(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128095
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】紙葉類厚み検出装置、紙葉類識別装置、及び紙葉類取扱装置
(51)【国際特許分類】
G07D 7/00 20160101AFI20230907BHJP
G07D 7/164 20160101ALI20230907BHJP
【FI】
G07D7/00 D
G07D7/164
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022032201
(22)【出願日】2022-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】504373093
【氏名又は名称】日立チャネルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グエン ドゥック ヴィエット
(72)【発明者】
【氏名】三浦 洋輔
【テーマコード(参考)】
3E041
【Fターム(参考)】
3E041AA02
3E041BA04
3E041DB10
3E041EA01
(57)【要約】
【課題】紙葉類厚み検出装置において、メンテナンス性を確保しつつ、基準ローラと検知ローラとの間へ紙葉類が突入した際の衝撃により発生する振動を抑制して紙葉類の厚み検知の精度を向上させる。
【解決手段】紙葉類の厚みを検知する紙葉類厚み検出装置は、基準ローラを備えた第1のユニットと、基準ローラと共に紙葉類を挟んで搬送すると共に紙葉類の厚みに応じて基準ローラに対して変位する検知ローラ、及び、検知ローラの変位量に基づき紙葉類の厚みを検出する厚みセンサ、を備えた第2のユニットと、を有する。第1のユニット及び第2のユニットは、基準ローラと検知ローラとが紙葉類を挟むように重ねられて紙葉類の搬送路を形成すると共に、搬送路の一端辺側に設けられた回転軸を中心に開閉可能に組付けられている。第2のユニットは、厚みセンサに制振部材を有する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙葉類の厚みを検知する紙葉類厚み検出装置であって、
基準ローラを備えた第1のユニットと、
前記基準ローラと共に前記紙葉類を挟んで搬送すると共に該紙葉類の厚みに応じて前記基準ローラに対して変位する検知ローラ、及び、該検知ローラの変位量に基づき該紙葉類の厚みを検出する厚みセンサ、を備えた第2のユニットと、を有し、
前記第1のユニット及び前記第2のユニットは、
前記基準ローラと前記検知ローラとが前記紙葉類を挟むように重ねられて該紙葉類の搬送路を形成すると共に、該搬送路の一端辺側に設けられた回転軸を中心に開閉可能に組付けられ、
前記第2のユニットは、
前記厚みセンサに制振部材を有する
ことを特徴とする紙葉類厚み検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の紙葉類厚み検出装置であって、
前記制振部材は、前記検知ローラの振動を制振する制振方向に粘性変形することを特徴とする紙葉類厚み検出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の紙葉類厚み検出装置であって、
前記第2のユニットは、
前記厚みセンサを前記検知ローラに対向するように支持するブラケットを有し、
前記制振部材は、前記ブラケット上に配置されていることを特徴とする紙葉類厚み検出装置。
【請求項4】
請求項1に記載の紙葉類厚み検出装置であって、
前記制振部材の粘性係数は、所定値以上であることを特徴とする紙葉類厚み検出装置。
【請求項5】
請求項4に記載の紙葉類厚み検出装置であって、
前記制振部材の配置面と共に前記制振部材を押圧する、前記制振部材よりも剛性が高い押圧部材を有することを特徴とする紙葉類厚み検出装置。
【請求項6】
請求項5に記載の紙葉類厚み検出装置であって、
前記押圧部材は、前記制振部材の押圧以外の機能を有する前記第2のユニットの既存部材であり、
前記制振部材は、前記配置面から前記押圧部材までの間に充填されている
ことを特徴とする紙葉類厚み検出装置。
【請求項7】
請求項1~6の何れか1項に記載の紙葉類厚み検出装置を有する紙葉類識別装置。
【請求項8】
請求項7に記載の紙葉類識別装置を有する紙葉類取扱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙葉類厚み検出装置、紙葉類識別装置、及び紙葉類取扱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、現金自動預払機(ATM:Automatic Teller Machine)や現金自動支払機(CD:Cash Dispenser)といった現金自動取引装置において、紙葉類である紙幣の種別や真贋を識別するための紙幣識別装置がある。紙幣識別装置は、紙幣厚み検出装置を備え、紙幣厚み検出装置が検出した紙幣の厚みに基づいて、金種判定や真偽の判定や、紙幣への異物付着の検知を行う。紙幣厚み検出装置は、複数の基準ローラと、複数の検知ローラと、搬送される紙幣が基準ローラと検知ローラとで挟持される際に、基準ローラを基準として検知ローラが紙幣の厚みに応じて変位する変位量を検知する複数の変位センサと、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、紙幣識別装置では、紙幣の搬送路を挟んで上ユニットと下ユニットに分けてユニット化し、紙幣の搬送方向の一端辺側をヒンジの回転軸として開閉可能に取り付けた構成が採用されてきている。この構成の紙幣識別装置に組込まれる紙幣厚み検出装置もまた、複数の基準ローラを下ユニットとし、複数の検知ローラを上ユニットとしてユニット化し、紙幣の搬送方向の一端辺側を回転軸として開閉可能に組付けた構成とされる。このような開閉可能な構成は、基準ローラと検知ローラとの間で発生した紙幣のジャムを取り除く際のメンテナンス性が高いという利点がある。
【0005】
しかし、このような開閉可能な構成では、上ユニットが開閉可能であり拘束が少ないため、基準ローラと検知ローラとの間へ紙幣が突入した際の衝撃により発生する検知ローラの振動の抑制が十分ではない。この振動によって上下のローラの間隔が変動すると、紙幣厚み検出装置は、紙幣の厚みを正しく検知できなくなる。
【0006】
本発明は、上記を考慮してなされたものであり、紙葉類厚み検出装置において、メンテナンス性を確保しつつ、基準ローラと検知ローラとの間へ紙葉類が突入した際の衝撃により発生する振動を抑制して紙葉類の厚み検知の精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するため本発明の一態様では、紙葉類の厚みを検知する紙葉類厚み検出装置であって、基準ローラを備えた第1のユニットと、前記基準ローラと共に前記紙葉類を挟んで搬送すると共に該紙葉類の厚みに応じて前記基準ローラに対して変位する検知ローラ、及び、該検知ローラの変位量に基づき該紙葉類の厚みを検出する厚みセンサ、を備えた第2のユニットと、を有し、前記第1のユニット及び前記第2のユニットは、前記基準ローラと前記検知ローラとが前記紙葉類を挟むように重ねられて該紙葉類の搬送路を形成すると共に、該搬送路の一端辺側に設けられた回転軸を中心に開閉可能に組付けられ、前記第2のユニットは、前記厚みセンサに制振部材を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、例えば、紙葉類厚み検出装置において、メンテナンス性を確保しつつ、基準ローラと検知ローラとの間へ紙葉類が突入した際の衝撃により発生する振動を抑制して紙葉類の厚み検知の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る現金自動取引装置の外観斜視図。
【
図2】実施形態に係る現金自動取引装置の内部構成の概略を示す図。
【
図6】実施形態に係る厚み検出装置の平面図(上下ユニットを閉じた状態)。
【
図7】実施形態に係る厚み検出装置の斜視図(上下ユニットを閉じた状態)。
【
図8】実施形態に係る厚み検出装置の正面図(上下ユニットを閉じた状態)。
【
図9】実施形態に係る厚み検出装置の側断面図(上下ユニットを閉じた状態)。
【
図10】実施形態に係る厚み検出装置の側断面図(上下ユニットを開いた状態)。
【
図11】実施形態に係る厚み検出装置の正面図(上下ユニットを開いた状態)。
【
図12】制振部材を設けていない比較例の厚み検出装置の検知ローラの振動による厚み検出値の変化を示すグラフ。
【
図13】粘性係数が所定値未満の制振部材を梁で押さえた実施例1の厚み検出装置の検知ローラの振動による厚み検出値の変化を示すグラフ。
【
図14】粘性係数が所定値以上の制振部材を設けた実施例2の厚み検出装置の検知ローラの振動による厚み検出値の変化を示すグラフ。
【
図15】粘性係数が所定値以上の制振部材を梁で押さえた実施例3の厚み検出装置の検知ローラの振動による厚み検出値の変化を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。以下の実施形態は、図面を含め例示に過ぎず、本発明を限定するものではない。以下の実施形態を説明するための各図面において同一の符号は同一あるいは類似の機能を備えた構成要素又は処理を示し、後出の説明を省略する。また各実施形態、各実施例、及び各変形例は、本発明の技術思想の範囲内かつ整合する範囲内で一部又は全部を適宜組合せることができる。
【0011】
以下の実施形態では、現金自動取引装置の装置筐体の鉛直方向(上部方向、上方)をZ軸の正方向、装置筐体の利用者側(正面側、前方)から反対側(背面側、後方)に向かう方向をY軸の正方向とする。また、装置筐体の利用者側に向かって左側から右側に向かう方向をX軸の正方向とする。以下の実施形態の説明では、X軸、Y軸、及びZ軸がそれぞれ直交する正系のXYZ座標系を用いる。
【0012】
なお以下の実施形態において“上”“下”“左”“右”“前”“後”“背”等で表す方向及び位置は相対的なものに過ぎず、またXYZ座標系により現金自動取引装置及びその構成要素の向き、形状、又は大きさが限定されるものではない。また実施形態の説明及び図示における構成要素の数は、一例に過ぎない。
【0013】
以下の実施形態では、紙葉類厚み検出装置、紙葉類識別装置、紙葉類取扱装置、及び紙葉類自動取引装置の例として、紙葉類として紙幣を取り扱う紙幣厚み検出装置、紙幣識別装置、紙幣取扱装置、及び現金自動取引装置を例として説明する。しかしこれに限られず、小切手や商品券等の他の様々な紙葉類についても同様に取り扱うことができる。
【0014】
(現金自動取引装置1の全体構成)
図1は、実施形態に係る現金自動取引装置1の外観斜視図である。現金自動取引装置1は、キャッシュカードや紙幣、明細票等を取引媒体とし、利用者の操作によって現金の預入れや支払い、振込み等の処理を行う。現金自動取引装置1の装置筐体内の上部には、利用者の通帳を処理し、取引明細を印字して放出する通帳処理機構(不図示)と、利用者のカードを処理し、取引明細票を印字して放出するカード及び明細票処理機構(不図示)が備えられる。
【0015】
通帳処理機構は、現金自動取引装置1の正面のスロット2から投入された利用者の通帳を処理し、取引明細を印字して放出する。カード及び明細票処理機構は、現金自動取引装置の正面のスロット3から投入された利用者のカードを処理し、取引明細票を印字してカードと共に放出する。現金自動取引装置1の正面前方には、利用者の取引の内容を表示すると共に、取引のための種々の情報や項目を入力する画面操作部4が備えられる。
【0016】
現金自動取引装置1の装置筐体内の下部には、紙幣を処理する紙幣取扱装置10が備えられる。紙幣取扱装置10の入出金部5に設けられたシャッタ5aの開閉に応じて紙幣の入出金取引が行われる。
【0017】
なお、現金自動取引装置1の装置筐体内には、硬貨を処理する硬貨処理装置(不図示)が備えられてもよい。硬貨処理装置の入出金部に設けられたシャッタ(不図示)の開閉に応じて硬貨の入出金取引が行われる。
【0018】
(現金自動取引装置1の内部構成)
図2は、実施形態に係る現金自動取引装置1の内部構成の概略を示す図である。現金自動取引装置1の筐体下部の上方には、取引される紙幣の処理機構が配置され、下方には紙幣の収納機構が配置される。紙幣取扱装置10の筐体下部の上方において、その前側(利用者に面する側:
図2の上方右側)には、利用者により略立位にセットされた紙幣の入金を受付け、略立位にセットして紙幣を放出して利用者に取出しを行わせる入出金部5が配置される。入出金部5は、上方から投入された紙幣を下方へ繰出す紙幣繰出部5bと、下方から搬送されてきた出金用又は返却用の紙幣を集積する紙幣集積部5cが、前後に配置されている。
【0019】
また、中央部に紙幣の判別を行う紙幣識別装置30が配置され、後側(
図2の上方左側)には利用者が入金した紙幣を取引成立までの間、一旦収納する一時保留部40が配置される。これらの各機構部は双方向の搬送路により接続される。
【0020】
紙幣識別装置30は、前方及び後方から搬送路30a上を搬送される紙幣を何れの方向からでも金種判別及び真偽判別を行うことができる。紙幣識別装置30は、入出金の双方向に搬送される紙幣を金種判別及び真偽判別でき、紙幣の受入可否及び出金可否を判別することができる。
【0021】
紙幣取扱装置10の下方において、紙幣を金種別に収納する複数の収納部70が配置されている。収納部70には、紙幣識別装置30で受付可と判別された紙幣を金種毎に収納するものがある。その他、収納部70には、紙幣識別装置30で受付不可と判別された紙幣を一時収納するもの、紙幣識別装置30で出金不可と判別された紙幣を収納するもの、出金用に外部から紙幣を補充する際に使用されるもの等がある。
【0022】
(紙幣識別装置30の外観構成)
図3~
図5を参照して、実施形態に係る紙幣識別装置30の外観構成を説明する。
図3は実施形態に係る紙幣識別装置30のX軸負方向側から見た側面図であり、
図4は実施形態に係る紙幣識別装置30のZ軸正方向側から見た平面図であり、
図5は実施形態に係る紙幣識別装置30のY軸負方向側から見た正面図である。
【0023】
紙幣識別装置30は、紙幣の搬送路30aを挟んで、搬送路30aの上方に位置する部品をユニット化した上ユニット30Uと、搬送路30aの下方に位置する部品をユニット化した下ユニット30Lとを有する。紙幣識別装置30は、上ユニット30Uが、下ユニット30Lに対して、紙幣の搬送方向の一端辺側(Y軸正方向側)にX軸に平行な回転軸30Xを回転中心として開閉可能に取り付けられた構成である。上ユニット30Uは、回転軸30Xの周りに矢印A(
図3)方向へ開放可能である。
【0024】
また、紙幣識別装置30は、回転軸30Xの近傍の内部(
図3の領域30Z1、
図4の領域30Z2付近)に、搬送路30aを搬送される紙幣の厚みを検知する厚み検出装置30T(
図6~
図11)を備える。
【0025】
(厚み検出装置30Tの構成)
図6~
図11を参照して、実施形態に係る厚み検出装置30Tの構成を説明する。
図6は、実施形態に係る厚み検出装置30TのZ軸正方向側から見た平面図である。
図7は、実施形態に係る厚み検出装置30Tの斜視図(上下ユニットを閉じた状態)である。
図8は、実施形態に係る厚み検出装置30TのY軸正方向側から見た正面図(上下ユニットを閉じた状態)である。
図9は、実施形態に係る厚み検出装置30TのX軸負方向側から見た側断面図(上下ユニットを閉じた状態)である。
図10は、実施形態に係る厚み検出装置30TのX軸負方向側から見た側断面図(上下ユニットを開いた状態)である。
図11は、実施形態に係る厚み検出装置30TのY軸正方向側から見た正面図(上下ユニットを開いた状態)である。
【0026】
図6の厚み検出装置30Tの平面図は、
図4の紙幣識別装置30の平面図において厚み検出装置30T以外の要素の図示を省略したものである。また、
図9の厚み検出装置30Tの側断面図は、
図3の紙幣識別装置30の側面図において厚み検出装置30T以外の要素の図示を省略したものである。
【0027】
図6~
図7に示すように、厚み検出装置30Tは、ブラケット31、センサ基板32、制振部材33、梁34、基準ローラ35、基準ローラ軸35X、検知ローラ36、検知ローラ軸36X、及び筐体37を備える。
【0028】
筐体37は、紙幣識別装置30の上ユニット30U側の筐体37UR,37UL、下ユニット30L側の筐体37LR,37LLを含む。筐体37UR,37LRは、厚み検出装置30TのX軸正方向側の端面を形成する。筐体37UL,37LLは、厚み検出装置30TのX軸負方向側の端面を形成する。
【0029】
筐体37UR,37ULは、梁34のX軸方向の両端からそれぞれ梁34に対して垂直に取り付けられる。ブラケット31は、筐体37UR,37ULに架設され、後述するように厚みセンサが配置されたセンサ基板32を、検知ローラ36に対して厚みセンサが対向するように支持する。また、ブラケット31には、後述するように制振部材33が設けられる。ブラケット31、センサ基板32、制振部材33、梁34、検知ローラ36、検知ローラ軸36X、及び筐体37UR,37ULは、厚み検出装置30Tの上ユニット30TU(
図7)を構成する。基準ローラ35及び基準ローラ軸35Xは、厚み検出装置30Tの下ユニット30TL(
図7)を構成する。
【0030】
基準ローラ軸35Xは、紙幣搬送機構の搬送駆動系(不図示)から回転駆動力が伝達される回転軸であり、搬送路の幅手方向(X軸方向)に沿って、筐体37LR,37LLに架設されている。検知ローラ軸36Xは、基準ローラ軸35Xの上側(Z軸正方向)に対向して、筐体37LR,37LLに架設されている。
【0031】
下側の基準ローラ軸35Xには、複数の基準ローラ35が配置されている。また、上側の検知ローラ軸36Xには、各基準ローラ35に対して対向するように基準ローラ35と同数の検知ローラ36が配置されている。
【0032】
検知ローラ36は、外周面が変位しない金属などの円筒状の非弾性部材からなる外輪と、基準ローラ35に押し付ける方向に弾性変形可能なバネやゴム等の弾性部材と、から構成されている。
【0033】
基準ローラ35は金属で構成され、外周面が変位しない基準面として設けられ、この基準面に各検知ローラ36が対接される。そして、各検知ローラ36は、それぞれ対応する基準ローラ35に押し付けられて従動回転する。また、検知ローラ36と基準ローラ35との間に紙幣が挟持されると、基準面である基準ローラ35の外周面に対向する検知ローラ36の外輪が、紙幣の厚みに応じて上方向(基準ローラ軸35Xから検知ローラ軸36Xへ向かうZ軸正方向)へ変位する。
【0034】
複数の検知ローラ36の上方(Z軸正方向)には、各検知ローラ36に対して対向配置させた厚みセンサ(不図示)と、厚みセンサ(不図示)から得られるデータを処理するセンサ処理部(不図示)とが配置されているセンサ基板32が設けられている。厚みセンサは、対向する検知ローラ36が基準ローラ35とで挟持した紙幣の厚みに応じて上下方向(Z軸方向)へ弾性変位した変位量を検出することが可能な、例えば、渦電流磁場式変位センサである。センサ基板32は、ブラケット31によって、検知ローラ36に対して厚みセンサが対向するように支持される。厚み検出装置30Tは、厚みセンサによって検出された検知ローラ36の変位量に基づいて紙幣の厚みを検出する。
【0035】
制振部材33は、ブラケット31上に、搬送路30aの幅手方向(X軸方向)に延びるように設けられた長尺状の部材であるが、形状は長尺に限られない。制振部材33は、好ましくは粘弾性部材であるが、粘弾性部材に限られない。制振部材33は、ブラケット31に対して梁34へ向かうZ軸正方向に複数積層されているが、単層でもよい。制振部材33は、基準ローラ35と検知ローラ36との間へ紙幣が突入した際の衝撃により発生する検知ローラ36の振動を抑制するダンパーである。
【0036】
さらに制振部材33を、制振部材33よりも剛性が高い押圧部材で押さえると、検知ローラ36の初期振幅が抑制され、制振時間が短縮される。既存の部材を押圧部材として利用できる場合には、制振部材33の配置面と押さえ部材との間を制振部材33で充填することで、制振部材33の制振がより効果的になる。本実施形態では、
図7に示すように、押圧部材として梁34を用い、ブラケット31上に梁34まで制振部材33をZ軸正方向に積層して充填することで、制振効果を高めている。制振部材33を押圧する押圧部材は、新規に設けてもよいが、梁34のような既存部材を利用することで、部品点数を増やすことなく制振部材33の制振効果の向上を図ることができる。
【0037】
なお、制振部材33は、検知ローラ36の振動方向(もしくは制振方向)に対して粘性変形する位置関係であれば、
図7~
図9に示す態様に限らず、上ユニット30TU内の何れに配置しても制振効果が得られる。
【0038】
図3に示すように、紙幣識別装置30の上ユニット30Uが回転軸30Xを中心に下ユニット30Lに対して矢印A方向へ回転移動されると、厚み検出装置30Tの上ユニット30TUが下ユニット30TLに対して矢印A方向へ回転移動する(
図10)。上ユニット30TUは、筐体37UR,37UL、ブラケット31、センサ基板32、制振部材33、及び梁34を含む。下ユニット30TLは、筐体37LR,37LL及び基準ローラ軸35Xを含む。
図11は、
図10に示す上下ユニットを開いた状態の厚み検出装置30TのY軸正方向から見た正面図である。
【0039】
(制振部材33による検知ローラ36の制振効果)
図12~
図15を参照して、実施形態に係る制振部材33による検知ローラ36の制振効果を説明する。
図10~
図15は、時刻を横軸、検知ローラ36の厚み検出値を縦軸とし、所定の厚みの紙幣を搬送する際の検知ローラ36の振動による厚み検出値の時間変化を示す。
【0040】
先ず、比較例として、厚み検出装置30Tに制振部材33を設けない場合の検知ローラ36の振動の時間変化を説明する。
図12は、制振部材33を設けていない比較例の厚み検出装置30Tの検知ローラ36の振動による厚み検出値の変化を示すグラフである。
【0041】
図12に示すように、時刻t=0で発生した検知ローラ36の振動により、センサ基板32に取付けられた厚みセンサの検出値は振動するが、
図12中の丸囲みで示すように、その振動が所定範囲に収束するために時刻t=t5までの時間を要した。
【0042】
次に、実施例1として、厚み検出装置30Tに粘性係数が所定値未満の制振部材33を梁34で押さえた場合の検知ローラ36の振動の時間変化を説明する。
図13は、粘性係数が所定値未満の制振部材33を梁34で押さえた実施例1の厚み検出装置30Tの検知ローラ36の振動による厚み検出値の変化を示すグラフである。
【0043】
図13に示すように、時刻t=0で発生した検知ローラ36の振動により、センサ基板32に取付けられた厚みセンサの検出値は振動するが、
図13中の丸囲みで示すように、その振動が所定範囲に収束するためにおよそ時刻t=t2までの時間を要した。実施例1は、比較例よりも、時刻t=0の初期振動の振幅が抑制されると共に、振動の収束時間が短くなった。実施例1では、梁34に押圧された制振部材33は、振動を抑制する補強材として機能しているといえる。
【0044】
次に、実施例2として、厚み検出装置30Tに粘性係数が所定値以上の制振部材33を設けた場合の検知ローラ36の振動の時間変化を説明する。
図14は、粘性係数が所定値以上の制振部材33を設けた実施例2の厚み検出装置30Tの検知ローラ36の振動による厚み検出値の変化を示すグラフである。
【0045】
図14に示すように、時刻t=0で発生した検知ローラ36の振動により、センサ基板32に取付けられた厚みセンサの検出値は振動するが、
図14中の丸囲みで示すように、その振動が所定範囲に収束するためにおよそ時刻t=t1までの時間を要した。実施例2は、実施例1よりも振幅は大きいが振動の収束時間がさらに短くなっている。実施例2では、制振部材33は、振動を吸収するダンパーとして機能しているといえる。
【0046】
次に、実施例3として、厚み検出装置30Tに粘性係数が所定値以上の制振部材33を梁34で押さえた検知ローラ36の振動の時間変化を説明する。
図15は、粘性係数が所定値以上の制振部材33を梁34で押さえた実施例3の厚み検出装置30Tの検知ローラ36の振動による厚み検出値の変化を示すグラフである。
【0047】
図15に示すように、時刻t=0で発生した検知ローラ36の振動により、センサ基板32に取付けられた厚みセンサの検出値は振動する。
図15中の丸囲みで示すように、その振動が所定範囲に収束するためにおよそ時刻t=(t1/2)程度までの時間を要した。実施例3は、実施例2よりも振動の収束時間がさらに短くなっている。実施例3では、制振部材33は、粘性係数が所定値以上であり、制振部材33よりも剛性が高い梁34で制振部材33を押圧することにより、振動を吸収するダンパー性能がさらに高まったといえる。
【0048】
以上から、制振部材33は、実施例3、実施例2、実施例1の順序で、振動を吸収するダンパー性能が高く、より短時間で検知ローラ36の振動を収束させる。よって、これらの実施例によれば、基準ローラ35と検知ローラ36との間へ紙幣が突入した際の衝撃により発生する検知ローラ36の振動を抑制して紙幣の厚み検知の精度を向上させることができる。また、紙幣識別装置30及び厚み検出装置30Tを上ユニット30U,30TUと下ユニット30L,30TLに分けて開閉可能に取り付けた構成であっても、検知ローラ36の振動を抑制できる。よって、基準ローラ35と検知ローラ36との間で発生した紙幣のジャムを取り除く際のメンテナンス性との両立を図ることができる。
【0049】
なお本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例を含む。例えば、上述の実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。また矛盾しない限りにおいて、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成で置き換えたり、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えたりすることも可能である。また各実施形態の構成の一部について、追加、削除、置換、統合、及び分割をすることが可能である。また実施形態で示した各処理は、処理効率又は実装効率に基づいて適宜分散又は統合してもよい。
【符号の説明】
【0050】
1:現金自動取引装置、10:紙幣取扱装置、30:紙幣識別装置、30T:厚み検出装置、30L:下ユニット、30U:上ユニット、30TL:下ユニット(第1のユニット)、30TU:上ユニット(第2のユニット)、30a:搬送路、31:ブラケット、32:センサ基板、33:制振部材、34:梁、35:基準ローラ、36:検知ローラ、37、37LR,37LL,37UR,37UL:筐体。