IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電産サーボ株式会社の特許一覧

特開2023-128159信号処理回路、モータ制御装置、モータ、および送風装置
<>
  • 特開-信号処理回路、モータ制御装置、モータ、および送風装置 図1
  • 特開-信号処理回路、モータ制御装置、モータ、および送風装置 図2
  • 特開-信号処理回路、モータ制御装置、モータ、および送風装置 図3
  • 特開-信号処理回路、モータ制御装置、モータ、および送風装置 図4
  • 特開-信号処理回路、モータ制御装置、モータ、および送風装置 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128159
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】信号処理回路、モータ制御装置、モータ、および送風装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 29/50 20160101AFI20230907BHJP
【FI】
H02P29/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022032313
(22)【出願日】2022-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000228730
【氏名又は名称】ニデックアドバンスドモータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 秀哲
【テーマコード(参考)】
5H501
【Fターム(参考)】
5H501AA08
5H501AA20
5H501BB06
5H501CC04
5H501HA01
5H501HA08
5H501HB16
5H501JJ26
(57)【要約】      (修正有)
【課題】PWM信号のノイズを低減しつつ制御対象の制御に不具合が生じることを抑制できる信号処理回路、及びモータ制御装置を提供する。
【解決手段】信号処理回路はローパスフィルタを有し、第1PWM信号を出力する第1出力回路部と所定の電圧値でクランプするクランプ回路部とクランプされた第1PWM信号に基づいて、第2PWM信号を出力する第2出力回路部とを備える。第1出力回路部は入力端子部と、一端がローパスフィルタを介して入力端子部に繋がる第1抵抗部とを有する。第1PWM信号の波形において、信号レベルがローからハイに切り替わる立ち上がり時間は、信号レベルがハイからローに切り替わる立ち下がり時間よりも長く、信号レベルがローからハイに切り替わる立ち上がりエッジの始点における変化の割合は、立ち上がりエッジの終点における変化の割合よりも大きく、信号レベルがハイからローに切り替わる立ち下がりエッジは、線形である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローパスフィルタを有し、入力信号に基づいて第1PWM信号を出力する第1出力回路部と、
前記第1PWM信号を所定の電圧値でクランプするクランプ回路部と、
前記クランプ回路部によってクランプされた前記第1PWM信号に基づいて、第2PWM信号を出力する第2出力回路部と、
を備え、
前記第1出力回路部は、
前記入力信号に基づいて動作するトランジスタの出力端子に接続される入力端子部と、
一端が前記ローパスフィルタを介して前記入力端子部に繋がる第1抵抗部と、
を有し、
前記第1抵抗部の他端は、第1電源に繋がっており、
前記第1PWM信号の波形において、
信号レベルがローからハイに切り替わる立ち上がり時間は、信号レベルがハイからローに切り替わる立ち下がり時間よりも長く、
信号レベルがローからハイに切り替わる立ち上がりエッジの始点における変化の割合は、前記立ち上がりエッジの終点における変化の割合よりも大きく、
信号レベルがハイからローに切り替わる立ち下がりエッジは、線形である、信号処理回路。
【請求項2】
前記クランプ回路部の少なくとも一部を構成する第1トランジスタを備え、
前記第1トランジスタの入力端子は、前記第1抵抗部の前記一端と前記ローパスフィルタの出力側の端子とに繋がり、
前記所定の電圧値は、前記第1トランジスタの閾値電圧である、請求項1に記載の信号処理回路。
【請求項3】
前記ローパスフィルタの出力側の端子と前記第1トランジスタの入力端子との間で、かつ、前記第1抵抗部の前記一端と前記第1トランジスタの入力端子との間に配置された第2抵抗部を備える、請求項2に記載の信号処理回路。
【請求項4】
一端が前記第1トランジスタの出力端子に繋がる第3抵抗部を備え、
前記第3抵抗部の他端は、第2電源に繋がり、
前記第2出力回路部は、前記クランプ回路部によってクランプされた前記第1PWM信号を増幅する増幅回路であり、
前記第2出力回路部の少なくとも一部は、前記第1トランジスタと前記第3抵抗部とによって構成されている、請求項2または3に記載の信号処理回路。
【請求項5】
一端が前記第1トランジスタの入力端子に繋がり、他端が前記第1トランジスタの接地端子に繋がる第4抵抗部を備える、請求項2から4のいずれか一項に記載の信号処理回路。
【請求項6】
前記第2出力回路部の一部を構成する第2トランジスタを備え、
前記第1トランジスタの出力端子は、前記第2トランジスタの入力端子に繋がっている、請求項2から5のいずれか一項に記載の信号処理回路。
【請求項7】
一端が前記第2トランジスタの入力端子に繋がり、他端が前記第2トランジスタの接地端子に繋がる第5抵抗部を備える、請求項6に記載の信号処理回路。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の信号処理回路と、
前記信号処理回路から出力される前記第2PWM信号が入力されるモータドライバ回路と、
を備える、モータ制御装置。
【請求項9】
請求項8に記載のモータ制御装置と、
前記モータ制御装置によって制御されるモータ本体部と、
を備える、モータ。
【請求項10】
請求項9に記載のモータと、
前記モータによって回転させられる羽根車と、
を備える、送風装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号処理回路、モータ制御装置、モータ、および送風装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モータなどの制御対象を制御する方法として、PWM(Pulse Width Modulation)制御が知られている。例えば、特許文献1には、調光装置をPWM制御によって制御する方法について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-105821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなPWM制御を行うための回路においては、PWM信号のノイズを低減するために、ローパスフィルタが設けられる場合がある。しかしながら、ローパスフィルタを設けると、PWM信号の波形になまりが生じて、制御対象の制御に不具合が生じる場合があった。
【0005】
本発明の一つの態様は、上記事情に鑑みて、PWM信号のノイズを低減しつつ制御対象の制御に不具合が生じることを抑制できる信号処理回路、そのような信号処理回路を備えるモータ制御装置、そのようなモータ制御装置を備えるモータ、およびそのようなモータを備える送風装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の信号処理回路の一つの態様は、ローパスフィルタを有し、入力信号に基づいて第1PWM信号を出力する第1出力回路部と、前記第1PWM信号を所定の電圧値でクランプするクランプ回路部と、前記クランプ回路部によってクランプされた前記第1PWM信号に基づいて、第2PWM信号を出力する第2出力回路部と、を備える。前記第1出力回路部は、前記入力信号に基づいて動作するトランジスタの出力端子に接続される入力端子部と、一端が前記ローパスフィルタを介して前記入力端子部に繋がる第1抵抗部と、を有する。前記第1抵抗部の他端は、第1電源に繋がっている。前記第1PWM信号の波形において、信号レベルがローからハイに切り替わる立ち上がり時間は、信号レベルがハイからローに切り替わる立ち下がり時間よりも長く、信号レベルがローからハイに切り替わる立ち上がりエッジの始点における変化の割合は、前記立ち上がりエッジの終点における変化の割合よりも大きく、信号レベルがハイからローに切り替わる立ち下がりエッジは、線形である。
【0007】
本発明のモータ制御装置の一つの態様は、上記の信号処理回路と、前記信号処理回路から出力される前記第2PWM信号が入力されるモータドライバ回路と、を備える。
【0008】
本発明のモータの一つの態様は、上記のモータ制御装置と、前記モータ制御装置によって制御されるモータ本体部と、を備える。
【0009】
本発明の送風装置の一つの態様は、上記のモータと、前記モータによって回転させられる羽根車と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一つの態様によれば、PWM信号のノイズを低減しつつ制御対象の制御に不具合が生じることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、一実施形態における送風装置を模式的に示す概略構成図である。
図2図2は、一実施形態における信号処理回路を示す回路図である。
図3図3は、一実施形態における第1PWM信号の波形を示すグラフである。
図4図4は、一実施形態におけるクランプされた第1PWM信号の波形を示すグラフである。
図5図5は、一実施形態における第1トランジスタから出力されたPWM信号の波形を示すグラフ、および第2PWM信号の波形を示すグラフを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に示す本実施形態の送風装置100は、例えば、車両に搭載される送風装置である。送風装置100は、車両に搭載される車両制御部50によって制御される。図2に示すように、車両制御部50は、送風装置100を制御する制御回路50aを有する。本実施形態において制御回路50aは、オープンコレクタ出力回路である。制御回路50aは、トランジスタ51と、出力端子部52と、を有する。出力端子部52は、送風装置100が備える後述の入力端子部40aに接続される。
【0013】
本実施形態においてトランジスタ51は、バイポーラトランジスタである。トランジスタ51は、NPN型トランジスタである。トランジスタ51は、入力端子51aと、出力端子51bと、接地端子51cと、を有する。入力端子51aはベースであり、出力端子51bはコレクタであり、接地端子51cはエミッタである。入力端子51aには、入力信号ISが入力される。入力信号ISは、車両制御部50において生成される指令信号であり、送風装置100を制御するための信号である。出力端子51bには、出力端子部52が接続されている。接地端子51cは、グランドGNDに接続されて接地されている。
【0014】
トランジスタ51は、入力信号ISに基づいて動作する。入力信号ISは、信号レベルがハイとローとの間で所定間隔ごとに交互に切り替わる矩形波状のパルス信号である。入力信号ISの信号レベルがハイの場合に、入力端子51aから接地端子51cへと電流が流れ、出力端子51bから接地端子51cへと電流が流れる。入力信号ISの信号レベルがローの場合には、入力端子51aと接地端子51cとの間、および出力端子51bと接地端子51cとの間には電流が流れない。
【0015】
なお、トランジスタ51は、バイポーラトランジスタ以外のトランジスタであってもよい。トランジスタ51は、例えば、電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)であってもよい。この場合、例えば、入力端子51aはゲートであり、出力端子51bはドレインであり、接地端子51cはソースである。また、この場合、制御回路50aは、オープンドレイン回路である。
【0016】
図1に示すように、送風装置100は、モータ10と、モータ10によって回転させられる羽根車20と、を備える。モータ10は、モータ本体部10aと、モータ制御装置10bと、を備える。モータ本体部10aは、モータ制御装置10bによって制御される。モータ本体部10aは、羽根車20を回転させる。モータ制御装置10bは、モータドライバ回路30と、信号処理回路40と、を備える。モータドライバ回路30は、モータ本体部10aに接続されている。モータドライバ回路30は、信号処理回路40から入力される信号に基づいてモータ本体部10aに電力を供給する。信号処理回路40は、制御回路50aに接続される。図2に示すように、信号処理回路40は、第1出力回路部41と、第2出力回路部42と、クランプ回路部43と、を備える。
【0017】
第1出力回路部41は、入力端子部40aと、ローパスフィルタ44と、第1抵抗部61と、を有する。入力端子部40aは、出力端子部52に接続される。これにより、入力端子部40aは、トランジスタ51の出力端子51bに接続される。入力端子部40aは、ローパスフィルタ44の入力側の端子44aに接続されている。
【0018】
ローパスフィルタ44は、コンデンサ44cと、インダクタ44dと、を有する。本実施形態においてローパスフィルタ44は、2つのコンデンサ44cと、1つのインダクタ44dと、を有するΠ型のローパスフィルタである。インダクタ44dの両端は、ローパスフィルタ44の入力側の端子44aと出力側の端子44bとにそれぞれ繋がっている。2つのコンデンサ44cは、インダクタ44dの両端にそれぞれ繋がっている。2つのコンデンサ44cの一方の電極のそれぞれは、インダクタ44dの両端にそれぞれ繋がっている。2つのコンデンサ44cの他方の電極のそれぞれは、グランドGNDに接続されて接地されている。
【0019】
第1抵抗部61の一端は、ローパスフィルタ44の出力側の端子44bに接続されている。第1抵抗部61の一端は、ローパスフィルタ44を介して入力端子部40aに繋がっている。第1抵抗部61の他端は、第1電源71に繋がっている。第1電源71の電源電圧V1は、例えば、12Vである。第1抵抗部61の抵抗値は、ローパスフィルタ44の抵抗値およびトランジスタ51の抵抗値よりも大きい。トランジスタ51の抵抗値とは、出力端子51bと接地端子51cとの間に電流が流れる際における出力端子51bと接地端子51cとの間の抵抗値である。第1抵抗部61の抵抗値は、例えば、10kΩである。なお、本実施形態において、或る部分における電圧とは、グランドGNDの電位に対する或る部分の電位の大きさを意味する。
【0020】
入力信号ISの信号レベルがハイである場合、トランジスタ51の出力端子51bと接地端子51cとの間に電流が流れるため、第1電源71から、接地端子51cが接続されたグランドGNDまで電流が流れる。これにより、第1抵抗部61において電圧降下が生じて、ローパスフィルタ44の出力側の端子44bにおける電圧Vは、第1電源71の電源電圧V1よりも低くなる。ここで、第1抵抗部61の抵抗値はローパスフィルタ44の抵抗値およびトランジスタ51の抵抗値よりも十分に大きいため、入力信号ISの信号レベルがハイである場合、ローパスフィルタ44の出力側の端子44bにおける電圧Vは十分に小さくなり、ローパスフィルタ44の出力側の端子44bから出力される信号の信号レベルは、ローとなる。
【0021】
一方、入力信号ISの信号レベルがローである場合、トランジスタ51の出力端子51bと接地端子51cとの間に電流が流れないため、第1電源71と接地端子51cが接続されたグランドGNDとの間に電流が流れない。これにより、第1抵抗部61において電圧降下が生じず、ローパスフィルタ44の出力側の端子44bにおける電圧Vは第1電源71の電源電圧V1となる。したがって、入力信号ISの信号レベルがローである場合、ローパスフィルタ44の出力側の端子44bにおける電圧Vは、入力信号ISの信号レベルがハイである場合に比べて十分に大きくなり、ローパスフィルタ44の出力側の端子44bから出力される信号の信号レベルはハイとなる。
【0022】
このように、入力信号ISの信号レベルがローとハイとで交互に切り替えられることにより、ローパスフィルタ44の出力側の端子44bから出力される信号がハイとローとの間で交互に切り替えられる。これにより、図3に示す第1PWM信号SAがローパスフィルタ44の出力側の端子44bから出力される。つまり、第1出力回路部41は、入力信号ISに基づいて第1PWM信号SAを出力する。図3に示すグラフにおいて、横軸は時間tを示しており、縦軸は電圧Vを示している。
【0023】
図3に示すように、第1PWM信号SAのハイにおける電圧Vは、電源電圧V1である。第1PWM信号SAのローにおける電圧Vは、ロー電圧VLである。ロー電圧VLは、電源電圧V1に比べて十分に小さい。ロー電圧VLは、後述する閾値電圧Vt1よりも小さい。第1PWM信号SAは、矩形状のパルス波がなまったような波形となっている。第1PWM信号SAの位相は、入力信号ISの位相に対して反転した状態となっている。つまり、入力信号ISの信号レベルがハイの場合、第1PWM信号SAの信号レベルはローである。入力信号ISの信号レベルがローの場合、第1PWM信号SAの信号レベルはハイである。
【0024】
本実施形態において第1PWM信号SAのうち信号レベルがローからハイに切り替わる立ち上がりエッジE1は、曲線状に変化する。立ち上がりエッジE1の始点E1aにおける変化の割合は、立ち上がりエッジE1の終点E1bにおける変化の割合よりも大きい。始点E1aは、第1PWM信号SAの電圧Vがロー電圧VLから上がり始める時点である。終点E1bは、第1PWM信号SAの電圧Vが電源電圧V1から下がり始める時点である。本実施形態の第1PWM信号SAの立ち上がりエッジE1における電圧Vは、始点E1aから終点E1bまで上昇し続け、終点E1bにおいて電源電圧V1に到達する。立ち上がりエッジE1における変化の割合とは、立ち上がりエッジE1における時間tに対する電圧Vの変化の割合であり、立ち上がりエッジE1の傾きである。立ち上がりエッジE1における変化の割合は、始点E1aから終点E1bに向かうに従って徐々に小さくなっている。始点E1aにおける変化の割合とは、始点E1aから単位時間経過したときに増加した電圧Vの値を当該単位時間で除した値である。終点E1bにおける変化の割合とは、終点E1bの単位時間前の時点から終点E1bまでに増加した電圧Vの値を当該単位時間で除した値である。
【0025】
第1PWM信号SAのうち信号レベルがハイからローに切り替わる立ち下がりエッジE2は、直線状に変化する。言い換えれば、第1PWM信号SAにおいて立ち下がりエッジE2は、線形である。これにより、立ち下がりエッジE2における変化の割合は、一定となっている。立ち下がりエッジE2における変化の割合とは、立ち下がりエッジE2における時間tに対する電圧Vの変化の割合であり、立ち下がりエッジE2の傾きである。立ち下がりエッジE2において第1PWM信号SAの電圧Vは、電源電圧V1からロー電圧VLまで瞬時に変化する。つまり、第1PWM信号SAにおいて、信号レベルがハイからローに切り替わる立ち下がり時間t2は、ほぼゼロとなっている。これにより、本実施形態の第1PWM信号SAにおいて、信号レベルがハイからローに切り替わる立ち下がり時間t2は、信号レベルがローからハイに切り替わる立ち上がり時間t1よりも短くなっている。言い換えれば、本実施形態の第1PWM信号SAにおいて、信号レベルがローからハイに切り替わる立ち上がり時間t1は、信号レベルがハイからローに切り替わる立ち下がり時間t2よりも長くなっている。
【0026】
立ち下がり時間t2がほぼゼロであるため、立ち下がりエッジE2における変化の割合は、無限大に近くなる。これにより、立ち下がりエッジE2は、図3に示すグラフにおける縦軸に対してほぼ平行となっている。立ち下がりエッジE2における変化の割合の絶対値は、立ち上がりエッジE1の始点E1aにおける変化の割合の絶対値よりも大きい。
【0027】
第1PWM信号SAの信号レベルがローからハイに切り替わる場合、ローパスフィルタ44に設けられたコンデンサ44cに電荷が徐々に溜まっていくため、第1PWM信号SAの電圧Vが徐々に上昇していく。そのため、第1PWM信号SAの立ち上がりエッジE1は、上述した形状となる。一方、第1PWM信号SAの信号レベルがハイからローに切り替わる場合、トランジスタ51の出力端子51bから接地端子51cへと電流が流れるため、ローパスフィルタ44に設けられたコンデンサ44cに溜められた電荷が、接地端子51cが接続されたグランドGNDまで瞬時に流れ、第1PWM信号SAの電圧Vが瞬時にロー電圧VLまで低下する。そのため、第1PWM信号SAの立ち下がりエッジE2は、上述した形状となる。
【0028】
クランプ回路部43は、第1PWM信号SAを所定の電圧値でクランプする回路である。クランプ回路部43は、ローパスフィルタ44の出力側の端子44bに接続されている。クランプ回路部43は、第1トランジスタ81を有する。つまり、本実施形態において信号処理回路40は、クランプ回路部43の少なくとも一部を構成する第1トランジスタ81を備える。第1トランジスタ81は、後述する第2抵抗部62を介して、ローパスフィルタ44の出力側の端子44bに接続されている。
【0029】
本実施形態において第1トランジスタ81は、バイポーラトランジスタである。第1トランジスタ81は、NPN型トランジスタである。第1トランジスタ81は、入力端子81aと、出力端子81bと、接地端子81cと、を有する。入力端子81aはベースであり、出力端子81bはコレクタであり、接地端子81cはエミッタである。入力端子81aは、後述する第2抵抗部62を介して、第1抵抗部61の一端とローパスフィルタ44の出力側の端子44bとに繋がっている。接地端子81cは、グランドGNDに接続されて接地されている。本実施形態において、クランプ回路部43によって第1PWM信号SAをクランプする所定の電圧値は、第1トランジスタ81の閾値電圧Vt1である。閾値電圧Vt1は、例えば、0.7Vである。
【0030】
入力端子81aにおける電圧Vが閾値電圧Vt1よりも低い場合には、入力端子81aと接地端子81cとの間、および出力端子81bと接地端子81cとの間に電流が流れない。一方、入力端子81aにおける電圧Vが閾値電圧Vt1になると、入力端子81aから接地端子81cへと電流が流れ、かつ、出力端子81bから接地端子81cへと電流が流れる。
【0031】
入力端子81aから接地端子81cへと電流が流れない状態では、入力端子81aの電圧Vは、ローパスフィルタ44の出力側の端子44bにおける電圧V、すなわち第1PWM信号SAの電圧Vと同じ値となる。そのため、第1PWM信号SAの電圧が閾値電圧Vt1以上になると、入力端子81aの電圧Vが閾値電圧Vt1となり、入力端子81aから接地端子81cへと電流が流れるようになる。第1PWM信号SAの電圧Vが閾値電圧Vt1以上の場合、入力端子81aの電圧Vは、閾値電圧Vt1に維持される。これにより、入力端子81aの電圧Vの波形は、第1PWM信号SAのうち閾値電圧Vt1よりも大きい電圧Vが閾値電圧Vt1に固定された波形となる。具体的には、入力端子81aの電圧Vの波形は、図4に示す第1PWM信号SBの波形となる。第1PWM信号SBは、クランプ回路部43によってクランプされた第1PWM信号である。このようにして、クランプ回路部43は、第1PWM信号SAを閾値電圧Vt1でクランプして、第1PWM信号SBにする。なお、図4に示すグラフにおいて、横軸は時間tを示しており、縦軸は電圧Vを示している。
【0032】
なお、第1トランジスタ81は、バイポーラトランジスタ以外のトランジスタであってもよい。第1トランジスタ81は、例えば、電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)であってもよい。この場合、例えば、入力端子81aはゲートであり、出力端子81bはドレインであり、接地端子81cはソースである。
【0033】
図2に示すように、本実施形態において、ローパスフィルタ44の出力側の端子44bと第1トランジスタ81の入力端子81aとの間には、第2抵抗部62が配置されている。つまり、信号処理回路40は、第2抵抗部62を備える。第2抵抗部62は、第1抵抗部61の一端と第1トランジスタ81の入力端子81aとの間に配置されている。第2抵抗部62は、第1抵抗部61と直列に接続されている。第2抵抗部62の抵抗値は、例えば、第1抵抗部61の抵抗値と同じである。第2抵抗部62の抵抗値は、例えば、10kΩである。第1トランジスタ81の入力端子81aから接地端子81cへと電流が流れる場合、当該電流は、第1電源71から第1抵抗部61、第2抵抗部62、および第1トランジスタ81を通って、接地端子81cが接続されたグランドGNDまで流れる。
【0034】
第2抵抗部62が設けられることで、第2抵抗部62によって第1トランジスタ81の入力端子81aをローパスフィルタ44の出力側の端子44bと電気的に隔てやすい。そのため、第1トランジスタ81の入力端子81aに意図しない電圧Vが掛かることを抑制できる。これにより、第1トランジスタ81が誤動作することを抑制できる。そのため、信号処理回路40における信号処理を安定化させることができる。
【0035】
本実施形態においては、第1トランジスタ81の入力端子81aと接地端子81cとに繋がる第4抵抗部64が設けられている。つまり、信号処理回路40は、第4抵抗部64を備える。第4抵抗部64の一端は、第1トランジスタ81の入力端子81aに繋がっている。第4抵抗部64の他端は、第1トランジスタ81の接地端子81cに繋がっている。第4抵抗部64の抵抗値は、第1トランジスタ81における入力端子81aと接地端子81cとの間に電流が流れる際における入力端子81aと接地端子81cとの間の抵抗値よりも大きい。第4抵抗部64の抵抗値は、例えば、第1抵抗部61の抵抗値および第2抵抗部62の抵抗値よりも大きい。第4抵抗部64の抵抗値は、例えば、20kΩである。
【0036】
第4抵抗部64によって第1トランジスタ81の入力端子81aと接地端子81cとを繋ぐことで、入力端子81aと接地端子81cとの間に電流が流れていない場合において、入力端子81aの電位と接地端子81cの電位とを安定して同じ電位にすることができる。これにより、例えば、入力端子81aに対して意図しない外乱電圧が生じた場合であっても、当該外乱電圧のエネルギをグランドGNDへと逃がすことができる。したがって、入力端子81aの電圧Vが意図せずに閾値電圧Vt1となることを抑制でき、第1トランジスタ81が誤動作することをより抑制できる。そのため、信号処理回路40における信号処理をより安定化させることができる。特に、第1トランジスタ81の入力端子81aが第2抵抗部62によってローパスフィルタ44の出力側の端子44bと電気的に隔てられている場合には、外乱電圧によって入力端子81aの電圧Vが不安定になりやすい。これに対して、第4抵抗部64を設けることで、第2抵抗部62を設けた場合であっても、上述したようにして入力端子81aの電圧Vを安定化できる。なお、入力端子81aから接地端子81cに電流が流れる場合には、第4抵抗部64には電流が流れないため、第4抵抗部64が第1トランジスタ81の動作を妨げることはない。
【0037】
第2出力回路部42は、クランプ回路部43によってクランプされた第1PWM信号SBに基づいて、第2PWM信号SDを出力する回路である。第2出力回路部42は、上述した第1トランジスタ81と、第3抵抗部63と、第2トランジスタ82と、を有する。つまり、信号処理回路40は、第2出力回路部42の一部をそれぞれ構成する第1トランジスタ81と第3抵抗部63と第2トランジスタ82とを備える。本実施形態において第2出力回路部42は、第1トランジスタ81と第3抵抗部63と第2トランジスタ82とによって構成されている。
【0038】
第3抵抗部63の一端は、第1トランジスタ81の出力端子81bに繋がっている。第3抵抗部63の他端は、第2電源72に繋がっている。本実施形態において第2電源72の電源電圧V2は、第1電源71の電源電圧V1と同じである。第2電源72の電源電圧V2は、例えば、12Vである。第3抵抗部63の抵抗値は、例えば、第1抵抗部61の抵抗値と同じである。第3抵抗部63の抵抗値は、例えば、10kΩである。
【0039】
本実施形態において第2トランジスタ82は、バイポーラトランジスタである。第2トランジスタ82は、NPN型トランジスタである。第2トランジスタ82は、入力端子82aと、出力端子82bと、接地端子82cと、を有する。入力端子82aはベースであり、出力端子82bはコレクタであり、接地端子82cはエミッタである。入力端子82aは、第1トランジスタ81の出力端子81bに繋がっている。入力端子82aは、第3抵抗部63のうち出力端子81bに繋がる一端に繋がっている。出力端子82bは、モータドライバ回路30に繋がっている。接地端子82cは、グランドGNDに接続されて接地されている。第2トランジスタ82の閾値電圧Vt2は、第2電源72の電源電圧V2よりも小さい。第2トランジスタ82の閾値電圧Vt2は、例えば、第1トランジスタ81の閾値電圧Vt1と同じである。第2トランジスタ82の閾値電圧Vt2は、例えば、0.7Vである。
【0040】
入力端子82aにおける電圧Vが第2トランジスタ82の閾値電圧Vt2よりも小さい場合には、入力端子82aと接地端子82cとの間、および出力端子82bと接地端子82cとの間に電流が流れない。一方、入力端子82aにおける電圧Vが第2トランジスタ82の閾値電圧Vt2になると、入力端子82aから接地端子82cへと電流が流れ、かつ、出力端子82bから接地端子82cへと電流が流れる。第2トランジスタ82の入力端子82aの電圧Vは、第1トランジスタ81の出力端子81bの電圧Vと同じである。
【0041】
第1トランジスタ81の入力端子81aにおける電圧Vが閾値電圧Vt1となり第1トランジスタ81の出力端子81bから接地端子81cへと電流が流れる状態では、第2電源72から、第3抵抗部63および第1トランジスタ81を通って、第1トランジスタ81の接地端子81cが繋がるグランドGNDまで電流が流れる。そのため、第3抵抗部63において電圧降下が生じて、第1トランジスタ81の出力端子81bの電圧Vおよび第2トランジスタ82の入力端子82aの電圧Vは、電源電圧V2から第3抵抗部63における電圧降下分を減じた値となる。ここで、本実施形態において第3抵抗部63の抵抗値は第1トランジスタ81の抵抗値よりも十分に大きいため、第3抵抗部63において生じる電圧降下は十分に大きく、電源電圧V2の大きさとほぼ同じとなる。これにより、第2電源72から接地端子81cが繋がるグランドGNDまで電流が流れる場合、第1トランジスタ81の出力端子81bの電圧Vおよび第2トランジスタ82の入力端子82aの電圧Vは、ほぼ0Vとなる。なお、第1トランジスタ81の抵抗値とは、出力端子81bと接地端子81cとの間に電流が流れる際における出力端子81bと接地端子81cとの間の抵抗値である。
【0042】
一方、第1トランジスタ81の入力端子81aにおける電圧V、すなわち第1PWM信号SBの電圧Vが閾値電圧Vt1よりも小さく、第1トランジスタ81の出力端子81bから接地端子81cへと電流が流れない状態では、第2トランジスタ82の入力端子82aの電圧Vが閾値電圧Vt2となり、第2電源72から、第3抵抗部63および第2トランジスタ82を通って、第2トランジスタ82の接地端子82cが接続されたグランドGNDまで電流が流れる。
【0043】
以上により、入力端子82aの電圧Vの波形は、電圧Vの値が第2電源72の閾値電圧Vt2とほぼ0Vとの間で交互に切り替えられる図5に示すPWM信号SCの波形となる。PWM信号SCは、第1トランジスタ81から出力される信号である。PWM信号SCの波形は、矩形状である。PWM信号SCの位相は、第1PWM信号SBの位相に対して反転した状態となっている。つまり、第1PWM信号SBの信号レベルがハイの場合、PWM信号SCの信号レベルはローである。第1PWM信号SBの信号レベルがローの場合、PWM信号SCの信号レベルはハイである。なお、図5に示す各グラフにおいて、横軸は時間tを示しており、縦軸は電圧Vを示している。
【0044】
PWM信号SCの信号レベルがハイの場合、第2トランジスタ82の入力端子82aの電圧Vが閾値電圧Vt2となり、入力端子82aから接地端子82cへと電流が流れ、かつ、出力端子82bから接地端子82cへと電流が流れるようになる。この場合、出力端子82bに接続されたモータドライバ回路30の第3電源31から、第2トランジスタ82を通って、第2トランジスタ82の接地端子82cが接続されたグランドGNDまで電流が流れる。当該電流が流れることで、モータドライバ回路30内の抵抗によって電圧降下が生じ、モータドライバ回路30に出力される第2PWM信号SDの信号レベルはローになる。ここで、モータドライバ回路30内の抵抗の抵抗値が第2トランジスタ82の抵抗値よりも十分に大きければ、信号レベルがローの場合の第2PWM信号SDの電圧Vは、ほぼ0Vとなる。なお、第2トランジスタ82の抵抗値とは、出力端子82bと接地端子82cとの間に電流が流れる際における出力端子82bと接地端子82cとの間の抵抗値である。
【0045】
一方、PWM信号SCの信号レベルがローの場合、第2トランジスタ82の入力端子82aの電圧Vが閾値電圧Vt2よりも小さく、入力端子82aと接地端子82cとの間、および出力端子82bと接地端子82cとの間に電流が流れない。この場合、モータドライバ回路30内の抵抗において電圧降下が生じず、モータドライバ回路30に出力される第2PWM信号SDの電圧Vは第3電源31の電源電圧V3となり、第2PWM信号SDの信号レベルはハイとなる。一例として、電源電圧V3は、3.3Vである。
【0046】
以上により、第2出力回路部42からは、電圧Vが第3電源31の電源電圧V3とほぼ0Vとの間で交互に切り替えられる図5に示す第2PWM信号SDが出力される。図5に示すように、第2PWM信号SDの波形は、矩形状である。第2PWM信号SDの位相は、PWM信号SCの位相に対して反転した状態となっている。つまり、PWM信号SCの信号レベルがハイの場合、第2PWM信号SDの信号レベルはローである。PWM信号SCの信号レベルがローの場合、第2PWM信号SDの信号レベルはハイである。第2PWM信号SDの位相は、第1PWM信号SBの位相と同じである。つまり、第1PWM信号SBの信号レベルがハイの場合、第2PWM信号SDの信号レベルはハイである。第1PWM信号SBの信号レベルがローの場合、第2PWM信号SDの信号レベルはローである。
【0047】
上述したように、第2PWM信号SDのハイにおける電圧Vは、電源電圧V3であり、第1PWM信号SBのハイにおける電圧V、すなわち閾値電圧Vt1よりも大きい。このように、本実施形態において第2出力回路部42は、クランプ回路部43によってクランプされた第1PWM信号SBを増幅して第2PWM信号SDとして出力する増幅回路である。図2に示すように、第2出力回路部42から出力される第2PWM信号SDは、モータドライバ回路30に入力される。
【0048】
なお、第2トランジスタ82は、バイポーラトランジスタ以外のトランジスタであってもよい。第2トランジスタ82は、例えば、電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)であってもよい。この場合、例えば、入力端子82aはゲートであり、出力端子82bはドレインであり、接地端子82cはソースである。
【0049】
本実施形態においては、第2トランジスタ82の入力端子82aと接地端子82cとに繋がる第5抵抗部65が設けられている。つまり、信号処理回路40は、第5抵抗部65を備える。第5抵抗部65の一端は、第2トランジスタ82の入力端子82aに繋がっている。第5抵抗部65の他端は、第2トランジスタ82の接地端子82cに繋がっている。第5抵抗部65の抵抗値は、第2トランジスタ82における入力端子82aと接地端子82cとの間に電流が流れる際における入力端子82aと接地端子82cとの間の抵抗値よりも大きい。第5抵抗部65の抵抗値は、例えば、第1抵抗部61の抵抗値、第2抵抗部62の抵抗値、および第3抵抗部63の抵抗値よりも大きく、第4抵抗部64の抵抗値と同じである。第5抵抗部65の抵抗値は、例えば、20kΩである。
【0050】
第5抵抗部65によって第2トランジスタ82の入力端子82aと接地端子82cとを繋ぐことで、入力端子82aと接地端子82cとの間に電流が流れていない場合において、入力端子82aの電位と接地端子82cの電位とを安定して同じ電位にすることができる。これにより、例えば、入力端子82aに対して意図しない外乱電圧が生じた場合であっても、当該外乱電圧のエネルギをグランドGNDへと逃がすことができる。したがって、入力端子82aの電圧Vが意図せずに閾値電圧Vt2となることを抑制でき、第2トランジスタ82が誤動作することを抑制できる。そのため、信号処理回路40における信号処理をより安定化させることができる。なお、入力端子82aから接地端子82cに電流が流れる場合には、第5抵抗部65には電流が流れないため、第5抵抗部65が第2トランジスタ82の動作を妨げることはない。
【0051】
本実施形態によれば、信号処理回路40は、ローパスフィルタ44を有し、入力信号ISに基づいて第1PWM信号SAを出力する第1出力回路部41と、第1PWM信号SAを所定の電圧値でクランプするクランプ回路部43と、クランプ回路部43によってクランプされた第1PWM信号SBに基づいて、第2PWM信号SDを出力する第2出力回路部42と、を備える。第1PWM信号SAの波形において、信号レベルがローからハイに切り替わる立ち上がり時間t1は、信号レベルがハイからローに切り替わる立ち下がり時間t2よりも長く、信号レベルがローからハイに切り替わる立ち上がりエッジE1の始点E1aにおける変化の割合は、立ち上がりエッジE1の終点E1bにおける変化の割合よりも大きく、信号レベルがハイからローに切り替わる立ち下がりエッジE2は、線形である。そのため、始点E1aの近傍においては、立ち上がりエッジE1における変化の割合が比較的大きく、第1PWM信号SAのなまりが比較的小さい。また、立ち下がりエッジE2においては、第1PWM信号SAがなまっていない状態、または第1PWM信号SAのなまりが立ち上がりエッジE1よりも十分に小さい状態となる。これらにより、第1PWM信号SAを十分に小さい所定の電圧値でクランプすることで、第1PWM信号SAを、図4に示す第1PWM信号SBのようななまりが矯正された波形にすることができる。したがって、当該クランプされた第1PWM信号SBのハイとローとの切り替えに基づいて、第2出力回路部42から第2PWM信号SDを出力することで、信号処理回路40から出力される信号を、ローパスフィルタ44によってノイズが低減され、かつ、なまりが生じていない、またはなまりが好適に小さい信号にすることができる。そのため、信号処理回路40から出力される信号をモータドライバ回路30が正しく検知できなくなることなどを抑制できる。以上により、本実施形態によれば、PWM信号のノイズを低減しつつ制御対象としてのモータ10の制御に不具合が生じることを抑制できる。
【0052】
本実施形態の第1PWM信号SAのような波形の信号は、上述したように、第1出力回路部41が、入力信号ISに基づいて動作するトランジスタ51の出力端子51bに接続される入力端子部40aと、一端がローパスフィルタ44を介して入力端子部40aに繋がる第1抵抗部61と、を有し、第1抵抗部61の他端が第1電源71に繋がっていることにより実現される。ここで、従来、PWM信号に対して単純にローパスフィルタを掛けると、PWM信号は、立ち上がりエッジおよび立ち下がりエッジの両方においてなまりが生じてしまい、PWM信号を単純に所定の電圧値でクランプするだけでは好適なPWM信号が得られなかった。具体的には、立ち下がりエッジがなまることで立ち下がりエッジの終点が大きく遅れてしまうため、なまる前のPWM信号に対してデューティ比が大きく異なってしまう問題などが生じる。
【0053】
これに対して、本実施形態では、ローパスフィルタ44を含む第1出力回路部41の構成を上述した構成とすることで、ローパスフィルタ44によってPWM信号に生じるなまりを意図的に制御して、第1PWM信号SAのような立ち上がりエッジE1になまりが生じつつ、立ち下がりエッジE2にはなまりが生じない、またはなまりがほぼ生じない波形を作り出している。これにより、第1PWM信号SAを所定の電圧値でクランプすることで、なまりが好適に矯正され、かつ、第1PWM信号SAに対してデューティ比が異なることが抑制された第1PWM信号SBを作り出すことができる。
【0054】
なお、第1PWM信号SAの立ち上がりエッジE1の始点E1aの近傍においても若干なまりが生じているため、第1PWM信号SAの信号レベルがローからハイになるタイミングは、入力信号ISの信号レベルがハイからローに切り替わるタイミングに対して僅かに遅れる。そのため、クランプされた第1PWM信号SBの信号レベルがローからハイになるタイミングも、入力信号ISの信号レベルがハイからローに切り替わるタイミングに対して僅かに遅れる。そのため、当該遅れの大きさを予め把握しておき、モータドライバ回路30などにおいて当該遅れを補償してもよい。これにより、第1PWM信号SAに基づいて出力される第2PWM信号SDによって、モータ10の回転数などを精度よく制御することができる。なお、例えば、現状のモータ10の回転数を相対的に増減させる場合には、入力信号ISのデューティ比を相対的に変更すればよいため、第1PWM信号SAに生じる上述した僅かな遅れは問題にならない。そのため、現状のモータ10の回転数を相対的に増減させる場合には、当該遅れの補償を行わなくても、モータ10の回転数を好適に制御できる。
【0055】
また、本実施形態によれば、信号処理回路40は、クランプ回路部43の少なくとも一部を構成する第1トランジスタを備える。第1トランジスタ81の入力端子81aは、第1抵抗部61の一端とローパスフィルタ44の出力側の端子44bとに繋がっている。第1PWM信号SAをクランプする所定の電圧値は、第1トランジスタ81の閾値電圧Vt1である。そのため、上述したようにして、第1トランジスタ81を利用して、第1PWM信号SAを好適にクランプすることができる。
【0056】
また、本実施形態によれば、第2出力回路部42は、クランプ回路部43によってクランプされた第1PWM信号SBを増幅する増幅回路である。第2出力回路部42の少なくとも一部は、第1トランジスタ81と第3抵抗部63とによって構成されている。そのため、第1PWM信号SAをクランプする所定の電圧値を第1トランジスタ81の閾値電圧Vt1とする場合に、クランプされた第1PWM信号SBの信号の大きさが比較的小さくなっても、第2出力回路部42によって第1PWM信号SBを増幅することで、好適な大きさの第2PWM信号SDを出力することができる。
【0057】
また、本実施形態によれば、信号処理回路40は、第2出力回路部42の一部を構成する第2トランジスタ82を備える。第1トランジスタ81の出力端子81bは、第2トランジスタ82の入力端子82aに繋がっている。ここで、上述したように、第1トランジスタ81を利用して第1PWM信号SAをクランプする場合、第1トランジスタ81の出力端子81bから出力されるPWM信号SCの位相は、クランプされた第1PWM信号SBの位相に対して反転した状態となる。これに対して、本実施形態のように、第2トランジスタ82を設けることで、上述したようにして、位相が反転していたPWM信号SCの位相をさらに反転させて、第2PWM信号SDとして出力できる。これにより、第1PWM信号SAの位相と同位相の第2PWM信号SDをモータドライバ回路30に出力できる。なお、第1PWM信号SAの位相に対して反転した位相を有するPWM信号をモータドライバ回路30に出力してよい場合には、第2トランジスタ82を設けずに、第1トランジスタ81の出力端子81bをモータドライバ回路30に接続してもよい。
【0058】
本発明は上述の実施形態に限られず、本発明の技術的思想の範囲内において、他の構成および方法を採用することもできる。第1出力回路部のローパスフィルタは、どのような種類のローパスフィルタであってもよい。クランプ回路部は、第1出力回路部から出力される第1PWM信号を所定の電圧値でクランプできるならば、どのような構成であってもよい。クランプ回路部は、第1トランジスタを有しなくてもよい。クランプ回路部は、オペアンプによって少なくとも一部が構成される回路であってもよいし、ツェナーダイオードによって少なくとも一部が構成される回路であってもよい。第2抵抗部、第3抵抗部、第4抵抗部、および第5抵抗部の少なくとも1つは、設けられなくてもよい。第2出力回路部は、増幅回路でなくてもよい。第2出力回路部は、クランプ回路部によってクランプされた第1PWM信号をそのまま第2PWM信号として出力する回路であってもよい。第2出力回路部は、第2トランジスタを有しなくてもよい。
【0059】
本発明が適用される信号処理回路は、どのような機器に搭載されてもよい。本発明が適用されるモータおよび送風装置の用途は、特に限定されない。モータおよび送風装置は、どのような機器に搭載されてもよい。モータおよび送風装置は、車両に搭載されなくてもよい。なお、以上に、本明細書において説明した各構成は、相互に矛盾しない範囲内において、適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0060】
10…モータ、10a…モータ本体部、10b…モータ制御装置、20…羽根車、30…モータドライバ回路、40…信号処理回路、40a…入力端子部、41…第1出力回路部、42…第2出力回路部(増幅回路)、43…クランプ回路部、44…ローパスフィルタ、44a,44b…端子、51…トランジスタ、51a,81a,82a…入力端子、51b,81b,82b…出力端子、51c,81c,82c…接地端子、52…出力端子部、61…第1抵抗部、62…第2抵抗部、63…第3抵抗部、64…第4抵抗部、65…第5抵抗部、71…第1電源、72…第2電源、81…第1トランジスタ、82…第2トランジスタ、100…送風装置、E1…立ち上がりエッジ,E2…立ち下がりエッジ、E1a…始点、E1b…終点、IS…入力信号、SA,SB…第1PWM信号、SD…第2PWM信号、Vt1…閾値電圧
図1
図2
図3
図4
図5