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特開2023-128183サーマルカメラ用エアーワイパーシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128183
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】サーマルカメラ用エアーワイパーシステム
(51)【国際特許分類】
   G01J 1/04 20060101AFI20230907BHJP
   G01V 8/10 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
G01J1/04 E
G01V8/10 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022032353
(22)【出願日】2022-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】516032713
【氏名又は名称】サンシステム株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】522084485
【氏名又は名称】シューワシステム有限会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094226
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100087066
【弁理士】
【氏名又は名称】熊谷 隆
(72)【発明者】
【氏名】川口 安男
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 秀吉
【テーマコード(参考)】
2G065
2G105
【Fターム(参考)】
2G065AA04
2G065AB02
2G065BA04
2G065BB50
2G065CA29
2G065DA20
2G105AA01
2G105BB16
2G105CC01
2G105DD02
2G105EE06
2G105HH01
2G105HH04
(57)【要約】
【課題】サーマルカメラの光学部品に水滴等の異物が付着することを防止できるサーマルカメラ用エアーワイパーシステムを提供すること。
【解決手段】赤外線を検出するサーマルカメラ10の先端に設置した光学部品13への異物の付着を防止するサーマルカメラ用エアーワイパーシステム1である。エア供給装置100と、光学部品13周囲の空間を囲み且つ赤外線を入射する方向に開口部23を有する内圧形成用ケーシング15と、エア供給装置100から供給される高圧エアを内圧形成用ケーシング15内に供給して内圧形成用ケーシング15内を外気より高い内圧とする内圧形成用ノズル17と、エア供給装置100から供給される高圧エアを内圧形成用ケーシング15の開口部23の前方に向けて噴射する異物浸入防止用ノズル21と、エア供給装置100から供給される高圧エアを光学部品13の表面に向けて噴射する光学部品表面噴射用ノズル19と、を具備する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線を検出するサーマルカメラの先端に設置した光学部品への異物の付着を防止するサーマルカメラ用エアーワイパーシステムにおいて、
エア供給装置と、
前記光学部品周囲の空間を囲み且つ前記赤外線を入射する方向に開口部を有する内圧形成用ケーシングと、
前記エア供給装置から供給される高圧エアを、前記内圧形成用ケーシング内に供給して当該内圧形成用ケーシング内を外気より高い内圧とする内圧形成用ノズルと、
を具備することを特徴とするサーマルカメラ用エアーワイパーシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のサーマルカメラ用エアーワイパーシステムであって、
前記エア供給装置から供給される高圧エアを、前記内圧形成用ケーシングの開口部の前方に向けて噴射する異物浸入防止用ノズルを具備することを特徴とするサーマルカメラ用エアーワイパーシステム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のサーマルカメラ用エアーワイパーシステムであって、
前記エア供給装置から供給される高圧エアを、前記光学部品の表面に向けて噴射する光学部品表面噴射用ノズルを具備することを特徴とするサーマルカメラ用エアーワイパーシステム。
【請求項4】
請求項1又は2又は3に記載のサーマルカメラ用エアーワイパーシステムであって、
雨又は雪を検知するレインセンサーを具備し、
前記レインセンサーが雨を検知すると、前記エア供給装置を起動して高圧エアを供給することを特徴とするサーマルカメラ用エアーワイパーシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーマルカメラを屋外などで使用しても、赤外線(遠赤外線)を確実に検知することができるサーマルカメラ用エアーワイパーシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、鉄道線路に設けられた踏切には、遮断機動作中の踏切内に進入している人や車両と列車との衝突事故を未然に防止するために、通行中の人や車両を監視し、遮断機作動中の踏切内に人や車両が取り残されている場合には、速やかにこれを検知し警報を発する必要があり、このため、踏切監視システムの設置が望まれている。
【0003】
上記踏切監視システムにおいて、人や車両を検出する手段の一つにサーマルカメラがある。サーマルカメラは、人や車両の温度と周囲温度の差を遠赤外線によって検知するカメラであり、踏切内を広範囲に監視でき、当該空間内に人や車両が存在するか否かを確実に検知することができ、踏切監視システムに用いて好適である。
【0004】
またサーマルカメラは、踏切監視用のシステムだけではなく、他の各種監視用(防犯用や車載用等)のシステムや、人や動物の体温測定用のシステムなどにも使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-38526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記各種用途に使用されるサーマルカメラは、これを屋外に設置する場合、風雨による水滴や埃などの異物がそのレンズ(光学部品)に付着すると、正確な検出データが得られなくなる虞があった。即ち、サーマルカメラシステムは、サーマルカメラが検出した映像を映像処理して人や車両などを検知するシステムであるが、サーマルカメラのレンズに水滴や埃などの異物が突発的に付着したような場合、映像が乱れることで映像処理装置が誤検知してしまうことがある。またサーマルカメラの映像を常時監視しているようなシステムの場合も、水滴がレンズに付着すると乾くまでの間サーマルカメラは付着した水滴の温度を感知し、映像が乱れてしまう。
【0007】
通常の可視光カメラであれば、当該可視光カメラを雨除け用のハウジング内に設置し、当該ハウジングに取り付けた透明カバーの後側に可視光カメラのレンズ部分を配置し、これによって透明カバーを通してレンズ部分に可視光を導入し、その際透明カバーの外表面にワイパーを付けるなどの対策ができる。しかし、サーマルカメラの場合はそのレンズの前面側に透明カバーを設置すると、当該透明カバー自体が発する遠赤外線を検出してしまい、測定したい対象物の遠赤外線を正確に検出できなくなる。このためサーマルカメラの場合、そのレンズの前面側に透明カバー等を設置することができない。
【0008】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、サーマルカメラの光学部品に水滴や埃などの異物が付着することを確実に防止することができるサーマルカメラ用エアーワイパーシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、赤外線を検出するサーマルカメラの先端に設置した光学部品への異物の付着を防止するサーマルカメラ用エアーワイパーシステムにおいて、エア供給装置と、前記光学部品周囲の空間を囲み且つ前記赤外線を入射する方向に開口部を有する内圧形成用ケーシングと、前記エア供給装置から供給される高圧エアを、前記内圧形成用ケーシング内に供給して当該内圧形成用ケーシング内を外気より高い内圧とする内圧形成用ノズルと、を具備することを特徴としている。
赤外線には遠赤外線を含む。また内圧形成用ノズルから前記空間内に供給する高圧エアは、直接光学部品の表面に向かわないように構成することが好ましい。
本発明によれば、内圧形成用ケーシング内の圧力を外気よりも高くするので、内圧形成用ケーシングの開口部からの水滴や雪や埃などの異物の浸入を防止することができる。
これによって、例えサーマルカメラを屋外に設置しても、光学部品への異物の付着を防止することができる。
【0010】
また本発明は、上記特徴に加え、前記エア供給装置から供給される高圧エアを、前記内圧形成用ケーシングの開口部の前方に向けて噴射する異物浸入防止用ノズルを具備することを特徴としている。
本発明によれば、内圧形成用ケーシングの開口部内への雨や雪や埃等の異物の浸入をさらに効果的に抑制でき、上記内圧形成用ノズルによる光学部品への異物の付着防止作用を相乗的に強化することができる。即ち、上記内圧形成用ノズルによって内圧形成用ケーシング内の内圧を高めることで内圧形成用ケーシングの開口部から外方(前方)に向けてエアが放出されるが、放出されたエアの流れを、異物浸入防止用ノズルによってさらに強力な高速流とさせることができる。これによって、上記内圧形形成用ノズルと異物浸入防止用ノズルの両者による効果が相乗的に発揮されることで、例えサーマルカメラを屋外に設置し、且つ強い雨や雪や風の状態になっても、光学部品への異物の付着を防止することができる。
なお、内圧形成用ノズルによる高圧エアの噴射と、異物浸入防止用ノズルによる高圧エアの噴射は、場合に応じて切替えても良い。例えば弱い雨や弱い風の場合は、内圧形成用ノズルによる高圧エアの噴射のみとし、雨や風が強くなると内圧形成用ノズルによる高圧エアの噴射に加えてさらに異物浸入防止用ノズルによる高圧エアの噴射も行うなどである。
【0011】
また本発明は、上記特徴に加え、前記エア供給装置から供給される高圧エアを、前記光学部品の表面に向けて噴射する光学部品表面噴射用ノズルを具備することを特徴としている。
本発明によれば、サーマルカメラの光学部品に直接高圧エアを噴き付けるので、当該光学部品表面にもし水滴や雪や埃等の異物が付着したとしても、これを吹き飛ばしたり、蒸発させたりすることができる。
これによって、上記内圧形成用ノズル(さらには異物浸入防止用ノズル)による効果と合わせて、光学部品表面の乾燥状態や埃の付着防止状態を、さらに確実に保つことができる。
なお、内圧形成用ノズル(さらには異物浸入防止用ノズル)による高圧エアの噴射と、光学部品表面噴射用ノズルによる高圧エアの噴射は、場合に応じて切替えても良い。例えば弱い雨や弱い風の場合は、内圧形成用ノズルによる高圧エアの噴射のみとし、雨や雪や風が強くなると異物浸入防止用ノズルによる高圧エアの噴射も行い、さらに雨や雪や風が強くなると光学部品表面噴射用ノズルによる高圧エアの噴射も行うなどである。
【0012】
また本発明は、上記特徴に加え、雨又は雪を検知するレインセンサーを具備し、前記レインセンサーが雨を検知すると、前記エア供給装置を起動して高圧エアを供給することを特徴としている。
本発明によれば、雨や雪が降っているときに高圧エアの噴射を行うので、効率的に光学部品への水滴の付着を防止できる。
【0013】
また前記エア供給装置は、エアコンプレッサーと、前記エアコンプレッサーによって高圧にされた高圧エアを分岐するエア分配器と、前記エア分配器によって分配された高圧エアを前記各ノズルに送る分配配管と、前記エア分配器から前記各分配配管への高圧エアの供給・遮断を制御する制御部と、を具備することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、サーマルカメラの光学部品への水滴や雪や埃等の異物の付着を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】サーマルカメラ用エアーワイパーシステム1のサーマルカメラ10側の部分を示す概略側断面図である。
図2図1に示すサーマルカメラ用エアーワイパーシステム1の左側面図である。
図3】サーマルカメラ用エアーワイパーシステム1のエア供給装置100側の部分を示す図である。
図4】エア供給装置100の動作フロー図である。
図5図4のステップ1-3の部分の変形例を示す一部動作フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態にかかるサーマルカメラ用エアーワイパーシステム1のサーマルカメラ10側の部分を示す概略側断面図、図2図1に示すサーマルカメラ用エアーワイパーシステム1の左側面図(図1の左方向から見た図)、図3はサーマルカメラ用エアーワイパーシステム1のエア供給装置100側の部分を示す図である。なお以下の説明において、「上」とは図1の紙面上方向をいい、「下」とはその反対方向をいうものとし、「前」とは図1の紙面左方向をいい、「後」とはその反対方向をいうものとするが、これらは、サーマルカメラ用エアーワイパーシステム1を使用する際の方向を限定する趣旨ではない。
【0017】
図1図2に示すように、サーマルカメラ10は、サーマルカメラ本体11と、サーマルカメラ本体11の先端(前端)に設置された光学部品13とを具備して構成されている。またサーマルカメラ用エアーワイパーシステム1(以下「エアーワイパーシステム1」という)は、サーマルカメラ本体11の先端側部分からその前方の空間を囲むようにサーマルカメラ本体11の外周に取り付けられる筒状の内圧形成用ケーシング15と、内圧形成用ケーシング15に取り付けられる内圧形成用ノズル17及び光学部品表面噴射用ノズル19及び異物浸入防止用ノズル21とを具備して構成されている。
【0018】
サーマルカメラ本体11は、そのケーシング内に図示しない各種光学部品や電子部品、例えば前記光学部品13からの赤外線(遠赤外線)を検出する赤外線センサ、当該赤外線センサの検出信号を処理する信号処理回路、当該信号処理回路による処理後の出力からサーマル映像を形成するための画像処理手段などを内蔵して構成されている。
【0019】
光学部品13は、ゲルマニウムなどの赤外線波長域を透過する透過率の高い材料からなるレンズによって構成されている。
【0020】
内圧形成用ケーシング15は、サーマルカメラ本体11の前側外周部分からその前方部分までを筒状に囲む筒形状に形成されており、その先端部分には赤外線を入射するための開口部23が形成されている。この内圧形成用ケーシング15によって、光学部品13周囲に空間Aが形成される。内圧形成用ケーシング15の先端部分は、前記光学部品13への赤外線の入射を妨げない範囲で、空間Aをなるべく塞いでその内圧を保持できるようにするため(同時に雨や雪(以下「雨等」という)や埃を入りにくくするため)、半径方向内側に折り曲げたリング状の覆い部25を形成している。覆い部25に囲まれるその中央部分が前記開口部23になる。内圧形成用ケーシング15は、サーマルカメラ本体11に着脱自在に取り付けられる取付構造となっている。
【0021】
内圧形成用ノズル17と光学部品表面噴射用ノズル19と異物浸入防止用ノズル21は、何れも一対ずつ設置され、図示しない取付手段によって、前記内圧形成用ケーシング15に取り付けられている。
【0022】
内圧形成用ノズル17は、内圧形成用ケーシング15の外周側壁から空間A内に挿入されて、その先端が当該空間A内の略中央位置を向くように、内圧形成用ケーシング15に取り付けられている。一対の内圧形成用ノズル17は、図2に示すように、左右対称の位置に設置されている。内圧形成用ノズル17の先端は、光学部品13の表面を向く方向以外の方向を向いており、これによって内圧形成用ノズル17から噴出される高圧エアが直接光学部品13の表面に吹きかけられないようにしている。
【0023】
光学部品表面噴射用ノズル19は、内圧形成用ケーシング15の外周側壁から空間A内に挿入されて、その先端が前記光学部品13の表面を向くように、内圧形成用ケーシング15に取り付けられている。一対の光学部品表面噴射用ノズル19は、図2に示すように、左右対称の位置に設置されている。
【0024】
異物浸入防止用ノズル21は、その先端が内圧形成用ケーシング15の先端付近の外周面近傍から前記開口部23の前方方向を向くように、内圧形成用ケーシング15に取り付けられている。一対の異物浸入防止用ノズル21は、図2に示すように、左右対称の位置に設置されている。
【0025】
図3に示すエア供給装置100は、前記各ノズル17,19,21に高圧エアを供給するものである。ここで高圧エアとは、大気圧(または内圧形成用ケーシング15の外の外気圧)よりも高い圧力の空気をいう。同図に示すように、エア供給装置100は、エアコンプレッサー101と、前記エアコンプレッサー101によって生成にされた高圧エアを分岐するエア分配器111と、前記エア分配器111によって分配された高圧エアを前記各ノズル17,19,21に送る分配配管121-1,2,3,4,5,6と、前記エア分配器111から前記各分配配管121-1,2,3,4,5,6への高圧エアの供給・遮断を制御する制御部130と、前記サーマルカメラ10を設置した周辺の雨等を検知するレインセンサー140と、場合によってはエア供給装置100のオン・オフ時間を予め設定しておくプログラマブルタイマ150と、を具備して構成されている。
【0026】
エアコンプレッサー101は、外気を圧縮して高圧エアを生成する機器であり、同時に使用する外気を、内蔵するフィルターに通すことで、埃のない高圧エアを製造する。エアコンプレッサー101は、AC電源又はDC電源によって駆動される。
【0027】
エア分配器111は、前記エアコンプレッサー101からの圧縮空気の送気管113を複数本(この例では6本)の分配管115-1、2,3,4,5,6に分岐させ、各分配管115-1,2,3,4,5,6の先端に電磁式の開閉バルブ117―1,2,3,4,5,6を設置し、さらに各開閉バルブ117―1,2,3,4,5,6に分配配管121-1,2,3,4,5,6を接続して構成されている。
【0028】
各開閉バルブ117―1,2,3,4,5,6は、それぞれ独立して、前記制御部130からのバルブ開閉信号によって、開閉制御される。なお制御部130によって各開閉バルブ117-1,2,3,4,5,6それぞれの開度の調整ができる構成としても良い。
【0029】
分配配管121-1,2は前記一対の内圧形成用ノズル17に接続されている。分配配管121-3,4は前記一対の光学部品表面噴射用ノズル19に接続されている。分配配管121-5,6は前記一対の異物浸入防止用ノズル21に接続されている。
【0030】
制御部130は、雨を検知するレインセンサー140からの雨等検出信号や、プログラマブルタイマ150による予め設定した時間でのオンオフ信号に応じて、前記エアコンプレッサー101のオン・オフや、前記エア分配器111の各開閉バルブ117―1,2,3,4,5,6の開閉などを制御するコンピュータである。
【0031】
レインセンサー140は、サーマルカメラ10が監視する場所付近に設置され、雨等が降っていること、さらには単位時間当たりの降雨量などを測定する。レインセンサー140が検出した降雨の有無や降雨量を知らせる雨等検出信号は、前記制御部130に送信される。
【0032】
なお、上記サーマルカメラ10は、例えば踏切等の屋外に設置されるが、エアコンプレッサー101やエア分配器111は、雨等のかからない場所、さらに制御部130は遠く離れた管理棟等に設置しても良い。
【0033】
図4は、上記制御部130を用いて行われるエア供給装置100の動作フロー図である。以下主として図4を用いてエアーワイパーシステム1の動作の一例を説明する。
【0034】
まずサーマルカメラ10を設置している場所付近に雨等が降り出した場合、降雨が始まったことをレインセンサー140が検出し(ステップ1-1の「Y」)、雨等検出信号を制御部130に送信する。
【0035】
これによって制御部130は、エアコンプレッサー101にON信号を出力し、これをONとすることで運転を開始させる(ステップ1-2)。同時に、全ての開閉バルブ117-1~6に開信号を送信し、これらを開とする(ステップ1-3)。
【0036】
これによって、図1図2に示す各ノズル17,19,21から高圧エアが噴射される。具体的に、一対の内圧形成用ノズル17から噴射された高圧エアは、内圧形成用ケーシング15の空間Aの内圧を大気圧よりも高い圧力に保ち、これによって開口部23から空気を外方に向けて吐出させて外気が開口部23内に入り込まないようにし、開口部23からの雨等の浸入を防止する。このとき内圧形成用ノズル17の先端は、光学部品13方向を向いていないので、万一空間A内に浸入した雨等を、光学部品13に噴き付けてしまう虞もない。
【0037】
また一対の異物浸入防止用ノズル21から噴射された高圧エアは、上記内圧形成用ノズル17によって内圧形成用ケーシング15の開口部23から外方(前方)に向けて放出されるエアをさらに強力な高速流とすることができ、内圧形成用ケーシング15の開口部23に入り込もうとする雨等を、開口部23から離れた方向(前方)に押しやる。即ち、上記内圧形形成用ノズル17による効果と合わせて、異物浸入防止用ノズル21による効果が相乗的に発揮されることで、例え強い雨等や風の状態になっても、空間A内への雨風の浸入を強力に防止でき、光学部品13への雨等の付着を防止することができる。
【0038】
さらに一対の光学部品表面噴射用ノズル19から噴射された高圧エアは、光学部品13の表面に直接噴射される。これにより、上記内圧形形成用ノズル17と異物浸入防止用ノズル21を作動させてもなお内圧形成用ケーシング15内に浸入して光学部品13に付着した雨等を吹き飛ばしたり蒸発させたりして除去することができる。
【0039】
以上のように、各ノズル17,19,21のそれぞれ異なる作用の相乗効果によって、雨等の光学部品13への付着が効果的に防止できる。
【0040】
次に、ステップ1-4において、上記開閉バルブ117-1~6の開状態が所定時間(例えば10分間)経過すると、ステップ1-1に戻って、再びレインセンサー140が雨等を検出しているか否かを検出し、雨がまだ降っている場合は上記ステップ1-2~ステップ1-4を繰り返す。
【0041】
一方、レインセンサー140が雨水を検出しなくなった場合はステップ1-5に移行し、エアコンプレッサー101をOFFにして停止し、同時に全ての開閉バルブ117-1~6を閉じる(ステップ1-6)。これによって、一連の動作は終了し、再び雨が降り出すまで、エアコンプレッサー101などの動作は停止する。
【0042】
上記動作例では、雨が降り出すと、全てのノズル17,19,21から高圧エアを噴出する動作例としたが、雨等の程度に応じて、使用するノズル17,19,21に優先順位を付けて使用するように構成しても良い。図5は、前記図4のステップ1-3の部分の変形例を示す一部動作フロー図である。
【0043】
即ち、図4のステップ1-1において雨等を検知し、エアコンプレッサー101を駆動したとき(ステップ1-2)、さらに前記レインセンサー140が検出した雨等の降雨量が予め設定していた中程度以下の降雨量であった場合(ステップ1-3Aの「小」)は、開閉バルブ117-1~6の内の、開閉バルブ117-1,2のみを開く(ステップ1-3B)。これによって、高圧エアが噴出されるのは、一対の内圧形成用ノズル17,17のみになる。
【0044】
これによって内圧形成用ケーシング15内の内圧を高めることで内圧形成用ケーシング15の開口部23から外方に向けてエアが放出され、この開口部23内への雨等の浸入を防止することができる。降雨量が少ない場合(さらには風が弱い場合)には、上記内圧形成用ノズル17,17による高圧エアの供給のみで、十分光学部品13への水滴の付着を防止できる。
【0045】
次に、前記レインセンサー140が検出した雨等の降雨量が予め設定していた中程度の降雨量であった場合(ステップ1-3Aの「中」)は、開閉バルブ117-1~6の内の、開閉バルブ117-1,2と開閉バルブ117-5,6を開く(ステップ1-3D)。これによって、高圧エアが噴出されるのは、一対の内圧形成用ノズル17,17と一対の異物浸入防止用ノズル21,21になる。
【0046】
これによって内圧形成用ケーシング15内の内圧を高め、同時に内圧形成用ケーシング15の開口部23から外方(前方)に向けて放出されるエアを強力な高速流とすることで、内圧形成用ケーシング15の開口部23に入り込もうとする雨等を、開口部23から離れた方向に強く押しやる。これによって、中程度に強い雨等や風の状態になっても、空間A内への雨風の浸入を強力に防止でき、光学部品13への雨等の付着を防止できる。
【0047】
さらに、前記レインセンサー140が検出した雨等の降雨量が予め設定していた中程度以上の降雨量であった場合(ステップ1-3Aの「大」)は、全ての開閉バルブ117-1~6を開く(ステップ1-3C)。これによって、全てのノズル17,19,21から高圧エアが噴射され、上記図4のステップ1-3において説明したと同様に、空間A内への雨風の浸入を強力に防止でき、且つそれでも付着した光学部品13表面の水滴を除去することができる。
【0048】
以上説明したように、雨の程度に応じて使用するノズル17,19,21を選択制御することで、効率的なエア供給装置100の運転を行わせることができる。
【0049】
なおさらに効率的な運転を行わせるために、2本ずつあるノズルの一方のみを使用させる場合や、各開閉バルブ117-1~6それぞれの開度を調整する場合等を追加しても良い。また一対ずつのノズルを3本以上にし、ノズル毎に使用を選択するように運転しても良い。
【0050】
また上記動作例では、レインセンサー140を用いて各ノズル17,19,21から噴射させる高圧エアの動作を制御したが、その代わりに(またはそれと共に)、風量センサを設置し、風量(または風量と降雨量の両者)に応じた制御を行っても良い。即ち、風量が少ない場合(または風と雨が少ない場合)は内圧形成用ノズル17,17の高圧エアのみを使用し、風量が中程度に多い場合(または風と雨の何れか一方が中程度に多い場合)は内圧形成用ノズル17,17と異物浸入防止用ノズル21,21の高圧エアを使用し、風量が多い場合(または風と雨の何れか一方が多い場合)は内圧形成用ノズル17,17と異物浸入防止用ノズル21,21と光学部品表面噴射用ノズル19,19の高圧エアを全て使用するなどである。
【0051】
またエア供給装置100は、レインセンサー140を用いてそのオン・オフを制御する代わりに、プログラマブルタイマ150を用いて予め設定した設定時間内(例えば監視等が必要な時間内)はオンし続ける構成としても良い。また24時間運転を続ける構成であっても良い。この場合、レインセンサー140は設置しなくても良い。
【0052】
また上記例では制御部130によってエアコンプレッサー101と各開閉バルブ117-1~6を開閉制御したが、制御部130を省略し、エアコンプレッサー101はプログラマブルタイマ150の時間設定で直接ON/OFF制御し、また各開閉バルブ117-1~6は、必要に応じて、手動で開閉するように構成しても良い。また各開閉バルブ117-1~6とは別に、各分配配管121-1~6に開度調整バルブを設置し、高圧エアの吐出量を調整しても良い。また開閉バルブ117-1~6を省略し、エアコンプレッサー101のみによって高圧エアの供給・停止を制御しても良い。
【0053】
上記エアーワイパーシステム1は、屋外のみならず、室内でも使用することができる。もちろん一般に、風雨にさらされる屋外で使用する場合の方が、本発明の効果をより生かすことができる。
【0054】
また上記従来技術の欄でも説明したが、このエアーワイパーシステム1は、例えば、鉄道線路に設けられた踏切等に設置して踏切を通過する人や車両を監視するのに用いてもよい。この場合、エアーワイパーシステム1は踏切監視用サーマルカメラのエアーワイパーシステムとなる。即ち、遮断機動作中の踏切内に進入している人や車両と列車との衝突事故を未然に防止するために、通行中の人や車両を監視し、遮断機作動中の踏切内に人や車両が取り残されている場合には、速やかにこれを検知し警報を発する必要がある。このため設置される踏切監視システム、即ち踏切内に存在する人または車両が放射する赤外線を、光学部品を通して検出するサーマルカメラ用のエアーワイパーシステムとして、本発明に係るエアーワイパーシステム1を用いることができる。
【0055】
もちろん本発明に係るエアーワイパーシステム1は、踏切監視用サーマルカメラのエアーワイパーシステムだけではなく、他の各種監視用(防犯用や車載用等)サーマルカメラのエアーワイパーシステムや、人や動物の体温測定システム用サーマルカメラのエアーワイパーシステムなど、サーマルカメラを使用するシステムであればどのようなシステムにも使用することができる。
【0056】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載がない何れの形状や構造や材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。また、上記記載及び各図で示した実施形態は、その目的及び構成等に矛盾がない限り、互いの記載内容を組み合わせることが可能である。また、上記記載及び各図の記載内容は、その一部であっても、それぞれ独立した実施形態になり得るものであり、本発明の実施形態は上記記載及び各図を組み合わせた一つの実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0057】
1 サーマルカメラ用エアーワイパーシステム
10 サーマルカメラ
13 光学部品
15 内圧形成用ケーシング
17 内圧形成用ノズル
19 光学部品表面噴射用ノズル
21 異物浸入防止用ノズル
23 開口部
100 エア供給装置
101 エアコンプレッサー
111 エア分配器
121-1,2,3,4,5,6 分配配管
130 制御部
140 レインセンサー
150 プログラマブルタイマ

図1
図2
図3
図4
図5