(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128069
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】ペット信頼性評価方法、賃貸住宅の入居審査方法、およびペット信頼性評価システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/16 20120101AFI20230907BHJP
A01K 13/00 20060101ALI20230907BHJP
G06Q 40/08 20120101ALN20230907BHJP
【FI】
G06Q50/16
A01K13/00 Z
G06Q40/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022032133
(22)【出願日】2022-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山本 里美
(72)【発明者】
【氏名】清水 彩花
(72)【発明者】
【氏名】小池 泰輔
(72)【発明者】
【氏名】塩澤 恵理奈
(72)【発明者】
【氏名】小田川 雄大
(72)【発明者】
【氏名】原園 栞
【テーマコード(参考)】
5L049
5L055
【Fターム(参考)】
5L049CC27
5L055BB61
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ペットに適切な躾がなされているかどうかを客観的に判断するための躾情報により、ペットの信頼性を評価するペット信頼性評価方法、賃貸住宅の入居審査方法およびペット信頼性評価システムを提供する。
【解決手段】情報処理装置を用いてペット10の信頼性を評価する方法であって、プラットフォーム50が複数のエンドユーザ20が持つ端末から複数種類の躾データ30-1、30-2を取得する第1のステップ、複数種類の躾データを躾データ用データベース51に格納する第2のステップ、ペット信頼性評価システム52躾データ用データベース51から複数種類の躾データ30-2を読み出し、躾データ30と、評価指標マスタデータを用いて、信頼性評価データ80を算出する第3のステップ、を実行する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報処理装置を用いてペットの信頼性を評価する方法であって、
複数の端末から複数種類の躾データを取得する第1のステップ、
前記複数種類の躾データを躾データ用データベースに格納する第2のステップ、
前記躾データ用データベースから前記複数種類の躾データを読み出し、該躾データと評価指標マスタデータを用いて、信頼性評価データを算出する第3のステップ、
を実行するペット信頼性評価方法。
【請求項2】
前記躾データは、時系列の異なる情報によって生成される、
請求項1記載のペット信頼性評価方法。
【請求項3】
前記躾データは、前記ペットが入居した家屋の入居前の状態と入居後の状態に基づいて生成される、
請求項2記載のペット信頼性評価方法。
【請求項4】
前記躾データは、前記ペットが入居した家屋の入居後の状態が入居前の状態と比較してどれほど損耗しているかに基づいて生成される、
請求項3記載のペット信頼性評価方法。
【請求項5】
前記躾データは、所定のサービスを受けている間の前記ペットの行動に基づいて生成される、
請求項2記載のペット信頼性評価方法。
【請求項6】
前記躾データは、所定の賃貸物件に入居中の前記ペットの行動に基づいて生成される、
請求項2記載のペット信頼性評価方法。
【請求項7】
前記躾データは、前記ペットに装着したセンサから得られる時系列情報に基づいて生成される、
請求項2記載のペット信頼性評価方法。
【請求項8】
前記評価指標マスタデータは、前記複数種類の躾データそれぞれを数値に換算し、さらに重みづけを行うものである、
請求項1記載のペット信頼性評価方法。
【請求項9】
請求項4記載のペット信頼性評価方法を用いた賃貸住宅の入居審査方法であって、
第1の端末から取得した、前記ペットが入居した家屋の入居後の状態が入居前の状態と比較してどれほど損耗しているかに基づいて生成される前記躾データを用いて前記信頼性評価データを算出し、
前記信頼性評価データを第2の端末に送信して賃貸住宅の入居審査に用いる、
賃貸住宅の入居審査方法。
【請求項10】
前記第1の端末から取得した前記躾データに加えて、前記ペットに装着したセンサから得られる時系列情報に基づく躾データを用いて、
前記信頼性評価データを算出する、
請求項9記載の賃貸住宅の入居審査方法。
【請求項11】
入力装置と、出力装置と、記憶装置と、処理装置を備え、
前記処理装置はペット信頼性評価部を構成し、
前記ペット信頼性評価部は、複数の端末から収集した複数種類の躾データを取得して、該躾データと評価指標マスタデータを用いて、信頼性評価データを算出する、
ペット信頼性評価システム。
【請求項12】
前記複数種類の躾データは、ペットが入居した家屋の入居前の状態と入居後の状態の差を示す躾データを含む、
請求項11記載のペット信頼性評価システム。
【請求項13】
前記複数種類の躾データは、ペットに装着したセンサで取得される前記ペットの行動を示す躾データを含む、
請求項11記載のペット信頼性評価システム。
【請求項14】
前記評価指標マスタデータは、前記複数種類の躾データそれぞれを数値に換算し、さらに重みづけを行うものである、
請求項11記載のペット信頼性評価システム。
【請求項15】
前記処理装置はさらに信頼性評価データ共有部を構成し、
前記信頼性評価データ共有部は、前記複数の端末およびそれ以外の端末から選択した所定の端末に対して、前記信頼性評価データへのアクセスを許容する、
請求項11記載のペット信頼性評価システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置を用いた技術に係り、特に躾情報を用いたペットの信頼性を評価する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
愛玩を目的として飼育される動物であるペットは、人の心を和ませたり楽しませてくれたりする伴侶となる。しかし、ペットは社会の中で人と共生するため、その行動が社会に適合しているかどうかが問題になる。すなわち、ペットには人間社会の規範や慣習に合った行動をするための訓練(以下「躾」という)が要求される。
【0003】
ペットの特性を証明・認証するための技術として、ペットの「ワクチンや狂犬病の接種状態」「飼い主の知識」「愛犬のしつけ習得レベル」をデジタルで証明・認証できるアプリを活用し、「ペットと一緒に生活できる場所が広がる社会を実現」するための実証実験が報告されている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】ペット同伴可能なフロアを併設する会員制シェアオフィス「ビジネスエアポート京橋」で、ペッツオーライが提供するペット資格証明アプリ「Wan!Pass(ワンパス)」の実証実験を開始,[令和4年1月13日検索],インターネット <URL:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000078906.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ペットを飼育しているエンドユーザがペット可物件(住宅)に入居しようとする場合、住宅を提供する事業者(例えば不動産会社)は、ペット飼育に伴うリスク(例えば近隣トラブルや住宅の汚損)を考慮する必要がある。したがって、ペット可物件の敷金や家賃は割高になる傾向がある。このため、エンドユーザは希望の物件を希望の金銭負担で使用することが難しい。一方、不動産会社はペット可物件の適切な価格設定が難しく、機会損失になる可能性がある。
【0006】
また、近年ペットが病気やケガで診療を受けた場合や、物損事故を起こした場合に、かかった診療費や賠償金を補償するペット保険が商品化されている。ペット保険の契約可否や価格設定においては、ペットがケガや事故を起こすリスクを考慮する必要があるが、そのようなリスクを正確に評価する仕組みがなかった。
【0007】
上記の住宅や保険を提供する際のリスクは、ペットに適切な躾がなされていれば低下すると考えられる。ペットに適切な躾がなされていれば、ペットの信頼性が高く、ペットの飼育に伴う種々のトラブルのリスクが低下するため、エンドユーザに適切なコストでサービスを提供可能となる。
【0008】
そこで、本願発明の課題は、ペットに適切な躾がなされているかどうかを客観的に判断するための情報(以下「躾情報」という)により、ペットの信頼性を評価する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の好ましい一側面は、情報処理装置を用いてペットの信頼性を評価する方法であって、複数の端末から複数種類の躾情報を表すデータ(以下「躾データ」という)を取得する第1のステップ、前記複数種類の躾データを躾データ用データベースに格納する第2のステップ、前記躾データ用データベースから前記複数種類の躾データを読み出し、該躾データと評価指標マスタデータを用いて、信頼性評価データを算出する第3のステップ、を実行するペット信頼性評価方法である。
【0010】
本発明の好ましい他の一側面は、入力装置と、出力装置と、記憶装置と、処理装置を備え、前記処理装置はペット信頼性評価部を構成し、前記ペット信頼性評価部は、複数の端末から収集した複数種類の躾データを取得して、該躾データと評価指標マスタデータを用いて、信頼性評価データを算出する、ペット信頼性評価システムである。
【発明の効果】
【0011】
ペットに適切な躾がなされているかどうかを客観的に判断するための躾情報により、ペットの信頼性を評価する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例のペット信頼性評価システムの全体像を示すブロック図。
【
図2】躾データ用データベース51の構成を示すブロック図。
【
図3】ペット信頼性評価システム52の構成を示すブロック図。
【
図4】実施例のペット信頼性評価システムの活用例を説明するための概念図。
【
図5】エンドユーザ20がペット10とともに入居できる賃貸物件への引っ越しを検討し、ペット保険に加入して賃貸契約を締結し、入居するまでのプロセスを説明した概念図。
【
図6】エンドユーザ20がペット10とともに入居した賃貸物件から退去した後のプロセスを説明した概念図。
【
図7】エンドユーザ20がペット10とともに入居できる賃貸物件を転居するプロセスを説明した概念図。
【
図8】躾データ用データベース51に格納されるデータの例を示す概念図。
【
図9】エンドユーザ20がプラットフォーム50の利用を開始し、躾データ30の登録および更新を開始する処理例を説明する流れ図。
【
図10】躾データ30と評価指標マスタデータ511を用いて信頼性評価データ80を生成する処理を説明する流れ図。
【
図11】躾データ30と評価指標マスタデータ511を用いて信頼性評価データ80を計算する原理を説明する表図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。実施例は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略および簡略化がなされている。本発明は、他の種々の形態でも実施することが可能である。特に限定しない限り、各構成要素は単数でも複数でも構わない。
【0014】
図面において示す各構成要素の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。
【0015】
各種情報の例として、「テーブル」、「リスト」、「キュー」等の表現にて説明することがあるが、各種情報はこれら以外のデータ構造で表現されてもよい。例えば、「XXテーブル」、「XXリスト」、「XXキュー」等の各種情報は、「XX情報」としてもよい。識別情報について説明する際に、「識別情報」、「識別子」、「名」、「ID」、「番号」等の表現を用いるが、これらについてはお互いに置換が可能である。
【0016】
同一あるいは同様の機能を有する構成要素が複数ある場合には、同一の符号に異なる添字を付して説明する場合がある。また、これらの複数の構成要素を区別する必要がない場合には、添字を省略して説明する場合がある。
【0017】
以下で説明する実施例では、躾情報を用いてペットの信頼性評価を行い、信頼できるペットを判別することで、審査手続きの簡略化やペット可物件で発生するトラブルの回避を実現する。躾情報を表すデータを躾データということにする。
【0018】
図1は、実施例のペット信頼性評価システムとそれに関係するステークホルダの全体像を示すブロック図である。躾データ30-1、30-2を、共通の信頼評価プラットフォーム(以下単にプラットフォームということがある)50を介して収集し、信頼性評価データの作成を行うことで、他業種間の情報共有を実現する。
【0019】
躾データ30-1は、例えばペット10に装着したセンサからペット10の行動に関する情報として取得する。あるいは、エンドユーザ(飼い主、E/Uと略記することがある)20が作成する。また、躾データ30-2は、躾情報提供企業40が業務上取得できる情報から作成する。躾情報を表すデータである躾データは、ペット10の行動(動き)を評価するための情報なので、時間的に複数のタイミングで取得された情報から作られることが多い。
【0020】
ペット10には、例えばRFID(Radio Frequency Identifier)タグとセンサなどで構成される躾データ収集用デバイス60が取り付けられる。躾データ収集用デバイス60は、例えば、首輪等の形態でペット10に携帯させたり、微小なマイクロチップを装着したりする。躾データ収集用デバイス60からの躾データ30-1は、例えば無線通信を用いたネットワーク(図示せず)により、プラットフォーム50に送信される。
【0021】
エンドユーザ20は、自分が持つ端末から、躾データ30-1を無線あるいは有線のネットワークを介して、プラットフォーム50に送信する。端末は、例えばネットワークとの通信機能を備える通常の個人用携帯端末やパーソナルコンピュータでよく、図示していない。
【0022】
なお、躾データ収集用デバイス60からの躾データ30-1は、躾データ収集用デバイス60に備え付けられたメモリに躾データ30-1を一時蓄えておき、エンドユーザ20がメモリから読み取ったデータを別途自分の端末から送信するように構成してもよい。
【0023】
躾情報提供企業40は、例えば不動産会社、動物病院、ペットショップなどの、躾データ30-1を収集可能な主体(例えばステークホルダ)を想定している。
【0024】
躾情報提供企業40は、自分が持つ業務支援システム70から、躾データ30-2を無線あるいは有線のネットワークを介して、プラットフォーム50に送信する。業務支援システム70は、例えばネットワークとの通信機能を備える通常のサーバやパーソナルコンピュータでよい。
【0025】
プラットフォーム50は、エンドユーザ20の端末、躾データ収集用デバイス60、あるいは躾情報提供企業40の業務支援システム70からネットワークを介して送信される躾データ30を収集、蓄積、処理する情報処理装置である。プラットフォーム50は、一般にはサーバで構成できる。プラットフォーム50は、躾データ用データベース(以下単にデータベース(DB)ということがある)51、ペット信頼性評価システム52を備える。
【0026】
躾データ用データベース51は、ネットワークを介して送信されてくる躾データを収集、蓄積する。ペット信頼性評価システム52は、躾データ用データベース51に蓄積された躾データ30を用いてペットの信頼性を評価する。
【0027】
ペット信頼性評価システム52によるペットの信頼性評価結果は、信頼性評価データ80として躾データ用データベース51に蓄積され、躾情報提供企業40や、躾情報利用企業90に送信される。躾情報提供企業40は、業務支援システム70-1、70-2で信頼性評価データ80を受信する。躾情報利用企業90も、同様の構成の業務支援システム70-3で信頼性評価データ80を受信する。
【0028】
躾情報利用企業90は、例えば不動産会社やペット保険を提供する保険会社を想定できる。躾情報利用企業90が同時に躾情報提供企業40である場合もある。
【0029】
図1で示した構成によれば、複数種の主体が個々の観点で躾情報を収集し、躾データ用データベース51に集積される。複数種の主体が個々の観点で収集した躾情報に基づいてペットの信頼性を評価するので、客観性のある評価が期待できる。
【0030】
図2は、躾データ用データベース51の構成を示すブロック図である。躾データ用データベース51は、例えば磁気ディスク装置のような記録装置で構成することができる。
図1では、データベース51をプラットフォーム50の一部としているが、ペット信頼性評価システム52からアクセスが可能であれば、ネットワークで接続された他の情報処理装置で構成してもよい。
【0031】
データベース51には、躾データ30、評価指標マスタデータ511、信頼性評価データ80が格納される。ペット信頼性評価システム52は、躾データ30を評価指標マスタデータ511を用いて評価することにより、信頼性評価データ80を生成する。
【0032】
その他、データベース51には、ペット10に関する情報を格納するペットデータ512、エンドユーザ20に関する情報を格納する飼い主データ513、信頼性評価データ80の活用状況に関する評価結果活用状況データ514等が格納されている。これらのデータは、躾データ30を収集するのと同様の構成を用いて、データベース51に収集することができる。
【0033】
図3は、ペット信頼性評価システム52の構成を示すブロック図である。本実施例では、ペット信頼性評価システム52を入力装置521、出力装置522、メモリ523、処理装置524を備える情報処理装置で構成することにした。処理装置524は、ペット信頼性評価部525とペット信頼性評価データ共有部526を含む。本実施例では、ペット信頼性評価部525とペット信頼性評価データ共有部526は、ソフトウェアで実装することにする。具体的にはメモリ523に格納されたプログラムをCPU(Central Processor Unit)等の処理装置524が読み出して実行することにより実現される。
【0034】
実施例において、プログラムを実行して行う処理について説明する場合がある。ここで、ペット信頼性評価システム52は処理装置524でプログラムを実行し、記憶資源(例えばメモリ523)やインターフェースデバイス(例えば入力装置521と出力装置522)等を用いながら、プログラムで定められた処理を行う。そのため、プログラムを実行して行う処理の主体を、処理装置524としてもよい。同様に、プログラムを実行して行う処理の主体が、処理装置524を有する装置であってもよい。プログラムを実行して行う処理の主体は、特定の処理を行う専用回路を含んでいてもよい。ここで、専用回路とは、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)等である。
【0035】
プログラムは、プログラムソースからペット信頼性評価システム52にインストールされてもよい。プログラムソースは、例えば、プログラム配布サーバまたは計算機が読み取り可能な記憶メディアであってもよい。プログラムソースがプログラム配布サーバの場合、プログラム配布サーバはプロセッサと配布対象のプログラムを記憶する記憶資源を含み、プログラム配布サーバのプロセッサが配布対象のプログラムを他の計算機に配布してもよい。また、実施例において、2以上のプログラムが1つのプログラムとして実現されてもよいし、1つのプログラムが2以上のプログラムとして実現されてもよい。
【0036】
実施例において、入力装置521と出力装置522は一般的に知られている種々の装置やデバイスを利用可能とし、ネットワークにアクセス可能とする。メモリ523は、例えば半導体集積回路で構成される記憶装置である。
【0037】
図4は、実社会において本実施例のペット信頼性評価システム52の活用例を説明するための概念図である。
図4の例では、保険会社400がペット信頼性評価システム52の主たる管理者となって情報の集約を行い、各ステークホルダ(不動産会社、動物病院、ペットホテルなど)と信頼性評価データ80を共有する。ここでは、保険会社400が提供する躾保険を例にして主に説明することにする。躾保険とは、ペットの躾状況が保険料や保険金に反映される保険であって、ペットによる家屋等の損害を補填する保険をいうものとする。
【0038】
エンドユーザ(飼い主)20は、保険会社400に躾保険への加入を申し込み加入する(S503)。保険会社400は、プラットフォーム50を管理、運用する(
図4では保険会社400がプラットフォーム50を内包するものとしている)。保険会社400は、エンドユーザ20に、ペット10への躾データ収集用デバイス60の装着を依頼し(S401)、エンドユーザ20はペット10に躾データ収集用デバイス60を装着する(S504)。
【0039】
躾データ収集用デバイス60は、例えば加速度センサや音センサ等であり、ペット10の行動をモニタするために用いられる。センサで得られる情報は、一般に時系列情報であり、ペット10の行動を表すことができる。躾データ収集用デバイス60は、これらを躾データ30の一つであるペットの行動データ30aとしてプラットフォーム50に送信する。
【0040】
プラットフォーム50には、また動物病院410やペットホテル420からペットに関する情報30bを収集する。ペットに関する情報30bは、ペットが所定のサービスを受けている間に、例えば獣医やホテルマンが観察、評価したペット10の行動状態(治療やサービスを受けている間おとなしくしていたか、他のペットとトラブルがあったか、など)に関する情報が含まれる。
【0041】
エンドユーザ20が不動産会社Aと賃貸物件の賃貸契約を締結する(S508)と、不動産会社Aからは物件の状態データ30cがプラットフォーム50に送信される。物件の状態データには、物件の状態の変化(ペット入居前後の変化)や近隣からのクレームの情報などが含まれる。
【0042】
かくして、保険会社400の運用する(あるいは利用可能な)プラットフォーム50には、ペット10に関係する複数種類の異なる主体から躾情報が提供され、躾データ30として蓄積される。ペット信頼性評価システム52は、躾データ30に基づいて信頼性評価を行う。ペットの信頼性評価結果(信頼性評価データ80)は各種のステークホルダがさまざまに利用することができる。例えば、保険会社400では、信頼性評価結果をもとに保険料や保険金を算出することができる。
【0043】
例えば、保険会社400で保険料を算出する場合には、信頼性の低いペットでは保険料を増額する。また、支払うべき保険金を算出する場合には信頼性の低いペットでは保険金を減額する。保険金は、例えばエンドユーザ20が賃貸物件を利用する際の、敷金や退去時の原状復帰費の補填のため支払われる(S607)。
【0044】
例えばエンドユーザ20からペット可能物件への引っ越しの打診があった場合(S501)、不動産会社では信頼性の低いペットでは入居を断ったり、敷金や賃料を増額したりする。
【0045】
動物病院410やペットホテル420でも同様に、ペットの信頼性評価結果に基づいて、料金を調整したり利用可否を判断したりすることができる。
【0046】
上記の例によれば、ペットの信頼性評価は、例えばペットが入居した家屋の入居後の状態が入居前の状態と比較してどれほど損耗しているかに基づいて生成した躾データに加えて、ペットに装着したセンサから得られる時系列情報に基づく躾データを用いて行うというように、複数主体から得た情報を総合して行うので、飼い主(エンドユーザ20)の自己申告情報のみに依存するよりも、はるかに客観的に行うことが可能となる。
【0047】
図5は、実際のビジネスにおいて、エンドユーザ(E/U)20、不動産会社および保険会社を当事者として、ペットの飼い主であるエンドユーザ20がペット10とともに入居できる賃貸物件への引っ越しを検討し、ペット保険に加入して賃貸契約を締結し、入居するまでのプロセスを説明した概念図である。
図4の構成を前提として、保険会社および実施例のプラットフォーム50が係る処理の部分を二重の枠で囲んでいる。
【0048】
時系列に沿って説明する。まずエンドユーザ20が、ペットとともに入居できる賃貸物件への引っ越しを検討する(S501)。エンドユーザ20は、従来からの賃貸物件紹介の枠組み(例えばインターネットで賃貸物件を検索)を用いて、不動産会社からペット可の賃貸物件の紹介を受ける(S502)。
【0049】
エンドユーザ20は、従来から行われている手続きに従って、保険会社とペット保険の契約を行い保険に加入する(S503)。エンドユーザ20が支払う保険料は、ペット10の情報(エンドユーザ20の自己申告やペットとの面談による)や保証内容によって保険会社が従来の方法により定める。保険会社から提供された躾データ収集用デバイス60が、ペット10に装着される(S504)。
【0050】
エンドユーザ20は、従来から行われている手続きに従って、不動産会社に書面にて入居申し込みを行う(S505)。不動産会社は申込書類を審査し(S506)、ペットに関する情報をエンドユーザ20から入手し、必要に応じてペットと面接してペット審査を行う(S507)。
【0051】
従来からの入居審査やペット審査の結果不動産会社が入居に同意した場合、不動産会社とエンドユーザ20は賃貸借契約を締結し(S508)、エンドユーザ20とペット10が賃貸物件に入居することになる(S509)。
【0052】
図6は、
図5のプロセスに引き続いて、実際のビジネスにおいて、エンドユーザ(E/U)20、不動産会社および保険会社を当事者として、ペット10の飼い主であるエンドユーザ20がペット10とともに入居した賃貸物件から退去した後のプロセスを説明した概念図である。保険会社および実施例のプラットフォーム50が係る処理の部分を二重の枠で囲んでいる。
【0053】
時系列に沿って説明する。ペット10とエンドユーザ20が賃貸物件から退去する(S601)。従来からの賃貸借契約や商慣習等に基づいて、不動産会社は賃貸物件の清掃や原状回復を行う(S602)。不動産会社はエンドユーザ20の過失等による賃貸物件の汚損等について、原状回復費用を請求する。敷金等の保証金を預かっている場合にはこれと清算を行う場合もある(S603)。エンドユーザ20は、請求に戻づいて、原状回復費用を不動産会社に支払う(S604)。
【0054】
エンドユーザ20は、保険契約に基づいて保険金の支払いを受けることができる場合、保険会社400に保険金を請求する(S605)。保険金の支払い条件は、保険契約の内容による。例えば、賃貸借契約が許容する範囲外で、ペット10が賃貸物件を汚損したような場合、不動産会社は賃借人の過失として修繕費用をエンドユーザ20に請求する。保険会社400は、このようなペットに起因する修繕費用を補填する費用を保険金として支払うことになる。
【0055】
保険会社では、エンドユーザ20からの請求内容と、プラットフォーム50から得た信頼性評価データ80に基づいて保険金を計算する(S606)。
図5のS504でペット10に装着された躾データ収集用デバイス60からプラットフォーム50には、ペットの行動に関する情報が躾データ30として送信され、躾データ用データベース51に蓄積されている。
【0056】
ペットの行動に関する情報としては、例えば躾データ収集用デバイス60に加速度センサが含まれる場合、ペット10の活動量を示す情報を躾データ30として取得できる。無駄に活動量が多いペットは躾が不十分であることが想定され、従って、賃貸物件を汚損するリスクが高い。このような場合、ペット信頼性評価部525は、信頼性評価データ80として低い信頼性を示す数値を算出する。保険会社は、この信頼性評価データ80に基づいて、エンドユーザ20のペット10に対する躾が不十分であると判定し保険金を減額する。
【0057】
例えば躾データ収集用デバイス60に音センサが含まれる場合、ペット10の立てる騒音や鳴き声を示す情報を躾データ30として取得できる。無駄に吠えるペットは躾が不十分であることが想定され、このような場合も、エンドユーザ20のペット10に対する躾が不十分であると考えられるので、保険金を減額する。
【0058】
以上の手続きで計算された保険金が、保険会社からエンドユーザ20に支払われる(S607)。
【0059】
以上の説明では、躾データ収集用デバイス60から得た情報を躾データ30として利用した例を示した。躾データ収集用デバイス60から得られるペットの行動データとしては、ほかに散歩の時間帯や距離、室内で運動した時間や量、吠えた回数や音量、食事や排せつなどの回数や時間帯などがあり、各種のセンサを利用することでデータの取得が可能である。
【0060】
また他に信頼性評価データ80の根拠となりうる躾データ30として以下のものがある。
【0061】
エンドユーザ20が自己申告する躾データ30としては、ペットの種類や年齢などのプロフィール、予防接種等の実施状況、病歴、しつけに関する情報(しつけ教室など)などがある。このような情報は、例えばエンドユーザ20がペット審査(S507)において申告する。プラットフォーム50へは、エンドユーザ20が直接、あるいは不動産会社の業務支援システム70からデータを送信する。
【0062】
入居中に不動産会社が取得できる躾データ30としては、近隣住民からの苦情(騒音、匂い、その他)、共有部分の使い方(清掃状況等)、他の入居者やペットとのトラブルの履歴がある。これらは、不動産会社の業務支援システム70からプラットフォーム50へデータを送信する。
【0063】
入退去時に不動産会社が取得できる躾データとしては、ペットに関する審査結果、ペット面談での様子(面談を行う場合)、退去時の部屋の様子(入居時と退去時の状態の変化)、退去や原状回復にかかった費用、次に入居した人の心証がある。これらは、不動産会社の業務支援システム70からプラットフォーム50へデータを送信する。
【0064】
保険加入時に保険会社が取得できる躾データとしては、飼い主の支払い能力の有無、ペット保険申し込みの審査結果、ペットの過去の病歴(告知事項)、加入するペット保険の内容がある。これらは、保険会社の業務支援システム(不動産会社の業務支援システム70と同様に構成してよい)からプラットフォーム50へデータを送信する。
【0065】
保険加入中に保険会社が取得できる躾データとしては、保険の利用状況(病気やケガ、賠償履歴)、付帯サービスの利用状況(健康相談など)、加入者特典の利用状況がある。これらは、保険会社の業務支援システムからプラットフォーム50へデータを送信する。
【0066】
その他のペットビジネス事業者として、動物病院、ペットホテル等があり、これらから得られる躾情報としては、以下のものがある。データの収集方法は、不動産会社や保険会社と同様である。
【0067】
動物病院からは、ペットの詳細な健康状態、予防接種等の実施状況、病気やケガの状態、ペットの性格等を躾データとして得ることができる。
【0068】
ペットホテルからは、ペットの簡易な健康状態、利用状況や利用頻度、ペットの性格等を躾データとして得ることができる。
【0069】
その他の躾情報として、ペット同伴可施設の利用状況、ペット用品通販サイトで購入品履歴、ペットを同伴したレンタカーの利用データ等がある。
【0070】
さらに、躾データ30以外の信頼性評価データ80の算出の根拠となる情報として、ペットデータ512、飼い主データ513を考慮することができる。
【0071】
図7は、実際のビジネスにおいて、エンドユーザ20、不動産会社A、不動産会社Bおよび保険会社を当事者として、ペットの飼い主であるエンドユーザ20がペット10とともに入居できる賃貸物件を転居する際のプロセスを説明した概念図である。不動産会社Aおよび不動産会社Bは、異なる不動産会社あるいは異なる賃貸物件を管理している主体である。
図7の事例では、エンドユーザ20はすでに保険会社とペット保険を契約済みであるものとする。
【0072】
本実施例のペット信頼性評価システム52が係るプロセスは、特に二重の枠線で示している。
【0073】
図7のプロセスを時間軸に沿って説明する。エンドユーザ20は不動産会社Aに不動産会社Aが管理する賃貸物件への入居を申し込む(S701)。不動産会社Aでは、通常の入居審査を行い入居が可能となったら、エンドユーザ20はペット10とともに賃貸物件に入居する(S702)。
【0074】
エンドユーザ20がペット10とともに賃貸物件に入居している間、
図5で説明したように、データベース51に躾データ30が収集され、データが更新される(S703)。
【0075】
エンドユーザ20がペット10とともに引っ越しを検討し、新たな賃貸物件を探す(S704)。例えば、不動産会社Bの賃貸物件をネット上で検索し、不動産会社Bからペット可の賃貸物件の紹介を受ける(S705)。
【0076】
エンドユーザ20が不動産会社Bの賃貸物件を気に入ったら、通常のように不動産会社Bに入居を申し込むべく申込書類を提出する(S706)。
【0077】
不動産会社Bは、ペット10をともなったエンドユーザ20の入居を許可するかどうかを審査する必要がある。この際にペット10が賃貸物件に入居した場合の、近隣トラブルや汚損のリスクを考慮しなければならない。このため、不動産会社Bは、ペット信頼性評価システム52から信頼性評価データ80を取得し(S707)、従来からの書類審査に加えて信頼性評価データ80に基づく入居審査を行う(S708)。審査で入居が許可されれば、エンドユーザ20と契約を行う(S709)。
【0078】
新居が決まったエンドユーザ20は、不動産会社Aが管理する賃貸物件を退去する(S710)。不動産会社Aは、エンドユーザ20退去後の賃貸物件をチェックし、修繕の必要な個所については、原状回復等必要な退去後処理を行う(S711)。この場合、不動産会社Aは、次の入居者が住める状態に回復する必要があるため、ペットの居住に伴う汚損や匂いについても対応する必要がある。物件退去時の処理詳細は、
図6で説明したものと同様で良い。
【0079】
原状回復時に、不動産会社Aは例えばエンドユーザ20の入居時と退去時の賃貸物件の状態の変化を、退去時の躾データ30としてプラットフォーム50に登録、更新する(S712)。
【0080】
その後、エンドユーザ20は不動産会社Bが管理する賃貸物件に入居して、引っ越しが完了する(S713)。
【0081】
図5で説明した入居審査と
図7で説明した入居審査の違いは、
図7で説明した入居審査では、前の賃貸物件(不動産会社A管理)の入居中にS703で蓄積された躾データを、次の賃貸物件(不動産会社B管理)の入居審査に利用できる点である。
【0082】
エンドユーザ20は第三者(保険会社のプラットフォーム50)によってペットの信頼性が保証される。そして、信頼性評価を活用したさまざまなサービスを利用できるようになる。上記のように、賃貸物件契約で適切なペットの評価を受けることができるだけでなく、ペット可賃貸用保険への加入や賃貸の敷金割引などを利用できる。
【0083】
不動産会社では、ペット入居時の審査手続きの負担を低減することができる。また、ペットの信頼性評価とペット可物件の入居条件をマッチングさせることで、機会損失を低減することができる。さらに、信頼性評価が高いペットの入居による、汚損や騒音などのトラブル回避を図ることができる。
【0084】
以上のように、躾データ30による信頼性評価データ80を用いることにより、エンドユーザ20や不動産会社は実務上の恩恵を受けることができる。さらに保険会社400では、信頼性評価データ80を活用して、ペット保険の保険料と保険金の算出を最適化することができる。また、信頼性評価データ80を活用した新しい保険商品開発(例えば、賃貸の原状回復費を補填するための新しいペット保険など)を図ることができる。
【0085】
図8は、躾データ用データベース51に格納されるデータの例を示す概念図である。これらのデータは、エンドユーザ20(人間)ではなくペット10(動物)の情報を軸にし、あくまで人間ではなくペットの信頼性評価を行うことを目的とする。
【0086】
ペットデータ512には、ペット10に関するデータが格納される。例えば、ペット10を一意に特定するペットID、種類に関する情報である。その他、色、大きさ等の外見的な特徴を含めてもよい。ペット10は通常複数いるので、ペット毎に図示したデータファイルが作成される。
【0087】
飼い主データ513は、エンドユーザ20(飼い主)に関するデータが格納される。例えば、エンドユーザ20を一意に特定するユーザID、飼育しているペット(ペットID)、個人情報、情報連携可能企業、利用中のサービス等である。その他、ペットに関する知識などの情報を含めてもよい。エンドユーザ20は通常複数いるので、エンドユーザ毎に図示したデータファイルが作成される。
【0088】
躾データ30は、ペットIDに紐づけて各種の躾データが格納されている。躾データ毎にデータの種類を特定する情報と、データ内容が組になって格納される。例えば、ペット10が犬の場合、躾データ30には、犬種、ペットの年齢、ペット保険の利用履歴、利用するサービス名、サービス利用条件(例:賃貸入居時の敷金など)などを含めてもよい。ペット毎に図示したデータファイルが作成される。
【0089】
躾データ30の種類として大きく2つに分類される。第一に時系列による分類である。不動産分野での利用を考えると、例えば入居前に得られる情報、入居中(飼育中)に得られる情報、入居後に得られる情報のように分類される。入居前情報と、入居中情報と、入居後情報といった、時系列の異なる情報で躾情報を構成することで、入居前後に係る情報を網羅的に取得し、躾情報の精度を向上させることができる。
【0090】
第二に関連ステークホルダ別による分類である。躾情報は、ペットの身体機能に関わる情報、ペットの飼い主(エンドユーザ)の個人情報、不動産入退去審査(地域住民の声)に関する情報といった、複数のステークホルダによって提供される情報によって構成する。エンドユーザ20の自己申告情報だけでは、客観的な妥当性が得られないが、異なる分野のステークホルダから網羅的に情報を取得することで、躾情報の客観的妥当性を担保することができる。
【0091】
例えばペット10が犬の場合、エンドユーザ20からは散歩の頻度が、エンドユーザまたは躾教室からは「おて」等のできる芸の情報が、ペットホテルからは他のペットとのトラブルの有無が、不動産会社からは、近隣からの苦情の有無や内容が、躾情報として入手できる。これらの複数の情報を用いて、信頼性評価データ80を算出する。
【0092】
評価指標マスタデータ511は、躾データ30から信頼性評価データ80を計算するための関数に相当するデータである。一般には、躾データ30を変数とし、当該変数を用いた計算式および係数を含む。例えば躾データの種類、躾データの種類ごとの重みづけ(係数)、質的に表現された躾データにおいてはその数値変換値などが含まれる。評価指標マスタデータ511は、ペットの行動に詳しい専門家や、保険分野、不動産分野の専門家などが協力して作成することが好ましい。作成した評価指標マスタデータ511は、あらかじめ躾データ用データベース51に格納しておく。
【0093】
信頼性評価データ80は、ペット信頼性評価部525が躾データ30と評価指標マスタデータ511を用いて計算した結果である。ペットIDに紐づけて、信頼性評価を表す評価値(数値)を格納する。さらに、評価に利用したデータ、評価実施日等のデータを含めてもよい。ペット毎に図示したデータファイルが作成される。
【0094】
評価結果活用状況データ514は、信頼性評価データ80を躾情報利用企業90に提供した際の状況に関するデータである。データの内容としては、躾情報利用企業90を一意に特定する企業ID、信頼性評価データ80が利用されるサービスを一意に特定するサービスID、利用した信頼性評価データ80を特定する情報、利用目的、利用結果などである。評価結果活用状況データ514は、例えば躾情報利用企業90から信頼性評価データ80を要求するためにプラットフォーム50に送られるリクエストやデータ利用後のフィードバックデータに含まれており、信頼性評価データ80を躾情報利用企業90に提供する毎に取得、蓄積される。企業毎に図示したデータファイルが作成される。
【0095】
図9は、エンドユーザ20がプラットフォーム50の利用を開始し、躾データ30の登録および更新を開始する処理例を説明する流れ図である。
【0096】
まず、エンドユーザ20が躾情報提供企業A(例えば不動産会社。以降、企業Aという)との契約を契機として、自分に関する情報とペットに関する情報(ペットの種類や年齢、病歴、保険加入状況などを)を企業Aに伝える(S901)。電子的に行う場合には、エンドユーザ20の端末から、企業Aの業務支援システム70に送信すればよい。契約は、例えばペット10を連れて賃貸物件へ入居したいエンドユーザ20が、不動産会社と取り交わす賃貸借契約(
図5、S508)である。
【0097】
企業Aはエンドユーザ20から受けとった情報と、自社で管理しているエンドユーザ20やペット10に関する情報(利用サービス名、入居する物件、入居審査(
図5、S504~S507)の結果等の情報)を、企業Aの業務支援システム70からプラットフォーム50へ登録する(S902)。また、ペット10のリアルタイムな情報が取得できるよう、入居時の条件としてペットの躾データ収集用デバイス60の利用を依頼する(保険会社との契約で実施済み(
図5、S504)であれば省略可能)。
【0098】
プラットフォーム50は企業Aから登録された情報をもとに、ペットデータ512のデータテーブル、飼い主データ513のデータテーブル、躾データ30のデータテーブルを新規に作成する(S903)。
【0099】
プラットフォーム50は、エンドユーザ20が情報の提供を許可したシステム利用中の企業(企業B,C,D...)へ新規に作成したデータを連携する(S904)。このために、例えばエンドユーザ20の端末から、情報の提供を許可する企業の情報を企業Aの業務支援システム70に送信する、あるいは、直接これらの情報をプラットフォーム50に登録すればよい。プラットフォーム50は、情報の共有を許可する企業の情報(例えば企業ID)をユーザIDと紐づけて、ペット信頼性評価データ共有部526に登録する。
【0100】
情報の共有が許可された企業(保険会社、動物病院、ペットホテルなどの企業)は、プラットフォーム50のペット信頼性評価データ共有部526にリクエストを送信することによって、ペットに関する躾データ30や信頼性評価データ80を利用することができる。また、エンドユーザ20が許可すれば、エンドユーザ20に関する他の情報例えば、新規に賃貸契約を行った旨が情報共有される。
【0101】
エンドユーザ20や各企業A,B,C,Dなどのステークホルダは、躾データ30に該当する情報を取得した場合は、躾データ用データベース51の躾データ30の情報を新規に作成し、あるいは更新する(S905)。例えば、情報を連携された保険会社は、エンドユーザ20が保険を利用した際に、エンドユーザ20から提供されたペット10の情報や保険の利用状況について躾データ30としてプラットフォーム50へ登録する。
【0102】
図10は、ペット信頼性評価システム52のペット信頼性評価部525が、躾データ用データベース51の躾データ30と評価指標マスタデータ511を用いて、信頼性評価データ80を生成する処理を説明する流れ図である。
【0103】
この処理は、例えばペット信頼性評価部525が定期的に、あるいは、所定の任意のタイミングでバッチ処理を行うことを想定する。
【0104】
ペット信頼性評価部525は、躾データ用データベース51から躾データ30を読み出す。また、躾データ用データベース51から信頼性評価データ80を計算するための評価指標マスタデータ511を読み出す。信頼性評価データ80が複数種類ある場合は、評価指標マスタデータ511はそれぞれに対して存在する(通常は信頼性評価データ80は1種類で良い)。躾データ30はペット10毎に記録されるので、ペット毎の躾データ30と信頼性評価データ80に基づく計算により、ペット毎に存在する躾データ30の各レコードに対して信頼性評価値が算出される(S1001)。
【0105】
ペットの信頼性評価値と使用した躾データの情報を信頼性評価データ80として信頼性評価データテーブルへ登録する(S1002)。作成される信頼性評価データ80の例としては、例えば点数を算出(例:80/100点)するものがある。あるいは、傾向情報として各事象の発生確率を算出してもよい(例:騒音の苦情が発生する確率20%)。いずれも数値データとして扱われる値である。
【0106】
図11は、ペット信頼性評価部525が、躾データ30と評価指標マスタデータ511を用いて、信頼性評価データ80を計算する原理を説明する表図である。
【0107】
躾データ30は一匹の特定のペット10に関するデータであり、データベース内ではペットIDと紐づけられている。
図10の例では、躾データ30として、「カテゴリ(分類)」、「項目名」のように階層化されているが、一例でありデータ構造は任意である。各「項目名」に対して「内容」が対応している。内容は、「90%」のように数値で表されるものもあり、また、「増えていない」のように数値でない形で表現されるものもある。
【0108】
評価指標マスタデータ511は、「内容」の情報を所定の数値に変換するための「得点」のデータを持つ。「増えていない」のような数値でない内容は、評価指標マスタデータ511により数値に変換される。「90%」のように数値で表されるものは、そのまま、あるいは適宜別の数値に換算して利用する。
【0109】
図11の例では、複数の項目名それぞれに対応する「内容」から「得点」を計算し、「評価における項目別の重み」を用いて得点に重みづけし、複数の得点を加算することで最終的な信頼性評価値を得ている。単一の項目から信頼性評価値を得ることも可能だが、本実施例の場合には、異なるリソースから複数種の躾データを得、複数の躾データから信頼性評価値を生成することにより、客観的妥当性のある信頼性評価値(信頼性評価データ80)を得ることができる。
【0110】
図11を用いて、得られた信頼性評価データ80の活用の具体例を説明する。
図11は、過去に賃貸物件に入居していたことがある犬について、躾情報をもとにした信頼性評価値算出方法の例を示している。この例では、「過去に入居していた物件の入退去時の比較」カテゴリにおいて、「床の傷」と「消臭作業」の項目が存在する。この項目はペット10が入居した賃貸物件において、ペット入居前とペット入居後の状態の変化を表す情報である。この躾データ30は、当該賃貸物件を管理していた不動産会社A(躾情報提供企業40)から提供される。床の傷が増えておらず匂いの変化がほとんどないこの例では、ペット信頼性評価部525では、得点はペットの信頼性が高くなるように算出され、最終的にペットの信頼性が高いことを示す信頼性評価値が算出される。
【0111】
エンドユーザ20に信頼性評価データ80の利用を許可されている不動産会社B(躾情報利用企業90)は、同じエンドユーザ20から賃貸の打診を受けた場合、プラットフォーム50からエンドユーザ20(ペット10)の信頼性評価データ80を入手し、信頼性評価値と各レコードの情報をもとに、信頼できるペットかどうかを判断することができる。
【0112】
信頼できるペットであると判断した場合には、例えばペット不可物件の条件付き貸出を行う。あるいは、ペット可物件での敷金の値下げを行う。
【0113】
上記実施例によれば、信頼できるペットを判別することで、審査手続きの省略やペットに起因して発生するトラブルの回避を実現することができる。信頼性の判別においては、入力装置の利用者の属性を制限せず複数種類の躾データを取得することで、ペットの飼い主という当事者からの申告よりも信頼できる客観的な信頼性の評価が行える。複数の主体からの情報を集約して判断することができるので、客観性のある判断が可能となる。効率の良い経済活動が実現可能となるため、消費エネルギーが少なく、炭素排出量を減らし、地球温暖化を防止、持続可能な社会の実現に寄与することができる。
【符号の説明】
【0114】
ペット10、エンドユーザ20、躾データ30、躾情報提供企業40、プラットフォーム50、躾データ用データベース51、ペット信頼性評価システム52、業務支援システム70、信頼性評価データ80