(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128057
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】ハニカム構造体、電気加熱式触媒担体及び排気ガス浄化装置
(51)【国際特許分類】
B01J 35/04 20060101AFI20230907BHJP
B01J 35/02 20060101ALI20230907BHJP
C04B 38/00 20060101ALI20230907BHJP
F01N 3/20 20060101ALI20230907BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
B01J35/04 301C
B01J35/02 G
B01J35/04 301L
B01J35/04 301F
B01J35/04 301P
C04B38/00 303Z
F01N3/20 K
F01N3/28 301P
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022032110
(22)【出願日】2022-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】長田 太朗
(72)【発明者】
【氏名】森田 幸春
(72)【発明者】
【氏名】井上 崇行
(72)【発明者】
【氏名】小崎 裕子
(72)【発明者】
【氏名】内藤 佑人
(72)【発明者】
【氏名】貞光 貴裕
【テーマコード(参考)】
3G091
4G019
4G169
【Fターム(参考)】
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4G169FA01
(57)【要約】
【課題】ハニカム構造体の端面でのクラックの発生を抑制できるハニカム構造体、電気加熱式触媒担体及び排気ガス浄化装置を提供する。
【解決手段】本発明によるハニカム構造体20は、外周壁12と、外周壁12の内側に配設され、一方の端面から他方の端面まで延びる流路を形成する複数のセル16を区画形成する隔壁13とを有するセラミックス製のハニカム構造部10と、ハニカム構造部10の中心軸を挟んで、外周壁12の外面上において、セル13の流路方向に帯状に延びるように設けられた一対の電極層14a、14bと、を備え、ハニカム構造部10が、少なくとも一方の端面からハニカム構造部10の流路長さ方向中央に向かう方向に延びる端部領域に設けられ、気孔率がハニカム構造部10の全体の平均気孔率よりも低い低気孔率部4を有している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周壁と、前記外周壁の内側に配設され、一方の端面から他方の端面まで延びる流路を形成する複数のセルを区画形成する隔壁とを有するセラミックス製のハニカム構造部と、
前記ハニカム構造部の中心軸を挟んで、前記外周壁の外面上において、前記セルの流路方向に帯状に延びるように設けられた一対の電極層と、
を備え、
前記ハニカム構造部が、前記一方の端面及び/又は前記他方の端面から前記ハニカム構造部の流路長さ方向中央に向かう方向に延びる端部領域に設けられ、気孔率が前記ハニカム構造部の全体の平均気孔率よりも低い低気孔率部を有している、
ハニカム構造体。
【請求項2】
前記一方の端面が、流体の入口側の端面である、
請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項3】
前記低気孔率部が、前記一方の端面及び前記他方の端面から前記ハニカム構造部の流路長さ方向中央に向かう方向に延びる、それぞれの端部領域に設けられている、
請求項1又は2に記載のハニカム構造体。
【請求項4】
前記ハニカム構造部の流路長さ方向における前記低気孔率部の延在幅が、前記ハニカム構造部の流路長さ方向における前記ハニカム構造部の全長の0.5%以上かつ40%以下である、
請求項1から3までのいずれか1項に記載のハニカム構造体。
【請求項5】
前記ハニカム構造部の流路長さ方向における前記低気孔率部の延在幅が、0.3mm以上かつ20mm以下である、
請求項1から4までのいずれか1項に記載のハニカム構造体。
【請求項6】
前記低気孔率部以外の部分の平均気孔率(AP2)に対する前記低気孔率部の平均気孔率(AP1)の比率({(AP2-AP1)/AP2)}×100)が、0.2%以上かつ99.9%以下である、
請求項1から5までのいずれか1項に記載のハニカム構造体。
【請求項7】
前記低気孔率部の前記隔壁が、前記低気孔率部以外の部分の前記隔壁より、酸化物セラミックス及び/又は炭化ケイ素を多く含む、
請求項1から6までのいずれか1項に記載のハニカム構造体。
【請求項8】
前記低気孔率部の平均気孔率が、0.1%以上かつ40%以下である、
請求項1から7までのいずれか1項に記載のハニカム構造体。
【請求項9】
前記低気孔率部の気孔率が、前記端面から前記ハニカム構造部の流路長さ方向中央に向かって斬次大きくなる、請求項1から8までのいずれか1項に記載のハニカム構造体。
【請求項10】
前記低気孔率部の強度が、前記ハニカム構造部の全体の平均強度よりも大きい、
請求項1から9までのいずれか1項に記載のハニカム構造体。
【請求項11】
前記低気孔率部のヤング率が、前記ハニカム構造部の全体の平均ヤング率よりも大きい、
請求項1から10までのいずれか1項に記載のハニカム構造体。
【請求項12】
前記低気孔率部の熱膨張係数が、前記ハニカム構造部の全体の平均熱膨張係数以上である、
請求項1から11までのいずれか1項に記載のハニカム構造体。
【請求項13】
前記低気孔率部の前記隔壁の厚みが、前記ハニカム構造部の全体の前記隔壁の平均厚みよりも厚い、
請求項1から12までのいずれか1項に記載のハニカム構造体。
【請求項14】
前記低気孔率部の体積抵抗率が、前記ハニカム構造部の全体の平均体積抵抗率よりも小さい、
請求項1から13までのいずれか1項に記載のハニカム構造体。
【請求項15】
請求項1から14までのいずれか1項に記載のハニカム構造体と、
前記ハニカム構造体に担持された触媒と、
を備える、
電気加熱式触媒担体。
【請求項16】
前記低気孔率部の触媒担持厚みが、前記ハニカム構造部の全体の平均触媒担持厚みよりも薄い、
請求項15に記載の電気加熱式触媒担体。
【請求項17】
請求項1から14までのいずれか1項に記載のハニカム構造体と、
前記一対の電極層上に設けられた電極端子と、
前記ハニカム構造体を保持する金属製の缶体と、
を備える、
排気ガス浄化装置。
【請求項18】
前記ハニカム構造体の一方の端面が、流体の入口側の端面である、
請求項17に記載の排気ガス浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体、電気加熱式触媒担体及び排気ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1では、電気加熱用の触媒担体としてハニカム構造体を用いることが提案されている。ハニカム構造体は、複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁と外周壁とを有する筒状のハニカム構造部と、ハニカム構造部の側面に配設された一対の電極部とを備え、触媒担体であるとともに、電圧を印加することによりヒーターとしても機能するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、自動車への燃費規制等の影響から内燃機関の排気ガス最高温度が高くなっており、耐熱衝撃性という点では更なる改良が求められている。特に、ハニカム構造体の端面部にクラックが発生した場合、クラック発生部分に電気が流れないため、通電加熱時に要求される発熱性能を満たさなくなる可能性がある。このため、排気ガスによる熱衝撃に対してハニカム構造体の端面に発生するクラックを抑制する必要がある。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、ハニカム構造体の端面でのクラックの発生を抑制できるハニカム構造体、電気加熱式触媒担体及び排気ガス浄化装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るハニカム構造体は、外周壁と、外周壁の内側に配設され、一方の端面から他方の端面まで延びる流路を形成する複数のセルを区画形成する隔壁とを有するセラミックス製のハニカム構造部と、ハニカム構造部の中心軸を挟んで、外周壁の外面上において、セルの流路方向に帯状に延びるように設けられた一対の電極層と、を備え、ハニカム構造部が、一方の端面及び/又は他方の端面からハニカム構造部の流路長さ方向中央に向かう方向に延びる端部領域に設けられ、気孔率がハニカム構造部の全体の平均気孔率よりも低い低気孔率部を有している。
【0007】
本発明に係る電気加熱式触媒担体は、上述のハニカム構造体と、ハニカム構造体に担持された触媒と、を備える。
【0008】
本発明に係る排気ガス浄化装置は、上述のハニカム構造体と、一対の電極層上に設けられた電極端子と、ハニカム構造体を保持する金属製の缶体と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明のハニカム構造体、電気加熱式触媒担体及び排気ガス浄化装置によれば、ハニカム構造部が、少なくとも一方の端面からハニカム構造部の流路長さ方向中央に向かう方向に延びる端部領域に設けられ、気孔率がハニカム構造部の全体の平均気孔率よりも低い低気孔率部を有しているので、ハニカム構造体の端面でのクラックの発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態におけるハニカム構造体の外観模式図である。
【
図2】本発明の実施形態におけるハニカム構造体及びハニカム構造体の電極層上に設けられた電極端子の、セルの延伸方向に垂直な断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明のハニカム構造体、電気加熱式触媒担体及び排気ガス浄化装置の実施の形態について説明するが、本発明は、これに限定されて解釈されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良を加え得るものである。
【0012】
<ハニカム構造体>
図1は、本発明の実施形態におけるハニカム構造体20の外観模式図を示すものである。
図2は、本発明の実施形態におけるハニカム構造体20、及びハニカム構造体20の電極層14a、14b上に設けられた電極端子15a、15bの、セル16の延伸方向に垂直な断面模式図を示すものである。
【0013】
ハニカム構造体20は、ハニカム構造部10及び一対の電極層14a、14bを備える。
【0014】
(1.ハニカム構造部)
ハニカム構造部10は、セラミックス製の柱状の部材であり、外周壁12と、外周壁12の内側に配設され、一方の端面から他方の端面まで延びる流路を形成する複数のセル16を区画形成する隔壁13とを有している。柱状とは、セル16の延伸方向(ハニカム構造部10の流路長さ方向)に厚みを有する立体形状と理解できる。ハニカム構造部10の流路長さ方向長さとハニカム構造部10の端面の直径又は幅との比(アスペクト比)は任意である。柱状には、ハニカム構造部10の流路長さ方向長さが端面の直径又は幅よりも短い形状(偏平形状)も含まれていてよい。
【0015】
ハニカム構造部10の外形は柱状である限り特に限定されず、例えば、端面が円形の柱状(円柱形状)、端面がオーバル形状の柱状、端面が多角形(四角形、五角形、六角形、七角形、八角形等)の柱状等の他の形状とすることができる。また、ハニカム構造部10の大きさは、耐熱性を高める(外周壁の周方向に入るクラックを抑制する)という理由により、端面の面積が2000~20000mm2であることが好ましく、5000~15000mm2であることが更に好ましい。
【0016】
セル16の延伸方向に垂直な断面におけるセル16の形状に制限はないが、四角形、六角形、八角形、又はこれらの組み合わせであることが好ましい。これらのなかでも、ハニカム構造部10に触媒を担持し電気加熱式触媒担体30とした場合に、排気ガスを流したときの圧力損失が小さくなり、触媒の浄化性能が優れたものにできる四角形及び六角形がより好ましい。触媒の浄化性能がより優れたものにできるという観点から、六角形が更により好ましい。
【0017】
セル16を区画形成する隔壁13の厚みは、0.1~0.3mmであることが好ましく、0.1~0.2mmであることがより好ましい。隔壁13の厚みが0.1mm以上であることで、ハニカム構造部10の強度が低下するのを抑制可能である。隔壁13の厚みが0.3mm以下であることで、ハニカム構造部10に触媒を担持し電気加熱式触媒担体30とした場合に、排気ガスを流したときの圧力損失が大きくなるのを抑制できる。本発明において、隔壁13の厚みは、セル16の延伸方向に垂直な断面において、隣接するセル16の重心同士を結ぶ線分のうち、隔壁13を通過する部分の長さとして定義される。
【0018】
ハニカム構造部10は、セル16の延伸方向に垂直な断面において、セル密度が40~150セル/cm2であることが好ましく、70~100セル/cm2であることがより好ましい。セル密度をこのような範囲にすることで、ハニカム構造部10に触媒を担持し電気加熱式触媒担体30とした場合に、排気ガスを流したときの圧力損失を小さくした状態で、触媒の浄化性能を高くすることができる。セル密度が40セル/cm2以上であると、触媒担持面積が十分に確保される。セル密度が150セル/cm2以下であると、排気ガスを流したときの圧力損失が大きくなるのを抑制できる。セル密度は、外周壁12部分を除くハニカム構造部10の一つの端面部分の面積でセル数を除して得られる値である。
【0019】
ハニカム構造部10に外周壁12を設けることは、ハニカム構造部10の構造強度を確保し、また、セル16を流れる流体が外周壁12から漏洩するのを抑制する観点で有用である。具体的には、外周壁12の厚みは好ましくは0.05mm以上であり、より好ましくは0.10mm以上、更により好ましくは0.15mm以上である。但し、外周壁12を厚くしすぎると高強度になりすぎてしまい、隔壁13との強度バランスが崩れて耐熱衝撃性が低下することから、外周壁12の厚みは好ましくは1.0mm以下であり、より好ましくは0.7mm以下であり、更により好ましくは0.5mm以下である。ここで、外周壁12の厚みは、厚みを測定しようとする外周壁12の箇所をセル16の延伸方向に垂直な断面で観察したときに、当該測定箇所における外周壁12の接線に対する法線方向の厚みとして定義される。
【0020】
ハニカム構造部10は、導電性を有する。ハニカム構造部10は、通電してジュール熱により発熱可能である限り、体積抵抗率については特に制限はないが、0.1~200Ω・cmであることが好ましく、1~200Ω・cmであることがより好ましい。本発明において、ハニカム構造部10の体積抵抗率は、四端子法により25℃で測定した値とする。
【0021】
ハニカム構造部10の材質としては、限定的ではないが、炭化珪素、窒化珪素及び窒化アルミ等の非酸化物系セラミックスから選択することができる。また、炭化珪素-金属珪素複合材や炭化珪素/グラファイト複合材等を用いることもできる。これらの中でも、耐熱性と導電性の両立の観点から、ハニカム構造部10の材質は、珪素-炭化珪素複合材又は炭化珪素を主成分とするセラミックスを含有していることが好ましい。ハニカム構造部10の材質が、珪素-炭化珪素複合材を主成分とするものであるというときは、ハニカム構造部10が、珪素-炭化珪素複合材(合計質量)を、全体の90質量%以上含有していることを意味する。ここで、珪素-炭化珪素複合材は、骨材としての炭化珪素粒子、及び炭化珪素粒子を結合させる結合材としての珪素を含有するものであり、複数の炭化珪素粒子が、炭化珪素粒子間に細孔を形成するようにして、珪素によって結合されていることが好ましい。ハニカム構造部10の材質が、炭化珪素を主成分とするものであるというときは、ハニカム構造部10が、炭化珪素(合計質量)を、全体の90質量%以上含有していることを意味する。
【0022】
図1に示すように、ハニカム構造部10は、低気孔率部4を有している。低気孔率部4は、一方の端面及び/又は他方の端面からハニカム構造部10の流路長さ方向中央に向かう方向に延びる端部領域に設けられ、気孔率がハニカム構造部10の全体の平均気孔率よりも低い部分である。ハニカム構造部10の全体の平均気孔率とは、ハニカム構造部10の5箇所で測定した気孔率の算術平均値である。平均気孔率を得るために気孔率を測定する箇所は、ハニカム構造部10の両側の端面位置(2箇所)、両側の端面位置から流路長さ方向におけるハニカム構造部10の全長の1/4だけ流路長さ方向中央にそれぞれ向かった位置(2箇所)、及びハニカム構造部10の流路長さ方向中央位置(1箇所)の5箇所とする。それぞれの位置での気孔率測定用試料(切断体)を得られるように、ハニカム構造部10を径方向に切断し、それら気孔率測定用試料(切断体)の端面の幾何中心位置で気孔率を測定することで気孔率が求められる。
【0023】
本明細書において、気孔率は、以下のように求めることができる。すなわち、走査型電子顕微鏡(SEM)によって、ハニカム構造部10の上記それぞれの測定箇所を観察して、そのSEM画像を取得する。なお、SEM画像は200倍に拡大して観測するものとする。次に、取得したSEM画像を画像解析することにより、ハニカム構造部10の隔壁13の部分(セル16以外の部分)において、隔壁13の実体部分と、隔壁13中の空隙部分(気孔)とを二値化する。そして、隔壁13の実体部分と空隙部分との合計面積に対する、隔壁13中の空隙部分の比の百分率を算出し、その値を、ハニカム構造部10の気孔率とする。なお、ハニカム構造部10に担持された触媒を備える電気加熱式触媒担体30で気孔率を測定する場合、触媒部分は隔壁13の空隙部分とみなす。
【0024】
また、低気孔率部4を特定する方法としては、ハニカム構造部10の全体の平均気孔率を100%としたとき、一方の端面及び他方の端面から、気孔率が99%以下となっている部分を低気孔率部4とする。そして、気孔率が99%を超えるハニカム構造部10の流路長さ方向中央部を低気孔率部4以外の部分5とする。低気孔率部4は、ハニカム構造部10の一方の端面又は他方の端面からのみ、ハニカム構造部10の流路長さ方向中央に向かう方向に延びていてもよい。その場合、低気孔率部4がない他方の端面又は一方の端面は、端面まで低気孔率部4以外の部分5となる。
【0025】
低気孔率部4は、気孔率が低いため、ハニカム構造部10の他の部分と比較して大きい熱容量を有している。このため、ハニカム構造部10の流路に流入する排気ガス等の流体の温度が変化しても、端部領域の温度変化が穏やかになり、ハニカム構造部10の流路長さ方向の中央領域との温度差が大きくなりにくい。これにより、ハニカム構造部10又はハニカム構造体20の端面でのクラックの発生を抑制できる。
【0026】
なお、ハニカム構造部10の全体の気孔率が低い場合、ハニカム構造部10の全体の熱容量が大きくなる。この場合、ハニカム構造部10の全体の温度変化が穏やかになるものの、流体の温度が変化した際に、やはりハニカム構造部10の流路長さ方向の中央領域と端部領域との間の温度差が大きくなり、端面でのクラックの発生は抑制されにくい。また、ハニカム構造部10の全体の熱容量が大きいと、通電加熱時にハニカム構造部10の温度が上がり難いということも生じる。これらの観点から、端部領域に低気孔率部4を設けることが好ましい。
【0027】
図1に示すように一方の端面及び他方の端面からハニカム構造部10の流路長さ方向中央に向かう方向に延びる、それぞれの端部領域(両側の端部領域)に低気孔率部4が設けられていてもよいし、一方の端面又は他方の端面から延びる端部領域(片側の端部領域)のみに低気孔率部4が設けられていてもよい。低気孔率部4が両側に設けられるか片側に設けられるかに拘わらず、低気孔率部4は、流体の入口側の端部領域に設けられていることが好ましい(低気孔率部4が設けられる端部領域が延びる一方の端面が流体の入口側の端面であることが好ましい)。換言すると、低気孔率部4が設けられている端部領域が流体の入口側に位置する向きでハニカム構造部10を使用することが好ましい。流体は、排気ガスであり得る。
【0028】
ハニカム構造部10の流路長さ方向における低気孔率部4の延在幅が、ハニカム構造部10の流路長さ方向におけるハニカム構造部10の全長の0.5%以上かつ40%以下であることが好ましい。低気孔率部4の延在幅がハニカム構造部10の全長の0.5%以上であると、端部領域の熱容量の向上量が十分となり、ハニカム構造部10又はハニカム構造体20の端面でのクラックの発生抑制効果がより向上しやすい。低気孔率部4の延在幅がハニカム構造部10の全長の40%以下であると、ハニカム構造部10の端部領域の熱容量と他の部分の熱容量との差が十分に維持され、端面でのクラックの発生抑制効果が良好となる。低気孔率部4の延在幅がハニカム構造部10の全長の0.5%以上かつ15%以下であることがより好ましく、0.5%以上かつ10%以下であることが更により好ましい。
【0029】
ハニカム構造部10の流路長さ方向における低気孔率部4の延在幅が、0.3mm以上かつ20mm以下であることが好ましい。低気孔率部4の延在幅が0.3mm以上であると、端部領域の熱容量の向上量が十分となり、ハニカム構造部10又はハニカム構造体20の端面でのクラックの発生抑制効果がより向上しやすい。低気孔率部4の延在幅が20mm以下であると、ハニカム構造部10の端部領域の熱容量と他の部分の熱容量との差が十分に維持され、端面でのクラックの発生抑制効果が良好となる。低気孔率部4の延在幅が0.3mm以上かつ10mm以下であることがより好ましく、0.3mm以上かつ6mm以下であることが更により好ましい。
【0030】
低気孔率部4以外の部分5の平均気孔率(AP2)に対する低気孔率部4の平均気孔率(AP1)の比率({(AP2-AP1)/AP2)}×100)が、0.2%以上かつ99.9%以下であることが好ましい。この比率が0.2%以上であると、端部領域の熱容量の向上量が十分となり、ハニカム構造部10又はハニカム構造体20の端面でのクラックの発生抑制効果がより向上しやすい。比率が99.9%以下であると、ハニカム構造部10の低気孔率部4と低気孔率部4以外の部分5の熱容量の差を小さくでき、低気孔率部4と低気孔率部4以外の部分5の境界部における局所的な応力集中の発生を回避できる。この比が23%以上かつ90%以下であることがより好ましく、43%以上かつ70%以下であることが更により好ましい。
【0031】
低気孔率部4以外の部分5の平均気孔率(AP2)とは、ハニカム構造部10の低気孔率部4以外の部分5の両側の端面位置(2箇所)、及び低気孔率部4以外の部分5の流路長さ方向中央位置(1箇所)の3箇所で測定した気孔率の算術平均値である。それぞれの位置での気孔率測定用試料(切断体)を得られるように、ハニカム構造部10の低気孔率部4以外の部分5を径方向に切断し、それら気孔率測定用試料(切断体)の端面の幾何中心位置で気孔率を測定することで気孔率が求められる。
【0032】
低気孔率部4の平均気孔率(AP1)とは、低気孔率部4の両側の端面位置(2箇所:これら2箇所のうち1箇所はハニカム構造部10の端面位置と同じ)、及び低気孔率部4の流路長さ方向中央位置(1箇所)の3箇所で測定した気孔率の算術平均値である。それぞれの位置での気孔率測定用試料(切断体)を得られるように、低気孔率部4を径方向に切断し、それら気孔率測定用試料(切断体)の端面の幾何中心位置で気孔率を測定することで気孔率が求められる。
【0033】
低気孔率部4の平均気孔率(AP1)が、0.1%以上かつ40%以下であることが好ましい。低気孔率部4の平均気孔率(AP1)が0.1%以上であると、ハニカム構造部10の低気孔率部4と低気孔率部4以外の部分5の熱容量の差を小さくでき、低気孔率部4と低気孔率部4以外の部分5の境界部における局所的な応力集中の発生を回避できる。低気孔率部4の平均気孔率(AP1)が40%以下であると、ハニカム構造部10の端部領域の熱容量と他の部分の熱容量との差が十分に維持され、端面でのクラックの発生抑制効果が良好となる。低気孔率部4の平均気孔率(AP1)が3.9%以上かつ30%以下であることがより好ましく、12%以上かつ22%以下であることが更により好ましい。
【0034】
低気孔率部4は、隔壁13にセラミックスを含むことができる。隔壁13にセラミックスを含むとは、例えば、隔壁の表面にセラミックスが存在する形態であってもよく、例えば、シリカで構成された層が隔壁の表面に存在する形態であってよい。セラミックスは代表的にはシリカであるが、他の例としてコージェライト、炭化ケイ素、ムライト、アルミナ、ジルコニアが挙げられる。また、セラミックスは複数の材質が含まれても良い。
【0035】
低気孔率部4の隔壁13が、低気孔率部4以外の部分5の隔壁より、酸化物セラミックス及び/又は炭化ケイ素を多く含むことが好ましい。酸化物セラミックス及び/又は炭化ケイ素を多く含むとは、酸化物セラミックス及び/又は炭化ケイ素の含有量(質量割合)が多いことである。このような構成することで、隔壁の気孔率を制御でき、本明細書の低気孔率部を形成しやすくなる。酸化物セラミックスとしては、限定的ではないが、コージェライト、ムライト、アルミナ、ジルコニア等が挙げられ、これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0036】
低気孔率部4の気孔率が、端面からハニカム構造部10の流路長さ方向中央に向かって斬次大きくなることが好ましい。これにより、ハニカム構造部10の流路長さ方向における熱容量の変化がなだらかとなり、低気孔率部4と低気孔率部4以外の部分5の境界部における局所的な応力集中の発生を回避できる。低気孔率部4の気孔率が、端面からハニカム構造部10の流路長さ方向中央に向かって斬次大きくなるとは、上述の低気孔率部4の平均気孔率(AP1)の測定位置及び測定方法と同様に、低気孔率部4の3箇所で測定した気孔率が、端面からハニカム構造部10の流路長さ方向中央に向かって斬次大きくなることである。しかしながら、流路長さ方向に低気孔率部4の気孔率が一定であってもよいこともある。
【0037】
低気孔率部4の強度がハニカム構造部10の全体の平均強度よりも大きいことが好ましい。これにより、端面の強度が上がっているので、端面でのクラックの発生を抑制できる。ハニカム構造部10の全体の平均強度とは、ハニカム構造部10の5箇所で測定した強度の算術平均値である。平均強度を得るために強度を測定する箇所としては、ハニカム構造部10の両側の端面位置(2箇所)、両側の端面位置から流路長さ方向におけるハニカム構造部10の全長の1/4だけ流路長さ方向中央にそれぞれ向かった位置(2箇所)、及びハニカム構造部10の流路長さ方向中央位置(1箇所)の5箇所とする。それぞれの位置で強度を測定する試料(切断体)を得られるようにハニカム構造部10を径方向に切断し、それら試料(切断体)の端面の幾何中心位置で強度を測定することで強度が求められる。なお、強度とは、例えば4点曲げ強度等であり得る。4点曲げ強度は、JIS R1601に準拠した「曲げ試験」により測定した値である。低気孔率部4の強度としては、例えば、ハニカム構造部10の全体の平均強度に対して1.01~2.04倍であり得る。
【0038】
低気孔率部4のヤング率がハニカム構造部10の全体の平均ヤング率よりも大きいことが好ましい。これにより排気ガス等の流体によりハニカム構造部10の端部領域が冷却され収縮した際に、端部領域の熱膨張による変形量が小さくなり、端面でのクラックの発生をより抑制できる。ハニカム構造部10の全体の平均ヤング率とは、ハニカム構造部10の5箇所で測定したヤング率の算術平均値である。平均ヤング率を得るためにヤング率を測定する箇所としては、ハニカム構造部10の両側の端面位置(2箇所)、両側の端面位置から流路長さ方向におけるハニカム構造部10の全長の1/4だけ流路長さ方向中央にそれぞれ向かった位置(2箇所)、及びハニカム構造部10の流路長さ方向中央位置(1箇所)の5箇所とする。それぞれの位置でヤング率を測定する試料(切断体)を得られるようにハニカム構造部10を径方向に切断し、それら試料(切断体)の端面の幾何中心位置でヤング率を測定することで強度が求められる。なお、ヤング率は、JIS R1602に準拠した曲げ共振法に従い測定することができる。低気孔率部4のヤング率としては、例えば、ハニカム構造部10の全体の平均ヤング率に対して1.01~1.76倍であり得る。
【0039】
低気孔率部4の熱膨張係数がハニカム構造部10の全体の平均熱膨張係数以上であることが好ましい。これにより、排気ガス等の流体によりハニカム構造部10の端部領域が冷却され収縮した際に、端部領域と他の部分との熱膨張差が小さくなり、端面でのクラックの発生をより抑制できる。ハニカム構造部10の全体の平均熱膨張係数とは、ハニカム構造部10の5箇所で測定した熱膨張係数の算術平均値である。平均熱膨張係数を得るために熱膨張係数を測定する箇所としては、ハニカム構造部10の両側の端面位置(2箇所)、両側の端面位置から流路長さ方向におけるハニカム構造部10の全長の1/4だけ流路長さ方向中央にそれぞれ向かった位置(2箇所)、及びハニカム構造部10の流路長さ方向中央位置(1箇所)の5箇所とする。それぞれの位置で熱膨張係数を測定する試料(切断体)を得られるようにハニカム構造部10を径方向に切断し、それら試料(切断体)の端面の幾何中心位置で熱膨張係数を測定することで熱膨張係数が求められる。熱膨張係数は、JIS R1618:2002に準拠した方法により測定される40~800℃の線熱膨張係数を指す。熱膨張計としては、BrukerAXS社製の「TD5000S(商品名)」を用いることができる。低気孔率部4の熱膨張係数としては、例えば、4.3~5.0ppm/Kであり得る。
【0040】
低気孔率部4の隔壁13の厚みが、ハニカム構造部10の全体の隔壁13の平均厚みよりも厚いことが好ましい。これにより、端部領域の熱容量を大きくでき、端面でのクラックの発生をより抑制できる。上述のように本発明において、隔壁13の厚みは、セル16の延伸方向に垂直な断面において、隣接するセル16の重心同士を結ぶ線分のうち、隔壁13を通過する部分の長さとして定義される。ハニカム構造部10の全体の隔壁13の平均厚みとは、ハニカム構造部10の5箇所で測定した隔壁13の厚みの算術平均値である。隔壁13の平均厚みを得るために隔壁13の厚みを測定する箇所としては、ハニカム構造部10の両側の端面位置(2箇所)、両側の端面位置から流路長さ方向におけるハニカム構造部10の全長の1/4だけ流路長さ方向中央にそれぞれ向かった位置(2箇所)、及びハニカム構造部10の流路長さ方向中央位置(1箇所)の5箇所とする。それぞれの位置で隔壁13の厚みを測定する試料(切断体)を得られるようにハニカム構造部10を径方向に切断する。その後、それら試料(切断体)の端面において、隔壁13の厚みを測定する。隔壁13の厚みを測定する際に定義する線分(隣接するセル16の重心同士を結ぶ線分)は、試料(切断体)の端面の幾何中心位置を通るとともに、隔壁13に垂直な直線の一部とする。例えばセル16の延伸方向に垂直な断面におけるセル16の形状が六角形であるとき、そのような直線は3本定義することができ、それら3本の直線に沿って隔壁13の厚みをそれぞれ測定する。同様に、例えばセル16の形状が四角形であるとき、そのような直線は2本定義することができ、それら2本の直線に沿って隔壁13の厚みをそれぞれ測定する。隔壁13の厚みは、試料(切断体)の端面において、外周壁12を除いて径方向又は幅方向に試料を10等分し、それら10等分した部分の境又は境の周辺で上述の直線と隔壁13とが交わる11点で測定する。低気孔率部4の隔壁13の厚みは、例えば、0.105~0.305mmであり得る。
【0041】
低気孔率部4の体積抵抗率(Ω・cm)が、ハニカム構造部10の全体の平均体積抵抗率よりも小さいことが好ましい。これにより、低気孔率部4に電流が流れやすくなり、通電加熱時のハニカム構造部10の昇温をより均一にすることができる。ハニカム構造部10の全体の平均体積抵抗率とは、ハニカム構造部10の5箇所で測定した体積抵抗率の算術平均値である。平均体積抵抗率を得るために体積抵抗率を測定する箇所としては、ハニカム構造部10の両側の端面位置(2箇所)、両側の端面位置から流路長さ方向におけるハニカム構造部10の全長の1/4だけ流路長さ方向中央にそれぞれ向かった位置(2箇所)、及びハニカム構造部10の流路長さ方向中央位置(1箇所)の5箇所とする。それぞれの位置で体積抵抗率を測定する試料(切断体)を得られるように、ハニカム構造部10を径方向に切断し、それら試料(切断体)の端面の幾何中心位置で体積抵抗率を測定することで体積抵抗率が求められる。体積抵抗率は四端子法により25℃で測定した値とする。低気孔率部4の体積抵抗率は、例えば、0.1~200Ω・cmであり得る。
【0042】
(2.電極層)
ハニカム構造体20には、外周壁12の外面上に、ハニカム構造部10の中心軸を挟んで対向するように、一対の電極層14a、14bが設けられている。一対の電極層は、セルの流路方向に帯状に延びるように、設けられていることが好ましい。電極層14a、14bは、ハニカム構造部10の全長(両端面間の距離)の80%以上の長さに亘って、好ましくは90%以上の長さに亘って、より好ましくは全長に亘って延びていることが、電極層14a、14bの軸方向へ電流が広がりやすいという観点から好ましい。
【0043】
電極層14a、14bの厚みは、0.01~5mmであることが好ましく、0.01~3mmであることがより好ましい。このような範囲とすることにより均一発熱性を高めることができ、耐熱衝撃性を確保することができる。電極層14a、14bの厚みは、厚みを測定しようとする箇所をセル16の延伸方向に垂直な断面で観察したときに、電極層14a、14bの外面の当該測定箇所における接線に対する法線方向の厚みとして定義される。
【0044】
電極層14a、14bの体積抵抗率をハニカム構造部10の全体の平均体積抵抗率より低くすることにより、電極層14a、14bに優先的に電気が流れやすくなり、通電加熱時に電気がセル16の流路方向及び周方向に広がりやすくなる。電極層14a、14bの体積抵抗率は、ハニカム構造部10の全体の平均体積抵抗率の1/10以下であることが好ましく、1/20以下であることがより好ましく、1/30以下であることが更により好ましい。但し、両者の体積抵抗率の差が大きくなりすぎると、対向する電極部の端部間に電流が集中してハニカム構造部10の発熱が偏ることから、電極層14a、14bの体積抵抗率は、ハニカム構造部10の全体の平均体積抵抗率の1/200以上であることが好ましく、1/150以上であることがより好ましく、1/100以上であることが更により好ましい。電極層14a、14bの体積抵抗率は、四端子法により25℃で測定した値とする。
【0045】
電極層14a、14bの材質は、導電性セラミックス、金属、又は金属及び導電性セラミックスとの複合材(サーメット)を使用することができる。金属としては、例えばCr、Fe、Co、Ni、Si又はTiの単体金属又はこれらの金属よりなる群から選択される少なくとも一種の金属を含有する合金が挙げられる。導電性セラミックスとしては、限定的ではないが、炭化珪素(SiC)が挙げられ、珪化タンタル(TaSi2)及び珪化クロム(CrSi2)等の金属珪化物等の金属化合物が挙げられる。金属及び導電性セラミックスとの複合材(サーメット)の具体例としては、金属珪素と炭化珪素の複合材、珪化タンタルや珪化クロム等の金属珪化物と金属珪素と炭化珪素の複合材、更には上記の一種又は二種以上の金属に熱膨張低減の観点から、アルミナ、ムライト、ジルコニア、コージェライト、窒化珪素及び窒化アルミ等の絶縁性セラミックスを一種又は二種以上添加した複合材が挙げられる。
【0046】
<電気加熱式触媒担体>
電気加熱式触媒担体30は、ハニカム構造体20とハニカム構造体20のハニカム構造部10に担持された触媒と、を備える。
【0047】
電気加熱式触媒担体30の複数のセル16の流路には、例えば、自動車排気ガス等の流体を流すことができる。電気加熱式触媒担体30に担持されている触媒としては、例えば、貴金属系触媒又はこれら以外の触媒が挙げられる。貴金属系触媒としては、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)といった貴金属をアルミナ細孔表面に担持し、セリア、ジルコニア等の助触媒を含む三元触媒や酸化触媒、又は、アルカリ土類金属と白金を窒素酸化物(NOx)の吸蔵成分として含むNOx吸蔵還元触媒(LNT触媒)が例示される。貴金属を用いない触媒として、銅置換又は鉄置換ゼオライトを含むNOx選択還元触媒(SCR触媒)等が例示される。また、これらの触媒からなる群から選択される2種以上の触媒を用いてもよい。なお、触媒の担持方法についても特に制限はなく、従来、ハニカム構造体20に触媒を担持する担持方法に準じて行うことができる。
【0048】
ハニカム構造部10の端部領域に設けられた低気孔率部4の触媒担持厚みが、ハニカム構造部10の全体の平均触媒担持厚みよりも薄いことが好ましい。換言すると、ハニカム構造部10の低気孔率部4以外の部分5の触媒担持厚みが、低気孔率部4の触媒担持厚みよりも厚いことが好ましい。通電加熱時、ハニカム構造部10の低気孔率部4以外の部分5が高温となりやすいので、低気孔率部4以外の部分5の触媒担持厚みを厚くすることで、エンジンのコールドスタート時の排気ガスの有害成分の浄化率を向上できる。
【0049】
ハニカム構造部10の全体の平均触媒担持厚みとは、ハニカム構造部10の両側の端面位置(2箇所)、ハニカム構造部の流路長さ方向中央位置(1箇所)の3箇所で測定した触媒担持厚みの算術平均値である。触媒担持厚みは、走査型電子顕微鏡(SEM)で測定した値とする。それぞれの位置での触媒担持厚み測定用試料(切断体)を得られるように径方向に切断し、それら触媒担持厚み測定用試料(切断体)の端面の幾何中心位置で触媒担持厚みを測定することで触媒担持厚みが求められる。触媒担持厚みは走査型電子顕微鏡(SEM)によって、ハニカム構造部10の上記それぞれの測定箇所断面部分を観察して、そのSEM画像を取得する。なお、SEM画像は200倍に拡大して観測するものとする。ここで触媒担持厚みは、セル16の延伸方向に垂直な断面において、隣接するセル16の重心同士を結ぶ線分のうち、触媒担持部分を通過する長さとして定義される。言い換えれば、セル16の延伸方向に垂直な断面において、隣接するセル16の重心同士を結ぶ線分から、セル16部分及び隔壁13部分を除いた長さである。なお、隔壁13の空隙部分(気孔内)に担持された触媒部分は隔壁13とみなす。
【0050】
<ハニカム構造体及び電気加熱式触媒担体の製造方法>
次に、本発明に係るハニカム構造体20及び電気加熱式触媒担体30を製造する方法について例示的に説明する。本発明のハニカム構造体20の製造方法は一実施形態において、未焼成ハニカム構造体を得る工程A1と、未焼成ハニカム構造体を焼成してハニカム構造体20を得る工程A2とを含む。また、他の実施形態としては、電極層形成ペーストを仮焼成後に、ハニカム構造部10に貼り付けハニカム構造体20としてもよい。
【0051】
工程A1は、ハニカム構造体の前駆体であるハニカム成形体を作製し、ハニカム成形体の側面に電極層形成ペーストを塗布して、電極層形成ペースト付き未焼成ハニカム構造体を得る工程である。
【0052】
柱状ハニカム成形体の作製としては、まず、炭化珪素粉末(炭化珪素)に、金属珪素粉末(金属珪素)、バインダ、界面活性剤、造孔材、水触媒担持量等を添加して成形原料を作製する。炭化珪素粉末の質量と金属珪素の質量との合計に対して、金属珪素の質量が10~40質量%となるようにすることが好ましい。炭化珪素粉末における炭化珪素粒子の平均粒子径は、3~50μmが好ましく、3~40μmが更に好ましい。金属珪素(金属珪素粉末)の平均粒子径は、2~35μmであることが好ましい。炭化珪素粒子及び金属珪素(金属珪素粒子)の平均粒子径はレーザー回折法で粒度の頻度分布を測定したときの、体積基準による算術平均径を指す。
【0053】
バインダとしては、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。これらの中でも、メチルセルロースとヒドロキシプロポキシルセルロースとを併用することが好ましい。バインダの含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、2.0~10.0質量部であることが好ましい。
【0054】
水の含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、20~60質量部であることが好ましい。
【0055】
界面活性剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。界面活性剤の含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、0.1~2.0質量部であることが好ましい。
【0056】
造孔材としては、焼成後に気孔となるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、グラファイト、澱粉、発泡樹脂、吸水性樹脂、シリカゲル等を挙げることができる。造孔材の含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、0.5~10.0質量部であることが好ましい。造孔材の平均粒子径は、10~30μmであることが好ましい。造孔材の平均粒子径はレーザー回折法で粒度の頻度分布を測定したときの、体積基準による算術平均径を指す。造孔材が吸水性樹脂の場合には、造孔材の平均粒子径は吸水後の平均粒子径のことである。
【0057】
次に、得られた成形原料を混練して坏土を形成した後、坏土を押出成形してハニカム成形体を作製する。押出成形に際しては、所望の全体形状、セル形状、隔壁厚み、セル密度等を有する口金を用いることができる。次に、得られたハニカム成形体について、乾燥を行うことが好ましい。ハニカム成形体の中心流路長さ方向長さが、所望の長さではない場合は、ハニカム成形体の両端部を切断して所望の長さとすることができる。乾燥後のハニカム成形体をハニカム乾燥体と呼ぶ。
【0058】
次に、電極層を形成するための電極層形成ペーストを調合する。電極層形成ペーストは、電極層の要求特性に応じて配合した原料粉(金属粉体及びガラス粉体等)に各種添加剤を適宜添加して混練することで形成することができる。金属粉体としてはステンレス等の金属粉を用いることができる。
【0059】
次に、得られた電極層形成ペーストを、ハニカム乾燥体の側面に塗布し、電極層形成ペースト付き未焼成ハニカム構造体を得る。電極層形成ペーストをハニカム乾燥体に塗布する方法については、公知のハニカム構造体20の製造方法に準じて行うことができる。
【0060】
ハニカム構造体20の製造方法の変更例として、工程A1において、電極層形成ペーストを塗布する前に、ハニカム乾燥体を一旦焼成してもよい。すなわち、この変更例では、ハニカム乾燥体を焼成してハニカム焼成体を作製し、当該ハニカム焼成体に、電極層形成ペーストを塗布する。
【0061】
工程A2では、未焼成ハニカム構造体を焼成して、ハニカム構造体を得る。焼成条件は、不活性ガス雰囲気下または大気雰囲気下、大気圧以下、焼成温度1150~1350℃、焼成時間0.1~50時間とすることができる。なお、焼成雰囲気は、例えば、不活性ガス雰囲気、焼成時圧力は、常圧等とすることができる。ハニカム構造部10の電気抵抗を低下させるためには、酸化防止の観点から残存酸素を低減することが好ましく、焼成時の雰囲気内を1.0×10-4Pa以上の高真空にした後に不活性ガスをパージして焼成することが好ましい。不活性ガス雰囲気としては、N2ガス雰囲気、ヘリウムガス雰囲気、アルゴンガス雰囲気等が挙げられる。焼成を行う前に、未焼成ハニカム構造体を乾燥してもよい。また、焼成の前に、バインダ等を除去するため、脱脂を行ってもよい。
【0062】
このようにして得られたハニカム構造体20に、低気孔率部4を設ける。低気孔率部4は、コロイダルシリカの水溶液を含んだスポンジに、低気孔率部4を設けたいハニカム構造体20の端面側を押し付けて、低気孔率部4を設けたい部分にコロイダルシリカを含浸させ、その後、乾燥することで得られる。コロイダルシリカを含浸、乾燥する工程は、1回でもよいし、複数回行ってもよい。コロイダルシリカの水溶液の濃度は、低気孔率部の狙いの気孔率に応じて決めればよく、飽和状態であってもよい。コロイダルシリカの水溶液は、スポンジを用いずに含浸させてもよい。低気孔率部4を設けるための乾燥工程は、自然乾燥でもよく、加熱して強制乾燥をしてもよい。また自然乾燥をしてから強制乾燥をしてもよい。強制乾燥をする場合の乾燥条件は400~700℃にて10~60分間加熱することが好ましい。強制乾燥を行うと、含浸材料の化学結合をより強化させることができる。加熱の方法は特に限定されず、電気炉、ガス炉等を用いて強制乾燥することができる。
【0063】
低気孔率部4を設ける工程は、ハニカム構造体20の焼成後とすることが好ましいが、ハニカム構造体20の成形後(ハニカム成形体)や、ハニカム構造体20の乾燥後(ハニカム乾燥体)とすることもできる。
【0064】
電気加熱式触媒担体30の製造方法は、ハニカム構造体20に触媒を担持する。ハニカム構造体20に触媒を担持する方法は、公知のハニカム構造体20への触媒担持方法に準じて行うことができる。ハニカム構造体20に触媒を担持する工程は、ハニカム構造体20に低気孔率部4を設けた後が好ましいが、低気孔率部4を設ける前のハニカム構造体20に触媒を担持した後に、ハニカム構造体20(電気加熱式触媒担体30)に低気孔率部4を設けることもできる。
【0065】
ハニカム構造体20の低気孔率部4の触媒担持厚みを、ハニカム構造体20全体の平均触媒担持厚みより薄くする方法として、ハニカム構造体20の低気孔率部4を設けたい端面と反対側の端面を触媒スラリー中に漬けた状態で、ハニカム構造体20の低気孔率部4を設けたい端面側から触媒スラリーを吸引し、触媒スラリーがハニカム構造体20の低気孔率部4に到達する前に触媒スラリーの吸引を止める方法が挙げられる。
【0066】
<排気ガス浄化装置>
排気ガス浄化装置は、ハニカム構造体20と、ハニカム構造体20の一対の電極層14a、14b上に設けられた電極端子15a、15bと、ハニカム構造体20を保持する金属製の缶体と、を備える。上述した本発明の各実施形態に係るハニカム構造体20及び電気加熱式触媒担体30は、それぞれ排気ガス浄化装置に用いることができる。排気ガス浄化装置において、ハニカム構造体20(電気加熱式触媒担体30)は、エンジンからの排気ガスを流すための排気ガス流路の途中に設置される。
【0067】
電極端子15a、15bは、ハニカム構造体20の電極層14a、14b上に設けられている。電極端子15a、15bは、一方の電極端子が、他方の電極端子に対して、ハニカム構造部10の中心軸を挟んで対向するように配設される一対の電極端子であってもよい。これにより、電極端子15a、15bに電圧を印加すると通電してジュール熱によりハニカム構造部10を発熱させることが可能である。このため、ハニカム構造部10はヒーターとしても好適に用いることができる。印加する電圧は12~900Vが好ましく、48~600Vがより好ましいが、印加する電圧は適宜変更可能である。
【0068】
電極端子15a、15bの材質は、金属であってよい。金属としては、単体金属及び合金等を採用することもできるが、耐食性、体積抵抗率及び線膨張率の観点から例えば、Cr、Fe、Co、Ni及びTiよりなる群から選択される少なくとも一種を含む合金とすることが好ましく、ステンレス鋼及びFe-Ni合金がより好ましい。電極端子15a、15bの形状及び大きさは、特に限定されず、電気加熱式触媒担体の大きさや通電性能等に応じて、適宜設計することができる。
【0069】
電極端子15a、15bは、セラミックスで構成されてもよい。セラミックスとしては、限定的ではないが、炭化珪素(SiC)が挙げられ、珪化タンタル(TaSi2)及び珪化クロム(CrSi2)等の金属珪化物等の金属化合物が挙げられ、更には、一種以上の金属を含む複合材(サーメット)を挙げることができる。サーメットの具体例としては、シリコンと炭化珪素との複合材、珪化タンタルや珪化クロム等の金属珪化物と金属珪素と炭化珪素との複合材、更には上記の一種又は二種以上の金属に熱膨張低減の観点から、アルミナ、ムライト、ジルコニア、コージェライト、窒化珪素及び窒化アルミ等の絶縁性セラミックスを一種又は二種以上添加した複合材が挙げられる。電極端子15a、15bの材質は、電極層14a、14bの材質と同質のものを用いてもよい。電極端子15a、15bは、柱状に形成されていてもよい。
【0070】
また、電極端子15a、15bがセラミックス製の端子である場合、その先端に金属端子がそれぞれ接合されていてもよい。セラミックス製の端子と金属端子との接合は、かしめ加工、溶接、導電性接着剤等により行うことができる。金属端子の材質としては、鉄合金やニッケル合金等の導電性金属を採用することができる。
【0071】
金属製の缶体は、ハニカム構造体20を保持するための金属製の缶体である。金属としては限定的ではないが、クロム系ステンレス鋼を始めとする各種ステンレス鋼等を挙げることができる。これらの金属を使用することで、高い耐熱性と耐腐食性を有する排気ガス浄化装置となる。金属製の缶体は中空部を有し、この中空部の所定位置にハニカム構造体20が挿入され保持される。金属製の缶体に使用される金属の板厚は任意であるが、1~3mmが好ましい。金属製の缶体の内表面に絶縁層を設けることもできる。絶縁層を設けることで、ハニカム構造体20に通電した時に、漏電を防ぐ効果をより高めることができる。金属製の缶体とハニカム構造体20の間には、セラミックス製の保持材(マット)を配設することが好ましい。セラミックスとしては限定的ではないが、アルミナファイバー、ムライトファイバー、アルミナ-シリカを主成分とするセラミックスファイバー等が挙げられる。
【0072】
<排気ガス浄化装置の製造方法>
次に、本発明に係る排気ガス浄化装置を製造する方法について、例示的に説明する。排気ガス浄化装置は、上述のハニカム構造体20と、ハニカム構造体20の一対の電極層14a、14b上に設けられた電極端子15a、15bと、ハニカム構造体20を保持する金属製の缶体と、を備える。
【0073】
ハニカム構造体20の電極層14a、14b上に設けられる電極端子15a、15bがセラミックス製の場合、まずは電極端子15a、15bを形成するための電極端子形成ペーストを調合する。電極端子形成ペーストは、電極端子15a、15bの要求特性に応じて配合したセラミックス粉末に各種添加剤を適宜添加して混練することで形成することができる。次に、調合した電極端子形成ペーストを、ハニカム構造体20の電極層14a、14b上に柱状に設けることができる。
【0074】
セラミックス製の電極端子15a、15bを設ける工程は、ハニカム構造体20の乾燥後(ハニカム乾燥体)とすることが好ましいが、ハニカム構造体20の焼成後とすることもできる。ハニカム構造体20の乾燥後(ハニカム乾燥体)に電極端子15a、15bを設ける場合は、ハニカム構造体20の焼成工程で電極端子15a、15bも同時に焼成することができる。ハニカム構造体20の焼成後に電極端子15a、15bを設ける場合は、電極端子15a、15b付きハニカム構造体20を再度焼成することもできる。セラミックス製の電極端子15a、15bのみを焼成後に、ハニカム構造体20の電極層14a、14b上に設けることもできる。セラミックス製の電極端子15a、15bの焼成条件は、不活性ガス雰囲気下または大気雰囲気下、大気圧以下、焼成温度1150~1350℃、焼成時間0.1~50時間とすることができる。
【0075】
電極端子15a、15bとして、金属製の端子を用いる場合は、ハニカム構造体20の電極層14a、14b上に、金属製の電極端子15a、15bを固定する。固定方法としては、例えば、レーザー溶接、超音波溶接、溶射等が挙げられる。ハニカム構造体20の電極層14a、14b上に金属製の端子を設ける工程は、ハニカム構造体20の焼成後とすることができる。
【0076】
ハニカム構造体20を金属製の缶体に保持する方法としては、公知のハニカム構造体20を金属製の缶体に保持する方法に準じて行うことができる。例えば、ハニカム構造体20の外周壁12上及び電極層14a、14b上にセラミックス製の保持材(マット)を配設したハニカム構造体20を、金属製の缶体の内側に保持する方法が挙げられる。なお、電極層14a、14b上の電極端子15a、15bのある部分には、セラミックス製の保持材(マット)を配設しなくてもよい。
【実施例0077】
<実施例1>
(1.坏土の作製)
炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末とを80:20の質量割合で混合してセラミックス原料を調製した。そして、セラミックス原料に、バインダとしてヒドロキシプロピルメチルセルロース、造孔材として吸水性樹脂を添加すると共に、水を添加して成形原料とした。そして、成形原料を真空土練機により混練し、円柱状の坏土を作製した。バインダの含有量は炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに7質量部とした。造孔材の含有量は炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに3質量部とした。水の含有量は炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに42質量部とした。炭化珪素粉末の平均粒子径は20μmであり、金属珪素粉末の平均粒子径は6μmであった。また、造孔材の平均粒子径は20μmであった。炭化珪素粉末、金属珪素粉末及び造孔材の平均粒子径は、レーザー回折法で粒度の頻度分布を測定したときの、体積基準による算術平均径を指す。
【0078】
(2.ハニカム乾燥体の作製)
得られた円柱状の坏土を、先端に口金を取り付けた押出成形機を用いて成形し、セルの流路方向に垂直な断面における各セル形状が六角形である円柱状ハニカム成形体を得た。このハニカム成形体を高周波誘電加熱乾燥した後、熱風乾燥機を用いて120℃で2時間乾燥し、ハニカム乾燥体を作製した。
【0079】
(3.電極層形成ペーストの調製及び塗布)
金属珪素(Si)粉末、炭化珪素(SiC)粉末、メチルセルロース、グリセリン、及び水を、自転公転攪拌機で混合して、電極層形成ペーストを調製した。Si粉末、及びSiC粉末は体積比で、Si粉末:SiC粉末=40:60となるように配合した。また、Si粉末、及びSiC粉末の合計を100質量部としたときに、メチルセルロースは0.5質量部であり、グリセリンは10質量部であり、水は38質量部であった。金属珪素粉末の平均粒子径は6μmであった。炭化珪素粉末の平均粒子径は35μmであった。これらの平均粒子径はレーザー回折法で粒度の頻度分布を測定したときの、体積基準による算術平均径を指す。
【0080】
次に、この電極層形成ペーストを曲面印刷機によって、ハニカム乾燥体に対して適切な面積及び膜厚で塗布した。
【0081】
(4.ハニカム焼成体の作製)
次に、電極層形成ペースト付きハニカム乾燥体をAr雰囲気にて1400℃で3時間焼成し、ハニカム構造体20とした。
【0082】
(5.低気孔率部の形成)
次に、濃度40質量%のコロイダルシリカの水分散液をポリビニルアルコール製スポンジに含ませた。このコロイダルシリカの水溶液を含んだスポンジに対して、ハニカム構造体20の一方および他方の端面を押し付けて、コロイダルシリカを含浸させた。その後、電気炉により、450℃で30分間乾燥させ、低気孔率部4を形成し、サンプル用のハニカム構造体20を作製した。得られたサンプルは、直径93mm、流路長さ65mmの円柱形状のハニカム構造体20とした。各サンプルのセル密度は930セル/cm2であり、各サンプルの隔壁13の厚みは0.15mmであった。セル16の断面形状は六角形であり、各サンプルの体積抵抗率は2.0Ω・cmであった。
【0083】
<実施例2~10>
低気孔率部4の延在幅、低気孔率部4の気孔率を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、サンプル用のハニカム構造体20を作製した。
【0084】
<実施例11~16>
低気孔率部4をハニカム構造体20の一方の端面(ガス流れ方向入口側)のみに形成し、低気孔率部4の延在幅を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、サンプル用のハニカム構造体20を作製した。
【0085】
<実施例17~19>
低気孔率部4をハニカム構造体20の一方の端面(ガス流れ方向入口側)のみに形成し、低気孔率部4の気孔率を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、サンプル用のハニカム構造体20を作製した。
【0086】
<実施例20>
低気孔率部4をハニカム構造体20の一方の端面(ガス流れ方向入口側)のみに形成し、表1に示すように低気孔率部4の気孔率を一方の端面から流路長さ方向中央に向かって斬次大きくした以外は、実施例1と同様にして、サンプル用のハニカム構造体20を作製した。
【0087】
<実施例21~25>
低気孔率部4をハニカム構造体20の一方の端面(ガス流れ方向入口側)のみに形成し、下記の方法により低気孔率部4における熱膨張係数を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、サンプル用のハニカム構造体20を作製した。低気孔率部4における熱膨張係数の変更は、ハニカム構造体20の一方の端面に押し付けるスポンジに含ませる分散液としては、コロイダルシリカの水分散液に加え、実施例21はコージェライト粉末、実施例22は炭化珪素粉末、実施例23はムライト粉末、実施例24はアルミナ粉末、実施例25はジルコニア粉末として、酸化物セラミックス粉末又は炭化珪素粉末を添加した分散液とした。コロイダルシリカと、酸化物セラミックス粉末又は炭化珪素粉末との添加量割合は、熱処理後の低気孔率部におけるシリカと、酸化物セラミックス又は炭化珪素との体積割合が1:1となるように調製した。
【0088】
<実施例26>
低気孔率部4をハニカム構造体20の他方の端面(ガス流れ方向出口側)のみに形成した以外は、実施例1と同様にして、サンプル用のハニカム構造体20を作製した。
【0089】
<比較例1、2>
低気孔率部4を形成しなかった以外は、実施例1と同様にして、サンプル用のハニカム構造体20を作製した。
【0090】
(加熱冷却試験1)
ハニカム構造体20(サンプル)を収納する金属ケースと、当該金属ケース内に加熱ガスを供給することができるプロパンガスバーナーと、を備えたプロパンガスバーナー試験機を用いて、以下の表1に示す実施例1~25及び比較例1のサンプルの加熱冷却試験1を実施した。
【0091】
上述のように、実施例1~25は、低気孔率部4を流体(ガス)の入口側の端面(一方の端面)のみ、又は、流体の入口側の端面及び出口側の端面(一方の端面及び他方の端面)に有するハニカム構造体20であり、低気孔率部4の延在幅等の表1に示すパラメータが適宜異なるように設定されている。比較例1は、低気孔率部4を有しないハニカム構造体20である。
【0092】
上記加熱ガスは、プロパンガスバーナーでプロパンガスを燃焼させることにより発生する燃焼ガスとした。そして、上記加熱冷却試験1によって、サンプルにクラックが発生するか否かを確認することにより、耐熱衝撃性を評価した。具体的には、まず、プロパンガスバーナー試験機の金属ケースに、サンプルを収納(キャニング)した。そして、金属ケース内に、プロパンガスバーナーにより加熱されたガス(燃焼ガス)を供給し、ガスがサンプル内を通過するようにした。
【0093】
金属ケースに流入する加熱ガスの温度条件(入口ガス温度条件)を以下のようにした。まず、10分間で指定温度まで昇温し、指定温度で5分間保持し、その後、3分間で100℃まで冷却し、100℃で10分間保持した。このような昇温、保持、冷却、保持の一連の操作を「昇温、冷却操作」と称する。その後、サンプルのクラックを顕微鏡により確認した。そして、指定温度を800℃から50℃ずつ上昇させながら上記「昇温、冷却操作」を繰り返した。指定温度は、サンプルにクラックが発生するまで50℃ずつ上昇させた。指定温度が高くなると、冷却開始時のハニカム構造体20の温度が高くなるため、冷却時にハニカム構造体20のガスの入口側の端面(一方の端面)が急激に冷却され、発生応力が大きくなる。この加熱冷却試験1では、全てのサンプルでガスの入口側の端面(一方の端面)にクラックが発生した。表1において、「耐熱衝撃性」の欄は、耐熱衝撃性試験1において、サンプルにクラックが発生したときの指定温度を示している。
【0094】
【0095】
比較例1においてクラックが発生した指定温度は850℃であったが、実施例1~25においてクラックが発生した指定温度は900℃以上であった。このことから、ハニカム構造体20が低気孔率部4を有することの優位性が理解され得る。
【0096】
特に、実施例1~15は、ハニカム構造部10の流路長さ方向における低気孔率部4の延在幅を0.3mm以上かつ20mm以下とした実施例である。実施例1~15においてクラックが発生した指定温度は950℃以上であり、同延在幅を0.3mm以上かつ20mm以下とすることでのクラックの発生抑制効果が理解され得る。
【0097】
更に、実施例1~14は、ハニカム構造部10の流路長さ方向における低気孔率部4の延在幅を0.3mm以上かつ10mm以下とした実施例である。実施例1~14においてクラックが発生した指定温度は1000℃以上であり、同延在幅を0.3mm以上かつ10mm以下とすることで、よりクラックの発生が抑制されたことを理解され得る。実施例1~7及び実施例11~13は、ハニカム構造部10の流路長さ方向における低気孔率部4の延在幅を0.3mm以上かつ6mm以下とした実施例である。実施例1~7及び11~13においてクラックが発生した指定温度は1050℃以上であり、同延在幅を0.3mm以上かつ6mm以下とすることで、更によりクラックの発生が抑制されたことを理解され得る。
【0098】
また、実施例17~19は、低気孔率部4の気孔率を変化させて、低気孔率部4以外の部分5の平均気孔率(AP2)に対する低気孔率部4の平均気孔率(AP1)の比率({(AP2-AP1)/AP2)}×100)を調整した実施例である。実施例17~19のいずれにおいてもクラックが発生した指定温度は950℃以上であった。
【0099】
実施例20は、低気孔率部4の気孔率が端面からハニカム構造部10の流路長さ方向中央に向かって斬次大きくなる実施例である。実施例20においてクラックが発生した指定温度は1050℃であり、気孔率を斬次大きくすることの優位性が理解され得る。
【0100】
実施例21~25は、低気孔率部4の熱膨張係数を調整した実施例である。実施例21~25は、低気孔率部4の熱膨張係数をハニカム構造部の全体の平均熱膨張係数以上とすることで、クラックが発生した指定温度は1000℃以上であり、よりクラックの発生が抑制されたことを理解され得る。
【0101】
(加熱冷却試験2)
ハニカム構造体20(サンプル)を収納する金属ケースと、当該金属ケース内に加熱ガスを供給することができるプロパンガスバーナーと、を備えたプロパンガスバーナー試験機を用いて、以下の表2に示す実施例26及び比較例2のサンプルの加熱冷却試験2を実施した。
【0102】
実施例26は、低気孔率部4を流体(ガス)の出口側の端面に有するハニカム構造体20であり、低気孔率部4の延在幅、気孔率等を表2に示す。比較例2は、低気孔率部4を有しないハニカム構造体20である。
【0103】
上記加熱ガスは、プロパンガスバーナーでプロパンガスを燃焼させることにより発生する燃焼ガスとした。そして、上記加熱冷却試験2によって、サンプルにクラックが発生するか否かを確認することにより、耐熱衝撃性を評価した。具体的には、まず、プロパンガスバーナー試験機の金属ケースに、サンプルを収納(キャニング)した。そして、金属ケース内に、プロパンガスバーナーにより加熱されたガス(燃焼ガス)を供給し、ガスがサンプル内を通過するようにした。
【0104】
金属ケースに流入する加熱ガスの温度条件(入口ガス温度条件)を以下のようにした。まず、2分間で指定温度まで昇温し、指定温度で5分間保持し、その後、10分間で100℃まで冷却し、100℃で5分間保持した。このような昇温、保持、冷却、保持の一連の操作を「昇温、冷却操作」と称する。その後、サンプルのクラックを顕微鏡により確認した。そして、指定温度を800℃から50℃ずつ上昇させながら上記「昇温、冷却操作」を繰り返した。指定温度は、サンプルにクラックが発生するまで50℃ずつ上昇させた。指定温度が高くなると、昇温峻度が大きくなり、ハニカム構造体20が急激に加熱されるため、ハニカム構造体20の流路長さ方向のガスの入口側から温度が上昇し高温となり、流路長さ方向のガスの出口側は温度の上昇が遅れ、ガスの出口側の端面(他方の端面)の発生応力が大きくなる。この加熱冷却試験2では、全てのサンプルでガスの出口側の端面(他方の端面)にクラックが発生した。表2において、「耐熱衝撃性条件2」の欄は、耐熱衝撃性試験2において、サンプルにクラックが発生したときの指定温度を示している。
【0105】
【0106】
比較例2においてクラックが発生した指定温度は850℃であったが、実施例26にてクラックが発生した指定温度は900℃であった。このことから、ハニカム構造体20が低気孔率部4を有することの優位性が理解され得る。