IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士通フロンテック株式会社の特許一覧

特開2023-12814画像処理装置、画像処理方法、プログラム、及び帳票処理システム
<>
  • 特開-画像処理装置、画像処理方法、プログラム、及び帳票処理システム 図1
  • 特開-画像処理装置、画像処理方法、プログラム、及び帳票処理システム 図2
  • 特開-画像処理装置、画像処理方法、プログラム、及び帳票処理システム 図3
  • 特開-画像処理装置、画像処理方法、プログラム、及び帳票処理システム 図4
  • 特開-画像処理装置、画像処理方法、プログラム、及び帳票処理システム 図5
  • 特開-画像処理装置、画像処理方法、プログラム、及び帳票処理システム 図6
  • 特開-画像処理装置、画像処理方法、プログラム、及び帳票処理システム 図7
  • 特開-画像処理装置、画像処理方法、プログラム、及び帳票処理システム 図8
  • 特開-画像処理装置、画像処理方法、プログラム、及び帳票処理システム 図9
  • 特開-画像処理装置、画像処理方法、プログラム、及び帳票処理システム 図10
  • 特開-画像処理装置、画像処理方法、プログラム、及び帳票処理システム 図11
  • 特開-画像処理装置、画像処理方法、プログラム、及び帳票処理システム 図12
  • 特開-画像処理装置、画像処理方法、プログラム、及び帳票処理システム 図13
  • 特開-画像処理装置、画像処理方法、プログラム、及び帳票処理システム 図14
  • 特開-画像処理装置、画像処理方法、プログラム、及び帳票処理システム 図15
  • 特開-画像処理装置、画像処理方法、プログラム、及び帳票処理システム 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023012814
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】画像処理装置、画像処理方法、プログラム、及び帳票処理システム
(51)【国際特許分類】
   G06V 30/162 20220101AFI20230119BHJP
   G06T 7/13 20170101ALI20230119BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20230119BHJP
【FI】
G06K9/38 S
G06T7/13
G06T7/00 610B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021116523
(22)【出願日】2021-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000237639
【氏名又は名称】富士通フロンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】関 建二郎
(72)【発明者】
【氏名】奥山 浩司
(72)【発明者】
【氏名】加藤 智也
(72)【発明者】
【氏名】柿本 涼
【テーマコード(参考)】
5B029
5L096
【Fターム(参考)】
5B029AA01
5B029BB02
5B029DD03
5B029EE13
5L096AA06
5L096BA03
5L096CA02
5L096DA01
5L096DA02
5L096FA06
5L096FA14
5L096FA17
(57)【要約】
【課題】基準媒体に傷が生じている場合であっても影響を受けずに画像補正を行うことができる補正データを生成することができる画像処理装置を提供すること。
【解決手段】画像処理装置3は、基準媒体23の撮影画像を取得する画像取得部310と、取得した撮影画像204に対してエッジ検出を行い、エッジ検出により所定の範囲以内の勾配を有する画素がある場合には、傷マスクデータの画素として検出する傷検出部321と、傷マスクデータの画素が検出された場合には、傷マスクデータの画素の近傍の画素を、傷マスクデータの本来の画素の濃度として置換する画素置換部322と、置換したデータに基づいて、光の強弱を補正するための補正データ205を生成する補正データ生成部330と、を備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準媒体の撮影画像を取得する画像取得部と、
取得した前記撮影画像に対してエッジ検出を行い、前記エッジ検出により所定の範囲以内の勾配を有する画素がある場合には、検出された画素およびそれらに内包される画素を傷マスクデータの画素として検出する傷検出部と、
前記傷マスクデータの画素が検出された場合には、前記傷マスクデータの画素の近傍の画素を、前記傷マスクデータの本来の画素の濃度として置換する画素置換部と、
前記置換したデータに基づいて、光の強弱を補正するための補正データを生成する補正データ生成部と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記画素置換部は、
前記傷マスクデータの画素の近傍の前記傷マスクデータ以外の画素の値を当該傷マスクデータの本来の画素の濃度として置換する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
生成された前記補正データに基づいて帳票の前記撮影画像の階調を補正する画像補正部
をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記画素の濃度は、階調である
ことを特徴とする請求項1~3のうちいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項5】
画像処理装置が実行する画像処理方法であって、
基準媒体の撮影画像を取得し、
取得した前記撮影画像に対してエッジ検出を行い、前記エッジ検出により所定の範囲以内の勾配を有する画素がある場合には、検出された画素およびそれらに内包される画素を傷マスクデータの画素として検出し、
前記傷マスクデータの画素が検出された場合には、前記傷マスクデータの画素の近傍の画素を、前記傷マスクデータの本来の画素の濃度として置換し、
前記置換したデータに基づいて、光の強弱を補正するための補正データを生成する
ことを特徴とする画像処理方法。
【請求項6】
画像処理装置が実行するプログラムであって、
基準媒体の撮影画像を取得し、
取得した前記撮影画像に対してエッジ検出を行い、前記エッジ検出により所定の範囲以内の勾配を有する画素がある場合には、検出された画素およびそれらに内包される画素を傷マスクデータの画素として検出し、
前記傷マスクデータの画素が検出された場合には、前記傷マスクデータの画素の近傍の画素を、前記傷マスクデータの本来の画素の濃度として置換し、
前記置換したデータに基づいて、光の強弱を補正するための補正データを生成する
ことを特徴とするプログラム。
【請求項7】
画像読取装置と、画像処理装置と、を備える帳票処理システムであって、
前記画像処理装置は、
前記画像読取装置が読み取った基準媒体の撮影画像を取得する画像取得部と、
取得した前記撮影画像に対してエッジ検出を行い、前記エッジ検出により所定の範囲以内の勾配を有する画素がある場合には、検出された画素およびそれらに内包される画素を傷マスクデータの画素として検出する傷検出部と、
前記傷マスクデータの画素が検出された場合には、前記傷マスクデータの画素の近傍の画素を、前記傷マスクデータの本来の画素の濃度として置換する画素置換部と、
前記置換したデータに基づいて、光の強弱を補正するための補正データを生成する補正データ生成部と、
を備えることを特徴とする帳票処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、画像処理方法、プログラム、及び帳票処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金融機関の営業店などにおいて、行員などのオペレータはスキャナ操作によるOCR(Optical Character Reader)などの文字読取装置を、帳票などに書かれている文字の読取処理や、印鑑照合処理に活用している。
【0003】
OCRなどの文字読取装置において精度よく文字の読み取りや、印鑑照合を行う場合には、設置場所の照明環境を問わず、媒体全体を均一な明るさで撮影することが望ましい。例えば、画像に影やノイズなどの不必要な情報が極力入らないようにすることが重要である。
【0004】
そこで、帳票の読取前に、台座上に置かれた基準媒体(キャリブレーションシート)を読み取り、設置環境の明るさに応じてカメラの露出時間とゲインアンプによる明るさ調整や、影を画像補正(影補正)で除去することにより、設置環境ごとの画像差異を吸収するキャリブレーション機能が使用されている。例えば、撮影画像に含まれるエッジを検出し、検出したエッジに基づいて、帳票領域の補正量を算出する画像処理装置の技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】再表2017-208367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、OCRで用いられる基準媒体が無地で均一な基準板の使用が条件となるものの、基準媒体に傷などが生じているにも関わらず、補正データを生成した場合には、基準媒体の傷を強い光又は影として誤った補正データが生成される。その結果、誤った補正データに基づいて画像補正(キャリブレーション)が行われた場合には、基準媒体の傷が仕上がりに反映されてしまい、正しい補正ができない。その結果、その後の帳票に対する文字認識や印鑑照合でエラーや誤読が発生するという問題があった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑み、基準媒体に傷が生じている場合であっても影響を受けずに画像補正を行うことができる補正データを生成することができる画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、画像処理装置であって、基準媒体の撮影画像を取得する画像取得部と、取得した前記撮影画像に対してエッジ検出を行い、前記エッジ検出により所定の範囲以内の勾配を有する画素がある場合には、検出された画素およびそれらに内包される画素を傷マスクデータの画素として検出する傷検出部と、前記傷マスクデータの画素が検出された場合には、前記傷マスクデータの画素の近傍の画素を、前記傷マスクデータの本来の画素の濃度として置換する画素置換部と、前記置換したデータに基づいて、光の強弱を補正するための補正データを生成する補正データ生成部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明は、画像処理装置が実行する画像処理方法であって、基準媒体の撮影画像を取得し、取得した前記撮影画像に対してエッジ検出を行い、前記エッジ検出により所定の範囲以内の勾配を有する画素がある場合には、検出された画素およびそれらに内包される画素を傷マスクデータの画素として検出し、前記傷マスクデータの画素が検出された場合には、前記傷マスクデータの画素の近傍の画素を、前記傷マスクデータの本来の画素の濃度として置換し、前記置換したデータに基づいて、光の強弱を補正するための補正データを生成することを特徴とする。
【0010】
本発明は、画像処理装置が実行するプログラムであって、基準媒体の撮影画像を取得し、取得した前記撮影画像に対してエッジ検出を行い、前記エッジ検出により所定の範囲以内の勾配を有する画素がある場合には、検出された画素およびそれらに内包される画素を傷マスクデータの画素として検出し、前記傷マスクデータの画素が検出された場合には、前記傷マスクデータの画素の近傍の画素を、前記傷マスクデータの本来の画素の濃度として置換し、前記置換したデータに基づいて、光の強弱を補正するための補正データを生成することを特徴とする。
【0011】
本発明は、画像読取装置と、画像処理装置と、を備える帳票処理システムであって、前記画像処理装置は、前記画像読取装置が読み取った基準媒体の撮影画像を取得する画像取得部と、取得した前記撮影画像に対してエッジ検出を行い、前記エッジ検出により所定の範囲以内の勾配を有する画素がある場合には、検出された画素およびそれらに内包される画素を傷マスクデータの画素として検出する傷検出部と、前記傷マスクデータの画素が検出された場合には、前記傷マスクデータの画素の近傍の画素を、前記傷マスクデータの本来の画素の濃度として置換する画素置換部と、前記置換したデータに基づいて、光の強弱を補正するための補正データを生成する補正データ生成部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、基準媒体に傷が生じている場合であっても影響を受けずに画像補正を行うことができる補正データを生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施の形態における画像処理装置を備える帳票処理システムのシステム構成図である。
図2】本実施の形態における画像処理装置のハードウェア構成図である。
図3】画像処理装置を含む帳票処理システムの機能の概要を説明する図である。
図4】画像処理装置を含む帳票処理システムの機能の概要を説明する図である。
図5】本実施の形態の補正データ生成処理に係る画像処理装置の機能ブロックの一例を示す図である。
図6】傷検出部により行われる傷マスクデータの検出の一例を示す図である。
図7】傷検出部により行われる傷マスクデータの検出の一例を示す図である。
図8】傷検出部により行われる傷マスクデータの検出の一例を示す図である。
図9】傷検出部により行われる傷マスクデータの検出の一例を示す図である。
図10】傷検出部により行われる傷マスクデータの検出の一例を示す図である。
図11】傷検出部により行われる傷マスクデータの検出の一例を示す図である。
図12】傷検出部により行われる傷マスクデータの検出の一例を示す図である。
図13】傷検出部により行われる傷マスクデータの検出の一例を示す図である。
図14】補正データ生成部により生成される補正データ(光量マップ)の一例を示す図である。
図15】画像処理装置により実行される補正データ生成処理の一例を示すフローチャートである。
図16】画像処理装置により実行される帳票読取処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本実施の形態における画像処理装置を備える帳票処理システムのシステム構成図である。
【0015】
図1に示すように、帳票処理システム1は、画像読取装置2、画像処理装置3を備える。画像読取装置2と画像処理装置3と、は互いに通信可能に接続されている。
【0016】
ここで、本実施の形態の帳票処理システム1は、例えば金融機関や公共機関等に設置されている。また、本実施の形態の帳票処理システム1は、携帯通信端末に内蔵された機能としての画像読取装置2および画像処理装置3で構成されることも可能である。
【0017】
画像読取装置2は、台座21及びカメラ22を備える。画像読取装置2は、例えば、スタンド型スキャナであり、台座21に載置された帳票をカメラ22で光学的に読み取り、画像処理装置3に送出する。読み取りの対象となる帳票は、例えば、振込依頼書、入出金伝票など、各種手書き入力する書類である。
【0018】
画像処理装置3は、例えば、ワークステーション、サーバ、パーソナルコンピュータ等のコンピュータの機能を備えており、画像処理方法に基づく後述する補正データ生成処理を実行する。
【0019】
図2は、本実施の形態における画像処理装置のハードウェア構成図である。
【0020】
図2に示すように、画像処理装置3は、制御部101、入力装置102、出力装置103、記憶部104、インターフェース(I/F)105がバス106に接続されて構成されている。また、画像処理装置3は、図2に示していない他のハードウェア構成を備えていてもよい。
【0021】
制御部101は、画像処理装置3全体を統括的に制御するもので、プログラムを読み込んで補正データ生成処理を実行するCPU(Central Processing Unit)を有する。
【0022】
入力装置102は、例えば、キーボード、ジョイスティック、ライトペン、マウス、タッチパッド、タッチパネル、トラックボール等、各種のデータや信号等を入力する。
【0023】
出力装置103は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)等の各種ディスプレイ、プリンタ等、画像やその他の情報を出力する。
【0024】
記憶部104は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)等を有する。記憶部104は、画像処理装置3が補正データ生成処理を実行するプログラムの他、画像処理装置3の各機能を制御し実行するための制御プログラム、画面データなどを記憶する。記憶部104は、画像処理装置3がプログラムを実行する際の作業領域を提供する。また、記憶部104は、後述の補正データや、他のデータを記憶してもよい。
【0025】
インターフェース105は、USB(Universal Serial Bus)等のシリアルインターフェースやイーサネット(登録商標)等のパラレルインターフェース等、画像読取装置2や図示しない外部機器と接続するためのユニットである。
【0026】
本実施の形態における補正データ生成処理は、前述した画像処理装置3によって実行される。
【0027】
ここで、図3図4を用いて画像処理装置3を含む帳票処理システム1の機能の概要について説明する。図3図4は、画像処理装置3を含む帳票処理システム1の機能の概要を説明する図である。帳票処理システム1においては、画像読取装置2は内部に光源を持たないため、画像処理装置3は、外光201を用いて画像取得を行う。そのため、画像読取装置2の台座21上には、設置環境により、外光201の影響による強い光やオブジェクト202の存在により光の強弱が発生することとなる。
【0028】
設置環境によって生じる光の強弱に対しては、画像読取装置2の設置時に初期設定(以下、「キャリブレーション」とも呼ぶ)を実施することにより解決することができる。キャリブレーションでは、台座21上に、例えば、白色の板状の基準媒体23を設置する。そして、画像処理装置3は、カメラ22で撮像した基準媒体画像の濃度(階調)から台座21上の光の強弱の位置及び濃度を判別し、光の強弱の影響を除去するための補正データ(以下、「光量マップ」とも呼ぶ)を生成しておく。なお、基準媒体23は、無地で均一であれば白色に限られず有色であってもよい。
【0029】
画像処理装置3は、帳票などの画像読み取り時に、生成した補正データを用いて、その光の強弱部の濃度分だけ明度を調整することにより、光の強弱を除去した出力画像を取得することができる。
【0030】
なお、補正データは、下記式1のように基準媒体23を撮影した際の階調値を基に算出することができる。
補正データ(xx倍)=(基準媒体内の基準階調)/(光の強弱部の階調)・・・式1
【0031】
ところで、基準媒体23に傷203が生じていた場合には、傷があることを気づかずにオペレータがキャリブレーションを行った場合には、基準媒体23の撮影画像204に基づいて、傷203を強い光や影と誤認して誤った補正データ205が生成されることとなる。
【0032】
図3の例では、基準媒体23の撮影画像204の基本となる階調は「100」として読み取られる。撮影画像204の影となる部分の階調は基本となる階調「100」より低い(暗い)階調「50」や「80」となる一方で、光が強く当たる部分(明るい光の箇所)の階調は基本となる階調「100」よりも高い(明るい)階調「150」として読み取られる。
【0033】
また、傷203となる部分は、階調のみで判断すると、傷であるか光の強弱であるか区別ができないため、基本となる階調よりも低い場合には影の階調として読み取られ、また、基本となる階調よりも高い場合には明るい光の箇所の階調として読み取られてしまう。図3の例では、傷203となる部分の階調は明るい光の箇所と同様に高い(明るい)階調「150」として読み取られる。
【0034】
画像処理装置3は、すべての画素の階調がむらなく補正できるように、階調を調整するため対応する箇所をxx倍する補正データを生成する。図3の例では、暗い階調「80」、「50」に対応する箇所の補正倍率をそれぞれ「×1.25倍」、「×2倍」とする補正データが生成される。また、明るい階調「150」に対応する箇所の補正倍率を「×0.66倍」とする補正データが生成される。そして、傷203の箇所の階調「150」に対応する箇所の補正倍率は明るい光の階調と同様に「×0.66倍」とする補正データが生成される。
【0035】
傷203がある撮影画像204に基づいて誤った階調に基づき補正データ205が生成されるため、読み取り時に誤った補正データ205に基づいて補正が行われると、その後のOCR処理や印鑑照合においてエラーや誤読が発生するおそれがある。
【0036】
図4の例では、基準媒体23に基づいて生成された補正データ205により読取画像206が補正されて出力画像207が生成される。読取画像206には、帳票などの媒体の下にある基準媒体に付いている傷の影響を受けない。しかしながら、傷がついた基準媒体23に基づいて生成された補正データ205に基づいて読取画像206の補正が行われると、傷の部分の階調「150」に対応した箇所の画像(画素)が補正倍率「×0.66倍」の暗い画像(画素)に補正されて出力画像207として出力されることとなる。その結果、出力画像207に基づいてOCRや印鑑照合の処理が行われると、傷203に対応する箇所の読み取りがうまくできずにエラーとなってしまうという問題があった。
【0037】
そこで、本実施の形態の画像処理装置3は、傷マスクデータの画素の近傍の画素を、当該傷マスクデータの本来の画素の濃度として置換し、置換したデータに基づいて、光の強弱を補正するための補正データを生成する。これにより、基準媒体23に傷が生じている場合であっても影響を受けずに画像補正を行うことができる補正データを生成することができる。
【0038】
図5は、本実施の形態の補正データ生成処理に係る画像処理装置3の機能ブロックの一例を示す図である。図5に示すように、画像処理装置3の制御部101は、画像取得部310、傷補正部320、補正データ生成部330、及び画像補正部340を備える。制御部101は、図5にしていない他の構成要素を含んでいてもよい。画像処理装置3の記憶部104は、補正データ205を記憶する。記憶部104は、図5に示していない他の情報を記憶してもよい。
【0039】
画像取得部310は、画像読取装置2が読み取った画像を取得する。補正データ生成時には、画像取得部310は、画像読取装置2が読み取った画像を撮影画像204として取得する。読取時には、画像取得部310は、画像読取装置2が読み取った画像を読取画像206として取得する。
【0040】
傷補正部320は、画像取得部310が取得した撮影画像204から傷となる部分の検出を行う。傷補正部320は、傷検出部321、及び画素置換部322を備える。
【0041】
傷検出部321は、取得した撮影画像に対してエッジ検出を行い、エッジ検出により所定の範囲以内の勾配を有する画素がある場合には、検出された画素およびそれらに内包される画素を傷マスクデータの画素として検出する。
【0042】
図6図13は、傷検出部321により行われる傷マスクデータの検出の一例を示す図である。図6図13の実施形態においては、階調(濃度値)は「0」~「255」が設定される。階調(濃度値)は、「0」~「255」に限られるものではなく「0」~「255」以外の値や記号などを採用してもよい。
【0043】
図6(1)に示すように、本実施の形態においては、撮影画像204の基本となる階調は「100」として読み取られる。撮影画像204の影となる部分の階調は基本となる階調「100」より低い(暗い)階調「50」や「80」となる一方で、光が強く当たる部分(明るい光の箇所)の階調は基本となる階調「100」よりも高い(明るい)階調「150」として読み取られる。また、撮影画像204の傷203となる部分の階調は、極端に明るい階調または極端に暗い階調として読み取ることができる。図6(1)の例では、傷203となる部分の階調は明るい光の箇所と同様に高い(明るい)階調「150」として読み取られる。
【0044】
図6(2)は、N×Mの撮影画像204の階調を画素単位で出力した一例である。図6(2)の例では、低い階調として検出されている箇所r1の画素は影に相当する箇所であると推測することができる。また、高い階調として検出されている箇所r2の画素は傷に相当する箇所であると推測することができる。
【0045】
傷検出部321は、読み取った階調に基づいてエッジ検出を行う。エッジ検出としては、特徴検出(feature detection)や特徴抽出(feature extraction)により、撮影画像の明るさを鋭敏に、具体的には、不連続に変化している箇所を特定することができる既知のアルゴリズムを採用することができる。
【0046】
図7は、図6の撮影画像204の階調に基づいて特徴量を図示したグラフである。図7のグラフの縦軸は階調(明るさ)を表し、横軸は位置(座標)を表す。
【0047】
図7に示すように、基準の階調「100」より低い階調の部分は影成分c1として抽出される。基準の階調「100」より高い階調の部分は強い光の成分c2として抽出される。そして、傷検出部321は、急峻な勾配(ピーク)p1、p2、p3、すなわち不連続に変化している箇所を傷マスクデータの画素として検出する。
【0048】
なお、勾配(ピーク)p1は、影成分c1の近傍にあるため、影成分c1と傷の箇所が合わさって生成されているものと推測することができる。勾配(ピーク)p2は、近傍に影成分も強い光の成分もないことから、傷の箇所のみを表しているものと推測することができる。勾配(ピーク)p3は、強い光の成分c2の近傍にあるため、強い光の成分c2と傷の箇所が合わさって生成されているものと推測することができる。
【0049】
傷検出部321は、エッジ検出の結果、所定の範囲以内の勾配を有する画素、すなわち、勾配(ピーク)に対応する画素が検出された場合には、検出された画素およびそれらに内包される画素を傷マスクデータの画素として検出する。
【0050】
図8図13を参照して、エッジ検出の一例について説明する。図8図13に示す本実施の形態においては、急峻な勾配検出(エッジ検出)の具体例として、Sobelフィルタによる勾配検出を適用した場合について説明する。
【0051】
Sobelフィルタによる急峻な勾配検出は、主に6つの工程で行われる。
第1工程:横方向のSobelフィルタによる処理
第2工程:縦方向のSobelフィルタによる処理
第3工程:横方向と縦方向のSobelフィルタ適用結果の合成
第4工程:2値化
第5工程:オブジェクトの輪郭検出
第6工程:オブジェクト検出
【0052】
図8は、第1工程の横方向のSobelフィルタによりエッジ検出を行っている一例を示している。図8(1)は、横方向のSobelフィルタを示し、図8(2)は、図8(1)の横方向のSobelフィルタの適用結果を示す。
【0053】
図9は、第2工程の縦方向のSobelフィルタによりエッジ検出を行っている一例を示している。図9(1)は、縦方向のSobelフィルタを示し、図9(2)は、図9(1)の縦方向のSobelフィルタの適用結果を示す。
【0054】
図10は、第3工程の横方向と縦方向のSobelフィルタ適用結果の合成を行っている一例を示している。図10の第3工程によれば、図8の第1工程の横方向のSobelフィルタによりエッジ検出の適用結果と、図9の第2工程の縦方向のSobelフィルタによりエッジ検出による適用結果と、に基づいて、傷検出部321は、各画素における勾配(エッジ)の強さを検出することができる。
【0055】
図11は、第4工程の2値化を行っている一例を示している。図11によれば、図10の第3工程で得られた各画素におけるエッジの強さを所定の閾値で2値化する。傷検出部321は、2値化した値に基づいて勾配(エッジ)を特定する。本実施の形態においては、閾値は「100」が設定されているがこの限りではなく、任意の値に設定することができる。図11の実施形態においては、「0」が傷によるエッジなし、「1」が傷によるエッジありを示している。
【0056】
図12は、第5工程のオブジェクトの輪郭検出を行っている一例を示している。図12は、図11の第4工程で特定した傷によるエッジの2値データに対して、輪郭検出走査を行い、オブジェクトの輪郭を特定している。第5工程のオブジェクトの輪郭検出は、例えば下記参考文献1の技術など、オブジェクトの輪郭を特定できる既知のアルゴリズムを用いることができる。
参考文献1:S. Suzuki and K. Abe, “Topological structural analysis of digitized binary images by border following”, Computer Vision, Graphics and Image Processing”, 1985.
【0057】
図13は、第6工程のオブジェクト検出を行っている一例を示している。図13は、図12の第5工程で特定したオブジェクトの輪郭情報に基づき、輪郭内部をオブジェクト(傷の箇所)と判定する。図13の実施形態においては、オブジェクトの判定結果は、2値化される。図13の実施形態では「0」が傷なし、「1」が傷ありを示している。第6工程のオブジェクトの検出は、例えば、Scanline Polygon filling Algorithmなど、輪郭内部をオブジェクトと判定できる多角形充填アルゴリズムなどの既知のアルゴリズムを採用することができる。
【0058】
傷検出部321は、図13の第6工程で2値化した画素データに基づいて傷マスクデータを作成する。傷マスクデータは、後述の補正データを生成するために用いられる傷の画素を示すデータである。傷マスクデータは、エッジ検出の2値化により所定の範囲以内の勾配を有すると判断された画素およびそれらに内包される画素、すなわち、図13においてオブジェクト検出した結果「1」の値が対応付けられた画素に基づいて図13に示すデータを傷マスクデータとして作成する。
【0059】
画素置換部322は、傷検出部321により傷マスクデータの画素が検出された場合には、傷マスクデータの画素の近傍の画素を、当該傷マスクデータの本来の画素の濃度として置換する。また、画素置換部322は、傷マスクデータの画素の近傍の平均の画素を、当該傷マスクデータの本来の画素の濃度として置換してもよい。近傍とは、所定数の画素の距離をいう。所定数の画素の距離は任意に設定することができる。例えば、ある画素に対して上下左右斜め方向に1画素の範囲を近傍として設定することができる。
【0060】
具体的には、画素置換部322は、図13において傷であると判定された画素位置(4,5)の近傍の画素位置(5,4)の階調「100」を、当該傷マスクデータの本来の画素位置(4,5)の階調の濃度として置換する。これにより、傷であると判断された画素の階調は、傷がないとして判断された周囲の画素に合わせることができ、傷の影響を受けずに補正データを生成することができる。
【0061】
補正データ生成部330は、画素置換部322により置換されたデータに基づいて、光の強弱を補正するための補正データを生成する。補正データ生成部330は、画素ごとに上述の式1に基づいて判断することによって、補正データ(光量マップ)を生成することができる。
【0062】
図14は、補正データ生成部330により生成される補正データ(光量マップ)の一例を示す図である。図14に示すように、補正データ生成部330は、各画素の倍率(xx倍)を算出して光量マップを生成する。例えば、画素位置(11,4)の補正データを生成する例について説明する。基準媒体23内の基準階調は「100」であり、画素位置(11,4)の光の強弱部の階調は「90」であるため、画素位置(11,4)の補正データ(xx倍)=100/90=「1.1」倍(小数点第1位まで算出)となる。
【0063】
同様に、補正データ生成部330は、すべての画素に対して式1を適用して補正データを生成することができる。補正データ生成部330は、生成した補正データ205(光量マップ)を記憶部104に記憶する。
【0064】
画像補正部340は、補正データ生成部330により生成された補正データに基づいて帳票の読取画像206の濃度(階調)を補正する。帳票の読取時には、画像取得部310は帳票の読取画像206を取得する。そして、画像補正部340は、画像取得部310が取得した読取画像206の各画素に対し、記憶部104に記憶されている補正データ(光量マップ)に基づいて演算して、各画素の濃度(階調)を補正して、出力画像207を生成する。生成された出力画像207は出力装置103のディスプレイに出力される。
【0065】
図15は、画像処理装置3により実行される補正データ生成処理の一例を示すフローチャートである。本実施の形態における補正データ生成処理は、図1図2を用いて説明した画像処理装置3が補正データ生成処理プログラムにしたがって実行する。
【0066】
補正データ生成処理プログラムは、図15に示した補正データ生成処理のフローのようにして実行される。補正データ生成処理の対象となる基準媒体は、上述したように、無地の媒体である。
【0067】
はじめに、画像処理装置3の制御部101は、画像読取装置2を通じて基準媒体23の撮影画像204の読取を行う(ステップS11)。
【0068】
制御部101は、ステップS11で読み取った基準媒体23の撮影画像204に基づいて、傷検出を行う(ステップS12)。この処理では、制御部101は、ステップS11で読み取った撮影画像に対してエッジ検出を行う。そして、制御部101は、エッジ検出の結果、所定の範囲内の勾配を有する画素があるか否かを判定する。エッジ検出の結果、所定の範囲内の勾配を有する画素がある場合には、制御部101は、傷マスクデータの画素として検出する。制御部101は、基準媒体23の撮影画像204のすべての画素に対してステップS12の傷検出の処理を行う。
【0069】
制御部101は、傷マスクデータの画素の近傍の画素を、当該傷マスクデータの本来の画素の濃度として置換する画素の置き換えを行う(ステップS13)。この処理では、制御部101は、当該傷マスクデータの画素の濃度を当該画素の最も近傍の傷でない画素の濃度に置き換える。
【0070】
制御部101は、ステップS13で置換されたデータに基づいて、補正データ(光量マップ)を生成する(ステップS14)。この処理では、制御部101は、全ての画素に対して、上述の式1を適用することによって、補正データ(光量マップ)を生成する。この処理が終了すると補正データ生成処理は終了となる。
【0071】
図16は、画像処理装置3により実行される帳票読取処理の一例を示すフローチャートである。本実施の形態における帳票読取処理は、図1図2を用いて説明した画像処理装置3が帳票読取処理プログラムにしたがって実行する。帳票読取処理は、図15で説明した補正データ生成処理において、補正データの生成後に実行される。
【0072】
帳票読取処理プログラムは、図16に示した帳票読取処理のフローのようにして実行される。帳票読取処理の対象となる帳票は、上述したように、振込依頼書、入出金伝票などの書類である。
【0073】
はじめに、画像処理装置3の制御部101は、画像読取装置2を通じて帳票の読取画像206の読取を行う(ステップS21)。
【0074】
制御部101は、図15のステップS14で生成した補正データ(光量マップ)により帳票の読取画像206の濃度(階調)を補正する画像補正を行う(ステップS22)。この処理では、制御部101は、読み取った読取画像206の各画素に対し、記憶部104に記憶されている補正データ(光量マップ)に基づいて演算する。そして、制御部101は、各画素の濃度(階調)を補正して、出力画像207を生成する。
【0075】
制御部101は、ステップS22において画像補正された出力画像を出力装置103のディスプレイに出力する(ステップS23)。この処理が終了すると、帳票読取処理は終了となる。
【0076】
以上の実施の形態により、画像処理装置3の傷検出部321は、取得した撮影画像に対してエッジ検出を行い、エッジ検出により所定の範囲以内の勾配を有する画素がある場合には、検出された画素およびそれらに内包される画素を傷マスクデータの画素として検出する。
【0077】
画素置換部322は、傷検出部321により傷マスクデータの画素が検出された場合には、傷マスクデータの画素の近傍の画素を、傷マスクデータの本来の画素の濃度として置換する。そして、補正データ生成部330は、画素置換部322が置換したデータに基づいて、光の強弱を補正するための補正データを生成する。これにより、基準媒体に傷が生じている場合であっても影や強い光の影響を受けずに画像補正を行うことができる補正データを生成することができる。
【0078】
なお、本発明は上述した実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階でのその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成することができる。例えば、実施の形態に示される全構成要素を適宜組み合わせても良い。更に、異なる実施の形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。このような、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用が可能である。
【符号の説明】
【0079】
1 :帳票処理システム
2 :画像読取装置
3 :画像処理装置
21 :台座
22 :カメラ
23 :基準媒体
101 :制御部
102 :入力装置
103 :出力装置
104 :記憶部
105 :インターフェース
106 :バス
204 :撮影画像
205 :補正データ
206 :読取画像
207 :出力画像
310 :画像取得部
320 :傷補正部
321 :傷検出部
322 :画素置換部
330 :補正データ生成部
340 :画像補正部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16