(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128119
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】電子部品等の加熱観察装置
(51)【国際特許分類】
G01N 25/00 20060101AFI20230907BHJP
H05B 3/00 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
G01N25/00 K
H05B3/00 310D
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022032245
(22)【出願日】2022-03-03
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000212599
【氏名又は名称】中谷 進
(71)【出願人】
【識別番号】597130074
【氏名又は名称】羽田 誠
(72)【発明者】
【氏名】羽田 誠
(72)【発明者】
【氏名】中谷 進
【テーマコード(参考)】
2G040
3K058
【Fターム(参考)】
2G040BA18
2G040BA26
2G040CB04
2G040EA06
2G040EB01
2G040EC01
2G040EC06
2G040HA01
2G040ZA08
3K058AA42
3K058CA23
3K058CB01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】電子部品に温度センサを取り付けることなく、加熱されている電子部品の温度が温度プロファイル管理基準の範囲内に入るように放射熱を制御する、電子部品等の加熱観察装置の提供。
【解決手段】観察試料BWと同時に加熱されるダミー加熱部材のダミー温度にもとづいて、下部ヒーター4aと上部ヒーター4bの電力量を制御するので、熱電対を取付けない状態の観察試料BWの加熱観察を実現する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
観察する電子部品等の試料である観察試料(BW)を上面に載置する試料載置テーブル(5)、前記試料載置テーブル(5)の上面に載置された前記観察試料(BW)を放射熱によって加熱するヒーター、前記ヒーターに供給する電力量であるヒーター電力量を操作するヒーター電力操作部、前記ヒーター電力量を前記ヒーター電力操作部に指示する温度調整部と、を備えた、前記観察試料(BW)の前記放射熱による加熱時の挙動を観察する電子部品等の加熱観察装置であって、
前記観察試料(BW)の加熱時である観察試料加熱時に前記放射熱によって加熱される、下面がダミー下面であり上面がダミー上面であるダミー加熱部材が設けられ、
前記ダミー加熱部材の温度であるダミー温度を検出するダミー温度検出手段が取付けられ、
前記観察試料加熱時の前記放射熱の制御は、前記ダミー温度にもとづく前記ヒーター電力量の制御によって行われるものであり、
前記観察試料加熱時は、前記観察試料(BW)の温度の検出は行わない形態であり、かつ、前記観察試料(BW)に熱電対等の温度検出手段を取付けない形態である、ことを特徴とする電子部品等の加熱観察装置。
【請求項2】
前記観察試料(BW)の加熱時の温度である観察試料温度の加熱経過時間におけるバラツキの許容範囲を示す温度プロファイルの管理基準である試料温度プロファイル管理基準(wpS)を記憶する試料温度プロファイル管理基準記憶部(16)が設けられ、
前記観察試料加熱時の前記ダミー温度の加熱経過時間におけるバラツキの許容範囲を示す温度プロファイルの管理基準であるダミー温度プロファイル管理基準を記憶するダミー温度プロファイル管理基準記憶部が設けられ、
前記ダミー温度プロファイル管理基準は、前記ダミー温度にもとづく前記ヒーター電力量が、前記観察試料(BW)の温度を前記試料温度プロファイル管理基準(wpS)の許容範囲内にする前記放射熱を放射する電力量となることを実現する管理基準である、ことを特徴とする請求項1に記載の電子部品等の加熱観察装置。
【請求項3】
前記観察試料(BW)と同じ試料である温度プロファイル取得試料(TW)、前記試料載置テーブル(5)に載置した状態の前記温度プロファイル取得試料(TW)の、前記放射熱によって加熱された温度である試料温度を検出する試料温度検出手段が設けられ、
前記ダミー温度プロファイル管理基準の取得は、前記試料温度が前記試料温度プロファイル管理基準(wpS)の範囲内となるように前記放射熱が制御された状態における前記ダミー温度の温度プロファイルにもとづいて取得される、ことを特徴とする請求項2記載の電子部品等の加熱観察装置。
【請求項4】
前記ヒーターは、すくなくても、下部ヒーター(4a)、上部ヒーター(4b)とからなっていて、
前記下部ヒーター(4a)は、前記試料載置テーブル(5)の下方に設けられていて、上方に向けて放射された上向き放射熱によって、前記観察試料(BW)の下面と前記ダミー下面を加熱するものであり、
前記上部ヒーター(4b)は、前記試料載置テーブル(5)の上方に設けられていて、下方に向けて放射された下向き放射熱によって前記観察試料(BW)の上面と前記ダミー上面を加熱するものである、ことを特徴とする請求項1、2、3のいずれか1項に記載の電子部品等の加熱観察装置。
【請求項5】
前記試料載置テーブル(5)は光が透過する透明テーブルであり、
前記下部ヒーター(4a)は光が透過する透明導電膜であり、
前記試料載置テーブル(5)の下方には光が透過する下方透明板が設けられ、
前記下方透明板には前記透明導電膜の前記下部ヒーター(4a)が設けられ、
前記下方透明板の下方には、前記試料載置テーブル(5)に載置された前記観察試料(BW)の挙動を下方から観察する観察装置が設けられている、ことを特徴とする請求項4記載の電子部品等の加熱観察装置。
【請求項6】
前記ヒーター電力操作部は、少なくても、前記下部ヒーター(4a)に電力を供給する下部ヒーター電力操作部(13a)、前記上部ヒーター(4b)に電力を供給する上部ヒーター電力操作部(13b)とからなる、ことを特徴とする請求項4、5のいずれか1項に記載の電子部品等の加熱観察装置。
【請求項7】
前記観察試料(BW)と同じ試料である温度プロファイル取得試料(TW)、前記試料載置テーブル(5)に載置した状態の前記温度プロファイル取得試料(TW)の、前記放射熱によって加熱された下面温度である試料下面温度(wua)を検出する試料下面温度検出手段(8a)が設けられ、
前記試料載置テーブル(5)に載置した状態の前記温度プロファイル取得試料(TW)の、前記放射熱によって加熱された上面温度である試料上面温度(wub)を検出する試料上面温度検出手段(8b)が設けられ、
前記下部ヒーター(4a)に供給される電力量である下部ヒーター電力量(Eva)と前記上部ヒーター(4b)に供給される電力量である上部ヒーター電力量(Evb)の供給比率である電力比例係数(vT)を記憶しておく電力比例係数記憶部15が設けられ、
前記電力比例係数(vT)は、前記試料下面温度(wua)と前記上面温度(wub)の比率にもとづいて決められる、又は、前記試料下面温度(wua)を実現している前記下部ヒーター電力量(Eva)と前記試料上面温度(wub)を実現している前記上部ヒーター電力量(Evb)の比率にもとづいて決められるものであり、
前記観察試料加熱時の前記下部ヒーター電力量(Eva)と前記上部ヒーター電力量(Evb)は、前記温度調整部の前記電力比例係数(vT)にもとづいた前記下部ヒーター電力操作部(13a)への下部ヒーター電力量指示(pia)と、前記温度調整部の前記電力比例係数(vT)にもとづいた前記上部ヒーター電力操作部(13b)への上部ヒーター電力量指示(pib)によって行われるものである、ことを特徴とする請求項6に記載の電子部品等の加熱観察装置。
【請求項8】
前記ダミー温度プロファイル管理基準は、前記ダミー加熱部材の下面の温度であるダミー下面温度(dda)のプロファイル管理基準であるダミー下面温度プロファイル管理基準(ddSa)と、該ダミー加熱部材の上面の温度であるダミー上面温度(ddb)のプロファイル管理基準であるダミー上面温度プロファイル管理基準(ddSb)とからなっていて、
前記ダミー下面温度プロファイル管理基準(ddSa)の取得は、前記試料下面温度(wua)が前記試料温度プロファイル管理基準(wpS)の範囲内となるように前記上向き放射熱が制御された状態における、前記ダミー下面温度(dda)の温度プロファイルにもとづいて取得されるものであり、
前記ダミー上面温度プロファイル管理基準(ddSb)の取得は、前記試料上面温度(wub)が前記試料温度プロファイル管理基準(wpS)の範囲内となるように前記下向き放射熱が制御された状態における、前記ダミー上面温度(ddb)の温度プロファイルにもとづいて取得されるものである、ことを特徴とする請求項4、5、6のいずれか1項に記載の電子部品等の加熱観察装置。
【請求項9】
前記ダミー加熱部材が前記観察試料(BW)と同じ試料である、ことを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の電子部品等の加熱観察装置。
【請求項10】
前記ダミー加熱部材は、少なくても、下面が前記ダミー下面である下方ダミー加熱部材(6a)、該下方ダミー加熱部材(6a)の上部ないし上方に設けられた、上面が前記ダミー上面である上方ダミー加熱部材(6b)とからなる、ことを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の電子部品等の加熱観察装置。
【請求項11】
前記ダミー温度検出手段は、少なくても、前記ダミー下面の温度の温度であるダミー下面温度(dda)を検出するダミー下面温度検出手段(7a)、前記ダミー上面の温度の温度であるダミー上面温度(ddb)を検出するダミー上面温度検出手段(7b)とからなる、ことを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載の電子部品等の加熱観察装置。
【請求項12】
前記温度調整部は、少なくても、前記下部ヒーター電力操作部(13a)に指示を行う下部ヒーター温度調整部(14a)、前記上部ヒーター電力操作部(13b)に指示を行う上部ヒーター温度調整部(14b)とからなっていて、
前記ダミー温度プロファイル管理基準記は、少なくても、前記ダミー下面温度(dda)の加熱経過時間におけるバラツキの許容範囲を示す温度プロファイルの管理基準であるダミー下面温度プロファイル管理基準(ddSa)、前記ダミー上面温度(ddb)の加熱経過時間におけるバラツキの許容範囲を示す温度プロファイルの管理基準であるダミー上面温度プロファイル管理基準(ddSb)とからなっていて、
前記観察試料加熱時の前記上向き放射熱の制御は、前記ダミー下面温度(dda)にもとづいて行われるものであって、前記ダミー下面温度(dda)が前記ダミー下面温度プロファイル管理基準(ddSa)の範囲内となるように、前記下部ヒーター温度調整部(14a)が前記下部ヒーター電力量(Eva)を前記下部ヒーター電力操作部(13a)に指示して行う制御であり、
前記観察試料加熱時の前記下向き放射熱の制御は、前記ダミー上面温度(ddb)にもとづいて行われるものであって、前記ダミー上面温度(ddb)が前記ダミー上面温度プロファイル管理基準(ddSb)の範囲内となるように、前記上部ヒーター温度調整部(14b)が前記上部ヒーター電力量(Evb)を前記上部ヒーター電力操作部(13b)に指示して行う制御である、ことを特徴とする請求項11記載の電子部品等の加熱観察装置。
【請求項13】
前記下方ダミー加熱部材(6a)及び前記上方ダミー加熱部材(6b)を設けない構成とし、
前記ダミー下面温度検出手段(7a)及び前記ダミー上面温度検出手段(7b)を設けない構成とし、
前記ダミー下面温度プロファイル管理基準取得部(18a)、前記ダミー下面温度プロファイル管理基準記憶部(12a)、前記ダミー上面温度プロファイル管理基準取得部(18b)及び前記ダミー下面温度プロファイル管理基準記憶部(12b)を設けない構成とし、
前記試料温度プロファイル管理基準(wpS)の許容範囲に温度を制御された前記温度プロファイル取得試料(TW)の、加熱時の前記下部ヒーター電力量指示(pia)の指示する前記下部ヒーター電力量(Eva)の電力プロファイルにもとづいて、前記観察試料(BW)の加熱時の前記下部ヒーター電力量(Eva)を示すプロファイルである下部ヒーター電力プロファイル管理基準(EvSa)を取得する下部ヒーター電力プロファイル管理基準取得部(36a)を設け、かつ、前記下部ヒーター電力プロファイル管理基準(EvSa)を記憶する下部ヒーター電力プロファイル管理基準記憶部(37a)を設けた構成とし、
前記試料温度プロファイル管理基準(wpS)の許容範囲に温度を制御された前記温度プロファイル取得試料(TW)の、加熱時の前記上部ヒーター電力量指示(pib)の指示する前記上部ヒーター電力量(Evb)の電力プロファイルにもとづいて、前記観察試料(BW)の加熱時の前記上部ヒーター電力量(Evb)を示すプロファイルである上部ヒーター電力プロファイル管理基準(EvSb)を取得する上部ヒーター電力プロファイル管理基準取得部(36b)を設け、かつ、前記上部ヒーター電力プロファイル管理基準(EvSb)を記憶する下部ヒーター電力プロファイル管理基準記憶部(37b)を設けた構成とし、
前記観察試料(BW)の加熱制御は、前記下部ヒーター温度調整部(14a)が前記下部ヒーター電力操作部(13a)に対して前記下部ヒーター電力プロファイル管理基準(EvSa)が示す前記下部ヒーター電力量(Eva)の指示と、前記上部ヒーター温度調整部(14b)が前記上部ヒーター電力操作部(13b)に対して前記上部ヒーター電力プロファイル管理基準(EvSb)が示す前記上部ヒーター電力量(Evb)の指示とによって行われる制御である、ことを特徴とする請求項8記載の電子部品等の加熱観察装置。
【請求項14】
前記試料載置テーブル(5)の上方には上方壁が設けられ、
前記試料載置テーブル(5)と前記上方壁との間は試料載置空間となっていて、
前記前記試料載置テーブル(5)の外側空間と前記上方壁の外側の空間は試料無し空間となっていて、
前記試料載置空間に供給される冷却風である試料載置空間冷却風を生成する試料載置空間冷却風供給部が設けられ、
前記試料無し空間のみに供給される冷却風である試料無し空間冷却風を生成する試料無し空間冷却風供給部が設けられた、ことを特徴とする請求項1~13のいずれか1項に記載の電子部品等の加熱観察装置。
【請求項15】
前記試料載置テーブル(5)の下方には下方壁が設けられ、
前記試料載置テーブル(5)の上方には上方壁が設けられ、
前記下方壁と前記上方壁との間は、前記試料載置テーブル(5)が配置された試料載置空間となっていて、
前記下方壁の外側の空間と前記上方壁の外側の空間は試料無し空間となっていて、
前記試料載置空間に供給される冷却風である試料載置空間冷却風を生成する試料載置空間冷却風供給部が設けられ、
前記試料無し空間のみに供給される冷却風である試料無し空間冷却風を生成する試料無し空間冷却風供給部が設けられた、ことを特徴とする請求項1~13のいずれか1項に記載の電子部品等の加熱観察装置。
【請求項16】
前記試料載置空間冷却風を前記試料無し空間冷却風よりも低温度の冷却風にする冷却手段を設けた、ことを特徴とする請求項14、15のいずれか1項に記載の電子部品等の加熱観察装置。
【請求項17】
前記試料載置空間冷却風供給部が設けられず、前記試料載置空間に冷却風が供給されない、ことを特徴とする請求項14、15、16のいずれか1項に記載の電子部品等の加熱観察装置。
【請求項18】
前記試料載置テーブル(5)に載置された前記観察試料(BW)の表面に向け下方から照射光を照射し、その反射光を受光部で受光し、その受光情報にもとづいて前記観察試料(BW)の各座標位置(x、y)の上下距離の変化を測定する観察部(11)を、前記試料載置テーブル(5)の下方に設けた、ことを特徴とする請求項1~17のいずれか1項に記載の電子部品等の加熱観察装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱源から放射された放射熱(輻射熱、熱放射ともいわれる。)によって加熱されて行く電子部品の挙動を観察(外観挙動観察、外観挙動測定、内部挙動観測等を含む)する電子部品加熱観察装置に関する。
【背景技術】
【0002】
<特許文献1の発明>
特許文献1に、
透明ヒーターである透明導電膜3を備えた計測対象物W(電子部品=観察試料)を上面に載置する上部透明基板2(試料載置テーブル)と、
この上部透明基板2の上方に上部空間7aを空けて設けられた透明ヒーターである透明導電膜3aと、
計測対象物Wの上面に取り付けられた第6の温度センサ12fと、
透明導電膜3(下方)の上面に設けられた第2の温度センサ12b(下方)と、
透明導電膜3a(上方)の下面に設けられた第8の温度センサ12g(上方)と、
透明導電膜3(下方)に電力を供給する電力供給部10(下方)と、
透明導電膜3a(上方)に電力を供給する電力供給部10a(上方)と、
制御部14と、
上部透明基板2(下方)の下方に設けられた、計測対象物Wの形状変化である挙動を下方から計測する光検出部(観察部)と、を備え、
制御部14は、計測対象物Wの設定温度となるように、透明導電膜3への電力供給部10からの電力量を制御し、透明導電膜3aへの電力供給部10aからの電力量を制御するという技術が開示されている。
【0003】
よって、引用文献1の発明は、透明導電膜3(下方)の伝導熱(直接載置しているため)と透明導電膜3a(上方)の放射熱(下向き放射熱)のみによって電子部品を加熱するものである、すなわち非対流方式である。
【0004】
<特許文献2の発明>
特許文献2に、透明ヒーターである透明導電膜65を備えた透明下部板66と、この透明下部板66の上方に空間を空けて設けられた電子部品を載置する透明テーブル11(試料載置テーブル)と、透明下部板66の下方に設けられた電子部品の挙動を下方から計測する光学的計測手段69(観察部)と、を備えた技術が開示されている。
特許文献1の発明と異なる点は、透明下部板66の上方に空間を空けて設けられた電子部品を載置する透明テーブル11(試料載置テーブル)を設けた点であり、加熱は熱風によって行い、冷却は冷却風によって行う、すなわち対流によって行うことを基本としているものである、という点である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-72555号公報(実施例1、実施例2、
図1、
図5)
【特許文献2】特開2021-99349号公報(
図11)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1の従来技術は以下に述べるような欠点を有するものであった。
(1) 電子部品の観察の度に、電子部品の上面に温度センサ12fを取り付けるという煩雑な作業・操作が必要になる、という欠点を有するものであった。
【0007】
(2) ア)電子部品の上面の温度は、該電子部品の上方に位置する透明導電膜3aからの放射熱が当たって加熱された温度であって、電子部品の下方に位置する透明導電膜3からの放射熱は電子部品の上面には当たらないものであり、よって電子部品の下方に位置する透明導電膜3から放射熱は電子部品の上面は加熱しないものである。
また、電子部品の下面の温度は、該電子部品の下方に位置する透明導電膜3からの伝導熱が伝わり加熱された温度であって、電子部品の上方に位置する透明導電膜3aからの放射熱は電子部品の下面には当たらないものであり、よって電子部品の上方に位置する透明導電膜3aからの放射熱は電子部品の下面は加熱しないものである。
イ)そうすると、引用文献1の発明の技術は、上方に位置する透明導電膜3aの放射熱で加熱され昇温する電子部品の上面の温度(以下「電子部品上面温度」という。)を温度センサ12fで検出・監視しながら、[a]電子部品上面温度が設定温度プロファイルの範囲内となるように、透明導電膜3aの温度を第8の温度センサ12gで検出・監視しながら透明導電膜3aの電力量の制御を行い、かつ、[b]電子部品上面温度が設定温度プロファイルの範囲内となるように、透明導電膜3の温度を第2の温度センサ12bで検出・監視しながら透明導電膜3の電力量の制御を行う、というものである。
よって、透明導電膜3aと透明導電膜3の温度は電子部品上面温度(温度センサ12fの検出温度)によって決められる構成であるから、透明導電膜3aと透明導電膜3が同じヒーター(発熱量が同じ)である場合は、両者のヒーター温度は同じになるように制御されることになることが想定される。
ウ)この加熱形態は、透明導電膜3aの表面温度と透明導電膜3の表面温度が同じ温度(放射エネルギーが同じ)ということであるから、透明導電膜3aと電子部品の上面の距離Gと透明導電膜3と電子部品の下面の距離Kとの距離が同じ距離(G=K)である場合のみにおいて実現されるものである。
そうすると、引用文献1の技術は、距離Gと距離Kが異なる場合には、電子部品の上面の温度と下面の温度が異なる加熱温度になってしまう、すなわち、電子部品の上面の温度及び下面の温度を電子部品の許容される温度範囲を示す温度プロファイル管理基準の範囲内に入るように、透明導電膜3aと透明導電膜3の電力量制御を行うことが極めて難しい、という欠点を有するものである。
そもそも特許文献1の従来技術は、電子部品の下面は主に伝導熱、上面は放射熱で加熱されており、電子部品に対して熱の伝わり方が上下異なるため、電子部品を上下均一加熱することは困難な形態となっていた。
エ)ところで、電子部品はその種類毎にその上下厚みは異なるものが多いのであって、それは電子部品の種類毎に距離Gと距離Kが異なることになることを意味している。したがって、引用文献1の発明においては、距離Gと距離Kが上下厚みによって異なる距離となる電子部品は、その上面の温度と下面の温度が異なるものとなり、よって、かかる上面の温度及び下面の温度を設定温度プロファイルの範囲内に入るように、透明導電膜3aと透明導電膜3の電力量制御(通電制御)を行うことが極めて難しい、という欠点を有するものである。
オ)また、例えば5mm以下方形の小さい形態の電子部品、電子部品本体(パッケージ:外周器)の底面からのハンダ付けの端子の下方への突出が短いために載置テーブル面と電子部品本体底面との間の隙間が小さい形態の電子部品、端子が電子部品本体の底部に設けた形態の電子部品(例えば、PGA (Pin Grid Array)、BGA (Ball grid array))等は、温度センサを電子部品本体の上面及び下面あるいはいずれか一方の面に取り付けた状態の電子部品を透明テーブル上面に載置した状態で、温度変化による電子部品の挙動(主に、上下挙動)を透明テーブル上面位置ないし該上面位置に近傍する位置に設定した仮想的基準面(透明テーブル上面に塗布した反射部材の表面の位置から設定)を基準面として、該基準面からの挙動を測定することは、温度センサやその配線当の影響を強く受けるために正確な挙動測定ができ難いないしできない、という問題を有するものである。
【0008】
<特許文献1の発明への特許文献2の発明の適用>
上記した特許文献1の発明の欠点は、特許文献1の発明への特許文献2の発明の「透明下部板66(特許文献1の「上部透明基板2」に相当)の上方に空間を空けて設けられた電子部品を載置する透明テーブル11」という構成を適用した形態においても、解消することはなく同様の欠点を有するものである。
【0009】
本発明は以上のような従来技術の欠点に鑑み、電子部品の上面と下面を放射熱で加熱するとともに該電子部品の下方に設けた観察手段(測定手段を含む)によって該電子部品の挙動(「形状変化」を含む)を観察(測定を含む)する電子部品加熱観察装置において、電子部品の加熱観察時においては電子部品に温度検出センサを取り付けることなくかつ電子部品の温度を検出することなく、電子部品の温度(加熱温度)が許容される温度範囲を示す温度プロファイル管理基準の範囲内に入るように前記放射熱(ヒーターへの電力量の制御による)を制御する電子部品等の加熱観察装置の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は次に述べるような構成している。
<<発明1>>
観察する電子部品等の試料である観察試料(BW)を上面に載置する試料載置テーブル(5)、前記試料載置テーブル(5)の上面に載置された前記観察試料(BW)を放射熱によって加熱するヒーター、前記ヒーターに供給する電力量であるヒーター電力量を操作するヒーター電力操作部、前記ヒーター電力量を前記ヒーター電力操作部に指示する温度調整部と、を備えた、前記観察試料(BW)の前記放射熱による加熱時の挙動を観察する電子部品等の加熱観察装置であって、
前記観察試料(BW)の加熱時である観察試料加熱時に前記放射熱によって加熱される、下面がダミー下面であり上面がダミー上面であるダミー加熱部材が設けられ、
前記ダミー加熱部材の温度であるダミー温度を検出するダミー温度検出手段が取付けられ、
前記観察試料加熱時の前記放射熱の制御は、前記ダミー温度にもとづく前記ヒーター電力量の制御によって行われるものであり、
前記観察試料加熱時は、前記観察試料(BW)の温度の検出は行わない形態であり、かつ、前記観察試料(BW)に熱電対等の温度検出手段を取付けない形態である、ことを特徴とする電子部品等の加熱観察装置である。
<<発明2>>
前記観察試料(BW)の加熱時の温度である観察試料温度の加熱経過時間におけるバラツキの許容範囲を示す温度プロファイルの管理基準である試料温度プロファイル管理基準(wpS)を記憶する試料温度プロファイル管理基準記憶部(16)が設けられ、
前記観察試料加熱時の前記ダミー温度の加熱経過時間におけるバラツキの許容範囲を示す温度プロファイルの管理基準であるダミー温度プロファイル管理基準を記憶するダミー温度プロファイル管理基準記憶部が設けられ、
前記ダミー温度プロファイル管理基準は、前記ダミー温度にもとづく前記ヒーター電力量が、前記観察試料(BW)の温度を前記試料温度プロファイル管理基準(wpS)の許容範囲内にする前記放射熱を放射する電力量となることを実現する管理基準である、ことを特徴とする前記発明1に記載の電子部品等の加熱観察装置である。
<<発明3>>
前記観察試料(BW)と同じ試料である温度プロファイル取得試料(TW)、前記試料載置テーブル(5)に載置した状態の前記温度プロファイル取得試料(TW)の、前記放射熱によって加熱された温度である試料温度を検出する試料温度検出手段が設けられ、
前記ダミー温度プロファイル管理基準の取得は、前記試料温度が前記試料温度プロファイル管理基準(wpS)の範囲内となるように前記放射熱が制御された状態における前記ダミー温度の温度プロファイルにもとづいて取得される、ことを特徴とする前記発明2記載の電子部品等の加熱観察装置である。
<<発明4>>
前記ヒーターは、すくなくても、下部ヒーター(4a)、上部ヒーター(4b)とからなっていて、
前記下部ヒーター(4a)は、前記試料載置テーブル(5)の下方に設けられていて、上方に向けて放射された上向き放射熱によって、前記観察試料(BW)の下面と前記ダミー下面を加熱するものであり、
前記上部ヒーター(4b)は、前記試料載置テーブル(5)の上方に設けられていて、下方に向けて放射された下向き放射熱によって前記観察試料(BW)の上面と前記ダミー上面を加熱するものである、ことを特徴とする前記発明1、2、3のいずれかの発明に記載の電子部品等の加熱観察装置である。
<<発明5>>
前記試料載置テーブル(5)は光が透過する透明テーブルであり、
前記下部ヒーター(4a)は光が透過する透明導電膜であり、
前記試料載置テーブル(5)の下方には光が透過する下方透明板が設けられ、
前記下方透明板には前記透明導電膜の前記下部ヒーター(4a)が設けられ、
前記下方透明板の下方には、前記試料載置テーブル(5)に載置された前記観察試料(BW)の挙動を下方から観察する観察装置が設けられている、ことを特徴とする前記発明4記載の電子部品等の加熱観察装置である。
<<発明6>>
前記ヒーター電力操作部は、少なくても、前記下部ヒーター(4a)に電力を供給する下部ヒーター電力操作部(13a)、前記上部ヒーター(4b)に電力を供給する上部ヒーター電力操作部(13b)とからなる、ことを特徴とする前記発明4、5のいずれかの発明に記載の電子部品等の加熱観察装置である。
<<発明7>>
前記観察試料(BW)と同じ試料である温度プロファイル取得試料(TW)、前記試料載置テーブル(5)に載置した状態の前記温度プロファイル取得試料(TW)の、前記放射熱によって加熱された下面温度である試料下面温度(wua)を検出する試料下面温度検出手段(8a)が設けられ、
前記試料載置テーブル(5)に載置した状態の前記温度プロファイル取得試料(TW)の、前記放射熱によって加熱された上面温度である試料上面温度(wub)を検出する試料上面温度検出手段(8b)が設けられ、
前記下部ヒーター(4a)に供給される電力量である下部ヒーター電力量(Eva)と前記上部ヒーター(4b)に供給される電力量である上部ヒーター電力量(Evb)の供給比率である電力比例係数(vT)を記憶しておく電力比例係数記憶部15が設けられ、
前記電力比例係数(vT)は、前記試料下面温度(wua)と前記上面温度(wub)の比率にもとづいて決められる、又は、前記試料下面温度(wua)を実現している前記下部ヒーター電力量(Eva)と前記試料上面温度(wub)を実現している前記上部ヒーター電力量(Evb)の比率にもとづいて決められるものであり、
前記観察試料加熱時の前記下部ヒーター電力量(Eva)と前記上部ヒーター電力量(Evb)は、前記温度調整部の前記電力比例係数(vT)にもとづいた前記下部ヒーター電力操作部(13a)への下部ヒーター電力量指示(pia)と、前記温度調整部の前記電力比例係数(vT)にもとづいた前記上部ヒーター電力操作部(13b)への上部ヒーター電力量指示(pib)によって行われるものである、ことを特徴とする前記発明6に記載の電子部品等の加熱観察装置である。
<<発明8>>
前記ダミー温度プロファイル管理基準は、前記ダミー加熱部材の下面の温度であるダミー下面温度(dda)のプロファイル管理基準であるダミー下面温度プロファイル管理基準(ddSa)と、該ダミー加熱部材の上面の温度であるダミー上面温度(ddb)のプロファイル管理基準であるダミー上面温度プロファイル管理基準(ddSb)とからなっていて、
前記ダミー下面温度プロファイル管理基準(ddSa)の取得は、前記試料下面温度(wua)が前記試料温度プロファイル管理基準(wpS)の範囲内となるように前記上向き放射熱が制御された状態における、前記ダミー下面温度(dda)の温度プロファイルにもとづいて取得されるものであり、
前記ダミー上面温度プロファイル管理基準(ddSb)の取得は、前記試料上面温度(wub)が前記試料温度プロファイル管理基準(wpS)の範囲内となるように前記下向き放射熱が制御された状態における、前記ダミー上面温度(ddb)の温度プロファイルにもとづいて取得されるものである、ことを特徴とする前記発明4、5、6のいずれかの発明に記載の電子部品等の加熱観察装置である。
<<発明9>>
前記ダミー加熱部材が前記観察試料(BW)と同じ試料である、ことを特徴とする前記発明1~8のいずれかの発明に記載の電子部品等の加熱観察装置である。
<<発明10>>
前記ダミー加熱部材は、少なくても、下面が前記ダミー下面である下方ダミー加熱部材(6a)、該下方ダミー加熱部材(6a)の上部ないし上方に設けられた、上面が前記ダミー上面である上方ダミー加熱部材(6b)とからなる、ことを特徴とする前記発明1~8のいずれかの発明に記載の電子部品等の加熱観察装置である。
<<請求11>>
前記ダミー温度検出手段は、少なくても、前記ダミー下面の温度の温度であるダミー下面温度(dda)を検出するダミー下面温度検出手段(7a)、前記ダミー上面の温度の温度であるダミー上面温度(ddb)を検出するダミー上面温度検出手段(7b)とからなる、ことを特徴とする前記発明1~10のいずれかの発明に記載の電子部品等の加熱観察装置である。
<<発明12>>
前記温度調整部は、少なくても、前記下部ヒーター電力操作部(13a)に指示を行う下部ヒーター温度調整部(14a)、前記上部ヒーター電力操作部(13b)に指示を行う上部ヒーター温度調整部(14b)とからなっていて、
前記ダミー温度プロファイル管理基準記は、少なくても、前記ダミー下面温度(dda)の加熱経過時間におけるバラツキの許容範囲を示す温度プロファイルの管理基準であるダミー下面温度プロファイル管理基準(ddSa)、前記ダミー上面温度(ddb)の加熱経過時間におけるバラツキの許容範囲を示す温度プロファイルの管理基準であるダミー上面温度プロファイル管理基準(ddSb)とからなっていて、
前記観察試料加熱時の前記上向き放射熱の制御は、前記ダミー下面温度(dda)にもとづいて行われるものであって、前記ダミー下面温度(dda)が前記ダミー下面温度プロファイル管理基準(ddSa)の範囲内となるように、前記下部ヒーター温度調整部(14a)が前記下部ヒーター電力量(Eva)を前記下部ヒーター電力操作部(13a)に指示して行う制御であり、
前記観察試料加熱時の前記下向き放射熱の制御は、前記ダミー上面温度(ddb)にもとづいて行われるものであって、前記ダミー上面温度(ddb)が前記ダミー上面温度プロファイル管理基準(ddSb)の範囲内となるように、前記上部ヒーター温度調整部(14b)が前記上部ヒーター電力量(Evb)を前記上部ヒーター電力操作部(13b)に指示して行う制御である、ことを特徴とする前記発明11記載の電子部品等の加熱観察装置である。
<<発明13>>
前記下方ダミー加熱部材(6a)及び前記上方ダミー加熱部材(6b)を設けない構成とし、
前記ダミー下面温度検出手段(7a)及び前記ダミー上面温度検出手段(7b)を設けない構成とし、
前記ダミー下面温度プロファイル管理基準取得部(18a)、前記ダミー下面温度プロファイル管理基準記憶部(12a)、前記ダミー上面温度プロファイル管理基準取得部(18b)及び前記ダミー下面温度プロファイル管理基準記憶部(12b)を設けない構成とし、
前記試料温度プロファイル管理基準(wpS)の許容範囲に温度を制御された前記温度プロファイル取得試料(TW)の、加熱時の前記下部ヒーター電力量指示(pia)の指示する前記下部ヒーター電力量(Eva)の電力プロファイルにもとづいて、前記観察試料(BW)の加熱時の前記下部ヒーター電力量(Eva)を示すプロファイルである下部ヒーター電力プロファイル管理基準(EvSa)を取得する下部ヒーター電力プロファイル管理基準取得部(36a)を設け、かつ、前記下部ヒーター電力プロファイル管理基準(EvSa)を記憶する下部ヒーター電力プロファイル管理基準記憶部(37a)を設けた構成とし、
前記試料温度プロファイル管理基準(wpS)の許容範囲に温度を制御された前記温度プロファイル取得試料(TW)の、加熱時の前記上部ヒーター電力量指示(pib)の指示する前記上部ヒーター電力量(Evb)の電力プロファイルにもとづいて、前記観察試料(BW)の加熱時の前記上部ヒーター電力量(Evb)を示すプロファイルである上部ヒーター電力プロファイル管理基準(EvSb)を取得する上部ヒーター電力プロファイル管理基準取得部(36b)を設け、かつ、前記上部ヒーター電力プロファイル管理基準(EvSb)を記憶する下部ヒーター電力プロファイル管理基準記憶部(37b)を設けた構成とし、
前記観察試料(BW)の加熱制御は、前記下部ヒーター温度調整部(14a)が前記下部ヒーター電力操作部(13a)に対して前記下部ヒーター電力プロファイル管理基準(EvSa)が示す前記下部ヒーター電力量(Eva)の指示と、前記上部ヒーター温度調整部(14b)が前記上部ヒーター電力操作部(13b)に対して前記上部ヒーター電力プロファイル管理基準(EvSb)が示す前記上部ヒーター電力量(Evb)の指示とによって行われる制御である、ことを特徴とする前記発明8記載の電子部品等の加熱観察装置である。
<<発明14>>
前記試料載置テーブル(5)の上方には上方壁が設けられ、
前記試料載置テーブル(5)と前記上方壁との間は試料載置空間となっていて、
前記前記試料載置テーブル(5)の外側空間と前記上方壁の外側の空間は試料無し空間となっていて、
前記試料載置空間に供給される冷却風である試料載置空間冷却風を生成する試料載置空間冷却風供給部が設けられ、
前記試料無し空間のみに供給される冷却風である試料無し空間冷却風を生成する試料無し空間冷却風供給部が設けられた、ことを特徴とする前記発明1~13のいずれかの発明に記載の電子部品等の加熱観察装置である。
<<発明15>>
前記試料載置テーブル(5)の下方には下方壁が設けられ、
前記試料載置テーブル(5)の上方には上方壁が設けられ、
前記下方壁と前記上方壁との間は、前記試料載置テーブル(5)が配置された試料載置空間となっていて、
前記下方壁の外側の空間と前記上方壁の外側の空間は試料無し空間となっていて、
前記試料載置空間に供給される冷却風である試料載置空間冷却風を生成する試料載置空間冷却風供給部が設けられ、
前記試料無し空間のみに供給される冷却風である試料無し空間冷却風を生成する試料無し空間冷却風供給部が設けられた、ことを特徴とする前記発明1~13のいずれかの発明に記載の電子部品等の加熱観察装置である。
<<発明16>>
前記試料載置空間冷却風を前記試料無し空間冷却風よりも低温度の冷却風にする冷却手段を設けた、ことを特徴とする前記発明14、15のいずれかの発明に記載の電子部品等の加熱観察装置である。
<<発明17>>
前記試料載置空間冷却風供給部が設けられず、前記試料載置空間に冷却風が供給されない、ことを特徴とする前記発明14、15、16のいずれかの発明に記載の電子部品等の加熱観察装置である。
<<発明18>>
前記試料載置テーブル(5)に載置された前記観察試料(BW)の表面に向け下方から照射光を照射し、その反射光を受光部で受光し、その受光情報にもとづいて前記観察試料(BW)の各座標位置(x、y)の上下距離の変化を測定する観察部(11)を、前記試料載置テーブル(5)の下方に設けた、ことを特徴とする前記発明1~17のいずれかの発明に記載の電子部品等の加熱観察装置。
【発明の効果】
【0011】
<<発明1の効果>>
観察試料加熱時の放射熱の制御は、ダミー温度にもとづく前記ヒーター電力量の制御によって行われるものであるとともに、観察試料加熱時は、観察試料(BW)の温度の検出は行わない形態であり、かつ、観察試料(BW)に熱電対等の温度検出手段を取付けない形態であるので、観察試料加熱時は観察試料(BW)に熱電対等の温度検出手段を取付けない形態で放射熱による電子部品の加熱を適切に行うことを実現するという作用効果を奏し、よって、特に小さな電子部品でも正確な加熱による挙動を観察することを実現する。
<<発明2の効果>>
前記発明1と同様な効果を奏するとともに、以下のような効果を奏する。
ダミー温度プロファイル管理基準が観察試料(BW)の温度を試料温度プロファイル管理基準(wpS)の許容範囲内にするものであるので、前記ダミー温度にもとづく前記ヒーター電力量が、観察試料(BW)の温度が試料温度プロファイル管理基準(wpS)の許容範囲内とする放射熱を放射する電力量となることを実現する、という作用効果を奏する。
<<発明3の効果>>
前記発明2と同様な効果を奏するとともに、以下のような効果を奏する。
ダミー温度プロファイル管理基準は、温度プロファイル取得試料(TW)の試料温度が試料温度プロファイル管理基準(wpS)の許容範囲内の温度であるときのダミー温度の温度プロファイルにもとづいて取得・決定されているものであるので、観察試料(BW)の加熱観察時においての該観察試料(BW)の温度は試料温度プロファイル管理基準(wpS)の範囲内のものにできる、という作用効果を奏する。
<<発明4の効果>>
前記発明1、2、3のいずれかと同様な効果を奏するとともに、観察試料(BW)の下面及び上面とダミー加熱部材の下面及び上面の加熱温度をそれぞれ制御可能にできる、という効果を奏する。すなわち、観察試料(BW)から下部ヒーター(4a)までの距離と、観察試料(BW)から上部ヒーター(4b)までの距離とが異なった距離であっても、観察試料(BW)の下面温度と上面温度を試料温度プロファイル管理基準(wpS)の範囲内となるように下部ヒーター(4a)の放射熱と上部ヒーター(4b)の放射熱を制御できる。また、下部ヒーター(4a)と上部ヒーター(4b)のヒーター種類を異なる場合(例えば、下部ヒーターが透明導電膜で上部ヒーターがハロゲンヒーター)でも、観察試料(BW)の下面温度と上面温度を試料温度プロファイル管理基準(wpS)の範囲内となるように下部ヒーター(4a)の放射熱と上部ヒーター(4b)の放射熱を制御できる。
<<発明5の効果>>
前記発明4と同様な効果を奏するとともに、下方透明板の下方からレーザー光線などの光を照射して、試料載置テーブル(5)に載置された観察試料(BW)の挙動を観察できるとう効果を奏する。
<<発明6の効果>>
前記発明4、5のいずれかと同様な効果を奏するとともに、下部ヒーター(4a)専用に制御された電力である下部ヒーター電力を該下部ヒーター(4a)供給し、上部ヒーター(4b)専用に制御された電力である上部ヒーター電力を該上部ヒーター(4b)に供給することができるので、より精度の高い観察試料(BW)の下面と上面の加熱を実現する、という効果を奏する。
<<発明7の効果>>
前記発明6と同様な効果を奏するとともに、観察試料加熱時の下部ヒーター電力量(Eva)と上部ヒーター電力量(Evb)は、試料下面温度(wua)と上面温度(wub)の比率にもとづいて決められる、又は、試料下面温度(wua)を実現している下部ヒーター電力量(Eva)と試料上面温度(wub)を実現している上部ヒーター電力量(Evb)の比率にもとづいて決められた電力比例係数(vT)にもとづいて決められるものであるので、より精度の高い観察試料(BW)の下面と上面の加熱を実現する、という効果を奏する。
<<発明8の効果>>
前記発明4、5、6のいずれかと同様な効果を奏するとともに、観察試料加熱時の下部ヒーター電力量(Eva)はダミー下面温度プロファイル管理基準(ddSa)の範囲内のダミー下面温度(dda)を実現している電力量とされ、上部ヒーター電力量(Evb)は、ダミー上面温度プロファイル管理基準(ddSb)の範囲内のダミー上面温度(ddb)を実現している電力量とされるので、より精度の高い観察試料(BW)の下面と上面の加熱を実現する、という効果を奏する。
<<発明9の効果>>
前記発明1~7又は8と同様な効果を奏するとともに、ダミー加熱部材が観察試料(BW)と同じ試料であるので、ダミー加熱部材と観察試料(BW)の異なる素材という条件バラツキが無いので、より精度の高い観察試料(BW)の加熱を実現する、という効果を奏する。
<<発明10の効果>>
前記発明1~8のいずれかと同様な効果を奏するとともに、下向き放射熱は上方ダミー加熱部材(6b)によってそれより下方への影響が止められので、下方ダミー加熱部材(6a)及びその下面は下向き放射熱の影響を受け難い形態を実現し、他方、上向き放射熱は下方ダミー加熱部材(6a)によってそれより上方への影響が止められので、上方ダミー加熱部材(6b)及びその上面は上向き放射熱の影響を受け難い形態を実現するので、下方ダミー加熱部材(6a)の下面と上方ダミー加熱部材(6b)の上面の加熱を精度の高いものにできる、という効果を奏する。
<<請求11の効果>>
前記発明1~10のいずれかの発明と同様な効果を奏するとともに、ダミー下面温度(dda)とダミー上面温度(ddb)をそれぞれ検出し、それぞれの検出温度にもとづいて、ヒーターの電力制御を行うことを可能とするので、より精度の高い観察試料(BW)の加熱を実現する、という効果を奏する。
<<発明12の効果>>
前記発明11と同様な効果を奏するとともに、
観察試料加熱時の上向き放射熱の制御は、ダミー下面温度(dda)にもとづいて行われるものであって、ダミー下面温度(dda)がダミー下面温度プロファイル管理基準(ddSa)の範囲内となるように、下部ヒーター温度調整部(14a)が下部ヒーター電力量(Eva)を下部ヒーター電力操作部(13a)に指示して行う制御であり、
観察試料加熱時の下向き放射熱の制御は、ダミー上面温度(ddb)にもとづいて行われるものであって、ダミー上面温度(ddb)がダミー上面温度プロファイル管理基準(ddSb)の範囲内となるように、上部ヒーター温度調整部(14b)が上部ヒーター電力量(Evb)を上部ヒーター電力操作部(13b)に指示して行う制御である、ことを特徴とする発明11記載の電子部品等の加熱観察装置であるので、より精度の高い観察試料(BW)の加熱を実現する、という効果を奏する。
<<発明13の効果>>
前記発明8の構成において、
下方ダミー加熱部材(6a)、上方ダミー加熱部材(6b)、ダミー下面温度検出手段(7a)及びダミー上面温度検出手段(7b)を設けない構成とし、
他方、試料温度プロファイル管理基準(wpS)の許容範囲に温度を制御された温度プロファイル取得試料(TW)の、加熱時の上部ヒーター電力量指示(pib)の指示する上部ヒーター電力量(Evb)の電力プロファイルにもとづいて、観察試料(BW)の加熱時の上部ヒーター電力量(Evb)を示すプロファイルである上部ヒーター電力プロファイル管理基準(EvSb)を取得する上部ヒーター電力プロファイル管理基準取得部(36b)を設け、かつ、上部ヒーター電力プロファイル管理基準(EvSb)を記憶する下部ヒーター電力プロファイル管理基準記憶部(37b)を設けた構成としたので、
下方ダミー加熱部材(6a)、上方ダミー加熱部材(6b)、ダミー下面温度検出手段(7a)及びダミー上面温度検出手段(7b)を設けない構成で、下部ヒーター電力プロファイル管理基準(EvSa)が示す下部ヒーター電力量(Eva)と、上部ヒーター電力プロファイル管理基準(EvSb)が示す上部ヒーター電力量(Evb)とによって、観察試料(BW)の加熱制御を実現すると、という効果を奏する。
観察試料(BW)から下部ヒーター(4a)までの距離と、観察試料(BW)から上部ヒーター(4b)までの距離とが異なった距離であっても、観察試料(BW)の下面温度と上面温度を試料温度プロファイル管理基準(wpS)の範囲内となるように、温度検出手段による温度検出を行うことなく下部ヒーター(4a)の放射熱と上部ヒーター(4b)の放射熱を制御できる。
また、下部ヒーター(4a)と上部ヒーター(4b)のヒーター種類を異なる場合(例えば、下部ヒーターが透明導電膜で上部ヒーターがハロゲンヒーター)でも、観察試料(BW)の下面温度と上面温度を試料温度プロファイル管理基準(wpS)の範囲内となるように、温度検出手段による温度検出を行うことなく下部ヒーター(4a)の放射熱と上部ヒーター(4b)の放射熱を制御できる。
<<発明14の効果>>
前記発明1~13のいずれかと同様な効果を奏するとともに、試料載置空間に供給される試料載置空間冷却風を生成する試料載置空間冷却風供給部を、設け、該試料載置空間冷の外側の空間である試料無し空間のみに供給される試料無し空間冷却風を生成する試料無し空間冷却風供給部を設けた構成であるので、試料載置空間冷却風を試料載置テーブル(5)に載置された観察試料BWが動かない風量とすることが可能とでき、他方、観察試料BWに影響を及ぼさない試料載置空間冷却風を風量大として、試料載置空間の外側の壁を速やかに冷却することを可能にする、という効果を奏する。
<<発明15の効果>>
前記発明14の効果と同様な効果を奏する。
<<発明16の効果>>
前記発明14、15のいずれかと同様な効果を奏するとともに、冷却手段により生成した低温の冷却により、小さい電子部品、微細な電子部品、薄く軽い電子部品など低速風量でも動くようなものを、動かさない極低速風量で低温に冷却された試料載置空間冷却風によって、試料載置空間を形成する壁の冷却を速やかにすすめることを可能にする、という効果を奏する。
<<発明17の効果>>
前記発明14、15、16のいずれかの構成おいて、試料載置空間冷却風供給部が設けられず、かつ、試料載置空間に冷却風が供給されない構成としたので、試料載置空間に在る観察試料(BW)が動く心配が全くなく、他方、試料載置空間を形成する壁の冷却は、大風量の試料無し空間冷却風によって外側から冷却することができる、という効果を奏する。
<<発明18の効果>>
前記発明1~17のいずれかの発明と同様な効果を奏するとともに、観察試料(BW)の表面(下面)の各座標位置(x、y)の上下距離の変化を測定(観察)したデータ(距離データ)を取得できる、という効果を奏する。かかる距離データにもとづく三次元画像の生成とそれをモニターに表示することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施例1の観察試料BWを加熱観察する際の制御システムを表すブロック図及び加熱炉の模式図。
【
図2】本発明の実施例1の温度制御の概念を模式図と電力制御を示す模式図。
【
図3】本発明の実施例1の観察試料BWの加熱観察時の流れ図。
【
図4】本発明の実施例1の加熱炉の模式図及び温度プロファイル取得試料TWを加熱する際の制御システムを表すブロック図。
【
図5】本発明の実施例1のダミー温度プロファイル管理基準の取得流れ図。
【
図7】本発明の実施例2の観察試料BWを加熱観察する際の制御システムを表すブロック図及び加熱炉の模式図。
【
図8】本発明の実施例2の温度プロファイル取得試料TWを加熱する際の制御システムを表すブロック図及び加熱炉の模式図。
【
図9】本発明におけるダミー加熱部材の異なる実施形態例を示す模式図。
【
図10】本発明における冷却機構の異なる実施形態例を示す模式図。
【
図11】本発明の実施例3の温度プロファイル取得試料TWを加熱する際の制御システムを表すブロック図及び加熱炉の模式図。
【
図12】本発明の実施例3の観察試料BWを加熱観察する際の制御システムを表すブロック図及び加熱炉の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態である実施例について説明する。但し、本発明をこれら実施例のみに限定する趣旨のものではない。また、後述する実施例の説明に当って、前述した実施例の同一構成部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0014】
<定義>
(1)温度プロファイル
経過する時間で変化する温度。
(2)温度プロファイルの管理基準
加熱経過時間における温度のバラツキの許容範囲を示す。
(3)観察
本発明における「観察」には、試料の主に形状変化である挙動を注意深く見ること、試料の挙動を測定・計測・観測すること、直視すること、試料の挙動を顕微鏡による拡大直視すること、モニターに表示された試料の挙動の撮像画像や測定データ画像や測定データ加工画像を見ること、X線によって試料内部の挙動を撮影しそれをモニター画面で観察すること、それらのデータをもとに何らかの判定(例えば良否判定)を行うこと、などを含んだ概念ないし意味である。
(4)試料
[a]観察試料BW
加熱による主に形状変化である挙動が観察される試料であって、熱電対などのダミー温度検出手段が取付けられていない試料であり、温度測定を行なわない試料。
[b]温度プロファイル取得試料TW
観察試料BWと同じ試料(一般的には製品名が同一)であって、上面と下面に熱電対などの温度検出手段を取付け、加熱による上面温度と下面温度が検出・取得されるもので、該検出された上面温度と下面温度によって試料温度プロファイルを作成するための試料であり、加熱による挙動の観察は行わない試料である。
[c]同一試料
同じ・差のない試料(一般的には製品名が同一)のこと。
温度プロファイル取得試料TWは観察試料BWと同一試料である。
[d]電子部品
本発明において想定している代表的な試料である。
能動素子単体および能動素子を組み合わせた部品(トランジスタ、IC、ダイオード、オペアンプなど)のことをいい、受動部品は抵抗、コイル、コンデンサなどがあり、補助部品には素子(間)を接続/切断したり、固定するための部品(リレー、スイッチ、コネクタ、基板、端子、線材など)などがある。
本発明において試料としてその代表は電子部品であるが、試料には電部子品以外のものも含まれる。
(5)温度検出手段
温度プロファイル取得試料TW又はダミー加熱部材の温度を検出する手段であって、温度プロファイル取得試料TW又はダミー加熱部材に接着剤、ロウ付け、粘着テープないし溶接などよって直接取り付ける形態の熱電対、測温抵抗体、サーミスタ、半導体(トランジスタ、ダイオード)、水晶振動子、塩素酸カリウムなどが一般的であるが、非接触で温度検出する放射温度センサ、2色温度センサもある。
(6)放射熱(輻射熱)
高温の物体表面(一般的には固体表面)から低温の物体表面に、その間の空気その他の気体の存在に関係なく、直接赤外線(電磁波)による伝わり方を放射(=輻射)といい、その熱を放射熱(=輻射熱)といい、赤外線(電磁波)が物体に当たるとその物体の分子が振動することで物体が熱を帯びる(加熱される)現象をいう。
【実施例0015】
図1~
図6に示す本発明の実施例1において加熱観察装置1は次のような構成となっている。
レーザー光線などの光が透過する透明石英ガラス板からなる第1の透明板2aが設けられている。
第1透明板2aとの間に空間3aを形成する形態で、第1の透明板2aの上方に、上方に向けて放射された上向き放射熱で観察試料BWの下面を加熱する透明導電膜(透明ヒーター)である下部ヒーター4aを下面に設けた放射熱が透過する第2の透明板2b(下方壁)が設けられている。
第2透明板2bとの間に空間3bを形成する形態で、第2の透明板2b(下方壁)の上方に、観察試料BWを上面に載置するレーザー光線などの光及び放射熱が透過する透明石英ガラス板からなる試料載置テーブル5が水平形態で設けられている。
試料載置テーブル5との間に空間3cを形成する形態で、試料載置テーブル5の上方に、下方に向けて放射された下向き放射熱で観察試料BWの上面を加熱する透明導電膜(透明ヒーター)である上部ヒーター4bを上面に設けた放射熱が透過する第3の透明板2c(上方壁)が設けられている。
第3の透明板2c(上方壁)との間に空間3dを形成する形態で、第3の透明板2c(上方壁)の上方に、耐熱性の透明ガラス板からなる第4の透明板2dが設けられている。
【0016】
本実施例において、第1の透明板2a、第2の透明板2b(下方壁)、第3の透明板2c(上方壁)、第4の透明板2d及び試料載置テーブル5は四角形の平面板であるが、本発明はこれに限定されず例えば円板形態等でもよい。
また、本実施例において、第2の透明板2b(下方壁)に設けられた下部ヒーター4aは第2の透明板2b(下方壁)の全面を覆う形態としているが、本発明はこれに限定されず例えば一部を覆う形態としてもよいし、その形態はいろいろある。第3の透明板2c(上方壁)と上部ヒーター4bについても同様である。
【0017】
下部ヒーター4aに電力を供給する下部ヒーター電力操作部13aが設けられ、上部ヒーター4bに電力を供給する上部ヒーター電力操作部13bが設けられ、下部ヒーター電力操作部13aと上部ヒーター電力操作部13bへの電力供給量を指示する温度調整部14が設けられている。
【0018】
下部ヒーター4aに供給される電力量である下部ヒーター電力量Evaと上部ヒーター4bに供給される電力量である上部ヒーター電力量Evbの供給比率である電力比例係数vTを記憶しておく電力比例係数記憶部15が設けられている。
本実施例において電力比例係数vTを、例えば、下部ヒーター電力量Eva:上部ヒーター電力量Evb=4:6としている。
観察試料BW加熱時の下部ヒーター電力量Evaと上部ヒーター電力量Evbは、温度調整部14の電力比例係数vTにもとづいた下部ヒーター電力操作部13aへの下部ヒーター電力量指示piaと、温度調整部14の電力比例係数vTにもとづいた上部ヒーター電力操作部13bへの上部ヒーター電力量指示pibによって行われる。
【0019】
電力比例係数vTの決定は以下のようである。
電力比例係数vTは、試料下面温度wuaと上面温度wubの比率にもとづいて決められる。例えば温度差、又は、試料下面温度wuaを実現している下部ヒーター電力量Evaと試料上面温度wubを実現している上部ヒーター電力量Evbの比率にもとづいて決められる(例えば電力差)ものである。
【0020】
<ヒーター電力量の制御方法>
下部ヒーター電力量Evaと上部ヒーター電力量Evbの供給方法例について説明する。
試料温度プロファイル管理基準wpSの許容温度範囲(例えば10℃)の中心を0(以下「中心0」ともいう。)として±5℃の温度から、例えば、試料下部面温度wuaが中心0より1.5℃上昇したら下部ヒーター4aの電力供給を停止し、中心0より1.5℃下降したら下部ヒーター4の電力供給を行う、という電力ON/OFF供給操作を行う方法がある。(模式イメージ
図2参照)
そのほかに、電力連続供給操作(ゼロクロスSSR(半導体スイッチの高速動作を利用したゼロクロス動作)、連続比例型ゼロクロスSSR、位相制御方式(半サイクル毎に導通角を調整して電力を連続的に制御する方式)等)などがある。
【0021】
試料載置テーブル5の観察試料BWの載置域外の上面に、下面が上向き放射熱で加熱されダミー下面であり、上面が下向き放射熱で加熱されるダミー上面であるダミー加熱部材6が設けられている。
ダミー加熱部材6の温度であるダミー温度ddを検出する熱電対からなるダミー温度検出手段7が、該ダミー加熱部材6の上面に接着により固定され又はクランプなどの取付け治具(図示無し)により交換可能形態で取り付けられている。
【0022】
ダミー加熱部材6は、例えば金属板に熱電対を溶接やロウ付け等で接合したものが高温度でも使用でき都合が良い。金属板には、黒色の焼付塗装を施し放射熱をより受けるようにしても良い。金属板の面積や厚さは必要に応じて決定すれば良い。
また、試料載置テーブル5の上面及び下面ないしいずれか一方の面に、蒸着やスパッタリングした金属や塗料による塗装などでもよい。
また、試料と同等の形状や熱容量の部材か、試料とは別の試料そのものと同種ないし同一の部材の上面と下面に熱電対を貼りダミー加熱部材としても良い。
【0023】
観察試料BWの加熱温度である観察試料温度の加熱経過時間におけるバラツキの許容範囲を示す温度プロファイルの管理基準である試料温度プロファイル管理基準wpSを記憶する試料温度プロファイル管理基準記憶部16が設けられている。
【0024】
観察試料BW加熱時のダミー温度ddの加熱経過時間におけるバラツキの許容範囲を示す温度プロファイルの管理基準であるダミー温度プロファイル管理基準ddSを記憶するダミー温度プロファイル管理基準記憶部12が設けられている。
【0025】
第1の透明板2a、第2の透明板2b(下方壁)、試料載置テーブル5、第3の透明板2c(上方壁)、第4の透明板2dは、全て水平形態に配置された横板であり、これによって、加熱観察装置1の外側上方及び外側下方又はいずれか一方から、観察試料BWの主に形状変化である挙動の、目視による観察、顕微鏡による観察、カメラ(動画を含む)による撮影観察、光切断法、位相シフト法などによる測定等を可能としている。
【0026】
<観察部>
第1透明板2aの下方には、試料載置テーブル5に載置された観察試料BWの下面(表面)に向け下方から帯状の照射光であるレーザー光線を照射し拡散反射させ、その反射光を受光部である撮像素子(CMOSイメージセンサ、CCDイメージセンサ、TDIカメラ、TOFカメラなど)で受光(結像)し、その受光情報にもとづいて観察試料BWの高さ位置の変化(各座標位置(x、y)の上下距離の変化)をプロファイルデータとして取得する光切断法の、観察部制御部20によって制御される観察部11が設けられている。
観察部11は、XY駆動テーブル10によってXY方向に水平移動制御されるようになっている。
観察部11は、具体的には測定部ないし計測部である。
【0027】
観察部11が測定動作を行うのは観察試料BWの測定時においてであり、温度プロファイル取得試料TWの加熱時は観察部11による測定は行わない。
温度プロファイル取得試料TWの高さ測定を指示した場合や設定した場合には、高さ測定を行うことができるようにしておくのがよい。
【0028】
<観察試料BWの加熱とその制御>
観察しようとする観察試料BWの加熱制御のための、電力比例係数vTが電力比例係数記憶部15に予め記憶されており、ダミー温度プロファイル管理基準ddSがダミー温度プロファイル管理基準記憶部12に予め記憶されている場合は、観察試料BW加熱時の上向き放射熱および下向き放射熱の制御は、ダミー温度ddがダミー温度プロファイル管理基準ddSの範囲内となるように温度調整部14が、下部ヒーター電力量Evaを下部ヒーター電力操作部13aにし指示、上部ヒーター電力量Evbを上部ヒーター電力操作部13bに指示することによって行われる(主に
図1参照)。
【0029】
<観察試料BWの加熱制御の手順>
主に
図2、
図3を参照して観察試料BWの加熱制御の手順を説明する。
[ステップ1]
温度調整部14は、ダミー温度ddを監視しながら該ダミー温度ddがダミー温度プロファイル管理基準ddSの範囲内となるように、電力比例係数vTの比率とした下部ヒーター電力量Evaと上部ヒーター電力量Evbの供給を、下部ヒーター電力操作部13aと上部ヒーター電力操作部13bに指示(下部ヒーター電力量指示pia、上部ヒーター電力量指示pib)して、下部ヒーター4aの上向き放射熱と上部ヒーター4bの下向き放射熱をコントロールして行く。(模式イメージ
図2)
[ステップ2]
測定開始時間(加熱前に開始、加熱と同時開始又は加熱後開始など)になったら、観察部11の測定(観察)を開始する。
[ステップ3]
加熱を終了する。観察部11は測定を終了するか冷却時の測定を続行する。
[ステップ4]
試料載置空間冷却風供給部9a、試料無し空間冷却風供給部9bによる冷却を開始する。
[ステップ5]
素手で触っても火傷をしない温度(例えば60℃以下)になったら、冷却を停止する。
【0030】
<ダミー温度プロファイル管理基準の取得(作成)及び電力比例係数の取得(作成)>
観察しようとする観察試料BWの加熱制御のためのダミー温度プロファイル管理基準ddSと電力比例係数vTの記憶(保存)が無い場合には、それらを取得(作成)しなければならず、その手順について主に
図4、
図5を参照して説明する。
【0031】
観察試料BWと同じ試料(一般的には製品名が同じ)である温度プロファイル取得試料TWの加熱時に、温度プロファイル取得試料TWの下面に取付けて該下面の温度を検出する、ロウ付けや接着剤により取り付けられる熱電対からなる試料下面温度検出手段8aが設けられている。
温度プロファイル取得試料TWの加熱時に、温度プロファイル取得試料TWの上面に取付けて該上面の温度を検出する、ロウ付けや接着剤により取り付ける熱電対からなる試料上面温度検出手段8bが設けられている。
【0032】
下面に試料下面温度検出手段8aを取付け、上面に試料上面温度検出手段8bを取り付けた温度プロファイル取得試料TWを、試料載置テーブル5の上面に載置した状態で、下部ヒーター4a及び上部ヒーター4bに電力を供給して加熱を開始する。
温度調整部14は、試料下面温度検出手段8aの検出温度である試料下面温度wuaと試料上面温度検出手段8bの検出温度である試料上面温度wubがそれぞれ、試料温度プロファイル管理基準wpSの範囲内となるように、下部ヒーター電力量Evaと上部ヒーター電力量Evbを決定し下部ヒーター電力操作部13aと上部ヒーター電力操作部13bに指示(下部ヒーター電力量指示pia、上部ヒーター電力量指示pib)を行う。
観察試料BWから下部ヒーター4aまでの距離と、観察試料BWから上部ヒーター4bまでの距離とが異なった距離であっても、観察試料BWの下面温度と上面温度を試料温度プロファイル管理基準wpSの範囲内となるように、下部ヒーター4aの放射熱と上部ヒーター4bの放射熱を電力比例係数vTの設定によって制御できる。また、下部ヒーター4aと上部ヒーター4bのヒーター種類を異なる場合例えば、下部ヒーターが透明導電膜で上部ヒーターがハロゲンヒーターでも、観察試料BWの下面温度と上面温度を試料温度プロファイル管理基準wpSの範囲内となるように、下部ヒーター4aの放射熱と上部ヒーター4bの放射熱を電力比例係数vTの設定によって制御できる。
【0033】
主に
図4、5を参照してダミー温度プロファイル管理基準ddSの作成手順を説明する。
[ステップ1]
温度調整部14は、試料下面温度wua及び試料上面温度wubを監視しながら、試料下面温度wua及び試料上面温度wubが試料温度プロファイル管理基準wpSの範囲内となるように、下部ヒーター電力量Evaと上部ヒーター電力量Evbの供給を、下部ヒーター電力操作部13aと上部ヒーター電力操作部13bに指示(下部ヒーター電力量指示pia、上部ヒーター電力量指示pib)して、下部ヒーター4aの上向き放射熱と上部ヒーター4bの下向き放射熱をコントロールする。
[ステップ2]
電力比例係数取得部17は、下部ヒーター電力量指示piaの下部ヒーター電力量Evaの電力プロファイルと上部ヒーター電力量指示pibの上部ヒーター電力量Evbの電力プロファイルにもとづいて、その電力差から電力比例係数vTを作成し、それを電力比例係数記憶部15に記憶する。
または、試料下面温度wuaと試料上面温度wubの温度差から電力比例係数vTを作成し、それを電力比例係数記憶部15に記憶する。
[ステップ3]
ダミー温度プロファイル管理基準取得部18は、ダミー温度ddの温度プロファイルにもとづいてダミー温度プロファイル管理基準ddSを作成し、それをダミー温度プロファイル管理基準記憶部12に記憶する。
[ステップ4]
加熱を終了する。
[ステップ5]
冷却を開始する。
[ステップ6]
冷却を停止する。
【0034】
<ダミー温度プロファイルの取得(作成)>
ダミー温度プロファイル管理基準取得部18が設けられている。
ダミー温度プロファイル管理基準取得部18は、ダミー温度ddの温度プロファイルもとづいてダミー温度プロファイル管理基準ddSを取得(作成)し、ダミー温度プロファイル管理基準ddSをダミー温度プロファイル管理基準記憶部12に記憶する。
【0035】
ダミー温度プロファイル管理基準ddSの取得(作成)によって、ダミー加熱部材6の放射熱による温度上昇劣化が許容範囲を超えるまで使用し続けることが可能となり、観察試料BWには熱電対を取り付けることなくその加熱観察制御を行うことを可能としている。
【0036】
<冷却機構>
透明導電膜(透明ヒーター)、ハロゲンヒーター、カーボンヒーター、セラミックヒーター、電熱線等の放射熱を発生する発熱部材は、自らが温度を下げることはできないことから、温度を降下させたい場合、発熱部材への供給電力を停止しての自然放熱による温度低下しかない。其のため温度を上昇温度プロファイルに沿って上げることは容易であるが、温度を下降温度プロファイルにそって下げることは困難である。其のため冷却時は冷却風で行うことが実用的である。
また、冷却風は、温度プロファイル沿った制御に必要な他、作業効率から温度を早く低下させることにも必要であるが、手が触れて火傷の危険性があるため、例えば60℃以下になっている必要がある。
また、試料載置テーブル5に載置されている観察試料BWに冷却風があたった場合、移動してしまう危険があり、移動してしまうと温度下降時の観察や計測を正確に行うことができないことになる。
早く温度を下げるには風量を多く(風速を早く)することが求められ、観察試料BWが動かないようにするには、風量を少なくしなければならない。この矛盾を解決することが必要である。
【0037】
図6を参照して第1の冷却制御部19a、第2の冷却制御部19bによって制御される冷却機構について説明する。
空間3cは観察試料BWが載置される試料載置空間であり、該空間3c(試料載置空間)のみに供給される冷却風である試料載置空間冷却風Ca1を取得する試料載置空間冷却風供給部9aが設けられていて、空間3cの風上側(
図6では右側)は試料載置空間冷却風供給部9aによって塞がれていて、風上側からの気体の流入が無い形態となっているか、風上側の気体や装置外の外気を試料載置空間冷却風供給部9a内に取り込み、それを冷却装置(図示していないが例えばペルチェ素子による冷却)により冷却した試料載置空間冷却風Ca1を空間3c内に供給できるようになっている。
空間3c(試料載置空間)以外の空間である試料無し空間である空間3a、3b、3dに供給され冷却風でありかつ空間3cには供給されない冷却風である試料無し空間冷却風Ca2を取得する試料無し空間冷却風供給部9bが設けられている。
試料載置空間冷却風供給部9aは、冷却風の風速を可変できるようになっていて、特に小さな電子部品や薄い電子部品が冷却風で動かない微弱風速の冷却風を供給可能であり、外気温よりも低温度の試料載置空間冷却風Ca1を供給するための冷却手段(図示せず省略:例えばペルチェ素子)を有していて、試料載置空間冷却風Ca1の温度によって冷却効果を制御できるようになっている。
試料無し空間冷却風供給部9bは、温度不調性の外気のみの冷却風であって、その風速は可変できるようになっていて、風量(風速)によって冷却効果を制御できるようになっているが、外気を冷却する冷却手段(例えばペルチェ素子)を設けて外気を冷却するのもよい。
外気よりも低温の冷却風(例えばマイナス温度)を生成する冷却手段にはペルチェ素子以外に、圧縮ガス(空気を含む)を噴射膨張させて冷却を行う冷却手段、氷やドライアイスなどの冷媒からなる冷却手段、多用な冷却手段がある。
【0038】
加熱制御が終了(停止を含む)すると、温度調整部14は第1の冷却制御部19a、第2の冷却制御部19bに冷却の開始を指示する。
冷却開始の指示を受けた第1の冷却制御部19aは、試料載置空間冷却風供給部9aに対して設定された風量と温度の試料載置空間冷却風Ca1の送風開始の指示を行い、該送風開始の指示を受けた試料載置空間冷却風供給部9aは試料載置空間冷却風Ca1の送風を開始する。
ダミー温度プロファイル管理基準ddSに下降温度プロファイル管理基準が設定されている場合には、温度が下降するダミー温度ddが下降温度プロファイル管理基準の範囲内となるように、温度調整部14は第1の冷却制御部19aに指示を行い、該指示を受けた第1の冷却制御部19aは、試料載置空間冷却風供給部9aに対して試料載置空間冷却風Ca1の停止、風量の調整、冷却風の温度の調整などの指示を行う。
また、冷却開始の指示を受けた第2の冷却制御部19bは、試料無し空間冷却風供給部9bに対して試料無し空間冷却風Ca2の送風開始の指示を行い、該送風開始の指示を受けた試料載置空間冷却風供給部9aは試料無し空間冷却風Ca2の送風を開始し、終了の指示があるまで送風を続ける。
【0039】
空間3cを形成している壁を冷却手段で外気温よりも低温に冷却された低温冷却風で冷却することで、観察試料BWを動かすことなく短時間での冷却を実現する。そして、冷却時の観察試料BWの主に形状変化である挙動を測定したい場合は、観察試料BWが動かないので加熱後の冷却時の測定を正確に行うことを可能としている。
また、空間3a、3b、3dを形成している壁を外気温の風量大の強風で冷却するので、短時間での冷却を可能としている。
【0040】
観察試料BWが微風でも動く可能性があるような小さい形態、薄い形態あるは軽い形態である場合は、空間3cには試料載置空間冷却風Ca1を限りなく0風速に近いものに調整する、ないし試料載置空間冷却風Ca1を供給しない風速0とすることも可能である。この場合、試料無し空間冷却風Ca2の風量を多くして、試料載置テーブル5及び第3の透明板2cの温度低下を促進する。試料無し空間冷却風供給部9bの外気よりも低温の冷却風を生成するための冷却手段をもうけるのがよい。
【0041】
下部ヒーター4aと上部ヒーター4bの中間にある試料載置テーブル5は上方空間と下方空間を仕切る構造となっているが、密閉構造とする必要はない。観察試料BWを載置している側の空間に影響を与えない程度の構造であれば良い。試料無し空間冷却風供給部9bから発生する試料無し空間冷却風Ca2が風量大であれば、試料載置テーブル5、下部ヒーター4aと上部ヒーター4bは早く冷やすことができ、試料無し空間冷却風Ca2が風量大であっても空間3cに在る観察試料BWはかかる風量大の試料無し空間冷却風Ca2の影響を受けることはない。試料載置空間冷却風供給部9aは観察試料BWが動かない程度の試料載置空間冷却風Ca1を発生させればよい。送られる気体は、例えば常温の空気が使用できるし、マイナスの温度に冷却された気体であってもよい。
温度調整部14は、時間とともに指定温度を変化させる温度制御と冷却が必要タイミングに試料載置空間冷却風Ca1と試料無し空間冷却風Ca2を発生させる指示を第1の冷却制御部19aに行うことができる。試料載置空間冷却風供給部9aと試料無し空間冷却風供給部がファンで構成されている場合、第1の冷却制御部19a、第2の冷却制御部19bはそれぞれのファンを使用して、試料載置空間冷却風Ca1と試料無し空間冷却風Ca2をそれぞれ制御することができる。制御方法としては、ファンの回転数を制御して風量を制御しているが、ファンをON/OFFすることで平均風量を制御することでも良い。また、ファンを吸い込み方向で使用してもよい。其の場合風の方向は吐き出す場合と反対方向になる。更にファンではなく、圧縮空気を利用して空気の吐き出し量を制御して、試料載置空間冷却風Ca1と試料無し空間冷却風Ca2を発生することでも良い。
更に試料載置空間冷却風Ca1は限りなくゼロの風量であっても良い。其の場合、第1の冷却制御部19aと風量制御部2と試料載置空間冷却風供給部9aは無くても良い。ただし、試料無し空間冷却風Ca2が空間3cに流れ込まない程度の構造としておく必要はある。また、上方の第4の透明板2dと下方の第1の透明板2aは無くても良い。
【0042】
<加熱炉>
第1の透明板2a、第2の透明板2b、第3の透明板2c、第4の透明板2d、試料載置テーブル5、試料載置空間冷却風供給部9a、試料無し空間冷却風供給部9bによって加熱炉10aを形成している。
【0043】
<観察部について>
本実施例1では、観察部11は光切断法を測定手法(観察手法)としているが、本発明においては、測定手法を光切断法に限定するものではない。
位相シフト法、モアレトポグラフィ法、空間コード化法、マルチスリット法等、光投影法、受動型ステレオ法、能動型ステレオ法、スポット投影法、スリット投影法、傾斜光投影法、コード化パターン光投影法、共焦点法、干渉縞法、光時間差法、光周波数差法、X線透視観察法などもよい。
【0044】
本実施例1のおける観察部11は、企業から提供されている既成の観察部とコントローラからなる測定システムを使用することにより、当業者であれば容易に実施可能である。その既成の測定システム例を下記に紹介する。
<位相シフト法の観察部例>
例えば、位相シフト法を測定手法とした、左右2つのプロジェクタからなる照射部とその中央に設けたカメラ(受光部・光検出部)を備えた観察部(測定部)とコントローラからなる測定システム(株式会社キーエンス製「XG-8000シリーズXR-HT40MD」)が提供されている。これは、試料に対して、左右2つのプロジェクタから高速で投影される複数のストライプパターン(縞模様)を、中央のカメラ(光検出部・受光部)で撮影(受光)して、観察部側の基準位置から試料の表面までの各座標位置(x、y)の高さ距離を測定取得し、該各座標位置(x、y)の高さで表される3次元形状データと各座標位置(x、y)における輝度レベルを得ることができる。
<共焦点方式の照射受光ユニット例>
例えば、共焦点方式を測定手法とした、株式会社キーエンス製の「ダブルスキャン高精度レーザー測定器LT-9000 シリーズ」がある。これは、共焦点方式による同軸光学系を採用。対象物上で焦点の合った位置を測定する原理で対象物の高さを測定する。この照射受光ユニットをXY方向に走査することで3次元形状データと各座標位置(x、y)における輝度レベルを得ることができる。
以上述べた照射受光ユニット例は一例であって、複数の企業から多様な照射受光ユニットおよびコントローラが提供されている。
<光切断法の照射受光ユニット例>
照射受光ユニット(照射手段と受光手段とからなる)とコントローラからなる測定システムである、株式会社キーエンス製の「LJ-V7000シリーズ」がある。これはライン状の切断面の形状(プロファイル)を取得する方法を採用しているものであり、試料に対して、光切断を行う切断位置を一方向に連続的に変化させて連続的にプロファイル(ライン状の切断面の形状)を取得し、得られたプロファイルを合成することで距離画像を取得する。照射光は405nmの青紫色レーザー光線である。
【0045】
本実施例1では、下部ヒーター4a及び上部ヒーター4bは、透明導電膜としている。
但し、本発明においては、下部ヒーター4a及び上部ヒーター4bを透明導電膜に限定するものではない。その観察目的や測定手法によって、例えば、ハロゲンヒーター、面状マイカ(雲母)ヒーター、グラファイトヒーター(例えば特許第4739314号発熱体ユニット)、カーボンヒーターなどでもよい。
また、下部ヒーター4aと上部ヒーター4bを異なるヒーターとするのもよい。
例えば、下部ヒーター4aを透明導電膜とし、上部ヒーター4bをハロゲンヒーター、面状マイカ(雲母)ヒーター、グラファイトヒーター(例えば特許第4739314号発熱体ユニット)、セラミックヒーター、電熱線ないしカーボンヒーター等とするのもよい。
計測方法(観察方法)が、観察試料BWの上方からのみの場合は、下部ヒーター4aをハロゲンヒーター、面状マイカ(雲母)ヒーター、グラファイトヒーター(例えば特許第4739314号発熱体ユニット)、セラミックヒーター、電熱線ないしカーボンヒーター等とするのもよい。
【0046】
本実施例1では、第1の透明板2a、第2の透明板2b(下方壁)、第3の透明板2c(上方壁)、第4の透明板2d及び試料載置テーブル5を透明テーブルとしているが、一部の板又は全部の板が非透過性の部材からなるものでもよい。例えば、X線による観察を行う場合には、光非透過性でありX線の透過性の高いCFRP(カーボン/炭素繊維強化プラスチック)などを使用するのがよい。
【0047】
<熱電対の取り付け方法>
熱電対の温度プロファイル取得試料TWやダミー加熱部材への取り付けは、エポキシ接着剤による接着固定、ポリイミドテープによる固定、溶接による固定、ロウ付けによる固定が知られている。
【0048】
<透明導電膜(透明ヒーター)>
透明導電膜には、例えば、酸化インジウムを主成分とする材料(例えば、ITO(Indium Tin Oxide))、酸化亜鉛を主成分とする材料(例えば、AZO(Aluminium Zinc Oxide)、GZO(Gallium doped Zinc Oxide)等)、または酸化錫を主成分とする材料、カドミウム系、カーボンナノチューブ(CNT)を用いた透明導電膜が知られている。
透明導電膜の透過率は、例えば、80%以上であることが好ましい。透明導電膜の透過率を80%以上にすることにより、測定(計測)に用いられる光が透明導電膜で妨げられて、測定(計測)結果に影響を及ぼすことを抑えることができる。また、透明導電膜の抵抗率は、10-3[Ω・cm]以下であることが好ましい。
また、透明導電膜は、例えば、スパッタリング法、PLD(Pulsed laser deposition)法、または真空蒸着法等により、上部透明基板上に成膜することができる。上部透明基板の面精度は、例えば、測定装置の分解能または測定精度等に応じて決めることができる。一例として、測定装置が要求される測定精度が±1μm程度である場合、上部透明基板の面精度は、λ(検査波長=0.6328μm)以下であることが好ましい。面精度は、有効反表面全体において、最も高い位置(Peak)と、最も低い位置(valley)との差(PV値)としている。
【0049】
<試料載置テーブルの平坦度、透過性>
本実施例では試料載置テーブル5の平坦度は3μm以下としているが、本発明はこれに限定されるものではない。
また、第1の透明板2a、第2の透明板2b(下方壁)及び試料載置テーブル5は、所定のレーザー光の透過率を得るために、その上面および下面に、フッ化マグネシウム、アルミ、白金、金、銀、銅、クローム、シリコン、ニッケル、5酸化チタン、ゲルマニュウム、二酸化チタン、一酸化珪素、二酸化珪素等々の蒸着物質の蒸着膜(複数物質の混合、多層有り)が施されている。
【0050】
<測定基準・測定基準面>
観察部11は、観察試料BWの高さ・位置・形状の変化をプロファイルデータとして取得する光切断法による測定を行っているが、その基準は、撮像素子面、照射位置、試料載置テーブル5の上面位置(物理的上面)又は下面位置、試料載置テーブル5の上面又は下面に設けた反射部材(図示せず)の表面(下面)位置にもとづいて設定した仮想的な基準点、仮想的な基準線ないし仮想的な基準面である。
本実施例では、試料載置テーブル5の上面に設けた反射部材(図示せず)の表面(下面)の反射光にもとづいて設定した仮想的な平坦基準面(傾斜0度の水平面で無い場合も含む)を基準としている。
仮想的な平坦基準面は湾曲などの無い完全な平坦面である。他方、試料載置テーブル5の上面(物理的上面)は微細な湾曲が有り、また自重により全体が湾曲している。よって、仮想的な平坦基準面は試料載置テーブル5の上面(物理的上面)ではないし、実質同一でもない。
仮想的な基準面を求める方法には、反射部材の適当な3点を結ぶ仮想的な三角形平面により設定する方法や、測定域の複数走査線ないし全走査線を特定し、それらの線から最小二乗法か擬似逆行列を使って平面を求める方法などがある。
ダミー上面温度プロファイル管理基準ddSbの取得は、試料上面温度wubが試料温度プロファイル管理基準wpSの範囲内となるように下向き放射熱が制御された状態における、ダミー上面温度の温度プロファイルにもとづいて取得されるものである。
下向き放射熱の制御は、温度調整部14bが上部ヒーター電力量Evbを上部ヒーター電力操作部13bに指示することによって行う。