(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128105
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】墜落防止設備取付冶具及び建物の施工方法
(51)【国際特許分類】
E04G 21/32 20060101AFI20230907BHJP
E04D 15/00 20060101ALI20230907BHJP
E04G 5/14 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
E04G21/32 C
E04D15/00 Z
E04G5/14 302A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022032216
(22)【出願日】2022-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504082025
【氏名又は名称】株式会社イング
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】井口 努
(57)【要約】
【課題】施工の手間を削減することができる墜落防止設備取付冶具及び建物の施工方法を提供する。
【解決手段】建物Aの梁2に脱着可能に係合する係合部(第一爪13、第二爪23)と、前記係合部(第一爪13、第二爪23)から延出するように形成される支持部(第一鋼管部11)と、前記支持部(第一鋼管部11)の延出方向先端側に配置され、前記建物Aの屋根からの墜落を防止する墜落防止設備(墜落防止用手摺8)を取付可能な取付部(手摺取付部12)と、前記取付部(手摺取付部12)に設けられ、前記係合部(第一爪13、第二爪23)が前記梁2に対して係合する状態と係合を解除する状態とを切り替える操作が可能な操作部30と、を具備する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の梁に脱着可能に係合する係合部と、
前記係合部から延出するように形成される支持部と、
前記支持部の延出方向先端側に配置され、前記建物の屋根からの墜落を防止する墜落防止設備を取付可能な取付部と、
前記取付部に設けられ、前記係合部が前記梁に対して係合する状態と係合を解除する状態とを切り替える操作が可能な操作部と、
を具備する墜落防止設備取付冶具。
【請求項2】
前記取付部は、
上下方向の一方側及び他方側のいずれからでも前記墜落防止設備を取付可能であり、
前記係合部は、
前記墜落防止設備取付冶具を上下反転させることで、前記梁の上側のフランジ及び下側のフランジのいずれにも係合可能である、
請求項1に記載の墜落防止設備取付冶具。
【請求項3】
前記取付部は、
上下方向に貫通し、単管パイプを挿通可能な筒形状に形成される、
請求項1又は請求項2に記載の墜落防止設備取付冶具。
【請求項4】
前記係合部は、
前記支持部に固定されると共に、前記梁のフランジを挟持することで前記梁に対して係合する一対の爪を具備し、
前記操作部は、
一対の前記爪同士を近接及び離間させることで、前記梁に対して係合する状態と係合を解除する状態とを切替可能である、
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の墜落防止設備取付冶具。
【請求項5】
一対の前記爪は、
前記フランジに当接する当接面が、一対の前記爪が互いに近接する方向に向かうに従って、上下方向反支持部側へ傾斜する傾斜面状に形成されている、
請求項4に記載の墜落防止設備取付冶具。
【請求項6】
建物の屋根からの墜落を防止する墜落防止設備を取付可能な墜落防止設備取付冶具を、前記建物の梁に取り付ける冶具取付工程と、
前記墜落防止設備取付冶具に、前記墜落防止設備を取り付ける墜落防止設備取付工程と、
前記墜落防止設備の内側において、前記屋根に関する作業を行う屋根作業工程と、
前記墜落防止設備を解体した後、前記梁から前記墜落防止設備取付冶具を取り外す冶具取外工程と、
を具備する建物の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の屋根からの墜落を防止する墜落防止設備を取付可能な墜落防止設備取付冶具及び建物の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、施工中の建物に、屋根からの人や物の墜落を防止するための設備を設置することが知られている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1には、施工中の建物の外周を囲うように地面に設置される外部足場が記載されている。上記外部足場の上端(手摺)は、建物の屋根(屋上)よりも高く形成される。これにより、屋根からの人や物の墜落を防止することができる。
【0004】
しかしながら、上述のような外部足場は、設置及び解体に手間がかかることが想定されるため、施工性の観点から改善が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、施工の手間を削減することができる墜落防止設備取付冶具及び建物の施工方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、建物の梁に脱着可能に係合する係合部と、前記係合部から延出するように形成される支持部と、前記支持部の延出方向先端側に配置され、前記建物の屋根からの墜落を防止する墜落防止設備を取付可能な取付部と、前記取付部に設けられ、前記係合部が前記梁に対して係合する状態と係合を解除する状態とを切り替える操作が可能な操作部と、を具備するものである。
【0009】
請求項2においては、前記取付部は、上下方向の一方側及び他方側のいずれからでも前記墜落防止設備を取付可能であり、前記係合部は、前記墜落防止設備取付冶具を上下反転させることで、前記梁の上側のフランジ及び下側のフランジのいずれにも係合可能であるものである。
【0010】
請求項3においては、前記取付部は、上下方向に貫通し、単管パイプを挿通可能な筒形状に形成されるものである。
【0011】
請求項4においては、前記係合部は、前記支持部に固定されると共に、前記梁のフランジを挟持することで前記梁に対して係合する一対の爪を具備し、前記操作部は、一対の前記爪同士を近接及び離間させることで、前記梁に対して係合する状態と係合を解除する状態とを切替可能であるものである。
【0012】
請求項5においては、一対の前記爪は、前記フランジに当接する当接面が、一対の前記爪が互いに近接する方向に向かうに従って、上下方向反支持部側へ傾斜する傾斜面状に形成されているものである。
【0013】
請求項6においては、建物の屋根からの墜落を防止する墜落防止設備を取付可能な墜落防止設備取付冶具を、前記建物の梁に取り付ける冶具取付工程と、前記墜落防止設備取付冶具に、前記墜落防止設備を取り付ける墜落防止設備取付工程と、前記墜落防止設備の内側において、前記屋根に関する作業を行う屋根作業工程と、前記墜落防止設備を解体した後、前記梁から前記墜落防止設備取付冶具を取り外す冶具取外工程と、を具備するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0015】
請求項1においては、建物の施工の手間を削減することができる。
【0016】
請求項2においては、墜落防止設備取付冶具を梁に好適に取り付けることかできる。
【0017】
請求項3においては、墜落防止設備の施工性を向上させることができる。
【0018】
請求項4においては、梁に対する墜落防止設備取付冶具の脱着を容易に行うことができる。
【0019】
請求項5においては、フランジの厚さ寸法が異なる種々の梁に、墜落防止設備取付冶具を取り付けることができる。
【0020】
請求項6においては、建物の施工の手間を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態に係る手摺取付冶具を設置した建物の屋根部分を示した平面図。
【
図4】(a)手摺取付冶具を示した分解側面図。(b)手摺取付冶具を示した分解底面図。
【
図7】梁へ固定する途中の手摺取付冶具を示した側面断面図。
【
図8】梁へ固定した後の手摺取付冶具を示した側面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下では、本発明の一実施形態に係る手摺取付冶具1について説明する。また、以下では、図中の矢印に基づいて、前後方向、左右方向及び上下方向を定義して説明を行う。
【0023】
本実施形態に係る手摺取付冶具1は、鉄骨造の建物Aの屋根に設置される墜落防止用手摺8を取り付けるためのものである。
【0024】
以下ではまず、
図1から
図3までを用いて建物Aについて説明する。
【0025】
建物Aは、躯体を構成する柱及び梁2が、鉄骨部材により形成されている。建物Aは、複数階を有する。
図1から
図3までは、建物Aの屋根(屋上)部分を示している。以下では、建物Aの桁方向を左右方向、建物Aの軒先方向を前後方向と称する場合がある。
図2は、桁(左右)方向に見た屋根の端部(軒下部分)を示している。また、
図3は、軒先(前後)方向に見た屋根の端部を示している。
【0026】
梁2は、建物Aの柱同士を接続する部材(大梁)である。梁2は、H形鋼により形成される。以下では、必要に応じて、左右方向に延びる梁2を「第一梁2A」、前後方向に延びる梁2を「第二梁2B」と称して説明する。梁2(第一梁2A及び第二梁2B)は、上フランジ2a、下フランジ2b及びウェブ2cを具備する。
【0027】
上フランジ2a及び下フランジ2bは、厚さ方向を上下方向に向けた板形状に形成される。ウェブ2cは、厚さ方向を水平方向(前後方向又は左右方向)に向けた板形状に形成される。
【0028】
図1から
図3までに示すように、建物Aの屋上側には、屋根を構成する屋根材3が設けられる。本実施形態では、屋根材3として、山部と谷部が連続するように(波板形状に)金属製の板を折り曲げて形成した折板屋根を採用している。
図3に示すように、屋根材3は、山部と谷部が連続する方向を左右方向に向けて配置される。また、屋根材3は、タイトフレーム4を介して、梁2に固定される。
【0029】
図2及び
図3に示すタイトフレーム4は、梁2に屋根材3を固定するための部材である。タイトフレーム4は、帯状の金属製の板を、屋根材3の形状に対応した波板形状(山部と谷部が連続する形状)に形成される。
図2では、タイトフレーム4を、梁2の上フランジ2aに直接固定した例を示している。また、
図3では、タイトフレーム4を、嵩上げ部材5を介して梁2の上フランジ2aに固定した例を示している。嵩上げ部材5としては、例えばC型鋼等の部材を採用可能である。タイトフレーム4は、例えば溶接等により、梁2の上フランジ2aや嵩上げ部材5に対して固定される。屋根材3は、タイトフレーム4の上方から、ボルト等の止具を用いてタイトフレーム4に対して固定される。
【0030】
また、
図2に示すように、梁2には、建物Aの外壁6を固定するための胴縁7が固定される。胴縁7は、水平方向に延びる部材である。胴縁7としては、例えばC型鋼等の部材を採用可能である。
図2では省略しているが、胴縁7は適宜の部材を介して梁2に固定可能である。
図2に示す例では、胴縁7を、梁2の上フランジ2aよりも下方に配置している。また、
図3では、胴縁7を梁2に固定した例を示している。
図3に示す例では、胴縁7を、梁2の上フランジ2aよりも上方に配置している。
【0031】
上述の如く
図1から
図3までに示す例では、梁2に屋根材3を設置した後であって、外壁6を設置する前の建物Aを示している。本実施形態では、建物Aの外周に外部足場を設置せずに施工を行う無足場工法を採用している。作業者は、屋根材3や外壁6の設置等の外装工事を行う際には、高所作業車の作業床等を足場として作業を行う。
【0032】
ここで、外部足場を設置する場合には、建物Aの屋根よりも高く外部足場が組まれていた。このため、外部足場が、屋根からの人や物の墜落を防止する設備として機能していた。一方、外部足場を設置しない場合には、足場による墜落防止設備がなくなるため、別途、墜落防止設備を設置することが望まれる。
【0033】
そこで本実施形態では、手摺取付冶具1を用いて、建物Aの梁2に墜落防止用手摺8を取り付けている。
【0034】
図1から
図3までに示す墜落防止用手摺8は、屋根からの人や物の墜落を防止するためのものである。墜落防止用手摺8は、一般的な外部足場に用いられる単管パイプを、単管クランプ等の接続部材で接続して形成される。
図1に示すように、墜落防止用手摺8は、建物Aの屋根における外周を囲うように設置される。墜落防止用手摺8は、縦桟8a、手摺部8b及び中桟8cを具備する。
【0035】
図2及び
図3に示す縦桟8aは、上下方向に延びる部分である。縦桟8aは、下端部が手摺取付冶具1(後述する手摺取付部12)に支持される。手摺部8bは、縦桟8aの上端部同士を接続するように、水平方向に延びる部分である。中桟8cは、縦桟8aの上下方向中途部同士を接続するように、水平方向に延びる部分である。
【0036】
以下では、手摺取付冶具1の詳細について説明する。
【0037】
図1から
図4までに示す手摺取付冶具1は、梁2のフランジ(上フランジ2a又は下フランジ2b)に脱着可能に固定されると共に、墜落防止用手摺8を取付可能なものである。
【0038】
図1に示すように、手摺取付冶具1は、第一梁2A及び第二梁2Bのそれぞれに設けられる。手摺取付冶具1は、各梁2の長手方向に沿って間隔を空けて(例えば2m以下の間隔で)複数配置される。以下では、必要に応じて、
図2に示す第一梁2Aに固定され、軒先(前後)方向外側に張り出すように設置される手摺取付冶具1を、「軒先側手摺取付冶具1A」と称して説明する。図例では、軒先側手摺取付冶具1Aを、前方に張り出すように設置した例を示している。また、
図3に示す第二梁2Bに固定され、桁(左右)方向外側に張り出すように設置される手摺取付冶具1を、「桁側手摺取付冶具1B」と称して説明する。図例では、桁側手摺取付冶具1Bを、右方に張り出すように設置した例を示している。
【0039】
以下では、主として軒先側手摺取付冶具1Aを参照して、手摺取付冶具1の構成について説明する。手摺取付冶具1は、第一部材10、第二部材20及び操作部30を具備する。
【0040】
図2、
図4及び
図5に示す第一部材10は、手摺取付冶具1の前後方向外側部分(前側部分)を構成するものである。第一部材10は、第一鋼管部11、手摺取付部12、第一爪13、補強プレート14及びリブ15を具備する。
【0041】
図4及び
図5に示す第一鋼管部11は、前後方向に延出するように形成された略筒形状の部材である。第一鋼管部11としては、例えば外径が40mm角の角鋼管を採用可能である。
【0042】
手摺取付部12は、墜落防止用手摺8の縦桟8aを取付可能なものである。手摺取付部12は、上下に長尺な略筒形状(円筒形状)に形成される。手摺取付部12の内径は、一般的な足場の手摺に用いられる(例えば外径が48.6mmの)単管パイプが挿通可能な寸法に形成される。手摺取付部12は、第一鋼管部11の前端部に設けられる。手摺取付部12は、上部及び下部のいずれからでも縦桟8aを取付可能に形成される。手摺取付部12は、挿通孔12a、固定孔12b及び固定ボルト12cを有する。
【0043】
図5に示す挿通孔12aは、後述する操作部30が挿通される孔である。挿通孔12aは、手摺取付部12の上下方向中央部を前後方向に貫通するように形成される。手摺取付部12の後面に形成された挿通孔12aを介して、第一鋼管部11と手摺取付部12との内面同士が連通する。
図5に示す例では、前後に長尺な円筒形状に形成され、後述する操作部30(ボルト部32)を保護するパイプを、挿通孔12aに挿通させた例を示している。
【0044】
固定孔12bは、後述する固定ボルト12cが挿通される孔である。固定孔12bは、手摺取付部12の前面において、前後方向に貫通するように形成される。固定孔12bは、挿通孔12aを挟むように、上下に一対形成される。手摺取付部12の前面の固定孔12bが形成された部分には、当該固定孔12bと連通するように、適宜のナットが溶接等により固定される。
【0045】
固定ボルト12cは、手摺取付部12に挿通された縦桟8aを固定するものである。固定ボルト12cは、一対の固定孔12bにそれぞれ設けられる。固定ボルト12cは、固定孔12bと連通するナットに嵌合すると共に、固定孔12bに挿通される。固定ボルト12cを固定孔12bに対してねじ込むことで、手摺取付部12に挿通された縦桟8aを後方に押し付けて、当該縦桟8aを手摺取付部12に取り付けることができる。
【0046】
第一爪13は、後述する第二爪23と共に、梁2のフランジ(上フランジ2a又は下フランジ2b)に係合可能なものである。第一爪13は、金属製の板を適宜折り曲げて形成される。第一爪13は、第一鋼管部11の後端部に設けられる。第一爪13は、固定部13a及び爪部13bを具備する。
【0047】
固定部13aは、第一鋼管部11に固定される部分である。固定部13aは、厚さ方向が前後方向に向くように形成される。固定部13aは、第一鋼管部11の後端部における下部に、溶接等により固定される。
【0048】
爪部13bは、梁2のフランジ(上フランジ2a又は下フランジ2b)に係合可能な部分である。爪部13bは、固定部13aの下端部から、斜め後下方に向けて延びるように形成される。爪部13bは、梁2のフランジと当接する当接面13cを有する。当接面13cは、後方に向かうに従い上下方向反第一鋼管部11側(
図5に示す例では下方)へ傾斜する傾斜面状に形成される。
【0049】
補強プレート14は、第一部材10を補強するものである。補強プレート14は、厚さ方向を左右方向に向けた略板形状に形成される。補強プレート14は、第一鋼管部11の下面と、手摺取付部12と、第一爪13と、を接続するように設けられる。補強プレート14の前端部(手摺取付部12と接続される部分)は、側面視において、前方に向かうに従い下方へ傾斜するような略三角形状に形成される。
【0050】
リブ15は、第一鋼管部11と手摺取付部12とを補強する部分である。リブ15は、厚さ方向を左右方向に向けた略板形状に形成される。リブ15は、第一鋼管部11の前端部における上面と、手摺取付部12とを接続するように設けられる。リブ15は、側面視において、前方に向かうに従い上方へ傾斜するような略三角形状に形成される。
【0051】
図2、
図4及び
図5に示す第二部材20は、手摺取付冶具1の前後方向内側部分(後側部分)を構成するものである。第二部材20は、第二鋼管部21、挿通部22、第二爪23及び補強プレート24を具備する。
【0052】
第二鋼管部21は、前後方向に延びる略筒形状の部材である。第二鋼管部21は、第一鋼管部11よりも短く形成される。第二鋼管部21としては、第一鋼管部11と同様、例えば外径が40mm角の角鋼管を採用可能である。
【0053】
挿通部22は、第一鋼管部11に対して挿通される部分である。挿通部22は、前後方向に長尺な略筒形状に形成される。挿通部22の外径は、第一鋼管部11の内径よりも小さく形成される。挿通部22としては、例えば外径が30mm角の角鋼管を採用可能である。また、
図5に示すように、挿通部22は、後端部が第二鋼管部21に挿通されると共に、第二鋼管部21に対して固定される。挿通部22は、ナット22aを具備する。
【0054】
図5に示すナット22aは、前後方向に貫通する開口の内面にめねじが形成された部材である。ナット22aは、挿通部22の前端部における内面に、溶接等により固定される。
【0055】
第二爪23は、第一爪13と共に、梁2のフランジ(上フランジ2a又は下フランジ2b)に係合可能なものである。第二爪23は、第二鋼管部21に設けられる。第二爪23は、第一爪13と前後に対称な形状に形成される。従って、以下では、第二爪23の形状等の説明は適宜説明を省略する。第二爪23は、固定部23a及び爪部23bを具備する。
【0056】
固定部23aは、第二鋼管部21に固定される部分である。固定部23aは、第二鋼管部21の前後方向中央部における下部に、溶接等により固定される。
【0057】
爪部23bは、梁2のフランジ(上フランジ2a又は下フランジ2b)に係合可能な部分である。爪部23bは、梁2のフランジと当接する当接面23cを有する。当接面23cは、前方に向かうに従い上下方向反第二鋼管部21側(
図5に示す例では下方)へ傾斜する傾斜面状に形成される。
【0058】
補強プレート24は、第二爪23を補強するものである。補強プレート24は、厚さ方向を左右方向に向けた略板形状に形成される。補強プレート24は、第二鋼管部21の下面と、第二爪23と、を接続するように設けられる。
【0059】
第二部材20は、挿通部22を第一鋼管部11に挿通させた状態で、第一部材10に対して前後方向にスライド可能に配置される(
図7及び
図8を参照)。
【0060】
図2、
図4及び
図5に示す操作部30は、第一鋼管部11に対する第二部材20の移動(スライド)の操作が可能なものである。操作部30は、手摺取付部12の挿通孔12a(挿通孔12aに挿通されたパイプ)及び挿通部22のナット22aに挿通され、前後方向に沿う軸回りに回転可能に設けられる。操作部30は、把持部31、ボルト部32及び抜止部33を具備する。
【0061】
把持部31は、作業者により把持されると共に、第二部材20を移動させる操作が可能な部分である。把持部31は、軸線方向を前後に向けた略角柱形状(例えば六角柱形状)に形成される。把持部31の外径は、挿通孔12aの内径よりも大きく形成される。
【0062】
図5及び
図7に示すボルト部32は、挿通孔12a及びナット22aに挿通される部分である。本実施系形態では、ボルト部32は、挿通孔12aに挿通されたパイプに挿通されている。これにより、例えば手摺取付部12に取り付けられる縦桟8a等からボルト部32を保護することができる(
図8を参照)。ボルト部32は、把持部31の後端部から後方に延びる略円柱形状に形成される。ボルト部32の側面には、ナット22aのめねじに嵌合するおねじが形成されている。
【0063】
抜止部33は、ナット22aに対するボルト部32の抜けを防止する部分である。抜止部33は、ボルト部32の先端部(後端部)に固定されている。
【0064】
上述の如き手摺取付冶具1は、操作部30を用いた操作を行うことで、第一部材10に対して第二部材20を前後方向にスライドさせることができる。すなわち、操作部30のボルト部32と、第二部材20のナット22aと、は互いにねじで嵌合されている。従って、
図7及び
図8に示すように、操作部30を所定方向に回転させれば(ねじ込めば)、第二部材20を第一鋼管部11に沿って前進させることができる。これにより、第二部材20の第二爪23を、第一部材10の第一爪13に対して近接する方向に移動させることができる。
【0065】
また、操作部30を、上記所定方向と逆の方向に回転させれば、第二部材20を第一鋼管部11に沿って後退させることができる。これにより、第二部材20の第二爪23を、第一部材10の第一爪13に対して離間する方向に移動させることができる。
【0066】
上記構成によれば、操作部30をねじを回すように回転させることで、比較的小さい力で第二部材20をスライドさせることができる。また、操作部30の操作により第二部材20を後方へある程度移動させれば、操作部30の抜止部33がナット22aと当接することで、第二部材20の後方への移動が規制される。これにより、ナット22aに対してボルト部32が抜けることで、第一部材10に対して第二部材20が脱落することを防止することができる。
【0067】
また、手摺取付冶具1(軒先側手摺取付冶具1A)の前後方向の寸法は、屋根材3の軒先の寸法(軒の出)に応じて適宜設定される。すなわち、手摺取付冶具1(軒先側手摺取付冶具1A)の前後方向の寸法は、屋根材3との干渉を避けると共に、屋根材3の先端から墜落防止用手摺8が離れ過ぎないように設定される。本実施形態では、
図2に示す梁2のフランジの前端と、軒先側手摺取付冶具1Aの手摺取付部12の後面と、の間の距離L1を650mm程度にした例を示している。
【0068】
以上、軒先側手摺取付冶具1Aを参照して、手摺取付冶具1の構成について説明した。ここで、
図1及び
図3に示す桁側手摺取付冶具1Bは、桁(左右)方向外側に張り出すように設置される点で軒先側手摺取付冶具1Aと異なる。また、桁側手摺取付冶具1Bは、張り出す方向(左右方向)の長さ(第一部材10の長さ)が軒先側手摺取付冶具1Aよりも短い点で軒先側手摺取付冶具1Aと異なる。具体的には、
図3に示す梁2のフランジの右端と、桁側手摺取付冶具1Bの手摺取付部12の左面と、の間の距離L2は、
図2に示す距離L1よりも短い。本実施形態では、距離L2を400mm程度にした例を示している。
【0069】
桁側手摺取付冶具1Bは、上述した点を除いて、軒先側手摺取付冶具1Aと概ね同様な構成である。従って、桁側手摺取付冶具1Bの構成の詳細な説明は省略する。
【0070】
以下では、
図6から
図8までを用いて、手摺取付冶具1を用いた建物Aの施工方法について説明する。なお、以下で説明する施工方法は、建物Aの屋根部分及び外壁6の施工に関するものである。上記施工方法は、
図6のフローチャートに示すように、冶具取付工程(ステップS10)、手摺取付工程(ステップS11)、屋根設置工程(ステップS12)、屋根上手摺取付工程(ステップS13)、手摺取外工程(ステップS14)、冶具取外工程(ステップS15)及び外壁設置工程(ステップS16)を具備する。
【0071】
冶具取付工程(ステップS10)は、梁2に対して手摺取付冶具1を取り付ける工程である。本実施形態では、梁2及び柱で構成される建物Aの躯体が形成された後であって、屋根材3が設置される前に、梁2に手摺取付冶具1を取り付ける例を示す。また、以下の例では、梁2にタイトフレーム4が固定されているものとする。冶具取付工程において、作業者は、例えばクレーン車等の高所作業車の作業床に乗った状態で、建物Aの外部から手摺取付冶具1の取付作業を行う。
【0072】
以下では、
図7及び
図8を用いて、冶具取付工程の詳細について説明する。なお、以下では、軒先側手摺取付冶具1Aを第一梁2Aの上フランジ2aに取り付ける例について説明する。
【0073】
図7に示すように、手摺取付冶具1を取り付ける際には、上フランジ2aの幅よりも第一爪13と第二爪23との間の距離が大きくなるように、第一部材10に対する第二部材20の位置を調節する。作業者は、必要に応じて操作部30を用いた操作により上記調節を行う。
【0074】
次に、作業者は、第一爪13と第二爪23との間に上フランジ2aが位置するように、手摺取付冶具1を配置する。この状態では、第一鋼管部11や第二鋼管部21の下面と、上フランジ2aの上面と、が当接する。作業者は、タイトフレーム4と干渉しないように、タイトフレーム4の山部の隙間に差し込むように手摺取付冶具1を配置する(
図2を参照)。
【0075】
次に、作業者は、操作部30を用いた操作により、第二爪23と第一爪13とが近接するように、第一部材10に対して第二部材20を移動させる。これにより、
図8に示すように第一爪13及び第二爪23により上フランジ2aが左右から挟持される。また、この状態では、第一鋼管部11及び第二鋼管部21の下面と、第一爪13及び第二爪23と、により上フランジ2aが上下から挟持される。このようにして、第一爪13及び第二爪23を上フランジ2aに対して係合することで、上フランジ2aに対して手摺取付冶具1を取り付けることができる。
【0076】
本実施形態においては、フランジ(上フランジ2a)と当接する第一爪13の当接面13c及び第二爪23の当接面23cを、互いに近接する方向に向かうに従い下方へ傾斜する傾斜面状に形成しているので、フランジの厚さ寸法が異なる種々の梁2に手摺取付冶具1を取付可能である。
【0077】
また、本実施形態では、操作部30を手摺取付冶具1の外側(前端側)に設けているので、作業者は、建物Aの外部から容易に手摺取付冶具1の取付操作を1名で行うことができる。
【0078】
上述した例では、手摺取付冶具1を梁2の上フランジ2aに取り付ける例を説明したが、梁2の周囲の部材(例えば胴縁7等)との関係で上フランジ2aに取り付けられない場合等は、手摺取付冶具1を上下反転させて下フランジ2bに取り付けることも可能である。
【0079】
具体的には、
図2に示すように、上フランジ2aよりも胴縁7が下方に位置する場合であって、手摺取付冶具1の下部(補強プレート14)と胴縁7とが互いに干渉しない場合には、上フランジ2aに手摺取付冶具1を取付可能である。
【0080】
一方、
図3に示す例(桁側手摺取付冶具1Bを示した例)のように、上フランジ2aよりも上方に胴縁7が配置されている場合は、手摺取付冶具1と胴縁7とが互いに干渉するため、手摺取付冶具1を上フランジ2aに取り付けられない。このような場合には、
図3に示すように、手摺取付冶具1を上下反転させて下フランジ2bに取り付けることで、手摺取付冶具1と胴縁7との干渉を回避することができる。
【0081】
作業者は、建物Aの四方に手摺取付冶具1が張り出すように、複数の手摺取付冶具1を、所定間隔を空けて建物Aの全周に亘って取り付ける。
【0082】
手摺取付工程(ステップS11)は、梁2に取り付けられた手摺取付冶具1に、墜落防止用手摺8を取り付ける工程である。手摺取付工程において、作業者は、
図8に示すように手摺取付冶具1の手摺取付部12に縦桟8aを挿通させると共に、固定ボルト12cを操作することで、手摺取付部12に対して縦桟8aを取り付ける。次に、作業者は、各縦桟8a同士を手摺部8b及び中桟8cで接続することで、墜落防止用手摺8を設置する。また、墜落防止用手摺8には、墜落防止用のネット(メッシュ)を設置可能である。
【0083】
屋根設置工程(ステップS12)は、梁2に屋根材3を設置する工程である。屋根設置工程において、作業者は、梁2に固定されたタイトフレーム4に、適宜の止具を用いて屋根材3を固定する。屋根設置工程において、作業者は、墜落防止用手摺8の内側で作業を行うことができる。また、屋根設置工程の終了後、作業者は、墜落防止用手摺8の内側で、屋根上での種々の作業を行うことができる。この際には、墜落防止用手摺8により、屋根からの人や物の墜落を防止することができる。
【0084】
上記屋根設置工程(ステップS12)の後、外壁設置工程(ステップS16)の前において、作業者は、必要に応じて、手摺取付工程(ステップS11)において取り付けた墜落防止用手摺8の盛り替えを行う。すなわち、後述する外壁設置工程(ステップS16)において胴縁7に外壁6を設置する際に、外壁6と手摺取付冶具1とが干渉する可能性がある場合(
図3を参照)、作業者は、手摺取付冶具1及び墜落防止用手摺8を取り外す必要がある。また、作業者は、上記取り外される墜落防止用手摺8に替えて、新たな墜落防止用手摺8を別途取り付ける必要がある。上記墜落防止用手摺8の盛り替えは、以下の屋根上手摺取付工程(ステップS13)、手摺取外工程(ステップS14)及び冶具取外工程(ステップS15)を実行することで行われる。
【0085】
屋根上手摺取付工程(ステップS13)は、上記手摺取付工程(ステップS11)で設置したものとは異なる墜落防止用手摺8を、屋根材3上に別途取り付ける工程である。屋根上手摺取付工程において、作業者は、後述する手摺取外工程(ステップS14)において取り外される墜落防止用手摺8に対応する位置(内側)に、新たに墜落防止用手摺8を取り付ける。この際には、作業者は、屋根材3上に設置した適宜の冶具(不図示)を介して墜落防止用手摺8を設置する。
【0086】
手摺取外工程(ステップS14)は、手摺取付冶具1を取り外す必要がある場合に、手摺取付冶具1に設置された墜落防止用手摺8を取り外す工程である。すなわち、後述する外壁設置工程(ステップS16)において外壁6と手摺取付冶具1とが干渉する可能性がある場合、手摺取付冶具1を取り外す必要がある。このような場合、作業者は、上記手摺取付冶具1に設置された墜落防止用手摺8を取り外す。
【0087】
冶具取外工程(ステップS15)は、手摺取外工程(ステップS14)において墜落防止用手摺8が取り外された手摺取付冶具1を、梁2から取り外す工程である。手摺取付冶具1を取り外す際には、作業者は、
図7及び
図8で示す冶具取付工程とは逆の手順で、操作部30を用いた操作を行い、第二爪23と第一爪13とが離間するように、第一部材10に対して第二部材20を移動させる。これにより、
図7に示すように、上フランジ2aに対する第一爪13及び第二爪23の係合が解除される。冶具取外工程において、作業者は、冶具取付工程と同様、クレーン車等の高所作業車の作業床に乗った状態で、建物Aの外部から作業を行う。
【0088】
上述の如き手摺取外工程(ステップS14)、冶具取外工程(ステップS15)及び屋根上手摺取付工程(ステップS13)を行うことで、墜落防止用手摺8の盛り替えを行うことができる。なお、例えば
図2に示すように、胴縁7が梁2の上フランジ2aより下方に位置する場合であって、外壁6と手摺取付冶具1とが干渉しない場合には、手摺取付冶具1に取り付けられた墜落防止用手摺8を盛り替えないようにしてもよい。この場合は、手摺取付冶具1を用いた墜落防止用手摺8の設置を継続する。
【0089】
外壁設置工程(ステップS16)は、建物Aに外壁6を設置する工程である。外壁6は、適宜の止具を用いて、胴縁7に固定される(
図2を参照)。作業者は、クレーン車等の高所作業車の作業床に乗った状態で、建物Aの外部から外壁6の設置作業を行う。
【0090】
上述の如き工程を行うことで、手摺取付冶具1を用いた建物Aの外装の施工が完了する。また、作業者は、建物Aの外装の施工の完了後、墜落防止用手摺8の解体を行う。本実施形態に係る手摺取付冶具1を用いた施工方法によれば、墜落防止用手摺8の盛替え、設置及び解体の手間を削減することができ、ひいては建物Aの施工の手間を削減することができる。
【0091】
すなわち、建物Aの施工においては、屋根からの人や物の墜落を防止する墜落防止用手摺8を設置することが望まれる場合がある。本実施形態では、梁2に取り付けられた手摺取付冶具1を用いることで、外部足場を設置することなく、墜落防止用手摺8を容易に設置することができる。
【0092】
また、本実施形態によれば、操作部30を用いた操作により、第一爪13及び第二爪23がフランジ(上フランジ2a及び下フランジ2b)に対して係合する状態と、係合を解除する状態と、を切り替えることができる。これにより、梁2に対する手摺取付冶具1の脱着を容易に行うことができる。また、本実施形態に係る建物Aの施工方法のように、墜落防止用手摺8の盛り替えを行う必要がある場合でも、手摺取付冶具1の取り外しを容易に行うことができる。
【0093】
また、本実施形態では、補強プレート14及び補強プレート24を設けたことで、第一鋼管部11や第二鋼管部21の外径を大きくせずとも、第一部材10及び第二部材20の強度を向上させることができる。これにより、第一部材10及び第二部材20の断面形状のコンパクト化を図ることができ、手摺取付冶具1を設置する際に、他の部材(例えばタイトフレーム4や胴縁7)と干渉することを抑制することができる。
【0094】
なお、本実施形態に係る建物Aの施工方法は、上述した工程に限定されるものでない。例えば、上述した例では、建物Aの躯体が形成された後に、梁2に手摺取付冶具1を取り付ける例を示したが、このような態様に限定されず、例えば、梁2を柱に取り付ける前に、手摺取付冶具1を取り付けるようにしてもよい。この場合は、地面に載置されている状態の梁2に手摺取付冶具1を取り付け、この状態でクレーン車等で梁2を吊り上げて柱に取り付けるようにしてもよい。
【0095】
以上のように、本発明の一実施形態に係る墜落防止設備取付冶具(手摺取付冶具1)は、
建物Aの梁2に脱着可能に係合する係合部(第一爪13、第二爪23)と、
前記係合部(第一爪13、第二爪23)から延出するように形成される支持部(第一鋼管部11)と、
前記支持部(第一鋼管部11、第二鋼管部21、挿通部22)の延出方向先端側に配置され、前記建物Aの屋根からの墜落を防止する墜落防止設備(墜落防止用手摺8)を取付可能な取付部(手摺取付部12)と、
前記取付部(手摺取付部12)に設けられ、前記係合部(第一爪13、第二爪23)が前記梁2に対して係合する状態と係合を解除する状態とを切り替える操作が可能な操作部30と、
を具備するものである。
【0096】
このような構成により、建物Aの施工の手間を削減することができる。すなわち、梁2に取り付けられた墜落防止設備取付冶具(手摺取付冶具1)を用いることで、外部足場を設置することなく、墜落防止設備(墜落防止用手摺8)を容易に設置することができる。これにより、墜落防止設備(墜落防止用手摺8)の設置及び解体の手間を削減することができ、ひいては建物Aの施工の手間を削減することができる。また、操作部30が、外側(手摺取付部12側)に位置するので、作業者は、建物Aの外側から1名で墜落防止設備取付冶具(手摺取付冶具1)の取付操作を容易に行うことができる。
【0097】
また、前記取付部(手摺取付部12)は、
上下方向の一方側及び他方側のいずれからでも前記墜落防止設備(墜落防止用手摺8)を取付可能であり、
前記係合部(第一爪13、第二爪23)は、
前記墜落防止設備取付冶具(手摺取付冶具1)を上下反転させることで、前記梁2の上側のフランジ2a及び下側のフランジ2bのいずれにも係合可能であるものである。
【0098】
このような構成により、墜落防止設備取付冶具(手摺取付冶具1)を梁2に好適に取り付けることかできる。すなわち、梁2のまわりの他の部材(胴縁7等)を干渉を避ける必要がある場合に、前記梁2の上側のフランジ2a及び下側のフランジ2bのいずれか一方に墜落防止設備取付冶具(手摺取付冶具1)を取り付けることで、上記部材との干渉を避けることができる。
【0099】
また、前記取付部(手摺取付部12)は、
上下方向に貫通し、単管パイプを挿通可能な筒形状に形成されるものである。
【0100】
このような構成により、墜落防止設備(墜落防止用手摺8)の施工性を向上させることができる。すなわち、取付部(手摺取付部12)を、単管パイプを取付可能に形成したことで、一般的な外部足場に用いられる単管パイプを利用して墜落防止設備(墜落防止用手摺8)を構成することができる。
【0101】
また、前記係合部は、
前記支持部(第一鋼管部11、第二鋼管部21)に固定されると共に、前記梁2のフランジを挟持することで前記梁2に対して係合する一対の爪(第一爪13、第二爪23)を具備し、
前記操作部30は、
一対の前記爪(第一爪13、第二爪23)同士を近接及び離間させることで、前記梁2に対して係合する状態と係合を解除する状態とを切替可能であるものである。
【0102】
このような構成により、梁2に対する墜落防止設備取付冶具(手摺取付冶具1)の脱着を容易に行うことができる。
【0103】
また、一対の前記爪は、
前記フランジに当接する当接面(当接面13c、当接面23c)が、一対の前記爪(第一爪13、第二爪23)が互いに近接する方向に向かうに従って、上下方向反支持部側へ傾斜する傾斜面状に形成されているものである。
【0104】
このような構成により、フランジの厚さ寸法が異なる種々の梁2に、墜落防止設備取付冶具(手摺取付冶具1)を取り付けることができる。
【0105】
また、本発明の一実施形態に係る建物Aの施工方法は、
建物Aの屋根からの墜落を防止する墜落防止設備(墜落防止用手摺8)を取付可能な墜落防止設備取付冶具(手摺取付冶具1)を、前記建物Aの梁2に取り付ける冶具取付工程(ステップS10)と、
前記墜落防止設備取付冶具(手摺取付冶具1)に、前記墜落防止設備(墜落防止用手摺8)を取り付ける墜落防止設備取付工程(手摺取付工程(ステップS11))と、
前記墜落防止設備(墜落防止用手摺8)の内側において、前記屋根に関する作業を行う屋根作業工程(屋根設置工程(ステップS12))と、
前記墜落防止設備(墜落防止用手摺8)を解体した後(手摺取外工程(ステップS14))、前記梁2から前記墜落防止設備取付冶具(手摺取付冶具1)を取り外す冶具取外工程(ステップS15)と、
を具備するものである。
【0106】
このような構成により、建物Aの施工の手間を削減することができる。すなわち、梁2に取り付けられた墜落防止設備取付冶具(手摺取付冶具1)を用いることで、外部足場を設置することなく、墜落防止設備(墜落防止用手摺8)を容易に設置することができる。これにより、墜落防止設備(墜落防止用手摺8)の設置及び解体の手間を削減することができ、ひいては建物Aの施工の手間を削減することができる。
【0107】
なお、本実施形態に係る手摺取付冶具1は、本発明に係る墜落防止設備取付冶具の一形態である。
また、本実施形態に係る墜落防止用手摺8は、本発明に係る墜落防止設備の一形態である。
また、本実施形態に係る第一鋼管部11、第二鋼管部21、挿通部22は、本発明に係る支持部の一形態である。
また、本実施形態に係る手摺取付部12は、本発明に係る取付部の一形態である。
また、本実施形態に係る第一爪13、第二爪23は、本発明に係る係合部の一形態である。
また、本実施形態に係る手摺取付工程(ステップS11)は、本発明に係る墜落防止設備取付工程の一形態である。
また、本実施形態に係る屋根設置工程(ステップS12)は、本発明に係る屋根作業工程の一形態である。
【0108】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0109】
例えば、本実施形態では、手摺取付部12を上部及び下部のいずれからでも縦桟8aを取付可能とし、手摺取付冶具1を梁2の上側のフランジ2a及び下側のフランジ2bのいずれにも係合可能な構成とした例を示したが、このような態様に限定されない。例えば、手摺取付部12を、上部及び下部のいずれか一方にのみ縦桟8aを取付可能とし、手摺取付冶具1を上側のフランジ2a及び下側のフランジ2bの一方にのみ係合可能な構成としてもよい。
【0110】
また、本実施形態では、手摺取付部12を、単管パイプを挿通可能な筒形状に形成した例を示したが、このような態様に限定されない。手摺取付部12の形状としては、墜落防止用手摺8の形状に応じて適宜変更可能である。
【0111】
また、本実施形態では、操作部30をねじ込むように操作することで、第一部材10に対して第二部材20を進退させる構成としたが、このような態様に限られない。第二部材20を進退させる構成としては、例えば作業者の手により第二部材20を押し引きする機構等、種々の構成を採用可能である。
【0112】
また、本実施形態では、係合部を一対の爪(第一爪13、第二爪23)により形成した例を示したが、このような態様に限定されない。係合部としては、梁2のフランジに対して脱着可能な種々の構成を採用可能である。
【0113】
また、本実施形態では、一対の爪(第一爪13、第二爪23)の当接面(当接面13c、当接面23c)を、互いに近接する方向に向かうに従って上下方向反支持部側へ傾斜する傾斜面状に形成した例を示したが、このような態様に限定されない。例えば、一対の爪(第一爪13、第二爪23)を、水平方向に延びるような形状に形成してもよい。
【0114】
また、本実施形態では、墜落防止設備として、一般的な外部足場の材料から構成される墜落防止用手摺8を採用したが、このような態様に限定されない。墜落防止設備としては、屋根からの人や物の墜落を防止可能な種々の構成を採用可能である。
【0115】
また、本実施形態では、梁2のフランジに、手摺取付冶具1を直接取り付けた例を示したが、このような態様に限定されない。例えば、適宜の取付部材を介して、梁2に手摺取付冶具1を取り付けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0116】
1 手摺取付冶具
8 墜落防止用手摺
12 手摺取付部
13 第一爪
23 第二爪
30 操作部