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特開2023-128075冷却モジュール、前処理装置および前処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128075
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】冷却モジュール、前処理装置および前処理方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/42 20060101AFI20230907BHJP
【FI】
G01N1/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022032142
(22)【出願日】2022-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【弁理士】
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【弁理士】
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】日野岳 要
【テーマコード(参考)】
2G052
【Fターム(参考)】
2G052DA32
2G052EB13
2G052GA27
2G052HC04
2G052HC22
2G052JA08
2G052JA20
(57)【要約】
【課題】試料の前処理を適切に行うことが可能な冷却モジュール、前処理装置および前処理方法を提供する。
【解決手段】
冷却モジュール100は、基台部10、冷却面部20および蝶番部30を備える。冷却面部20は、第1の姿勢にある状態において、上面に載置された処理対象を冷却する。蝶番部30は、基台部10に取り付けられる。蝶番部30は、冷却面部20を第1の姿勢と、第2の姿勢との間で回動可能に支持する。第2の姿勢においては、冷却面部20は、第1の姿勢よりも水平面に対して大きく傾斜する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台部と、
第1の姿勢にある状態において、上面に載置された処理対象を冷却する冷却面部と、
前記基台部に取り付けられ、前記冷却面部を前記第1の姿勢と、前記第1の姿勢よりも水平面に対して大きく傾斜する第2の姿勢との間で回動可能に支持する蝶番部とを備える、冷却モジュール。
【請求項2】
前記第1の姿勢は水平姿勢である、請求項1記載の冷却モジュール。
【請求項3】
前記蝶番部は、トルクヒンジである、請求項1または2記載の冷却モジュール。
【請求項4】
前記冷却面部は、前記上面に凹部を有し、
前記凹部内には、前記冷却面部を貫通する孔部が形成される、請求項1~3のいずれか一項に記載の冷却モジュール。
【請求項5】
前記孔部は、前記蝶番部の回動軸に直交する方向において、前記蝶番部に最も近い前記凹部内の部分に位置する、請求項4記載の冷却モジュール。
【請求項6】
処理対象に前処理を行う前処理装置であって、
請求項1~5のいずれか一項に記載の冷却モジュールと、
前記冷却モジュールの前記冷却面部を前記第1の姿勢と前記第2の姿勢との間で回動させるアームとを備える、前処理装置。
【請求項7】
処理対象に前処理を行う前処理装置であって、
請求項4または5記載の冷却モジュールと、
前記冷却モジュールにおける前記冷却面部の前記孔部に捕集される液体を吸引するポンプとを備える、前処理装置。
【請求項8】
前記冷却モジュールの前記冷却面部を前記第1の姿勢と前記第2の姿勢との間で回動させるアームをさらに備える、請求項7記載の前処理装置。
【請求項9】
前記アームを含み、当該アームにより前記処理対象を搬送する搬送部をさらに備える、請求項6または8記載の前処理装置。
【請求項10】
処理対象を冷却する冷却モジュールの基台部に取り付けられた蝶番部により支持された冷却面部が第1の姿勢になるように前記蝶番部を回動させることと、
前記冷却面部の上面に前記処理対象を載置することと、
前記冷却面部から前記処理対象を搬出することと、
前記蝶番部により支持された前記冷却面部が前記第1の姿勢よりも水平面に対して大きく傾斜する第2の姿勢になるように前記蝶番部を回動させることとを含む、前処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却モジュール、前処理装置および前処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クロマトグラフ等の分析装置を用いた試料の分析においては、前処理装置により試料の前処理が行われることがある。例えば、特許文献1に記載された試料前処理装置においては、試料が収容された複数のバイアルを保持するバイアルラックが温調プレート上に載置される。これにより、各バイアルに収容された試料が冷却される。その後、試料は搬送装置機構により複数の処理ユニットに順次搬送される。これにより、試料に所定の前処理が順次行われる。前処理後の試料は、搬送装置機構により分析装置のオートサンプラに搬送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2020/090159号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の試料前処理装置においては、温調プレートに結露が発生することにより、温調プレート上に載置されたバイアルラックに水滴が付着する。そのため、温調プレートからバイアルラックが搬出される際に、バイアルラックから他の処理ユニットに載置されたマイクロプレート等に水滴が落下すると、汚染による前処理不良が発生する。また、結露による水滴が温調プレートに溜まると、温調プレートに温度ムラが発生する。この場合、複数のバイアルの試料を均一に冷却することができない。
【0005】
本発明の目的は、試料の前処理を適切に行うことが可能な冷却モジュール、前処理装置および前処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、基台部と、第1の姿勢にある状態において、上面に載置された処理対象を冷却する冷却面部と、前記基台部に取り付けられ、前記冷却面部を前記第1の姿勢と、前記第1の姿勢よりも水平面に対して大きく傾斜する第2の姿勢との間で回動可能に支持する蝶番部とを備える、冷却モジュールに関する。
【0007】
本発明の他の態様は、処理対象に前処理を行う前処理装置であって、上記の冷却モジュールと、前記冷却モジュールの前記冷却面部を前記第1の姿勢と前記第2の姿勢との間で回動させるアームとを備える、前処理装置に関する。
【0008】
本発明のさらに他の態様は、処理対象に前処理を行う前処理装置であって、上記の冷却モジュールと、前記冷却モジュールにおける前記冷却面部の前記孔部に捕集される液体を吸引するポンプとを備える、前処理装置に関する。
【0009】
本発明のさらに他の態様は、処理対象を冷却する冷却モジュールの基台部に取り付けられた蝶番部により支持された冷却面部が第1の姿勢になるように前記蝶番部を回動させることと、前記冷却面部の上面に前記処理対象を載置することと、前記冷却面部から前記処理対象を搬出することと、前記蝶番部により支持された前記冷却面部が前記第1の姿勢よりも水平面に対して大きく傾斜する第2の姿勢になるように前記蝶番部を回動させることとを含む、前処理方法に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、試料の前処理を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施の形態に係る前処理装置の概略構成を示すブロック図である。
図2図1の冷却モジュールを示す外観斜視図である。
図3図2の冷却モジュールを示す平面図である。
図4】冷却モジュールの動作を説明するための図である。
図5】冷却モジュールの動作を説明するための図である。
図6図1の制御装置の構成を示す図である。
図7】制御装置の制御動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(1)前処理装置の構成
以下、本発明の実施の形態に係る冷却モジュール、前処理装置および前処理方法について図面を用いて説明する。図1は、本発明の一実施の形態に係る前処理装置の概略構成を示すブロック図である。図1に示すように、前処理装置200は、冷却モジュール100、複数の処理モジュール110、搬送部120、ポンプ130および制御装置140を備える。
【0013】
冷却モジュール100には、試料に添加されるべき試薬を収容するプレートが載置される。冷却モジュール100は、載置されたプレートを冷却する。これにより、プレートに収容された試薬が所定の温度に冷却される。複数の処理モジュール110は、処理対象の試料に異なる前処理を行う。前処理は、分注、試薬の添加、撹拌およびろ過等を含む。搬送部120は、試薬または試料が収容されたプレートを冷却モジュール100および複数の処理モジュール110の間で搬送する。これにより、試料に所定の前処理が順次行われる。
【0014】
ポンプ130は、例えばチューブポンプであり、冷却モジュール100において結露により発生した水滴の除去に用いられる。冷却モジュール100の詳細な構成については後述する。制御装置140は、例えばCPU(中央演算処理装置)およびメモリ、またはマイクロコンピュータを含み、冷却モジュール100、各処理モジュール110、搬送部120およびポンプ130の動作を制御する。
【0015】
(2)冷却モジュールの構成
図2は、図1の冷却モジュール100を示す外観斜視図である。図2に示すように、冷却モジュール100は、基台部10、冷却面部20、蝶番部30、冷却部40およびファン50を含む。本例では、基台部10は、内部に空間が形成された略直方体形状のケーシングであり、上部に開口を有する。
【0016】
冷却面部20は、略矩形状の平板部材である。冷却面部20の上面の中央部には凹部21が形成される。これにより、冷却面部20の上面の縁部は中央部よりも上方に突出する。冷却面部20の上面の縁部には、試料または試薬等の処理対象が収容されたプレートが載置される。冷却面部20は、上面の縁部に載置されたプレートを冷却する。
【0017】
蝶番部30は、回動軸31を有する。蝶番部30は、回動軸31が基台部10の上部の開口を取り囲む上縁部の一辺に沿って延びる状態で、基台部10の上縁部に設けられる。蝶番部30は、回動軸31を中心に冷却面部20を第1の姿勢と第2の姿勢との間で回動可能に支持する。第2の姿勢においては、冷却面部20は、第1の姿勢よりも水平面に対して大きく傾斜する。本例では、第1の姿勢は略水平姿勢である。
【0018】
冷却部40およびファン50は、基台部10の内部の空間に収容される。本例では、冷却部40は、ペルチェ素子であり、互いに反対方向を向く吸熱面と発熱面とを有する。冷却部40は、吸熱面が冷却面部20の下面と接する状態で、ネジ等により冷却面部20に取り付けられる。冷却部40が動作することにより、冷却面部20が冷却される。ファン50は、冷却部40の発熱面と近接するように保持部材により冷却面部20に保持される。ファン50が動作することにより、冷却部40の発熱面から発生する熱が放散される。
【0019】
図3は、図2の冷却モジュール100を示す平面図である。図3に示すように、冷却面部20の凹部21内には、上下方向に貫通する孔部22が形成される。冷却面部20の下面には、孔部22に連なるようにチューブ131(後述する図4参照)の一端部が接続される。チューブ131の他端部は、図1のポンプ130に接続される。孔部22は、蝶番部30の回動軸31に直交する方向において、蝶番部30に最も近い凹部21内の部分に位置する。この位置は、冷却面部20が第2の姿勢にあるときに、凹部21内において最も低くなる位置である。
【0020】
本例では、冷却面部20は、平面視において矩形状を有する。凹部21は、平面視において4つの外縁21a~21dにより区画される台形状を有する。外縁21a,21bは、互いに対向し、冷却面部20の長辺に平行に延びる。外縁21bは、外縁21aよりも長い。外縁21cは、冷却面部20の短辺に平行に延び、外縁21aの一端部と外縁21bの一端部とを接続する。外縁21dは、外縁21aの他端部と外縁21bの他端部とを接続する。外縁21dは、外縁21cよりも蝶番部30の近くに位置する。
【0021】
この構成においては、凹部21の外縁21bと外縁21dとにより成される角部の近傍が、蝶番部30の回動軸31に直交する方向において、凹部21における蝶番部30に最も近い部分となる。したがって、本例では、台形状の凹部21において、外縁21bと外縁21dとにより成される角部の近傍に孔部22が形成される。
【0022】
(3)冷却モジュールの動作
図4および図5は、冷却モジュール100の動作を説明するための図である。図4に示すように、搬送部120は、一対のアーム121を有する。搬送部120は、冷却面部20が第1の姿勢にあるときに、処理対象が収容されたプレート210の側面を一対のアーム121により把持してプレート210を冷却モジュール100に搬入し、プレート210を冷却面部20に載置する。この状態で、冷却モジュール100が動作することにより、プレート210および処理対象が冷却される。
【0023】
ここで、結露により冷却面部20の凹部21に水滴が付着することがある。この場合でも、凹部21はプレート210とは接触しないので、プレート210の底面には水滴がほとんど付着しない。冷却の終了後、搬送部120は、プレート210の側面をアーム121により把持してプレート210を冷却モジュール100から搬出し、プレート210を他の処理モジュール110(図1)に搬送する。
【0024】
図5に示すように、搬送部120は、冷却モジュール100からプレート210を搬出した後、冷却面部20の側面をアーム121により把持して上方に引き上げる。この場合、冷却面部20は、蝶番部30の回動軸31を中心に回動することにより、水平面に対して傾斜する第2の姿勢になる。なお、本例では、蝶番部30は、フリーストップ機能を有するトルクヒンジである。したがって、搬送部120による冷却面部20の把持が解除された後でも、冷却面部20の姿勢が維持される。
【0025】
冷却面部20が第2の姿勢にあるときには、孔部22は、凹部21内において最も低くなる部分に位置する。そのため、凹部21に付着した水滴は、重力により凹部21の底面、外縁21a、外縁21bおよび外縁21cに沿って孔部22に導かれ、孔部22に捕集される。第2の姿勢にあるときの水平面に対する冷却面部20の角度は、例えば10度以上90度以下であるが、凹部21に付着した水滴を孔部22に捕集可能である限り当該角度は特に限定されない。
【0026】
孔部22に捕集された水滴は、チューブ131を通してポンプ130により吸引された後、廃棄される。これにより、凹部21に付着した水滴を、孔部22を通して除去することができる。凹部21から水滴が除去された後、搬送部120は、冷却面部20の側面をアーム121により把持して下方に引き下げる。この場合、冷却面部20は、蝶番部30の回動軸31を中心に回動することにより、略水平に基台部10の上部に載置される第1の姿勢となる。
【0027】
(4)制御部
図6は、図1の制御装置140の構成を示す図である。図6に示すように、制御装置140は、機能部として、搬送制御部141、回動制御部142、処理制御部143およびポンプ制御部144を含む。制御装置140のCPUがメモリに記憶された前処理装置200の制御プログラムを実行することにより、制御装置140の機能部が実現される。制御装置140の機能部の一部または全部が電子回路等のハードウエアにより実現されてもよい。
【0028】
搬送制御部141は、試薬または試料が収容されたプレートを冷却モジュール100および複数の処理モジュール110の間で搬送するように搬送部120の動作を制御する。回動制御部142は、冷却モジュール100の冷却面部20(図2)が第1の姿勢と第2の姿勢との間で回動するように搬送部120の動作を制御する。
【0029】
処理制御部143は、試薬の冷却が実行されるように冷却部40またはファン50等の冷却モジュール100の各部の動作を制御する。また、処理制御部143は、試料の前処理が実行されるように各処理モジュール110の動作を制御する。ポンプ制御部144は、冷却モジュール100の冷却面部20の孔部22(図3)に捕集された水滴を、チューブ131を通して吸引するようにポンプ130の動作を制御する。
【0030】
図7は、制御装置140の制御動作の一例を示すフローチャートである。以下、図2の冷却モジュール100、図6の制御装置140および図7のフローチャートを用いて、冷却モジュール100に関連する制御装置140の制御動作を説明する。なお、初期状態では、冷却面部20は第1の姿勢であるとする。
【0031】
まず、搬送制御部141は、搬送部120を制御することによりプレート210を冷却モジュール100に搬入する(ステップS1)。搬入されたプレート210は、冷却モジュール100の冷却面部20の上面の縁部に載置される。次に、処理制御部143は、冷却モジュール100の動作を制御することにより、ステップS1で搬入されたプレート210を冷却する(ステップS2)。この状態で、所定時間が経過することにより、プレート210の冷却が終了する。
【0032】
続いて、搬送制御部141は、搬送部120を制御することによりプレート210を冷却モジュール100から搬出する(ステップS3)。搬出されたプレート210は、他の処理モジュール110に搬送される。その後、回動制御部142は、搬送部120を制御することにより、冷却面部20を第2の姿勢に回動する(ステップS4)。この場合、結露により冷却面部20の凹部21に付着した水滴が孔部22に捕集される。
【0033】
ポンプ制御部144は、ポンプ130を制御することにより、孔部22に捕集された水滴をチューブ131を通して吸引する(ステップS5)。吸引された水滴は、外部に排出される。最後に、回動制御部142は、搬送部120を制御することにより、冷却面部20を第1の姿勢に回動し(ステップS6)、ステップS1に戻る。
【0034】
上記の制御装置140の制御動作においては、冷却モジュール100の冷却部40およびファン50はステップS2の期間にオンにされるが、実施の形態はこれに限定されない。冷却部40またはファン50は、ステップS2よりも前の時点でオンにされてもよいし、ステップS2よりも後の時点でオフにされてもよいし、常時オンにされていてもよい。同様に、ポンプ130は、ステップS5の期間にオンにされるが、実施の形態はこれに限定されない。ファン50は、ステップS5よりも前の時点でオンにされてもよいし、ステップS5よりも後の時点でオフにされてもよいし、常時オンにされていてもよい。
【0035】
(5)効果
本実施の形態に係る冷却モジュール100においては、プレート210を第1の姿勢の冷却面部20の上面に載置することにより、プレート210を冷却することができる。冷却面部20には、結露により水滴が付着することがある。この場合でも、冷却面部20を第2の姿勢にすることにより、冷却面部20に付着した水滴が除去される。そのため、水滴が冷却面部20に溜まることが防止される。
【0036】
この構成によれば、結露により発生した水滴がプレート210に付着しない。したがって、プレート210を冷却モジュール100から搬出した場合でも、処理対象から水滴が落下することがなく、他の処理対象を汚染することもない。また、水滴の付着に起因する冷却面部20の温度ムラが発生しないので、プレート210を適切に冷却することが可能になる。その結果、処理モジュール110において試料の前処理を適切に行うことができる。また、水滴の付着に起因する冷却モジュール100または前処理装置200の故障を防止することができる。
【0037】
第1の姿勢時には、冷却面部20は略水平になるので、処理対象を冷却面部20の上面に安定的に載置することができる。そのため、処理対象を適切に冷却することができる。
【0038】
蝶番部30の回動軸31に直交する方向において、蝶番部30に最も近い凹部21内の部分には、冷却面部20を貫通する孔部22が形成される。この場合、冷却面部20が第2の姿勢であるときに、孔部22が凹部21内において最も低くなる部分に位置する。したがって、冷却面部20を第2の姿勢にすることにより、冷却面部20に付着した水滴を、孔部22を通してより確実に除去することができる。また、孔部22に捕集される液体はポンプ130により吸引されるので、水滴を効率的に除去することができる。
【0039】
冷却面部20の回動は、プレート210を搬送する搬送部120のアーム121により行われる。そのため、冷却モジュール100の冷却面部20を回動させるための構成を別途設ける必要がない。これにより、前処理装置200のコストを低減させることができる。
【0040】
(6)他の実施の形態
(a)上記実施の形態において、冷却モジュール100は前処理装置200の一部として設けられるが、実施の形態はこれに限定されない。冷却モジュール100は、前処理装置200とは別個に単体で設けられてもよい。
【0041】
(b)上記実施の形態において、冷却面部20は第1の姿勢時に略水平になるが、実施の形態はこれに限定されない。冷却面部20の上面にプレート210を安定的に載置可能である限り、冷却面部20は、第1の姿勢時にわずかに水平面に対して傾斜していてもよい。
【0042】
(c)上記実施の形態において、蝶番部30はフリーストップ機能を有するトルクヒンジであるが、実施の形態はこれに限定されない。冷却面部20の姿勢が搬送部120のアーム121等により維持される場合には、蝶番部30はフリーストップ機能を有さなくてもよい。
【0043】
(d)上記実施の形態において、孔部22は冷却面部20が第2の姿勢であるときに凹部21内の最も低くなる部分に形成されるが、実施の形態はこれに限定されない。冷却面部20に付着した水滴を除去可能である限り、孔部22は冷却面部20の他の位置に形成されてもよいし、凹部21および孔部22は形成されなくてもよい。あるいは、前処理装置200にポンプ130が設けられなくてもよい。
【0044】
(e)上記実施の形態において、冷却面部20の回動はプレート210を搬送する搬送部120のアーム121により行われるが、実施の形態はこれに限定されない。冷却面部20の回動は、プレート210を搬送する搬送部120のアーム121とは別に設けられたアームにより行われてもよい。あるいは、冷却面部20の回動は、冷却モジュール100または前処理装置200に設けられたアクチュエータにより行われてもよいし、手動で行われてもよい。
【0045】
(7)態様
上記の複数の例示的な実施の形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0046】
(第1項)一態様に係る冷却モジュールは、
基台部と、
第1の姿勢にある状態において、上面に載置された処理対象を冷却する冷却面部と、
前記基台部に取り付けられ、前記冷却面部を前記第1の姿勢と、前記第1の姿勢よりも水平面に対して大きく傾斜する第2の姿勢との間で回動可能に支持する蝶番部とを備えてもよい。
【0047】
この冷却モジュールにおいては、処理対象を第1の姿勢の冷却面部の上面に載置することにより、処理対象を冷却することができる。冷却面部には、結露により水滴が付着することがある。この場合でも、冷却面部を第2の姿勢にすることにより、冷却面部に付着した水滴が除去される。そのため、水滴が冷却面部に溜まることが防止される。
【0048】
この構成によれば、結露により発生した水滴が処理対象に付着しない。したがって、処理対象を冷却モジュールから搬出した場合でも、処理対象から水滴が落下することがなく、他の処理対象を汚染することもない。また、水滴の付着に起因する冷却面部の温度ムラが発生しないので、処理対象を適切に冷却することが可能になる。その結果、試料の前処理を適切に行うことができる。
【0049】
(第2項)第1項に記載の冷却モジュールにおいて、
前記第1の姿勢は水平姿勢であってもよい。
【0050】
この場合、冷却面部を第1の姿勢にすることにより、処理対象を冷却面部の上面に安定的に載置することができる。これにより、処理対象をより適切に冷却することができる。
【0051】
(第3項)第1項または第2項に記載の冷却モジュールにおいて、
前記蝶番部は、トルクヒンジであってもよい。
【0052】
この場合、冷却面部を任意の姿勢で容易に維持することができる。
【0053】
(第4項)第1項~第3項のいずれか一項に記載の冷却モジュールにおいて、
前記冷却面部は、前記上面に凹部を有し、
前記凹部内には、前記冷却面部を貫通する孔部が形成されてもよい。
【0054】
この場合、冷却面部に付着した水滴を、孔部を通して容易に除去することができる。
【0055】
(第5項)第4項に記載の冷却モジュールにおいて、
前記孔部は、前記蝶番部の回動軸に直交する方向において、前記蝶番部に最も近い前記凹部内の部分に位置してもよい。
【0056】
この場合、冷却面部が第2の姿勢であるときに、孔部が凹部内において最も低くなる部分に位置する。そのため、冷却面部に付着した水滴を、孔部を通してより確実に除去することができる。
【0057】
(第6項)前処理装置は、
処理対象に前処理を行う前処理装置であって、
第1項~第5項のいずれか一項に記載の冷却モジュールと、
前記冷却モジュールの前記冷却面部を前記第1の姿勢と前記第2の姿勢との間で回動させるアームとを備えてもよい。
【0058】
この前処理装置においては、アームが冷却モジュールの冷却面部を第1の姿勢に回動させることにより、冷却面部の上面に載置された処理対象を冷却することができる。また、アームが冷却面部を第2の姿勢に回動させることにより、冷却面部に付着した水滴が除去される。これにより、処理対象を適切に冷却することが可能になる。その結果、試料の前処理を適切に行うことができる。
【0059】
(第7項)前処理装置は、
処理対象に前処理を行う前処理装置であって、
第4項または第5項に記載の冷却モジュールと、
前記冷却モジュールにおける前記冷却面部の前記孔部に捕集される液体を吸引するポンプとを備えてもよい。
【0060】
この前処理装置においては、冷却面部に付着した水滴を、孔部を通してポンプにより効率的に除去することができる。これにより、処理対象を適切に冷却することが可能になる。その結果、試料の前処理を適切に行うことができる。
【0061】
(第8項)第7項に記載の前処理装置は、
前記冷却モジュールの前記冷却面部を前記第1の姿勢と前記第2の姿勢との間で回動させるアームをさらに備えてもよい。
【0062】
この場合、アームが冷却モジュールの冷却面部を第1の姿勢に回動させることにより、冷却面部の上面に載置された処理対象を冷却することができる。また、アームが冷却面部を第2の姿勢に回動させることにより、冷却面部に付着した水滴が除去される。これにより、処理対象を適切に冷却することが可能になる。その結果、試料の前処理を適切に行うことができる。
【0063】
(第9項)第6項または第8項に記載の前処理装置は、
前記アームを含み、当該アームにより前記処理対象を搬送する搬送部をさらに備えてもよい。
【0064】
この場合、処理対象を搬送する搬送部のアームにより、冷却モジュールの冷却面部を回動させることができる。そのため、冷却モジュールの冷却面部を回動させるための構成を別途設ける必要がない。これにより、前処理装置のコストを低減させることができる。
【0065】
(第10項)前処理方法は、
処理対象を冷却する冷却モジュールの基台部に取り付けられた基台部により支持された冷却面部が第1の姿勢になるように前記基台部を回動させることと、
前記冷却面部の上面に前記処理対象を載置することと、
前記冷却面部から前記処理対象を搬出することと、
前記基台部により支持された前記冷却面部が前記第1の姿勢よりも水平面に対して大きく傾斜する第2の姿勢になるように前記基台部を回動させることとを含んでもよい。
【0066】
この前処理方法においては、冷却モジュールの冷却面部を第1の姿勢に回動させることにより、冷却面部の上面に載置された処理対象を冷却することができる。また、冷却面部を第2の姿勢に回動させることにより、冷却面部に付着した水滴が除去される。これにより、処理対象を適切に冷却することが可能になる。その結果、試料の前処理を適切に行うことができる。
【符号の説明】
【0067】
10…基台部,20…冷却面部,21…凹部,21a~21d…外縁,22…孔部,30…蝶番部,31…回動軸,40…冷却部,50…ファン,100…冷却モジュール,110…処理モジュール,120…搬送部,121…アーム,130…ポンプ,131…チューブ,140…制御装置,141…搬送制御部,142…回動制御部,143…処理制御部,144…ポンプ制御部,200…前処理装置,210…プレート
図1
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図3
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図7