(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128045
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】運転支援システム、車両および運転支援方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20230907BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20230907BHJP
B60W 40/04 20060101ALI20230907BHJP
B60W 60/00 20200101ALI20230907BHJP
G16Y 10/40 20200101ALI20230907BHJP
G16Y 40/30 20200101ALI20230907BHJP
【FI】
G08G1/16 D
G08G1/09 F
G08G1/09 H
B60W40/04
B60W60/00
G16Y10/40
G16Y40/30
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022032096
(22)【出願日】2022-03-02
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】501440684
【氏名又は名称】ソフトバンク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】小澤 怜
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA33
3D241BB31
3D241CD10
3D241CE02
3D241CE04
3D241DC25Z
3D241DC31Z
5H181AA01
5H181BB04
5H181BB13
5H181FF13
5H181FF22
5H181LL02
5H181LL09
5H181LL15
(57)【要約】
【課題】沿道の死角を移動する交通参加者を検知して車両に通知する運転支援システムにおいて、沿道に新たな死角が生じた場合であっても、当該新たな死角を移動する交通参加者を容易かつ迅速に検知できるようにする。
【解決手段】運転支援システムの対象車両(2)は、サーバ(1)と通信する第二通信部(22)と、三次元地図(M)に基づいて自身の位置を特定する第一特定部(243)と、発信機からの電波を検知するセンサ(21)と、センサが検知した電波の強度を測定する測定部(244)と、サーバから受信したデータ、特定した自身の位置および測定した電波の強度に基づいて、特定した位置に自身がいるときの交通参加者の位置を特定する第二特定部(245)と、特定した交通参加者の位置を出力する出力制御部(246)と、を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーバと対象車両とを備える運転支援システムであって、
前記サーバは、
電波の発信機を所持する交通参加者および車両の位置関係毎に、前記発信機から前記車両へ届く電波の強度を、三次元地図を用いてシミュレーションするシミュレーション実施部と、
前記シミュレーションにより得られた、前記交通参加者および前記車両の位置関係と、電波の強度と、の組を位置関係毎に複数蓄積してデータベースを構築するデータベース構築部と、
前記対象車両と通信する第一通信部と、
前記データベースに蓄積された少なくとも一部のデータを前記対象車両に送信するよう前記第一通信部を制御する送信制御部と、を備え、
前記対象車両は、
前記サーバと通信する第二通信部と、
前記サーバから前記データを受信するよう前記第二通信部を制御する受信制御部と、
三次元地図に基づいて自身の位置を特定する第一特定部と、
前記発信機からの電波を検知するセンサと、
前記センサが検知した電波の強度を測定する測定部と、
前記第二通信部が受信した前記データ、前記第一特定部が特定した自身の位置および前記測定部が測定した電波の強度に基づいて、前記第一特定部が特定した位置に自身がいるときの前記交通参加者の位置を特定する第二特定部と、
特定した前記交通参加者の位置を出力する出力制御部と、を備える、運転支援システム。
【請求項2】
前記対象車両は、加速、減速、および操舵の少なくともいずれかに関する機構を自動で制御する運転制御部を更に備え、
前記出力制御部は、前記交通参加者の位置を、前記運転制御部に出力する、
請求項1に記載の運転支援システム。
【請求項3】
前記サーバは、前記対象車両から、当該対象車両の走行経路に関する情報を受信するよう前記第一通信部を制御するサーバ側受信制御部を備え、
前記第一通信部は、前記データベースに蓄積されたデータのうち、受信した走行経路に対応するデータを送信する、
請求項1または2に記載の運転支援システム。
【請求項4】
前記出力制御部は、特定した前記交通参加者の位置を、三次元地図にマッピングした形で出力する、請求項2に記載の運転支援システム。
【請求項5】
前記対象車両は、
一の部位に前記センサを備え、
前記一の部位と異なる他の部位に、前記発信機からの電波を検知する第二センサを備えており、
前記測定部は、前記第二センサが検知した電波の強度も測定するようになっており、
前記第二特定部は、受信した前記データ、特定した自身の位置、前記センサが検知した電波の強度、および前記第二センサが検知した電波の強度に基づいて前記交通参加者の位置を特定する、請求項1~4のいずれか一項に記載の運転支援システム。
【請求項6】
電波の発信機を所持する交通参加者および車両が一の位置関係にある場合の、前記発信機から前記車両へ届く電波の強度を、三次元地図を用いてシミュレーションするシミュレーション実施部と、シミュレーションにより得られた、前記交通参加者および前記車両の位置関係と、電波の強度と、の組を位置関係毎に複数蓄積してデータベースを構築するデータベース構築部と、対象車両と通信する第一通信部と、を有する第一サーバと、
前記第一サーバと通信する第二通信部と、前記第一サーバから、前記データベースに蓄積された少なくとも一部のデータを受信するよう前記第二通信部を制御する第一受信制御部と、対象車両から、当該対象車両の位置、および検知した電波の強度を受信するよう前記第二通信部を制御する第二受信制御部と、受信した前記データ、前記対象車両の位置および電波の強度に基づいて、特定した位置に前記対象車両がいるときの前記交通参加者の位置を特定する特定部と、特定した前記交通参加者の位置を前記対象車両へ送信するよう前記第二通信部を制御する第二送信制御部と、を有する第二サーバと、
を備える運転支援システム。
【請求項7】
三次元地図に基づいて自身の位置を特定する第一特定部と、交通参加者が所持する発信機からの電波を検知するセンサと、検知した電波の強度を測定する測定部と、対象車両の位置および当該対象車両が受信した電波の強度に基づいて交通参加者の位置を特定するサーバと通信する通信部と、特定した自身の位置および測定した電波の強度を前記サーバへ送信するよう前記通信部を制御する送信制御部と、前記サーバから、特定した前記交通参加者の位置を受信するよう前記通信部を制御する受信制御部と、を有する車両。
【請求項8】
サーバが、電波の発信機を所持する交通参加者および車両が一の位置関係にある場合の、前記発信機から前記車両へ届く電波の強度を、三次元地図を用いてシミュレーションするステップと、
前記サーバが、シミュレーションにより得られた、前記交通参加者および前記車両の位置関係と、電波の強度と、の組を位置関係毎に複数蓄積してデータベースを構築するステップと、
前記サーバが、前記データベースに蓄積された少なくとも一部のデータを対象車両に送信するステップと、
前記対象車両が、前記サーバから前記データを受信するステップと、
前記対象車両が、三次元地図に基づいて自身の位置を特定するステップと、
前記対象車両が、前記発信機からの電波を検知するステップと、
前記対象車両が、検知した電波の強度を測定するステップと、
前記対象車両が、受信した前記データ、特定した自身の位置および測定した電波の強度に基づいて、特定した位置に自身がいるときの前記交通参加者の位置を特定するステップと、
前記対象車両が、特定した前記交通参加者の位置を出力するステップと、
を有する運転支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転支援システム、車両および運転支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動運転車両が歩行者の検知を容易にするための各種技術が提案されている。例えば特許文献1には、地上側に設置され道路上を撮像する撮像手段と、撮像した画像から路上の歩行者の位置と移動方向を検出する歩行者認識手段と、撮像手段の設置位置と歩行者認識手段のデータとを車両へ送信する通信手段と、車両に搭載され車両前方の物体の有無と物体までの距離とを検知する車載センサと、送信手段からのデータを受信する通信手段と、受信したデータに基づいて撮像手段と車載センサとの位置関係を求め、歩行者認識手段で検知した歩行者の位置と移動方向および撮像手段と車載センサとの位置関係に基づいて、車載センサの検知結果において地上側で検知した歩行者に相当する物体を車両側で歩行者として認識する歩行者認識手段と、を備えた歩行者検知装置について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来技術では、車両の外にいる交通参加者(歩行者等)の情報を車両が取得できるようにするために、路上にカメラを設置する必要があった。このような従来技術を用いた場合、道路上に新たな死角が生じる(例えば、沿道に新たな建築物が建てられる等)と、その死角を撮影するために、カメラを移設または増設する必要が生じる。このカメラの移設・増設は、大変手間がかかる作業となる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る運転支援システムは、サーバと対象車両とを備える運転支援システムであって、前記サーバは、電波の発信機を所持する交通参加者および車両の位置関係毎に、前記発信機から前記車両へ届く電波の強度を、三次元地図を用いてシミュレーションするシミュレーション実施部と、前記シミュレーションにより得られた、前記交通参加者および前記車両の位置関係と、電波の強度と、の組を位置関係毎に複数蓄積してデータベースを構築するデータベース構築部と、前記対象車両と通信する第一通信部と、前記データベースに蓄積された少なくとも一部のデータを前記対象車両に送信するよう前記第一通信部を制御する送信制御部と、を備え、前記対象車両は、前記サーバと通信する第二通信部と、前記サーバから前記データを受信するよう前記第二通信部を制御する受信制御部と、三次元地図に基づいて自身の位置を特定する第一特定部と、前記発信機からの電波を検知するセンサと、前記センサが検知した電波の強度を測定する測定部と、前記第二通信部が受信した前記データ、前記第一特定部が特定した自身の位置および前記測定部が測定した電波の強度に基づいて、前記第一特定部が特定した位置に自身がいるときの前記交通参加者の位置を特定する第二特定部と、特定した前記交通参加者の位置を出力する出力制御部と、を備える。
【0006】
本発明の他の態様に係る運転支援システムは、電波の発信機を所持する交通参加者および車両が一の位置関係にある場合の、前記発信機から前記車両へ届く電波の強度を、三次元地図を用いてシミュレーションするシミュレーション実施部と、シミュレーションにより得られた、前記交通参加者および前記車両の位置関係と、電波の強度と、の組を位置関係毎に複数蓄積してデータベースを構築するデータベース構築部と、対象車両と通信する第一通信部と、前記データベースに蓄積された少なくとも一部のデータを対象車両に送信するよう前記第一通信部を制御する送信制御部と、を有する第一サーバと、前記第一サーバと通信する第二通信部と、前記第一サーバから前記データを受信するよう前記第二通信部を制御する受信制御部と、対象車両から、当該対象車両の位置、および検知した電波の強度を受信するよう前記第二通信部を制御する第二受信制御部と、受信した前記データ、前記対象車両の位置および電波の強度に基づいて、特定した位置に前記対象車両がいるときの前記交通参加者の位置を特定する特定部と、特定した前記交通参加者の位置を前記対象車両へ送信するよう前記第二通信部を制御する第二送信制御部と、を有する第二サーバと、を備える。
【0007】
本発明の他の態様に係る車両は、三次元地図に基づいて自身の位置を特定する第一特定部と、交通参加者が所持する発信機からの電波を検知するセンサと、検知した電波の強度を測定する測定部と、対象車両の位置および当該対象車両が受信した電波の強度に基づいて交通参加者の位置を特定するサーバと通信する通信部と、特定した自身の位置および測定した電波の強度を前記サーバへ送信するよう前記通信部を制御する第三送信制御部と、前記サーバから、特定した前記交通参加者の位置を受信するよう前記通信部を制御する受信制御部と、を有する。
【0008】
本発明の他の態様に係る運転支援方法は、サーバが、電波の発信機を所持する交通参加者および車両が一の位置関係にある場合の、前記発信機から前記車両へ届く電波の強度を、三次元地図を用いてシミュレーションするステップと、前記サーバが、シミュレーションにより得られた、前記交通参加者および前記車両の位置関係と、電波の強度と、の組を位置関係毎に複数蓄積してデータベースを構築するステップと、前記サーバが、前記データベースに蓄積された少なくとも一部のデータを対象車両に送信するステップと、前記対象車両が、前記サーバから前記データを受信するステップと、前記対象車両が、三次元地図に基づいて自身の位置を特定するステップと、前記対象車両が、前記発信機からの電波を検知するステップと、前記対象車両が、検知した電波の強度を測定するステップと、前記対象車両が、受信した前記データ、特定した自身の位置および測定した電波の強度に基づいて、特定した位置に自身がいるときの前記交通参加者の位置を特定するステップと、前記対象車両が、特定した前記交通参加者の位置を出力するステップと、を有する。
【0009】
本発明の各態様は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを前記運転支援システムが備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより前記運転支援システムをコンピュータにて実現させるプログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一態様の第一実施形態に係る運転支援システムが備えるサーバの機能的構成を示すブロック図である。
【
図2】同サーバが、三次元地図を用いてシミュレーションする過程を示す図である。
【
図3】同サーバが構築するデータベースの概要を示す図である。
【
図4】同サーバが構築するデータベースの詳細を示す図である。
【
図5】同実施形態に係る運転支援システムが備える車両の機能的構成を示すブロック図である。
【
図6】同車両が、交通参加者の位置を特定する過程を示す図である。
【
図7】同車両が、交通参加者の位置を特定する過程を示す図である。
【
図8】同車両が、交通参加者の位置を特定する過程を示す図である。
【
図9】同車両が、交通参加者の位置を特定する過程を示す図である。
【
図10】同実施形態に係る運転支援システムの使用例を示す図である。
【
図11】同実施形態に係る運転支援システムの応用例を示す図である。
【
図12】本発明の一態様の第二実施形態に係る運転支援システムの機能的構成を示すブロック図である。
【
図13】本発明の他の態様の実施形態に係る運転支援方法の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第一実施形態>
まず、本発明の一の態様(運転支援システム)の第一実施形態について説明する。
【0012】
運転支援システム100は、
図1に示したように、サーバ1と、車両2と、を備える。車両2の数は特に限定されない。これらは、通信ネットワークを介して互いに接続されている。
【0013】
[サーバ]
サーバ1は、制御対象となる車両2(以下、対象車両2)の位置および当該対象車両2が受信した電波の強度に基づいて交通参加者の位置を特定するものである。サーバ1は、サーバ側通信部11(第一通信部)と、サーバ側記憶部12と、サーバ側制御部13と、を備える。
【0014】
〔サーバ側通信部〕
サーバ側通信部11は、全車両2のうち、対象車両2と通信する。本実施形態に係るサーバ側通信部11は、通信モジュールで構成されている。
【0015】
〔サーバ側記憶部〕
サーバ側記憶部12は、三次元地
図Mを更新可能な状態で記憶している。また、サーバ側記憶部12は、データベースDを更新可能な状態で記憶している。本実施形態に係るサーバ側記憶部12は、半導体メモリや、ハードディスク等で構成されている。なお、サーバ側記憶部12は、サーバ1本体とは別の記憶装置であってもよい。
【0016】
〔サーバ側制御部〕
サーバ側制御部13は、サーバ側受信制御部131(受信制御部)と、シミュレーション実施部132と、データベース構築部133と、サーバ側送信制御部134(送信制御部)と、を備える。
【0017】
(サーバ側受信制御部)
サーバ側受信制御部131は、対象車両2から、当該対象車両2の走行経路に関する情報を受信するようサーバ側通信部11を制御する。また、サーバ側受信制御部131は、必要に応じて(例えば、三次元地
図Mが更新された場合に)、車両2または図示しない他の装置から、更新後の三次元地
図Mのデータを受信するようサーバ側通信部11を制御する。なお、サーバ側受信制御部131は、他の装置からフィンガープリント(詳細後述)を取得するよう構成されていてもよい。
【0018】
(シミュレーション実施部)
シミュレーション実施部132は、電波の発信機を所持する交通参加者および車両2の位置関係毎に、発信機から車両2へ届く電波の強度を、三次元地
図Mを用いてシミュレーションする。交通参加者および車両2の位置関係は、例えば両者の距離等であってもよいし、それぞれの座標(緯度・経度)等であってもよい。本実施形態に係るシミュレーション実施部132が用いる三次元地
図Mは、自動運転に用いられる高精度のものである。三次元地
図Mは、沿道に設けられた障害物(建物等)も再現することができる。上述したように、サーバ側受信制御部131は、必要に応じて、更新後の三次元地
図Mのデータを受信するようサーバ側通信部11を制御する。このため、本実施形態に係るシミュレーション実施部132は、最新の障害物の情報が反映された状態でシミュレーションを行うことができる。本実施形態に係るシミュレーション実施部132は、交差点Cおよびその近傍に範囲を絞ってシミュレーションを行う。こうすることで、衝突の可能性が低い道路の直線部等のシミュレーションを省き、サーバ1の負担を低減することができる。
【0019】
本実施形態に係るシミュレーション実施部132は、まず、
図2に示したように、三次元地
図Mにおける対象となる交差点Cに接続する車道L
1上であって当該交差点Cに進入する手前の所定範囲に、複数(m個)の測定点P
1を設定する。測定点P
1は、二次元的に分布するように(例えば行列状に)設定する。車道L
1の延長方向および幅方向に沿って隣り合うように並ぶ二つの測定点P
1の間隔I
1は、例えば1m程度に設定する。次に、シミュレーション実施部132は、測定点P
1を設定した車道L
1と交差する歩道L
2上であって、当該交差点Cに進入する手前の所定範囲に、複数(n個)の発信点P
2を設定する。発信点P
2は、二次元的に分布するように(例えば行列状に)設定する。歩道L
2の延長方向および幅方向に沿って隣り合うように並ぶ二つの発信点P
2の間隔I
2は、上記測定点P
1の間隔I
1を超えないように設定する。このように発信点P
2の間隔I
2を測定点P
1の間隔I
1よりも小さくするのは、通常、歩行者の歩行速度が車両2の走行速度より遅いためである。こうすることで、車両2および歩行者の位置推定の精度を更に向上させることができる。なお、発信点P
2を設定しようとする道路に歩道L
2が存在しない場合、本実施形態に係るシミュレーション実施部132は、道路の端から所定範囲を歩道L
2とみなして発信点P
2を設定する。所定範囲は距離としてもよいし、道路の巾に対する割合としてもよい。
【0020】
複数の測定点P1および複数の発信点P2を設定した後、シミュレーション実施部132は、フィンガープリントを取得する。具体的には、シミュレーション実施部132は、一番目の測定点P1に仮想センサを配置する。そして、シミュレーション実施部132は、一番目の発信点P2から所定強度の仮想電波を発し、一番目の測定点P1で受信する仮想電波の強度(例えばRSSI値)を測定する。併せて、シミュレーション実施部132は、一番目の測定点P1と一番目の発信点P2との距離を算出する。その後、発信点P2の変更から、変更後の発信点P2からの仮想電波発信、一番目の測定点P1と変更後の発信点P2との距離算出、一番目の測定点P1における仮想電波の強度測定までの一連の動作を繰り返す。これにより、仮想電波の強度、および発信点P2と測定点P1との距離の組がn組得られる。この以下、この強度と距離の組をフィンガープリントと称する。また、シミュレーション実施部132は、このフィンガープリントを得るために行った一連の動作と同様の動作を、二番目からm番目までの各測定点P1についても同様に行う。これにより、m×n組のフィンガープリントが得られる。発信点P2および測定点P1の位置が変わることで、発信点P2から測定点P1までの距離が変わるため、測定点P1における仮想電波の強度はフィンガープリント毎に異なる。また、発信点P2および測定点の位置が変わることで、発信点P2と測定点P1との間に障害物が介在したり、障害物の厚さや遮蔽範囲が異なったりする。測定点P1における仮想電波の強度は、このことによっても異なってくる。
【0021】
フィンガープリントの作成は、仮想電波の測定に要する時間的コストが非常に大きい。このため、自動運転車両の走行範囲内の全ての道路について上記計測を行うことは実質的に不可能である。一方、現状の自動運転車両が道路上を走行するためには、当該自動運転車両またはこれを制御するサーバが、少なくとも走行範囲を含む三次元地
図Mを有している必要がある。すなわち、自動運転車両の走行範囲については三次元地
図Mが予め作成されていることになる。本実施形態に係るシミュレーション実施部132は、このサーバ1が有する三次元地
図Mを用いて、測定される仮想電波の強度をシミュレーションすることにより、フィンガープリントを容易に得る(更新する)ことができる。なお、上記サーバ側受信制御部131がフィンガープリントを取得するよう構成されている場合、サーバ1はシミュレーション実施部132を備えていなくてもよい。
【0022】
(データベース構築部)
データベース構築部133は、シミュレーションにより得られた、交通参加者および車両2の位置関係と、電波の強度と、の組を位置関係毎に複数蓄積してデータベースDを構築する。本実施形態に係るデータベース構築部133が構築するデータベースDは、
図3に示したように、測定点テーブルT
1、発信点テーブルT
2およびフィンガープリントテーブルT
3の三種類のテーブルで構成されている。測定点テーブルT
1は、測定点P
1を識別するID、測定点P
1の緯度、及び測定点P
1の経度を、測定点P
1毎に複数蓄積したものである。発信点テーブルT
2は、発信点P
2を識別するID、発信点P
2の緯度、及び発信点P
2の経度を、発信点P
2毎に複数蓄積したものである。フィンガープリントテーブルT
3は、
図4に示したように、フィンガープリントを識別するID、測定点P
1を識別するID、発信点P
2を識別するID、および電波の強度(RSSI値)の組を、フィンガープリント毎に複数蓄積したものである。
【0023】
(サーバ側送信制御部)
サーバ側送信制御部134は、データベースDに蓄積された少なくとも一部のデータを対象車両2に送信するようサーバ側通信部11を制御する。本実施形態に係るサーバ側送信制御部134は、車両2からの受信内容に基づいてサーバ側通信部11を制御する。これにより、サーバ側通信部11は、データベースDに蓄積されたデータのうち、受信した走行経路に対応するデータを送信する。こうすることで、サーバ1と対象車両2との間の通信量を削減することができる。
【0024】
[車両]
車両2は、
図5に示したように、センサ21と、車両側通信部22(第二通信部)と、車両側記憶部23と、車両側制御部24と、を備える。本実施形態に係る車両2は、第二センサ25を更に備えている。
【0025】
〔センサ〕
センサ21は、交通参加者が所持する発信機からの電波を検知する。本実施形態に係るセンサ21が検知する電波を発する発信機は、自動運転車両と通信する専用のものであってもよいし、携帯電話等であってもよい。センサ21は、車両2における一の部位に備えられている。本実施形態に係るセンサ21は、発信機とbluetooth(登録商標)で通信するよう構成されている。また、本実施形態に係るセンサ21は、電波を所定周期で繰り返し検知する。センサ21の周囲に発信機が複数存在する場合、センサ21は、各発信機からの電波をそれぞれ受信する。
【0026】
〔第二センサ〕
第二センサ25は、車両2における一の部位と異なる他の部位に備えられている。第二センサ25は、上記センサと同様に構成されている。
【0027】
〔車両側通信部〕
車両側通信部22は、サーバ1と通信する。本実施形態に係る車両側通信部22は、通信モジュールで構成されている。
【0028】
〔車両側記憶部〕
車両側記憶部23は、三次元地
図Mを更新可能な状態で記憶している。また、サーバ側記憶部12は、走行経路Rを更新可能な状態で記憶している。本実施形態に係るサーバ側記憶部12は、半導体メモリや、ハードディスク等で構成されている。
【0029】
〔車両側制御部〕
車両側制御部24は、車両側送信制御部241(第二送信制御部)と、車両側受信制御部242(受信制御部)と、第一特定部243と、測定部244と、第二特定部245と、出力制御部246と、運転制御部247と、を備える。
【0030】
(車両側送信制御部)
車両側送信制御部241は、自身の走行経路に関する情報を送信するよう車両側通信部22を制御する。
【0031】
(車両側受信制御部)
車両側受信制御部242は、サーバ1から、データを受信するよう車両側通信部を制御する。
【0032】
(第一特定部)
第一特定部243は、三次元地
図Mに基づいて自身の位置を特定する。
【0033】
(測定部)
測定部244は、センサが検知した電波の強度を測定する。本実施形態に係る測定部244は、センサ21の出力に基づいて、電波のRSSI値を算出する。本実施形態に係る測定部244は、第二センサが検知した電波の強度も測定する。
【0034】
(第二特定部)
第二特定部245は、車両側通信部が受信したデータ、第一特定部243が特定した自身の位置および測定部244が測定した電波の強度に基づいて、第一特定部243が特定した位置に自身がいるときの交通参加者の位置を特定する。
【0035】
具体的には、第二特定部245は、まず、測定部244が算出したRSSI値のときの、センサ21と発信機との距離dを算出する。そして、第二特定部245は、
図6に示したように、路面と平行でセンサ21を中心とする半径d+αの外円と、路面と平行でセンサ21を中心とする半径d-αの内円とによって挟まれる環状の領域を、発信機が存在する可能性のある領域(以下、候補領域R
1)に設定する。αの値は交差点Cの道幅等に基づいて任意に設定することができる。例えば、RSSI値が-65dBmで、αが2mあった場合、センサ21と発信機との距離は10m程度となることが予想されるため、センサ21を中心とする半径12mの外円と半径8mの内円とによって挟まれる領域が候補領域R
1となる。なお、このときのセンサ21は、必ずしも測定点P
1上に位置するわけではないが、いずれかの測定点P
1の近傍に位置することになる。
【0036】
候補領域R
1を設定した後、第二特定部245は、
図7に示したように、上記シミュレーション実施部132が設定した複数の発信点P
2のうち、候補領域R
1上に位置する発信点P
2を特定する。以下、候補領域R
1上に位置する発信点P
2を候補発信点P
3と称する。そして、第二特定部245は、サーバ1から受信したデータベースDの少なくとも一部のデータから、各候補発信点P
3に対応するフィンガープリントを参照し、測定部244が測定した、センサ21が受信した電波のRSSI値と近いRSSI値が紐づけられた候補発信点P
3を特定する。本実施形態に係る第二特定部245は、測定部244が測定したRSSI値に近い方から順に所定数の候補発信点P
3を特定する。
【0037】
上述したように、本実施形態に係る車両2は、センサ21の他に第二センサ25を備える。このため、本実施形態に係る第二特定部245は、受信したデータ、特定した自身の位置、センサ21が検知した電波の強度、および第二センサが検知した電波の強度に基づいて交通参加者の位置を特定する。具体的には、第二特定部245は、上記と同様の方法で、
図8に示したように、第二センサ25を中心とする円環状の候補領域(以下、第二候補領域R
2)を設定する。そして、第二特定部245は、第二候補領域R
2上の候補発信点P
3を特定する。そして、第二特定部245は、第二センサ25が受信した電波のRSSI値と近いRSSI値が紐づけられた候補発信点P
3を特定する。
【0038】
そして、本実施形態に係る第二特定部245は、センサ21が受信した電波のRSSI値と近いRSSI値が紐づけられた候補発信点P
3のうち、第二センサ25が受信した電波のRSSI値と近いRSSI値が紐づけられた候補発信点P
3と共通する候補発信点P
3を、歩行者の位置と推定する。例えば、
図9左側に示したようなフィンガープリントテーブルT
3が得られているとする。そして、センサ21が測定点(ID1)上またはその近傍に、第二センサ25が測定点(ID2)上またはその近傍にそれぞれ位置し、センサ21が受信した電波のRSSI値が-45dBm、第二センサ25が受信した電波のRSSI値が-50dBmであった場合、第二特定部245は、例えば
図9中央に示したような、候補範囲に含まれる発信点P
2に対応するフィンガープリント、および第二候補範囲に含まれる発信点P
2に対応するフィンガープリントを特定する。そして、第二特定部245は、特定した複数のフィンガープリントの中から、
図9右側に示したように、発信点P
2が共通するフィンガープリントを特定する。その結果、第二特定部245は、発信点(ID1)が交通参加者の位置であると推定することができる。また、第二特定部245は、発信点テーブルT
2を参照することにより、発信点(ID1)の緯度および経度を特定することができる。
【0039】
以上説明してきたように、第二特定部245が、センサが検知した電波の強度に、センサから離れた位置にある第二センサが検知した電波の強度を加味することで、交通参加者の位置をより正確に特定することができる。なお、このような方法で発信点P2を特定する場合、発信点P2が一つに絞られない(歩行者の位置が一意に定まらない)可能性がある。このような場合、車両2にセンサ21,25とは別に第nセンサ(n=3,4,・・)を備えてもよい。そして、第二特定部245が、第nセンサが受信した電波のRSSI値と近いRSSI値が紐づけられた候補発信点P3を特定することにより、候補発信点P3をさらに絞り込むように構成されていてもよい。また、車両2がセンサ21,第二センサ25以外に外界の情報を取得できる手段(例えば車載カメラ等)を備えている場合、第二特定部245は、当該手段によって得られた外界の情報と統合することにより、候補発信点P3をさらに絞り込むように構成されていてもよい。
【0040】
(出力制御部)
出力制御部246は、特定した交通参加者の位置を出力する。本実施形態に係る出力制御部246は、交通参加者の位置を、運転制御部247に出力する。
【0041】
なお、出力制御部246は、特定した交通参加者の位置を、三次元地
図Mにマッピングした形で出力するよう構成されていてもよい。このようにすれば、静的な情報(車道L
1や信号機等)を有する三次元地
図Mに動的な情報(交通参加者の情報)が加味されたダイナミックマップを得ることができる。このため、運転制御部247がこのダイナミックマップを用いて運転制御を行うことにより、交通参加者(特に、交差点Cの死角にいる歩行者)の位置を考慮した自動運転をより正確に行うことができる。
【0042】
(運転制御部)
運転制御部247は、加速、減速、および操舵の少なくともいずれかに関する機構を自動で制御する。上述したように、本実施形態に係る出力制御部246は、交通参加者の位置を運転制御部247に出力する。このため、本実施形態に係る運転制御部247は、出力制御部246から入力された交通参加者の位置を加味した制御を行う。こうすることで、車両2は、特定した交通参加者の位置を考慮した自動運転を行うことができる。
【0043】
具体的には、車道L1上を走行する自身(車両2)が、交差点Cに進入しようとしているときに、当該車道L1と交差する歩道L2上を交通参加者が交差点Cに向かって歩行していることを検知した場合、運転制御部247は、一のタイミングで取得した交通参加者の位置、および次以降のタイミングで取得した交通参加者の位置に基づいて交通参加者の速度を算出する。そして、運転制御部247は、自身および交通参加者がこのまま進行した場合に、交差点Cで歩行者と衝突する可能性があるか否かを判断する。そして、衝突する可能性があると判断した場合、運転制御部247は、自身の速度を下げる。その結果、車両2は、交通参加者との衝突を未然に防ぐことができる。
【0044】
また、車道L
1上を走行する自身(車両2)が、交差点Cに進入しようとしているときに、
図10に示したように、当該車道L
1と交差する歩道L
2上を右側から交差点Cに向かって歩行している一の交通参加者と、左側から交差点Cに向かって歩行している他の交通参加者をそれぞれ検知した場合、運転制御部247は、一の交通参加者と他の交通参加者の速度をそれぞれ算出する。そして、運転制御部247は、自身、一の交通参加者および他の交通参加者がこのまま進行した場合に、交差点Cで一の交通参加者および他の交通参加者の少なくとも一方と衝突する可能性があるか否かを判断する。そして、衝突する可能性があると判断した場合、運転制御部247は、自身の速度を下げる。また、運転制御部247は、自身が車道L
1の中央付近を走行するよう操舵する。その結果、車両2は、一の交通参加者および他の交通参加者との衝突を未然に防ぐことができる。
【0045】
以上のように構成された車両側制御部24は、交差点Cの所定距離手前に差し掛かってから歩道L2を通り過ぎるまでの間、以上説明してきた、車両2の位置の特定、電波の強度の測定、交通参加者の位置の特定、交通参加者の位置の出力および機構の自動制御を繰り返し実行する。こうすることで、車両2および交通参加者がそれぞれ移動し続けても、車両2は、交通参加者との衝突を未然に防ぐことができる。
【0046】
[作用効果]
従来、車両が車外にいる交通参加者の位置等を取得するためには、道路上に設置された路上カメラが必要であった。このため、新たな建築物が建てられる等、車両にとっての新たな死角が生じた場合には、その死角にいる交通参加者を検知するための路上カメラを新たに設置しなければならなかった。
しかし、以上説明してきた本実施形態に係る運転支援システム100によれば、新たな死角が生じても、その都度シミュレーションを行うことにより、交通参加者の位置の特定を直ちに行うことができる。このため、沿道に新たな死角が生じた場合であっても、当該新たな死角を移動する交通参加者を容易かつ迅速に検知することができる。
【0047】
また、得られる交通参加者および車両2の位置関係と電波の強度との組(フィンガープリント)は、交通参加者と車両2との間に介在する電波を減衰させる障害物(建物等)の存在を考慮した(交通参加者と車両2の間に障害物が存在する場合には、障害物の分だけ電波の強度が小さく算出された)ものとなる。このため、交通参加者と車両2との間に障害物が介在する場合であっても、交通参加者の位置を正確に特定することができる。
【0048】
また、特に交差点Cにおいては、死角が生じやすい。また、交差点Cにおいては、子供や高齢者が予想外の行動を取る可能性が高い。すなわち、交差点Cは、道路上の他の箇所に比べて車両と交通参加者との衝突が起こりやすい。しかし、上記運転支援システム100によれば、交差点Cに向かって移動する交通参加者の位置を正確に検知することができる。このため、交差点C上であっても、車両2と交通参加者との衝突を防ぐことができる。
【0049】
また、以上説明してきた本発明の各態様によれば、上述した作用効果を奏することにより、持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「産業と具術革新の基盤をつくろう」の達成に貢献できる。
【0050】
[その他]
なお、上記運転支援システム100は、自動運転車両が歩行者の位置を検知するためのものであった。しかし、本運転支援システムは、
図11に示したように、自動運転車両が他の車両2Bの位置を検知するのに用いることも可能である。具体的には、発信機Bを他の車両2Bに備えるようにし、シミュレーションを行う際の三次元地
図M上の発信点P
2を車道L
1上に設定することにより実現することができる。
【0051】
また、上記運転支援システムを構成する各装置(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の各制御ブロック(特にサーバ側制御部13および車両側制御部24に含まれる各部)としてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
この場合、上記装置は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0052】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0053】
<第二実施形態>
次に、本発明の一の態様(運転支援システム)の第二実施形態について説明する。
図12は運転支援システム100Aの機能的構成を示すブロック図である。
【0054】
上記第一実施形態に係る運転支援システム100は、サーバ1および車両2によって構成されていた。これに対し、本実施形態に係る運転支援システム100Aは、複数のサーバによって構成されている。具体的には、本実施形態に係る運転支援システム100Aは、第一サーバ1と、第二サーバ1Aと、を備える。また、本実施形態に係る運転支援システム100Aは、車両2Aを制御する。
【0055】
[対象車両]
運転支援システム100Aが制御対象とする車両2Aは、上記第一実施形態に係る運転支援システム100を構成する車両2とは異なる。具体的には、車両2Aは、特定した自身の位置および測定した電波の強度を第二サーバ1Aへ送信する機能を有する。また、車両2Aは、上記第一実施形態に係る車両2の第二特定部245に相当する構成を有していない。代わりに、車両2Aは、第二サーバ1Aから、当該第二サーバ1Aが特定した交通参加者の位置を受信する機能を有する。
【0056】
[第一サーバ]
第一サーバ1は、上記サーバ1と同様に構成されている。
【0057】
[第二サーバ]
第二サーバ1Aは、
図12に示したように、第二サーバ側通信部14(第二通信部)と、第二サーバ側制御部15と、を有する。
【0058】
〔第二サーバ側通信部〕
第二サーバ側通信部14は、第一サーバ1と通信する。
【0059】
〔第二サーバ側制御部〕
第二サーバ側制御部15は、第一受信制御部151と、第二受信制御部152と、特定部153と、第二送信制御部154と、を有する。
【0060】
(第一受信制御部)
第一受信制御部151は、第一サーバ1からデータを受信するよう第二サーバ側通信部14を制御する。
【0061】
(第二受信制御部)
第二受信制御部152は、対象車両2から、当該対象車両2の位置、および検知した電波の強度を受信するよう第二サーバ側通信部14を制御する。
【0062】
(特定部)
特定部153は、受信したデータ、対象車両2の位置および電波の強度に基づいて、特定した位置に対象車両2がいるときの交通参加者の位置を特定する。
【0063】
(第二送信制御部)
第二送信制御部154は、特定した交通参加者の位置を対象車両2へ送信するよう通信部を制御する。
【0064】
[作用効果]
以上説明してきた本実施形態に係る運転支援システム100Aによれば、上記第一実施形態に係る運転支援システム100と同様、沿道に新たな死角が生じた場合であっても、当該新たな死角を移動する交通参加者を容易かつ迅速に検知することができる。
<運転支援方法>
次に、本発明の他の態様(運転支援方法)の実施形態について説明する。
図13は運転支援方法の流れを示すフローチャートである。
【0065】
運転支援方法は、
図13に示したように、シミュレーションステップS1と、構築ステップS2と、送信ステップS3と、受信ステップS4と、特定ステップS5と、検知ステップS6と、測定ステップS7と、第二特定ステップS8と、出力ステップS9と、を有する。
【0066】
(シミュレーションステップ)
初めのシミュレーションステップS1では、サーバ1が、電波の発信機を所持する交通参加者および車両2が一の位置関係にある場合の、発信機から車両2へ届く電波の強度を、三次元地
図Mを用いてシミュレーションする。なお、限られた走行範囲に限ってシミュレーションを行う場合、実際の道路上でシミュレーションを行ってもよい。
【0067】
(構築ステップ)
シミュレーションした後は、構築ステップS2に移る。構築ステップS2では、サーバ1が、シミュレーションにより得られた、交通参加者および車両2の位置関係と、電波の強度と、の組を位置関係毎に複数蓄積してデータベースDを構築する。
【0068】
(送信ステップ)
データベースDを構築した後は、送信ステップS3に移る。送信ステップS3では、サーバ1が、データベースDに蓄積された少なくとも一部のデータを対象車両2に送信する。
【0069】
(受信ステップ)
データを送信した後は、受信ステップS4に移る。受信ステップS4では、対象車両2が、サーバ1からデータを受信する。
【0070】
(特定ステップ)
サーバ1からデータを受信した後は、特定ステップS5に移る。特定ステップS5では、対象車両2が、三次元地
図Mに基づいて自身の位置を特定する。
【0071】
(検知ステップ)
対象車両2が自身の位置を特定した後は、検知ステップS6に移る。検知ステップS6では、対象車両2が、発信機からの電波を検知する。
【0072】
(測定ステップ)
対象車両2が電波を検知した後は、測定ステップS7に移る。測定ステップS7では、対象車両2が、検知した電波の強度を測定する。
【0073】
(第二特定ステップ)
対象車両2が電波の強度を測定した後は、第二特定ステップS8に移る。第二特定ステップS8では、対象車両2が、受信したデータ、特定した自身の位置および測定した電波の強度に基づいて、特定した位置に自身がいるときの交通参加者の位置を特定する。
【0074】
(出力ステップ)
対象車両2が交通参加者の位置を特定した後は、出力ステップS9に移る。出力ステップS9では、対象車両2が、特定した交通参加者の位置を出力する。
【0075】
[作用効果]
以上説明してきた本実施形態に係る運転支援方法によれば、上記第一実施形態に係る運転支援システム100と同様、沿道に新たな死角が生じた場合であっても、当該新たな死角を移動する交通参加者を容易かつ迅速に検知することができる。
【0076】
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0077】
100、100A 運転支援システム
1 第一サーバ
1A 第二サーバ
11 サーバ側通信部
12 サーバ側記憶部
13 サーバ側制御部
131 サーバ側受信制御部
132 シミュレーション実施部
133 データベース構築部
134 サーバ側送信制御部
14 第二サーバ側通信部
15 第二サーバ側制御部
151 第一受信制御部
152 第二受信制御部
153 特定部
154 第二送信制御部
2、2A、2B、 車両(対象車両)
21、21、25 センサ
22 車両側通信部(第二通信部)
23 車両側記憶部
24 車両側制御部
241 車両側送信制御部
242 車両側受信制御部
243 第一特定部
244 測定部
245 第二特定部
246 出力制御部
247 運転制御部
25 第二センサ
d 距離
L1 車道
L2 歩道
P1 測定点
I1 測定点の間隔
P2 発信点
I2 発信点の間隔
P3 候補発信点
R 走行経路
R1 候補領域
R2 第二候補領域
【手続補正書】
【提出日】2023-04-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーバと対象車両とを備える運転支援システムであって、
前記サーバは、
電波の発信機を所持する交通参加者および車両の位置関係毎に、前記発信機から前記車両へ届く電波の強度を、三次元地図を用いてシミュレーションするシミュレーション実施部と、
前記シミュレーションにより得られた、前記交通参加者および前記車両の位置関係と、電波の強度と、の組を位置関係毎に複数蓄積してデータベースを構築するデータベース構築部と、
前記対象車両と通信する第一通信部と、
前記データベースに蓄積された少なくとも一部のデータを前記対象車両に送信するよう前記第一通信部を制御する送信制御部と、を備え、
前記対象車両は、
前記サーバと通信する第二通信部と、
前記サーバから前記データを受信するよう前記第二通信部を制御する受信制御部と、
三次元地図に基づいて自身の位置を特定する第一特定部と、
前記発信機からの電波を検知するセンサと、
前記センサが検知した電波の強度を測定する測定部と、
前記第二通信部が受信した前記データ、前記第一特定部が特定した自身の位置および前記測定部が測定した電波の強度に基づいて、前記第一特定部が特定した位置に自身がいるときの前記交通参加者の位置を特定する第二特定部と、
特定した前記交通参加者の位置を出力する出力制御部と、を備える、運転支援システム。
【請求項2】
前記対象車両は、加速、減速、および操舵の少なくともいずれかに関する機構を自動で制御する運転制御部を更に備え、
前記出力制御部は、前記交通参加者の位置を、前記運転制御部に出力する、
請求項1に記載の運転支援システム。
【請求項3】
前記サーバは、前記対象車両から、当該対象車両の走行経路に関する情報を受信するよう前記第一通信部を制御するサーバ側受信制御部を備え、
前記第一通信部は、前記データベースに蓄積されたデータのうち、受信した走行経路に対応するデータを送信する、
請求項1または2に記載の運転支援システム。
【請求項4】
前記出力制御部は、特定した前記交通参加者の位置を、三次元地図にマッピングした形で出力する、請求項2に記載の運転支援システム。
【請求項5】
前記対象車両は、
一の部位に前記センサを備え、
前記一の部位と異なる他の部位に、前記発信機からの電波を検知する第二センサを備えており、
前記測定部は、前記第二センサが検知した電波の強度も測定するようになっており、
前記第二特定部は、受信した前記データ、特定した自身の位置、前記センサが検知した電波の強度、および前記第二センサが検知した電波の強度に基づいて前記交通参加者の位置を特定する、請求項1~4のいずれか一項に記載の運転支援システム。
【請求項6】
電波の発信機を所持する交通参加者および車両が一の位置関係にある場合の、前記発信機から前記車両へ届く電波の強度を、三次元地図を用いてシミュレーションするシミュレーション実施部と、シミュレーションにより得られた、前記交通参加者および前記車両の位置関係と、電波の強度と、の組を位置関係毎に複数蓄積してデータベースを構築するデータベース構築部と、対象車両と通信する第一通信部と、を有する第一サーバと、
前記第一サーバと通信する第二通信部と、前記第一サーバから、前記データベースに蓄積された少なくとも一部のデータを受信するよう前記第二通信部を制御する第一受信制御部と、対象車両から、当該対象車両の位置、および検知した電波の強度を受信するよう前記第二通信部を制御する第二受信制御部と、受信した前記データ、前記対象車両の位置および電波の強度に基づいて、特定した位置に前記対象車両がいるときの前記交通参加者の位置を特定する特定部と、特定した前記交通参加者の位置を前記対象車両へ送信するよう前記第二通信部を制御する第二送信制御部と、を有する第二サーバと、
を備える運転支援システム。
【請求項7】
サーバが、電波の発信機を所持する交通参加者および車両が一の位置関係にある場合の、前記発信機から前記車両へ届く電波の強度を、三次元地図を用いてシミュレーションするステップと、
前記サーバが、シミュレーションにより得られた、前記交通参加者および前記車両の位置関係と、電波の強度と、の組を位置関係毎に複数蓄積してデータベースを構築するステップと、
前記サーバが、前記データベースに蓄積された少なくとも一部のデータを対象車両に送信するステップと、
前記対象車両が、前記サーバから前記データを受信するステップと、
前記対象車両が、三次元地図に基づいて自身の位置を特定するステップと、
前記対象車両が、前記発信機からの電波を検知するステップと、
前記対象車両が、検知した電波の強度を測定するステップと、
前記対象車両が、受信した前記データ、特定した自身の位置および測定した電波の強度に基づいて、特定した位置に自身がいるときの前記交通参加者の位置を特定するステップと、
前記対象車両が、特定した前記交通参加者の位置を出力するステップと、
を有する運転支援方法。