IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社昭電の特許一覧 ▶ 株式会社NTTファシリティーズの特許一覧

<>
  • 特開-雷サージ保護装置 図1
  • 特開-雷サージ保護装置 図2
  • 特開-雷サージ保護装置 図3
  • 特開-雷サージ保護装置 図4
  • 特開-雷サージ保護装置 図5
  • 特開-雷サージ保護装置 図6A
  • 特開-雷サージ保護装置 図6B
  • 特開-雷サージ保護装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023012809
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】雷サージ保護装置
(51)【国際特許分類】
   H02H 3/24 20060101AFI20230119BHJP
   H02H 3/10 20060101ALI20230119BHJP
   H02H 7/00 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
H02H3/24 Q
H02H3/10 A
H02H7/00 C
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021116510
(22)【出願日】2021-07-14
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】000145954
【氏名又は名称】株式会社昭電
(71)【出願人】
【識別番号】593063161
【氏名又は名称】株式会社NTTファシリティーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】垣内 健介
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 淳
(72)【発明者】
【氏名】小田 康雄
【テーマコード(参考)】
5G004
5G053
【Fターム(参考)】
5G004AA01
5G004AB01
5G004BA07
5G004CA04
5G004DC10
5G004DC11
5G004DC12
5G053AA01
5G053AA10
5G053AA12
5G053BA08
5G053CA01
5G053DA01
5G053DA03
5G053EB05
5G053EC01
5G053EC02
5G053EC05
5G053FA01
(57)【要約】
【課題】停電時の誤検出を防止する。
【解決手段】雷サージ保護装置は、一端が接地される非線形素子の他端側に非線形素子に対して直列に設けられ、非線形素子の故障時に非線形素子を電源線路から切り離すものであって、直列に接続された過電流分離器と熱分離器とを含む保護回路と、非線形素子の他端側の電圧に基づいて、保護回路の開放故障を検出する故障検出回路と、保護回路の電源線路側の電圧に基づいて、電源線路の停電状態を検出する停電検出回路と、故障検出回路の検出結果と停電検出回路の検出結果とに基づいて故障アラームを出力するための接点とを備え、故障検出回路は、復電した場合に、停電検出回路よりも早く応答して、停電検出回路の検出結果の出力をマスクすることで、停電検出回路による停電状態の検出結果によって故障アラームが出力されないように形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が接地される非線形素子の他端側に前記非線形素子に対して直列に設けられ、前記非線形素子の故障時に前記非線形素子を電源線路から切り離すものであって、直列に接続された過電流分離器と熱分離器とを含む保護回路と、
前記非線形素子の他端側の電圧に基づいて、前記保護回路の開放故障を検出する故障検出回路と、
前記保護回路の電源線路側の電圧に基づいて、前記電源線路の停電状態を検出する停電検出回路と、
前記故障検出回路の検出結果と前記停電検出回路の検出結果とに基づいて故障アラームを出力するための接点と
を備え、
前記故障検出回路は、復電した場合に、前記停電検出回路よりも早く応答して、前記停電検出回路の検出結果の出力をマスクすることで、前記停電検出回路による停電状態の検出結果によって前記故障アラームが出力されないように形成されている
雷サージ保護装置。
【請求項2】
前記停電検出回路は、前記接点を駆動させる駆動回路を含み、
前記駆動回路は、前記停電検出回路が停電を検出した場合に、前記故障検出回路による前記保護回路の開放故障の検出結果によらず、前記故障アラームを出力させないように形成されている
請求項1に記載の雷サージ保護装置。
【請求項3】
前記故障検出回路は、
前記非線形素子の他端側の線間電圧を整流する第1整流回路
を備え、
前記停電検出回路は、
前記保護回路の電源線路側の線間電圧を整流する第2整流回路と、
前記第1整流回路の出力電圧に応答するスイッチと、
前記スイッチと直列に接続された直列回路を形成する前記駆動回路であって、前記直列回路が前記第2整流回路の出力に並列に接続され、前記スイッチの状態と前記第2整流回路の出力電圧とにより定まる電圧に応答して、前記接点のオン/オフを切り替える前記駆動回路と
を備える請求項2に記載の雷サージ保護装置。
【請求項4】
前記駆動回路はコイルを備え、
前記コイルには、前記電源線路の停電状態から復電状態に遷移する際の応答を遅らせる時定数回路が並列に接続されている
請求項3に記載の雷サージ保護装置。
【請求項5】
前記故障検出回路と、前記停電検出回路は、前記電源線路に掛かる電圧を電源にする
請求項2又は請求項3に記載の雷サージ保護装置。
【請求項6】
前記接点と前記駆動回路は、第1リレーを成す
請求項2から請求項5の何れか1項に記載の雷サージ保護装置。
【請求項7】
前記故障検出回路は、
前記非線形素子の他端側の線間電圧を整流する第1整流回路と、
前記第1整流回路の出力電圧に応答するフォトダイオードと、
を備え、
前記停電検出回路は、
前記保護回路の電源線路側の線間電圧を整流する第2整流回路と、
前記フォトダイオードに応答するフォトトランジスタと、
前記フォトトランジスタに応答する半導体スイッチと、
前記半導体スイッチと直列に接続された直列回路を形成する前記駆動回路であって、前記直列回路が前記第2整流回路の出力に並列に接続され、前記半導体スイッチの状態と前記第2整流回路の出力電圧とにより定まる電圧に応答して、前記接点のオン/オフを切り替える前記駆動回路と
を備える請求項2に記載の雷サージ保護装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雷サージ保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、次のような避雷器が記載されている。すなわち、特許文献1に記載されている避雷器は、避雷素子と、避雷素子の劣化または破損時に溶断して避雷素子を電路から切り離すヒューズと、ヒューズを介して電源線間に入力側が接続されたフォトカプラとを備え、フォトカプラの出力側を外部の通信線に接続する。特許文献1に記載されている避雷器では、ヒューズが溶断した場合、フォトカプラの入力側への通電がなくなるため、フォトカプラの出力側がオフし、異常状態であることが外部へ通知される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-341681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、特許文献1に記載されている避雷器では、フォトカプラの入力側への電源線間から通電が無くなった場合に異常状態が検出される。この構成では、停電時にもフォトカプラの入力側への電源線間から通電が無くなるため、停電時に誤検出が発生する場合があるという課題がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、停電時の誤検出を防止することができる雷サージ保護装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一態様は、一端が接地される非線形素子の他端側に前記非線形素子に対して直列に設けられ、前記非線形素子の故障時に前記非線形素子を電源線路から切り離すものであって、直列に接続された過電流分離器と熱分離器とを含む保護回路と、前記非線形素子の他端側の電圧に基づいて、前記保護回路の開放故障を検出する故障検出回路と、前記保護回路の電源線路側の電圧に基づいて、前記電源線路の停電状態を検出する停電検出回路と、前記故障検出回路の検出結果と前記停電検出回路の検出結果とに基づいて故障アラームを出力するための接点とを備え、前記故障検出回路は、復電した場合に、前記停電検出回路よりも早く応答して、前記停電検出回路の検出結果の出力をマスクすることで、前記停電検出回路による停電状態の検出結果によって前記故障アラームが出力されないように形成されている雷サージ保護装置である。
【0007】
また、本発明の一態様は、前記停電検出回路は、前記接点を駆動させる駆動回路を含み、前記駆動回路は、前記停電検出回路が停電を検出した場合に、前記故障検出回路による前記保護回路の開放故障の検出結果によらず、前記故障アラームを出力させないように形成されている。
【0008】
また、本発明の一態様は、前記故障検出回路は、前記非線形素子の他端側の線間電圧を整流する第1整流回路を備え、前記停電検出回路は、前記保護回路の電源線路側の線間電圧を整流する第2整流回路と、前記第1整流回路の出力電圧に応答するスイッチと、前記スイッチと直列に接続された直列回路を形成する前記駆動回路であって、前記直列回路が前記第2整流回路の出力に並列に接続され、前記スイッチの状態と前記第2整流回路の出力電圧とにより定まる電圧に応答して、前記接点のオン/オフを切り替える前記駆動回路とを備える。
【0009】
また、本発明の一態様は、前記駆動回路はコイルを備え、前記コイルには、前記電源線路の停電状態から復電状態に遷移する際の応答を遅らせる時定数回路が並列に接続されている。
【0010】
また、本発明の一態様は、前記故障検出回路と、前記停電検出回路は、前記電源線路に掛かる電圧を電源にする。
【0011】
また、本発明の一態様は、前記接点と前記駆動回路は、第1リレーを成す。
【0012】
また、本発明の一態様は、前記故障検出回路は、前記非線形素子の他端側の線間電圧を整流する第1整流回路と、前記第1整流回路の出力電圧に応答するフォトダイオードと、を備え、前記停電検出回路は、前記保護回路の電源線路側の線間電圧を整流する第2整流回路と、前記フォトダイオードに応答するフォトトランジスタと、前記フォトトランジスタに応答する半導体スイッチと、前記半導体スイッチと直列に接続された直列回路を形成する前記駆動回路であって、前記直列回路が前記第2整流回路の出力に並列に接続され、前記半導体スイッチの状態と前記第2整流回路の出力電圧とにより定まる電圧に応答して、前記接点のオン/オフを切り替える前記駆動回路とを備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明の各態様によれば、停電時の誤検出を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態に係るSPDの構成例を示すブロック図である。
図2】本発明の第1実施形態に係るSPDの動作例を示すタイミングチャートである。
図3】本発明の第1実施形態に係るSPDの動作例を示すタイミングチャートである。
図4】本発明の第1実施形態に係るSPDの動作例を示すタイミングチャートである。
図5】本発明の第1実施形態に係るSPDの動作例との比較例を示すタイミングチャートである。
図6A】本発明の第1実施形態に係るリレーコイルの周辺回路例を示すブロック図である。
図6B】本発明の第1実施形態に係るリレーコイルの周辺回路例を示すブロック図である。
図7】本発明の第2実施形態に係るSPDの構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、各図において同一または対応する構成には同一の符号を用いて説明を適宜省略する。
【0016】
<第1実施形態>
(SPDの構成例および動作例)
図1は、本発明の第1実施形態に係るSPDの構成例を示すブロック図である。図2図4は、本発明の第1実施形態に係るSPDの動作例を示すタイミングチャートである。図5は、本発明の第1実施形態に係るSPDの動作例との比較例を示すタイミングチャートである。図6Aおよび図6Bは、本発明の第1実施形態に係るリレーコイルの周辺回路例を示すブロック図である。
【0017】
図1に示すSPD(Surge Protective Device)10は、本発明の実施形態に係る雷サージ保護装置の一構成例であって、避雷器、サージ防護デバイス等とも呼ばれる。SPD10は、電源線L1およびL2に接続される電源端子T1およびT2と、接地端子T3と、外部の通信線に接続される警報接点出力端子である出力端子T11、T12およびT13とを備える。なお、電源線L1およびL2の一方は電圧線、他方は中性線(接地線)である。
【0018】
図1に示すSPD10は、金属酸化物バリスタMOV1およびMOV2(以下、バリスタMOV1およびMOV2と称する)と、保護回路11と、故障検出回路12と、停電検出回路13と、リレー(1)接点(接点)8とを備える。
【0019】
別の観点でSPD10の構成を整理する。SPD10は、リレー(1)RY1と、リレー(2)RY2を備える。リレー(1)RY1は、リレー(1)コイル7と、C接点のリレー(1)接点8を備える。リレー(2)RY2は、リレー(2)コイル5と、B接点のリレー(2)B接点6を備える。リレー(1)接点8は、コモン端子とA接点端子(ノーマリーオープン端子)とB接点端子(ノーマリークローズ端子)を備え、コモン端子を出力端子T11に、A接点端子を出力端子T12に、B接点端子を出力端子T13に、それぞれ接続する。なお、リレー(1)コイル7とリレー(2)コイル5には、後述する図示していない保護ダイオードがそれぞれ並列に接続されている。
【0020】
リレー(1)RY1は、リレー(1)コイル7が通電されると(定格電圧が印加されると)、リレー(1)接点8のコモン端子とA接点端子間をオン(閉成)し、コモン端子とB接点端子間をオフ(開放)する。また、リレー(1)RY1は、リレー(1)コイル7が通電していない場合、リレー(1)接点8のコモン端子とA接点端子間をオフし、コモン端子とB接点端子間をオンする。リレー(2)RY2は、リレー(2)コイル5が通電されると、リレー(2)B接点6の端子間をオフする。また、リレー(2)RY2は、リレー(2)コイル5が通電していない場合、リレー(2)B接点6の端子間をオンする。
【0021】
リレー(2)B接点6とリレー(1)コイル7は、停電検出回路13に含まれる。リレー(2)コイル5は、故障検出回路12に含まれる。
【0022】
バリスタMOV1およびMOV2は、雷サージ吸収用の非線形素子であるサージ防護素子である。バリスタMOV1の一端とバリスタMOV2の一端は接地端子T3に接続され、接地される。バリスタMOV1の他端とバリスタMOV2の他端は、保護回路11内の熱分離器3の一端と熱分離器4の一端に接続される。なお、サージ防護素子としては、金属酸化物バリスタのほか、ガス入り放電管、アバランシェブレークダイオード、サージ防護サイリスタ等がある。サージ防護素子は、それらを単独あるいは組み合わせて用いることができる。
【0023】
保護回路11は、直列接続された過電流分離器1および熱分離器3と、直列接続された過電流分離器2および熱分離器4とを備える。熱分離器3の一端はバリスタMOV1の他端に接続され、熱分離器3の他端は過電流分離器1の一端に接続されている。過電流分離器1の他端は電源端子T1に接続されている。熱分離器4の一端はバリスタMOV2の他端に接続され、熱分離器4の他端は過電流分離器2の一端に接続されている。過電流分離器2の他端は電源端子T2に接続されている。
【0024】
例えば、過電流分離器1、熱分離器3およびバリスタMOV1は、一体的に構成されている。また、例えば、過電流分離器2、熱分離器4およびバリスタMOV2は、一体的に構成されている。過電流分離器1および2は例えば電流ヒューズであり、過電流が流れた場合に回路を遮断する。熱分離器3および4は、例えば、プリテンションがかけられたバリスタMOV1およびMOV2内部導体どうしを低融点合金で接合した分離器で、バリスタMOV1およびMOV2が劣化するとその発熱で低融点合金が溶けて導体が変形し回路を遮断する。
【0025】
バリスタMOV1、MOV2等のサージ防護素子は、サージの繰り返し印加や、過電圧、経年劣化などで絶縁性能が低下して発熱したり、短絡故障(ショートモード)が生じて過電流が流れたりする場合がある。保護回路11は、絶縁性能が低下した劣化状態の下での利用を防止及び故障状態の下での継続的な利用を防止することにより、劣化状態と故障状態に起因する2次災害の発生を抑制するようにサージ防護素子を電源系統から遮断して安全性を確保するため、発熱の保護に対しては熱分離器3および4、過電流の保護に対し過電流分離器1および2を備える。
【0026】
なお、保護回路11は、バリスタMOV1およびMOV2の劣化による漏れ電流増加によるサージ防護素子の発熱により、またはバリスタMOV1およびMOV2がショートモードで破壊した後の短絡電流により、バリスタMOV1およびMOV2の回路を遮断するように構成されている。前者の場合には熱分離器が、後者の場合には過電流分離器が、劣化した、または破壊したバリスタを回路から遮断する。この場合、保護回路11に開放故障(過電流分離器1および2と熱分離器3および4のいずれかが遮断した状態)が発生したときに、バリスタMOV1、MOV2は一定の抵抗値(例えば各コイルの抵抗値より大きい抵抗値)を保持する。
【0027】
故障検出回路12は、保護回路11の開放故障(過電流分離器1および2と熱分離器3および4のいずれかが遮断した状態)を検出する回路である。故障検出回路12は、整流回路RC1と、リレー(2)コイル5を備える。整流回路RC1は、例えば全波整流回路であり、バリスタMOV1と保護回路11(熱分離器3)の接続点とバリスタMOV2と保護回路11(熱分離器4)の接続点とを交流入力に接続し、リレー(2)コイル5の両端に直流出力を接続する。整流回路RC1は、一方、保護回路11が正常な場合(過電流分離器1および2と熱分離器3および4がすべて遮断していない場合)、電源線L1およびL2間の線間交流電圧を整流して所定電圧の直流電圧を出力し、リレー(2)コイル5にコイルの定格電圧を印加する(リレー(2)コイル5を通電状態とする)。整流回路RC1は、他方、保護回路11が異常な場合(過電流分離器1および2と熱分離器3および4のいずれかが遮断した場合)、直流出力から、リレー(2)コイル5に対してコイルの定格電圧を印加できなくなる(リレー(2)コイル5が非通電状態となる)。したがって、故障検出回路12は、保護回路11が正常な場合、リレー(2)接点B6をオフし、保護回路11が異常な場合(開放故障を検出した場合)、リレー(2)接点B6をオンする。
【0028】
停電検出回路13は、電源線L1およびL2の停電を検出する回路である。停電検出回路13は、整流回路RC2と、リレー(2)B接点6と、リレー(1)コイル7とを備える。整流回路RC2は、例えば全波整流回路であり、電源端子T1と電源端子T2を交流入力に接続し、リレー(2)B接点6とリレー(1)コイル7の直列回路の両端に直流出力を接続する。
【0029】
一方、停電が発生していない場合で、保護回路11が正常なとき、リレー(2)接点B6はオフなので、整流回路RC2が出力した直流電圧はリレー(1)コイル7に印加されない(リレー(1)コイル7を非通電状態とする)。この場合、リレー(1)接点8のA接点端子とコモン端子間(出力端子T12と出力端子T11間)はオフする。また、停電が発生していない場合で、保護回路11が異常なとき、リレー(2)接点B6はオンなので、整流回路RC2は、電源線L1およびL2間の線間交流電圧を整流して所定電圧の直流電圧を出力し、リレー(1)コイル7にコイルの定格電圧を印加する(リレー(1)コイル7を通電状態とする)。この場合、リレー(1)接点8のA接点端子とコモン端子間(出力端子T12と出力端子T11間)はオンする。
【0030】
他方、停電が発生している場合、整流回路RC2の直流出力はゼロとなるので、リレー(1)コイル7には定格電圧が印加されない(リレー(1)コイル7は非通電状態となる)。この場合、リレー(1)接点8のA接点端子とコモン端子間(出力端子T12と出力端子T11間)はオフする。
【0031】
ここで、図2図4を参照して、SPD10の動作例について説明する。図2は、停電が発生していない状態において、時刻t1で保護回路11の開放故障が発生した動作例を示す。図2に示す例において、開放故障が発生する前は、リレー(2)コイル5が通電状態、リレー(2)B接点6がオフ、リレー(1)コイル7が非通電状態、リレー(1)接点8のA接点がオフである。時刻t1で保護回路11に開放故障が発生すると、まず、リレー(2)コイル5が非通電状態となる。次に、リレー(2)コイル5が非通電状態となるのに応じて、リレー(2)B接点6がオンする。次に、リレー(2)B接点6がオンになるのに応じて、リレー(1)コイル7が通電状態となる。そして、リレー(1)コイル7が通電状態となるのに応じて、リレー(1)接点8のA接点がオンし、警報が出力される。
【0032】
図3は、保護回路11が正常な場合に、時刻t2で停電が発生したときの動作例を示す。図3に示す例において、停電が発生する前は、リレー(2)コイル5が通電状態、リレー(2)B接点6がオフ、リレー(1)コイル7が非通電状態、リレー(1)接点8のA接点がオフである。時刻t2で停電が発生すると、リレー(2)コイル5が非通電状態となり、これに応じて、リレー(2)B接点6がオンする。一方、停電によって、整流回路RC2の直流出力はゼロとなるので、リレー(1)コイル7は非通電状態のままであり、リレー(1)接点8のA接点はオフのままとなるので、警報は出力されない。
【0033】
図4は、保護回路11が正常な場合に、時刻t30で停電が復電したときの動作例を示す。なお、図4は、リレー(2)RY2の動作時間T2がリレー(1)RY1の動作時間T1より小さい(短い)場合の動作例を示す。図4に示す例において、停電時には、リレー(2)コイル5が非通電状態、リレー(2)B接点6がオン、リレー(1)コイル7が非通電状態、リレー(1)接点8のA接点がオフである。時刻t30で復電すると、リレー(2)コイル5とリレー(1)コイル7が通電状態となる。次に、リレー(2)RY2の動作時間T2内の例えば時刻t31で、リレー(2)B接点6がオフする。次に、時刻t31でリレー(2)B接点6がオフしたことに応じて、リレー(1)コイル7が非通電状態となる。リレー(2)RY2の動作時間T2がリレー(1)RY1の動作時間T1より小さい場合に、リレー(1)コイル7が復電時に一旦導通状態となった後、非通電状態となるまでの時間がリレー(1)RY1の動作時間T1より十分(誤検出が発生しないように)小さければ、リレー(1)接点8のA接点のオフ状態を継続させることができる。
【0034】
図5は、図4に対する比較例であって、リレー(2)RY2の動作時間T2がリレー(1)RY1の動作時間以上である場合の動作例を示す。図5は、保護回路11が正常な場合に、時刻t30で停電が復電したときの動作例を示す。図5に示す例において、停電時には、リレー(2)コイル5が非通電状態、リレー(2)B接点6がオン、リレー(1)コイル7が非通電状態、リレー(1)接点8のA接点がオフである。時刻t30で復電すると、リレー(2)コイル5とリレー(1)コイル7が通電状態となる。次に、リレー(2)RY2の動作時間T2内の例えば時刻t31で、リレー(2)B接点6がオフする。次に、時刻t31でリレー(2)B接点6がオフしたことに応じて、リレー(1)コイル7が非通電状態となる。この場合、図5に示すように、リレー(2)RY2の動作時間T2がリレー(1)RY1の動作時間以上である場合、リレー(1)コイル7が復電時に一旦導通状態となった後、非通電状態となるまでの時間で、リレー(1)接点8のA接点は短時間、オン状態となり、誤警報出力が発生することが考えられる。
【0035】
使用する接点を、リレー(2)RY2ではB接点、リレー(1)RY1ではA接点とする場合、接点部の機構が同等であれば、動作時間は、通常、リレー(2)RY2の方がリレー(1)RY1より小さい。この場合、図4に示すように、復電時に誤警報を防止することができる。しかしながら、リレー(2)RY2の動作時間がリレー(1)RY1の動作時間より大きい場合、例えば、図6Aに示すように、リレー(1)コイル7に、電源線L1およびL2からなる電源線路の停電状態から復電状態に遷移する際の応答を遅らせる時定数回路71が並列に接続することで、復電時に、リレー(2)RY2の接点が動作するまでの時間を、リレー(1)RY1の接点が動作するまでの時間より小さくすることができ、誤警報の発生を防止することができる。図6Aに示す例では、リレー(1)コイル7に対して保護ダイオードD1と並列に時定数回路71が接続されている。時定数回路71は、抵抗R1とコンデンサC1の直列回路である。一方、図6Bに示すようにリレー(2)コイル5に対して保護ダイオードD2のみを並列に接続する。
【0036】
(補足説明および作用・効果)
本実施形態に係るSPD10には、2つの過電流分離器1および2ならびに2つの熱分離器3および4があり、電源側に整流回路RC2、サージ防護素子側(バリスタMOV1および2側)に整流回路RC1がある。整流回路RC2の後段には、リレー(2)RY2のコモンとB接点(リレー(2)B接点6)、リレー(1)RY1のコイル(リレー(1)コイル7)が直列接続されている。整流回路RC1の後段にはリレー(2)コイル5が接続されている。リレー(1)接点8は、過電流分離器1および2、熱分離器3および4のいずれか、または両方の溶断により、SPD10の故障状態を出力する警報接点である。
【0037】
通常時に、サージ防護素子(バリスタMOV1および2)が劣化した場合には、過電流分離器1および2、熱分離器3および4のいずれか、または両方が溶断するため、リレー(2)コイル5への電圧が無くなり、励磁電流が無くなるため、リレー(2)B接点6がONになる。それにより、リレー(1)コイル7に電圧が加わり、励磁電流が流れ、リレー(1)接点8で警報が出力(A接点)される。
【0038】
停電発生時で、過電流分離器1および2、熱分離器3および4のいずれか、または両方が溶断していない場合には、リレー(2)コイル5への電圧が無くなり、励磁電流が無くなるため、リレー(2)B接点6がONになる。しかし、電源線L1およびL2からの電圧もないため、リレー(1)コイル7には電圧がかからず、励磁電流が流れないため、リレー(1)接点8から警報が出力(A接点)されない。
【0039】
なお、復電直後に、リレー(1)RY1からの誤警報出力防止のため、リレー(2)RY2は、リレー(1)RY1よりも動作速度を速くしておく。
【0040】
本実施形態のSPD10は、その内部回路を機能させるための専用の電源(外部電源及び電池)が不要で、停電した場合にも警報接点出力が行われない回路を有する。上記では電源線が2線の場合を示したが、3線の場合には例えば故障検出回路12を1つ追加し、2つの故障検出回路12の整流回路RC1の各入力を、3個のバリスタの同一ではない各1対のバリスタの各他端に接続する。さらに、2つの故障検出回路12が有する各リレー(2)コイルで駆動される各リレー(2)B接点を停電検出回路13内で直列に接続する。
【0041】
以上のように、本実施形態に係るSPD10によれば、停電時の誤検出を防止することができる。
【0042】
<第2実施形態>
図7は、本発明の第2実施形態に係るSPDの構成例を示すブロック図である。図7に示すSPD10aは、図1に示すリレー(2)RY2に対応する構成を、半導体素子を用いて構成する点が図1に示すSPD10と異なる。図7に示すSPD10aは、図1に示すSPD10と比較して、図1に示す故障検出回路12に対応する故障検出回路12aの内部回路と、図1に示す停電検出回路13に対応する停電検出回路13aの内部回路が異なる。図7に示す故障検出回路12aは、図1に示すリレー(2)コイル5に代えて、フォトカプラPC1のフォトダイオードPD1と抵抗R11の直列回路を有する。整流回路RC1の正側出力がフォトダイオードPD1のアノードに接続され、フォトダイオードPD1のカソードが抵抗R11の一端に接続され、抵抗R11の他端が整流回路RC1の負側出力に接続されている。
【0043】
図7に示す停電検出回路13aは、図1に示すリレー(2)B接点6に代えてp型MOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)FET1(以下、FET1という)を有するともに、FET1の駆動回路を構成するフォトカプラPC1のフォトトランジスタPT1と抵抗R12を有する。なお、図7では、整流回路RC2の負側出力を基準電位(GND)としている。FET1のソースとフォトトランジスタPT1のコレクタは、整流回路RC2の正側出力に接続されている。FET1のドレインはリレー(1)コイル7の一端に接続されている。リレー(1)コイル7の他端は、基準電位(GND)に接続されている。フォトトランジスタPT1のエミッタと抵抗R12の一端はFET1のゲートに接続されている。抵抗R12の他端は、基準電位(GND)に接続されている。
【0044】
図7に示すSPD10aでは、整流回路RC1が所定の直流電圧を出力した場合、フォトカプラPC1のフォトトランジスタPT1がオンし、FET1のゲート電位をオフさせる電位にするので、FTE1のソース-ドレイン間がオフする。一方、整流回路RC1が所定の直流電圧を出力しなかった場合、フォトカプラPC1のフォトトランジスタPT1がオフし、FET1のゲート電位をオンさせる電位にするので、FTE1のソース-ドレイン間がオンする。したがって、FET1のソース-ドレイン間が、図1に示すリレー(2)B接点6と同様にオンまたはオフする。
【0045】
なお、第2実施形態においても、図6Aに示す構成を有していてもよい。
【0046】
本実施形態においても第1実施形態と同様に、本実施形態に係るSPD10aによれば、停電時の誤検出を防止することができる。また、FET1の動作は、リレー(1)接点8の動作に対して容易に速めることができるので、復電時の誤警報を容易に防止することができる。
【0047】
バリスタMOV1、MOV2等のサージ防護素子が故障した場合に、サージ防護素子の故障モードにかかわらず、熱分離器と過電流分離器の動作を正確に検知できるようになり、停電発生時などに警報接点が誤動作することを防止できるため、これまで必要であった、不要な保守駆付けが不要になることで、設備保守の効率化が可能になった。
【0048】
また、警報出力接点に、通常のリレーなどの市販部品を使い、電気回路的に機能を実現するため、従来の熱分離器のような複雑な機構を省略できるため、製品の製造組立が容易になり、製品コストの低減が可能になった。
【0049】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して説明してきたが、具体的な構成は上記実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0050】
(各実施形態の態様)
本発明の各実施形態の態様は、次のように把握することができる。
【0051】
第1の態様の雷サージ保護装置(SPD10、SPD10a)は、一端が接地される非線形素子(バリスタMOV1、MOV2)の他端側に前記非線形素子に対して直列に設けられ、前記非線形素子の故障時に前記非線形素子を電源線路(電源線L1、L2)から切り離すものであって、直列に接続された過電流分離器(1、2)と熱分離器(3、4)とを含む保護回路(11)と、前記非線形素子の他端側の電圧に基づいて、前記保護回路11の開放故障を検出する故障検出回路(12、12a)と、前記保護回路の電源線路側の電圧に基づいて、前記電源線路の停電状態を検出する停電検出回路(13、13a)と、前記故障検出回路の検出結果と前記停電検出回路の検出結果とに基づいて故障アラームを出力するための接点(リレー(1)接点8)とを備え、前記故障検出回路は、復電した場合に、前記停電検出回路よりも早く応答して、前記停電検出回路の検出結果の出力をマスクすることで、前記停電検出回路による停電状態の検出結果によって前記故障アラーム(リレー(1)接点8のA接点)が出力されないように形成されている。
【0052】
第2の態様の雷サージ保護装置(SPD10、SPD10a)は、第1の態様の雷サージ保護装置であって、前記停電検出回路は、前記接点を駆動させる駆動回路(リレー(1)コイル7)を含み、前記駆動回路は、前記停電検出回路が停電を検出した場合に、前記故障検出回路による前記保護回路の開放故障の検出結果によらず、前記故障アラームを出力させないように形成されている。
【0053】
第3の態様の雷サージ保護装置(SPD10、SPD10a)は、第2の態様の雷サージ保護装置であって、前記故障検出回路は、前記非線形素子の他端側の線間電圧を整流する第1整流回路(整流回路RC1)を備え、前記停電検出回路は、前記保護回路の電源線路側の線間電圧を整流する第2整流回路(整流回路RC2)と、前記第1整流回路の出力電圧に応答するスイッチ(リレー(2)B接点6、FET1)と、前記スイッチと直列に接続された直列回路を形成する前記駆動回路であって、前記直列回路が前記第2整流回路の出力に並列に接続され、前記スイッチの状態と前記第2整流回路の出力電圧とにより定まる電圧に応答して、前記接点のオン/オフを切り替える前記駆動回路とを備える。
【0054】
第4の態様の雷サージ保護装置(SPD10、SPD10a)は、第3の態様の雷サージ保護装置であって、前記駆動回路はコイル(リレー(1)コイル7)を備え、前記コイルには、前記電源線路の停電状態から復電状態に遷移する際の応答を遅らせる時定数回路(71)が並列に接続されている。
【0055】
第5の態様の雷サージ保護装置(SPD10、SPD10a)は、第2または第3の態様の雷サージ保護装置であって、前記故障検出回路と、前記停電検出回路は、前記電源線路に掛かる電圧を電源にする。
【0056】
第6の態様の雷サージ保護装置(SPD10、SPD10a)は、第1~第5の態様の雷サージ保護装置であって、前記接点と前記駆動回路は、第1リレー(リレー(1)RY1)を成す。
【0057】
第7の態様の雷サージ保護装置(SPD10a)は、第2の態様の雷サージ保護装置であって、前記故障検出回路(12a)は、前記非線形素子の他端側の線間電圧を整流する第1整流回路(整流回路RC1)と、前記第1整流回路の出力電圧に応答するフォトダイオード(PD1)と、を備え、前記停電検出回路(13a)は、前記保護回路の電源線路側の線間電圧を整流する第2整流回路(整流回路RC2)と、前記フォトダイオードに応答するフォトトランジスタ(PT1)と、前記フォトトランジスタに応答する半導体スイッチ(FET1)と、前記半導体スイッチと直列に接続された直列回路を形成する前記駆動回路であって、前記直列回路が前記第2整流回路の出力に並列に接続され、前記半導体スイッチの状態と前記第2整流回路の出力電圧とにより定まる電圧に応答して、前記接点のオン/オフを切り替える前記駆動回路(リレー(1)コイル7)とを備える。
【0058】
なお、雷サージ保護装置(SPD10a)は、電源線の接地、非接地方式の2線式または3線式で構成された電源線路に適用可能である。また、雷サージ保護装置(SPD10a)は、交流電源又は直流電源が接続される電源線路に適用可能である。
【符号の説明】
【0059】
10、10a SPD(雷サージ保護装置)
1、2 過電流分離器
3、4 熱分離器
5 リレー(2)コイル
6 リレー(2)B接点
7 リレー(1)コイル
8 リレー(1)接点(接点)
11 保護回路
12、12a 故障検出回路
13、13a 停電検出回路
MOV1、MOV2 バリスタ(非線形素子)
RC1、RC2 整流回路
FET1 p型MOSFET
PC1 フォトカプラ
PD1 フォトダイオード
PT1 フォトトランジスタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7