(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128137
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】車両用ドアラッチ装置
(51)【国際特許分類】
E05B 79/08 20140101AFI20230907BHJP
E05B 85/26 20140101ALI20230907BHJP
E05B 81/06 20140101ALI20230907BHJP
E05B 85/02 20140101ALI20230907BHJP
【FI】
E05B79/08
E05B85/26
E05B81/06
E05B85/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022032274
(22)【出願日】2022-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000148896
【氏名又は名称】三井金属アクト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083389
【弁理士】
【氏名又は名称】竹ノ内 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100198317
【弁理士】
【氏名又は名称】横堀 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】大川 慎太郎
【テーマコード(参考)】
2E250
【Fターム(参考)】
2E250AA21
2E250HH01
2E250LL01
2E250PP01
2E250PP02
2E250PP04
2E250PP05
2E250QQ04
2E250RR11
(57)【要約】
【課題】車両用ドアラッチ装置において、アクチュエータアッセンブリのハウジングのみを変更することで、アクチュエータ機構部の共用化を可能にする。
【解決手段】ハウジング51、510は、ボディ本体31、310の裏面側を覆うボディ覆い部52a、520aと、ボディ31、310の裏面に対して略直角で、かつ配置面52c、520cにアクチュエータ機構部が配置されたアクチュエータ収容部52b、520bとを有する。出力レバー56は、アクチュエータ収容部52b、520bに軸56aにより枢支されると共に、自体の解除作動に基づいて上下動する出力部56cを有する。入力レバー36、360は、ボディ本体31、310に軸45、450により枢支されると共に、出力レバー56の出力部56cに対して交差するように延伸する端部に入力部36c、360cを有して、入力部36c、360cに出力レバー56の解除作動に基づいて出力部56cが当接することにより解除作動する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボディと、前記ボディに左右方向を向くラッチ軸により枢支されて、前方から進入するストライカと噛合可能なストライカ噛合溝を有するラッチと、前記ボディに左右方向を向くラチェット軸により枢支されて、前記ラッチにおける前記ストライカ噛合溝のオープン方向側に設けられる前歯フルラッチ係合部、または前記ラッチにおける前記ストライカ噛合溝のクローズ方向側に設けられる奥歯フルラッチ係合部に係合可能なラチェットと、前記ボディに枢支されて自体の解除作動を前記ラチェットに伝達可能な入力レバーとを有する噛合アッセンブリと、
前記ボディに取り付けられるハウジングと、前記ハウジングに配置されて、モータ及び当該モータの動力を前記入力レバーに伝達可能な出力レバーを含むアクチュエータ機構部とを有するアクチュエータアッセンブリと、を備え、
前記ハウジングは、前記ラチェットが前記ラッチの前記前歯フルラッチ係合部に係合する前歯噛合方式の前記噛合アッセンブリ、及び前記ラチェットが前記ラッチの前記奥歯フルラッチ係合部に係合する奥歯噛合方式の前記噛合アッセンブリに選択的に取付可能であって、かつ前記ボディを覆うボディ覆い部と、前記ボディの裏面に対して略直角で、かつ前面を向く配置面に前記アクチュエータ機構部が配置されたアクチュエータ収容部とを有し、
前記出力レバーは、前記アクチュエータ収容部に前後方向を向く第1軸により枢支されると共に、自体の解除作動に基づいて上下動する出力部を有し、
前記入力レバーは、前記ボディの裏面側に左右方向を向く第2軸により枢支されると共に、前記出力レバーの前記出力部に対して交差するように延伸する端部に入力部を有して、当該入力部に前記出力レバーの解除作動に基づいて前記出力部が当接することにより解除作動することを特徴とする車両用ドアラッチ装置。
【請求項2】
前記出力レバーの前記出力部を、前記入力レバーの前記入力部よりも下方に偏位した位置に設けたことを特徴とする請求項1記載の車両用ドアラッチ装置。
【請求項3】
前記出力レバーの前記出力部は、後方へ向けて折曲形成され、
前記入力レバーの前記入力部は、前記出力部に交差するように前記出力部に向けて折曲形成されることを特徴とする請求項1または2記載の車両用ドアラッチ装置。
【請求項4】
前記ボディの裏面側に、前記第2軸により前記入力レバーと独立して回動可能に枢支されると共に、前記入力レバーの解除作動に基づいて解除作動することにより前記ラッチに設けたサードラッチ係合部が当接可能な待機位置から当接不能な退避位置に移動可能なストッパ部を有するストッパレバーを設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の車両用ドアラッチ装置。
【請求項5】
前記ラチェットは、前記ボディに左右方向を向く軸廻りに回動可能に支持される第1ラチェットと、前記第1ラチェットに左右方向を向く軸廻りに回動可能に支持されて、前記ラッチの前記フルラッチ係合部に係合可能な第2ラチェットと、を含むことを特徴とする請求項1または2記載の車両用ドアラッチ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のドアに装着される車両用ドアラッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、車両用ドアラッチ装置において、モータの動力によりドアの解除操作を行うようにした電動解除方式にあっては、ドアの閉鎖時に車体側のストライカと噛合可能なラッチ、当該ラッチに係合することでラッチのオープン方向への回動を阻止してドアを閉鎖位置に保持するラチェットを含む噛合機構、及び当該噛合機構を収容するボディを有する噛合アッセンブリと、ボディに取り付けられるハウジング、及び当該ハウジングに収容されると共にモータを含むアクチュエータ機構部を有するアクチュエータアッセンブリとを備える。そして、電動によりドアの解除を行う場合には、アクチュエータ機構部のモータの動力により、アクチュエータ機構部の出力部を作動させる。出力部が作動すると、出力部が噛合アッセンブリ側の入力部に対して当接して、ラチェットを解除作動させてドアの解除を行う。
【0003】
さらに、車両用ドアラッチ装置においては、噛合アッセンブリにおける噛合機構の噛合方式が前歯噛合方式と奥歯噛合方式とがある。各カーメーカは、ドアに対するドアラッチ装置の取付位置に対応させて、前歯噛合方式又は後歯噛合方式のいずれかを採用する。
【0004】
前歯噛合方式とは、特許文献1に開示されているように、ラッチ(特許文献1においては、ラッチ部材10)のフルラッチ位置(同じく、
図3(b)に示す位置)において、ラチェット(同じく、ラチェット20)がラッチのストライカ噛合溝(同じく、符号無し)よりもオープン方向(同じく、
図3(b)において時計方向)側に設けたフルラッチ係合部(同じく、フック部12)に係合する方式である。
【0005】
奥歯噛合方式とは、特許文献2に開示されているように、ラッチ(特許文献2においては、ratchet 15)のフルラッチ位置(同じく、FIG . 2 , 5に示す位置)において、ラチェット(同じく、primary pawl 25)がラッチのストライカ噛合溝(同じく、seat 18)よりもクローズ方向(同じく、反時計方向)側に設けたフルラッチ係合部(同じく、shoulder 22)に係合する方式である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-075942号公報
【特許文献2】アメリカ特許第9476230B2公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の前歯噛合方式と奥歯噛合方式とを対比すると、前歯噛合方式におけるラチェットの回転中心は、奥歯噛合方式におけるラチェットの回転中心よりも前方(ストライカが進入して来る方)に位置する。したがって、ラチェットを解除作動させるための入力レバーの回転中心においても、前歯噛合方式の方を奥歯噛合方式よりも前方に配置せざるを得ない。このため、アクチュエータアッセンブリ側において、モータの動力を入力レバーに伝達するための出力部の位置においても、前歯噛合方式と奥歯噛合方式とで互いに相違する。この結果、前歯噛合方式と奥歯噛合方式とで、アクチュエータ機構部を含むアクチュエータアッセンブリ全体を共用化することは困難である。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑み、前歯噛合方式や奥歯噛合方式のように、ラチェットの回転中心が互いに相違する噛合方式を採用した噛合アッセンブリであっても、アクチュエータアッセンブリにおけるハウジングのみを各噛合方式に合わせて変更することで、アクチュエータ機構部の共用化を可能にした車両用ドアラッチ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明は、車両用ドアラッチ装置において、ボディと、前記ボディに左右方向を向くラッチ軸により枢支されて、前方から進入するストライカと噛合可能なストライカ噛合溝を有するラッチと、前記ボディに左右方向を向くラチェット軸により枢支されて、前記ラッチにおける前記ストライカ噛合溝のオープン方向側に設けられる前歯フルラッチ係合部、または前記ラッチにおける前記ストライカ噛合溝のクローズ方向側に設けられる奥歯フルラッチ係合部に係合可能なラチェットと、前記ボディに枢支されて自体の解除作動を前記ラチェットに伝達可能な入力レバーとを有する噛合アッセンブリと、前記ボディに取り付けられるハウジングと、前記ハウジングに配置されて、モータ及び当該モータの動力を前記入力レバーに伝達可能な出力レバーを含むアクチュエータ機構部とを有するアクチュエータアッセンブリと、を備え、
前記ハウジングは、前記ラチェットが前記ラッチの前記前歯フルラッチ係合部に係合する前歯噛合方式の前記噛合アッセンブリ、及び前記ラチェットが前記ラッチの前記奥歯フルラッチ係合部に係合する奥歯噛合方式の前記噛合アッセンブリに選択的に取付可能であって、かつ前記ボディを覆うボディ覆い部と、前記ボディの裏面に対して略直角で、かつ前面を向く配置面に前記アクチュエータ機構部が配置されたアクチュエータ収容部とを有し、前記出力レバーは、前記アクチュエータ収容部に前後方向を向く第1軸により枢支されると共に、自体の解除作動に基づいて上下動する出力部を有し、前記入力レバーは、前記ボディの裏面側に左右方向を向く第2軸により枢支されると共に、前記出力レバーの前記出力部に対して交差するように延伸する端部に入力部を有して、当該入力部に前記出力レバーの解除作動に基づいて前記出力部が当接することにより解除作動することを特徴とする。
【0010】
好ましくは、前記出力レバーの前記出力部を、前記入力レバーの前記入力部よりも下方に偏位した位置に設ける。
【0011】
好ましくは、前記出力レバーの前記出力部は、後方へ向けて折曲形成され、前記入力レバーの前記入力部は、前記出力部に交差するように前記出力部に向けて折曲形成される。
【0012】
好ましくは、前記ボディの裏面側に、前記第2軸により前記入力レバーと独立して回動可能に枢支されると共に、前記入力レバーの解除作動に基づいて解除作動することにより前記ラッチに設けたサードラッチ係合部が当接可能な待機位置から当接不能な退避位置に移動可能なストッパ部を有するストッパレバーを設ける。
【0013】
好ましくは、前記ラチェットは、前記ボディに左右方向を向く軸廻りに回動可能に支持される第1ラチェットと、前記第1ラチェットに左右方向を向く軸廻りに回動可能に支持されて、前記ラッチの前記フルラッチ係合部に係合可能な第2ラチェットと、を含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、噛合アッセンブリの入力部とアクチュエータアッセンブリの出力部と互いに交差するように設けたことにより、互いに噛合方式が異なる噛合アッセンブリ間で、ハウジングを変更するのみで、ハウジング内に収容されるアクチュエータ機構部の共用化を可能にして、コスト低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る一実施形態の車両用ドアラッチ装置の斜視図である。
【
図5】噛合アッセンブリの裏面側から見た斜視図である。
【
図6】噛合アッセンブリの裏面側から見た分解斜視図である。
【
図7】噛合アッセンブリの右側から見た正面図である。
【
図8】噛合アッセンブリの左側から見た裏面図である。
【
図9】オープン状態にあるときの要部の正面図である。
【
図10】ハーフラッチ状態にあるときの要部の正面図である。
【
図11】フルラッチ状態にあるときの要部の正面図である。
【
図12】サードラッチ状態にあるときの要部の正面図である。
【
図13】フルラッチ状態にあるときの要部の裏面図である。
【
図14】解除作動状態にあるときの要部の裏面図である。
【
図15】アクチュエータアッセンブリの分解斜視図である。
【
図16】アクチュエータアッセンブリの前方から見た内部を示す側面図である。
【
図17】一実施形態に係る車両ドアラッチ装置の概略底面図である。
【
図18】本発明に係る他の実施形態の車両用ドアラッチ装置の斜視図である。
【
図19】アクチュエータアッセンブリの分解斜視図である。
【
図21】オープン状態にあるときの要部の正面図である。
【
図22】ハーフ状態にあるときの要部の正面図である。
【
図23】フルラッチ状態にあるときの要部の正面図である。
【
図24】サードラッチ状態にあるときの要部の正面図である。
【
図25】解除作動状態にあるときの要部の正面図である。
【
図26】他の実施形態に係る車両用ドアラッチ装置の概略底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の本実施形態を図面に基づいて説明する。
本実施形態に係る車両用ドアラッチ装置は、車体側のストライカに噛合することでドアを閉鎖状態に保持するための噛合機構を含む噛合アッセンブリと、噛合アッセンブリに組み付けられるハウジングにモータを含むアクチュエータ機構部を配置したアクチュエータアッセンブリとを備える構成を前提として、噛合アッセンブリを前歯噛合方式または奥歯噛合方式のいずれを採用した場合でも、アクチュエータアッセンブリにおけるアクチュエータ機構部の共用化を可能にしたものである。
【0017】
先ず、前歯噛合方式と奥歯噛合方式とに係る構成の相違を明確にするため、最初に
図1~
図17に基づいて、奥歯噛合方式を採用した一実施形態の車両用ドアラッチ装置1について説明し、次に、
図18~
図26に基づいて、前歯噛合方式を採用した他の実施形態の車両用ドアラッチ装置100について説明する。
【0018】
なお、以下の説明で使用する車両用ドアラッチ装置1、100の方位は、単体を基準にしたものである。したがって、車両用ドアラッチ装置1、100をドアに取り付けた状態で、車両を基準とした場合には、前方は車両の車内側を向く方向、後方は車両の車外を向く方向、右方は車両の後方、左方は車両の前方にそれぞれ相当する。
【0019】
(奥歯噛合方式を採用した車両用ドアラッチ装置1)
図1、2に示すように、車両用ドアラッチ装置1は、奥歯噛合方式を採用した噛合アッセンブリ3と、噛合アッセンブリ3に組み付けられるアクチュエータアッセンブリ5とを備える。
【0020】
さらに、
図3、4にも示すように、噛合アッセンブリ3は、図示略の複数のボルトによりドアの内面に固定される合成樹脂製のボディ本体31及びボディ本体31の表面(右側面)側を閉塞する金属製のカバープレート32と、噛合要素であって、ボディ本体31とカバープレート32との間に配置されるラッチ33、ラチェット34及び抑えレバー35と、ボディ本体31の裏面(左面)側に配置される第1、2入力レバー36、37とを有する。
【0021】
ボディ本体31には、上下方向のほぼ中央部にあって、ドアの閉鎖時、車体側のストライカSが前方から進入可能なストライカ進入溝31aが設けられる。カバープレート32にも、ボディ本体31のストライカ進入溝31aの右側に重合して、ドアの閉鎖時、ストライカSが前方から進入可能なストライカ進入切欠部32aが設けられる。
【0022】
ラッチ33は、ボディ本体31とカバープレート32との間に左右方向を向く軸38により所定角度回転可能に支持されて、図示略のスプリングによりオープン方向(
図7において時計方向)へ付勢されると共に、ドアの閉動作に伴って、ストライカSがボディ本体31のストライカ進入溝31a及びカバープレート32のストライカ進入切欠部32aに前方から進入することにより、スプリングの付勢力に抗して、ドアの開位置に相当する
図7、9に示すオープン位置からクローズ方向(
図7、9において反時計方向)へ回動し、
図10に示すドアの半ドア位置に相当するハーフラッチ位置を経てドアの全閉位置に相当する
図11に示すフルラッチ位置に回動し、また、ドアの開動作に伴って、その逆に回動する。
【0023】
ラッチ33には、ドアの閉鎖時にストライカSが噛合可能なストライカ噛合溝33aと、ストライカ噛合溝33aのクローズ方向側(
図7、9において反時計方向側)にあって、ラッチ33が
図11に示すフルラッチ位置にあるとき、ラチェット34における後述の第2ラチェット34Bが係合可能なフルラッチ係合部33bと、フルラッチ係合部33bよりもクローズ方向側にあって、ラッチ33が
図10に示すハーフラッチ位置にあるとき、第2ラチェット34Bが係合可能なハーフラッチ係合部33cと、ハーフラッチ係合部33cよりもさらにクローズ方向側にあって、ラッチ33が
図12に示すサードラッチ位置(オープン位置とハーフラッチ位置との間の位置)にあるとき、ストッパレバー37の端部に設けたストッパ部37aに当接可能なサードラッチ係合部33dとが設けられる。
【0024】
図4に示すように、ラチェット34は、ボディ本体31とカバープレート32との間に左右方向を向く軸40により所定角度回転可能に支持される第1ラチェット34Aと、第1ラチェット34Aの先端部に左右方向を向く軸部34cにより所定角度回動可能に支持される第2ラチェット34Bとを含む。
【0025】
第1ラチェット34Aは、スプリング41の付勢力により係合方向(
図7において反時計方向)へ付勢されると共に、スプリング41の付勢力に抗して、
図10、11に示す係合位置から解除方向(
図10、11において時計方向)へ回動可能である。第1ラチェット34Aには、左方へ向けて突出する円柱状の被当接部34aが設けられる。なお、噛合アッセンブリ3は、奥歯噛合方式を採用しているため、第1ラチェット34Aを回転可能に支持するための軸40は、
図7から理解できるように、ストライカ進入溝31a及びストライカ進入切欠溝31aの奥側(後側)の下方に配置される。
【0026】
第2ラチェット34Bは、一端が自体に掛止され、他端が第1ラチェット34Aに掛止されたスプリング42の付勢力により、先端部がラッチ33のフルラッチ係合部33b又はハーフラッチ係合部33cに係合する係合方向(
図10、11において反時計方向)へ付勢される。
【0027】
上述により、ラチェット34は、
図11に示すように、第1ラチェット34Aが係合位置にあって、かつ第2ラチェット34Bがラッチ33のフルラッチ係合部33bに係合することでラッチ33をフルラッチ位置に保持し、
図10に示すように、第1ラチェット34Aが係合位置にあって、かつ第2ラチェット34Bがラッチ33のハーフラッチ係合部33cに係合することでラッチ33をハーフラッチ位置に保持する。また、第1ラチェット34Aが解除方向(
図10、11において時計方向)へ所定角度回動した場合には、第2ラチェット34Bがラッチ33のフルラッチ係合部33b又はハーフラッチ係合部33cから外れることで、ラッチ33のオープン方向への回動を許可して、ドアの開きを可能にする。
【0028】
抑えレバー35は、ラチェット34よりも後側にあって、ボディ本体31とカバープレート32との間に左右方向を向く軸43により所定角度回転可能に支持されると共に、一端がボディ本体31に掛止され、他端が自体に掛止されたスプリング44により抑え方向(
図7において反時計方向)へ付勢されて、例えば
図7、9、10、11に示すように、端部に設けた抑え部35aが第1ラチェット34Aの下部に設けた被抑え部34bに下方から当接することにより、第1ラチェット34Aの係合位置から解除方向への回動を阻止し、また、スプリング44の付勢力に抗して、解除方向(
図7、9、10、11において時計方向)へ所定角度回転することにより、抑え部35aが第1ラチェット34Aの被抑え部34bから外れて、第1ラチェット34Aの解除方向への回動を許可する。
【0029】
入力レバー36及びストッパレバー37は、左右方向を向く軸45によりボディ本体31の裏面(左面)側に所定角度回転可能に支持されて、例えば
図8、13に示す待機位置から解除方向(
図8、13において反時計方向)へ所定角度回転可能である。
【0030】
入力レバー36には、待機位置から解除方向へ回動した場合、抑えレバー35に設けた被当接部35bに上方から当接することにより、抑えレバー35を解除方向へ回動させる第1当接部36aと、第1ラチェット34Aの被当接部34aに対して下方から当接することにより第1ラチェット34Aを解除方向へ作動させる第2当接部36bと、アクチュエータアッセンブリ5における後述のモータ54の動力を入力可能な第1入力部36cと、手動による操作力を入力可能な第2入力部36dと、入力レバー36の解除作動をストッパレバー37に伝達可能な第3当接部36eとが設けられる。これにより、入力レバー36は、モータ54の動力及び手動操作に基づいて、待機位置から解除方向へ回動する。
【0031】
第1入力部36cは、入力レバー36の前方へ延伸するアームの前端部にあって、左方(後述の出力レバー56の出力部56cに向く方向)へ向けて折曲形成されると共に、アクチュエータアッセンブリ5における後述の出力レバー56の出力部56cよりも上方に偏位した位置にあって、出力レバー56が解除作動した場合に出力部56cが下方から当接可能な位置に設けられる。これにより、入力レバー36は、出力レバー56がモータ54の動力により解除作動して、出力部56cが第1入力部36cに下方から当接することで、待機位置から解除方向へ回動する。
【0032】
第2入力部36dは、ドアの外部に設けられる図示略の手動用の操作ハンドルに連結される。これにより、入力レバー36は、手動用の操作ハンドルの操作に基づいて待機位置から解除方向へ回動する。なお、手動用の操作ハンドルは、電気系統の故障等によりアクチュエータアッセンブリ5におけるモータ54の駆動が不能になった場合に操作される非常用の解除手段である。
【0033】
入力レバー36は、
図14に示すように、待機位置から解除方向へ回動した場合、第1当接部36aが抑えレバー35の被当接部35bに当接することにより、抑えレバー35をブロック位置(例えば、
図10~
図12に示す位置)から解除方向(
図10~
図12において時計方向)へ回動させ、また、第2当接部36bが第1ラチェット34Aの被当接部34aに対して下方から当接することにより、第1ラチェット34Aを係合位置から解除方向へ回動させる。なお、第1ラチェット34Aの係合位置から解除方向へ回動開始は、抑えレバー35がブロック位置から解除方向へ回動した後に行われる。
【0034】
ストッパレバー37は、軸45により入力レバー36と独立して回動可能に枢支されて、入力レバー36が待機位置から解除方向へ回動した場合、入力レバー36の第3当接部36eが自体に設けたアーム部37bに当接することにより、入力レバー36と一緒に図示略のスプリングの付勢力に抗して、待機位置(例えば、
図8、13に示す位置)から解除方向(
図8、13において反時計方向)へ回動する。
【0035】
ストッパレバー37には、斜め上方へ延伸すると共に、自体が待機位置にあるとき、ラッチ33のサードラッチ係合部33dの移動軌跡内に進入して、
図12に示すように、サードラッチ係合部33dに当接して、ラッチ33のそれ以上のオープン方向への回動を阻止するストッパ部37aが設けられる。
【0036】
ストッパ部37aは、ストッパレバー37が待機位置にあるとき、ラッチ33がフルラッチ位置又はハーフラッチ位置からオープン方向へ回転した場合、ラッチ33のサードラッチ33dに当接することにより、ラッチ33をオープン位置とハーフラッチ位置との間の
図12に示すサードラッチ位置に停止させ、また、ストッパレバー37が解除作動することにより、ラッチ33のサードラッチ係合部33dの移動軌跡外に退避して、ラッチ33のオープン方向への回動を許可する。
【0037】
上述のように、ストッパレバー37にストッパ部37aを設けたことによって、ラチェット34に対して解除作動を伝達する機能を有する入力レバー36にストッパ部37aを形成する必要がない。この結果、入力レバー36を小型化して質量を軽減できるため、車両事故等により車両用ドアラッチ装置1に対して大きな慣性力が作用した場合であっても、入力レバー36に作用する解除方向への慣性力を軽減して、安全性の向上を図ることが可能となる。
【0038】
次に、
図1、2、15~17を参照して、アクチュエータアッセンブリ5及び当該アクチュエータアッセンブリ5に対する噛合アッセンブリ3の組付け方法について説明する。
(アクチュエータアッセンブリ5)
アクチュエータアッセンブリ5は、外殻を形成し、ボディ本体31の裏面側に固定される合成樹脂製のハウジング51と、当該ハウジング51内に配置されて、モータ54を含むアクチュエータ機構部(符号無し)とを備える。
【0039】
ハウジング51は、
図17から理解できるように、底面視略L字状を呈する合成樹脂製のハウジング本体52と、ハウジング本体52の前側面を閉塞する合成樹脂製のカバー53とを含む。ハウジング本体52は、ボディ31の裏面側を覆うボディ覆い部52aと、ボディ覆い部52a及びボディ本体31の裏面に対して略直角で、かつドアのインナパネルに平行なアクチュエータ収容部52bとを形成する。アクチュエータ収容部52bの前面は、カバー53により閉塞される。
【0040】
アクチュエータ収容部52bの内部には、ボディ覆い部52a及びボディ本体31の裏面に対して略直角な面を有する配置面52cが形成される。当該配置面52cには、アクチュエータ機構部(符号無し)が配置される。
【0041】
アクチュエータ収容部52bは、配置面52cが噛合アッセンブリ3における入力レバー36の入力部36cの位置に対応するように設定される。すなわち、奥歯噛合方式を採用した噛合アッセンブリ3の入力レバー36の入力部36cは、後述の前歯噛合方式を採用した噛合アッセンブリ300の入力部360cの位置よりも後方に設定されるため、噛合アッセンブリ300に取り付けられるハウジング510のアクチュエータ収容部520bの前後方向の厚みをL4(
図26参照)とした場合、
図17に示すように、噛合アッセンブリ3に取り付けられるハウジング51のアクチュエータ収容部52bの前後方向の厚みL3は、配置面52cがアクチュエータ収容部520bの配置面520cの位置よりも後方に位置するように、厚みL4よりも小さくなるように設定される。
【0042】
アクチュエータ機構部は、主な要素として、モータ54と、モータ54の回転軸に止着されたウォーム54aに噛合して減速回転するウォームホイール55と、ウォームホイール55の回転に伴って所定の方向へ所定角度回動可能な出力レバー56とを含む。なお、アクチュエータ収容部52bには、アクチュエータ機構部以外の要素も収容されるが、これらは、本発明に直接関係しないので、図示するに止めて説明は省略する。
【0043】
モータ54は、ユーザ携帯の遠隔操作スイッチの操作に基づいて所定方向へ回転する。ウォームホイール55は、前後方向を向く軸55aによりアクチュエータ収容部52bに枢支されて、モータ54の回転に伴って、
図16に示す待機位置から解除方向(
図16において時計方向)へ所定角度回動する。出力レバー56は、前後方向を向く軸56aによりアクチュエータ収容部52bの配置面52cとカバー53との間にあって、かつ配置面52cと平行な面に所定角度回動可能に枢支されて、ウォームホイール55の回動に伴って、
図16に示す待機位置から解除方向(
図16において反時計方向)へ所定角度回動する。一実施形態においては、ウォームホイール55が解除方向へ回動すると、出力レバー56の一端部に設けた入力部56bがウォームホイール55に設けたカム部55bに摺接することで、出力レバー56は、スプリング57の付勢力に抗して、軸56aを中心に解除方向へ回動するように構成される。
【0044】
出力レバー56には、自体の解除作動を入力レバー36に伝達可能な出力部56cが設けられる。出力部56cは、入力レバー36の第1入力部36cに交差するように延伸するアームの先端部にあって、後方へ向けて折曲形成され、かつ入力レバー36の第1入力部36cよりも下方に偏位するような位置に設けられて、出力レバー56がモータ54の動力により解除方向へ作動した場合、上方へ移動して第1入力部36cに下方から当接することで、入力レバー36を待機位置から解除方向へ回動させる。
【0045】
(アクチュエータアッセンブリ5に対する噛合アッセンブリ3の組付け方法)
図2に示すように、噛合アッセンブリ3は、噛合機構が予め組み付けられたボディ(ボディ本体31及びカバープレート32)をアクチュエータアッセンブリ5におけるハウジング51のボディ覆い部52aに対して前方(
図2に示す矢印X方向)から差し込むことで、アクチュエータアッセンブリ3に組み付けられる。なお、ボディ覆い部52aに差し込まれた噛合アッセンブリ3のボディは、図示略の固定手段によってボディ覆い部52aに固定される。
【0046】
一実施形態においては、出力レバー56の出力部56cを入力レバー36の入力部36cの下方に偏移させた位置に設けた構成を採用しているため、噛合アッセンブリ3を上述のようにアクチュエータアッセンブリ5に組み付ける際、出力部56cが入力部36cに干渉しない。その結果、アクチュエータアッセンブリ5に対する噛合アッセンブリ3の前方からの組付けを容易に行うことができる。
【0047】
次に、車両用ドアラッチ装置1の動作を
図9~14及び
図16に基づいて説明する。
ドアが開状態にある場合には、
図9に示すように、ラッチ33は、オープン位置にある。この状態から、ドアが閉じられると、ストライカSがボディ本体31のストライカ進入溝31a及びカバープレート32のストライカ進入切欠部32aに相対的に前方から進入して、ストライカSがラッチ33のストライカ噛合溝33aに噛合する。これにより、ラッチ33は、軸38を中心にオープン位置からクローズ方向(
図9において反時計方向)へ回動する。この場合、サードラッチ係合部33dの先端は、ラッチ33のクローズ方向への回動に伴って、ストッパレバー37の上縁を摺動し、また、ハーフラッチ係合部33cの先端は、第2ラチェット34Bの上面に接触することで、第1ラチェット34Aを係合位置に保持した状態で、第2ラチェット34Bのみをスプリング42の付勢力に抗して解除方向へ回動させる。
【0048】
次いで、
図10に示すように、ラッチ33がハーフラッチ位置に達すると、第2ラチェット34Bは、スプリング42の付勢力により、ラッチ33のハーフラッチ係合部33cに係合する。
【0049】
さらに、ドアの閉動作に伴って、
図11に示すように、ラッチ33がフルラッチ位置に達すると、第2ラチェット34Bがスプリング42の付勢力によりフルラッチ係合部33bに係合することで、ドアは全閉位置に保持される。
【0050】
上述のように、車両用ドアラッチ装置1は、ラッチ33がクローズ方向へ回動した場合、ラッチ33のクローズ方向への回動に伴って、比較的大きな要素である第1ラチェット34Aを解除方向へ回動させることなく、比較的小さな要素である第2ラチェット34Bのみを解除方向へ回動させるため、ドア閉鎖時におけるドア閉じ音の静粛性を図り良好なドア閉じ音を得ることができる。また、ラッチ33がフルラッチ位置にあって、かつ第2ラチェット34Bがラッチ33のフルラッチ係合部33bに係合している状態においては、抑えレバー35の抑え部35aが第1ラチェット34Aの被抑え部34bに当接して、第1ラチェット34Aの解除方向への回動を阻止するため、フルラッチ係合部33bに対する第2ラチェット34Bの係合を確実なものとすることができる。
【0051】
次に、ドアの解除動作について説明する。
ドアが全閉状態に保持されている場合には、
図11、13に示すように、ラッチ33は、フルラッチ位置にあり、ラチェット34は、係合状態にあって、第2ラチェット34Bがラッチ33のフルラッチ係合部33bに係合し、抑えレバー35は、抑え部35aが第1ラチェット34Aの被抑え部34bに当接したブロック位置にあり、ストッパレバー37は、ストッパ部37aがラッチ33のサードラッチ係合部33dの移動軌跡内に進入した待機位置にある。
【0052】
この状態にあって、遠隔操作スイッチが解除操作されてモータ54が駆動すると、出力レバー56は、モータ54の動力に基づいて解除作動する。これにより、出力レバー56の出力部56cは、上方へ移動して、入力レバー36の入力部36cに対して下方から当接する。入力レバー36は、出力部56cが入力部36cに当接することで、待機位置から解除方向へ回動する。
【0053】
入力レバー36が解除作動すると、
図14に示すように、ストッパレバー37は、入力レバー36の第3当接部36eがストッパレバー37のアーム部37bに当接することで待機位置から解除方向へ所定角度回動する。抑えレバー35は、入力レバー36の第1当接部36aが抑えレバー35の被当接部35bに当接することでブロック位置から解除方向へ所定角度回動する。次いで、抑えレバー35の解除作動により、抑え部35aが第1ラチェット34Aの被抑え部34bから完全に外れた後、入力レバー36の第2当接部36bが第1ラチェット34Aの被当接部34aに下方から当接する。これにより、第1ラチェット34Aは、係合位置から解除方向へ回動して、第2ラチェット34Bは、ラッチ33のフルラッチ係合部33bから離脱して、ラッチ33のフルラッチ位置からオープン方向への回動を許可する。
【0054】
通常であれば、第2ラチェット34Bがラッチ33のフルラッチ係合部33bから離脱することで、ドア開口部の周縁に設けられたウェザーストリップの反力により、ドアは開方向へ押し出されて、ラッチ33は、オープン位置に回動して、ストライカSがラッチ33のストライカ噛合溝33aから抜け出すことで、ドアの開きを可能にする。
【0055】
ドアが開いてラッチ33がオープン位置に回動すると、モータ54の駆動が停止して出力レバー56が待機位置に復帰することで、入力レバー36、ストッパレバー37、抑えレバー35及び第1、2ラチェット34A、34Bは、
図9に示す位置にそれぞれ復帰回動する。
【0056】
しかしながら、モータ54の動力により、第2ラチェット34Bがラッチ33のフルラッチ係合部33bから離脱したにも係わらず、経年劣化等の影響によりウェザーストリップの反発力が低下したり、冬場等の環境の下で、ドアがウェザーストリップの反力により完全に押し出されずに、ラッチ33がオープン位置の手前で止まったり、可動部分の凍結等により各要素の動きが鈍くなる場合がある。
【0057】
特に各要素のうち第1、2ラチェット34A、34Bの動きが鈍くなると、第1、2ラチェット34A、34Bが解除作動した状態からスプリング41、42の付勢力により係合方向に回動する際、フルラッチ位置(または、僅かにオープン方向へ動いた位置)に止まっているラッチ33のフルラッチ係合部33bに対して第2ラチェット34Bの係合が正規の係合位置まで係合しない状態、所謂、不確実係合状態が発生する場合がある。
【0058】
不確実係合状態が発生すると、第1ラチェット34Aが正規の係合位置まで回動不能となって、抑えレバー35の抑え部35aが第1ラチェット34Aの被抑え部34aに当接することができなくなる。このため、第1ラチェット34Aの解除方向への回動は、抑えレバー35により阻止されることなく自由となる。
【0059】
したがって、不確実係合状態において、車両事故等により、ラッチ33に対してフルラッチ位置からオープン方向へ回動させるような大きな力が作用すると、フルラッチ係合部33bに不確実に係合している第2ラチェット34Bと共に第1ラチェット34Aが解除方向へ回動させられて、第2ラチェット34Bがフルラッチ係合部33bから外れてしまい、最悪の場合には、第2ラチェット34Bがハーフラッチ係合部33cに対しても係合できずに、ラッチ33がオープン位置まで回動してしまう場合がある。
【0060】
しかし、一実施形態に係る車両用ドアラッチ装置1においては、不確実係合状態が発生している状態において、ラッチ33がオープン方向へ回動してハーフラッチ位置を僅かに通過したサードラッチ位置に達すると、
図12に示すように、ラッチ33のサードラッチ係合部33dがストッパレバー37のストッパ部37aに当接する。これにより、ラッチ33のこれ以上のオープン方向への回動は阻止され、ラッチ33は、サードラッチ位置に停止してストライカSとの噛合を保持する。
【0061】
(前歯噛合方式を採用した車両用ドアラッチ装置100)
次に、
図18~26に基づいて、前歯噛合方式を採用した車両用ドアラッチ装置100について説明する。なお、以下の説明においては、前歯噛合方式を採用した車両用ドアラッチ装置100を必要に応じて他の実施形態という。
【0062】
図18、19に示すように、車両用ドアラッチ装置100は、前記一実施形態と同様に、噛合アッセンブリ300と、噛合アッセンブリ300に組み付けられるアクチュエータアッセンブリ500とを備える。
【0063】
なお、他の実施形態の噛合アッセンブリ300において、前記一実施形態の噛合アッセンブリ3の要素と同様な機能を有する要素については、前記一実施形態で用いた符号の数字の末尾に「0」を付加した符号を用いて、符号を図面に付与するに止めて説明は適宜省略する。また、他の実施形態のアクチュエータアッセンブリ500においては、ハウジング本体510を除いて、前記一実施形態と同一であるので、前記一実施形態で用いた符号と同一の符号を付与して説明は適宜省略する。
【0064】
噛合アッセンブリ300は、ボディ本体310及びカバープレート320を含むボディと、ラッチ330、ラチェット340及び抑えレバー350と、ボディ本体310の裏面側に配置される入力レバー360とを有する。なお、前記一実施形態にあっては、ストッパレバー37にストッパ部37aを設けた構成であるのに対し、他の実施形態にあっては、ストッパレバー36を省略して入力レバー360にストッパ部370a(前記一実施形態のストッパ部37aに相当)を設けた構成であるが、前記一実施形態と同様にストッパレバーを設けても良い。
【0065】
ラッチ330には、ストライカSが噛合可能なストライカ噛合溝330aと、ストライカ噛合溝330aのオープン方向側(例えば、
図21において時計方向側)にあって、ラッチ330が
図23に示すフルラッチ位置にあるとき、ラチェット340の第2ラチェット340Bが係合可能なフルラッチ係合部330bと、ストライカ噛合溝330aよりもクローズ方向側(例えば、
図21において反時計方向側)にあって、ラッチ330が
図22に示すハーフラッチ位置にあるとき、第2ラチェット340Bが係合可能なハーフラッチ係合部330cと、ハーフラッチ係合部33cよりもさらにクローズ方向側にあって、ラッチ330が
図24に示すサードラッチ位置にあるとき、入力レバー360に設けたストッパ部370aに係合可能なサードラッチ係合部330dとが設けられる。
【0066】
ラチェット340は、ボディ本体310とカバープレート320との間に左右方向を向く軸400により所定角度回転可能に支持される第1ラチェット340Aと、第1ラチェット340Aに所定角度回動可能に支持される第2ラチェット340Bを含んで構成される。
【0067】
第1ラチェット340Aは、
図22、23に示す係合位置から軸400を中心に解除方向(
図22、23において時計方向)へ回動可能である。なお、噛合アッセンブリ300は、前歯噛合方式を採用しているため、第1ラチェット340Aを回転可能に支持するための軸400は、奥歯噛合方式を採用した前記一実施形態の軸40よりも前方にあって、ストライカ進入溝310a及びストライカ進入切欠溝320aの入口側(前側)近傍の下方に配置される。
【0068】
第2ラチェット340Bは、スプリング420の付勢力により、先端部がラッチ330のフルラッチ係合部330b又はハーフラッチ係合部330cに係合する係合方向へ付勢される。
【0069】
上述により、ラチェット340は、
図23に示すように、第2ラチェット340Bがラッチ330のフルラッチ係合部330bに係合することでラッチ330をフルラッチ位置に保持し、
図22に示すように、第2ラチェット340Bがラッチ330のハーフラッチ係合部330cに係合することでラッチ330をハーフラッチ位置に保持する。また、
図25に示すように、第1ラチェット340Aが待機位置から解除方向へ所定角度回動した場合には、第2ラチェット340Bがラッチ330のフルラッチ係合部330b又はハーフラッチ係合部330cから外れることで、ラッチ330のオープン方向への回動を許可して、ドアの開きを可能にする。
【0070】
抑えレバー350は、第1ラチェット340Aよりも後方で、かつ下方に配置されて、軸430により所定角度回転可能に支持される。
【0071】
入力レバー360は、左右方向を向く軸450によりボディ本体310の裏面側に所定角度回転可能に支持されて、例えば
図23に示す待機位置から解除方向(
図23において時計方向)へ所定角度回転可能である。
【0072】
入力レバー360を支持するための軸450は、第1ラチェット340Aを支持するための軸400が前記一実施形態の軸40よりも前側に配置される関係上、前記一実施形態における入力レバー36を支持するための軸45よりも前方に配置される構成となる。すなわち、
図21、26に示すように、他の実施形態におけるボディ本体310の前端から軸450の中心O2迄の距離をL2は、
図9、17に示すように、前記一実施形態におけるボディ本体31の前端から軸45の中心O1迄の距離をL1よりも短くなる。さらに、これに伴って、他の実施形態においては、入力レバー360の入力部360cが前記一実施形態の入力レバー36の入力部36cよりも前側に設定される構成となる。
【0073】
入力レバー360には、待機位置から解除方向へ回動した場合、抑えレバー350の被当接部350bに上方から当接して、抑えレバー350を解除方向へ回動させる第1当接部360aと、第1ラチェット340Aの被当接部340aに対して下方から当接することにより第1ラチェット340Aを解除方向へ作動させる第2当接部360bと、アクチュエータアッセンブリ500におけるモータ54の動力を入力可能な第1入力部360cとが設けられる。これにより、入力レバー360は、モータ54の動力に基づいて、待機位置から解除方向へ回動する。
【0074】
第1入力部360cは、入力レバー360の前端部にあって、左方(ハウジング510に向く方向)へ向けて折曲形成されると共に、アクチュエータアッセンブリ500の出力レバー56の出力部56cよりも上方にあって、出力レバー56が解除作動した場合に出力部56cに当接可能な位置に設けられる。これにより、入力レバー360は、出力レバー56がモータ54の動力により解除作動して、出力部56cが第1入力部360cに下方から当接することで、待機位置から解除方向へ回動する。
【0075】
入力レバー360は、待機位置から解除方向へ回動した場合、第1当接部360aが抑えレバー350の被当接部350bに当接することにより、抑えレバー350をブロック位置から解除方向へ回動させ、また、第2当接部360bが第1ラチェット340Aの被当接部340aに対して下方から当接することにより、第1ラチェット340Aを係合位置から解除方向へ回動させる。
【0076】
アクチュエータアッセンブリ500におけるハウジング510は、前記一実施形態と同様に底面視略L字状を呈する合成樹脂製のハウジング本体520と、ハウジング本体520の前側面を閉塞する合成樹脂製のカバー53とを含む。ハウジング本体520は、前記一実施形態と同様に、ボディ覆い部520a及びアクチュエータ収容部520bとを形成する。
【0077】
アクチュエータ収容部520bには、アクチュエータ機構部が収容される。アクチュエータ機構部は、前記一実施形態と同一構成であって、モータ54、ウォームホイール55及び出力レバー56とを含む。すなわち、アクチュエータ機構部は、前記一実施形態と他の実施形態とで共用化される。
【0078】
他の実施形態における出力レバー56の出力部56cは、前記一実施形態と同様に、入力レバー360の第1入力部360cよりも下方に偏位した位置に設けられる。これにより、他の実施形態において、出力レバー56がモータ54の動力により解除方向へ作動した場合には、出力部56cが上方へ移動して第1入力部360cに当接する。これにより、入力レバー360は、出力レバー56の解除作動に基づいて、待機位置から解除方向へ回動する。
【0079】
上述のように、他の実施形態における入力レバー360の入力部360cは、前記一実施形態の入力部36cよりも前側に設定される構成となるため、ハウジング本体520におけるアクチュエータ収容部520bの配置面520cは、前記一実施形態のハウジング本体52におけるアクチュエータ収容部52bの配置面52cよりも前側になるように設定される。すなわち、
図26に示すように、他の実施形態におけるアクチュエータ収容部520bの前後方向の厚みL4は、
図17に示すように、前記一実施形態におけるアクチュエータ収容部52bの前後方向の厚みL3よりも小さくなるように設定される。このように設定することで、アクチュエータ機構部全体を前記一実施形態と同一構成として、出力レバー56の出力部56cを入力レバー360の入力部360cに対して交差する位置に設定できる。この結果、ハウジング51、510におけるハウジング本体52、520のみを変更するだけで、互いに異なる噛合方式を採用した噛合アッセンブリ間でアクチュエータ機構部全体を共用化できる。
【0080】
他の実施形態に係る車両用ドアラッチ装置100の基本的な動作は、前記一実施形態と同一であるので、図示するに止めて説明は省略する。なお、他の実施形態の動作を図示した
図21は、オープン状態(ラッチ330がオープン位置にある状態)、
図22は、ハーフラッチ状態(ラチェット340がラッチ330のハーフラッチ係合部330cに係合した状態)、
図23は、フルラッチ状態(ラチェット330がラッチ330のフルラッチ係合部330bに係合した状態)、
図24は、サードラッチ状態(入力レバー360のストッパ部370aがラッチ330のサードラッチ係合部330dに係合した状態)、
図25は、解除作動状態(ラチェット330が出力レバー56の解除作動により作動した状態)をそれぞれ示す。
【0081】
以上のように、噛合アッセンブリ3、300におけるボディ本体31、310の裏面側に左右方向を向く軸45、450により入力レバー36、360を枢支し、アクチュエータアッセンブリ5、500におけるハウジング本体51、510にあって、ボディ本体31、310の裏面に略直角なアクチュエータ収容部52b、520bにアクチュエータ機構部を配置し、アクチュエータ収容部52b、520bの配置面52c、520cに前後方向を向く軸56aにより出力レバー56を枢支し、さらに、出力レバー56の出力部56cを入力レバー36、360の入力部36c、360cよりも下方に偏位する位置に設定することで、各種噛合方式によって、入力レバーの回転位置及び入力部の位置が互いに異なる場合であっても、ハウジング本体52、520におけるアクチュエータ収容部52b、520bの配置面52c、520cを、各種噛合方式の入力部の位置に合うように設定することで、出力レバー56の解除動作を入力レバー36、360に伝達することができる。これにより、各種噛合方式が相違する噛合アッセンブリ間で、ハウジングのみを変更するだけで、アクチュエータ機構部の共用化を図ることが可能となり、コストアップを招くことなく各カーメーカーの取付位置に対応することができる。
【符号の説明】
【0082】
1、100 車両用ドアラッチ装置 3、300 噛合アッセンブリ
5、500 アクチュエータアッセンブリ 31、310 ボディ本体
31a、310a ストライカ進入溝 32、320 カバープレート
32a、320a ストライカ進入切欠部 33、330 ラッチ
33a、330a ストライカ噛合溝 33b、330b フルラッチ係合部
33c、330c ハーフラッチ係合部 33d、330d サードラッチ係合部
34、340 ラチェット 34A、340A 第1ラチェット
34B、340B 第2ラチェット 34a、340a 被当接部
34b、340b 被抑え部 34c、340c 軸部
35、350 抑えレバー 35a、350a 抑え部
35b、350b 被当接部 36、360 入力レバー
36a、360a 第1当接部 36b、360b 第2当接部
36c、360c 第1入力部 36d 第2入力部
36e 第3当接部 37 ストッパレバー
37a、370a ストッパ部 37b アーム部
38、380 軸 40、400 軸
41、410 スプリング 42 スプリング
43、430 軸 44、440 スプリング
45、450 軸(第2軸) 51、510 ハウジング
52、520 ハウジング本体 52a、520a ボディ覆い部
52b、520b アクチュエータ収容部 52c、520c 配置面
53 カバー 54 モータ
54a ウォーム 55 ウォームホイール
55a 軸 55b カム部
56 出力レバー 56a 軸(第1軸)
56b 入力部 56c 出力部
57 スプリング