(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023012811
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】樹脂加熱成形装置の加熱部構造、及び樹脂加熱成形装置
(51)【国際特許分類】
B29C 51/42 20060101AFI20230119BHJP
【FI】
B29C51/42
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021116513
(22)【出願日】2021-07-14
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-12-22
(71)【出願人】
【識別番号】304050369
【氏名又は名称】株式会社浅野研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺本 一典
(72)【発明者】
【氏名】横井 広良
(72)【発明者】
【氏名】中井 貞興
(72)【発明者】
【氏名】高井 章伍
(72)【発明者】
【氏名】浅尾 教史
【テーマコード(参考)】
4F208
【Fターム(参考)】
4F208AC03
4F208AK04
4F208MA05
4F208MB01
4F208MC03
4F208MH06
4F208MJ14
4F208MJ22
4F208MK08
(57)【要約】
【課題】樹脂成形品の成形にあたり、金型より小さい熱可塑性樹脂材(ワーク)を、クランプで保持して加熱する場合に、ワークに対し、クランプによる伝熱の悪影響を抑え、ワーク全体を、より均一な温度分布で加熱することができる樹脂加熱成形装置の加熱部構造、及び樹脂加熱成形装置を提供する。
【解決手段】加熱部では、クランプ群は、ワークの外縁をなす一辺で、クランプの保持を要するワーク保持帯域を、クランプ保持基準ピッチPに基づき、1以上に区画した形態でクランプを断続的に配置して構成されている。クランプ保持基準ピッチPは、クランプ単体に付き、クランプの保持を受ける保持部域P1と、保持部域P1の隣で、クランプの保持を受けない局部的な非保持部域P2とからなり、クランプは、クランプ保持基準ピッチPのうち、保持部域P1が占めるクランプ部位占有率K=P1/(P1+P2)の0<K≦25(%)の条件を満たして形成されている。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂材からなる平板状のワークを、加熱された状態の下で、上型と下型で一対をなす金型で成形する樹脂加熱成形装置に対し、該金型より小さいサイズの該ワークを、加熱手段により加熱する加熱部を備える樹脂加熱成形装置の加熱部構造において、
前記ワークを把持またはその解除が可能なクランプを有し、少なくとも1以上の前記クランプからなるクランプ群が、前記ワークと共に、前記加熱部に配置可能であり、
前記加熱部では、前記クランプ群は、前記ワークの外縁を含む端部のうち、前記外縁をなす一辺で、前記クランプによる保持を要するワーク保持帯域を、基準となるクランプ保持基準ピッチPに基づき、少なくとも1以上の前記クランプ保持基準ピッチPで区画した配列形態により、前記クランプを断続的に配置して構成されていること、
前記クランプ保持基準ピッチPは、前記クランプ単体に付き、その単体の前記クランプによる保持を受ける局部的な前記ワークの部位で、前記一辺に沿った距離である保持部域P1と、前記保持部域P1の隣で、前記クランプによる保持を受けない局部的な前記ワークの部位で、前記一辺に沿った距離である非保持部域P2とからなる前記ワーク保持帯域の1ピッチ分であること、
前記クランプは、前記クランプ保持基準ピッチPのうち、前記保持部域P1を占めるクランプ部位占有率K=P1/(P1+P2)の条件0<K≦25(%)を満たした態様で、形成されていること、
を特徴とする樹脂加熱成形装置の加熱部構造。
【請求項2】
請求項1に記載する樹脂加熱成形装置の加熱部構造において、
前記クランプは、前記ワークの厚みに対応した距離で、互いに平行に配置された2つの支持部同士と、接続部とをコの字状に連結させて形成され、
前記クランプが前記ワークを保持した状態の下、前記クランプに対し、前記ワークの厚み方向に沿う高さ方向と直交する方向を、前記ワークの外縁側に延びる幅方向、及び前記ワークの前記外縁から前記ワークの面内側に延びる奥行方向としたとき、
前記支持部は、前記幅方向の大きさを、前記奥行方向よりも小さく、かつ保持する前記ワークの厚みの2倍相当を上限にして形成されていること、
を特徴とする樹脂加熱成形装置の加熱部構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載する樹脂加熱成形装置の加熱部構造において、
前記加熱手段は、輻射熱により前記ワークに加熱を行うヒータであること、
を特徴とする樹脂加熱成形装置の加熱部構造。
【請求項4】
熱可塑性樹脂材からなる平板状のワークを、加熱された状態の下で、上型と下型で一対をなす金型で成形するにあたり、該金型より小さいサイズの該ワークを、加熱手段により加熱する加熱部を備える樹脂加熱成形装置において、
前記加熱部は、請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載する樹脂加熱成形装置の加熱部構造で構成されていること、
を特徴とする樹脂加熱成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形品の製造にあたり、熱可塑性樹脂材を加熱して成形する樹脂加熱成形装置の加熱部構造、及び樹脂加熱成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック製品の中には、熱可塑性樹脂材からなる樹脂成形品があり、樹脂成形品は、工業分野をはじめ、種々な産業分野にも及び幅広く使用されている。樹脂成形品は、その形状等の仕様や製品の用途に応じて、例えば、加熱成形装置とトリミング装置を用いて製造される。加熱成形装置は、加熱成形工程において、熱可塑性樹脂材からなるワークを、加熱してその端部を金型の外で保持させた状態で、型内にあるこのワークの中央部に対し、金型形状に倣って成形することにより、半成形品を製造する。
【0003】
加熱成形工程後のトリミング工程では、トリミング装置は、半成形品から、後に製品となる成形品要部を取り出すのにあたり、半成形品のうち、成形品要部の周囲にある成形品不要部のトリミングを行う。このような成形品不要部のトリミングを、加熱成形工程後に行う製造方法では、製品の仕上げ精度は、半成形品のトリミング精度に依拠するため、加熱成形工程では、半成形品の成形精度は、一般的に仕上げ精度ほど厳格に求められない。トリミングされた成形品不要部は、スクラップとして廃棄処分される。
【0004】
ところで、近年、産業界では、環境保全・資源保護等の観点より、環境に及ぼすプラスチック製品の影響が考慮されはじめている。このような対応策の一つとして、成形品不要部の廃棄処分量を抑制する技術のほか、トリミング工程を行わず、製品(樹脂成形品)を製造する加熱成形技術が、製造業の間で注目されている。加熱成形技術は、金型より小さいサイズのワーク全体を金型内に供給し、このワークを金型形状に倣って成形することで、樹脂成形品を製造することができるため、成形品不要部の廃棄をなくすことができるからである。その一方、加熱成形技術では、ワークの加熱成形精度は、そのまま製品の仕上げ精度となるため、トリミング工程を経る場合に比べ、より高精度な成形が求められる。このような加熱成形技術を応用した熱可塑性樹脂材の成形技術は、例えば、特許文献1に開示されている。
【0005】
特許文献1は、加熱を伴った回転ベルト上に、金型より小さいサイズの合成樹脂シートを載置して、この回転ベルト装置全体を、下型の真上位置まで移動させた後、回転ベルト装置の一端側で、退避していたクランプを、移動させて回転ベルト装置に横付けしておき、回転ベルトにより、送出された合成樹脂シートの一端部を、このクランプで把持した状態で、合成樹脂シートを回転ベルト装置から解放して、下型上に覆せる加熱軟化樹脂シートの搬送方法である。特許文献1では、上型と下型との成形位置で、クランプが、合成樹脂シートを開放した後、回転ベルト装置全体を、回転ベルト装置の他端側に退避させると共に、クランプを退避位置まで移動させて、合成樹脂シートが、上型と下型との型合わせにより、成形される。
【0006】
他方、加熱成形工程で、成形前にワークへの加熱処理を施すときに、ワーク全体を、より均一な温度で加熱することは、高精度化を図る成形条件のうちの一つの要因となり、ワークの加熱を均一化することについては、例えば、特許文献2にも開示されている。
【0007】
特許文献2は、立体的成形品の成形にあたり、主に熱可塑性樹脂シートで構成された繊維強化複合シートを、赤外線棒状ヒータで加熱するとき、加熱エリアを縦横数ブロックに分け、個々のブロックでヒータの温度制御を行うことにより、繊維強化複合シート全体を均一に成形加熱温度域まで加熱するシートの加熱装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000-326328号公報
【特許文献2】特開平11-268111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1のように、特に金型より小さいサイズのワークを加熱成形して樹脂成形品を製造する場合、ワークには元々、成形処理に伴って廃棄処分されるスクラップ代を、全く設けていないことや、小さく抑えて設けていることがあるため、加熱したワーク全体を、なるべく有効に活用して成形する必要がある。それ故に、樹脂加熱成形装置では、成形前に施すワークの加熱処理にあたり、加熱部は、製品の不良化を防ぐため、端部に至るワーク全体を、より均一な温度で加熱しなければならない。
【0010】
また、加熱成形工程では、ワークは、皺や撚等のない態様で金型内にセットして成形されるため、加熱部において、ワークの加熱を、必然的に張設した状態で行わなければならず、ワークを張設した状態に維持するためには、クランプが必要となる。しかしながら、加熱部では、ワークは、クランプにより端部を保持した状態で、ヒータにより加熱されるため、ワークのうち、クランプで保持された端部には、ヒータから供給される熱が、クランプの存在に起因して伝熱し難い。従って、金型より小さいサイズのワークを加熱成形して樹脂成形品を製造しようとすると、クランプが、加熱されるワークの伝熱に悪影響を及ぼしてしまい、成形前のワーク全体を、均一な温度分布で加熱することができない問題があった。なお、特許文献2には、繊維強化複合シート(ワーク)を成形時に、金型内でどのような態様で保持されているかについては、何ら記載されていない。
【0011】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、樹脂成形品の成形にあたり、金型より小さいサイズの熱可塑性樹脂材(ワーク)を、クランプで保持して加熱する場合に、ワークに対し、クランプにより及ぼす伝熱の影響を抑えて、ワーク全体を、より均一な温度分布で加熱することができる樹脂加熱成形装置の加熱部構造、及び樹脂加熱成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明に係る樹脂加熱成形装置の加熱部構造は、以下の構成を有する。
【0013】
(1)熱可塑性樹脂材からなる平板状のワークを、加熱された状態の下で、上型と下型で一対をなす金型で成形する樹脂加熱成形装置に対し、該金型より小さいサイズの該ワークを、加熱手段により加熱する加熱部を備える樹脂加熱成形装置の加熱部構造において、前記ワークを把持またはその解除が可能なクランプを有し、少なくとも1以上の前記クランプからなるクランプ群が、前記ワークと共に、前記加熱部に配置可能であり、前記加熱部では、前記クランプ群は、前記ワークの外縁を含む端部のうち、前記外縁をなす一辺で、前記クランプによる保持を要するワーク保持帯域を、基準となるクランプ保持基準ピッチPに基づき、少なくとも1以上の前記クランプ保持基準ピッチPで区画した配列形態により、前記クランプを断続的に配置して構成されていること、前記クランプ保持基準ピッチPは、前記クランプ単体に付き、その単体の前記クランプによる保持を受ける局部的な前記ワークの部位で、前記一辺に沿った距離である保持部域P1と、前記保持部域P1の隣で、前記クランプによる保持を受けない局部的な前記ワークの部位で、前記一辺に沿った距離である非保持部域P2とからなる前記ワーク保持帯域の1ピッチ分であること、前記クランプは、前記クランプ保持基準ピッチPのうち、前記保持部域P1を占めるクランプ部位占有率K=P1/(P1+P2)の条件0<K≦25(%)を満たした態様で、形成されていること、を特徴とする。
(2)(1)に記載する樹脂加熱成形装置の加熱部構造において、前記クランプは、前記ワークの厚みに対応した距離で、互いに平行に配置された2つの支持部同士と、接続部とをコの字状に連結させて形成され、前記クランプが前記ワークを保持した状態の下、前記クランプに対し、前記ワークの厚み方向に沿う高さ方向と直交する方向を、前記ワークの外縁側に延びる幅方向、及び前記ワークの前記外縁から前記ワークの面内側に延びる奥行方向としたとき、前記支持部は、前記幅方向の大きさを、前記奥行方向よりも小さく、かつ保持する前記ワークの厚みの2倍相当を上限にして形成されていること、を特徴とする。
(3)(1)または(2)に記載する樹脂加熱成形装置の加熱部構造において、前記加熱手段は、輻射熱により前記ワークに加熱を行うヒータであること、を特徴とする。
【0014】
また、上記目的を達成するために、本発明に係る樹脂加熱成形装置は、以下の構成を有する。
【0015】
(4)熱可塑性樹脂材からなる平板状のワークを、加熱された状態の下で、上型と下型で一対をなす金型で成形するにあたり、該金型より小さいサイズの該ワークを、加熱手段により加熱する加熱部を備える樹脂加熱成形装置において、前記加熱部は、(1)乃至(3)のいずれか1つに記載する樹脂加熱成形装置の加熱部構造で構成されていること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
上記構成を有する本発明に係る樹脂加熱成形装置の加熱部構造、及び樹脂加熱成形装置の作用・効果について説明する。
【0017】
(1)熱可塑性樹脂材からなる平板状のワークを、加熱された状態の下で、上型と下型で一対をなす金型で成形する樹脂加熱成形装置に対し、該金型より小さいサイズの該ワークを、加熱手段により加熱する加熱部を備える樹脂加熱成形装置の加熱部構造において、ワークを把持またはその解除が可能なクランプを有し、少なくとも1以上のクランプからなるクランプ群が、ワークと共に、加熱部に配置可能であり、加熱部では、クランプ群は、ワークの外縁を含む端部のうち、外縁をなす一辺で、クランプによる保持を要するワーク保持帯域を、基準となるクランプ保持基準ピッチPに基づき、少なくとも1以上のクランプ保持基準ピッチPで区画した配列形態により、クランプを断続的に配置して構成されていること、クランプ保持基準ピッチPは、クランプ単体に付き、その単体のクランプによる保持を受ける局部的なワークの部位で、一辺に沿った距離である保持部域P1と、保持部域P1の隣で、クランプによる保持を受けない局部的なワークの部位で、一辺に沿った距離である非保持部域P2とからなるワーク保持帯域の1ピッチ分であること、クランプは、クランプ保持基準ピッチPのうち、保持部域P1を占めるクランプ部位占有率K=P1/(P1+P2)の条件0<K≦25(%)を満たした態様で、形成されていること、を特徴とする。
【0018】
この特徴により、加熱手段から受ける熱が、クランプによるワークの保持部位を挟む部位からワークの内層を通じて、ワークの保持部位下に伝播し易くなる。そのため、クランプによるワークの保持部位が存在していても、クランプで保持しない部位と同じように、加熱手段による熱をワークに伝熱できることから、クランプの存在による影響を抑え、金型による成形に適す成形温度帯域内の温度で、ワークを加熱することができる。
【0019】
従って、本発明に係る樹脂加熱成形装置の加熱部構造、及び樹脂加熱成形装置によれば、樹脂成形品の成形にあたり、金型より小さいサイズの熱可塑性樹脂材(ワーク)を、クランプで保持して加熱する場合に、ワークに対し、クランプにより及ぼす伝熱の影響を抑えて、ワーク全体を、より均一な温度分布で加熱することができる、という優れた効果を奏する。
【0020】
なお、本発明に係る樹脂加熱成形装置の加熱部構造、及び樹脂加熱成形装置において、平板状のワークの概念は、本発明では、樹脂加熱成形装置で熱成形するワーク(熱可塑性樹脂材)をその厚みで区分けせず、例えば、厚さ1mm以下で、たとえシート状の範疇にある厚さの熱可塑性樹脂材であっても、平板状のワークと総称したものである。
【0021】
(2)に記載する樹脂加熱成形装置の加熱部構造において、クランプは、ワークの厚みに対応した距離で、互いに平行に配置された2つの支持部同士と、接続部とをコの字状に連結させて形成され、クランプがワークを保持した状態の下、クランプに対し、ワークの厚み方向に沿う高さ方向と直交する方向を、ワークの外縁側に延びる幅方向、及びワークの外縁からワークの面内側に延びる奥行方向としたとき、支持部は、幅方向の大きさを、奥行方向よりも小さく、かつ保持するワークの厚みの2倍相当を上限にして形成されていること、を特徴とする。
【0022】
この特徴により、クランプは、簡単な構造で、ワークの把持またはその解除を実現できる上、保持対象のワークの大きさや形状にも、汎用性をもって対応することができる。しかも、クランプで保持したワークの加熱下で、加熱手段による熱がワークに伝熱されても、クランプが、ワークへの熱の伝播を遮る阻害要因となるのを防ぐことができる。そのため、ワーク全体を、金型による成形に適した温度で、加熱することができる。
【0023】
(3)に記載する樹脂加熱成形装置の加熱部構造において、加熱手段は、輻射熱によりワークに加熱を行うヒータであること、を特徴とする。
【0024】
この特徴により、クランプによるワークの保持部位の有無に拘わらず、ワークを、均一な温度で加熱することができる。
【0025】
(4)熱可塑性樹脂材からなる平板状のワークを、加熱された状態の下で、上型と下型で一対をなす金型で成形するにあたり、該金型より小さいサイズの該ワークを、加熱手段により加熱する加熱部を備える樹脂加熱成形装置において、加熱部は、(1)乃至(3)のいずれか1つに記載する樹脂加熱成形装置の加熱部構造で構成されていること、を特徴とする。
【0026】
この特徴により、金型より小さいサイズのワークを成形して樹脂成形品を製造するため、金型より大きいサイズのワークの加熱成形後、加熱に伴って生じる成形品不要部のトリミングを行う場合に比べ、材料となる熱可塑性樹脂材の廃棄処分は、ほとんど生じない。そのため、本発明に係る樹脂加熱成形装置は、環境保全・資源保護等の観点で、地球の環境に優しい装置となり得ることから、プラスチック製品の廃棄を削減する世界的な取り組みに貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】実施形態に係る加熱成形装置の搬送部内に構成されたクランプ群の要部を示す平面図である。
【
図2】
図1に示す搬送部の側面図であり、クランプ群によるワークの非把持状態を示す説明図である。
【
図3】
図1に示す搬送部の側面図であり、クランプ群によるワークの把持状態を示す説明図である。
【
図4】実施形態に係る加熱成形装置でクランプ群を構成するクランプを示す図であり、(a)は側面図、(b)はその平面図である。
【
図5】実施形態に係る加熱成形装置において、加熱部の構成と搬送部の動きを模式的に示す説明図である。
【
図6】実施形態に係る加熱成形装置の加熱部で加熱するワークについて、(a)は実施例1,2に係るクランプでワークを保持して加熱する様子を示す平面図、(b)は(a)に示すワークの加熱条件下で、加熱された状態にあるワークの温度分布を示す図である。
【
図7】実施形態に係る加熱成形装置の加熱部に関し、クランプ部位占有率Kの算出で用いるクランプ保持基準ピッチPの概念を説明するための模式図である。
【
図8】樹脂成形品の製造にあたり、(a)は
図6に示すワークの加熱条件下で加熱したワークを、金型で成形している様子を示す説明図であり、(b)は、金型から取り出した樹脂成形品を示す平面図である。
【
図9】実施形態に係る加熱成形装置の加熱部で加熱するワークについて、(a)は比較例に係るクランプでワークを保持して加熱する様子を示す平面図、(b)は(a)に示すワークの加熱条件下で、加熱された状態にあるワークの温度分布を示す図である。
【
図10】樹脂成形品の製造にあたり、(a)は
図9に示すワークの加熱条件下で加熱したワークを、金型で成形している様子を示す説明図であり、(b)は、金型から取り出した成形不良品を示す平面図である。
【
図11】実施形態に係る加熱成形装置の加熱部で、実施例1,2、及び比較例に係るクランプを用いてワークを加熱する様子を示す説明図であり、ワークに及ぼす伝熱の影響について、クランプ毎に対比して示す模式図である。
【
図12】実施例1,2、及び比較例に係るクランプでワークを保持して加熱を行った調査試験の結果であり、ワークにおけるクランプ部位占有率Kと、伝熱した試料(ワーク)の温度Tとの関係を示すグラフである。
【
図13】実施形態に係る加熱成形装置による樹脂成形品の製造工程に関し、クランプで把持されたワークを、型合わせ位置まで搬送された状態を示す第1工程図である。
【
図14】
図13に示す第1工程図に続き、ワークとの接触開始位置まで下型が上昇した状態を示す第2工程図である。
【
図15】
図14に示す第2工程図に続き、下型が支持状態位置に到達した状態を示す第3工程図であり、クランプによるワークの把持を解除する直前を示す図である。
【
図16】
図15に図示した下型の支持状態位置についての説明図である。
【
図17】実施形態に係る加熱成形装置による樹脂成形品の製造工程に関し、下型の挙動について、速度とワークの位置との関係を示すチャート図であり、(a)は参考例1に係る下型の挙動を、(b)は参考例2に係る下型の挙動を、それぞれ示す。
【
図18】
図15に示す第3工程図に続き、クランプによるワークの把持を解除完了後、クランプが金型から退避した状態を示す第4工程図である。
【
図19】
図18に示す第4工程図に続き、金型でワークを成形して樹脂成形品を製造している様子を示す第5工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る樹脂加熱成形装置の加熱部構造、及び樹脂加熱成形装置を具体化した実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。以下、本発明に係る樹脂加熱成形装置の加熱部構造は、本実施形態では、本発明に係る樹脂加熱成形装置に構成されている場合を代表に挙げるため、本実施形態に係る樹脂加熱成形装置を主として、説明する。
【0029】
本発明に係る樹脂加熱成形装置は、熱可塑性樹脂材からなるワークを、加熱された状態の下で、上型と下型で一対をなす金型により、成形される樹脂成形品を製造する装置であり、金型より小さいサイズで、平板状に形成されたワークを、成形対象としている。この樹脂加熱成形装置では、ワークは、加熱部において、クランプにより保持された状態の下、加熱手段によって加熱される。なお、本発明に係る樹脂加熱成形装置の加熱部構造は、樹脂成形品を製造する設備を対象に、例えば、本発明に係る樹脂加熱成形装置と同じような既設の樹脂加熱成形装置の加熱部に、改造を施して採り入れることや、別の機能を果たす新設の装置の一部に、採り入れること等も可能である。
【0030】
はじめに、ワークについて、簡単に説明する。
図1は、実施形態に係る加熱成形装置の搬送部内に構成されたクランプ群の要部を示す平面図である。ワーク50は、例えば、ポリプロピレン(略称PP:polypropylene、アクリル樹脂(略称PMMA:acrylic resin)、ポリアセタール(略称POM:polyacetal)、ポリカーボネート(略称PC:polycarbonate))等、熱可塑性樹脂材からなる。ワーク50は、成形時に、金型10内に完全に収まるよう、金型10より小さいサイズになっている。
【0031】
ワーク50は、説明の便宜上、本実施形態では、
図1に示すように、平面の輪郭を四角形とした平板で、一例として、概ね1mm~十数mm程の板厚、一辺の長さを数十~数百mm程の大きさに形成された材料である。なお、本実施形態では、平板状のワーク50の概念は、加熱成形装置1で熱成形するワーク(熱可塑性樹脂材)50をその厚みで区分けせず、例えば、厚さ1mm以下で、たとえシート状の範疇にある厚さの熱可塑性樹脂材であっても、平板状のワークと総称したものである。また、ワーク50は、成形する樹脂成形品(製品)の仕様に応じて、輪郭や板厚、大きさ等の形状を異にするため、輪郭、板厚や大きさ等の形状は、本実施形態に限定されるものではなく、適宜変更可能である。
【0032】
図2は、
図1に示す搬送部の側面図であり、クランプ群によるワークの非把持状態を示す説明図であり、
図3は、クランプ群によるワークの把持状態を示す説明図である。
図5は、実施形態に係る加熱成形装置において、加熱部の構成と搬送部の動きを模式的に示す説明図である。なお、
図1中、左右方向を、加熱成形装置1(本発明の樹脂加熱成形装置に対応)の水平方向(搬送部20の移動方向)HZとして、
図2以降の各図でも、
図1に定義した方向に準じる。また、
図5中、上下方向を、加熱成形装置1の上下方向VTとして、
図6以降の各図でも、
図5に定義した方向に準じる。
【0033】
次に、加熱成形装置1について、説明する。
図1及び
図5に示すように、加熱成形装置1は、駆動部2、制御部3、上型11と下型12で一対をなす金型10、搬送部20、クランプ群30、及び加熱部40等を備えている。
【0034】
図5に示すように、加熱成形装置1では、搬送部20は、退避位置X1と、型合わせ位置X2との間を、搬送ラインFL上に沿って移動可能に構成されている。退避位置X1は、金型10から離れた加熱部40内である。型合わせ位置X2は、上型11との型合わせに対応して、ワーク50を下型12の上面12aに載置可能な金型10内の位置である。
【0035】
加熱部40は、加熱された状態の下で、ワーク50を金型10で成形するにあたり、ヒータ41(加熱手段)により、予めワーク50を成形に必要な温度まで加熱する部分である。ヒータ41は、輻射熱によりワーク50を加熱する赤外線ヒータである。このヒータ41は、輻射熱をワーク50の平面(
図1参照)全体で享受できるよう、ワーク50の平面(
図1参照)の面積より、十分に大きい電磁波の照射面を具備している。
【0036】
図1~
図3に示すように、搬送部20には、クランプ群30が配設されている。搬送部20が、退避位置X1と型合わせ位置X2との間で移動するのに伴い、クランプ群30は、ワーク50と共に、加熱部40に配置可能である。クランプ群30は、少なくとも1以上のクランプ31からなり、クランプ31は、ワーク50の端部51を、把持またはその解除を可能に形成されている。
【0037】
クランプ群30は、
図1~
図3に示すように、ワーク50の配置位置を挟む水平方向HZ両側に、対向配置で一組をなして配設され、平板状のワーク50に対し、対向する端部51同士の保持を可能としている。搬送部20では、両側のクランプ群30同士は、ワーク50の配置位置を基準に、
図2に示すように、互いに離間させる動作と、
図3に示すように、互いに近接する動作とを、選択的に行うことができる。
【0038】
具体的には、クランプ群30同士が互いに近接すると、クランプ群30では、クランプ31が、ワーク50の端部51を把持する。また、クランプ群30同士が互いに離間すると、クランプ31は、ワーク50の端部51の把持を解除する。ワーク50は、退避位置X1で、クランプ群30により端部51を把持して保持されると、ワーク50は、クランプ群30で端部51を把持したまま、搬送部20の移動により、型合わせ位置X2まで搬送され、金型10に供給される。
【0039】
次に、クランプ31の構成について、
図4を用いて説明する。
図4は、実施形態に係る加熱成形装置でクランプ群を構成するクランプを示す図であり、(a)は側面図、(b)はその平面図である。クランプ31は、本実施形態では、
図4に例示するように、ワーク50の厚みtに対応した距離で、互いに平行に配置された2つの支持部32,32同士と、接続部33とをコの字状に連結させて形成されている。クランプ31は、例えば、金属等のように、熱伝導性に優れた材質からなる。
【0040】
ここで、クランプ31がワーク50を保持した状態の下、クランプ31に対し、ワーク50の厚み方向(
図4(a)中、上下方向)に沿う高さ方向CHと直交する方向を、ワーク50の外縁50F側(
図4(b)中、上下方向)に延びる幅方向CW、及びワーク50の外縁50Fからワーク50の面内側(
図4(a)及び(b)中、左側)に延びる奥行方向CLと定義する。クランプ31では、支持部32は、幅方向CWの大きさである幅長m(0<m)を、奥行方向CLの大きさである奥行長n(0<n<m)よりも小さく、かつ保持するワーク50の厚み2の2倍相当(m≦2t)を上限にして形成されている。
【0041】
ワーク50をクランプ31に把持する際や、把持していたワーク50をクランプ31から解放する際、また、把持している間、
図4(a)に示すように、特にクランプ31の支持部32は、ワーク50表面と接触する。そのため、クランプ31のうち、ワーク50表面と接触する部分に対し、例えば、Rz(十点平均粗さ)6.3S相当以上の高い面租度で、表面処理を施すことや、摺動性を高めたコーティング被覆処理を表面に施す等、ワーク50表面へのダメージを抑える対策が、クランプ31に施されていることが好ましい。
【0042】
加熱部40では、ワーク50は、クランプ群30により保持された状態の下で、加熱される。そのため、クランプ31により、ワーク50の加熱に適した態様で、クランプ群30を構成する必要がある。
【0043】
次に、クランプ群30と、それを構成するクランプ31との関係について、説明する。
図6は、実施形態に係る加熱成形装置の加熱部で加熱するワークについて、(a)は実施例1,2に係るクランプでワークを保持して加熱する様子を示す平面図、(b)は(a)に示すワークの加熱条件下で、加熱された状態にあるワークの温度分布を示す図である。
図7は、実施形態に係る加熱成形装置の加熱部に関し、クランプ部位占有率Kの算出で用いるクランプ保持基準ピッチPの概念を説明するための模式図である。
【0044】
本実施形態に係る加熱成形装置1(本実施形態に係る樹脂加熱成形装置の加熱部構造)の加熱部40では、
図6(a)に示すように、クランプ群30は、ワーク50の外縁50Fをなす端部51のうち、外縁50Fをなす一辺で、クランプ31による保持を要するワーク保持帯域51Qを、基準となるクランプ保持基準ピッチPに基づき、少なくとも1以上のクランプ保持基準ピッチPで区画した配列形態により、クランプ31を断続的に配置して構成されている。
【0045】
クランプ保持基準ピッチPは、
図7に示すように、クランプ31単体に付き、その単体のクランプ31による保持を受ける局部的なワークの部位で、一辺に沿った距離である保持部域P1と、保持部域P1の隣で、クランプ31による保持を受けない局部的なワークの部位で、一辺に沿った距離である非保持部域P2とからなるワーク保持帯域の1ピッチ分である。クランプ31は、クランプ保持基準ピッチPのうち、保持部域P1を占めるクランプ部位占有率K=P1/(P1+P2)の条件0<K≦25(%)を満たした態様で、形成されている。
【0046】
図4に例示した単体のクランプ31の場合、
図4及び
図7に示すように、保持部域P1は、支持部32の幅長mに相当する。また、ワーク保持帯域51Qに対し、クランプ保持基準ピッチPによる区画数は、ワーク50の形状や、加熱部40でのワーク50の加熱条件、金型10でのワーク50の成形条件等に応じて設定される。
【0047】
具体的に説明する。ヒータ41が、クランプ群30(クランプ31)で保持したワーク50を加熱すると、ヒータ41は、
図4及び
図6に示すように、ワーク50全体に亘って電磁波を照射して、その輻射熱をワーク50に伝える。このとき、ワーク50では、ヒータ41による電磁波の照射が、クランプ群30をなす個々のクランプ31の存在に起因して、ワーク保持帯域51Qのうち、クランプ31の保持部位では、遮られてしまう。そのため、ワーク50のうち、クランプ31の保持部位は、ヒータ41から電磁波の照射を直に受けることができない。
【0048】
加熱成形装置1(本実施形態に係る樹脂加熱成形装置の加熱部構造)では、クランプ部位占有率Kの条件0<K≦25(%)を満たす状態(
図6(a)及び
図7参照)にある支持部32の幅長mで、クランプ31が形成されていると、ヒータ41により、加熱されるワーク50の温度分布が、
図6(b)に示すように、金型10による成形に適す温度として、設定された許容範囲の温度幅を有する成形温度帯域50Hとなる。
【0049】
図8は、樹脂成形品の製造にあたり、(a)は
図6に示すワークの加熱条件下で加熱したワークを、金型で成形している様子を示す説明図であり、(b)は、金型から取り出した樹脂成形品を示す平面図である。後述する樹脂成形品60の製造工程に基づき、全体が成形温度帯域50Hで加熱されたワーク50を、金型10で成形すると、
図8(a)に示すように、ワーク50のうち、ワーク保持帯域51Qの部分も、金型10の型形状に倣い易くなり、
図8(b)に示すように、所望とする形状の樹脂成形品60が成形される。
【0050】
図9は、実施形態に係る加熱成形装置の加熱部で加熱するワークについて、(a)は比較例に係るクランプでワークを保持して加熱する様子を示す平面図、(b)は(a)に示すワークの加熱条件下で、加熱された状態にあるワークの温度分布を示す図である。
図10は、樹脂成形品の製造にあたり、(a)は
図9に示すワークの加熱条件下で加熱したワークを、金型で成形している様子を示す説明図であり、(b)は、金型から取り出した成形不良品を示す平面図である。
【0051】
しかしながら、ワーク保持帯域51Qに対し、クランプ部位占有率Kが25%を超えた条件下の支持部32の幅長mで、クランプ31が形成されていると、ヒータ41により、加熱されるワーク50の温度分布は、
図8(b)に示すように、ワーク50の中央部で成形温度帯域50Hになるものの、ワーク保持帯域51Qでは、低温帯域50Cとなる。低温帯域50Cにある温度は、成形温度帯域50Hから外れて低く、金型10による成形にとって、不適な温度である。
【0052】
すなわち、低温帯域50Cが、加熱されたワーク50に含まれていると、樹脂成形品60の製造にあたり、
図10(a)に示すように、ワーク50のうち、低温帯域50Cにあるワーク保持帯域51Qが、金型10の型形状に倣って成形されない成形不良部61Xとなる。その結果、
図10(b)に示すように、良品の樹脂成形品60を成形できず、成形不良部61Xを含んだ成形不良品60Xが成形されてしまう。
【0053】
次に、本出願人は、ワーク50のワーク保持帯域51Qを、クランプ群30(クランプ31)で保持する上で、クランプ31に起因して、ワーク50への加熱に与える影響を確認するための調査試験を行った。調査試験では、ワーク50に相当したポリカーボネート製の試料(厚さt=6mm)と、クランプ部位占有率Kの異なる態様で形成した3種のクランプを用いて、クランプの種別毎に、それぞれクランプで保持した試料(
図11では、便宜上、「試料50」と称す)を加熱部40のヒータ41で加熱し、加熱された試料50の温度と、クランプによる保持部位での輻射熱の伝播状態とについて、調査した。3種のクランプは、第1クランプ31A(31)と、第2クランプ31B(31)と、第3クランプ31Xである。第1クランプ31Aは、実施例1に係る実験で用いられ、第2クランプ31Bは、実施例2に係る実験で用いられ、第3クランプ31Xは、比較例に係る実験で用いた。実施例1,2、及び比較例に係る実験の条件は、各クランプの仕様の違いを除き、全て同じある。
【0054】
<実験条件>
図11は、実施形態に係る加熱成形装置の加熱部で、実施例1,2、及び比較例に係るクランプを用いてワークを加熱する様子を示す説明図であり、ワークに及ぼす伝熱の影響について、クランプ毎に対比して示す模式図である。
図11に示すように、第1クランプ31Aは、クランプ部位占有率K=4に基づいて形成されている。第2クランプ31Bは、クランプ部位占有率K=20に基づいて形成されている。第3クランプ31Xは、クランプ部位占有率K=98に基づき、クランプ31と同様、対向配置の支持部同士と、接続部とをコの字状に連結させて形成されている。
【0055】
<実験結果>
図12は、実施例1,2、及び比較例に係るクランプでワークを保持して加熱を行った調査試験の結果であり、ワークにおけるクランプ部位占有率Kと、伝熱した試料(ワーク)の温度Tとの関係を示すグラフである。調査試験では、試料50への加熱にあたり、金型10による成形に適す成形温度帯域50Hは、
図12に示すように、上限側温度TUと下限側温度TLとの間であり、上限側温度TUと下限側温度TLとの温度幅は、一例として10℃程である。
【0056】
調査試験の結果は、次の通りであった。実施例1に係る第1クランプ31Aで、クランプ部位占有率がK=4である場合、ヒータ41により、加熱された試料50の温度T1は、上限側温度TUと下限側温度TLとの許容範囲内であった。実施例2に係る第2クランプ31Bで、クランプ部位占有率がK=20である場合、ヒータ41により、加熱された試料50の温度T2は、上限側温度TUと下限側温度TLとの範囲許容内であった。比較例に係る第3クランプ31Xで、クランプ部位占有率がK=98である場合、ヒータ41により、加熱された試料50の温度T3は、上限側温度TUと下限側温度TLとの許容範囲外であった。
【0057】
<考察>
調査試験の考察として、実施例1に係る第1クランプ31A(31)と、実施例2に係る第2クランプ31B(31)とは、双方とも、クランプ保持基準ピッチPに対し、クランプ部位占有率Kの上限値25%を下回った状態の保持部域P1、すなわち支持部32の幅長mで、形成されている。ヒータ41による加熱の下、クランプ31が、試料50の保持部位を覆った状態にあっても、クランプ部位占有率がK=4、20の場合、
図11に示すように、クランプ31による試料50の保持部位は、比較的小さく抑えられている。
【0058】
そのため、ヒータ41による輻射熱は、クランプ31による試料50の保持部位を挟む部位から、試料50の内層を通じて、試料50の保持部位下に伝播する。その結果、クランプ31による試料50の保持部位であっても、クランプ31で保持しない部位と同じように、ヒータ41による輻射熱が試料50に伝熱できることから、クランプ31の存在による影響を抑え、上限側温度TUと下限側温度TLとの範囲許容内の温度Tで、試料50を加熱することができているものと推察される。
【0059】
一方、比較例の場合、クランプ保持基準ピッチPに対し、クランプ部位占有率Kの上限値25%を大幅に超えたK=98(%)の状態にある保持部域P1、すなわち支持部の幅長(クランプ31の支持部32の幅長mに相当)で、第3クランプ31Xが形成されている。ヒータ41による加熱の下、クランプ部位占有率がK=98の場合、
図11に示すように、第3クランプ31Xでは、支持部の幅長は比較的大きくなっており、試料50の保持部位は、このような第3クランプ31Xによって覆われた状態となっている。
【0060】
そのため、ヒータ41による輻射熱は、第3クランプ31Xによる試料50の保持部位を挟む部位から、試料50の保持部位下にある内層を通じて、伝播し難くい状態にある。それ故に、ヒータ41による輻射熱が試料50に伝熱されても、試料50を保持する第3クランプ31Xが、試料50への輻射熱の伝播を遮る阻害要因となってしまい、上限側温度TUと下限側温度TLとの範囲許容内の温度Tで、試料50を加熱できないものと推察される。
【0061】
次に、金型10について、説明する。金型10は、製品である樹脂成形品60(
図8参照)の成形形状に対応した型形状に形成され、上型11と下型12で組をなしている。金型10は、上型11と下型12の双方とも、それぞれ駆動部2に基づいて、昇降またはその停止を可能に構成されている。制御部3は、駆動部2の動作制御、搬送部20の動作制御、クランプ群30の動作制御(ワーク50の把持とその解除)をはじめ、加熱部40におけるヒータ41の温度調節や、ワーク50に向けた輻射熱の温度管理(
図12参照)に装着される温度センサ、光電センサや近接センサ等の各種センサ、空圧機器等に装着される種々のセンサ等、加熱成形装置1全体の電気的な制御を担う。
【0062】
金型10では、上型11と下型12との型開き位置は、
図5に示すように、搬送部20によるワーク50の搬送ラインFLを基準に設定され、上型11の上降端位置U1は、搬送ラインFLより上方であり、下型12の下降端位置L1は、搬送ラインFLより下方である。駆動部2と制御部3により、上型11は、上降端位置U1の下方側に向けて動き、下型12は、下降端位置L1の上方側に向けて動く。
【0063】
次に、樹脂成形品60の製造にあたり、加熱成形装置1の制御方法について、説明する。
図13は、実施形態に係る加熱成形装置による樹脂成形品の製造工程に関し、クランプで把持されたワークを、型合わせ位置まで搬送された状態を示す第1工程図である。
【0064】
図5に示すように、搬送部20が、クランプ群30で把持された状態のワーク50を、退避位置X1から搬送して、
図13に示すように、この状態のワーク50が、金型10の型合わせ位置X2に配置される。ワーク50は、予め加熱部40で、例えば、百数十度程に加熱されて軟化した状態になっている。そのため、ワーク50が、両側(
図13中、左右側)の端部51をクランプ31(クランプ群30)で保持した状態で、型合わせ位置X2に供給されると、加熱前に平板状であったワーク50は、
図13に示すように、クランプ群30より下に垂れ下がった垂下部52をなす形状に変形している。
【0065】
図14は、
図13に示す第1工程図に続き、ワークとの接触開始位置まで下型が上昇した状態を示す第2工程図である。
図17は、実施形態に係る加熱成形装置による樹脂成形品の製造工程に関し、下型の挙動について、速度とワークの位置との関係を示すチャート図であり、(a)は参考例1に係る下型の挙動を、(b)は参考例2に係る下型の挙動を、それぞれ示す。
【0066】
ワーク50が、
図13に示すように、金型10の型合わせ位置X2に配置された後、
図17に示すように、制御部3は、下型12を、下降端位置L1から、搬送ラインFL上で待機するワーク50に向けて一次速度V1(0<V1)で上昇させ、
図14に示すように、垂下部52の底53と接触させる。下型12が、垂下部52の底53と接触した接触開始位置L2に到達したら、制御部3は、
図17に示すように、垂下部52の底53との接触を開始する下型12の接触開始位置L2を境に、下型12の動作に対し、一次速度V1(0<V1)から、負の加速度で減速された二次速度V2(0<V2<V1)に変化させる制御を、駆動部2に行う。
【0067】
図15は、
図14に示す第2工程図に続き、下型がワークの下側支持位置に到達した状態を示す第3工程図であり、クランプによるワークの把持を解除する直前を示す図である。
図16は、
図15に図示した下型の支持状態位置についての説明図である。
【0068】
加熱成形装置1では、このような変形を伴ったワーク50を、下型12の上面12a上に載置してから、上型11との型合わせで成形するにあたり、ワーク50の垂下部52の底53を、上型11に向けて上昇する下型12による当接で、支えた状態になった下型12の支持状態位置L3で、制御部3は、クランプ群30によるワーク50の把持を解除する。支持状態位置L3は、
図15及び
図16に示すように、下型12の上面12aと接触可能なワーク50の有効接触面積S1のうち、下型12と接触する垂下部52の底53に対し、下型12側に投影される垂下部52の底53の投影接触面積S2を占める割合S2/S1が、少なくとも5%の条件を満たす状態に到達した位置である。この割合S2/S1が、5%未満であると、上昇動作を伴った下型12の上面12a上に、クランプ群30による端部51の把持を解除したワーク50を載せた場合、ワーク50は、下型12の上面12a上で位置ずれ等を伴い、金型10による成形加工で支障を来してしまう場合があるからである。
【0069】
具体的に説明する。下型12の上面12aが、最初に垂下部52の底53と概ね接触し始める接触開始位置L2に達したタイミングで、制御部3は、
図17に示すように、下型12を二次速度V2(0<V2<V1)に減速する。これにより、下型12は、減速した二次速度V2で上昇して支持状態位置L3に近づく。
【0070】
なお、下型12において、接触開始位置L2と支持状態位置L3を検知する上で、下型12の上面12aとワーク50の垂下部52との状態を検出可能な検出手段を、加熱成形装置1に設けておくことが好ましい。検出手段の一例として、接触開始位置L2と支持状態位置L3にそれぞれ対応した下型12の動作ポイントを把握しておき、これらの動作ポイントに下型12が近づいたことを、近接センサで検出する手段である。また、垂下部52の底53の位置に合わせて、光電センサより光を照射し、下型12の上面12aが、この光と干渉する状態になったタイミングで、制御部3が、移動中の下型12の動作を制御する手段等である。
【0071】
<参考例1>
参考例1に係る下型12の動作制御では、
図17(a)に示すように、下型12は、接触開始位置L2から支持状態位置L3に向けて、二次速度V2で減速しながら上昇し続け、制御部3は、支持状態位置L3に合わせて、下型12の上昇動作を停止させる。下型12が停止したら、制御部3は、下型12を支持状態位置L3で停止させたまま、搬送部20に対し、クランプ群30同士を互いに離間させ、クランプ31によるワーク50の端部51の把持を解除している。
【0072】
<参考例2>
また、参考例2に係る下型12の動作制御では、下型12は、接触開始位置L2から支持状態位置L3に向けて、二次速度V2で減速しながら上昇し続ける。参考例2の場合、
図17(b)に示すように、二次速度V2は、閾値として設定された閾値速度v(0<v<V2)より小さく抑えると共に、速度成分v0(0<v0<v)を有する下型の動きの下、支持状態位置L3で加速度の向きを変え、負の加速度から変化させた正の加速度を含む速度である。
【0073】
閾値速度vとは、上昇動作を続ける下型12の上面12aに、垂下部52の底53を預けた状態になっているワーク50に対し、支持状態位置L3で、ワーク50の端部51の把持を解除しても、後述する
図18のように、上昇動作を伴った下型12の上面12a上に、ワーク50を、位置ずれ等もなく、金型10による成形加工で支障を生じない適切な状態で配置できることを前提に、その許容範囲内となる下型12の上限速度を意味する。また、速度成分v0とは、下型12が支持状態位置L3に到達し、クランプ群30によるワーク50の端部51の把持を解除するとき、下型12に、低速ながらも上昇に向けた動きを伴っていることを意味する。
【0074】
図18は、
図15に示す第3工程図に続き、クランプによるワークの把持を解除完了後、クランプが金型から退避した状態を示す第4工程図である。
図19は、
図18に示す第4工程図に続き、金型でワークを成形して樹脂成形品を製造している様子を示す第5工程図である。
【0075】
下型12が支持状態位置L3に到達後、支持状態位置L3で、クランプ群30(クランプ31)によるワーク50の保持が解除されたら、制御部3は、
図17及び
図18に示すように、二次速度V2に続き正の加速度で増速した三次速度V3で、下型12を成形基準位置L4まで上昇させ、下型12の上面12aに載置したワーク50を、搬送ラインFLに合わせて配置する。下型12が成形基準位置L4に到達後、
図19に示すように、制御部3は、上型11を上型成形位置U2まで下降させることにより、上型11と下型12とが型合わせされる。かくして、ワーク50が、上型11と下型12により、加熱して成形され、樹脂成形品60が製造される。
【0076】
次に、本実施形態に係る加熱成形装置の加熱部構造、及び加熱成形装置1の作用・効果について説明する。
【0077】
本実施形態に係る加熱成形装置の加熱部構造は、熱可塑性樹脂材からなる平板状のワーク50を、加熱された状態の下で、上型11と下型12で一対をなす金型10で成形する加熱成形装置1に対し、金型10より小さいサイズのワーク50を、ヒータ41により加熱する加熱部40を備える加熱成形装置の加熱部構造において、ワーク50を把持またはその解除が可能なクランプ31を有し、少なくとも1以上のクランプ31からなるクランプ群30が、ワーク50と共に、加熱部40に配置可能であり、加熱部40では、クランプ群30は、ワーク50の外縁50Fを含む端部51のうち、外縁50Fをなす一辺で、クランプ31による保持を要するワーク保持帯域51Qを、基準となるクランプ保持基準ピッチPに基づき、少なくとも1以上のクランプ保持基準ピッチPで区画した配列形態により、クランプ31を断続的に配置して構成されていること、クランプ保持基準ピッチPは、クランプ31単体に付き、その単体のクランプ31による保持を受ける局部的なワーク50の部位で、外縁50Fの一辺に沿った距離である保持部域P1と、保持部域P1の隣で、クランプ31による保持を受けない局部的なワーク50の部位で、外縁50Fの一辺に沿った距離である非保持部域P2とからなるワーク保持帯域の1ピッチ分であること、クランプ31は、クランプ保持基準ピッチPのうち、保持部域P1を占めるクランプ部位占有率K=P1/(P1+P2)の条件0<K≦25(%)を満たした態様で、形成されていること、を特徴とする。
【0078】
この特徴により、ヒータ41から受ける熱は、クランプ31によるワーク50の保持部位を挟む部位から、ワーク50の内層を通じて、ワーク50の保持部位下に伝播し易くなっている。そのため、クランプ31によるワーク50の保持部位が存在していても、クランプ31で保持しない部位と同じように、ヒータ41による熱をワーク50に伝熱できることから、クランプ31の存在による影響を抑え、金型10による成形に適す成形温度帯域50Hの温度で、ワーク50を加熱することができる。
【0079】
従って、本実施形態の加熱成形装置の加熱部構造によれば、樹脂成形品60の成形にあたり、金型10より小さいサイズの熱可塑性樹脂材(ワーク50)を、クランプ31で保持して加熱する場合に、ワーク50に対し、クランプ31により及ぼす伝熱の影響を抑えて、ワーク50全体を、より均一な温度分布で加熱することができる、という優れた効果を奏する。
【0080】
なお、本出願人は、前述した調査試験とは別に行った調査によると、クランプ部位占有率Kが25(%)までであれば、ヒータ41の輻射熱によりワーク50に伝熱された温度は、
図12に示すように、上限側温度TUと下限側温度TLとの間に収まり、良品の樹脂成形品60を成形できることを確認している。一方、クランプ部位占有率Kが25(%)を超えてしまうと、ヒータ41の輻射熱によりワーク50に伝熱された温度は、参照する
図12に示すように、下限側温度TLを下回る。従って、クランプ部位占有率がK25(%)超えの状態で形成されたクランプ31により、ワーク50を保持して行う加熱成形は、
図10に示すように、成形不良品60Xの発生を招く。
【0081】
また、本実施形態の加熱成形装置の加熱部構造では、クランプ31は、ワーク50の厚みtに対応した距離で、互いに平行に配置された2つの支持部32同士と、接続部33とをコの字状に連結させて形成され、クランプ31がワーク50を保持した状態の下、クランプ31に対し、ワーク50の厚み方向に沿う高さ方向CHと直交する方向を、ワーク50の外縁50F側に延びる幅方向CW、及びワーク50の外縁50Fからワーク50の面内側に延びる奥行方向CLとしたとき、支持部32は、幅方向CWの大きさである幅mを、奥行方向CLの大きさである奥行nよりも小さく、かつ保持するワーク50の厚みtの2倍相当(2t)を上限にして形成されていること、を特徴とする。
【0082】
この特徴により、クランプ31は、簡単な構造で、ワーク50の把持またはその解除を実現できる上、保持対象のワーク50の大きさや形状にも、汎用性をもって対応することができる。しかも、クランプ31で保持したワーク50の加熱下で、ヒータ41の熱がワーク50に伝熱されても、クランプ31が、ワーク50への熱の伝播を遮る阻害要因となるのを防ぐことができる。そのため、
図6(a)及び(b)に示すように、ワーク保持帯域51Qを含むワーク50全体を、成形温度帯域50Hにある均一な温度で、加熱することができる。
【0083】
また、本実施形態の加熱成形装置の加熱部構造では、加熱手段は、輻射熱によりワーク50に加熱を行うヒータ41であること、を特徴とする。
【0084】
この特徴により、クランプ31によるワーク50の保持部位の有無に拘わらず、ワーク50を、均一な温度で加熱することができる。
【0085】
また、本実施形態の加熱成形装置1は、前述したように、本実施形態の加熱成形装置の加熱部構造で構成されていること、を特徴とする。
【0086】
この特徴により、金型10より小さいサイズのワーク50を成形して樹脂成形品60を製造するため、金型より大きいサイズのワークの加熱成形後、加熱に伴って生じる成形品不要部のトリミングを行う場合に比べ、材料となる熱可塑性樹脂材の廃棄処分は、ほとんど生じない。そのため、加熱成形装置1は、環境保全・資源保護等の観点で、地球の環境に優しい装置となり得ることから、プラスチック製品の廃棄を削減する世界的な取り組みに貢献できる。
【0087】
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できる。
【0088】
例えば、実施形態では、
図4に例示したクランプ31により、クランプ群30を構成したが、クランプの形状、構造等の仕様は、実施形態に限定されるものではなく、ワークの形状や材料特性、ワークの成形条件等に応じて、種々変更可能である。また、クランプ群によりワークの端部を保持する部分は、
図1に限定されるものではなく、ワークの成形条件に応じて、種々変更可能である。
【符号の説明】
【0089】
1 樹脂加熱成形装置
10 金型
11 上型
12 下型
30 クランプ群
31 クランプ
31A 第1クランプ(クランプ)
31B 第2クランプ(クランプ)
32 支持部
33 接続部
40 加熱部
41 ヒータ(加熱手段)
50 ワーク
50F ワークの外縁
51 端部
51Q クランプワーク保持帯域
CH (クランプの)高さ方向
CW (クランプの)幅方向
CL (クランプの)奥行方向
t ワークの厚み
m 支持部の幅(幅方向の大きさ)
n 支持部の奥行(幅方向の大きさ)
【手続補正書】
【提出日】2021-10-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂材からなる平板状のワークを、加熱された状態の下で、上型と下型で一対をなす金型で成形する樹脂加熱成形装置に対し、該金型より小さいサイズの該ワークを、加熱手段により加熱する加熱部を備える樹脂加熱成形装置の加熱部構造において、
前記ワークを把持またはその解除が可能なクランプを有し、少なくとも1以上の前記クランプからなるクランプ群が、前記ワークと共に、前記加熱部に配置可能であり、
前記クランプ群では、前記ワークの外縁を含む端部のうち、前記外縁をなす一辺で、前記クランプによる保持を要するワーク保持帯域を、基準となるクランプ保持基準ピッチPで区画した配列形態により、前記クランプを断続的に配置して構成されていること、
前記クランプ保持基準ピッチPは、前記クランプ単体に付き、その単体の前記クランプによる保持を受ける局部的な前記ワークの部位で、前記一辺に沿った距離である保持部域P1と、前記保持部域P1の隣で、前記クランプによる保持を受けない局部的な前記ワークの部位で、前記一辺に沿った距離である非保持部域P2とからなる前記ワーク保持帯域の1ピッチ分であること、
前記クランプは、前記クランプ保持基準ピッチPのうち、前記保持部域P1を占めるクランプ部位占有率K=P1/(P1+P2)の条件0<K≦25(%)を満たした態様で、設けられていること、
前記条件0<K≦25(%)を満たすことにより、前記クランプによる前記ワークの保持部位が存在している場合でも、前記クランプで保持しない部位と同じように、前記加熱手段による熱を前記ワークに伝熱できて、前記クランプの存在による影響を抑え、前記金型による成形に適す成形温度帯域内の温度で、前記ワークを加熱することができること、
を特徴とする樹脂加熱成形装置の加熱部構造。
【請求項2】
請求項1に記載する樹脂加熱成形装置の加熱部構造において、
前記クランプは、前記ワークの厚みに対応した距離で、互いに平行に配置された2つの支持部同士と、接続部とをコの字状に連結させて形成され、
前記クランプが前記ワークを保持した状態の下、前記クランプに対し、前記ワークの厚み方向に沿う高さ方向と直交する方向を、前記ワークの外縁側に延びる幅方向、及び前記ワークの前記外縁から前記ワークの面内側に延びる奥行方向としたとき、
前記支持部は、前記幅方向の大きさを、前記奥行方向よりも小さく、かつ保持する前記ワークの厚みの2倍相当を上限にして形成されていること、
を特徴とする樹脂加熱成形装置の加熱部構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載する樹脂加熱成形装置の加熱部構造において、
前記加熱手段は、輻射熱により前記ワークに加熱を行うヒータであること、
を特徴とする樹脂加熱成形装置の加熱部構造。
【請求項4】
熱可塑性樹脂材からなる平板状のワークを、加熱された状態の下で、上型と下型で一対をなす金型で成形するにあたり、該金型より小さいサイズの該ワークを、加熱手段により加熱する加熱部を備える樹脂加熱成形装置において、
前記加熱部は、請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載する樹脂加熱成形装置の加熱部構造で構成されていること、
を特徴とする樹脂加熱成形装置。