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特開2023-128223レンズユニット、カメラモジュール、車載システムおよび移動体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128223
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】レンズユニット、カメラモジュール、車載システムおよび移動体
(51)【国際特許分類】
   G03B 17/55 20210101AFI20230907BHJP
   G02B 7/02 20210101ALI20230907BHJP
   G03B 30/00 20210101ALI20230907BHJP
   B60R 1/22 20220101ALI20230907BHJP
【FI】
G03B17/55
G02B7/02 D
G02B7/02 E
G02B7/02 Z
G03B30/00
B60R1/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022032426
(22)【出願日】2022-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104547
【弁理士】
【氏名又は名称】栗林 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100206612
【弁理士】
【氏名又は名称】新田 修博
(74)【代理人】
【識別番号】100209749
【弁理士】
【氏名又は名称】栗林 和輝
(74)【代理人】
【識別番号】100217755
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 淳史
(72)【発明者】
【氏名】杉目 孝行
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 陽介
【テーマコード(参考)】
2H044
2H104
【Fターム(参考)】
2H044AD02
2H044AE06
2H044AJ01
2H104CC04
(57)【要約】
【課題】コネクタが一体化された一体型ヒータを支障なく容易に組付けることができるレンズユニット、カメラモジュール、車載システムおよび移動体を提供する。
【解決手段】本発明のレンズユニット11は、レンズ群Lと、このレンズ群Lが収容される鏡筒12と、給電により発生する熱をレンズに伝えるヒータ30とを備える。このレンズユニット11では、レンズ同士を嵌合させ、および/または、レンズ以外のレンズ群を構成する光学素子とレンズとを嵌合させ、および/または、光学素子同士を嵌合させてこれらを光学的に位置決めすることにより、その嵌合領域の径方向外側で、鏡筒12とレンズおよび/または光学素子との間にヒータ30の給電部36を挿通するための挿通空間70を光軸方向に沿って確保するようになっている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のレンズが当該レンズの光軸に沿って並べられて成るレンズ群と、このレンズ群が収容される鏡筒と、給電により発生する熱を前記レンズに伝えるヒータとを備えるレンズユニットであって、
前記ヒータは、前記レンズ間に配置され、給電により熱を発生させる環状体としての加熱部と、電源側に電気的に接続されるコネクタと、前記コネクタと前記加熱部とを電気的に接続するように延在して前記加熱部に電力を供給する給電部とを有し、前記加熱部と前記給電部と前記コネクタとが一体に形成され、
前記レンズ同士を嵌合させ、および/または、前記レンズ以外の前記レンズ群を構成する光学素子と前記レンズとを嵌合させ、および/または、前記光学素子同士を嵌合させてこれらを光学的に位置決めすることにより、その嵌合領域の径方向外側で、前記鏡筒と前記レンズおよび/または前記光学素子との間に前記ヒータの前記給電部を挿通するための挿通空間を光軸方向に沿って確保するようになっていることを特徴とするレンズユニット。
【請求項2】
前記鏡筒には、前記挿通空間の像側端部で、前記ヒータの前記給電部を前記鏡筒の外部に導出できるようにする通孔が形成されることを特徴とする請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項3】
前記通孔を通じて前記ヒータの前記加熱部を前記鏡筒内に導入できるように前記加熱部の環状体の一部が分断されていることを特徴とする請求項2に記載のレンズユニット。
【請求項4】
前記通孔を境に前記鏡筒が分割可能になっていることを特徴とする請求項2または3に記載のレンズユニット。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のレンズユニットと、前記レンズユニットの前記レンズ群を通じて集光される光を電気信号に変換する撮像素子とを備えることを特徴とするカメラモジュール。
【請求項6】
車両に搭載される車載システムであって、
請求項7に記載のカメラモジュールと、
前記カメラモジュールの前記撮像素子から出力される撮像画像を処理して、前記撮像画像の中の対象物の認識を行なう制御部と、
を有することを特徴する車載システム。
【請求項7】
請求項6に記載の車載システムと乗員への情報を出力する出力装置とを搭載した移動体であって、
前記制御部は、前記対象物の認識情報を前記出力装置に出力するように構成されていることを特徴とする移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に自動車等の車両に搭載される車載カメラを構成し得るレンズユニット、カメラモジュール、車載システム、および、車載システムを搭載した移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車に車載カメラを搭載し、駐車をサポートしたり、画像認識により衝突防止を図ったりすることが行なわれており、さらにそれを自動運転に応用する試みもなされている。また、このような車載カメラのカメラモジュールは、一般に、複数のレンズが光軸に沿って並べられて成るレンズ群と、このレンズ群を収容保持する鏡筒と、レンズ群の少なくとも一個所のレンズ間に配置される絞り部材とを有するレンズユニットを備える(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
前記構成のレンズユニット(カメラモジュール)は、車載カメラに限らず、様々な光学機器で使用され得るが、とりわけ、寒冷地で外部環境に晒される場合には、レンズ表面の凍結やレンズへの着雪が想定し得るため、一般に融雪機能や防曇機能等を備えるようになっている。具体的には、そのようなレンズユニットは、例えば、図11の(a)に概略的に示されるように、鏡筒120内に収容保持されたレンズ群L(図11の(a)には、簡略化のため、レンズ群Lのうちの物体側の2つのレンズのみが示される)のうち最も物体側に位置されて鏡筒120から露出される(外部環境に晒される)第1のレンズ101を暖めるべく、第1のレンズ101の像側に面する表面101aと第1のレンズ101に像側で隣接する第2のレンズ102の物体側に面する表面102aとの間にヒータ130を介挿するようにしている。
【0004】
このように鏡筒120内に組み込まれるヒータ130は、発生した熱を効率良く第1のレンズ101の表面に伝えることができる最も有効な加熱手段として広く用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-231993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ヒータ130に対する給電は、電気的な配線を介して、一般的にはフレキシブルプリント回路基板(FPC)を介して行なわれる。そのため、ヒータ130は、例えば、図11の(b)に示されるように、レンズ101,102間に介挿される円環状のヒータ本体である加熱部130aと、加熱部130aから側方に延在するFPCから成る給電部130bとから構成され、給電部130bを通じた電力供給によって加熱部130aが発熱してレンズ101へ熱が伝えられるようになる。そして、給電部130bは、一般に、加熱部130aをレンズ101,102間に配置した後、鏡筒120の側面に設けられた引き出し孔120aを通じて鏡筒外部へと導出されて電源側に電気的に接続されるようになっている。
【0007】
このようなヒータ130の給電部130bは、コネクタを介して電源側に電気的に接続されるが、電装部品の信頼性等の問題から、具体的には、電気的な接続不良を防止する観点から、ヒータ130をコネクタと一体化することが望ましい。すなわち、図12に示されるように、加熱部130aと、給電部130bと、コネクタ130cとが一体に形成されて成る一体型ヒータ130Aを構築することが望まれる。これにより、電気的な信頼性が高まるだけでなく、部品点数も抑えられることから、製造コストの低減にも寄与し得る。
【0008】
しかしながら、そのような一体型ヒータ130Aは、特に自動車等の車両に搭載されるレンズユニットに設置されて車両側から電力供給を受ける場合には、コネクタ130cのサイズが大きくなる(時としてレンズユニットの大きさを上回る大きさになる)傾向があり、そのため、鏡筒120の側面に設けられた引き出し孔120aを通じて給電部130bと共にコネクタ130cを外部に導出することが難しく、一体型ヒータ130Aをレンズユニットに対してどのようにして組み込むかが問題となる。
【0009】
また、このような一体型ヒータ130Aのレンズユニットへの組み込みに関しては、レンズ101,102等が鏡筒120内に圧入嵌合により組み込まれて位置決めされていると、一体型ヒータ130Aにおける電極の断線や抵抗値の上昇(したがって、発熱温度の低下)がもたらされる虞がある。これは、用途等に起因する設計上の理由から鏡筒120の外径寸法が限られる一方で、鏡筒120の強度を確保する必要もあることから、レンズ101,102等を鏡筒120内に圧入嵌合すると、鏡筒120内で給電部130bであるFPCを挿通するために設けられるレンズ102等と鏡筒120との間の隙間や鏡筒120の内面の挿通溝150の寸法や深さが限られてしまい、そのため、一体型ヒータ130Aをレンズユニット内に組み込んだ際に、図11の(a)に示されるように加熱部130aとFPCである給電部130bとの間の接続境界部付近で給電部130bを直角に折り曲げなくてはならなくなるからである。このような接続境界部付近での給電部130bの極端な折り曲げは、加熱部130aの発熱体に過度な負荷をかけてその抵抗値を上昇させるだけでなく、加熱部130aを構成する電極の破断も引き起こし得る。
【0010】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、コネクタが一体化された一体型ヒータを支障なく容易に組付けることができるレンズユニット、カメラモジュール、車載システム、移動体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、本発明は、複数のレンズが当該レンズの光軸に沿って並べられて成るレンズ群と、このレンズ群が収容される鏡筒と、給電により発生する熱を前記レンズに伝えるヒータとを備えるレンズユニットであって、
前記ヒータは、前記レンズ間に配置され、給電により熱を発生させる環状体としての加熱部と、電源側に電気的に接続されるコネクタと、前記コネクタと前記加熱部とを電気的に接続するように延在して前記加熱部に電力を供給する給電部とを有し、前記加熱部と前記給電部と前記コネクタとが一体に形成され、
前記レンズ同士を嵌合させ、および/または、前記レンズ以外の前記レンズ群を構成する光学素子と前記レンズとを嵌合させ、および/または、前記光学素子同士を嵌合させてこれらを光学的に位置決めすることにより、その嵌合領域の径方向外側で、前記鏡筒と前記レンズおよび/または前記光学素子との間に前記ヒータの前記給電部を挿通するための挿通空間を光軸方向に沿って確保するようになっていることを特徴とする。
【0012】
本発明の上記構成によれば、レンズおよび/または光学素子(以下、レンズ等とも称する)を互いに嵌合させることによってこれらの光学的な位置決めを確保するようにしているため、レンズ等を鏡筒内に圧入嵌合により組み込んで位置決めする必要がなく、したがって、鏡筒の内径に合わせてレンズ等の外径を設定する必要もなくなる。そのため、レンズ等を小径化するなどして、外径寸法が限られた鏡筒の必要な強度を保ちつつ、レンズ等の嵌合領域の径方向外側で、ヒータの給電部を挿通するための十分な挿通空間をレンズ等と鏡筒との間に確保することが可能となり、その結果、狭い空間内で給電部を極端に曲げる必要がなくなる(ゆとりをもって給電部を曲げられる)とともに、鏡筒に対するヒータの組み込みも容易になる。また、これにより、ヒータの加熱部と給電部との間の接続境界部付近で給電部を極端に折り曲げなくても済むため、加熱部の発熱体に過度な負荷をかけてその抵抗値を上昇させることもなく、また、加熱部を構成する電極の接続境界部付近での破断も回避できる。また、このようにヒータの給電部を挿通するための十分な挿通空間をレンズ等と鏡筒との間に確保できれば、給電部挿通のための溝を挿通空間として鏡筒の内面に形成する必要もなくなる。
【0013】
なお、上記構成において、「挿通空間」とは、鏡筒の内面とレンズ等の外周面との間の隙間や鏡筒の内面に形成される溝など、ヒータの給電部を光軸方向に沿って挿通できる空洞領域を指し、その形態は限定されない。また、上記構成において、「光学素子」とは、中間環やスペーサなど、レンズと共に光軸方向に沿って配列されてレンズ群に所定の光学的作用をもたらす様々な素子を指す。さらに、上記構成において、「一体に形成され」とは、機械的に破壊しなければ分離できない取り外し不能に接続された状態に形成されることを意味する。
【0014】
また、上記構成において、挿通空間内におけるヒータ給電部の曲げ度合いは、挿通空間を大きく確保(鏡筒とレンズ等との間の径方向隙間を大きく確保)すればするほど、また、挿通空間の光軸方向に沿う距離を長くすればするほど、抑えることができる。そのような観点では、ヒータ加熱部の設置位置よりも像側の多くのレンズ等が嵌合状態(ひいては、レンズ群を構成する全てのレンズ等が互いに嵌合状態)であることが好ましい。これにより、挿通空間を光軸方向に沿って長く確保して(したがって、ヒータの加熱部と給電部との接続境界部付近の屈曲部と、挿通空間の像側端部でヒータの給電部を鏡筒の外部に導出できるようにする通孔における給電部の屈曲部との間の距離を長く確保して)、給電部の曲げ度合いを抑えることができる。
【0015】
また、本発明の上記構成によれば、ヒータは、加熱部および給電部とコネクタとが一体に形成されて成る一体型ヒータであるため、電気的な接続不良等を防止でき、電気的な信頼性が高まるだけでなく、部品点数も抑えられることから、製造コストの低減にも寄与し得る。
【0016】
なお、ヒータの加熱部は、その環状体の形状が特に限定されず、第1のレンズを効率的かつ効果的に加熱できる形状であれば、例えば円形、矩形など、どのような形状であっても構わない。また、加熱部としては、例えば、PTC(positive temperature coefficient)ヒータを挙げることもできる。また、給電部は、金属板や、電気配線、例えば、リード線によって形成されてもよく、あるいは、FPC(Flexible printed circuits)製の配線から成っていてもよい。この場合、給電部の電気抵抗は、加熱部よりも下げて給電部で発熱しないようにしなければならない。また、給電部と加熱部とを電気的に接続する場合には、導電性接着剤を用いてもよく、また、導電性接着剤として例えばACP(異方性導電性接着剤)を用いてもよい。ACPは、電極+-が近傍にある場合に押圧された部分のみ導通される特長があるため、製造プロセスを簡易化できるメリットがある。また、コネクタは、電源側に電気的に接続されるが、コネクタが接続される電源側としては、例えば、リチウム蓄電池、鉛蓄電池、全固体電池などが挙げられる。
【0017】
また、上記構成では、鏡筒の通孔を通じてヒータの加熱部を鏡筒内に導入できるように加熱部の環状体の一部が分断されていることが好ましい。このように加熱部の環状体の一部が分断されていれば、鏡筒の通孔から分断部を利用して加熱部をその環形状に沿って鏡筒内へ導入するなどして、加熱部を鏡筒の外側から内側へと容易に導入することが可能となる。これは、特に、ヒータが自動車等の車両に搭載されるレンズユニットに設置されて車両側から電力供給を受ける場合にヒータのコネクタのサイズが大きくなる(とりわけ、コネクタのサイズがレンズユニットの大きさを上回る)ケースにおいて、従来のように鏡筒の通孔を通じて給電部と共にコネクタを鏡筒外部に導出することが難しい状況でも、一体型ヒータのレンズユニットに対する組み込みを容易にし得るという点で有益である。
【0018】
なお、上記構成において、「分断」とは、環状体の一部が繋がっていない分離された状態を指し、例えば、単なるスリット(切れ目)、環形状に沿って所定の長さにわたって延在する(所定の幅で開口する)切り欠きなど、閉じられた環状体の内側と外側とを連通させる部分のことを言う。
【0019】
また、上記構成では、通孔を境に鏡筒が分割可能になっていることが好ましい。これによれば、例えば、分割された鏡筒の一方である像側鏡筒に対してレンズを(一部または全部が嵌合状態で)組み付けて(組み上げて)、所定の位置でレンズ間にヒータの加熱部を設置した後、ヒータの給電部を、挿通空間の位置に対応するレンズ嵌合領域の径方向外側の部位と、通孔の位置に対応する像側鏡筒の部位とに位置決めした状態で、コネクタと共に給電部の一部を像側鏡筒の外部に引き出しつつ、分割された鏡筒の他方である物体側鏡筒を像側鏡筒に対して接続するだけで、一体型ヒータが組み込まれたレンズユニットを完成させることができる。したがって、一体型ヒータを支障なく容易にレンズユニットに組付けることができるとともに、前述したように通孔を通じてヒータの加熱部を鏡筒内に導入できるように加熱部の環状体の一部を分断する必要もなくなる。
【0020】
また、本発明は、前述のレンズユニットを有するカメラモジュール、該カメラモジュールを有する車載システム、車載システムを搭載して成る移動体も提供する。このようなカメラモジュール、車載システム、移動体によっても前述したレンズユニットと同様の作用効果を得ることができる。なお、「移動体」とは、移動できる物体の全てを指し、例えば車両等を挙げることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、レンズおよび/または光学素子を互いに嵌合させてこれらを光学的に位置決めすることにより、その嵌合領域の径方向外側で、鏡筒とレンズおよび/または光学素子との間にヒータの給電部を挿通するための挿通空間を光軸方向に沿って確保するようにしているため、一体型ヒータを支障なく容易に組付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係るレンズユニットの光軸方向に沿う概略縦断面図である。
図2図1のレンズユニットに組み込まれる一体型ヒータの一例の概略平面図である。
図3図2のA-A’線に沿う断面図である。
図4図1のレンズユニットの鏡筒の側面に設けられた通孔を通じて図2のヒータの加熱部を鏡筒内へ導入していく状態を示す模式的な横断面図である。
図5図1のレンズユニットを有するカメラモジュールの光軸方向に沿う概略縦断面図である。
図6】鏡筒分割の一例を示す図1に対応するレンズユニットの概略縦断面図である。
図7】鏡筒分割の他の例を示す図1に対応するレンズユニットの概略縦断面図である。
図8】分割された鏡筒同士の接続形態の幾つかの例を示す部分断面図である。
図9】本発明の一実施形態に係るカメラモジュールを備える撮像システム(車載システム)が搭載される移動体としての車両の概略図である。
図10図9の撮像システムを構成する撮像装置の構成を示すブロック図である。
図11】(a)は従来のヒータを伴うレンズユニットの部分的な概略断面図、(b)は従来のヒータの一例を示す平面図である。
図12】従来の一体型ヒータの概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明するが、本実施形態は、特にセンシングシステムにおいて信頼性の高いシステムを実現でき、強靭なインフラの開発に貢献するものであり、国連の提唱する持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)の「9.産業と技術革新の基盤をつくろう」の、「9.1 すべての人々に安価で公平なアクセスに重点を置いた経済発展と人間の福祉を支援するために、地域・越境インフラを含む質の高い、信頼でき、持続可能かつ強靭(レジリエント)なインフラを開発する。」をターゲットとするものである。
なお、以下で説明される本実施形態のヒータが組み込まれるレンズユニットは、特に車載カメラ等のカメラモジュール用のものであり、例えば、自動車の外表面側に固定して設置され、配線は自動車内に引き込まれてディスプレイやその他の装置に接続される。また、前述した図11を含む全ての図において、レンズについてはハッチングを省略している。
【0024】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るレンズユニット11を示している。図示のように、レンズユニット11は、円筒状の鏡筒(バレル)12と、鏡筒12の内側収容空間S内に配置される複数のレンズ、例えば、第1のレンズ13、第2のレンズ14、第3のレンズ15、第4のレンズ16、第5のレンズ17および第6のレンズ18から成る6つのレンズとを有する。この場合、第3のレンズ15は光学素子としてのIRCF(赤外線カットフィルタ)20と共に中間環(光学素子)19によって支持されており、それにより、レンズ15とフィルタ20とがユニットとして一体化されたサブアセンブリ21が構成されている。また、第4のレンズ16および第5のレンズ17は互いに貼り合わされて成る貼り合わせレンズ24を構成しており、第2のレンズ14と第3のレンズ15との間には光学素子としての中間環23が介挿されている。
【0025】
なお、本実施形態では、外部に露出され得る第1のレンズ13がガラス製のレンズであり、それ以外の内側の第2~第6のレンズ14,15,16,17,18が全て樹脂(プラスチック)によって形成される樹脂レンズであるが、これに限定されない。また、これらのレンズ13,14,15,16,17,18を収容する鏡筒12は、本実施形態では樹脂製であるが、金属製であっても構わない。また、鏡筒およびレンズの形状、レンズの数等については用途等に応じて任意に設定できる。
【0026】
鏡筒12に固定されて支持されている複数のレンズ13,14,15,16,17,18は、それぞれの光軸を一致させた状態で配置されており、1つの光軸Oに沿って各レンズ13,14,15,16,17が並べられた状態となって、中間環19,23等と共に、撮像に用いられる一群のレンズ群Lを構成している。また、これらのレンズ13,14,15,16,17、18の表面には、必要に応じて、反射防止膜、親水膜、撥水膜等が設けられる。また、任意のレンズ間には絞り部材(図示せず)が適宜介挿される。この場合、絞り部材は、透過光量を制限し、明るさの指標となるF値を決定する「開口絞り」またはゴーストの原因となる光線や収差の原因となる光線を遮光する「遮光絞り」である。このようなレンズユニット11を備える車載カメラは、レンズユニット11と、図示しないイメージセンサを有する基板と、当該基板を自動車等の車両に設置する図示しない設置部材とを備えるものである。
【0027】
鏡筒12の物体側の端部(図1において上端部)には、当該端部を径方向内側に熱的にカシメてなるカシメ部25が設けられており、このカシメ部25によってレンズ群Lの最も物体側に位置される第1のレンズ13が鏡筒12の物体側の端部に固定されている。
【0028】
また、鏡筒12の像側の端部(図1において下端部)には、第6のレンズ18よりも径の小さい開口部を有する内側フランジ部26が設けられている。この内側フランジ部26とカシメ部25とにより、鏡筒12内にレンズ群Lを構成する複数のレンズ13,14,15(サブアセンブリ21),16,17、18と中間環19,23と図示しない絞り部材とが保持されている。
【0029】
最も物体側に位置される第1のレンズ13の外周面には、当該レンズ13の像側部分に径が小さくなった縮径部が設けられ、当該縮径部にシール部材としてのOリング27が設けられ、レンズ13の外周面と鏡筒12の内周面との間を、鏡筒12の物体側端部で封止した状態となっている。これにより、レンズユニット11の物体側の端部から鏡筒12内に水や塵埃等の微粒子が浸入するのを防止している。なお、第1のレンズ13と鏡筒12との間に介挿されるシール部材は、Oリングに限定されず、第1のレンズ13と鏡筒12との間をシールできる環状体であればどのような形態であっても構わない。なお、鏡筒12の外周面には、鏡筒12を車載カメラに設置する際に用いられる外側フランジ部29が鏡筒12の外周面に鍔状に設けられている。
【0030】
また、本実施形態において、鏡筒12内には、給電により発生する熱をレンズ群Lの最も物体側に位置される第1のレンズ13に伝えるためのヒータ30が配設されている。ヒータ30は、図2に明確に示されるように、給電によって熱を発生させる例えばPTC(positive temperature coefficient)ヒータ部としての加熱部32と、図示しない電源側に電気的に接続されるコネクタ34と、コネクタ34と加熱部32とを電気的に接続するように延在して加熱部32に電力を供給する給電部36とを有し、加熱部32と給電部36とコネクタ34とが一体に形成されて成る。なお、本実施形態において、コネクタ34は、自動車等の車両に搭載されるレンズユニット11に設置されて車両側から電力供給を受けるようになっていることから、加熱部32と比べてかなり大きいサイズを有する(例えば、コネクタ34のサイズがレンズユニット11の大きさを上回る)。しかしながら、図2では、加熱部32および給電部36を主体に描く関係上、便宜的に、これらとほぼ同等のサイズでコネクタ34が描かれている。
【0031】
加熱部32は、その物体側表面が鏡筒12から露出されて外部環境に晒される第1のレンズ13を暖めるべく、第1のレンズ13の像側の表面13aの形状にほぼ対応させて、一部が分断された円形の環状体として形成されるとともに、第1のレンズ13の像側に面する表面13aと第1のレンズ13に像側で隣接する第2のレンズ14の物体側に面する表面14aとの間に介挿されている。特に、本実施形態において、加熱部32は、第2のレンズ14の物体側に面する表面14aの外周に形成された環状の溝14b内にレンズ14の有効径の範囲外で位置決めされている。
【0032】
また、加熱部32は、その環状体の一部を分断する分断部39を有し、本実施形態では、この分断部39は、加熱部32と給電部36との接続境界部Pから所定の角度範囲にわたって環状体を開口させるように形成されて、環状体の内側と外側とを連通させている。しかしながら、分断部39は、このような形成形態に限定されず、環状体に沿う他の箇所に設けられてもよく、また、その開口幅も任意に設定できる(単なる切り込み状のスリットであってもよい)。
【0033】
また、加熱部32は、図2のA-A’線に沿う断面として図3に示されるような積層構造を成している。具体的には、加熱部32は、環状に延びる基板40、例えばFPC(Flexible printed circuits)製の配線基板40と、この基板40上の径方向内側および径方向外側のそれぞれの所定位置に銅箔接着剤層41を介して配設された一対の環状に延びる電極42A,42Bと、電極42A,42B間で延在して電極42A,42Bに電気的に接続される発熱体43とを有する。この場合、本実施形態では、第1の電極42Aが図示しない電源側の+極と電気的に接続され、第2の電極42Bが図示しない電源側の-極と電気的に接続され(無論、第1の電極42Aが-極で、第2の電極42Bが+極であってもよい)、いずれの電極42A,42Bも例えば銅箔メッキにより形成されている。また、発熱体43は、樹脂、例えばポリエチレン、エポキシ樹脂等によって形成されており、この発熱体43を外側から覆うようにカバーレイ接着剤層44を介して環状に延びるカバーレイ(例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)材から成る)45が銅箔接着剤層41上に積層形成されている。この場合、基板40の厚さは例えば0.05mmに設定され、電極42A,42Bの厚さは例えば0.038mmに設定され、発熱体43の厚さは例えば0.075mmに設定され、カバーレイ45の厚さは例えば0.075mmに設定される。
【0034】
また、給電部36は、加熱部32の環状体の中心線O’に沿って延在しており、加熱部32から延びるFPC配線基板40と、基板40上に形成された一対の導電性の第1および第2の給電ライン48A,48Bと、これらを覆うカバーレイ45(カバーレイ接着剤層44を介して接着される)とを有する。この場合、第1の給電ライン48Aは、加熱部32の第1の電極42Aに電気的に接続されるとともに、図示しない電源側の+極と電気的に接続されるようにコネクタ34へと延びている。また、第2の給電ライン48Bは、加熱部32の第2の電極42Bに電気的に接続されるとともに、図示しない電源側の-極と電気的に接続されるようにコネクタ34へと延びている。また、給電部36は、鏡筒12内では、鏡筒内に形成された後述する挿通空間70内に挿通されて光軸O方向に沿って案内されるとともに、鏡筒12の側面に設けられる通孔12bを通じて鏡筒12の外部へ導出され、鏡筒12の外部に位置されるコネクタ34に電気的に接続される。なお、通孔12bを通じた給電部36の鏡筒12外への導出は、後述するカメラモジュール300の外部に給電部36が露出しないように、外側フランジ部29に接続される上ケース301の内側(すなわち、外側フランジ部29の像側)で行なわれる必要がある。
【0035】
このような構成のヒータ30は、コネクタ34を例えば車体の電源側に電気的に接続した状態では、給電部36を通じて加熱部32の電極42A,42B間に電圧が印加され、電極42A,42B間で発熱体43を通じて電流が流れることによって発熱体43の表面でジュール熱が発生し、その熱がレンズ13に伝えられてレンズ13が暖められることになる。
【0036】
また、本実施形態では、このようなヒータ30のレンズユニット11内への組み込み時にヒータ30の加熱部32とFPCである給電部36との間の接続境界部P付近で給電部36を極端に折り曲げなくて済むようにするための工夫が施されている。すなわち、本実施形態では、レンズ同士を嵌合させ、レンズ以外のレンズ群Lを構成する光学素子である中間環とレンズとを嵌合させるとともに、中間環同士を嵌合させて、これらを光学的に位置決めすることにより、その嵌合領域の径方向外側で、鏡筒12とレンズおよび中間環との間にヒータ30の給電部36を挿通するための挿通空間70を光軸方向に沿って確保するようになっている。
【0037】
具体的には、図1に示されるように、第2のレンズ14と中間環23とが嵌合され、すなわち、第2のレンズ14の像側に面する表面に形成された凸部14cと中間環23の物体側に面する表面に形成された凹部23aとが嵌合され、また、中間環23と中間環19とが嵌合され、すなわち、中間環23の像側に面する表面に形成された凹部23bに中間環19の物体側に面する表面に形成された凸部19bが嵌合され、さらに、第4のレンズ16と中間環19とが嵌合され、すなわち、第4のレンズ16の物体側に面する表面に形成された凹部16aと中間環19の像側に面する表面に形成された凸部19aとが嵌合され、また、第5のレンズ17と第6のレンズ18とが嵌合され、すなわち、第5のレンズ17の像側に面する表面に形成された凸部17aと第6のレンズ18の物体側に面する表面に形成された凹部18aとが嵌合されて(つまり、レンズ16,17同士が嵌合される貼り合わせレンズ24および一体のユニットを形成するサブアセンブリ21も含めて、第1のレンズ13よりも像側の全ての光学系が嵌合されて)、これらが光学的に位置決めされることにより、第2のレンズ14から第5のレンズ17にまで至るレンズ群Lの光学系の嵌合領域の径方向外側で、鏡筒12とレンズ14,15,16,17および中間環19,23との間にヒータ30の給電部36を挿通するための環状の挿通空間70が光軸方向に沿って確保されている。なお、第5のレンズ17と嵌合する第6のレンズ18は鏡筒12の内周面に対して圧入嵌合されており、この圧入嵌合された第6のレンズ18を土台としてそれよりも物体側のレンズを嵌合状態で積み上げていくことにより、レンズ全体が鏡筒12に対して動くことなく光学的に位置決めされるようになる。また、図示しないが、スペーサなどの他の光学素子同士が嵌合されてもよく、また、前述した凹凸関係が逆であってもよい。
【0038】
このようにレンズおよび/または光学素子を互いに嵌合させることによってこれらの光学的な位置決めを確保するようにすると、(少なくとも通孔12bよりも物体側の)レンズや光学素子を鏡筒12内に圧入嵌合により組み込んで位置決めする必要がないため、鏡筒12の内径に合わせてレンズ等の外径を設定する必要もなくなる。したがって、特に本実施形態では、鏡筒12の外径を従来と同様に維持しつつ、レンズ14,15,16,17,18および中間環19,23等の外径を従来よりも小さく設定して、外径寸法が限られた鏡筒12の必要な強度を保ちつつ、前記嵌合領域の径方向外側で、ヒータ30の給電部36を挿通するための十分な挿通空間70を確保するようにしている。
【0039】
以上のような構成において、コネクタ34が一体化されたヒータ30を鏡筒12(レンズユニット11)に対して外部から組み込む場合には、まず最初に、鏡筒12内に、第6のレンズ18を物体側から組み込む。そして、この組み込み状態で、今度は、図4に示されるように、鏡筒12の側面に設けられた通孔12b(図1も参照)から、ヒータ30の環状の加熱部32を、その分断部39を利用してその環形状(円弧)に沿って鏡筒12内へ導入していく。具体的には、例えば、図4に破線で示される状態で、分断部39により形成される加熱部32の環状体の一端縁32aを通孔12bに挿通し、破線矢印で示されるように加熱部32を給電部36と共に回転させながら、加熱部32および給電部36が有する弾力性も利用しつつ、加熱部32を、実線で示されるような状態を経由して、その環形状(円弧)に沿って鏡筒12内へと徐々に導入し、最終的に加熱部32全体を鏡筒12内に挿入する。その後、給電部36の一部も通孔12bを通じて鏡筒12内へ引き込んで、弾力性を有する給電部36を緩やかに曲げるようにして加熱部32を鏡筒12内で物体側へと引き込むとともに、鏡筒12内に引き込んだ給電部36を挿通空間70に沿うように位置させつつ光軸O方向に沿って案内して加熱部32と共に物体側から鏡筒12外へ光軸方向に延出するように突出させ、鏡筒12内へのレンズ組み込み経路からヒータ30(加熱部32および給電部36)を退避させる。そして、その退避状態で、今度は、鏡筒12内に、貼り合わせレンズ24を構成する第5のレンズ17および第4のレンズ16、第3のレンズ15を含むサブアセンブリ21、中間環23、および、第2のレンズ14を組み込む。
【0040】
次に、前述したように鏡筒12内へのレンズ組み込み経路から加熱部32および給電部36を退避させた状態から、組み込み完了した第2のレンズ14の物体側の表面14a上に加熱部32を給電部36との接続境界部P付近で曲げるようにして載置し、第2のレンズ14の表面14aの外周に形成された環状の溝14b内に加熱部32を位置決めする。このとき、挿通空間70の径方向寸法および光軸方向寸法が十分に確保されているため、加熱部32と給電部36との間の接続境界部P付近で給電部36を極端に折り曲げる必要がなく、したがって、加熱部32の発熱体43に過度な負荷をかけてその抵抗値を上昇させることもなく、また、加熱部32を構成する電極42A,42Bの接続境界部P付近での破断も回避できる。また、このように挿通空間70が十分な大きさで確保されていれば、鏡筒12に対するヒータ30の組み込みも容易になる。なお、挿通空間70は、鏡筒12とレンズ14,15,16,17および中間環19,23との間のこのような環状空間に加えてまたは代えて、鏡筒の内面の溝によって形成されてもよい。
【0041】
このように第2のレンズ14の表面14a上に加熱部32を位置決めしたら、最終的に、第2のレンズ14上にOリング27が装着された第1のレンズ(他の物体側のレンズ)13を載置して、加熱部32をこれらのレンズ13,14間に位置させ、カシメ部23を径方向内側に熱カシメすることによって、第1のレンズ13を鏡筒12の物体側端部に固定する(図1の状態)。
【0042】
なお、用途や設計上の遊度などに起因して、レンズ13,14間の位置で鏡筒12の側面に図1に破線で示されるような通孔12b’を形成できる場合には、前述した組み込み方法に代えて、第2のレンズ14を鏡筒12内に組み込んだ状態で、側方から通孔12b’を通じて加熱部32および給電部36をそのまま折り曲げることなく直線的に水平に鏡筒12内へ差し入れて第2のレンズ14上に位置決めする組み込み方法を採用することもできる。
【0043】
また、図5は、前述した図1の構成を成すレンズユニット11を有する本実施形態のカメラモジュール300の概略断面図である。図示のように、このカメラモジュール300は、ヒータ30が組み込まれた図1のレンズユニット11を含んで構成される。
【0044】
カメラモジュール300は、外装部品である上ケース(カメラケース)301と、レンズユニット11を保持するマウント(台座)302とを備えている。また、カメラモジュール300は、シール部材303およびパッケージセンサ(撮像素子)304を備えている。
【0045】
上ケース301は、鏡筒12の外周面12cに鍔状に設けられるフランジ部29に係合されるとともに、レンズユニット11の物体側の端部を露出させて他の部分を覆う部材である。マウント302は、上ケース301の内部に配置されており、レンズユニット11の雄ねじ11aと螺合する雌ねじ302aを有する。シール部材303は、上ケース301の内面とレンズユニット11の鏡筒12の外周面12cとの間に介挿された部材であり、上ケース301の内部の気密性を保持するための部材である。
【0046】
パッケージセンサ304は、マウント302の内部に配置されており、かつ、レンズユニット11により形成される物体の像を受光する位置に配置されている。また、パッケージセンサ304は、外側に透明カバーを有し、その内部にCCDやCMOS等を備えており、レンズユニット11を通じて集光されて到達する光を電気信号に変換する。変換された電気信号は、カメラにより撮影された画像データの構成要素であるアナログデータやデジタルデータに変換される。
【0047】
以上説明したように、本実施形態によれば、レンズ14-18および/または光学素子19,23(レンズ等)を互いに嵌合させることによってこれらの光学的な位置決めを確保するようにしているため、(少なくとも通孔12bよりも物体側の)レンズ等を鏡筒12内に圧入嵌合により組み込んで位置決めする必要がなく、したがって、鏡筒12の内径に合わせてレンズ等の外径を設定する必要もなくなる。そのため、レンズ等を小径化して、外径寸法が限られた鏡筒12の必要な強度を保ちつつ、レンズ等の嵌合領域の径方向外側で、ヒータ30の給電部36を挿通するための十分な挿通空間70をレンズ等と鏡筒12との間に確保することが可能となり、その結果、狭い空間内で給電部を極端に曲げる必要がなくなる(ゆとりをもって給電部を曲げられる)とともに、鏡筒12に対するヒータ30の組み込みも容易になる。また、これにより、ヒータ30の加熱部32と給電部36との間の接続境界部P付近で給電部36を極端に折り曲げなくても済むため、加熱部32の発熱体43に過度な負荷をかけてその抵抗値を上昇させることもなく、また、加熱部32を構成する電極42A,42の接続境界部P付近での破断も回避できる。
【0048】
図6には、本発明の第2の実施形態に係るレンズユニット11Aが示されている。前述したように鏡筒12にレンズ14-17を圧入する必要がなければ、この第2の実施形態のように鏡筒12を分割して組み立て性をさらに向上させることも可能となる。すなわち、この第2の実施形態では、前述した第1の実施形態に加えて、通孔12bを境に鏡筒12が物体側鏡筒12Aと像側鏡筒12Bとに分割できるようになっている(この場合、通孔12bは、物体側鏡筒12Aと像側鏡筒12Bの少なくとも一方に形成されていればよい)。これによれば、例えば、分割された鏡筒の一方である像側鏡筒12Bに対して、第6のレンズ18を圧入嵌合するとともに、この第6のレンズ18上に、貼り合わせレンズ24を構成する第5のレンズ17および第4のレンズ16、第3のレンズ15を含むサブアセンブリ21、中間環23、および、第2のレンズ14を前述したように嵌合状態で組み上げて、第2のレンズ14上にヒータ30の加熱部32を載置した後、ヒータ30の給電部36を通孔12bの位置に対応する像側鏡筒12Bの部位に位置決めした状態で、コネクタ34と共に給電部36の一部を像側鏡筒12Bの外部に引き出しつつ、分割された鏡筒の他方である物体側鏡筒12Aを像側鏡筒12Bに対して上側(物体側)から接続するだけで、一体型ヒータ30が組み込まれたレンズユニット11Aを完成させることができる。したがって、一体型ヒータ30を支障なく(給電部36を極端に折り曲げることなく)容易にレンズユニット11Aに組付けることができるとともに、前述したように通孔12bを通じてヒータ30の加熱部32を鏡筒12内に導入できるように加熱部32の環状体の一部を分断する必要がなく、また、前述したように組み付けの途中で給電部36を曲げるようにして挿通空間70に沿うように光軸O方向に沿って案内して加熱部32と共に物体側から鏡筒12外へ光軸方向で延出するように突出させて鏡筒12内へのレンズ組み込み経路からヒータ30(加熱部32および給電部36)を退避させるといった面倒な作業を行なう必要もなくなる。
【0049】
図8には、分割された物体側鏡筒12Aと像側鏡筒12Bとの接続形態の幾つかの例が示されている。図8の(a)では、物体側鏡筒12Aの像側端部に形成されたネジ部12Aaと像側鏡筒12Bの物体側端部に形成されたネジ部12Baとが螺合されることによって物体側鏡筒12Aと像側鏡筒12Bとが接続固定されるようになっている。また、図8の(b)では、物体側鏡筒12Aの像側端面と像側鏡筒12Bの物体側端面とが接着剤85によって接着されることによって物体側鏡筒12Aと像側鏡筒12Bとが接続固定されるようになっている。さらに、図8の(c)では、物体側鏡筒12Aの像側端面に形成された凸部12Abが像側鏡筒12Bの物体側端面に形成された凹部12Bbに嵌合されて接着されることによって物体側鏡筒12Aと像側鏡筒12Bとが接続固定されるようになっている。
【0050】
図7には、本発明の第3の実施形態に係るレンズユニット11Bが示されている。この実施形態では、前述した第1および第2の実施形態とは異なり、第2のレンズ14および中間環23が前述した凹凸部14c,23aによって互いに嵌合されるとともに中間環19,23同士が前述した凹凸部19b,23bによって互いに嵌合されて光学的に位置決めされることによりその嵌合領域の径方向外側でのみ(第2のレンズ14および中間環23の径方向外側でのみ)挿通空間70が形成されているだけであり、中間環23よりも像側の光学系、すなわち、第3のレンズ15を含むサブアセンブリ21、貼り合わせレンズ24を構成する第5のレンズ17および第4のレンズ16、第6のレンズ18は、鏡筒12に対して圧入嵌合されて光学的に位置決めされている。この場合、挿通空間70は、第2のレンズ14および中間環23の外径を従来よりも小さく設定することによって、ヒータ30の給電部36をゆとりをもって曲げられるような十分な大きさ(径方向寸法)に設定されている。また、この実施形態では、このような構成に対応して、ヒータ30の給電部36を鏡筒12外へ導出するための通孔12bが、第2のレンズ14と中間環23との嵌合領域付近の位置に対応して鏡筒12の側面に形成されるとともに、この通孔12bを境に鏡筒12が物体側鏡筒12Aと像側鏡筒12Bとに分割できるようになっている。なお、図中、参照符号22は第5のレンズ17と第6のレンズ18との間に介挿された絞りである。
したがって、このような実施形態においても、第2の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0051】
図9には、図5のカメラモジュール300を含む撮像装置250を備える車載システム(撮像システム)が搭載される移動体としての車両240が概略的に示されている。図示のように、撮像装置250は車両240に搭載することができ、図9は、車両240における撮像装置250の搭載位置を例示する配置例である。車両240に搭載される撮像装置250は、車載カメラと呼ぶこともでき、車両240の種々の場所に設置することができる。例えば、第1の撮像装置250aは、車両240が走行する際の前方を監視するカメラとして、フロントバンパーまたはその近傍に配置されてもよい。また、前方を監視する第2の撮像装置250bは、車両240の車室内のルームミラー(Inner Rearview Mirror)の近傍に配置されてもよい。第3の撮像装置250cは、運転者の運転状況を監視するカメラとしてダッシュボード上またはインスツルメントパネル内等に配置されてもよい。第4の撮像装置250dは、車両240の後方モニター用に車両240の後部に設置されてもよい。撮像装置250a、250bはフロントカメラと呼ぶことができる。第3の撮像装置250cは、インカメラと呼ぶことができる。第4の撮像装置250dはリアカメラと呼ぶことができる。撮像装置250は、これらに限られず、左後ろ側方を撮像する左サイドカメラおよび右後ろ側方を撮像する右サイドカメラ等、種々の位置に設置される撮像装置を含む。
【0052】
撮像装置250により撮像された画像の画像信号は、車両240内の情報処理装置(制御部)242および/または表示装置(出力装置)243等に出力され得る。これらの情報処理装置242および表示装置243は、撮像装置250と共に車載システムを構成する。車両240内の情報処理装置242は、撮像装置250により取得される画像信号(撮像画像)を処理し、画像を認識(撮像画像の中の対象物を認識)して運転者の運転を支援する装置を含む。また、情報処理装置242は、撮像画像の中の対象物の認識情報を表示装置243に出力するように構成され、例えば、ナビゲーション装置、衝突被害軽減ブレーキ装置、車間距離制御装置、および、車線逸脱警報装置等を含むが、これらに限定されない。表示装置243は、情報処理装置242により処理されて出力される画像を表示するが、撮像装置250から直接に画像信号を受信することもできる。また、表示装置243は、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ、および、無機ELディスプレイを採用し得るが、これらに限定されない。表示装置243は、リアカメラ等の運転者から視認しづらい位置の画像を撮像する撮像装置250から出力された画像信号を、運転者に対して表示することができる(乗員への情報を出力できる)。
【0053】
図10には、図9の車載システムを構成する撮像装置の構成が示される。図示のように、一実施形態に係る撮像装置250は、制御部252と、記憶部254と、前述した図8のカメラモジュール300を備える。
【0054】
制御部252は、カメラモジュール300を制御するとともに、カメラモジュール80の撮像素子304から出力される電気信号を処理する。この制御部252は例えばプロセッサとして構成されてもよい。また、制御部252は1つ以上のプロセッサを含んでもよい。プロセッサは、特定のプログラムを読み込ませて特定の機能を実行する汎用のプロセッサ、および、特定の処理に特化した専用のプロセッサを含んでもよい。専用のプロセッサは、特定用途向けIC(Integrated Circuit)を含んでもよい。特定用途向けICは、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)とも称される。プロセッサは、プログラマブルロジックデバイスを含んでもよい。プログラマブルロジックデバイスは、PLD(Programmable Logic Device)とも称される。PLDは、FPGA(Field-Programmable Gate Array)を含んでもよい。制御部252は、1つ以上のプロセッサが協働するSoC(System-on-a-Chip)、および、SiP(System In a Package)のいずれかであってもよい。また、制御部252は、前述した情報処理装置242と同様の機能を有してもよく、例えば、撮像素子304から出力される撮像画像を処理して、前記撮像画像の中の対象物の認識を行なってもよい。
【0055】
記憶部254は、撮像装置250の動作に係る各種情報またはパラメータを記憶する。記憶部254は、例えば半導体メモリ等で構成されてもよい。記憶部254は、制御部252のワークメモリとして機能してもよい。記憶部254は、撮像画像を記憶してもよい。記憶部254は、制御部252が撮像画像に基づく検出処理を行なうための各種パラメータ等を記憶してもよい。記憶部254は制御部252に含まれてもよい。
【0056】
前述したように、カメラモジュール300は、レンズユニット11を介して結像する被写体像を撮像素子304で撮像し、撮像した画像を出力する。カメラモジュール300で撮像された画像は、撮像画像とも称される。
【0057】
撮像素子304は、例えば、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサまたはCCD(Charge Coupled Device)等で構成されてよい。撮像素子304は、複数の画素が並ぶ撮像面を有する。各画素は、入射した光量に応じて電流または電圧で特定される信号を出力する。各画素が出力する信号は、撮像データとも称される。
【0058】
撮像データは、全ての画素についてカメラモジュール300で読み出され、撮像画像として制御部252に取り込まれてもよい。全ての画素について読み出された撮像画像は、最大撮像画像とも称される。撮像データは、一部の画素についてカメラモジュール300で読み出され、撮像画像として取り込まれてもよい。言い換えれば、撮像データは、所定の取り込み範囲の画素から読み出されてもよい。所定の取り込み範囲の画素から読み出された撮像データは、撮像画像として取り込まれてもよい。所定の取り込み範囲は、制御部252によって設定されてもよい。カメラモジュール300は、制御部252から所定の取り込み範囲を取得してもよい。撮像素子304は、レンズユニット11を介して結像する被写体像のうち所定の取り込み範囲の画像を撮像してもよい。
【0059】
以上、本発明を様々な実施形態と関連して説明してきたが、本発明は、前述した実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。例えば、本発明において、レンズ、鏡筒などの形状は、前述した実施形態の形状に限定されない。また、ヒータの設置個所や数も限定されない。さらに、ヒータを挿通するために鏡筒に設けられる通孔および挿通空間の位置や数も限定されない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、前述した実施形態の一部または全部を組み合わせてもよく、あるいは、前述した実施形態のうちの1つから構成の一部が省かれてもよい。
【符号の説明】
【0060】
11 レンズユニット
12 鏡筒
12A 物体側鏡筒
12B 像側鏡筒
12b 通孔
30 ヒータ
32 加熱部
34 コネクタ
36 給電部
39 分断部
42A,42B 電極
43 発熱体
70 挿通空間
300 カメラモジュール
240 車両(移動体)
L レンズ群
O 光軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12