(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128054
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】電気加熱式担体及び排気ガス浄化装置
(51)【国際特許分類】
F01N 3/28 20060101AFI20230907BHJP
F01N 3/20 20060101ALI20230907BHJP
F01N 3/24 20060101ALI20230907BHJP
B01J 35/04 20060101ALI20230907BHJP
B01J 32/00 20060101ALI20230907BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
F01N3/28 301U
F01N3/20 K
F01N3/24 L
B01J35/04 301F
B01J32/00
B01D53/94 300
B01D53/94 ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022032107
(22)【出願日】2022-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】高田 傑士
(72)【発明者】
【氏名】嶋崎 忍
【テーマコード(参考)】
3G091
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
3G091AB01
3G091BA09
3G091CA04
3G091GA06
3G091GA10
3G091GA17
3G091GB17X
3G091HA05
3G091HA31
3G091HA45
4D148AA06
4D148AB01
4D148AB02
4D148BA08Y
4D148BA10Y
4D148BA11Y
4D148BA15Y
4D148BA19Y
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4D148BA41Y
4D148BB02
4D148CC43
4G169AA01
4G169BA13A
4G169CA03
4G169DA06
4G169EA26
4G169EB15X
4G169EB15Y
4G169EE03
(57)【要約】
【課題】振動に対する金属電極の耐性を向上できる電気加熱式担体及び排気ガス浄化装置を提供する。
【解決手段】本発明による電気加熱式担体は、外周壁と、外周壁の内側に配設され、一方の端面から他方の端面まで延びる流路を形成する複数のセルを区画形成する隔壁とを有するハニカム構造体と、ハニカム構造体に電圧を印加するための一対の金属電極5とを備え、一対の金属電極5のそれぞれは、ハニカム構造体の外周面に固定された接続部50と、接続部50から延出された引出部51とを有しており、引出部には、少なくとも2つの屈曲部510が設けられており、少なくとも2つの屈曲部510の稜線の延在方向が、互いに異なる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周壁と、前記外周壁の内側に配設され、一方の端面から他方の端面まで延びる流路を形成する複数のセルを区画形成する隔壁とを有するハニカム構造体と、
前記ハニカム構造体に電圧を印加するための一対の金属電極と
を備え、
前記一対の金属電極のそれぞれは、
前記ハニカム構造体の外周面に固定された接続部と、
前記接続部から延出された引出部と
を有しており、
前記引出部には、少なくとも2つの屈曲部が設けられており、
前記少なくとも2つの屈曲部の稜線の延在方向が、互いに異なる、
電気加熱式担体。
【請求項2】
前記引出部の厚みは、0.03mm以上かつ1mm以下である、
請求項1に記載の電気加熱式担体。
【請求項3】
前記一対の金属電極のそれぞれが、複数の前記接続部と、前記接続部から延出された複数の前記引出部と、を有している、
請求項1又は2に記載の電気加熱式担体。
【請求項4】
前記少なくとも2つの屈曲部の稜線の延在方向は、前記ハニカム構造体の軸方向と平行な第1方向と、前記第1方向と直交する第2方向とを含む、
請求項1から3までのいずれか1項に記載の電気加熱式担体。
【請求項5】
前記ハニカム構造体が、前記ハニカム構造体の中心軸を挟んで、前記外周壁の外面上において、前記セルの流路方向に帯状に延びるように設けられた一対の電極層、を有し、
前記一対の金属電極が、前記電極層と接続されている、
請求項1から4までのいずれか1項に記載の電気加熱式担体。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項に記載の電気加熱式担体と、
前記電気加熱式担体を収容するとともに、前記引出部を外部に引き出すための開口を有する金属製の缶体と
を備える、
排気ガス浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気加熱式担体及び排気ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エンジン始動直後の排気ガス浄化性能の低下を改善するため、電気加熱触媒(EHC)が提案されている。EHCは、例えば、導電性セラミックスからなる柱状のハニカム構造体に金属電極を接続し、通電によりハニカム構造体自体を発熱させることで、エンジン始動前に触媒の活性温度まで昇温できるようにしたものである。
【0003】
電気加熱式担体の電極として、特許文献1には、蛇腹状の折り曲げ構造を有する引出部を有する電極を用いることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の蛇腹状の折り曲げ構造は、引出部を構成する金属板を担体の軸方向と平行な方向に延びる折り曲げ線に沿って複数回折り曲げることで形成されている。本発明者の検討の結果、このような折り曲げ構造は、電気加熱式担体の外周面の法線方向(電気加熱式担体を缶体内に挿入する際に引出部を圧縮する方向)及び電気加熱式担体の周方向の振動に対する応力緩衝には優れるが、電気加熱式担体の軸方向の振動に対しては脆弱であることが明らかとなった。従って、軸方向の振動を受けた際に電極が破損する場合があり、改善の余地があるものであった。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、振動に対する金属電極の耐性を向上できる電気加熱式担体及び排気ガス浄化装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る電気加熱式担体は、外周壁と、外周壁の内側に配設され、一方の端面から他方の端面まで延びる流路を形成する複数のセルを区画形成する隔壁とを有するハニカム構造体と、ハニカム構造体に電圧を印加するための一対の金属電極とを備え、一対の金属電極のそれぞれは、ハニカム構造体の外周面に固定された接続部と、接続部から延出された引出部とを有しており、引出部には、少なくとも2つの屈曲部が設けられており、少なくとも2つの屈曲部の稜線の延在方向が、互いに異なる。
【0008】
本発明に係る排気ガス浄化装置は、上述の電気加熱式担体と、電気加熱式担体を収容するとともに、引出部を外部に引き出すための開口を有する金属製の缶体とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明の電気加熱式担体及び排気ガス浄化装置によれば、引出部には、少なくとも2つの屈曲部が設けられており、少なくとも2つの屈曲部の稜線の延在方向が、互いに異なるので、振動に対する金属電極の耐性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態1による排気ガス浄化装置を示す斜視図である。
【
図2】
図1の線II-IIに沿う排気ガス浄化装置の断面図である。
【
図4】本発明の実施の形態2による排気ガス浄化装置を示す斜視図である。
【
図5】
図4の線V-Vに沿う排気ガス浄化装置の断面図である。
【
図7】本発明の実施の形態3による排気ガス浄化装置の金属電極を示す斜視図である。
【
図8】本発明の実施の形態4による排気ガス浄化装置の金属電極を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態の構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0012】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1による排気ガス浄化装置1を示す斜視図であり、
図2は
図1の線II-IIに沿う排気ガス浄化装置1の断面図である。
図1及び
図2に示す排気ガス浄化装置1は、例えば自動車等の排気経路上に設けられ、エンジンから排出される排気ガスを浄化するための装置である。
【0013】
図1及び
図2に示すように、排気ガス浄化装置1は、電気加熱式担体2と缶体3とを有している。
【0014】
電気加熱式担体2は、ハニカム構造体4と、一対の金属電極5とを有している。ハニカム構造体4は、セラミックス製の柱状の部材であり、外周壁40と、外周壁40の内側に配設され、一方の端面から他方の端面まで延びる流路を形成する複数のセル41aを区画形成する隔壁41とを有している。柱状とは、セル41aの流路方向(ハニカム構造体4の軸方向)に厚みを有する立体形状と理解できる。ハニカム構造体4の軸方向長さとハニカム構造体4の端面の直径又は幅との比(アスペクト比)は任意である。柱状には、ハニカム構造体4の軸方向長さが端面の直径又は幅よりも短い形状(偏平形状)も含まれていてよい。
【0015】
ハニカム構造体4の外形は柱状である限り特に限定されず、例えば、端面が円形の柱状(円柱形状)、端面がオーバル形状の柱状、端面が多角形(四角形、五角形、六角形、七角形、八角形等)の柱状等の他の形状とすることができる。また、ハニカム構造体4の大きさは、耐熱性を高める(外周壁の周方向に入るクラックを抑制する)という理由により、端面の面積が2000~20000mm2であることが好ましく、5000~15000mm2であることが更に好ましい。
【0016】
セル41aの流路方向に垂直な断面におけるセルの形状に制限はないが、四角形、六角形、八角形、又はこれらの組み合わせであることが好ましい。これ等のなかでも、四角形及び六角形が好ましい。セル形状をこのようにすることにより、ハニカム構造体4に排気ガスを流したときの圧力損失が小さくなり、触媒の浄化性能が優れたものとなる。
【0017】
セル41aを区画形成する隔壁41の厚みは、0.1~0.3mmであることが好ましく、0.1~0.2mmであることがより好ましい。隔壁41の厚みが0.1mm以上であることで、ハニカム構造体4の強度が低下するのを抑制可能である。隔壁41の厚みが0.3mm以下であることで、ハニカム構造体4を触媒担体として用いて、触媒を担持した場合に、排気ガスを流したときの圧力損失が大きくなるのを抑制できる。本発明において、隔壁41の厚みは、セル41aの流路方向に垂直な断面において、隣接するセル41aの重心同士を結ぶ線分のうち、隔壁41を通過する部分の長さとして定義される。
【0018】
ハニカム構造体4は、セル41aの流路方向に垂直な断面において、セル密度が40~150セル/cm2であることが好ましく、70~100セル/cm2であることが更に好ましい。セル密度をこのような範囲にすることにより、排気ガスを流したときの圧力損失を小さくした状態で、触媒の浄化性能を高くすることができる。セル密度が40セル/cm2以上であると、触媒担持面積が十分に確保される。セル密度が150セル/cm2以下であるとハニカム構造体4を触媒担体として用いて、触媒を担持した場合に、排気ガスを流したときの圧力損失が大きくなりすぎることが抑制される。セル密度は、外周壁40部分を除くハニカム構造体4の一つの端面部分の面積でセル数を除して得られる値である。
【0019】
ハニカム構造体4の外周壁40を設けることは、ハニカム構造体4の構造強度を確保し、また、セル41aを流れる流体が外周壁40から漏洩するのを抑制する観点で有用である。具体的には、外周壁40の厚みは好ましくは0.05mm以上であり、より好ましくは0.10mm以上、更により好ましくは0.15mm以上である。但し、外周壁40を厚くしすぎると高強度になりすぎてしまい、隔壁41との強度バランスが崩れて耐熱衝撃性が低下することから、外周壁40の厚みは好ましくは1.0mm以下であり、より好ましくは0.7mm以下であり、更により好ましくは0.5mm以下である。ここで、外周壁40の厚みは、厚みを測定しようとする外周壁40の箇所をセル41aの流路方向に垂直な断面で観察したときに、当該測定箇所における外周壁40の接線に対する法線方向の厚みとして定義される。
【0020】
ハニカム構造体4は、セラミックス製であり、導電性を有することが好ましい。ハニカム構造体4は、通電してジュール熱により発熱可能である限り、体積抵抗率については特に制限はないが、0.1~200Ωcmであることが好ましく、1~200Ωcmがより好ましい。本発明において、ハニカム構造体4の体積抵抗率は、四端子法により25℃で測定した値とする。
【0021】
ハニカム構造体4の材質としては、限定的ではないが、アルミナ、ムライト、ジルコニア及びコージェライト等の酸化物系セラミックス、炭化珪素、窒化珪素及び窒化アルミ等の非酸化物系セラミックスからなる群から選択することができる。また、炭化珪素-金属珪素複合材や炭化珪素/グラファイト複合材等を用いることもできる。これらの中でも、耐熱性と導電性の両立の観点から、ハニカム構造体4の材質は、珪素-炭化珪素複合材又は炭化珪素を主成分とするセラミックスを含有していることが好ましい。ハニカム構造体4の材質が、珪素-炭化珪素複合材を主成分とするものであるというときは、ハニカム構造体4が、珪素-炭化珪素複合材(合計質量)を、全体の90質量%以上含有していることを意味する。ここで、珪素-炭化珪素複合材は、骨材としての炭化珪素粒子、及び炭化珪素粒子を結合させる結合材としての珪素を含有するものであり、複数の炭化珪素粒子が、炭化珪素粒子間に細孔を形成するようにして、珪素によって結合されていることが好ましい。ハニカム構造体4の材質が、炭化珪素を主成分とするものであるというときは、ハニカム構造体4が、炭化珪素(合計質量)を、全体の90質量%以上含有していることを意味する。
【0022】
ハニカム構造体4が、珪素-炭化珪素複合材を含んでいる場合ハニカム構造体4に含有される「骨材としての炭化珪素粒子の質量」と、ハニカム構造体4に含有される「結合材としての珪素の質量」との合計に対する、ハニカム構造体4に含有される「結合材としての珪素の質量」の比率が、10~40質量%であることが好ましく、15~35質量%であることが更に好ましい。
【0023】
隔壁41は多孔質としてもよい。多孔質とする場合、隔壁41の気孔率は、35~60%であることが好ましく、35~45%であることが更に好ましい。気孔率は、水銀ポロシメータにより測定した値である。また、隔壁41を緻密質としてもよく、緻密質とする場合は、隔壁41の気孔率は、10%以下であってよく、5%以下であってもよい。
【0024】
ハニカム構造体4の隔壁41の平均細孔径は、2~15μmであることが好ましく、4~8μmであることが更に好ましい。平均細孔径は、水銀ポロシメータにより測定した値である。
【0025】
図示はしないが、ハニカム構造体4は、外周壁40の外面上において、電極層が設けられる。電極層は、例えば、ハニカム構造体4の中心軸を挟んで、外周壁40の外面上において、セル41aの流路方向に帯状に延びるように一対の電極層として設けられるが、電極層の配設方法としては、後述の一対の金属電極5と接続可能であれば、この形態に限られない。それらの電極層上に一対の金属電極5が設けられ、電極層と金属電極5とが接続されている。図示はしないが、金属電極5には、パワーケーブルを介して例えばバッテリ等の外部電源が接続され得る。金属電極5及び電極層を通してハニカム構造体4に電圧を印加することにより、ハニカム構造体4を発熱させることができる。
【0026】
電極層に電気を流しやすくする観点から、電極層の体積抵抗率は、ハニカム構造体4の体積抵抗率の1/200以上、1/10以下であることが好ましい。
【0027】
電極層の材質は、導電性セラミックス、金属、又は金属及び導電性セラミックスとの複合材(サーメット)を使用することができる。金属としては、例えばCr、Fe、Co、Ni、Si又はTiの単体金属又はこれらの金属よりなる群から選択される少なくとも一種の金属を含有する合金が挙げられる。導電性セラミックスとしては、限定的ではないが、炭化珪素(SiC)が挙げられ、珪化タンタル(TaSi2)及び珪化クロム(CrSi2)等の金属珪化物等の金属化合物が挙げられる。
【0028】
電極層を有するハニカム構造体4の製造方法としては、まず、ハニカム乾燥体の側面に、セラミックス原料を含有する電極層形成原料を塗布し、乾燥させて、ハニカム乾燥体の中心軸を挟んで、外周壁の外面上において、セルの流路方向に帯状に延びるように一対の未焼成電極層を形成して、未焼成電極層付きハニカム乾燥体を作製する。次に、未焼成電極層付きハニカム乾燥体を焼成して一対の電極層を有するハニカム焼成体を作製する。これにより、電極層を有するハニカム構造体4が得られる。
【0029】
一対の金属電極5は、ハニカム構造体4に電圧を印加するためのものである。一対の金属電極5は、ハニカム構造体4の外周面上、より具体的には上述の電極層上に取り付けられている。一対の金属電極5は、ハニカム構造体4の周方向に互いに離間して配置されている。一対の金属電極5は、ハニカム構造体4の軸方向における中央に配置されていてもよいし、中央から軸方向にずれた位置に配置されていてもよい。一対の金属電極5のうち、一方は陽極として扱われ、他方は陰極として扱われる。すなわち、一方の金属電極5からハニカム構造体4を通って他方の金属電極5に電流が流れる。
【0030】
一対の金属電極5のそれぞれは、ハニカム構造体4の外周面に固定された接続部50と、接続部50から延出された引出部51とを有している。接続部50は、ハニカム構造体4の外周面と接触、接続されている。引出部51には、図示しないパワーケーブルを介して外部電源が接続され得る。これら接続部50及び引出部51の詳細については、後に図を用いて説明する。
【0031】
電気加熱式担体2に触媒を担持することにより、電気加熱式担体2を触媒体として使用することができる。触媒としては、例えば、貴金属系触媒又はこれら以外の触媒が挙げられる。貴金属系触媒としては、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)といった貴金属をアルミナ細孔表面に担持し、セリア、ジルコニア等の助触媒を含む三元触媒や酸化触媒、又は、アルカリ土類金属と白金を窒素酸化物(NOx)の吸蔵成分として含むNOx吸蔵還元触媒(LNT触媒)が例示される。貴金属を用いない触媒として、銅置換又は鉄置換ゼオライトを含むNOx選択還元触媒(SCR触媒)等が例示される。また、これらの触媒から選択される二種以上の触媒を用いてもよい。なお、触媒の担持方法についても特に制限はなく、従来、ハニカム構造体に触媒を担持する担持方法に準じて行うことができる。
【0032】
缶体3は、電気加熱式担体2を収容するための筒状の金属製の部材である。缶体3は、引出部51を外部に引き出すための開口30を有している。金属としては、例えば、クロム系ステンレス鋼を始めとする各種ステンレス鋼等が挙げられる。缶体3の内周面にガラスからなる絶縁層を設けることもできる。絶縁層を設けることで、電気加熱式担体2に通電した時に、漏電を防ぐ効果をより高めることができる。図示は省略するが、ハニカム構造体4の外周面と缶体3の内周面との間には、マットが挿入されていてよい。
【0033】
次に、
図3は、
図2の金属電極5を示す斜視図である。本実施の形態の金属電極5は全体として一枚の金属板から構成されており、接続部50及び引出部51は互いに一体に形成されている。
【0034】
接続部50は、全体として櫛歯状の外形を有している。より具体的には、接続部50は、長手状の基部500と、基部500の長手方向に互いに離間して基部500の片側の側縁から互いに平行に延出された複数の歯部501とを有している。各歯部501は、基部500の長手方向に直交する方向に延在している。
【0035】
引出部51は、接続部50から延出された金属片が屈曲されることで形成されている。より具体的には、引出部51は、歯部501が延出されている側縁とは逆側の基部500の側縁から延出された金属片が屈曲されることで形成されている。引出部51を構成する金属片は、基部500の長手方向に係る基部500の中央部から基部500の長手方向に直交する方向に延出され得る。引出部51を構成する金属片は、基部500の長手方向に係る基部500の中央部から基部500の長手方向にずれた位置から延出されていてもよい。
【0036】
引出部51には、少なくとも2つの屈曲部510が設けられている。本実施の形態の引出部51には、2つの屈曲部510が設けられている。しかしながら、屈曲部510の数は、3以上であってもよい。少なくとも2つの屈曲部510は、それぞれの稜線Rの延在方向が互いに異なるように形成されている。稜線Rは、屈曲部510の曲げ外側に現れる屈曲部510の頂部が延在する線であり、屈曲部510を形成する際の折り曲げ線とも理解できる。
【0037】
引出部51の各部は、屈曲部510の稜線Rの延在方向を軸として、その軸周りに回動することができる。引出部51は、各部が回動することにより伸び縮みすることができる。上述のように少なくとも2つの屈曲部510の延在方向が互いに異なることで、それら屈曲部510により接続された各部の回動方向も互いに異なる。これにより、すべての屈曲部510の延在方向が同一の場合と比較して、より多くの方向に各部が回動でき、振動に対する金属電極5の耐性を向上できる。
【0038】
より具体的に説明すると、本実施の形態の引出部51には、第1及び第2屈曲部511,512(2つの屈曲部510)と、第1及び第2板部513,514とが設けられている。第1屈曲部511は、接続部50の基部500と第1板部513との間に設けられている。第1屈曲部511の稜線Rは、接続部50の基部500の長手方向に延在されている。第2屈曲部512は、第1板部513と第2板部514との間に設けられている。第2屈曲部512は、第1板部513の先端側に配置されている。第2屈曲部512の稜線Rは、第1屈曲部511の稜線Rに直交する方向に延在されている。第1屈曲部511の稜線Rと第2屈曲部512の稜線Rとが交わる角度は、90°未満又は90°超であってもよい。但し、応力緩衝(振動吸収)の観点から第1屈曲部511の稜線Rと第2屈曲部512の稜線Rとが交わる角度は90°(直交)に近い方が好ましく、同角度は90±45°であることが好ましく、90±30°であることがより好ましく、90±15°であることが更により好ましい。なお、第1屈曲部511の稜線Rと第2屈曲部512の稜線Rとがねじれの関係であるとき、それら稜線Rが交わる角度は、いずれか一方の稜線Rを他方に交わるように平行移行させた際の交差角度と理解してよい。
【0039】
説明の便宜上、
図3に示すように互いに直交するX、Y及びZ軸を定義する。X軸は接続部50の基部500から歯部501が延びる方向に延びる軸であり、Y軸は接続部50の基部500の長手方向に延びる軸であり、Z軸は基部500の厚み方向に延びる軸であると理解できる。
【0040】
接続部50がハニカム構造体4の外周面に固定されているとき、第1板部513は、Y軸を中心に回動できる。すなわち、第1板部513は、X及びZ軸方向に変位することができる。これは、第1屈曲部511によりX及びZ軸方向の振動を吸収できることを意味する。また、第2板部514は、X及びZ軸により定義される平面上に位置する軸を中心に回動できる。すなわち、第2板部514は、少なくともY軸方向に変位することができる。これは、第2屈曲部512により少なくともY軸方向の振動を吸収できることを意味する。すなわち、本実施の形態の引出部51は、3軸すべての方向の振動を吸収できることが分る。
【0041】
少なくとも2つの屈曲部510の稜線Rの延在方向は、ハニカム構造体4の軸方向と平行な第1方向と、第1方向と直交する第2方向とを含むことができる。
図1及び
図2に示すように、接続部50の基部500の長手方向がハニカム構造体4の軸方向と平行となるように金属電極5を配置することにより、第1屈曲部511の稜線Rを第1方向に延在させることができる。しかしながら、屈曲部510の稜線Rの延在方向をハニカム構造体4の軸方向に対して90°未満の角度だけ傾斜させる等、他の配置態様を採ってもよい。
【0042】
引出部51の厚みは、0.03mm以上かつ1mm以下であることが好ましい。引出部51の厚みが0.03mm以上であると、引出部51の強度が十分に確保される。引出部51の板厚が1mm以下であると、引出部51の剛性が高すぎず、引出部51の伸び縮みやすくなり、振動をより吸収しやすい。引出部51の厚みは、0.03mm以上0.8mm以下であることがより好ましく、0.05mm以上かつ0.7mm以下であることが更に好ましい。引出部51の厚みを上述の範囲内とすることで、引出部51に十分な強度を確保しつつ、引出部51の伸び縮みを円滑に行うことができる。接続部50の厚みは、引出部51の厚みと同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0043】
金属電極5の材質としては、Cr、Fe、Co、Ni及びTiよりなる群から選択される少なくとも一種を含む合金とすることが好ましく、ステンレス鋼及びFe-Ni合金がより好ましい。
【0044】
本実施の形態の電気加熱式担体2及び排気ガス浄化装置1では、少なくとも2つの屈曲部510が引出部51に設けられており、少なくとも2つの屈曲部510の稜線Rの延在方向が互いに異なるので、振動に対する金属電極5の耐性を向上できる。
【0045】
また、引出部51の厚みは0.03mm以上かつ1mm以下であるので、引出部51に十分な強度を確保しつつ、引出部51の伸び縮みを円滑に行うことができる。
【0046】
また、少なくとも2つの屈曲部510の稜線Rの延在方向は、ハニカム構造体4の軸方向と平行な第1方向と、第1方向と直交する第2方向とを含むので、電気加熱式担体2及び排気ガス浄化装置1を車両に搭載した際に加わると想定される振動に対する金属電極5の耐性をより確実に向上できる。
【0047】
実施の形態2.
図4は本発明の実施の形態2による排気ガス浄化装置1を示す斜視図であり、
図5は
図4の線V-Vに沿う排気ガス浄化装置1の断面図であり、
図6は
図5の金属電極5を示す斜視図である。
【0048】
図4~
図6に示すように、実施の形態2の金属電極5の引出部51は、基部500の長手方向に係る一端からその長手方向に延出された金属片が屈曲されることで形成されている。引出部51の第1屈曲部511の稜線Rは、基部500の長手方向に直交する方向に延在されている。引出部51の第2屈曲部512の稜線Rは、基部500の長手方向に延在されている。すなわち、実施の形態2では、第1及び第2屈曲部511,512の屈曲順序が実施の形態1の順序と逆転されている。その他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0049】
このように、引出部51が有する屈曲部510の屈曲順序は任意に変更してよい。
【0050】
実施の形態3.
図7は、本発明の実施の形態3による排気ガス浄化装置1の金属電極5を示す斜視図である。
図7に示すように、金属電極5は、複数の金属板で構成されていてよい。本実施の形態の金属電極5は、第1金属板6と第2金属板7とを有している。第1及び第2金属板6,7は、接続部50と引出部51とをそれぞれ有している。すなわち、本実施の形態の金属電極5は、複数の接続部50と複数の引出部51を有している。
【0051】
実施の形態3による電気加熱式担体2は、実施の形態の1の電気加熱式担体2と同様に一対の金属電極5を有する。それら一対の金属電極5を
図7に示す金属電極5とすることができる。すなわち、実施の形態3による電気加熱式担体2における一対の金属電極5は、複数の接続部50と複数の引出部51とをそれぞれ有している。
【0052】
第1及び第2金属板6,7は、それぞれの接続部50の基部500及び引出部51が互いに重なるように配置されている。第1及び第2金属板6,7の接続部50の歯部501は、それぞれの基部500から互いに逆方向に延出されている。第1及び第2金属板6,7の引出部51の構成は、実施の形態2の構成と同様である。但し、第1及び第2金属板6,7の引出部51が全体にわたって互いに面接触するように、それぞれの屈曲部510の曲げ角が適宜調整されている。その他の構成は、実施の形態1,2と同様である。
【0053】
実施の形態4.
図8は、本発明の実施の形態4による排気ガス浄化装置1の金属電極5を示す斜視図である。実施の形態3(
図7)では第1及び第2金属板6,7の引出部51が全体にわたって互いに面接触するように説明したが、これら第1及び第2金属板6,7の引出部51は互いに接触されていなくてもよい。これら引出部51が面接触されていなくても振動を吸収できる。
図8に示す態様では、曲げ外側に位置する屈曲部510と曲げ内側に位置する屈曲部510とが互いに非接触となるように、それら屈曲部510の曲率半径に差異が設けられている。そのほかの構成は、実施の形態1~3と同様である。
【実施例0054】
本発明者は、
図3に示すように複数の歯部501をそれぞれ有するステンレス鋼製の複数の金属電極5を準備して振動試験を実施した。複数の金属電極5は、以下の表に示すように、引出部51における屈曲部510の形態、及び引出部51の厚みが互いに異なるようにされている。以下の表では、2つの屈曲部510を有するものの、それら2つの屈曲部510の稜線Rの延在方向が互いに同じである金属電極5を比較例として表記し、稜線Rの延在方向が互いに異なる2つの屈曲部510を有する金属電極5を実施例として表記している。比較例は、長手状の金属片を単純に2回折り返した蛇腹状の(2つの屈曲部510の稜線Rの延在方向が互いに同じである)引出部51を有する金属電極5である。
【0055】
振動試験では、歯部501の先端部分(基部500から離れた部分)をセラミックス製のテストピースサンプルに接合し、引出部51の先端に外部接続用の端子をナットで締結した。また、ワーク(テストピースサンプル及び金属電極5)に対して、
図3に示すX軸方向の単振動及びY軸方向の単振動を個々に加えた。振動数は150Hz、振動の加速度は40Gとし、単振動を加える時間を2時間とした。また、各軸方向の単振動に対して、金属電極5を10個ずつ用いた。そして、歯部501の先端部分とテストピースサンプルとの接合部、及び屈曲部510に破断が生じているか否かを調査した。接合部の破断には、歯部501の先端部分とテストピースサンプルとの剥離が含まれる。その調査結果を以下の表に示す。
【0056】
【0057】
例えば比較例1及び実施例1等の引出部51の厚みが同じ比較例及び実施例の合計破断サンプル数を比較して分かるように、稜線Rの延在方向が互いに異なる金属電極5は、稜線Rの延在方向が互いに同じである金属電極5と比較して破断が生じにくいことが分かる。特に、実施例では、Y軸方向の振動を加えた際の接合部の破断を抑えられていることが分かる。これは、実施例の金属電極5では、第2屈曲部512が設けられていることで、Y軸方向の振動を吸収できているためと考えられる。このことから、屈曲部の稜線Rの延在方向が互いに異なる少なくとも2つの屈曲部510を引出部51に設けることの優位性が理解できる。
【0058】
比較例1-6と実施例1-6とを比較することにより、少なくとも引出部51の厚みが0.03mm以上かつ0.8mm以下であるときに破断数が抑えられていることが分かる。