(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128091
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】分配タンク
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20230907BHJP
B41J 2/17 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
B41J2/175 121
B41J2/175 503
B41J2/17
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022032189
(22)【出願日】2022-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000161057
【氏名又は名称】株式会社ミヤコシ
(74)【代理人】
【識別番号】100103805
【弁理士】
【氏名又は名称】白崎 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100126516
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 綽勝
(74)【代理人】
【識別番号】100132104
【弁理士】
【氏名又は名称】勝木 俊晴
(74)【代理人】
【識別番号】100211753
【弁理士】
【氏名又は名称】岡崎 紳吾
(72)【発明者】
【氏名】並木 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】板橋 渡
(72)【発明者】
【氏名】菅原 瑞稀
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EB21
2C056EB50
2C056EC17
2C056EC20
2C056EC29
2C056EC32
2C056KB08
2C056KB37
2C056KC09
2C056KC13
2C056KC27
(57)【要約】 (修正有)
【課題】分配タンク内部のインクの物性をより均一化することができ、且つ液面波及び液中波を抑制することにより、吐出を安定化させる。
【解決手段】インク2aを導入するための導入口部、内部空間1に貯留されたインクを複数の印字ユニット20aに供給する容器部10と、内部空間を複数に区画するための仕切り部30と、内部空間に貯留されたインクの液面が上限又は下限にあることを検出するための検出部60とを備え、仕切り部が、導入口部11と導入口部に最も近い位置に設けられた供給口部との間に取り付けられており、隣り合う区画部の間でインク及びインクの上方の空気2bの流通を妨げる板部と、インクを流通させるためのインク用開口部と、空気を流通させるための空気用開口部とを有し、適正領域には板部が位置しており、インク用開口部が適正領域より下方に位置し、空気用開口部が適正領域より上方に位置している分配タンク100である。
【選択図】
図2(a)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット印字装置に用いられ、インクタンクから導入されたインクを一時的に貯留すると共に、インクの液面が上限と下限との間の適正領域にある場合に当該インクを印字ユニットに直接供給するための分配タンクにおいて、
前記インクを貯留可能な内部空間を有し、前記内部空間に前記インクを導入するための導入口部、及び、前記内部空間に貯留された前記インクを複数の前記印字ユニットにそれぞれ供給するための複数の供給口部、が設けられた容器部と、
前記内部空間を複数の区画部に区画するための仕切り部と、
前記内部空間に貯留された前記インクの液面が上限又は下限にあることを検出するための検出部と、を備え、
前記仕切り部が、前記導入口部と、該導入口部に最も近い位置に設けられた前記供給口部との間に取り付けられており、
前記仕切り部が、隣り合う前記区画部の間での前記インク及び該インクの上方の空気の流通を妨げる板部と、隣り合う前記区画部の間で前記インクを流通させるためのインク用開口部と、隣り合う前記区画部の間で前記空気を流通させるための空気用開口部と、を有し、
前記適正領域には前記板部が位置しており、
前記インク用開口部が前記適正領域より下方に位置し、
前記空気用開口部が前記適正領域より上方に位置している分配タンク。
【請求項2】
前記仕切り部のうち、貯留された前記インクの液面が前記下限にある場合の該インクに浸漬する部分の面方向の面積に対する前記インク用開口部の面方向の面積の割合が、50%以下である請求項1記載の分配タンク。
【請求項3】
前記仕切り部が複数取り付けられており、
該仕切り部のうちの少なくとも1つが、前記導入口部と、該導入口部に最も近い位置に設けられた前記供給口部との間に取り付けられ、
他の前記仕切り部が、隣り合う前記供給口部同士の間に取り付けられている請求項1又は2に記載の分配タンク。
【請求項4】
前記仕切り部が、隣り合う前記区画部の間で前記インクを流通させるための補助インク用開口部を更に有し、
前記インク用開口部が、貯留された前記インクの液面が前記下限にある場合の該インクに浸漬する部分の上下方向における中間部分、若しくは、該中間部分より上方に設けられており、
前記補助インク用開口部が、前記インク用開口部よりも下側に設けられている請求項1~3のいずれか1項に記載の分配タンク。
【請求項5】
前記供給口部の直上に取り付けられ、基部と該基部の左右両側に設けられた左小片部及び右小片部とからなる上面視Uの字状の補助仕切り部を更に有し、
上面視で前記供給口部が前記左小片部及び前記右小片部の間に位置している請求項1~4のいずれか1項に記載の分配タンク。
【請求項6】
前記容器部の側部の外面に取り付けられ、前記内部空間に貯留された前記インクを加温するためのヒーター部を更に備え、
前記補助仕切り部が、前記側部の内面に取り付けられ、
前記側部が金属からなる請求項5記載の分配タンク。
【請求項7】
前記容器部の側部の外面に取り付けられ、前記内部空間に貯留された前記インクを加温するためのヒーター部を更に備え、
前記ヒーター部の上端の位置が、前記側部の外面における前記インクの液面の前記下限に相当する位置から上方向に10mm下方向に20mmの範囲内となるように、取り付けられている請求項1~6のいずれか1項に記載の分配タンク。
【請求項8】
前記印字ユニットが、前記供給口部に対応するように前記容器部の底部に取り付けられた電磁弁と、該電磁弁を介して前記供給口部に連通する供給チューブと、該供給チューブの下端に取り付けられた印字ヘッドと、を有する請求項1~7のいずれか1項に記載の分配タンク。
【請求項9】
前記供給チューブには、チューブヒーターが取り付けられている請求項8記載の分配タンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット印字装置に用いられ、インクタンクから導入されたインクを、一時的に貯留すると共に、印字ユニットに直接供給するための分配タンクに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット印字装置は、印字ユニットを有しており、当該印字ユニットから、微滴化されたインクを被印字媒体に対して吐出することにより、印字を施す装置である。このため、インクジェット印字装置においては、インクタンクから、分配タンクを介して、印字ユニットに継続的にインクの供給が行われる。
ここで、分配タンクは、一時的にインクを貯留すると共に、印字ユニットにインクを直接供給するためのものである。
インクジェット印字装置においては、分配タンクを設け、例えば、当該分配タンクに貯留されたインクの量を管理することにより、印字ユニットがインク不足になることを防止することができる。
【0003】
ところで、インクジェット印字装置においては、分配タンクの内部へのインクの導入時や印字ユニットへのインクの供給時に、分配タンクに貯留されたインクに、いわゆる波が発生するという問題がある。例えば、インク中で伝わる波(以下「液中波」ともいう。)が発生すると、供給口部に圧力波が付与されるため、吐出が不安定となる恐れがある。
【0004】
これに対し、記録媒体の全幅に亘ってその幅方向に並設された複数のノズルヘッドを有するラインヘッドと、ラインヘッドの外に配置されて、インクを貯留するメインタンクと、メインタンクと各ノズルヘッドとをつないで、該メインタンク内のインクを各ノズルヘッドに供給するインク供給路と、ラインヘッドに設けられたタンクであって、インク供給路上に介設される分配タンクと、を備え、分配タンクは、タンク内空間において隣り合う下流側接続部の開口間に配置されたリブを有するインクジェット式記録装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1記載の分配タンクにおいては、液中波をリブで遮ることにより、供給口部への圧力波の付与を抑制することができるものの、例えば、内部に空気及びインクを含む分配タンクの場合、上記のようなリブではインクの液面に生じる波(以下「液面波」ともいう。)を抑制することはできない。なお、インクの液面において、液面波が発生すると、液面が上下動することになるため、供給口部に付与される水圧が変動し、結局、吐出が不安定となる恐れがある。また、インクの液面を検出する際に、検出部が誤動作を起こす恐れがある。
【0007】
また、分配タンクにおいては、その内部で十分な液流が生じない場合、貯留されたインクの物性が不均一となる問題がある。
例えば、分配タンク内部に導入されたインクが、直ちに印字ユニットに供給されてしまい、分配タンク内部で停滞するインクが生じ、これが繰り返されると、分配タンク内部のインクの物性が不均一となり易い。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、分配タンク内部のインクの物性をより均一化することができ、且つ、液面波及び液中波を抑制することにより、吐出を安定化させることができる分配タンクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討したところ、板部とインク用開口部と空気用開口部とを有する仕切り部を、導入口部と、該導入口部に最も近い位置に設けられた供給口部との間の内部空間に取り付け、適正領域に板部を配置することにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明は、インクジェット印字装置に用いられ、インクタンクから導入されたインクを一時的に貯留すると共に、インクの液面が上限と下限との間の適正領域にある場合に当該インクを印字ユニットに直接供給するための分配タンクにおいて、インクを貯留可能な内部空間を有し、内部空間にインクを導入するための導入口部、及び、内部空間に貯留されたインクを複数の印字ユニットにそれぞれ供給するための複数の供給口部、が設けられた容器部と、内部空間を複数の区画部に区画するための仕切り部と、内部空間に貯留されたインクの液面が上限又は下限にあることを検出するための検出部と、を備え、仕切り部が、導入口部と、該導入口部に最も近い位置に設けられた供給口部との間に取り付けられており、仕切り部が、隣り合う区画部の間でのインク及び該インクの上方の空気の流通を妨げる板部と、隣り合う区画部の間でインクを流通させるためのインク用開口部と、隣り合う区画部の間で空気を流通させるための空気用開口部と、を有し、適正領域には板部が位置しており、インク用開口部が適正領域より下方に位置し、空気用開口部が適正領域より上方に位置している分配タンクである。
【0011】
また、分配タンクは、仕切り部のうち、貯留されたインクの液面が下限にある場合の当該インクに浸漬する部分の面方向の面積に対するインク用開口部の面方向の面積の割合が、50%以下であることが好ましい。
【0012】
また、分配タンクは、仕切り部が複数取り付けられており、当該仕切り部のうちの少なくとも1つが、導入口部と、該導入口部に最も近い位置に設けられた供給口部との間に取り付けられ、他の仕切り部が、隣り合う供給口部同士の間に取り付けられていることが好ましい。
【0013】
また、分配タンクは、仕切り部が、隣り合う区画部の間でインクを流通させるための補助インク用開口部を更に有し、インク用開口部が、貯留されたインクの液面が下限にある場合の該インクに浸漬する部分の上下方向における中間部分、若しくは、該中間部分より上方に設けられており、補助インク用開口部が、インク用開口部よりも下側に設けられていることが好ましい。
【0014】
また、分配タンクは、供給口部の直上に設けられ、基部と該基部の左右両側に設けられた左小片部及び右小片部とからなる上面視Uの字状の補助仕切り部を更に備え、上面視で供給口部が左小片部及び右小片部の間に位置していることが好ましい。
【0015】
また、分配タンクは、容器部の側部の外面に取り付けられ、内部空間に貯留されたインクを加温するためのヒーター部を更に備え、補助仕切り部が、側部の内面に取り付けられ、側部が金属からなることが好ましい。
【0016】
また、分配タンクは、容器部の側部の外面に取り付けられ、内部空間に貯留されたインクを加温するためのヒーター部を更に備え、ヒーター部の上端の位置が、側部の外面におけるインクの液面の下限に相当する位置から上方向に10mm下方向に20mmの範囲内となるように、取り付けられていることが好ましい。
【0017】
また、分配タンクは、印字ユニットが、供給口部に対応するように容器部の底部に取り付けられた電磁弁と、該電磁弁を介して供給口部に連通する供給チューブと、該供給チューブの下端に取り付けられた印字ヘッドと、を有することが好ましい。
【0018】
また、分配タンクは、供給チューブには、チューブヒーターが取り付けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の分配タンクにおいては、インク用開口部と空気用開口部とを有する仕切り部を、導入口部と、該導入口部に最も近い位置に設けられた供給口部との間の内部空間に取り付けるので、導入口部からインクが導入されたことに基づく液中波が、仕切り部の板部により遮られ、圧力波が供給口部に付与されることを抑制することができる。
なお、インク自体の区画部間の流通は、仕切り部がインク用開口部を有しているので完全に遮られるものではない。
【0020】
本発明の分配タンクにおいては、適正領域に、仕切り部の板部が位置しているので、インクが導入されたことに基づく液面波も、仕切り部の板部により遮られる。これにより、液面が上下動することによる水圧の変動を抑制することができる。また、検出部が誤作動を起こすことも抑制できる。
これらのことから、分配タンクによれば、供給口部における圧力変動を抑制することができるので、吐出を十分に安定化させることができる。
【0021】
本発明の分配タンクにおいては、仕切り部を取り付けることにより、インクの板部への衝突と、インク用開口部からの流通とが繰り返されることになるので、区画部内で十分な乱流を生じさせることができる。このとき、分配タンクにおいては、仕切り部のうち、貯留されたインクの液面が下限にある場合の該インクに浸漬する部分の面方向の面積に対するインク用開口部の面方向の面積の割合を50%以下とすることにより、区画部内により十分に乱流を生じさせることができる。
また、分配タンク内部に導入されたインクが、直ちに印字ユニットに供給されることを防止することができる。
このことから、分配タンクによれば、貯留されたインクの物性をより均一とすることが可能となる。
【0022】
本発明の分配タンクにおいては、導入口部と、該導入口部に最も近い位置に設けられた供給口部との間に取り付けられた仕切り部の他に、隣り合う供給口部同士の間にも仕切り部を取り付けることにより、各供給口部においても、液面波又は液中波による圧力変動を抑制することができる。
また、インクの乱流も促進されるので、停滞するインクを軽減することができる。
【0023】
本発明の分配タンクにおいては、仕切り部が、補助インク用開口部を更に有し、上側にインク用開口部、下側に補助インク用開口部を配置することにより、インクを上下でよく混合させることができる。これにより、インクの物性をより均一とすることができる。
ちなみに、インクの濃度分布や温度分布のバラつきは、インク液中の上部分と下部分とで差が生じ易い。
【0024】
本発明の分配タンクにおいては、供給口部の直上に、上面視で供給口部が左小片部及び右小片部の間に位置するように、補助仕切り部が設けられることにより、供給口部における液中波による圧力変動をより抑制することができる。
【0025】
本発明の分配タンクにおいては、容器部の側部の外面にヒーター部を更に備えることにより、インクの温度を一定に加温することが可能となる。これにより、インクジェット印字を行う際の環境の違い等に基づいてインクの温度が異なる場合が生じることを抑制することができる。
ちなみに、インクの温度が異なると、吐出量も変わるため、印字したとき印字濃度が変化する恐れがある。
このとき、側部を熱伝導性に優れる金属とすることにより、熱を付与する効率を向上させることができる。
また、補助仕切り部を、側部の内面に取り付けることにより、先に加温されるインクが直ちに供給口部に供給されてしまうことを抑制し、乱流を生じさせることで、貯留されたインクの物性をより一層均一とすることができる。
【0026】
本発明の分配タンクにおいては、ヒーター部の上端の位置を、側部の外面におけるインクの液面の下限に相当する位置から上方向に10mm下方向に20mmの範囲内となるように、取り付けることにより、分配タンクの側部の内面に付着したインクが固化することを抑制することができる。
なお、インクの液面の下限については後述する。
【0027】
本発明の分配タンクにおいては、印字ユニットが、電磁弁と、供給チューブと、印字ヘッドと、を有することにより、より均一となったインクを用いて、速やかにインクジェット印字を行うことが可能となる。
このとき、供給チューブに、チューブヒーターを取り付けることにより、インクが供給チューブを流通する際に、冷却されることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る分配タンクのインクジェット印字装置における作用を説明するための模式図である。
【
図2(a)】
図2(a)は、第1実施形態に係る分配タンクを示す透過側面図である。
【
図2(b)】
図2(b)は、
図2(a)に示す分配タンクをX1-X1線で切断した矢視断面図である。
【
図2(c)】
図2(c)は、
図2(a)に示す分配タンクをY1-Y1線で切断した矢視断面図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る分配タンクの仕切り部を示す側面図である。
【
図4(a)】
図4(a)は、第1実施形態に係る分配タンクにおける液流の例を説明するための説明図である。
【
図4(b)】
図4(b)は、仕切り部を取り付けない場合の液流の例を説明するための説明図である。
【
図5(a)】
図5(a)は、第2実施形態に係る分配タンクを示す透過側面図である。
【
図5(b)】
図5(b)は、
図5(a)に示す分配タンクをX2-X2線で切断した矢視断面図である。
【
図5(c)】
図5(c)は、
図5(a)に示す分配タンクをY2-Y2線で切断した矢視断面図である。
【
図6】
図6は、第3実施形態に係る分配タンクのインクジェット印字装置における作用を説明するための模式図である。
【
図7(a)】
図7(a)は、第3実施形態に係る分配タンクを示す透過側面図である。
【
図7(b)】
図7(b)は、
図7(a)に示す分配タンクをX3-X3線で切断した矢視断面図である。
【
図7(c)】
図7(c)は、
図7(a)に示す分配タンクをY3-Y3線で切断した矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0030】
本発明に係る分配タンクは、インクジェット印字装置に用いられる。かかるインクジェット印字装置としては、特に限定されないが、例えば、ピエゾ方式、サーマル方式等のオンデマンド型インクジェットを好適に採用することができる。
【0031】
(第1実施形態)
まず、本発明に係る分配タンクの第1実施形態について説明する。
図1は、第1実施形態に係る分配タンクのインクジェット印字装置における作用を説明するための模式図である。
図1に示すように、第1実施形態に係る分配タンク100は、複数の印字ユニットからなる印字部20と連結しており、且つ、分配タンク100内の空気の圧力を制御するための圧力制御機構C1と、分配タンク100内のインクの貯留量を制御するための制御装置C2とに接続されている。
なお、圧力制御機構C1及び制御装置C2については後述する。
【0032】
分配タンク100においては、インクタンクTに収容されたインクがポンプPにより汲み上げられ、導入管T1を介して、当該分配タンク100内に導入される。なお、インクタンクTは、インクの供給源となるタンクである。
分配タンク100に導入されたインクは、一時的に分配タンク100内に貯留されると共に、分配タンク100から印字部20に直接供給される。
そして、印字部20は、供給されたインクを吐出する。こうして、被印字媒体(図示しない)にインクジェット印字が施されることになる。
また、分配タンク100内に貯留されたインクは、回収管T2を介して、インクタンクTに回収される。
【0033】
ここで、分配タンク100から印字部20へのインクの供給量は、圧力制御機構C1により制御され、分配タンク100内におけるインクの貯留量は、上述したように、制御装置C2により制御される。
このように、分配タンク100においては、インクを一時的に貯留することで、インクの貯留量及びインクの供給量を制御することが可能となっている。これにより、印字部20がインク不足になることを防止することができる。
【0034】
図2(a)は、第1実施形態に係る分配タンクを示す透過側面図であり、
図2(b)は、
図2(a)に示す分配タンクをX1-X1線で切断した矢視断面図であり、
図2(c)は、
図2(a)に示す分配タンクをY1-Y1線で切断した矢視断面図である。
なお、
図2(a)~(c)においては、貯留されたインク2aを透過させて示している。これに加え、
図2(b)においては、印字ユニット20a及び導入管T1の記載を省略している。
図2(a)~(c)に示すように、分配タンク100は、内部空間1を有する容器部10と、内部空間1を複数の区画部30aに区画するための仕切り部30と、供給口部12の直上に設けられた補助仕切り部40と、インク2aの液面が上限P1又は下限P2にあることを検出するための検出部60と、容器部10の側部の外面に取り付けられたヒーター部50とを備える。
なお、具体的には、分配タンク100は、内部空間1が6つの仕切り部30により7か所の区画部30aに区画されている。
【0035】
分配タンク100においては、容器部10にインク2aが導入されると、内部空間1の各区画部30aにインク2aが貯留され、ヒーター部50により加温される。
なお、かかる内部空間1においては、インク2aが満タンとはなっておらず、インク2aの上方は空気2bとなっている。
そして、加温されたインク2aは、供給口部12に供給される。
また、分配タンク100の内部のインク2aは、インク2aの液面の位置を検出部60が検出することにより、必要に応じて、適宜補充されるようになっている。
【0036】
分配タンク100において、容器部10は、上面視矩形状の下底部10a(底部)と、下底部10aの四方の周縁に立設する側部10bと、側部10bの上端に設けられた上底部10cとを有する箱状となっている(
図2(b)参照)。
以下、本明細書において、下底部10aの長辺の方向を長手方向といい、短辺の方向を短手方向という。
そして、下底部10a、側部10b及び上底部10cに囲まれた密閉空間が上述した内部空間1となっている。
【0037】
ここで、容器部10は、下底部10a、側部10b及び上底部10cが一体となっていてもよく、これらを別体とし、互いに連結したものであってもよい。なお、第1実施形態に係る容器部10は、下底部10a、三方の側部10b及び上底部10cが一体となるように成形され(以下これを「本体部」ともいう。)、これに一方の側部10b1(以下「蓋部」ともいう。)を、パッキンを介して、ボルトで取り付け固定した構成となっている。
【0038】
容器部10において、下底部10aには、内部空間1にインク2aを導入するための導入口部11と、内部空間1に貯留されたインク2aを複数の印字ユニット20aにそれぞれ供給するための複数の供給口部12と、内部空間1に貯留されたインク2aを回収するための回収口部13とが設けられている。なお、導入口部11には、導入管T1が連結され、回収口部13には、回収管T2が連結される。
分配タンク100においては、導入口部11を下底部10aに設けることにより、インク2aが導入される際に、落下の衝撃で泡立つことを抑制することができる。
また、供給口部12を下底部10aに設けることにより、重力を利用して、インク2aを速やかに印字ユニット20aに供給することが可能となる。
また、回収口部13を下底部10aに設けることにより、重力を利用して、インク2aを速やかに回収することが可能となる。
【0039】
容器部10においては、複数の供給口部12が互いに等間隔となるように下底部10aに設けられている。
そして、導入口部11及び回収口部13は、これを阻害しないように、下底部10aの両端側にそれぞれ設けられている。すなわち、導入口部11、複数の供給口部12、回収口部13は、この順序で、下底部10aの長手方向に沿って直列となるように設けられている(
図2(c)参照)。
また、分配タンク100の内部において、導入口部11から導入されたインク2aは、複数の供給口部12に供給されるか、若しくは、回収口部13から回収されることになる。すなわち、分配タンク100の内部においては、インク2aが、分配タンク100の一端から他端に向かう液流が生じている。
【0040】
分配タンク100においては、容器部10の蓋部10b1(一方の側部10b1)の外面にヒーター部50が取り付けられている(
図2(b)参照)。
このとき、蓋部10b1の材質は、ステンレス、鉄、銅等の金属であることが好ましい。この場合、ヒーター部50による熱を内部空間1に貯留されたインク2aに効率よく伝えることが可能となる。なお、蓋部10b1は、分配タンク本体部内のインク2aの影響による物性変化が適宜定める一定量以下となるような材質であることがより好ましい。
また、一方で、本体部の材質は、特に限定されないが、蓋部10b1よりも熱伝導率が低いものであることが好ましい。この場合、インク2aの熱が分配タンク100の外に伝わってしまうことを抑制することができる。
具体的には、本体部の材質としては、特に限定されないが、ガラス、ゴム、樹脂等が挙げられ、その中でも、安価で耐久性に優れることから、樹脂が好適に用いられる。
かかる樹脂としては、例えば、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。なお、本体部は、分配タンク本体部内のインク2aの影響による物性変化が適宜定める一定量以下となるような材質であることがより好ましい。
したがって、分配タンク100においては、蓋部10b1及び本体部の材質を上述したものとすることにより、インク2aに熱を伝える効率をより向上させることができる。
【0041】
ヒーター部50としては、ラバーヒーター、バンドヒーター等を採用することができる。
分配タンク100においては、ヒーター部50が、内部空間1に貯留されたインク2aを一定の温度となるように加温することにより、インクジェット印字を行う際の環境の違い等に基づいてインク2aの温度が異なる場合が生じることを抑制することができる。
【0042】
また、分配タンク100においては、内部空間1に、インク2aの温度を検出するための熱電対、測温抵抗体、サーミスタ等のインク温度検出手段と、インク温度検出手段により検出された温度に基づいてヒーター部50に運転指令を発信する制御装置(図示しない)とが設けられている。なお、第1実施形態に係る分配タンク100においては、インク温度検出手段として熱電対52を採用している。このため、分配タンク100においては、内部のインク2aの温度を設定した温度となるように制御することで、分配タンク100の内部のインク2aの温度を極力一定とすることができる。
【0043】
ここで、ヒーター部50は、その上端50aの位置が、蓋部10b1の外面におけるインク2aの液面の下限P2に相当する位置から上方向に10mm下方向に20mmの範囲内となるように、取り付けられていることが好ましい。この場合、分配タンク100の内部のインク2aを十分に加温できると共に、分配タンク100の蓋部10b1の内面に付着したインク2aが固化することを抑制することができる。
なお、インク2aの液面の下限P2については後述する。
【0044】
分配タンク100において、仕切り部30は、内部空間1を、長手方向に垂直な面で区画し、複数の区画部30aとする。
このとき、仕切り部30は、導入口部11と当該導入口部11に最も近い位置に設けられた供給口部12との間、隣り合う供給口部12同士の間、及び、回収口部13と当該回収口部13に最も近い位置に設けられた供給口部12との間、にそれぞれ取り付けられる。すなわち、各区画部30aは、導入口部11、複数の供給口部12及び回収口部13のうちの1つをそれぞれ有することになる。
なお、これらの仕切り部30の構造は共通している。
【0045】
また、仕切り部30は、区画部30a間のインク2a及び空気2bの流通を制限するものである。このため、分配タンク100においては、導入口部11と当該導入口部11に最も近い位置に設けられた供給口部12との間に仕切り部30を取り付けることにより、導入口部11からインク2aが導入されたことに基づく液中波が、仕切り部30(板部31)により遮られ、圧力波が供給口部12に付与されることを抑制することができる。
また、隣り合う供給口部12同士の間、及び、回収口部13と当該回収口部13に最も近い位置に設けられた供給口部12との間、にも仕切り部30を取り付けることにより、各供給口部12においては、液中波による圧力変動をより抑制することができる。
これらのことから、印字ユニット20aにおける吐出を安定化させることができる。
【0046】
図3は、第1実施形態に係る分配タンクの仕切り部を示す側面図である。
図3に示すように、仕切り部30は、隣り合う区画部30a間でのインク2a及び当該インク2aの上方の空気2b、の流通を妨げる板部31と、隣り合う区画部30a間でインク2aのみを流通させるためのインク用開口部32a1及び補助インク用開口部32a2と、隣り合う区画部30a間で空気2bのみを流通させるための空気用開口部32bとを有する。
【0047】
仕切り部30において、板部31は、後述する適正領域PAに位置しており、当該適正領域PAから上下に突出した板状となっている。このため、適正領域PAにある空気2b及びインク2aは、板部31によって区画部30a間の流通が遮られることになる。これにより、分配タンク100においては、インク2aが分配タンク100の内部に導入されたことに基づく液面波が板部31により遮られることになるので、液面が上下動することによる水圧の変動が、各供給口部12に影響を及ぼすことを抑制することができる。
また、後述する検出部60が誤作動を起こすことも抑制できる。
したがって、分配タンク100によれば、印字ユニット20aにおける吐出をより安定化させることができる。
【0048】
仕切り部30において、インク用開口部32a1は、適正領域PAには位置しておらず、下限P2より下方に位置している。具体的には、貯留されたインク2aの液面が下限P2にある場合の該インク2aに浸漬する部分の上下方向における中間部分、若しくは、該中間部分より上方に設けられている。これにより、導入されたインク2aが直ちに供給口部12から供給されてしまうことを抑制することができる。
また、補助インク用開口部32a2は、インク用開口部32a1よりも下側に設けられている。
分配タンク100においては、上側にインク用開口部32a1、下側に補助インク用開口部32a2を設けることにより、インク2aが上下間でも混合されるので、停滞するインク2aをより軽減することができる。
また、補助インク用開口部32a2は、内部空間1の底面に接するように設けられているので、分配タンク100の各区画部30a内の洗浄等の際に、各区画部30a内のインク2aや洗浄液を、補助インク用開口部32a2を介して、一か所の回収口部13から排出することが可能となる。したがって、洗浄等がし易くなるという利点がある。
【0049】
ここで、貯留されたインク2aの液面が下限P2にある場合の該インク2aに浸漬する部分の面方向の面積に対するインク用開口部32a1の面方向の面積の割合は50%以下とすることが好ましく、25%以下とすることがより好ましい。この場合、区画部30a内により十分な乱流を生じさせることが可能となる。
【0050】
図4(a)は、第1実施形態に係る分配タンクにおける液流の例を説明するための説明図であり、
図4(b)は、仕切り部を取り付けない場合の液流の例を説明するための説明図である。
図4(a)に示すように、分配タンク100においては、仕切り部30を取り付けることにより、インク2aの板部31への衝突と、インク用開口部32a1及び補助インク用開口部32a2からの流通とが繰り返されることになるので、区画部30a内に十分に乱流を生じさせることが可能となる。
一方、
図4(b)に示すように、仕切り部30が無い場合は、板部31への衝突がないため、上方や端部のインク2aは、その位置で停滞し易い。
このことから、分配タンク100によれば、貯留されたインク2aの粒度、粒径、濃度、温度等の物性をより均一とすることが可能となる。
【0051】
図3に戻り、仕切り部30において、空気用開口部32bは、適正領域PAには位置しておらず、適正領域PAより上方に位置している。
このため、圧力制御機構C1による圧力制御を、空気用開口部32bを介して、全体の区画部30aに同時に及ぼすことができる。
【0052】
ここで、インク用開口部32a1及び補助インク用開口部32a2の形状は、インク2aが流通可能であれば、特に限定されず、空気用開口部32bの形状は、空気2bが流通可能であれば、特に限定されない。また、これらは、切欠き状であっても、穴状であってもよい。
なお、第1実施形態に係る分配タンク100においては、インク用開口部32a1、補助インク用開口部32a2及び空気用開口部32bとして、板部31を側面視矩形状に切り欠いた部分をこれらの開口部として採用している。
【0053】
図2(a)~(c)に戻り、分配タンク100においては、導入口部11、複数の供給口部12及び回収口部13それぞれの直上に、補助仕切り部40が設けられている。
これにより、供給口部12に液中波による圧力変動が伝わることをより抑制することができる。
なお、これらの補助仕切り部40の構造は共通している。
【0054】
補助仕切り部40は、上面視Uの字状であり、基部41と当該基部41の左右両側に設けられた左小片部42a及び右小片部42bとからなる(
図2(c)参照)。
また、補助仕切り部40は、上面視で供給口部12が左小片部42a及び右小片部42bの間に位置するように設置される。
このとき、補助仕切り部40においては、基部41が、蓋部10b1(一方の側部10b1)の内面に取り付けられる。これにより、先にヒーター部50により加温されるインク2aが直ちに供給口部12や回収口部13に供給されてしまうことを抑制し、乱流を生じさせることで、貯留されたインク2aの物性をより一層均一とすることができる。
【0055】
補助仕切り部40の材質は、上述した蓋部10b1と同様に、ステンレス、鉄、銅等の金属であることが好ましい。この場合、ヒーター部50による熱を内部空間1に貯留されたインク2aに効率よく伝えることが可能となる。
なお、蓋部10b1の材質と、補助仕切り部40の材質とは同一であっても異なっていてもよい。
なお、補助仕切り部40は、分配タンク本体部内のインク2aの影響による物性変化が適宜定める一定量以下となるような材質であることがより好ましい。
【0056】
分配タンク100において、検出部60は、内部空間1に貯留されたインク2aの液面が上限P1又は下限P2にあることを検出する。
ここで、上限P1とは、印字が行われる際の分配タンク100に貯留されるインク2aが最大量のときの液面の位置であり、下限P2とは、印字が行われる際の分配タンク100に貯留されるインク2aが最小量のときの液面の位置を意味する。
また、適正領域PAとは、インク2aの液面が上限P1にある場合と、下限P2にある場合との間の領域である。すなわち、印字時におけるインク2aの液面は適正領域PAにあることになる。
なお、上限P1及び下限P2の位置は、任意に設定することができる。
【0057】
検出部60は、上限P1及び下限P2のうち少なくともいずれか一方を検出可能であればよい。
例えば、上限P1を検出するものであれば、インク2aの液面が上限P1にある状態から印字を開始し、一定時間経過後に、インク2aの液面が上限P1に到達するまでインク2aを導入するという一連の操作を繰り返せばよい。
また、下限P2を検出するものであれば、インク2aの液面が下限P2に到達するまで印字を行い、インク2aの液面が下限P2に到達したら、一定量のインク2aを導入するという一連の操作を繰り返せばよい。
なお、第1実施形態に係る分配タンク100においては、検出部60は、後者の下限P2を検出している。
【0058】
ここで、検出部60としては、上限P1又は下限P2を検出可能であれば特に限定されないが、フロートスイッチを採用している。
かかるフロートスイッチは、上述したように、インク2aの液面が下限P2にあることを検出することが可能となっている。また、これに加え、フロートスイッチは、インク2aの導入や回収にエラーが生じた場合の安全対策として、分配タンク100の内部が満タンになることを防止するための上安全点と、分配タンク100の内部が枯渇することを防止するための下安全点とを検出することが可能となっている。
【0059】
制御装置C2は、内部空間1に貯留されたインク2aの量を制御するための装置である。
制御装置C2は、少なくとも、中央処理部(CPU)、演算処理部、記憶部、画像処理部、入出力部(キーボード、ディスプレイ)等を備える一般的なコンピュータである。
制御装置C2は、検出部60がインク2aの液面が下限P2にあることを検出したことに基づく検出信号を受信すると、一定量のインク2aを分配タンク100の内部に導入する指令を発信する。これにより、ポンプPが駆動し、インクタンクTの内部のインク2aが、導入口部11から分配タンク100の内部に導入されるようになっている(
図1参照)。
【0060】
圧力制御機構C1は、内部空間1に貯留された空気2bの圧力を制御することにより、分配タンク100から印字ユニット20aへのインク2aの供給量を制御するためのものである。
圧力制御機構C1は、内部空間1における空気2bの圧力を加圧若しくは減圧するための圧力調整装置と、内部空間1における空気2bの圧力を大気圧にするための開放弁と、内部空間1の圧力を計測するための圧力計とを有する。
圧力制御機構C1においては、内部空間1の空気2bの圧力を圧力計により測定し、それに応じて、圧力調整装置により加圧又は減圧することが可能となっている。
これにより、例えば、印字時や印字ヘッド23の保管時には、重力によるインク2aの過剰供給やインク2aの漏れを防ぐため、空気2bの圧力を減圧して負圧となるように制御し、パージ時には、印字ヘッド23から強制的にインク2aを排出することで吐出不良を解消するため、空気2bの圧力を加圧して正圧となるように制御することができる。
なお、負圧から正圧とする際、又は、正圧から負圧とする際には、途中でエアーフィルタを介して一時的に大気圧とすることが好ましい。
なお、圧力調整装置としては、コンプレッサ、真空ポンプ、チューブポンプ、ダイヤフラムポンプ等が好適に用いられる。
【0061】
印字部20は、分配タンク100の下面に取り付けられる。
印字部20は、複数の印字ユニット20aからなる。
そして、印字ユニット20aは、分配タンク100の供給口部12に対応するように容器部10の底部(下底部10a)に取り付けられた電磁弁21と、該電磁弁21を介して供給口部12に連通する供給チューブ22と、該供給チューブ22の下端に取り付けられた印字ヘッド23とからなる。これにより、より均一となったインク2aを用いて、確実にインクジェット印字を行うことが可能となる。
【0062】
なお、印字ヘッド23の方式としては、シリアルヘッド方式、ラインヘッド方式を採用することができる。なお、第1実施形態に係る分配タンク100に取り付けられた印字ユニット20aの印字ヘッド23においては、ラインヘッド方式を採用している。
また、印字ユニット20aにおいては、供給チューブ22に、チューブヒーター51が取り付けられている。これにより、インク2aが供給チューブ22を流通する際に、冷却されてしまうことを防止することができる。
【0063】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る分配タンクの第2実施形態について説明する。
第2実施形態に係る分配タンクのインクジェット印字装置における作用は、
図1に示す第1実施形態に係る分配タンク100と同じであるので説明を省略する。
【0064】
図5(a)は、第2実施形態に係る分配タンクを示す透過側面図であり、
図5(b)は、
図5(a)に示す分配タンクをX2-X2線で切断した矢視断面図であり、
図5(c)は、
図5(a)に示す分配タンクをY2-Y2線で切断した矢視断面図である。
なお、
図5(a)~(c)においては、貯留されたインク2asを透過させて示している。
これに加え、
図5(b)においては、印字ユニット20as及び導入管T1の記載を省略している。
図5(a)~(c)に示すように、分配タンク101は、内部空間1sを有する容器部10sと、内部空間1sを複数の区画部30asに区画するための仕切り部30sと、インク2asの液面が上限P1又は下限P2にあることを検出するための検出部60sとを備える(
図3参照)。
すなわち、第2実施形態に係る分配タンク101は、内部空間1sが12個の仕切り部30sにより13か所の区画部30asに区画されている点で、第1実施形態に係る分配タンク100と相違する。
また、これに加え、第2実施形態に係る分配タンク101は、補助仕切り部40と、ヒーター部50とを有しない点で、第1実施形態に係る分配タンク100と相違する。
なお、これらの相違以外の構成は、第1実施形態に係る分配タンク100と同じであるので、詳細な説明は省略する。
【0065】
分配タンク101においては、第1実施形態に係る分配タンク100と同様に、仕切り部30asを、導入口部11sと、該導入口部11sに最も近い位置に設けられた供給口部12sとの間、隣り合う供給口部12s同士の間、及び、回収口部13sと当該回収口部13sに最も近い位置に設けられた供給口部12sとの間、の内部空間1sにそれぞれ取り付け、適正領域PAに板部31を配置することにより、分配タンク101内部のインク2asの物性をより均一化することができ、且つ、液面波及び液中波を抑制することにより、吐出を安定化させることができる(
図3参照)。
【0066】
(第3実施形態)
次に、本発明に係る分配タンクの第3実施形態について説明する。
図6は、第3実施形態に係る分配タンクのインクジェット印字装置における作用を説明するための模式図である。
図6に示すように、第3実施形態に係る分配タンク102は、印字部20tと連結しており、且つ、分配タンク102内の空気の圧力を制御するための圧力制御機構C1と、分配タンク102内のインクの貯留量を制御するための制御装置C2とに接続されている。
【0067】
分配タンク102においては、インクタンクTに収容されたインクがポンプPにより汲み上げられ、導入管T1を介して、当該分配タンク102内に導入される。
分配タンク102に導入されたインクは、一時的に分配タンク102内に貯留されると共に、分配タンク102から印字部20tに直接供給される。
そして、印字部20tは、供給されたインクを吐出する。こうして、被印字媒体(図示しない)にインクジェット印字が施されることになる。
なお、この場合のインクジェット印字装置は、回収管T2を有していない。すなわち、分配タンク102は、回収口部を有していない。このため、分配タンク102内に貯留されたインクは印字部20tに供給されるのみで、回収されることはない。
【0068】
図7(a)は、第3実施形態に係る分配タンクを示す透過側面図であり、
図7(b)は、
図7(a)に示す分配タンクをX3-X3線で切断した矢視断面図であり、
図7(c)は、
図7(a)に示す分配タンクをY3-Y3線で切断した矢視断面図である。
なお、
図7(a)~(c)においては、貯留されたインク2atを透過させて示している。
これに加え、
図7(b)においては、印字ユニット20at及び導入管T1の記載を省略している。
図7(a)~(c)に示すように、分配タンク102は、内部空間1tを有する容器部10tと、内部空間1tを複数の区画部30atに区画するための仕切り部30tと、インク2atの液面が上限P1又は下限P2にあることを検出するための検出部60tとを備える(
図3参照)。
すなわち、第3実施形態に係る分配タンク102は、内部空間1tが1個の仕切り部30tにより2か所の区画部30atに区画されている点で、第1実施形態に係る分配タンク100と相違する。
また、これに加え、第3実施形態に係る分配タンク102は、容器部10tに回収口部13が設けられておらず、補助仕切り部40と、ヒーター部50とを有しない点で、第1実施形態に係る分配タンク100と相違する。
なお、これらの相違以外の構成は、第1実施形態に係る分配タンク100と同じであるので、詳細な説明は省略する。
【0069】
容器部10tにおいて、下底部10atには、内部空間1tにインク2atを導入するための導入口部11tと、内部空間1tに貯留されたインク2atを複数の印字ユニット20atにそれぞれ供給するための複数の供給口部12tとが設けられている。
なお、導入口部11tには、導入管T1が連結される。
また、容器部10tにおいては、複数の供給口部12tが互いに等間隔となるように下底部10atに設けられている。
そして、導入口部11tは、これを阻害しないように、下底部10atの一端側に設けられている。すなわち、導入口部11t、複数の供給口部12tは、この順序で、下底部10atの長手方向に沿って直列となるように設けられている(
図7(c)参照)。
【0070】
分配タンク102においては、第1実施形態に係る分配タンク100と同様に、仕切り部30tを、導入口部11tと、該導入口部11tに最も近い位置に設けられた供給口部12tとの間の内部空間1tに取り付け、適正領域PAに板部31を配置することにより、分配タンク102内部のインク2atの物性をより均一化することができ、且つ、液面波及び液中波を抑制することにより、吐出を安定化させることができる(
図3参照)。
【0071】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0072】
第1実施形態に係る分配タンク100においては、インクタンクTに収容されたインクを直接導入しているが、インクタンクTから、フィルター、加熱装置、脱気装置等を介して、分配タンクに導入するようにしてもよい。
【0073】
第1実施形態に係る分配タンク100においては、容器部10は、上面視矩形状の下底部10aと、下底部10aの四方の周縁に立設する側部10bと、側部10bの上端に設けられた上底部10cとを有する箱状となっているが、これに限定されず、内部空間に仕切り部を取り付け可能であれば、六角柱状、楕円柱状等であってもよい。
【0074】
第1実施形態に係る分配タンク100においては、下底部10aに導入口部11及び回収口部13を設けているが、これに限定されない。
例えば、貯留されたインクに浸漬される側部に設けることも可能である。
【0075】
第1実施形態に係る分配タンク100においては、複数の供給口部12が互いに等間隔となるように下底部10aに設けられ、導入口部11及び回収口部13は、これを阻害しないように、下底部10aの両端側にそれぞれ設けられているが、必須ではない。
また、導入口部11、複数の供給口部12、回収口部13は、この順序で、下底部10aの長手方向に沿って直列となるように設けられているが必須ではない。
例えば、導入口部の位置が、上述した側部にあってもよく、配列された供給口部の間にあってもよい。また、供給口部は直列ではなく、並列に設けられていてもよい。
【0076】
第1実施形態に係る分配タンク100において、内部空間1に取り付けた複数の仕切り部30は、共通した構造を有しているが、必須ではない。例えば、空気用開口部やインク用開口部の位置やサイズが異なるものが含まれていてもよい。
【0077】
第1実施形態に係る分配タンク100において、仕切り部30は、板部31と、インク用開口部32a1及び補助インク用開口部32a2と、空気用開口部32bとを有しているが、補助インク用開口部32a2は必須ではない。
また、第1実施形態に係る分配タンク100において、補助インク用開口部32a2は、内部空間1の底面に接するように設けられているが、底面から一定距離離れた位置に設けられていてもよい。
また、仕切り部30は、インク用開口部32a1、補助インク用開口部32a2及び空気用開口部32b以外にも更に開口部を有していてもよい。
【0078】
第1実施形態に係る分配タンク100において、印字ユニット20aは、電磁弁21と、供給チューブ22と、印字ヘッド23とからなっているが、インクジェット印字可能であればこの構成に限定されない。
また、供給チューブ22には、チューブヒーター51が取り付けられているが必須ではない。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の分配タンクは、インクジェット印字装置に用いられる。具体的には、インクジェット印字装置において、インクタンクから導入されたインクを、一時的に貯留すると共に、印字ユニットに直接供給するための分配タンクとして用いられる。
本発明の分配タンクによれば、分配タンク内部のインクの物性をより均一化することができ、且つ、液面波及び液中波を抑制することにより、吐出を安定化させることができる。
【符号の説明】
【0080】
1,1s,1t・・・内部空間
10,10s,10t・・・容器部
100,101,102・・・分配タンク
10a,10at・・・下底部
10b・・・側部
10b1・・・一方の側部(蓋部)
10c・・・上底部
11,11s,11t・・・導入口部
12,12s,12t・・・供給口部
13,13s・・・回収口部
20,20t・・・印字部
20a,20as,20at・・・印字ユニット
21・・・電磁弁
22・・・供給チューブ
23・・・印字ヘッド
2a,2as,2at・・・インク
2b・・・空気
30,30s,30t・・・仕切り部
30a,30as,30at・・・区画部
31・・・板部
32a1・・・インク用開口部
32a2・・・補助インク用開口部
32b・・・空気用開口部
40・・・補助仕切り部
41・・・基部
42a・・・左小片部
42b・・・右小片部
50・・・ヒーター部
51・・・チューブヒーター
52・・・熱電対
60,60s,60t・・・検出部
C1・・・圧力制御機構
C2・・・制御装置
P・・・ポンプ
P1・・・上限
P2・・・下限
PA・・・適正領域
T・・・インクタンク
T1・・・導入管
T2・・・回収管