸含有調味料は、従来のつけ・かけ用途のみならず、加熱調理に用いても不自然な糸曳きが生じることがなく、きわめて好ましい炒め・焼き調理が可能である。また、ペクチンの風味が酢の風味によく合っており、加熱の有無に依らずとろみの具合がさらりとして食材に好適に絡むものとなる。
【0025】
本願発明の酢酸含有調味料は、pH2.0~3.5であり、pH2.0~3.3であることがより好ましく、pH2.5~2.9であることがさらに好ましいものであるが、配合するペクチンのエステル化度を調味料のpHに応じて調整することにより、良好な調理適性を有するだけでなく、容器充填後の保管においても好ましい物性とすることが可能である。
【0026】
具体的には、pH2.9以上のときは、エステル化度35%以上のペクチンを使用することにより、増粘剤粒子の凝集や、凝集した粒子のボトル内壁への付着といった容器保管時における好ましくない物性を抑制することが可能となる。調味料のpH2.9未満の範囲では、エステル化度55%以上のペクチンを使用することにより、容器保管時の好ましくない物性を抑制することが可能になる。pH2.9未満のときのペクチンのエステル化度はさらに高いものであってもよく、エステル化度60%以上または65%以上のペクチンを用いても良い。各pH域において、エステル化度の値が前記の範囲よりも低いペクチンを使用した場合には、増粘剤の分散が不十分となり、増粘剤粒子が凝集・沈殿したり、容器で保管したときに粒子が容器内壁に付着したりするなどして、外見上好ましくないものとなるリスクが高い。
【実施例0027】
以下、本願発明を実施例等により説明するが、本願発明はこれらによって何ら制限されるものではない。なお、本実施例中に「粘度」と記載がある場合、格別注釈がない限り、測定機器としてB型粘度計 No.1ローターを用い、25℃、30rpmの条件で測定したときの粘度の値を示す。
【0028】
(実施例1:増粘剤の種別による物性の違いの検討)
果糖ぶどう糖液糖300g、砂糖70g、醤油10ml、レモン果汁30g、醸造酢240ml、食塩50g、昆布だし(昆布6g[酢酸含有調味料1L当たり]を温水中で30分加熱することで抽出しただし。以下同様)および鰹だし(鰹節6g[酢酸含有調味料1L当たり)を温水中で30分加熱することで抽出しただし。以下同様)および各種増粘剤を混合し、水で1000mLに調整することで、酢酸含有調味料(酢酸酸度1%、pH2.7)を作製した。増粘剤として澱粉、寒天、キサンタンガムまたはペクチン(エステル化度33%)のいずれか1種を配合したときの液の状態を、目視にて観察した。
【0029】
結果、澱粉を配合したときには、調味液の白濁や澱粉の沈殿という不具合が生じてしまい、不適であった。また寒天を配合したときには、加熱により粘度が緩くなってしまい、不適であった。ペクチンを配合したときには、ペクチンの配合量0.5%(w/v)以上では昆布等の原料由来のミネラルによりゲル化してしまい不適であった。一方、ペクチンの配合量が0.25%(w/v)以下であればゲル化しなかった。
【0030】
上記他の増粘剤に対し、キサンタンガムを配合したときは、当該不具合が生じることがなく、pHの著しく低い酢酸含有調味料において増粘剤に用いるのに好適であることが明らかになった。しかしながら、増粘剤としてキサンタンガムのみを0.2%または0.3%(w/v)含有する酢酸含有調味料を用いて鶏肉の照り焼きを調理すると、加熱によって水分が蒸発した際に糸曳きが生じてしまい、調理時の物性として不自然であることが明らかになった。
【0031】
(実施例2:キサンタンガムとペクチンの併用による効果)
キサンタンガムのみを添加した場合、炒め物などの加熱調理に不適となる問題を解決するため、キサンタンガムとペクチンの併用について検討を行った。
【0032】
下記表1の配合から成る酢酸含有調味料(酢酸酸度1%、pH2.7)に対し、増粘剤としてキサンタンガムおよびペクチン(エステル化度33%)を添加し、両者の組み合わせによる効果を検証した。
【0033】
【表1】
【0034】
結果、増粘剤としてキサンタンガムのみをそれぞれ0.3%および0.2%配合した試験区1および2では、加熱調理時に糸曳きが見られ、不適であった。キサンタンガムのみを0.1%配合した試験区3では、加熱調理時に糸曳きが見られなかったが、具材に絡めて使用するとき、粘度が不十分であった。
【0035】
上記に対し、キサンタンガムを0.2%配合した場合であっても、さらにペクチンを0.25%配合した試験区4では糸曳きは見られなかった。
【0036】
このように、キサンタンガムとペクチンを併せて配合した酢酸含有調味料では、加熱調理しても不自然な糸曳きが生じることはなく、きわめて好ましい炒め調理が可能であった。またそれだけでなく、ペクチンの風味が酢の風味によく合っており、また加熱の有無に依らずとろみの具合が、さらりとして食材に好適に絡むものとなっていて、きわめて好ましい酢酸含有調味料を得ることができた。
【0037】
(実施例3:エステル化度の異なるペクチン添加による効果の検討)
配合するペクチンのエステル化度の違いによる差異についてさらなる検討を実施した。 原料として下記表2の配合から成る酢酸含有調味料を調製し、80℃で加熱殺菌した。配合するペクチンとしては、エステル化度12、23、30、40、または72(%)のものを使用した。また、酢酸ナトリウムの配合量を変更することによって、調味料のpHを2.6~4.5の範囲で5段階に調整した。
【0038】
調味料の粘度について、例えば、pH2.6~2.7に調整した調味料(表3中、網かけで表示した部分)の粘度を測定すると、21~69mPa・sの範囲内であった。この範囲の粘度を有する酢酸含有調味料は、各種調理に用いたとき具材に良好に絡み、調理使用において好ましい物性であった。
【0039】
【表2】
【0040】
調製したそれぞれの酢酸含有調味料を、容器(330mL PETボトル)に充填した。蓋を閉め、常温まで冷却した後一晩静置し、容器中の酢酸含有調味料の様子を目視および顕微鏡下で観察した。結果を下記表3および図1~3に示す。
【0041】
【表3】
【0042】
表3において、最左列の「ガム」は、キサンタンガムの添加の有無を示す。またpHは、増粘剤を含むすべての原料を配合した後に測定した実測値を記載している。エステル化度の異なるペクチンを添加した時の評価「○」「×」について、評価「○」は、ペクチンの分離がなく、ボトル内壁への増粘剤粒子の付着も認められなかった結果を示し、評価「×」は、ペクチンの分離やボトル内壁への増粘剤粒子の付着が認められた結果を示す。
【0043】
結果、エステル化度12%のペクチンを配合すると、pHの範囲に依らず、増粘剤が分離沈殿したり、増粘剤粒子が凝集してボトル内壁へ付着するなど、容器での保管時に好ましくない物性となることが明らかになった(図1)。また、pH3.6~4.5程度の範囲では、エステル化度12%の場合を除き、すべての酢酸含有調味料において上記のような保管時の好ましくない物性は観察されなかった。なお、ペクチンを添加せず、キサンタンガムを添加したときにも、このような増粘剤粒子の凝集等は生じなかった。
【0044】
一方、pH3.5以下のときには、配合するペクチンのエステル化度によって保管時の好ましくない物性が生じるか否かに差が生じた。具体的には、pH3.1~3.2の範囲の調味料では、エステル化度30%のペクチンの配合時には好ましくない物性が生じたが、エステル化度40%、72%のペクチンを使用したときには増粘剤粒子の凝集等はみられなかった。pH2.6~2.7の調味料では、エステル化度40%のペクチンを用いても、増粘剤粒子の凝集や凝集した粒子のボトル内壁への付着が確認された(図2)のに対し、エステル化度72%のペクチンであれば、これらの好ましくない物性は確認されず、良好な物性を有する酢酸含有調味料を得ることができた(図3)。
【0045】
このように、とくにpHが3.5以下の領域において酢酸含有調味料を調製したときには、調味料のpHが低くなるほど、容器保管時に増粘剤粒子の凝集やボトル内壁への付着といった外見上好ましくない現象が生じることが明らかになった。そして、その際にはエステル化度の高いペクチンを使用することで当該好ましくない物性を抑えることができること、低pHであるほど、好ましくない物性を抑えるのに必要なペクチンのエステル化度の数値が高くなることも明らかになった。
【0046】
(実施例4)ペクチン含有量の検討
エステル化度の高いペクチンを配合するときの、酢酸含有調味料中における含有量を検討した。
表2に示す配合の酢酸含有調味料において、酢酸ナトリウムを添加せず、ペクチン(エステル化度72%)の含有量のみを0g、1.5g、5g、10g、20gとした調味料を作製した。調味料のpHは2.6~2.7であった。実施例3と同様のPETボトルに充填し、容器中の様子を目視観察した。結果を下記表4に示す。尚、評価基準は表3と同一基準である。
【0047】
【表4】
【0048】
結果、増粘剤としてキサンタンガムのみを添加した場合(ペクチン0%(w/v))であっても、増粘剤の分離や粒子の凝集は生じなかった。また、ペクチン含有量0.15~2.0%(w/v)の範囲でも、同様に保管時に好ましくない物性は観察されなかった。
図1
図2
図3