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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128121
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】分割コアの巻線装置及び巻線方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/095 20060101AFI20230907BHJP
   H02K 15/06 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
H02K15/095
H02K15/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022032248
(22)【出願日】2022-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】大河原 友樹
【テーマコード(参考)】
5H615
【Fターム(参考)】
5H615AA01
5H615BB01
5H615BB07
5H615BB14
5H615PP01
5H615PP13
5H615QQ02
5H615QQ19
5H615SS10
(57)【要約】
【課題】渡り線の長さを適切な長さに設定して、生産性を向上させる。
【解決手段】本開示は分割コアの巻線装置20であって、第1コア支持部29及び第2コア支持部30を有し、回転軸を中心として回転可能であり、かつスライド方向Sへスライド移動可能なコア支持部材26と、ワイヤノズル22と、コア支持部材26のスライド方向Sの一側に配置され、コア収納空間を区画するサイドガイド27と、を備え、コア支持部材26は、巻線位置に第1コア支持部29を配置した第1状態から、上記一側へのスライド移動によって、第2コア支持部30を巻線位置に配置するとともに、第1の分割コア10aをコア収納空間へ収納する第2状態にすることが可能であり、サイドガイド27は、第2状態で第1の分割コア10aを覆い、第2の分割コア10bへの巻線時に、第1の分割コア10aへの巻線14の干渉を規制して、巻線14を第2の分割コア10b側へ案内する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻線が巻回されるティース部を有する少なくとも2つの分割コアに前記巻線を連続的に巻き付ける分割コアの巻線装置であって、
前記分割コアを支持可能な第1コア支持部及び第2コア支持部を有し、回転軸を中心として回転可能であり、かつ前記回転軸の軸方向と交叉するスライド方向へスライド移動可能なコア支持部材と、
前記コア支持部材側へ前記巻線を供給する巻線供給部材と、
前記コア支持部材の前記スライド方向の一側に配置され、前記スライド方向の他側へ向かって開放されるコア収納空間を区画するサイドガイドと、を備え、
前記コア支持部材は、前記回転軸を含む巻線位置に前記第1コア支持部を配置した第1状態から、前記一側へのスライド移動によって、前記第2コア支持部を前記巻線位置に配置するとともに、前記第1コア支持部に支持される第1の分割コアを前記コア収納空間へ収納する第2状態にすることが可能であり、
前記サイドガイドは、前記第2状態で前記第1の分割コアを覆い、前記第2コア支持部に支持される第2の分割コアへの巻線時に、前記第1の分割コアへの前記巻線の干渉を規制して、前記巻線を前記第2の分割コア側へ案内する
ことを特徴とする分割コアの巻線装置。
【請求項2】
前記コア収納空間を前記他側へ開放する開口側の前記サイドガイドの端縁部は、前記開口の内側へ向かって湾曲している
ことを特徴とする請求項1に記載の分割コアの巻線装置。
【請求項3】
前記巻線位置に位置する前記分割コアの前記ティース部の両側に配置されて、前記ティース部の所定位置へ前記巻線を案内するガイドを備え、
前記ガイドは、前記コア支持部材とともに回転可能であり、かつ前記コア支持部材に対して前記軸方向に移動可能である
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の分割コアの巻線装置。
【請求項4】
前記ガイドは、前記ティース部の前記所定位置に少なくとも前記巻線を挿入可能な隙間を空けるように、前記巻線の巻回状態に応じて前記コア支持部材に対して前記軸方向に移動する
ことを特徴とする請求項3に記載の分割コアの巻線装置。
【請求項5】
巻線が巻回されるティース部を有する少なくとも2つの分割コアに前記巻線を連続的に巻き付ける分割コアの巻線方法であって、
コア支持部材の第1コア支持部に第1の分割コアをセットする第1セット工程と、
巻線供給部材から供給される前記巻線の端部を前記コア支持部材側へ保持した状態で、前記コア支持部材を前記巻線供給部材に対して回転軸を中心として回転させて、前記巻線を前記第1の分割コアの前記ティース部に巻回する第1巻線工程と、
前記巻線が巻回された前記第1の分割コアを、前記回転軸の軸方向と交叉する方向へスライド移動させてサイドガイドに覆われる位置に配置するスライド移動工程と、
前記コア支持部材の第2コア支持部に第2の分割コアをセットする第2セット工程と、
前記コア支持部材を前記巻線供給部材に対して前記回転軸を中心として回転させて、前記巻線を前記第2の分割コアの前記ティース部に巻回する第2巻線工程と、を含む
ことを特徴とする分割コアの巻線方法。
【請求項6】
前記第1巻線工程よりも前に、前記ティース部の所定位置へ前記巻線を案内するガイドを、前記コア支持部材にセットされた前記第1の分割コアの前記ティース部の両側へ移動させる第1ガイド移動工程と、
前記第2巻線工程よりも前に、前記ガイドを、前記コア支持部材にセットされた前記第2の分割コアの前記ティース部の両側へ移動させる第2ガイド移動工程と、を含み、
前記第1巻線工程では、前記コア支持部材及び前記ガイドを前記巻線供給部材に対して前記回転軸を中心として回転させ、かつ前記ガイドを前記コア支持部材に対して前記回転軸の軸方向に移動させて、前記巻線を前記第1の分割コアの前記ティース部に巻回し、
前記第2巻線工程では、前記コア支持部材及び前記ガイドを前記巻線供給部材に対して前記回転軸を中心として回転させ、かつ前記ガイドを前記コア支持部材に対して前記軸方向に移動させて、前記巻線を前記第2の分割コアの前記ティース部に巻回する
ことを特徴とする請求項5に記載の分割コアの巻線方法。
【請求項7】
前記第1巻線工程及び前記第2巻線工程では、前記ティース部の前記所定位置に少なくとも前記巻線を挿入可能な隙間を空けるように、前記ガイドを、前記巻線の巻回状態に応じて前記コア支持部材に対して前記軸方向に移動させる
ことを特徴とする請求項6に記載の分割コアの巻線方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転電機の周方向に沿って複数並んで設けられる分割コアに、コイルを巻回する分割コアの巻線装置及び巻線方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より複数の分割コアにコイルを連続して巻く技術がある。例えば、特許文献1には、ティースを軸方向において回転させるスピンドル機を備え、側方に設置されたノズルから線材を供給することによってティースに線材を巻回する巻き線機が記載されている。この巻き線機は、ティースに線材を巻回する際に、ティースを巻き線治具によって軸方向に連結する。巻き線治具は、両側方に設置されたガイドレールによって軸方向に移動可能に支持されている。これらガイドレールがスピンドル機によって回転されることで、巻き線治具及びティースが回転される。巻き線機は、線材がティースに巻回されながら、巻き線治具及びティースがガイドレールに沿って送り出される。このように、特許文献1に記載の巻き線機は、巻き線治具及びティースを、ノズルに対して変位させながら線材を巻回する。巻き線治具の外周面には、渡り線を案内するらせん状のガイド溝が形成されており、渡り線は、巻き線治具を巻回しながらコイル間を連結している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-42446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の巻き線機(巻線装置)では、渡り線を案内するらせん状のガイド溝が巻き線治具の外周面に形成されており、渡り線は、巻き線治具を巻回しながらコイル間を連結している。しかし、渡り線を案内するらせん状のガイド溝の長さは、巻き線治具の分割コアの各設置箇所の離間距離や巻き線治具の径によって一意的に決まるので、渡り線の長さを任意に設定することが難しい。例えば、互いに隣接した状態で連結される2つの分割コアに連続巻線する場合のように、分割コア間の渡り線を短く設定したい場合であっても、渡り線の長さを短くすることが難しいので、巻線後に余分な渡り線の後処理が必要となってしまう可能性がある。このため、作業が煩雑になり、生産性が低下してしまう可能性がある。
【0005】
そこで、本開示は、渡り線の長さを適切な長さに設定して、生産性を向上させることが可能な分割コアの巻線装置及び巻線方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様は、巻線が巻回されるティース部を有する少なくとも2つの分割コアに前記巻線を連続的に巻き付ける分割コアの巻線装置であって、前記分割コアを支持可能な第1コア支持部及び第2コア支持部を有し、回転軸を中心として回転可能であり、かつ前記回転軸の軸方向と交叉するスライド方向へスライド移動可能なコア支持部材と、前記コア支持部材側へ前記巻線を供給する巻線供給部材と、前記コア支持部材の前記スライド方向の一側に配置され、前記スライド方向の他側へ向かって開放されるコア収納空間を区画するサイドガイドと、を備え、前記コア支持部材は、前記回転軸を含む巻線位置に前記第1コア支持部を配置した第1状態から、前記一側へのスライド移動によって、前記第2コア支持部を前記巻線位置に配置するとともに、前記第1コア支持部に支持される第1の分割コアを前記コア収納空間へ収納する第2状態にすることが可能であり、前記サイドガイドは、前記第2状態で前記第1の分割コアを覆い、前記第2コア支持部に支持される第2の分割コアへの巻線時に、前記第1の分割コアへの前記巻線の干渉を規制して、前記巻線を前記第2の分割コア側へ案内する。
【0007】
本発明の第2の態様は、上記第1の態様の分割コアの巻線装置であって、前記コア収納空間を前記他側へ開放する開口側の前記サイドガイドの端縁部は、前記開口の内側へ向かって湾曲している。
【0008】
本発明の第3の態様は、上記第1の態様又は上記第2の態様の分割コアの巻線装置であって、前記巻線位置に位置する前記分割コアの前記ティース部の両側に配置されて、前記ティース部の所定位置へ前記巻線を案内するガイドを備え、前記ガイドは、前記コア支持部材とともに回転可能であり、かつ前記コア支持部材に対して前記軸方向に移動可能である。
【0009】
本発明の第4の態様は、上記第3の態様の分割コアの巻線装置であって、前記ガイドは、前記ティース部の前記所定位置に少なくとも前記巻線を挿入可能な隙間を空けるように、前記巻線の巻回状態に応じて前記コア支持部材に対して前記軸方向に移動する。
【0010】
本発明の第5の態様は、巻線が巻回されるティース部を有する少なくとも2つの分割コアに前記巻線を連続的に巻き付ける分割コアの巻線方法であって、コア支持部材の第1コア支持部に第1の分割コアをセットする第1セット工程と、巻線供給部材から供給される前記巻線の端部を前記コア支持部材側へ保持した状態で、前記コア支持部材を前記巻線供給部材に対して回転軸を中心として回転させて、前記巻線を前記第1の分割コアの前記ティース部に巻回する第1巻線工程と、前記巻線が巻回された前記第1の分割コアを、前記回転軸の軸方向と交叉する方向へスライド移動させてサイドガイドに覆われる位置に配置するスライド移動工程と、前記コア支持部材の第2コア支持部に第2の分割コアをセットする第2セット工程と、前記コア支持部材を前記巻線供給部材に対して前記回転軸を中心として回転させて、前記巻線を前記第2の分割コアの前記ティース部に巻回する第2巻線工程と、を含む。
【0011】
本発明の第6の態様は、上記第5の態様の分割コアの巻線方法であって、前記第1巻線工程よりも前に、前記ティース部の所定位置へ前記巻線を案内するガイドを、前記コア支持部材にセットされた前記第1の分割コアの前記ティース部の両側へ移動させる第1ガイド移動工程と、前記第2巻線工程よりも前に、前記ガイドを、前記コア支持部材にセットされた前記第2の分割コアの前記ティース部の両側へ移動させる第2ガイド移動工程と、を含み、前記第1巻線工程では、前記コア支持部材及び前記ガイドを前記巻線供給部材に対して前記回転軸を中心として回転させ、かつ前記ガイドを前記コア支持部材に対して前記回転軸の軸方向に移動させて、前記巻線を前記第1の分割コアの前記ティース部に巻回し、前記第2巻線工程では、前記コア支持部材及び前記ガイドを前記巻線供給部材に対して前記回転軸を中心として回転させ、かつ前記ガイドを前記コア支持部材に対して前記軸方向に移動させて、前記巻線を前記第2の分割コアの前記ティース部に巻回する。
【0012】
本発明の第7の態様は、上記第6の態様の分割コアの巻線方法であって、前記第1巻線工程及び前記第2巻線工程では、前記ティース部の前記所定位置に少なくとも前記巻線を挿入可能な隙間を空けるように、前記ガイドを、前記巻線の巻回状態に応じて前記コア支持部材に対して前記軸方向に移動させる。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、渡り線の長さを適切な長さに設定して、生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】モータの斜視図である。
図2図1のモータの隣接する分割コアの斜視図である。
図3】2つの分割コアの斜視図である。
図4図3のIV-IV矢視断面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る巻線装置の概略図である。
図6】巻線装置の側面図である。
図7】巻線機の斜視図である。
図8】コア支持部材及びサイドガイドの平面図である。
図9図8の斜視図である。
図10】コア支持部材のスライド移動の説明図であって、(a)は第1状態を、(b)は第2状態をそれぞれ示す。
図11図7のXI-XI矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において、一点鎖線CLは巻線装置の巻線位置の分割コアの回転軸(軸心)を示す。また、本実施形態では、巻線位置の分割コアの回転軸CLを、上下方向に延びる回転軸CLとして説明する。
【0016】
図1は、モータ1の斜視図である。図2は、図1のモータ1の隣接する分割コア10a,10bの斜視図である。図3は、2つの分割コア10a,10bの斜視図である。図4は、図3のIV-IV矢視断面図である。
【0017】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る分割コアの巻線装置及び巻線方法は、例えば、ブラシレスモータ(回転電機)1のステータ2の巻線装置及び巻線方法に適用される。ブラシレスモータ1(以下、「モータ1」という。)は、ハウジング(図示省略)に圧入されたステータ2と、ステータ2のモータ径方向の内側に配置されてステータ2に対して回転可能に設けられるロータ3とを有する。モータ1は、永久磁石同期モータであり、例えば、自動車等の車両に搭載されるパワーステアリング装置等(図示せず)の駆動源として用いられる。
【0018】
図1図4に示すように、ステータ2は、ステータコア4と、ステータコア4に装着される絶縁性のインシュレータ5と、コイル6とを備える。本実施形態のステータコア4は、モータ周方向に分割された分割コア方式のステータコア4であって、複数の分割コア10をモータ周方向に環状に連結して形成される。
【0019】
分割コア10は、モータ径方向の外側でモータ周方向に延びる断面略円弧状のヨーク部11と、ヨーク部11の内周面のうちモータ周方向の中間部分(本実施形態では略中央)からモータ径方向の内側へ延びるティース部12と、ティース部12のモータ径方向の内端部からモータ周方向の両側へ延びる鍔部13とを備える。分割コア10は、例えば金属板をモータ軸方向に複数積層して形成され、モータ軸方向に沿って直線状に延びる。
【0020】
ヨーク部11のモータ周方向の両端部には、隣接する分割コア10a,10b同士を連結するための連結部11a,11bが形成される。一方の連結部11aは、モータ周方向の外側へ突出する状態でモータ軸方向に延びる。他方の連結部11bは、モータ周方向の内側へ凹む状態でモータ軸方向に延びる溝状に形成され、上記一方の連結部11aと係合可能である(図2参照)。ヨーク部11のモータ周方向の両端部の連結部11a,11bを、モータ周方向の両側に隣接する他の分割コア10のヨーク部11の連結部11b,11aと係合させることによって、複数の分割コア10を連結してステータコア4を形成することができる。複数の分割コア10をモータ周方向に環状に連結してステータコア4を形成した状態で、ヨーク部11は、環状の磁路となる略円筒状のバックヨークを構成する。
【0021】
ティース部12のモータ周方向の両側には、コイル6を形成する巻線14を巻装するための1対のスロット15が、ヨーク部11とティース部12と鍔部13とによって区画される。すなわち、ヨーク部11のモータ周方向の端部と鍔部13のモータ周方向の端部とを結んだ仮想線(図4における二点鎖線L)より内側がスロット15となる。
【0022】
インシュレータ5は、ティース部12の周囲を覆うように、分割コア10に対して装着される。インシュレータ5は、分割コア10のうちスロット15に面する部分(ヨーク部11のモータ径方向の内側面、ティース部12のモータ周方向の側面、鍔部13のモータ径方向の外側面)を被覆するとともに、ティース部12のモータ軸方向の両側の端部を被覆する。インシュレータ5のうちティース部12のモータ軸方向の端部を被覆する箇所には、モータ径方向の両側からモータ軸方向に突出する壁部7,8が設けられる。インシュレータ5のモータ径方向の両側の壁部7,8の間には、コイル6を形成する巻線14が巻装される。インシュレータ5のモータ軸方向の一側かつモータ径方向の外側の壁部7には、巻線14の巻き始め側の端部14a又は巻き終わり側の端部14bを係止するスリット9(図2参照)が形成される。
【0023】
ティース部12には、巻線14が集中巻きにより複数層巻回される。ティース部12に巻回された巻線14は、コイル6を形成する。巻線14は、巻線装置20によって分割コア10のティース部12に巻回される。本実施形態では、巻線装置20は、隣接する2つの分割コア10a,10bに巻線14を連続的に巻き付ける。巻線14が巻回された2つの分割コア10a,10bの間には、巻線14の渡り線14cが延びている。巻線14の巻線方法については、後述する。
【0024】
図5は、本発明の一実施形態に係る巻線装置20の概略図である。図6は、巻線装置20の側面図である。図7は、巻線機21の斜視図である。図8は、コア支持部材26及びサイドガイド27の平面図である。図9は、図8の斜視図である。図10は、コア支持部材26のスライド移動の説明図であって、(a)は第1状態を、(b)は第2状態をそれぞれ示す。図11は、図7のXI-XI矢視断面図である。なお、図6図10において、Sはコア支持部材26のスライド方向Sを、Wは回転軸CLの軸方向及びスライド方向Sの双方と直交する方向をそれぞれ示す。
【0025】
図5図11に示すように、巻線装置20は、巻線14が巻回されるティース部12を有する少なくとも2つの分割コア10に巻線14を連続的に巻き付ける分割コアの巻線装置20であって、分割コア10を支持して回転させる巻線機21と、巻線機21側へ巻線14を供給するワイヤノズル(巻線供給部材)22とを備える。
【0026】
巻線機21は、分割コア10を回転させる際の回転軸CLの軸方向に互いに対向する2つの駆動ユニット23,24を有する。本実施形態の巻線機21は、下側駆動ユニット23と、下側駆動ユニット23の上方に位置する上側駆動ユニット24とを有する。
【0027】
下側駆動ユニット23は、回転昇降可能な台座部25と、台座部25にスライド移動可能に支持されるコア支持部材26と、コア支持部材26の側方に配置されるサイドガイド27とを備える。
【0028】
台座部25は、下方の回転昇降機構28に支持され、回転軸CLを中心として回転可能、かつ回転軸CLの軸方向に沿って上下に昇降可能となっている。例えば、回転昇降機構28は、モータ(図示省略)の駆動力を用いて台座部25を回転可能に支持してもよい。また、回転昇降機構28は、ラックアンドピニオンや油圧シリンダ等を用いて台座部25を昇降可能に支持してもよい。
【0029】
コア支持部材26は、少なくとも2つ(本実施形態では2つ)の分割コア10を支持するための部材であって、台座部25と共に回転昇降可能に台座部25に支持される。また、コア支持部材26は、台座部25及び後述するサイドガイド27に対して、回転軸CLの軸方向と交叉する方向(本実施形態では、直交する方向S(以下、「スライド方向S」という。))にスライド移動可能となっている。すなわち、コア支持部材26は、回転軸CLを中心として回転可能であり、かつ回転軸CLの軸方向と交叉する方向へスライド移動可能である。コア支持部材26には、ワイヤノズル22から供給される巻線14の巻き始め側の端部14a(以下、「先端部14a」という。)を把持してコア支持部材26側へ固定する把持部26aが設けられる。把持部26aは、油圧供給源(図示省略)からの油圧により作動するようになっている。
【0030】
コア支持部材26は、分割コア10を支持可能な第1コア支持部29及び第2コア支持部30を有する。第1コア支持部29と第2コア支持部30とは、互いにスライド方向Sに互いに離間する位置に設けられる。第1コア支持部29及び第2コア支持部30のそれぞれには、分割コア10を載置してセットすることができる。本実施形態では、第1コア支持部29及び第2コア支持部30には、分割コア10の長手方向(モータ軸方向)が回転軸CLの軸方向及びスライド方向Sの双方と直交する方向W(以下、「幅方向W」という。)に沿った状態で、分割コア10をセットすることができる。なお、以下の説明においては、第1コア支持部29が配置される側をスライド方向Sの奥側(一側)といい、第2コア支持部30が配置される側をスライド方向Sの手前側(他側)という。また、第1コア支持部29にセットされる分割コア10を第1の分割コア10aといい、第2コア支持部30にセットされる分割コア10を第2の分割コア10bという。
【0031】
コア支持部材26は、スライド方向Sの手前側へ移動させた第1状態(図7図9及び図10(a)に示す状態)と、スライド方向Sの奥側へ移動させた第2状態(図10(b)に示す状態)とに切り替えることができる。コア支持部材26のうち、第1状態にした際に回転軸CLを含む巻線位置に位置する部分が第1コア支持部29となり、第2状態にした際に巻線位置に位置する部分が第2コア支持部30となる。すなわち、第2コア支持部30は、コア支持部材26の第1状態と第2状態との間のスライド移動距離(以下、単に「スライド移動距離」という。)に応じて異なる位置となる。第1状態では、第2コア支持部30は、巻線位置よりもスライド方向Sの手前側に位置する。一方、第2状態では、第1コア支持部29は、巻線位置よりもスライド方向Sの奥側の後述するサイドガイド27内に位置する。第1の分割コア10aに巻線を行う際には、コア支持部材26を第1状態にして巻線を行い、第2の分割コア10bに巻線を行う際には、コア支持部材26を第2状態にして巻線を行う。コア支持部材26のスライド移動距離は、設定したい渡り線14cの長さに応じて変更することができる。
【0032】
本実施形態では、コア支持部材26のスライド移動距離は、渡り線14cを最小限に抑えるように、第2状態で第2の分割コア10bに巻線可能な距離を確保した状態で最小限の距離に抑えている。なお、本実施形態では、第2コア支持部30を、コア支持部材26のスライド移動距離に応じて決まる位置としたが、これに限定されるものではない。例えば、コア支持部材26のうちの予め決まっている所定の2箇所を、第1コア支持部29及び第2コア支持部30としてもよい。この場合、第1コア支持部29と第2コア支持部30とのスライド方向Sの離間距離が異なる複数のコア支持部材26を準備しておき、設定したい渡り線14cの長さに応じてコア支持部材26を取り替えてもよい。
【0033】
コア支持部材26をスライド方向Sに移動させる機構は、特に限定されるものではなく、コア支持部材26をスライド方向Sに移動可能な様々な機構を用いることができる。例えば、本実施形態では、コア支持部材26を、コイルスプリング31の復元力(付勢力)と押圧機構(図示省略)とストッパ(図示省略)とによってスライド方向Sに移動させる。コア支持部材26は、第1状態になるように、コイルスプリング31によってスライド方向Sの手前側へ向かって付勢されている。なお、第1状態よりもスライド方向Sの手前側へのコア支持部材26の移動は規制されている。コア支持部材26を第1状態から第2状態にする際には、押圧機構(図示省略)によってコア支持部材26をスライド方向Sの奥側へコイルスプリング31の復元力(付勢力)に抗してスライド移動させる。コア支持部材26は、第2状態になると、ストッパ(図示省略)によってスライド方向Sの手前側への移動が規制される。上記ストッパによるコア支持部材26の移動規制を解除すると、コア支持部材26は、コイルスプリング31の復元力によってスライド方向Sの手前側へスライド移動し、第2状態から第1状態に復帰する。
【0034】
なお、本実施形態では、第1コア支持部29及び第2コア支持部30を有する1つのコア支持部材26としたが、コア支持部材はこれに限定されるものではなく、例えば、1つのコア支持部(第1コア支持部29又は第2コア支持部30)をそれぞれ有する2つのコア支持部材であってもよい。この2つのコア支持部材は、互いに独立して台座部25に対してスライド移動可能であってよい。
【0035】
サイドガイド27は、コア支持部材26のスライド方向Sの奥側に配置され、台座部25に対して固定される。すなわち、サイドガイド27は、台座部25及びコア支持部材26と共に回転昇降可能に台座部25に支持される。また、サイドガイド27は、コア支持部材26のスライド移動時にコア支持部材26に対して移動しない。サイドガイド27は、スライド方向Sの奥側(回転軸CLを中心とした径方向の外側)から回転軸CLの軸方向の一側(上側)へ傾斜して延びる上板部27aと、上板部27aの幅方向Wの両側から、幅方向Wの外側かつ下方へ傾斜して延びる1対の側板部27b,27bとを有する。サイドガイド27の内側には、第2状態で第1コア支持部29の第1の分割コア10aを収納可能なコア収納空間32が区画される。
【0036】
サイドガイド27の上板部27aは、巻線位置の分割コア10よりも上方に配置され、コア収納空間32の上方及びスライド方向Sの奥側を区画する。上板部27aのスライド方向Sの手前側の端縁は、上面視において、幅方向Wに直線状に延びる。
【0037】
サイドガイド27の1対の側板部27b,27bは、巻線位置の分割コア10よりも幅方向Wの外側に配置され、コア収納空間32の幅方向Wの両側を区画する。1対の側板部27b,27bのスライド方向Sの手前側の端縁は、側面視(幅方向Wから視た状態)において、上板部27aのスライド方向Sの手前側の端縁の幅方向Wの両端から連続してスライド方向Sの手前側の下方へ延びている。
【0038】
サイドガイド27は、コア収納空間32をスライド方向Sの手前側へ向かって開放する開口33を有する。開口33は、巻線位置の分割コア10からスライド方向Sの奥側へ離間した位置に配置される。開口33は、コア支持部材26に支持された第1の分割コア10aのスライド方向Sへの移動を許容する大きさに形成される。開口33側(スライド方向Sの手前側)のサイドガイド27の端縁部34の上面は、開口33に向かって縮径するように、開口33の内側へ向かって湾曲している(図11参照)。
【0039】
サイドガイド27は、第2状態のコア支持部材26に支持された第1の分割コア10aを、上方、幅方向Wの両側、及びスライド方向Sの奥側から覆う(図10(b)参照)。サイドガイド27の上面35(上板部27a及び1対の側板部27b,27bの上面)は、第1状態の第1の分割コア10aへの巻線時に、ワイヤノズル22から供給される巻線14をスライド方向Sの手前側へ案内する。また、サイドガイド27の上面35は、第2状態の第2の分割コア10bへの巻線時に、ワイヤノズル22から供給される巻線14の第1の分割コア10aへの干渉を規制して、巻線14を第2コア支持部30側へ案内する。
【0040】
図9及び図10に示すように、上側駆動ユニット24は、コア保持部材36と、1対のトラバースガイド(ガイド)37a,37aとを有する。上側駆動ユニット24は、上方の回転昇降機構(図示省略)に支持され、下側駆動ユニット23と同期した状態で回転軸CLを中心として回転可能、かつ回転軸CLの軸方向に沿って上下に昇降可能となっている。回転昇降機構としては、下側駆動ユニット23と同様に、モータ(図示省略)の駆動力を用いた回転可能な機構であってもよいし、また、ラックアンドピニオンや油圧シリンダ等を用いた昇降可能な機構であってもよい。
【0041】
コア保持部材36は、巻線時に分割コア10をコア支持部材26側へ保持する部材であって、巻線位置の上方に配置され、上側駆動ユニット24の上記回転昇降機構によって回転昇降可能となっている。コア保持部材36は、巻線時に下方へ移動することによって、巻線位置の分割コア10を下方のコア支持部材26側へ押圧し、コア支持部材26との間に分割コア10を挟持する。これにより、コア保持部材36は、分割コア10をコア支持部材26側へ固定的に保持する。
【0042】
1対のトラバースガイド37a,37aは、巻線位置の分割コア10のティース部12の所定位置に巻線14を案内するための部材であって、上側駆動ユニット24の上記回転昇降機構によって回転昇降可能となっている。また、トラバースガイド37a,37aは、上側駆動ユニット24の上記回転昇降機構とは異なる他の機構によって、図10(b)に二点鎖線で示すように、コア保持部材36に対して昇降可能、かつ互いに近接又は離間可能となっている。トラバースガイド37a,37aは、コア保持部材36が巻線位置の分割コア10を保持している状態で、分割コア10のティース部12のモータ周方向の両側に配置される。トラバースガイド37a,37aは、巻線位置の分割コア10のティース部12の所定位置に巻線14を案内するための傾斜面38を有する。トラバースガイド37a,37aの傾斜面38は、上方から下方へ互いに近接する方向へ傾斜した状態で幅方向Wに沿って延びる。巻線14は、トラバースガイド37a,37aの傾斜面38に沿って下方へ摺動し、ティース部12の所定位置に案内される。
【0043】
トラバースガイド37a,37aは、コントローラ(図示省略)に制御されて、ティース部12への巻線14の巻回状態に応じてコア支持部材26及びコア保持部材36に対して上下移動(回転軸CLの軸方向に移動)する。これにより、ティース部12に対する巻線14の案内位置を変化させる。本実施形態では、トラバースガイド37a,37aは、ティース部12への巻線14の案内位置(上記所定位置)に少なくとも巻線14を挿入可能な空間(例えば、巻線14の直径よりも僅かに大きい幅の空間)を空けるように、巻線14の巻回状態に応じてコア支持部材26及びコア保持部材36に対して回転軸CLの軸方向に移動する。なお、ティース部12への巻線14の巻回状態は、巻線開始からの分割コア10の回転角度(回転回数)で管理することができる。巻線開始からの分割コア10の回転角度(回転回数)は、下側駆動ユニット23の回転昇降機構28及び上側駆動ユニット24の回転昇降機構の動作状態により認識することができる。このように、分割コア10の回転角度(回転回数)は、回転昇降機構28等の動作により規定されるため、コントローラ(図示省略)は、巻線14の巻回状態をリアルタイムで把握できる。
【0044】
ワイヤノズル22は、巻線14を巻線機21側へ供給する部材であって、巻線機21の巻線位置に対して、回転軸CLの軸方向と交叉する方向の一側に配置される。例えば、ワイヤノズル22は、リールRからの巻線14を巻線機21側へ供給する。ワイヤノズル22は、サイドガイド27の上端と下端との間の高さ位置に配置される。分割コア10を回転させる前の状態では、ワイヤノズル22は、巻線位置の分割コア10の幅方向Wの一側に配置される。ワイヤノズル22は、分割コア10の回転に対して回転しないように巻線装置20に設けられる。ワイヤノズル22から供給される巻線14は、巻線位置の分割コア10の回転昇降によって、ティース部12に巻回される。
【0045】
次に、本発明の一実施形態に係る分割コアの巻線方法について説明する。本実施形態に係る分割コアの巻線方法は、巻線14が巻回されるティース部12を有する少なくとも2つの分割コア10に巻線14を連続的に巻き付ける分割コアの巻線方法であって、第1セット工程と、第1ガイド移動工程と、第1巻線工程と、スライド移動工程と、第2セット工程と、第2ガイド移動工程と、第2巻線工程とを含む。
【0046】
第1セット工程では、コア支持部材26の第1コア支持部29に第1の分割コア10aをセットする。具体的には、先ず、コア支持部材26を第1状態にして、巻線位置の第1コア支持部29に第1の分割コア10aを載置する(図8参照)。第1の分割コア10aは、ヨーク部11を下方(鍔部13を上方)にし、ティース部12が回転軸CLの軸方向に沿って起立する状態で第1コア支持部29に載置される。コア支持部材26への第1の分割コア10aの載置は、作業者の手作業、又は自動供給装置(図示せず)の動作により行われる。次に、上側駆動ユニット24を下降させて、コア保持部材36によって、巻線位置の第1の分割コア10aをコア支持部材26との間に挟持し、第1の分割コア10aをコア支持部材26側へ固定的に保持する。これにより、第1状態のコア支持部材26の第1コア支持部29に第1の分割コア10aがセットされる。
【0047】
第1ガイド移動工程では、第1セット工程においてセットされた第1の分割コア10aのティース部12の回転軸CLの軸方向と交叉する方向(本実施形態では、スライド方向S)の両側へ1対のトラバースガイド37a,37aを移動させる(図9参照)。トラバースガイド37a,37aの先端(下端)は、ティース部12の側面に接触しない状態で、ティース部12の両側のスロット15内に配置される。このとき、トラバースガイド37a,37aの先端と、その下方に位置する第1の分割コア10aのヨーク部11側のインシュレータ5との間には、巻線14を挿入可能な隙間が空いている。なお、第1ガイド移動工程は、第1セット工程と同時に行ってもよい。
【0048】
第1巻線工程は、第1セット工程の後(本実施形態では、第1ガイド移動工程の後)、に行われる。第1巻線工程では、巻線14の先端部14aをコア支持部材26側へ保持した状態で、コア支持部材26、サイドガイド27、及びトラバースガイド37a,37aをワイヤノズル22に対して回転軸CLを中心として回転させ、かつトラバースガイド37a,37aをコア支持部材26に対して回転軸CLの軸方向に移動させて、巻線14を第1の分割コア10aのティース部12に巻回する(図10(a)参照)。具体的には、先ず、ワイヤノズル22から供給される巻線14を、第1の分割コア10aの長手方向に沿うように引き出して、巻線14の先端部14aを、コア支持部材26側の把持部26aで把持してコア支持部材26側へ固定する。これにより、巻線14の先端部14aがコア支持部材26側へ保持される。この際のワイヤノズル22から把持部26aへの巻線14の引き出しは、作業者の手作業、又は自動供給装置(図示せず)の動作により行われる。次に、下側駆動ユニット23及び上側駆動ユニット24を回転昇降機構28等によって回転昇降させる。この下側駆動ユニット23及び上側駆動ユニット24の回転昇降に伴って、コア支持部材26及びトラバースガイド37a,37aがワイヤノズル22に対して回転軸CLを中心として回転するとともに、ワイヤノズル22に対して昇降(上下に往復移動)する。これにより、巻線位置の第1の分割コア10aが、ワイヤノズル22に対して回転昇降する。本実施形態では、巻線位置の第1の分割コア10aを、上方から視た状態で時計回りに回転させる。ワイヤノズル22に対するコア支持部材26の回転によって、巻線14がワイヤノズル22から引き出されて、第1の分割コア10aのティース部12のスロット15に巻回される。巻線14は、サイドガイド27の上面35に当接した際に、サイドガイド27の上面35に沿って摺動し、スライド方向Sの手前側の第1の分割コア10a側へ案内される。このとき、ティース部12の巻線14の案内位置(所定位置)に少なくとも巻線14を挿入可能な隙間を空けるように、トラバースガイド37a,37aを、巻線14の巻回状態に応じてコア支持部材26に対して回転軸CLの軸方向(本実施形態では上方)に移動させる。これにより、巻線14は、トラバースガイド37a,37aの傾斜面38に沿って下方へ摺動し、ティース部12の所定位置に案内される。
【0049】
なお、1対のトラバースガイド37a,37aを、互いに独立した状態で交互に移動させてもよいし、あるいは同時に移動させてもよい。また、巻線14を第1の分割コア10aのティース部12の上方から下方へ巻回する際には、トラバースガイド37a,37aを使用しなくてもよい。また、本実施形態では、巻線14の先端部14aをコア支持部材26の把持部26aで保持したが、これに限定されるものではない。巻線14の先端部14aをコア支持部材26側へ保持するとは、コア支持部材26を回転昇降移動又はスライド移動させた際にコア支持部材26と共に移動する側に巻線14の先端部14aを保持することを意味する。このため、例えば、巻線14の先端部14aを、コア支持部材26と共に移動(回転昇降移動及びスライド移動)する第1の分割コア10aのインシュレータ5のスリット9に保持することによって、巻線14の先端部14aを第1の分割コア10aを介してコア支持部材26側へ保持してもよい。
【0050】
スライド移動工程は、第1巻線工程において第1の分割コア10aへの巻線14の巻回が完了した後に行われる。スライド移動工程では、巻線14の巻回が完了した第1の分割コア10aを、スライド方向Sの奥側へ移動させて、サイドガイド27に覆われる位置に配置する(図10(b)参照)。具体的には、第1巻線工程において第1の分割コア10aへの巻線14の巻回が完了した後、上側駆動ユニット24を上昇させて、コア保持部材36による第1の分割コア10aの保持を解除するとともに、トラバースガイド37a,37aを第1の分割コア10aよりも上方へ移動させる。次に、コア支持部材26を第1状態からスライド方向Sの奥側へ移動させて第2状態にし、第1の分割コア10aをサイドガイド27のコア収納空間32に収納する。
【0051】
第2セット工程は、スライド移動工程の後に行われる。第2セット工程では、第2状態のコア支持部材26の第2コア支持部30に第2の分割コア10bをセットする。具体的には、先ず、第2状態のコア支持部材26の巻線位置の第2コア支持部30に第2の分割コア10bを載置する。第2の分割コア10bは、ヨーク部11を下方(鍔部13を上方)にし、ティース部12が回転軸CLの軸方向に沿って起立する状態で第2コア支持部30に載置される。コア支持部材26への第2の分割コア10bの載置は、作業者の手作業、又は自動供給装置(図示せず)の動作により行われる。次に、上側駆動ユニット24を下降させて、コア保持部材36によって、巻線位置の第2の分割コア10bをコア支持部材26との間に挟持し、第2の分割コア10bをコア支持部材26側へ固定的に保持する。これにより、第2状態のコア支持部材26の第2コア支持部30に第2の分割コア10bがセットされる。
【0052】
第2ガイド移動工程では、第2セット工程においてセットされた第2の分割コア10bのティース部12の回転軸CLの軸方向と交叉する方向(本実施形態では、スライド方向S)の両側へ1対のトラバースガイド37a,37aを移動させる(図10(b)参照)。1対のトラバースガイド37a,37aの配置位置は、上記第1ガイド移動工程と同様であるので、その説明を省略する。なお、第2ガイド移動工程は、第2セット工程と同時に行ってもよい。
【0053】
第2巻線工程は、第2セット工程の後(本実施形態では、第2ガイド移動工程の後)、に行われる。第2巻線工程では、コア支持部材26、サイドガイド27、及びトラバースガイド37a,37aをワイヤノズル22に対して回転軸CLを中心として回転させ、かつトラバースガイド37a,37aをコア支持部材26に対して回転軸CLの軸方向に移動させて、巻線14を第2の分割コア10bのティース部12に巻回する。具体的には、下側駆動ユニット23及び上側駆動ユニット24を回転昇降機構28等によって回転昇降させることによって、第1巻線工程と同様に、コア支持部材26、サイドガイド27、及びトラバースガイド37a,37aを、ワイヤノズル22に対して回転昇降させる。これにより、巻線位置の第2の分割コア10bが、ワイヤノズル22に対して回転昇降する。本実施形態では、巻線位置の第2の分割コア10bを、第1巻線工程とは反対方向(上方から視た状態で反時計回り)に回転させる。このワイヤノズル22に対するコア支持部材26、サイドガイド27、及びトラバースガイド37a,37aの回転によって、巻線14がワイヤノズル22から引き出されて、第2の分割コア10bのティース部12のスロット15に巻回される。サイドガイド27の上面35は、ワイヤノズル22から供給される巻線14の第1の分割コア10aへの干渉を規制して、巻線14を第2コア支持部30側へ案内する。なお、トラバースガイド37a,37aの配置位置、及び移動は、第1巻線工程と同様であるので、その説明を省略する。
【0054】
第2の分割コア10bへの巻線14の巻回が完了した後(第2巻線工程の後)、上側駆動ユニット24を上昇させて、コア保持部材36による第2の分割コア10bの保持を解除するとともに、トラバースガイド37a,37aを第2の分割コア10bよりも上方へ移動させる。次に、コア支持部材26を第2状態からスライド方向Sの手前側へ移動させて第1状態に戻す。これにより、巻線14を連続的に巻き付けた巻き付け完了後の2つの分割コア10a,10bを取り外すことができる。なお、巻き付け完了後の2つの分割コア10a,10bの巻線装置20からの取り外しは、作業者の手作業、又は自動取り外し装置(図示せず)の動作により行われる。
【0055】
上記のように構成された巻線装置20では、コア支持部材26は、回転軸CLの軸方向と交叉するスライド方向Sへスライド移動可能であり、回転軸CLを含む巻線位置に第1コア支持部29を配置した第1状態から、スライド方向Sの奥側へのスライド移動によって、第2コア支持部30を巻線位置に配置する。このため、コア支持部材26を第1状態にして、第1の分割コア10aに巻線14を巻回した後、第1の分割コア10aを取り外すことなく、コア支持部材26を第2状態にして、第2の分割コア10bに連続的に巻線14を巻き付けることができる。
【0056】
また、第2状態では、第1コア支持部29に支持される第1の分割コア10aをサイドガイド27内のコア収納空間32へ収納する。そして、サイドガイド27の上面35は、ワイヤノズル22から供給される巻線14の第1の分割コア10aへの干渉を規制して、巻線14を第2コア支持部30側へ案内する。このため、第2の分割コア10bへの巻線時に、巻線14を第1の分割コア10aへ干渉させることなく第2の分割コア10b側へ好適に案内することができるので、2つの分割コア10a,10bに巻線14を連続的に巻き付けることができる。
【0057】
また、コア支持部材26のスライド移動距離は、設定したい渡り線14cの長さに応じて変更することができる。本実施形態では、コア支持部材26のスライド移動距離は、渡り線14cを最小限に抑えるように、第2状態で第2の分割コア10bに巻線可能な距離を確保した状態で最小限の距離に抑えている。このため、余分な渡り線14cの発生を抑えることができるので、2つの分割コア10a,10bに巻線14を連続的に巻き付けた後の余分な渡り線14cの後処理をしなくてもよく、生産性を向上させることができる。
【0058】
また、コア支持部材26のスライド移動距離は、設定したい渡り線14cの長さに応じて変更することができる。このため、例えば、モータ1のモータ周方向に離間する位置に配置される2つの分割コア10a,10bに巻線14を連続的に巻き付ける場合には、第1状態から第2状態へのコア支持部材26のスライド移動量を適切に設定して、渡り線14cの長さを必要な長さに設定することができる。
【0059】
このように、本実施形態によれば、渡り線14cの長さを適切な長さに設定して、生産性を向上させることができる。
【0060】
また、サイドガイド27の開口33側の端縁部34は、開口33に向かって縮径するように、開口33の内側へ向かって湾曲している。このため、分割コア10への巻線時に巻線14がサイドガイド27の上面35に沿って摺動して開口33側の端縁部34を通過する際に、巻線14に曲げ癖が付いてしまうことを防止又は抑制することができる。
【0061】
また、巻線位置の分割コア10のティース部12の所定位置へ巻線14を案内するトラバースガイド37a,37aを備えるので、巻線時に巻線14をティース部12の所望の位置へ案内することができ、巻線14を密に巻回することができる。また、本実施形態では、トラバースガイド37a,37aは、ティース部12への巻線14の案内位置(上記所定位置)に少なくとも巻線14を挿入可能な空間(例えば、巻線14の直径よりも僅かに大きい幅の空間)を空けるように、巻線14の巻回状態に応じてコア支持部材26及びコア保持部材36に対して回転軸CLの軸方向に移動する。このため、巻線14を確実に密に巻回することができるので、ティース部12に巻回されている巻線14の密度(占積率)を向上させることができる。
【0062】
上記の分割コアの巻線方法では、第1の分割コア10aへの巻線14の巻回が完了した後(第1巻線工程の後)、スライド移動工程を行い、第1の分割コア10aを、スライド方向Sの奥側へ移動させて、サイドガイド27に覆われる位置に配置する。その後、巻線位置に第2の分割コア10bをセットして(第2セット工程)、巻線14を第2の分割コア10bのティース部12に巻回する(第2巻線工程)。このため、第1の分割コア10aに巻線14を巻回した後、第1の分割コア10aを取り外すことなく、第2の分割コア10bに連続的に巻線14を巻き付けることができる。
【0063】
また、スライド移動工程において、第1の分割コア10aを、スライド方向Sの奥側へ移動させて、サイドガイド27に覆われる位置に配置するので、第2の分割コア10bへの巻線時に、第1の分割コア10aへの巻線14の干渉をサイドガイド27によって防止して、巻線14を第2の分割コア10b側へ好適に案内することができる。このため、2つの分割コア10a,10bに巻線14を連続的に巻き付けることができる。
【0064】
また、スライド移動工程において、第1の分割コア10aを、スライド方向Sの奥側へ移動させるので、渡り線14cの長さを第1の分割コア10aのスライド移動量によって規定することができる。このため、渡り線14cの長さを適切に設定することができるので、渡り線14cの長さに関する後処理(例えば、余分な渡り線14cの後処理)をしなくてもよく、生産性を向上させることができる。
【0065】
また、第1巻線工程及び第2巻線工程では、トラバースガイド37a,37aをコア支持部材26に対して回転軸CLの軸方向に移動させて、巻線14を巻線位置の分割コア10のティース部12に巻回する。このように、ティース部12の所定位置へ巻線14を案内するトラバースガイド37a,37aを使用して巻線を行うので、上述したように巻線14を密に巻回することができる。また、第1巻線工程及び第2巻線工程では、ティース部12への巻線14の案内位置(上記所定位置)に少なくとも巻線14を挿入可能な空間(例えば、巻線14の直径よりも僅かに大きい幅の空間)を空けるように、トラバースガイド37a,37aを、巻線14の巻回状態に応じて回転軸CLの軸方向に移動させる。このため、巻線14を確実に密に巻回することができるので、ティース部12に巻回されている巻線14の占積率を向上させることができる。
【0066】
なお、本実施形態では、巻線位置の分割コア10の回転軸CLを、上下方向に延びる回転軸CLとしたが、これに限定されるものではなく、任意の方向に設定することができる。
【0067】
また、本実施形態では、巻線装置20によって、隣接する分割コア10a,10bに巻線14を連続的に巻き付けたが、これに限定されるものではない。例えば、巻線装置20によって、モータ周方向に互いに離間する位置に配置される分割コア10a,10bに巻線14を連続的に巻き付けてもよい。
【0068】
また、本実施形態では、巻線装置20によって、2つの分割コア10a,10bに巻線14を連続的に巻き付けたが、これに限定されるものではなく、例えば、3つ以上の分割コア10に巻線14を連続的に巻き付けてもよい。
【0069】
また、本実施形態では、分割コア10を、分割コア10の長手方向が幅方向Wに沿った状態で、第1コア支持部29及び第2コア支持部30にセットしたが、これに限定されるものではない。例えば、分割コア10を、分割コア10の長手方向がスライド方向Sに沿った状態で、第1コア支持部29及び第2コア支持部30にセットしてもよい。この場合、サイドガイド27は、スライド方向Sに長尺の形状となってもよい。
【0070】
また、本実施形態では、本開示に係る分割コアの巻線装置及び巻線方法を、自動車等の車両に搭載されるパワーステアリング装置等の駆動源として用いられるモータ(回転電機)1の分割コアの巻線装置及び巻線方法に適用したが、これに限定されるものではなく、様々な回転電機の分割コアの巻線装置及び巻線方法に適用することができる。例えば、本開示に係る分割コアの巻線装置及び巻線方法を、他の用途のモータ(回転電機)や、あるいはオルタネータ(回転電機)等にも適用することができる。
【0071】
以上、本発明について、上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明は上記実施形態の内容に限定されるものではなく、当然に本発明を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0072】
10:分割コア
10a:第1の分割コア
10b:第2の分割コア
12:ティース部
14:巻線
20:巻線装置
22:ワイヤノズル(巻線供給部材)
26:コア支持部材
27:サイドガイド
29:第1コア支持部
30:第2コア支持部
32:コア収納空間
33:サイドガイドの開口
34:サイドガイドの端縁部
37a:トラバースガイド(ガイド)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11