(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128065
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】搬送装置
(51)【国際特許分類】
G05D 3/12 20060101AFI20230907BHJP
H02P 29/00 20160101ALI20230907BHJP
【FI】
G05D3/12 W
H02P29/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022032123
(22)【出願日】2022-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142022
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 一晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196623
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 計介
(72)【発明者】
【氏名】常吉 豪
【テーマコード(参考)】
5H303
5H501
【Fターム(参考)】
5H303AA04
5H303CC03
5H303DD01
5H303FF01
5H303FF09
5H303HH05
5H501AA22
5H501BB11
5H501DD01
5H501GG01
5H501JJ25
5H501LL35
5H501LL37
5H501MM19
(57)【要約】
【課題】環境温度が所定の温度条件と異なっていても塗布位置精度を維持することができるインクジェット塗布装置を提供する。
【解決手段】搬送装置1は、移動体Mを移動させる電動モータ4、10と、電動モータ4、10に供給する電力V1、V2を制御する供給電力制御装置6、12と、電動モータ4、10における可動子の位置を供給電力制御装置6、12に対して出力する位置計測装置7、13とをそれぞれ含む少なくとも1つの駆動装置3、9と、位置制御信号Stを供給電力制御装置6、12に対して出力する位置制御装置15と、を有する。駆動装置3、9は、位置計測装置7、13が供給電力制御装置6、12に対して出力した位置パルス列信号S1、S2を補正する信号補正装置8、14を有する。信号補正装置8、14は、補正した位置パルス列信号S1、S2を供給電力制御装置6、12に対して出力する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体を移動させる電動モータと、前記電動モータに供給する電力を制御する供給電力制御装置と、前記電動モータにおける可動子の位置を位置パルス列信号として前記供給電力制御装置に対して出力する位置計測装置とをそれぞれ含む少なくとも1つの駆動装置と、前記可動子の目標位置におけるパルス数に関する位置制御信号を前記供給電力制御装置に対して出力する位置制御装置と、を有し、
前記供給電力制御装置が前記位置制御信号と前記位置パルス列信号のパルス数との差分に基づいて前記電動モータに電力を供給する搬送装置であって、
前記駆動装置は、
前記位置計測装置が前記供給電力制御装置に対して出力した位置パルス列信号を補正する信号補正装置を有し、
前記信号補正装置は、
前記移動体が原点位置から任意の位置に移動する場合に前記位置計測装置が出力する位置パルス列信号のパルス数と前記原点位置から前記任意の位置までの距離との関係についての情報に基づいて、前記位置計測装置が出力した位置パルス列信号を補正し、補正した前記位置パルス列信号を前記供給電力制御装置に対して出力する、
搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の搬送装置において、
前記信号補正装置は、
前記関係についての情報に基づいて補正に必要な位置パルス数を算出し、補正に必要な位置パルスを前記位置パルス列信号に加算または減算して前記位置パルス列信号を補正する、
搬送装置。
【請求項3】
請求項1また2に記載の搬送装置において、
前記信号補正装置は、
前記移動体が移動される条件毎に前記関係についての情報を有し、前記移動体が移動される条件から選択した1つの前記関係に基づいて、前記位置パルス列信号を補正する、
搬送装置。
【請求項4】
請求項3に記載の搬送装置において、
前記信号補正装置は、
前記移動体が移動される環境温度毎に前記関係についての情報を有する、
搬送装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の搬送装置において、
前記信号補正装置は、
前記関係についての情報である補正式に基づいて前記位置パルス列信号を補正する、
搬送装置。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか一項に記載の搬送装置において、
前記信号補正装置は、
前記関係についての情報である補正テーブルに基づいて前記位置パルス列信号を補正する、
搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電動モータによって移動体を移動させる搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置、インクジェット塗布装置等の製造装置は、カラーフィルタ、基板等を載置するステージと、インクを塗布する塗布装置等の加工装置とを有している。前記製造装置は、ステージ上の基板等に対して加工装置を搬送装置によって任意の位置に移動可能に構成されている。前記搬送装置は、前記ステージ及び前記加工装置をそれぞれ移動させる駆動装置と、前記駆動装置を制御する位置制御装置とを有する。また、前記駆動装置は、前記ステージ及び前記加工装置の位置を計測する位置計測装置を有している。前記搬送装置は、前記位置計測装置からの計測信号に基づいて前記ステージ及び前記加工装置を所定の位置に移動させる。
【0003】
このような製造装置は、環境温度に応じて装置全体が熱膨張または熱収縮する。この際、前記製造装置に固定されている位置計測装置は、前記製造装置の熱膨張または熱収縮に伴って延伸または収縮されることにより計測値に誤差が生じる。よって、前記位置計測装置の計測値に基づいて前記ステージ及び加工装置を移動させる搬送装置は、前記位置計測装置が延伸または収縮した場合、位置制御装置からの制御信号にしたがって駆動装置を作動させても目標位置に対してずれが生じる。そこで、製造装置が熱膨張または熱収縮しても目標位置に対するずれを抑制することができる製造装置が知られている。例えば、特許文献1の如くである。
【0004】
特許文献1に記載のインクジェット塗布装置は、基板を載置するステージと、前記ステージ上の基板に対してインクを塗布する塗布ユニットを備え、前記基板に対して前記塗布ユニットが移動するインクジェット塗布装置である。前記インクジェット塗布装置は、前記塗布ユニットの位置を計測する位置計測装置と、前記位置計測装置からの位置パルス列に基づいて塗布ユニットの制御を行う位置制御装置を備える。前記制御装置は、環境温度における位置パルス補正テーブルを取得し、前記位置パルス補正テーブルに基づいて生成した補正位置パルス列によって前記塗布ユニットの位置制御を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のインクジェット塗布装置が塗布ユニット等の移動体を複数の駆動装置によって移動させる場合、搬送装置は、前記位置制御装置が生成した前記移動体の位置に関する補正位置パルス列によって複数の前記駆動装置を同時に制御している。したがって、前記搬送装置は、補正位置パルス列によって熱膨張または熱収縮による前記移動体の目標位置に対するずれを抑制可能である。しかし、前記複数の駆動装置が有する位置計測装置にそれぞれ異なる熱膨張または熱収縮が生じている場合、前記複数の駆動装置における単位時間毎の移動量は、位置計測装置の伸縮位置及び伸縮量によって変動する。これにより、前記複数の駆動装置によって移動される移動体は、単位時間毎に移動中の速度及び姿勢が変動する。よって、前記移動体を移動させながら加工を行う製造装置では、前記移動体の移動中の速度及び姿勢を安定させることが求められている。
【0007】
本発明の目的は、位置制御装置が出力する1つの位置制御信号に基づいて、少なくとも1つの駆動装置による移動体の移動中の速度及び姿勢を安定させることができる搬送装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、電動モータによって移動体を移動させる搬送装置において、位置制御装置が出力する1つの位置制御信号に基づいて、少なくとも1つの駆動装置による移動体の移動中の速度及び姿勢を安定させることができる搬送装置の構成について検討した。鋭意検討の結果、本発明者は、以下のような構成に想到した。
【0009】
本発明の一実施形態に係る搬送装置は、移動体を移動させる電動モータと、前記電動モータに供給する電力を制御する供給電力制御装置と、前記電動モータにおける可動子の位置を位置パルス列信号として前記供給電力制御装置に対して出力する位置計測装置とをそれぞれ含む少なくとも1つの駆動装置と、前記可動子の目標位置におけるパルス数に関する位置制御信号を前記供給電力制御装置に対して出力する位置制御装置と、を有し、前記供給電力制御装置が前記位置制御信号と前記位置パルス列信号のパルス数との差分に基づいて前記電動モータに電力を供給する搬送装置である。
【0010】
前記駆動装置は、前記位置計測装置が前記供給電力制御装置に対して出力した位置パルス列信号を補正する信号補正装置を有する。前記信号補正装置は、前記移動体が原点位置から任意の位置に移動する場合に前記位置計測装置が出力する位置パルス列信号のパルス数と熱収縮がない場合での前記原点位置から前記任意の位置までの距離との関係についての情報に基づいて、前記位置計測装置が出力した位置パルス列信号を補正し、補正した前記位置パルス列信号を前記供給電力制御装置に対して出力する。
【0011】
上述の構成では、搬送装置は、各駆動装置がそれぞれ有する位置計測装置から出力される位置パルス列信号の誤差を、対応する信号補正装置によってそれぞれ補正する。よって、位置制御装置は、前記各駆動装置に対して各前記位置パルス列信号の誤差を考慮した位置制御信号をそれぞれ出力する必要がない。つまり、前記搬送装置は、位置制御装置が各駆動装置に対して出力した1つの位置制御信号に基づいて各駆動装置がそれぞれの位置パルス列信号を補正しつつ電動モータを制御しているので、同期制御用の制御機器を用いることなく各電動モータを同期させることができる。また、前記各駆動装置は、位置計測装置が位置パルス列信号を出力する毎に信号補正装置によって位置パルス列信号を補正する。つまり、前記各駆動装置は、位置計測装置がパルス列信号を出力している間、信号補正装置によって常に位置パルス列信号を補正している。これにより、前記位置制御装置が出力する1つの位置制御信号に基づいて、少なくとも1つの前記駆動装置による前記移動体の移動中の速度及び姿勢を安定させることができる。
【0012】
他の観点によれば、本発明の搬送装置は、以下の構成を含むことが好ましい。前記信号補正装置は、前記関係についての情報に基づいて補正に必要な位置パルス数を算出し、補正に必要な位置パルスを前記位置パルス列信号に加算または減算して前記位置パルス列信号を補正する。
【0013】
上述の構成では、信号補正装置は、位置計測装置が位置パルス列信号を出力する毎に補正に必要な位置パルス数を前記位置パルス列信号に加算または減算して補正する。よって、前記信号補正装置は、前記位置パルス列信号を補正するために必要な処理時間にばらつきがない。また、前記信号補正装置は、補正した位置パルス列信号を遅滞なく速やかに供給電力制御装置に対して出力することができる。これにより、位置制御装置が出力する1つの位置制御信号に基づいて、少なくとも1つの駆動装置による移動体の移動中の速度及び姿勢を安定させることができる。
【0014】
他の観点によれば、本発明の搬送装置は、以下の構成を含むことが好ましい。前記信号補正装置は、前記移動体が移動される条件毎に前記関係についての情報を有し、前記移動体が移動される条件から選択した1つの前記関係についての情報に基づいて、前記位置パルス列信号を補正する。
【0015】
上述の構成では、信号補正装置は、移動体が移動される環境温度、前記移動体に搭載される搬送物の重量、前記移動体の移動パターン等が異なる前記移動体の移動条件毎に、前記移動体が原点位置から任意の位置に移動する場合において位置計測装置が出力する位置パルス列信号のパルス数と熱収縮がない場合での前記原点位置から前記任意の位置までの距離との関係についての情報を有している。よって、駆動装置は、前記信号補正装置によって前記移動体が移動される条件に適した前記関係についての情報を選択し、前記パルス列信号の補正を行う。これにより、前記移動体が移動される条件に関わらず、位置制御装置が出力する1つの位置制御信号に基づいて、少なくとも1つの前記駆動装置による移動体の移動中の速度及び姿勢を安定させることができる。
【0016】
他の観点によれば、本発明の搬送装置は、以下の構成を含むことが好ましい。前記信号補正装置は、前記移動体が移動される環境温度毎に前記関係についての情報を有する。
【0017】
上述の構成では、信号補正装置は、移動体が移動される環境温度毎に位置計測装置が出力する位置パルス列信号のパルス数と熱収縮がない場合での前記原点位置から前記任意の位置までの距離との関係についての情報を有している。よって、駆動装置は、前記信号補正装置によって前記移動体が移動される条件に適した関係についての情報を選択し、前記パルス列信号の補正を行う。これにより、前記移動体が移動される環境温度に関わらず、位置制御装置が出力する1つの位置制御信号に基づいて、少なくとも1つの前記駆動装置による前記移動体の移動中の速度及び姿勢を安定させることができる。
【0018】
他の観点によれば、本発明の搬送装置は、以下の構成を含むことが好ましい。前記信号補正装置は、前記関係についての情報である補正式に基づいて前記位置パルス列信号を補正する。
【0019】
上述の構成では、信号補正装置は、位置計測装置が出力する位置パルス列信号のパルス数と熱収縮がない場合での原点位置から任意の位置までの距離との関係についての情報である補正式を有している。前記信号補正装置は、移動体が任意の位置にいる場合において前記位置計測装置が出力する位置パルス列信号のパルス数を前記補正式によって継ぎ目なく連続して補正することができる。これにより、位置制御装置が駆動装置に対して出力する1つの位置制御信号に基づいて、少なくとも1つの駆動装置による移動体の移動中の速度及び姿勢を安定させることができる。
【0020】
他の観点によれば、本発明の搬送装置は、以下の構成を含むことが好ましい。前記信号補正装置は、前記関係についての情報である補正テーブルに基づいて前記位置パルス列信号を補正する。
【0021】
上述の構成では、信号補正装置は、移動体が原点位置から任意の位置に移動する場合において位置計測装置が出力する位置パルス列信号のパルス数と熱収縮がない場合での前記原点位置から前記任意の位置までの距離との関係についての情報である補正テーブルを有している。前記信号補正装置は、前記移動体が前記任意の位置にいる場合において前記位置計測装置が出力する位置パルス列信号を前記補正テーブルによって補正する。よって、前記信号補正装置は、前記位置計測装置が出力する位置パルス列信号を前記補正テーブルに当てはめることによって前記位置パルス列信号を計算誤差なく補正することができる。これにより、位置制御装置が出力する1つの位置制御信号に基づいて、少なくとも1つの駆動装置による移動体の移動中の速度及び姿勢を安定させることができる。
【0022】
本明細書で使用される専門用語は、特定の実施形態のみを定義する目的で使用されるのであって、前記専門用語によって発明を制限する意図はない。
【0023】
本明細書において、「含む、備える(including)」「含む、備える(comprising)」または「有する(having)」及びそれらの変形の使用は、記載された特徴、工程、要素、成分、及び/または、それらの等価物の存在を特定するが、ステップ、動作、要素、コンポーネント、及び/または、それらのグループのうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0024】
本明細書において、「取り付けられた」、「接続された」、「結合された」、及び/または、それらの等価物は、広義の意味で使用され、“直接的及び間接的な”取り付け、接続及び結合の両方を包含する。さらに、「接続された」及び「結合された」は、物理的または機械的な接続または結合に限定されず、直接的または間接的な電気的接続または結合を含むことができる。
【0025】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。
【0026】
[電動モータ]
本明細書において、電動モータとは、電気的エネルギーを機械的エネルギーに変換する装置である。前記電動モータは、電気により磁界を発生させるコイルを有する固定子と、前記固定子の磁界によって前記固定子に対して移動する可動子とを有する。前記電動モータは、前記固定子に対して前記可動子が回転または直動するように構成されている。
【0027】
[位置計測装置]
本明細書において、位置計測装置とは、電動モータの可動子の位置を計測するパルス列信号発生装置である。前記位置計測装置は、前記可動子の単位移動量に対して単位位置パルスを出力する。つまり、前記位置計測装置は、前記可動子の移動量に応じて位置パルス列信号を出力する。前記位置計測装置は、前記可動子が回転する場合、例えばロータリエンコーダによって構成される。前記位置計測装置は、前記可動子が直動する場合、例えばリニアスケールによって構成される。
【0028】
[供給電力制御装置]
本明細書において、供給電力制御装置は、1つの電動モータに対して電力を供給する装置である。前記供給電力制御装置は、上位の位置制御装置の制御信号と位置計測装置からの位置パルス列信号との差分に基づいて前記電動モータに電力を供給する。つまり、前記供給電力制御装置は、前記位置計測装置からの位置パルス列信号をフィードバック信号として取得している。
【0029】
[位置パルス列信号]
本明細書において、位置パルス列信号とは、電動モータの可動子が単位移動量だけ移動した際に位置計測装置が出力する信号である。位置パルス列信号は、矩形波が連続して生成されたパルス列から構成される。前記位置パルス列信号は、信号補正装置が生成した単一の矩形波であるパルスを加算または減算可能に構成されている。
【発明の効果】
【0030】
本発明の一実施形態によれば、電動モータと、前記モータに供給する電力を制御する供給電力制御装置と、前記モータにおける可動子の位置を位置パルス列信号として前記供給電力制御装置に対して出力する位置計測装置と、前記供給電力制御装置に対して出力する位置制御装置と、を有する搬送装置において、位置制御装置が出力する1つの位置制御信号に基づいて、少なくとも1つの駆動装置による移動体の移動中の速度及び姿勢を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態1における搬送装置の全体構成を示す模式図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態1における搬送装置の制御構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態1における搬送装置の第1位置計測装置が所定の環境温度において出力した第1位置パルス列信号から算出した測定誤差と第1信号補正装置が補正した第1補正パルス列信号とを示すグラフである。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態1における搬送装置の第2位置計測装置が出力する位置パルス列信号と第2信号補正装置が補正した第1補正パルス列信号とを示すグラフである。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態2における搬送装置の制御構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1から
図3を用いて、本発明に係る搬送装置の実施形態1である搬送装置1について説明する。
図1は、本発明の実施形態1における搬送装置1の全体構成を示す模式図である。
図2は、搬送装置1の制御構成を示すブロック図である。
図3は、搬送装置1の第1位置計測装置7が出力する第1位置パルス列信号S1における誤差と第1信号補正装置8が出力する第1補正位置パルス列信号Sc1における補正値とを示すグラフである。
図4は、搬送装置1の第2位置計測装置13が出力する第2位置パルス列信号S2における誤差と第2信号補正装置14が補正した第2補正位置パルス列信号Sc2における補正値とを示すグラフである。
本実施形態における環境温度とは、搬送装置1を作動させる際の周囲の温度であって、搬送装置1の周囲の温度がT1になっている状態における温度を環境温度T1とする。
【0033】
図1に示すように、搬送装置1は、移動対象物である移動体Mを搬送する搬送装置である。搬送装置1は、図示しない製造装置に設けられているものとする。搬送装置1は、案内装置2と、第1駆動装置3と、第2駆動装置9と、位置制御装置15(
図2参照)とを有する。
【0034】
案内装置2は、移動体Mを直線状の任意の位置に案内する装置である。案内装置2は、図示しないインクジェット塗布装置等に設けられている。案内装置2は、例えば、インクジェット塗布装置のベース上に固定されている一対のレール2aと、一対のレール2a上を移動可能な一対のブロック2bとを有する。一対のレール2aは、平行に隣り合って位置している。一対のブロック2bのうち一方のブロック2bは、一対のレール2aのうち一方のレール2aに沿って移動可能に構成されている。一対のブロック2bのうち他方のブロック2bは、一対のレール2aのうち他方のレール2aに沿って移動可能に構成されている。一方のブロック2bには、移動体Mの一方の端部が固定されている。他方のブロック2bには、移動体Mの他方の端部が固定されている。つまり、案内装置2は、移動体Mを一対のレール2aの延伸方向に移動可能に支持している。
【0035】
第1駆動装置3は、移動体Mを移動させる駆動装置である。第1駆動装置3は、第1電動モータ4と、第1動力変換機構5と、第1供給電力制御装置6(
図2参照)と、第1位置計測装置7(
図2参照)と、第1信号補正装置8(
図2参照)とを有する。
【0036】
第1電動モータ4は、移動体Mを移動させる駆動力を発生させるアクチュエータである。第1電動モータ4は、案内装置2における一対のレール2aのうち一方のレール2aの近傍に位置している。第1電動モータ4は、ボールねじ軸等の第1動力変換機構5を介して移動体Mの一方の端部に連結されている。第1電動モータ4は、図示しない可動子の回転運動を第1動力変換機構5によって直進運動に変換して移動体Mの一方の端部に伝達する。つまり、第1電動モータ4は、可動子の回転移動によって移動体Mの一方の端部を一方のレール2aの延伸方向に移動可能に構成されている。
【0037】
図2に示すように、第1供給電力制御装置6は、第1電動モータ4に電力V1を供給する供給電力制御装置(モータアンプ)である。第1供給電力制御装置6は、第1電動モータ4と電気的に接続されている。第1供給電力制御装置6は、任意の大きさの電力V1を第1電動モータ4に供給可能である。つまり、第1供給電力制御装置6は、第1電動モータ4の可動子を任意の回転位置に移動可能である。
【0038】
図1と
図2とに示すように、第1位置計測装置7は、第1電動モータ4の可動子の位置を計測する光学式のリニアスケールによって構成される位置計測装置である。第1位置計測装置7は、スケール7aと、スケール7aの目盛を読み取る度に位置パルスを出力する検出器7bとから構成されている。検出器7bは、第1電動モータ4が第1動力変換機構5を介して連結されている移動体Mの一方の端部に固定されている。スケール7aは、図示しない製造装置であって案内装置2の一方のレール2aの近傍に固定されている。これにより、第1位置計測装置7は、移動体Mの一方の端部のスケール7aに対する位置を計測可能である。つまり、第1位置計測装置7は、スケール7aに対する移動体Mの一方の端部の位置から第1電動モータ4の可動子の回転位置を間接的に計測可能である。第1位置計測装置7の検出器7bは、第1信号補正装置8を介して第1供給電力制御装置6と電気的に接続されている。よって、第1位置計測装置7は、第1電動モータ4の可動子の回転位置として第1位置パルス列信号S1を第1供給電力制御装置6に対して出力可能に構成されている。
【0039】
図2に示すように、第1信号補正装置8は、第1位置パルス列信号S1を補正する信号補正装置である。第1信号補正装置8は、第1位置計測装置7に電気的に接続されている。第1信号補正装置8は、第1位置計測装置7が第1供給電力制御装置6に対して出力した第1位置パルス列信号S1を取得可能に構成されている。また、第1信号補正装置8は、第1供給電力制御装置6に電気的に接続されている。第1信号補正装置8は、補正した第1位置パルス列信号S1である第1補正位置パルス列信号Sc1を第1供給電力制御装置6に対して出力可能に構成されている。つまり、第1位置計測装置7が第1供給電力制御装置6に対して出力した第1位置パルス列信号S1は、第1信号補正装置8を経由して第1補正位置パルス列信号Sc1として第1供給電力制御装置6に伝達される。
【0040】
第1信号補正装置8は、所定の環境温度T1において、第1位置パルス列信号S1を補正するための第1補正式F1を有している。第1補正式F1は、所定の環境温度T1において、移動体Mの一方の端部が移動体Mの移動範囲における基準となる原点位置から任意の位置に移動する際に第1位置計測装置7が出力する第1位置パルス列信号S1のパルス数と、熱収縮がない場合での前記原点位置から任意の位置までの距離との関係についての情報である。
【0041】
第1補正式F1は、スケール7aが、例えば環境温度23℃で外力が加わっていない場合の伸縮状態(以下、単に「基準状態」と記す)において、熱収縮がない場合での前記原点位置から任意の位置までの距離と第1位置計測装置7における1パルス当りの移動体Mの移動距離とから算出される理論パルス数に対する、環境温度T1において前記任意の位置に移動された移動体Mの位置を第1位置計測装置7が計測した際の実パルス数の関係を示す式である。第1信号補正装置8は、第1位置計測装置7が計測した任意の位置におけるパルス数に基づいて算出した第1補正式F1を複数の環境温度毎に有している。第1信号補正装置8は、複数の第1補正式F1から環境温度T1に対応した第1補正式F1を選択する。また、第1信号補正装置8は、取得した第1位置パルス列信号S1を第1補正式F1に基づいて補正可能である。
【0042】
図1と
図2とに示すように、第2駆動装置9は、移動体Mを移動させる駆動装置である。第2駆動装置9は、第2電動モータ10と、第2動力変換機構11と、第2供給電力制御装置12と、第2位置計測装置13と、第2信号補正装置14とを有する。
【0043】
図1に示すように、第2電動モータ10は、移動体Mを移動させる駆動力を発生させるアクチュエータである。第2電動モータ10は、案内装置2における他方のレール2aの近傍に位置している。第2電動モータ10は、第2動力変換機構11を介して移動体Mの他方の端部に連結されている。第2電動モータ10は、可動子の回転運動を第2動力変換機構11によって直進運動に変換して移動体Mの他方の端部に伝達する。つまり、第2電動モータ10は、可動子の回転移動によって移動体Mの他方の端部を他方のレール2aの延伸方向に移動可能に構成されている。
【0044】
図2に示すように、第2供給電力制御装置12は、第2電動モータ10に電力V2を供給する供給電力制御装置である。第2供給電力制御装置12は、第2電動モータ10と電気的に接続されている。第2供給電力制御装置12は、任意の大きさの電力V2を第2電動モータ10に供給可能である。つまり、第1供給電力制御装置6は、第2電動モータ10の可動子を任意の回転位置に移動可能である。
【0045】
第2位置計測装置13は、第2電動モータ10の可動子の位置を計測する光学式のリニアスケール等から構成される位置計測装置である。第2位置計測装置13は、スケール13aと、スケール13aの目盛を読み取る度に位置パルスを出力する検出器13bとから構成されている。検出器13bは、第2電動モータ10が第2動力変換機構11を介して連結されている移動体Mの他方の端部に固定されている。スケール13aは、案内装置2の他方のレール2aに固定されている。これにより、第2位置計測装置13は、移動体Mの他方の端部のスケール13aに対する位置を計測可能である。つまり、第2位置計測装置13は、スケール13aに対する移動体Mの他方の端部の位置から第2電動モータ10の可動子の回転位置を間接的に計測可能である。よって、第2位置計測装置13は、第2電動モータ10の可動子の回転位置として第2位置パルス列信号S2を第2供給電力制御装置12に対して出力可能に構成されている。
【0046】
第2信号補正装置14は、第2位置パルス列信号S2を補正する信号補正装置である。第2信号補正装置14は、第2位置計測装置13に電気的に接続されている。第2信号補正装置14は、第2位置計測装置13が第2供給電力制御装置12に対して出力した第2位置パルス列信号S2を取得可能に構成されている。また、第2信号補正装置14は、第2位置計測装置13に電気的に接続されている。第2信号補正装置14は、補正した第2位置パルス列信号S2である第2補正位置パルス列信号Sc2を第2供給電力制御装置12に対して出力可能に構成されている。つまり、第2位置計測装置13が第2供給電力制御装置12に対して出力した第2位置パルス列信号S2は、第2信号補正装置14を経由して第2補正位置パルス列信号Sc2として第2供給電力制御装置12に伝達される。
【0047】
第2信号補正装置14は、第2位置パルス列信号S2を補正するための第2補正式F2を環境温度毎に有している。第2補正式F2は、所定の環境温度T1において、移動体Mの他方の端部が移動体Mの移動範囲における基準となる原点位置から任意の位置に移動する際に第2位置計測装置13が出力する第2位置パルス列信号S2のパルス数と、熱収縮がない場合での前記原点位置から任意の位置までの距離との関係についての情報である。第2信号補正装置14は、複数の第2補正式F2から環境温度T1に対応した第2補正式F2を選択する。また、第2信号補正装置14は、取得した第2位置パルス列信号S2を第2補正式F2に基づいて補正可能である。
【0048】
位置制御装置15は、第1駆動装置3及び第2駆動装置9を制御する制御装置である。位置制御装置15は、実体的には、CPU、ROM、RAM、HDD等がバスで接続されている。または、位置制御装置15は、ワンチップのLSI等からなる構成であってもよい。位置制御装置15は、第1駆動装置3及び第2駆動装置9の動作を制御するために種々のプログラムおよびデータが格納されている。位置制御装置15は、第1位置計測装置7のスケール7a及び第2位置計測装置13のスケール13aが基準状態において、第1電動モータ4及び第2電動モータ10の可動子の目標位置におけるパルス数に関する位置制御信号Stを生成可能である。
【0049】
位置制御装置15は、第1駆動装置3の第1供給電力制御装置6及び第2駆動装置9の第2供給電力制御装置12に電気的に接続されている。位置制御装置15は、第1供給電力制御装置6及び第2供給電力制御装置12に、位置制御信号Stを送信可能である。
【0050】
このように構成される搬送装置1は、位置制御装置15から第1駆動装置3及び第2駆動装置9に対して位置制御信号Stを送信する。位置制御信号Stを取得した第1駆動装置3の第1供給電力制御装置6は、第1位置計測装置7から現在位置における第1位置パルス列信号S1を取得する。この際、第1駆動装置3は、第1信号補正装置8によって第1位置パルス列信号S1を補正する。第1供給電力制御装置6は、位置制御信号Stと第1補正位置パルス列信号Sc1との差分に基づいて第1電動モータ4に電力V1を供給する。同様に、位置制御信号Stを取得した第2駆動装置9の第2供給電力制御装置12は、第2位置計測装置13から現在位置における第2位置パルス列信号S2を取得する。この際、第2駆動装置9は、第2信号補正装置14によって第2位置パルス列信号S2を補正する。第2供給電力制御装置12は、位置制御信号Stと第2補正位置パルス列信号Sc2との差分に基づいて第2電動モータ10に電力V2を供給する。
【0051】
次に、
図2から
図4を用いて、搬送装置1における移動体Mの搬送制御について説明する。なお、搬送装置1は、環境温度T1において移動体Mを搬送するものとする。
【0052】
図2に示すように、搬送装置1の位置制御装置15は、第1駆動装置3及び第2駆動装置9に対して、移動体Mを目標位置に移動させる位置制御信号Stを出力する。第1駆動装置3の第1位置計測装置7は、第1供給電力制御装置6に対して第1位置パルス列信号S1を出力する。第2駆動装置9の第2位置計測装置13は、第2供給電力制御装置12に対して第2位置パルス列信号S2を出力する。
【0053】
図3に示すように、環境温度T1において、第1位置計測装置7は、スケール7aの熱収縮の影響により、熱収縮がない場合での原点位置から100mmの位置において4μm分大きな値を計測し、熱収縮がない場合での前記原点位置から200mmの位置において6μm分大きな値を計測し、熱収縮がない場合での前記原点位置から300mmの位置において8μm分大きな値を計測し、熱収縮がない場合での前記原点位置から400mmの位置において6μm分大きな値を計測し、熱収縮がない場合での前記原点位置から500mmの位置において熱伸縮の影響がない値を計測し、スケール7aの熱膨張の影響により、熱収縮がない場合での前記原点位置から600mmの位置において8μm分小さな値を計測し、熱収縮がない場合での前記原点位置から700mmの位置において熱伸縮の影響がない値を計測することが予め確認されている(破線参照)。
【0054】
上述のように伸縮する第1位置計測装置7に対して、第1信号補正装置8は、複数の第1補正式F1のうち環境温度T1における第1位置計測装置7の誤差を補正するための第1補正式F1を選択する(
図2参照)。例えば、スケール7aが収縮した第1位置計測装置7が前記原点位置から100.000mmの位置に相当する第1位置パルス列信号S1を出力した際、移動体Mの一方の端部は、前記原点位置から99.996mmの位置に移動している。
【0055】
第1信号補正装置8は、前記原点位置から100.000mmの位置に相当する第1位置パルス列信号S1を第1位置計測装置7から取得すると、第1補正式F1によって第1位置パルス列信号S1を前記原点位置から99.996mmの位置に相当する第1補正位置パルス列信号Sc1に補正する。つまり、第1信号補正装置8は、第1位置パルス列信号S1から4μm分の補正に必要な位置パルス数を減算補正した第1補正位置パルス列信号Sc1を第1供給電力制御装置6に対して出力する(
図3の実線参照)。このように、第1信号補正装置8は、第1位置計測装置7のスケール7aの収縮によって移動体Mの一方の端部が第1位置パルス列信号S1から算出される位置よりも原点位置に近い位置に移動される場合、スケール7aの伸縮分を移動させるために第1位置パルス列信号S1から補正に必要な位置パルス数を減算した第1補正位置パルス列信号Sc1を生成する。
【0056】
また、スケール7aが延伸した第1位置計測装置7が前記原点位置から600.00mmの位置に相当する第1位置パルス列信号S1を出力した際、移動体Mの一方の端部は、前記原点位置から600.008mmの位置に移動している。
【0057】
第1信号補正装置8は、前記原点位置から600.000mmの位置に相当する第1位置パルス列信号S1を第1位置計測装置7から取得すると、第1補正式F1によって第1位置パルス列信号S1を前記原点位置から600.008mmの位置に相当する第1補正位置パルス列信号Sc1に補正する。つまり、第1信号補正装置8は、第1位置パルス列信号S1から8μm分の補正に必要な位置パルス数を加算補正した第1補正位置パルス列信号Sc1を第1供給電力制御装置6に対して出力する(
図3の実線参照)。このように、第1信号補正装置8は、第1位置計測装置7がスケール7aの延伸によって移動体Mの一方の端部が第1位置パルス列信号S1から算出される位置よりも原点位置から遠い位置に移動される場合、スケール7aの延伸分を移動させないために第1位置パルス列信号S1から補正に必要な位置パルス数を加算して第1補正位置パルス列信号Sc1を生成する。
【0058】
図4に示すように、環境温度T1において、第2位置計測装置13は、スケール13aの熱収縮の影響により、熱収縮がない場合での原点位置から100mmの位置において4μm分大きな値を計測し、熱収縮がない場合での前記原点位置から200mmの位置において5μm分大きな値を計測し、スケール13aの熱膨張の影響により熱収縮がない場合での前記原点位置から300mmの位置において3μm分小さな値を計測し、熱収縮がない場合での前記原点位置から400mmの位置において8μm分小さな値を計測し、熱収縮がない場合での前記原点位置から500mmの位置において10μm分小さな値を計測し、熱収縮がない場合での前記原点位置から600mmの位置において8μm小さな値を計測し、熱収縮がない場合での前記原点位置から700mmの位置において1μm小さな値を計測することが予め確認されている(二点鎖線参照)。
【0059】
伸縮する第2位置計測装置13に対して、第2信号補正装置14は、複数の第2補正式F2のうち環境温度T1における第2位置計測装置13の誤差を補正するための第2補正式F2を選択する(
図2参照)。例えば、スケール13aが収縮した第2位置計測装置13が前記原点位置から100.000mmの位置に相当する第2位置パルス列信号S2を出力した際、移動体Mの他方の端部は、前記原点位置から99.996mmの位置に移動している。
【0060】
第2信号補正装置14は、前記原点位置から100.000mmの位置に相当する第2位置パルス列信号S2を前記原点位置から99.996mmの位置に相当する第2補正位置パルス列信号Sc2に補正する。つまり、第2位置計測装置13は、第2位置パルス列信号S2から4μm分の補正に必要な位置パルス数を減算補正した第2補正位置パルス列信号Sc2を第2供給電力制御装置12に対して出力する(破線参照)。
【0061】
また、スケール13aが延伸した第2位置計測装置13が前記原点位置から500.000mmの位置に相当する第1位置パルス列信号S1を出力した際、移動体Mの一方の端部は、前記原点位置から500.010mmの位置に移動している。
【0062】
第2信号補正装置14は、前記原点位置から500.000mmの位置に相当する第2位置パルス列信号S2を第2位置計測装置13から取得すると、第2補正式F2によって第2位置パルス列信号S2を前記原点位置から500.010mmの位置に相当する第2補正位置パルス列信号Sc2に補正する。つまり、第2位置計測装置13は、第2位置パルス列信号S2から10μm分の補正に必要な位置パルス数を加算補正した第2補正位置パルス列信号Sc2を第2供給電力制御装置12に対して出力する(破線参照)。
【0063】
図2に示すように、第1供給電力制御装置6は、位置制御信号Stと第1補正位置パルス列信号Sc1との差分に基づいて、第1電動モータ4に電力V1を供給する。第2供給電力制御装置12は、位置制御信号Stと第2補正位置パルス列信号Sc2との差分に基づいて、第2電動モータ10に電力V2を供給する。移動体Mは、第1電動モータ4と第2電動モータ10とによって目的位置に向かって移動する。
【0064】
この際、第1電動モータ4の可動子の移動量は、第1位置計測装置7が第1位置パルス列信号S1を出力している間、常に第1信号補正装置8によって理論パルス数と一致するように補正されるので、第1位置計測装置7の熱による伸縮の影響が抑制される。同様に、第2電動モータ10の可動子の移動量は、第2位置計測装置13が第2位置パルス列信号S2を出力している間、常に第2信号補正装置14によって理論パルス数と一致するように補正されるので、第2位置計測装置13の熱による伸縮の影響が抑制される。つまり、搬送装置1は、第1駆動装置3において第1位置計測装置7のスケール7aの伸縮を打ち消し、第2駆動装置9において第2位置計測装置13のスケール13aの伸縮を打ち消した状態において移動体Mを移動させる。
【0065】
このように構成される搬送装置1は、1つの位置制御信号Stを第1駆動装置3と第2駆動装置9とに同時に送信している。更に、搬送装置1は、位置制御信号Stに基づいて第1駆動装置3が第1位置パルス列信号S1を補正し、第2駆動装置9が第2位置パルス列信号S2を補正している。よって、搬送装置1は、第1駆動装置3と第2駆動装置9とを同期させるための制御機器を用いることなく第1電動モータ4と第2電動モータ10とを同期させることができる。
【0066】
また、第1駆動装置3と第2駆動装置9とは、第1位置計測装置7及び第2位置計測装置13がパルス列信号を出力している間、第1信号補正装置8と第2信号補正装置14とによって常に第1位置パルス列信号S1と第2位置パルス列信号S2とを補正している。したがって、搬送装置1は、様々な環境温度において移動体Mを原点位置から任意の位置まで移動させる際、第1位置計測装置7のスケール7a及び第2位置計測装置13のスケール13aの伸縮による単位時間当たりの移動量の変動を抑制した状態において熱収縮がない場合での前記原点位置から任意の位置までの距離を移動させることができる。つまり、搬送装置1は、前記原点位置から任意の位置までの移動中の移動体Mの速度及び姿勢を安定させることができる。
【0067】
第1信号補正装置8及び第2信号補正装置14は、補正に必要な位置パルス数を第1位置パルス列信号S1及び第2位置パルス列信号S2に加算または減算して補正する。よって、第1信号補正装置8及び第2信号補正装置14は、第1位置パルス列信号S1及び第2位置パルス列信号S2を補正するために必要な処理時間にばらつきがない。また、第1信号補正装置8及び第2信号補正装置14は、補正位置パルス列信号を遅滞なく速やかに第1供給電力制御装置6及び第2供給電力制御装置12に対して出力することができる。
【0068】
第1信号補正装置8及び第2信号補正装置14は、移動体Mが移動される環境温度毎に第1補正式F1と第2補正式F2とを有している。第1信号補正装置8及び第2信号補正装置14は、移動体Mが任意の位置にいる場合において第1位置計測装置7及び第2位置計測装置13が出力する第1位置パルス列信号S1及び第2位置パルス列信号S2のパルス数を第1補正式F1及び第2補正式F2によって継ぎ目なく連続して補正することができる。これにより、位置制御装置15が出力する1つの位置制御信号Stに基づいて、第1駆動装置3と第2駆動装置9とによる移動体Mの移動中の速度及び姿勢を安定させることができる。
【0069】
次に、
図5を用いて、本発明の実施形態2に係る搬送装置1Aについて説明する。
図5は、搬送装置1Aの制御構成を示すブロック図である。なお、以下の実施形態において、既に説明した実施形態と同様の点に関してはその具体的説明を省略し、相違する部分を中心に説明する。
【0070】
図5に示すように、第1信号補正装置8Aは、第1位置パルス列信号S1を補正する装置である。第1信号補正装置8Aは、第1位置パルス列信号S1を補正するための第1補正テーブルN1を有している。第1補正テーブルN1は、所定の環境温度T1において移動体Mの一方の端部が移動体Mの移動範囲における基準となる原点位置から任意の位置に移動する際に、環境温度T1によって熱伸縮した第1位置計測装置7が出力する第1位置パルス列信号S1のパルス数と、熱収縮がない場合での前記原点位置から任意の位置までの距離との関係を示す情報である。
【0071】
第1補正テーブルN1は、第1位置計測装置7のスケール7aが基準状態において、前記原点位置から任意の位置までの距離と第1位置計測装置7における1パルス当りの移動距離とから算出される理論パルス数と、環境温度T1において任意の位置に移動された移動体Mの位置を第1位置計測装置7が計測した際の実パルス数との差分を任意の位置毎に示すテーブルである。第1信号補正装置8Aは、第1位置計測装置7が計測した任意の位置におけるパルス数に基づいて算出した第1補正テーブルN1を複数の環境温度毎に有している。第1信号補正装置8Aは、複数の第1補正テーブルN1から環境温度T1に対応した第1補正テーブルN1を選択可能である。また、第1信号補正装置8Aは、取得した第1位置パルス列信号S1を第1補正テーブルN1に基づいて補正可能である。
【0072】
第2信号補正装置14Aは、第2位置パルス列信号S2を補正する装置である。第2信号補正装置14Aは、第2位置パルス列信号S2を補正するための第2補正テーブルN2を環境温度毎に有している。第2補正テーブルN2は、所定の環境温度T1において移動体Mの他方の端部が移動体Mの移動範囲における基準となる原点位置から任意の位置に移動する際に、第2位置計測装置13が出力する第2位置パルス列信号S2のパルス数と、熱収縮がない場合での前記原点位置から任意の位置までの距離との関係を示す情報である。第2補正テーブルN2は、第2信号補正装置14Aのスケール14aが基準状態において、熱収縮がない場合での前記原点位置から任意の位置までの距離と第2位置計測装置13における1パルス当りの移動距離とから算出される理論パルス数と、環境温度T1において任意の位置に移動された移動体Mの位置を第2位置計測装置13が計測した際の実パルス数との差分を任意の位置毎に示すテーブルである。第2信号補正装置14Aは、複数の第2補正テーブルN2から環境温度T1に対応した第2補正テーブルN2を選択可能である。また、第2信号補正装置14Aは、取得した第2位置パルス列信号S2を第2補正テーブルN2に基づいて補正可能である。
【0073】
このように構成される第1信号補正装置8Aは、移動体Mが任意の位置にいる場合において、複数の第1補正テーブルN1のうち環境温度T1における第1位置計測装置7の誤差を補正するための第1補正テーブルN1を選択する。第1信号補正装置8Aは、第1位置計測装置7が出力する第1位置パルス列信号S1を選択した第1補正テーブルN1で補正する。第2信号補正装置14Aは、複数の第2補正テーブルN2のうち環境温度T1における第2位置計測装置13の誤差を補正するための第2補正テーブルN2を選択する。第2信号補正装置14Aは、第2位置計測装置13が出力する第2位置パルス列信号S2を選択した第2補正テーブルN2によって補正する。よって、第1信号補正装置8A及び第2信号補正装置14Aは、第1位置計測装置7が出力する第1位置パルス列信号S1を第1補正テーブルN1に当てはめることによって計算誤差なく補正することができる。第2位置パルス列信号S2についても同様である。これにより、位置制御装置15が出力する1つの位置制御信号Stに基づいて、第1駆動装置3と第2駆動装置9とによる移動体Mの移動中の速度及び姿勢を安定させることができる。
【0074】
(その他の実施形態)
なお、上述の全ての実施形態において、搬送装置1は、第1駆動装置3と第2駆動装置9とによって移動体Mを移動可能に構成されている。しかしながら、搬送装置1は、少なくとも1つの駆動装置を有していればよい。搬送装置1は、1つの駆動装置によって移動体Mを移動させる構成でも、3つ以上の駆動装置によって移動体Mを移動させる構成でもよい。
【0075】
また、上述の全ての実施形態において、第1信号補正装置8、8Aは、環境温度毎に第1位置計測装置7の誤差を補正するための第1補正式F1または第1補正テーブルN1を有している。同様に、第2信号補正装置14、14Aは、環境温度毎に第2位置計測装置13の誤差を補正するための第2補正式F2または第2補正テーブルN2を有している。しかしながら、第1信号補正装置及び第2信号補正装置は、移動体Mが移動される様々な条件毎に補正式または補正テーブルを有していてもよい。第1信号補正装置及び第2信号補正装置は、例えば、移動体の重量、移動体の移動パターン毎に補正式または補正テーブルを有していてもよい。
【0076】
また、上述の全ての実施形態において、搬送装置1は、案内装置2によって移動可能に支持された移動体Mを第1駆動装置3及び第2駆動装置9によって移動させている。しかしながら、搬送装置は、第1移動装置の第1電動モータ及び第2移動装置の第2電動モータを、案内ガイドを有する直動のリニアモータで構成してもよい。搬送装置は、第1駆動装置と第2駆動装置とによって移動体を案内しつつ、移動可能に構成されている。
【0077】
また、上述の全ての実施形態において、第1駆動装置3の第1電動モータ4及び第2駆動装置9の第2電動モータ10は、第1動力変換機構5及び第2動力変換機構11を介して回転運動を直進運動に変換している。しかしながら、駆動装置は、動力変換機構を介さずに移動体Mを電動モータによって移動させる構成でもよい。駆動装置は、例えば電動モータを直動のリニアモータで構成してもよい。
【0078】
また、上述の全ての実施形態において、第1位置計測装置7及び第2位置計測装置13は、光学式リニアスケールから構成されている。しかしながら、第1位置計測装置及び第2位置計測装置は、可動子の位置を計測できるものであれば、磁気式リニアスケール、光学式または磁気式のロータリエンコーダでもよい。
【0079】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0080】
1、1A 搬送装置
2 案内装置
3 第1駆動装置
4 第1電動モータ
5 第1動力変換機構
6 第1供給電力制御装置
7 第1位置計測装置
8、8A 第1信号補正装置
9 第2駆動装置
10 第2電動モータ
11 第2動力変換機構
12 第2供給電力制御装置
13 第2位置計測装置
14、14A 第2信号補正装置
15 位置制御装置
M 移動体
F1 第1補正式
F2 第2補正式
St 位置制御信号
S1 第1位置パルス列信号
Sc1 第1補正位置パルス列信号
S2 第2位置パルス列信号
Sc2 第2補正位置パルス列信号
N1 第1補正テーブル
N2 第2補正テーブル