(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128228
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】内視鏡及び内視鏡システム
(51)【国際特許分類】
A61B 1/00 20060101AFI20230907BHJP
A61B 1/06 20060101ALI20230907BHJP
G02B 23/24 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
A61B1/00 680
A61B1/06 531
A61B1/00 630
G02B23/24 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022032431
(22)【出願日】2022-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】弁理士法人グローバル・アイピー東京
(72)【発明者】
【氏名】水口 直志
【テーマコード(参考)】
2H040
4C161
【Fターム(参考)】
2H040CA03
2H040CA04
2H040CA06
4C161AA00
4C161BB00
4C161CC06
4C161DD03
4C161FF35
4C161HH51
4C161JJ17
4C161QQ06
(57)【要約】
【課題】回路規模が大きくなることを抑えつつ給電線の異常を検知することのできる内視鏡を提供する。
【解決手段】内視鏡は、先端部に設けられ、発光素子をそれぞれ有する複数の発光部と、挿入管の先端部と反対側の端部の側の内視鏡の部分に設けられ、発光部のそれぞれに所定の電流を供給するよう構成された複数の電流源と、給電線と、検出部と、判定部と、を備える。給電線は、電流源から供給される電流が流れる送り側の配線であって、電流源と発光部とを接続し、発光部の出力側の接続点において互いに接続した複数の送り側の配線と、接続点から電流源の側に向かって延びる1本の戻り側の配線と、を有する。検出部は、戻り側の配線を流れる電流に関する電気的測定値を検出するよう構成されている。判定部は、検出された電気的測定値を用いて給電線の異常の有無を判定するよう構成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
体腔内に挿入される挿入管の先端部から照明光を出射し、体腔内を照明するよう構成された内視鏡であって、
前記先端部に設けられ、発光素子をそれぞれ有する複数の発光部と、
前記挿入管の前記先端部と反対側の端部の側の前記内視鏡の部分に設けられ、前記発光部のそれぞれに所定の電流を供給するよう構成された複数の電流源と、
前記電流源から供給される電流が流れる送り側の配線であって、前記電流源と前記発光素子とを接続し、前記発光部の出力側の接続点において互いに接続した複数の送り側の配線と、前記接続点から前記電流源の側に向かって延びる1本の戻り側の配線と、を有する給電線と、
前記戻り側の配線を流れる電流に関する電気的測定値を検出するよう構成された検出部と、
検出された前記電気的測定値を用いて前記給電線の異常の有無を判定するよう構成された判定部と、を備えることを特徴とする内視鏡。
【請求項2】
前記判定部は、前記電気的測定値から得られる、前記戻り側の配線を流れる電流の電流値と、前記電流源から前記発光部に向けて出力される電流の合計電流値との差分に基づいて前記給電線の異常を判定するよう構成されている、請求項1に記載の内視鏡。
【請求項3】
前記検出部は、前記戻り側の配線の途中に設けられた抵抗を有し、
前記検出部は、前記抵抗において発生する電圧値を前記電気的測定値として検出するよう構成されている、請求項1又は2に記載の内視鏡。
【請求項4】
前記戻り側の配線は、前記抵抗の出力側において前記内視鏡の回路グランドと接続され、
前記検出部は、前記抵抗の入力側の電位を前記電圧値として検出するよう構成されている、請求項3に記載の内視鏡。
【請求項5】
前記検出部は、前記内視鏡の回路グランドと接続された非反転入力端子と、前記戻り側の配線の前記抵抗の入力側の部分と接続された反転入力端子と、前記戻り側の配線の前記抵抗の出力側の部分と接続された出力端子と、を備えるオペアンプをさらに有し、
前記検出部は、前記出力端子における電位を前記電圧値として検出するよう構成されている、請求項3に記載の内視鏡。
【請求項6】
前記給電線の異常があると判定されることにより、前記電流源を制御して、前記発光部1つずつに電流を供給する処理を行うよう構成された処理制御部と、
前記処理が行われることにより、前記送り側の配線のうち、前記給電線の異常の発生原因となっている配線を特定するよう構成された特定部と、をさらに備える、請求項1から5のいずれか1項に記載の内視鏡。
【請求項7】
照明光により照射された被写体を撮像し、画像信号を出力するよう構成された、請求項1から6のいずれか1項に記載の内視鏡と、
前記画像信号を処理するよう構成された内視鏡用プロセッサと、を備えることを特徴とする内視鏡システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、挿入管の先端部から照明光を出射する内視鏡及び内視鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子内視鏡は、体腔内に挿入される挿入管の先端部から照明光を照射して体腔内を照明し、照明された体腔内の生体組織を撮像するよう構成されている。近年の電子内視鏡において、照明光の光源として、従来用いられていたキセノンランプに代えて、LED(Light Emitting Diode)やLD(Laser Diode)等の発光素子を用いたものがある。発光素子は、例えば、挿入管の先端部に搭載され、観察モードに応じた光量が得られるよう、駆動回路により所定の電流が供給される。発光素子の駆動回路は、例えば、内視鏡用プロセッサと接続される内視鏡のコネクタ部に設けられ、駆動回路から出力された電流は、コネクタ部と挿入管の先端部とを接続する給電線を通って発光素子に供給される。
【0003】
挿入管の先端部付近の部分は、体腔内の観察中、先端部の向きを変えるために繰り返し曲げ伸ばしされる。このため、給電線に物理的な負荷がかかり、断線する場合がある。また、発光素子の基板に対する実装の不具合や、発光素子あるいは駆動回路を設けた基板に対する給電線本体の接続不良に起因して、発光素子に供給される電流の経路が途切れる場合がある。特許文献1には、給電線の異常を検出することのできる内視鏡が記載されている。特許文献1の内視鏡は、複数系統の給電線に流れる電流の差分を検出する電流検出部と、検出された差分に基づいて給電線の劣化及び断線を検出する断線検出回路と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発光素子を照明光の光源として用いる上記内視鏡において、挿入管の先端部に複数の発光素子を搭載したものがある。この内視鏡では、発光素子ごとに駆動回路が設けられ、複数の発光素子は互いに独立して駆動制御される。このような内視鏡において給電線の異常を検知するためには、駆動回路ごとに、給電線の異常を検知するための回路等が必要となり、回路規模が大きくなってしまう。また、発光素子の駆動に関わる回路が、全体として複雑になってしまう。
【0006】
そこで、本発明は、挿入管の先端部に複数の発光部を備える内視鏡において、回路規模が大きくなることを抑えつつ給電線の異常を検知することのできる内視鏡及び内視鏡システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、体腔内に挿入される挿入管の先端部から照明光を出射照射し、体腔内を照明するよう構成された内視鏡である。前記内視鏡は、
前記先端部に設けられ、発光素子をそれぞれ有する複数の発光部と、
前記挿入管の前記先端部と反対側の端部の側の前記内視鏡の部分に設けられ、前記発光部のそれぞれに所定の電流を供給するよう構成された複数の電流源と、
前記電流源から供給される電流が流れる送り側の配線であって、前記電流源と前記発光素子とを接続し、前記発光部の出力側の接続点において互いに接続した複数の送り側の配線と、前記接続点から前記電流源の側に向かって延びる1本の戻り側の配線と、を有する給電線と、
前記戻り側の配線を流れる電流に関する電気的測定値を検出するよう構成された検出部と、
検出された前記電気的測定値を用いて前記給電線の異常の有無を判定するよう構成された判定部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
前記判定部は、前記電気的測定値から得られる、前記戻り側の配線を流れる電流の電流値と、前記電流源から前記発光部に向けて出力される電流の合計電流値との差分に基づいて前記給電線の異常を判定するよう構成されている、ことが好ましい。
【0009】
前記検出部は、前記戻り側の配線の途中に設けられた抵抗を有し、
前記検出部は、前記抵抗において発生する電圧値を前記電気的測定値として検出するよう構成されている、ことが好ましい。
【0010】
前記戻り側の配線は、前記抵抗の出力側において前記内視鏡の回路グランドと接続され、
前記検出部は、前記抵抗の入力側の電位を前記電圧値として検出するよう構成されている、ことが好ましい。
【0011】
前記検出部は、前記内視鏡の回路グランドと接続された非反転入力端子と、前記戻り側の配線の前記抵抗の入力側の部分と接続された反転入力端子と、前記戻り側の配線の前記抵抗の出力側の部分と接続された出力端子と、を備えるオペアンプをさらに有し、
前記検出部は、前記出力端子における電位を前記電圧値として検出するよう構成されている、ことが好ましい。
【0012】
前記給電線の異常があると判定されることにより、前記電流源を制御して、前記発光部1つずつに電流を供給する処理を行うよう構成された処理制御部と、
前記処理が行われることにより、前記送り側の配線のうち、前記給電線の異常の発生原因となっている配線を特定するよう構成された特定部と、をさらに備える、ことが好ましい。
【0013】
本発明の別の一態様は、内視鏡システムであって、
照明光により照射された被写体を撮像し、画像信号を出力するよう構成された前記内視鏡と、
前記画像信号を処理するよう構成された内視鏡用プロセッサと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
上述の内視鏡及び内視鏡システムによれば、挿入管の先端部に複数の発光部を備える内視鏡において、回路規模が大きくなることを抑えつつ給電線の異常を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】一実施形態の内視鏡システムの構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】給電線の異常検知に関する構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】内視鏡システムのフローの一例を示す図である。
【
図4】給電線の異常検知に関する構成の変形例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、一実施形態の電子内視鏡システム1の構成の一例を示すブロック図である。
図1に示されるように、電子内視鏡システム1は、電子スコープ100、電子内視鏡用プロセッサ200、モニタ300を備えている。
【0017】
電子スコープ100は、人の体腔内に挿入される挿入管101と、電子内視鏡用プロセッサ200と接続する部分であるコネクタ部102と、を有している。挿入管101は、先端部101Aと、先端部101Aと接続する図示されない変形部と、を備える。変形部は、先端部101Aと反対側の挿入管101の端部と接続される図示されない操作部からの遠隔操作に応じて直線形状又は湾曲した形状になるよう屈曲するよう構成されている。電子スコープ100は、コネクタ部102を介して、電子内視鏡用プロセッサ200に着脱可能に接続される。
【0018】
電子内視鏡用プロセッサ200は、システムコントローラ202、及び電源回路210を備えている。システムコントローラ202は、メモリ204に記憶された各種プログラムを実行し、電子内視鏡システム1の全体を統括的に制御する。また、システムコントローラ202は、操作パネル208に接続されており、操作パネル208に入力されるユーザによる指示に応じて電子内視鏡システム1の各種設定を変更する。例えば、観察モードの種類や、モニタ300の画面の明るさを変更し、各部の動作のタイミングを調整する。電源回路210は、外部の商用電源から入力される交流電圧に基づいて所定の大きさの直流電圧を生成し、電子スコープ100を含む電子内視鏡システム1全体に供給する。
【0019】
電子スコープ100は、挿入管101の先端部101Aに、体腔内を照明する照明光の光源部118を備える。光源部118は、
図2に示されるように、複数の発光部121,122,123を有している。
図2は、後述する給電線の異常検知に関する構成の一例を示すブロック図である。発光部121は直列に接続されたLED121a,121bを有している。同様に、発光部122は直列に接続されたLED122a,122bを有し、発光部123は直列に接続されたLED123a,123bを有している。LED121a,121b,122a,122b,123a,123bはいずれも、電流が供給されることにより例えば400nm~800nmの波長帯域を射出する白色LEDである。光源部118がこのように複数のLEDを備えていることにより、例えば体腔内の広い空間を明るく照明して観察することができる。光源部118が有する発光部の数は、3つに制限されず、2つあるいは4つ以上であってもよい。発光部それぞれが備えるLEDの数は、2つに制限されず、1つあるいは3つ以上であってもよい。
【0020】
発光部121,122,123はそれぞれ、電子スコープ100のコネクタ部102内に設けられた、対応する光源駆動回路131,132,133(後述)により駆動制御される。発光部121,122,123から出射された光は、光源部118から配光レンズ104を透過し、照明光として出射される。照明光により照明された被写体の反射光は、対物レンズ106を介して固体撮像素子108の受光面上で光学像を結ぶ。
【0021】
撮像素子108は、被写体である患者の生体組織を撮像して受光光量に応じた画像信号を出力するように構成されている。撮像素子108は、例えば、図示されないベイヤ配列カラーフィルタが受光面に配置された単板式カラーCCD(Charge-Coupled Device)イメージセンサであり、受光面上で結像した光学像に応じたR(Red)、G(Green)、B(Blue)の各原色信号を生成する。単板式カラーCCDイメージセンサの代わりに、単板式カラーCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサを用いることもできる。
【0022】
電子スコープ100のコネクタ部102内には、ドライバ信号処理回路137が設けられている。ドライバ信号処理回路137には、撮像素子108から被写体の画像信号が所定のフレーム周期(例えば1/30秒)で入力される。ドライバ信号処理回路137は、撮像素子108から入力される画像信号に対し画像補正や伝送プロトコルへの信号変換処理を施して電子内視鏡用プロセッサ200の画像処理部216に出力する。また、ドライバ信号処理回路137は、メモリ114にアクセスして電子スコープ100の機種情報を読み出す。メモリ114に記録される電子スコープ100の機種情報には、例えば撮像素子108の画素数や感度、動作可能なフレームレート、型番等の情報が含まれる。ドライバ信号処理回路137は、メモリ114より読み出された機種情報をシステムコントローラ202に出力する。
【0023】
電子スコープ100のコネクタ部102内には、さらに、光源制御部135が設けられている。光源制御部135は、例えば、操作パネル208に入力される内容に従ってシステムコントローラ202から出力される、明るさを指定する信号に応じて、モニタ300の画面に表示される画像の明るさが適切となるように、LED121a,121b,122a,122b,123a,123bを駆動するための電流値、または点灯時間のためのDuty比、あるいはその両方を算出し、光源駆動回路131,132,133に信号を出力する。なお、
図1において、光源駆動回路131,132,133の図示は省略されている。また、光源制御部135は、コンピュータ上でプログラムを起動して実行することにより後述する判定部161、処理制御部163、特定部165等の各機能を担うソフトウェアモジュールを生成する。なお、光源制御部135は、電子スコープ100のコネクタ部102に備えられる代わりに、電子内視鏡用プロセッサ200に備えられていてもよい。
【0024】
システムコントローラ202は、電子スコープ100の機種情報に基づいて各種演算を行い、制御信号を生成する。システムコントローラ202は、生成された制御信号を用いて、電子内視鏡用プロセッサ200に接続中の電子スコープ100に適した処理がなされるように電子内視鏡用プロセッサ200内の各回路の動作やタイミングを制御する。
【0025】
システムコントローラ202による制御に従って、光源制御部135、ドライバ信号処理回路137、画像処理部216は動作し、ドライバ信号処理回路137は、撮像素子108を電子内視鏡用プロセッサ200側で処理される映像のフレームレートに同期したタイミングで駆動する。光源制御部135は、システムコントローラ202に従い、光源駆動回路131,132,133を制御する。
【0026】
画像処理部216は、画像処理回路を備え、ドライバ信号処理回路137から1フレーム周期で入力される画像信号に対してデモザイク処理、マトリックス演算、Y/C分離等の所定の信号処理を施し、さらに処理してモニタ表示用の画面データを生成し、生成されたモニタ表示用の画面データを所定のビデオフォーマット信号に変換する。変換されたビデオフォーマット信号は、モニタ300に出力され、被写体の画像がモニタ300の表示画面に表示される。
【0027】
電子スコープ100のコネクタ部102内には、さらに、光源駆動回路131,132,133が設けられている。光源駆動回路131,132,133は、定電流回路である電流源回路(電流源)131a,132a,133aを備え、光源制御部135から受信した信号に従い、後述する給電線150を通じて発光部121,122,123に電流(駆動電流)を供給し、LED121a,121b,122a,122b,123a,123bを制御する。
【0028】
以上のドライバ信号処理回路137、光源制御部135、光源駆動回路131,132,133は、コネクタ部102内の図示されないコネクタ基板に設けられており、挿入管101の先端部101Aと反対側の端部の側に位置している。コネクタ基板には、さらに、電源回路180が設けられている。電源回路180は、電子スコープ100が電子内視鏡用プロセッサ200と接続されることによって、電源回路210より元電源の供給を受ける。
【0029】
電子スコープ100には、給電線150が設けられている。給電線150は、複数の送り側の配線151,152,153と、1本の戻り側の配線と、を有している。図に示す例において、送り側の配線の数は3本である。これらの配線151,152,153,154の一部は挿入管101内を通っている。
【0030】
送り側の配線151,152,153は、電流源回路131a,132a,133aから供給される電流が流れる配線である。送り側の配線151,152,153は、電流源回路131a,132a,133aとLED121b,122b,123bの入力側(アノード側)とを一対一で接続し、LED121a,122a,123aの出力側(カソード側)において互いに接続し、接続点150aを形成している。
【0031】
戻り側の配線は、配線154を有している。以降の説明において、配線154を、代表して「戻り側の配線154」ともいう。戻り側の配線154は、接続点150aから延びる配線であり、戻り側の配線154の接続点150aと反対側の端は、コネクタ部102内の検出部139に接続される。
【0032】
このように給電線150は、送り側の配線151,152,153が接続点150aにおいて接続し、戻り側の配線が1本のみであることにより、発光部121,122,123それぞれを流れた電流は、接続点150aから共通の配線を流れる。
【0033】
検出部139は、検出回路141を備え、検出回路141は、電子スコープ100のコネクタ部102内に設けられている。検出回路141は、光源制御部135及び戻り側の配線154のそれぞれと接続され、戻り側の配線154を流れる電流に関する電気的測定値を検出するよう構成されている。図に示す例において、検出回路141は例えばアナログデジタル変換回路(ADC)で構成される。検出回路141は、戻り側の配線154から入力されるアナログ信号を測定し、測定値を光源制御部135の後述する判定部161に向けて出力する。
【0034】
判定部161は、検出部139により検出された電気的測定値を用いて給電線150の異常の有無を判定するよう構成されている。例えば、送り側の配線151,152,153のいずれかが断線し、LED121a,121b,122a,122b,123a,123bに供給される電流の経路が途切れていると、断線した送り側の配線を電流が流れない分、戻り側の配線154を流れる電流量が少なくなる。このような電流の経路の途切れは、LED121a,121b,122a,122b,123a,123bの基板に対する実装の不具合や、LED121a,121b,122a,122b,123a,123bあるいは光源駆動回路131,132,133を設けた基板に対する給電線本体の接続不良に起因しても発生する。このように戻り側の配線154を流れる電流量が少なくなると、検出部139により検出される電気的測定値が変化する(例えば、抵抗145に発生する電圧値が下がる)ので、判定部161は、このことに基づいて、給電線150の異常の有無を判定する。判定部161による判定結果から、LED121a,121b,122a,122b,123a,123bが正常に動作しているか否か(動作状態)を知ることができる。また、給電線150の異常の有無を知ることができる。
【0035】
以上のように構成された電子スコープ100において、戻り側の配線は1本のみであるため、検出回路141の数は1つでよく、回路規模が大きくなることを抑えられる。戻り側の配線が、発光部121,122,123の数と対応して複数あると、戻り側の配線それぞれの電気的測定値を検出するための検出回路も複数必要となり、回路規模は大きくなる。また、戻り側の配線が1本のみであることは、挿入管101内を通る配線の数を減らし、挿入管101の径を細くすることに寄与する。
【0036】
判定部161は、電気的測定値から得られる、戻り側の配線154を流れる電流の電流値(以降の説明において帰還電流値ともいう)と、電流源回路131a,132a,133aから発光部121,122,123に向けて出力される駆動電流の合計電流値(期待値)との差分に基づいて給電線150の異常を判定するよう構成されていることが好ましい。帰還電流値は、例えば、検出部139により検出された電圧値を、後述する抵抗145の抵抗値で割ることによって計算できる。帰還電流値と期待値の差分が大きい場合(例えば、差分が、期待値の±20%を超える大きさである場合)、判定部161は、給電線150に異常があると判定する。
【0037】
検出部139は、戻り側の配線154と接続された抵抗145を有し、検出回路141は、抵抗145で発生する電圧値を電気的測定値として検出するよう構成されていることが好ましい。抵抗145を流れる電流は、戻り側の配線154を流れる電流といえるため、抵抗145によって検出した電気的測定値から、戻り側の配線154を流れる電流量を知ることができる。抵抗145は、例えば、コネクタ部102内のコネクタ基板に設けられる。
【0038】
このように検出部139が構成されている場合に、さらに、戻り側の配線のうちの抵抗145の出力側(配線154と反対側)の部分において、コネクタ部102のコネクタ基板の回路グランド171と接続され、検出部139は、抵抗145の配線154側の電位を電圧値として検出するよう構成されていることが好ましい。回路グランド171は、電子スコープ100の図示されないフレームグランドと接続されている。
【0039】
図3は、電子内視鏡システム1のフローの一例を示す図である。
電子内視鏡用プロセッサ200において、観察モードが設定されている期間中、電源回路210からの電流が発光部121,122,123に供給されることにより、LED121a,121b,122a,122b,123a,123bから光が射出され、挿入管101の先端部101Aから照明光が出射される。この間、検出回路141は、戻り側の配線154を流れる電流の電気的測定値の検出を行う(ステップS1のYES)。検出された電気的測定値の情報は、検出回路141から判定部161に出力され、判定部161において、帰還電流値が計算される(ステップS2)。判定部161は、帰還電流値と期待値との差分が小さいと判定した場合(ステップS3のYES)は、給電線150に異常はないと判定し(ステップS4)、差分が大きいと判定した場合(ステップS3のNO)は、給電線150に異常があると判定する(ステップS5)。観察モードが設定されている期間中、以上の動作が繰り返し行われる。
【0040】
(変形例)
次に、給電線150の異常検知に関する構成の好ましい一例である変形例について説明する。
図4に、給電線150の異常検知に関する構成の変形例を示すブロック図を示す。
変形例は、主として、検出部139がオペアンプ147を有している点で、
図2に示す例と異なっている。
【0041】
オペアンプ147は、非反転入力端子147aと、反転入力端子147bと、出力端子147cと、を備えている。非反転入力端子147aは、電子スコープ100のコネクタ部102の回路グランド171と接続されている。反転入力端子147bは、抵抗145の入力側に位置する配線154上の接続点150bに接続されている。出力端子147cは、抵抗145の接続点150bと反対側に接続されている。変形例においては、電子スコープ100は、正電圧を供給する出力180aと、負電圧を供給する出力180bと、を備える電源回路180を備える。電源回路180はコネクタ部102のコネクタ基板内に設置され、電子スコープ100が電子内視鏡用プロセッサ200と接続されることによって、電源回路210より元電源の供給を受ける。
【0042】
このようにオペアンプ147の各端子を接続することによって、反転入力端子147bが繋がっている配線154の部分(接続点150b等)の電位は、常に非反転入力端子147aの電位(つまり回路グランド171)に保たれるようにオペアンプ147のフィードバックが働き、出力端子147cの電位が変化する。検出回路141はオペアンプ147の出力端子147cの電気的測定値を検出することによって、前例と同様、給電線150の異常検知をすることが可能となる。
【0043】
図2に示す上記例では、給電線150の異常により抵抗145にかかる電圧が変化することによってLED121b,122b,123bのアノード側の電位が変化すると、電流源回路131a,132a,133aがその影響を受け、LED121a,121b,122a,122b,123a,123bを流れる電流の電流量が変化する場合がある。これに対し、
図4に示す変形例では、LED121a,122a,123aのカソード側の電位はほぼ回路グランドと同電位に保たれるので、給電線150の異常によりLED121a,121b,122a,122b,123a,123bを流れる電流量が変化することによる電流源回路131a,132a,133aへの影響を最小限に抑えることができる。このため、LED121a,121b,122a,122b,123a,123bの電流制御の精度が向上する。
【0044】
光源制御部135は、判定部161に加え、さらに、処理制御部163と、特定部165と、を備えることが好ましい。この場合、処理制御部163は、給電線150の異常があると判定されることにより、電流源回路131a,132a,133aを制御して、発光部121,122,123の1つずつに電流を供給する処理を行うよう構成される。特定部165は、処理が行われることにより、送り側の配線151,152,153のうち、給電線150の異常の発生原因となっている配線を特定するよう構成される。これにより、発光部121,122,123のうちどの発光部のLEDが正常に動作していないかを知ることができる。また、複数の送り側の配線151,152,153のうちのどの配線に関して給電線150に異常が発生したか知ることができる。
【0045】
電子内視鏡用プロセッサ200のシステムコントローラ202は、判定部161による判定結果を示す表示用画像を生成し、モニタ(表示装置)300に出力するよう構成されていることが好ましい。これにより、LED121a,121b,122a,122b,123a,123bの動作状態の異常に早く気付くことができ、電子スコープ100の点検、修理を早期に行うことができる。
【0046】
以上、本発明の内視鏡及び内視鏡システムについて詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【0047】
例えば、検出部139は、検出回路141として、ADC回路に代えて、図示されない比較器を用いて電気的測定値の検出を行うよう構成されてもよい。比較器は、戻り側の配線154の抵抗145の入力側の部分、及び検出判定にとって「適当な電圧」を発生させる図示されない電源に接続される2つの入力端子と、光源制御部135と接続される出力端子と、を備え、上記「適当な電圧」は異常検出の閾値として設定され、閾値を超えた場合比較器の出力が変化するよう構成される。
【0048】
また、例えば、複数の発光部は、互いに波長帯域の異なる光を出射するよう構成されていてもよく、例えば、赤色(例えば、波長が620~680nm)、緑色(例えば、波長が460~600nm)、青色(例えば、波長が425~455nm)の光を出射するよう構成されていてもよい。この構成では、観察モードに応じて各発光部の光量バランスを調節することにより、白色光や白色光以外の特殊光を照明光として出射することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 電子内視鏡システム
100 電子スコープ
101 挿入管
101A 先端部
102 コネクタ部
104 配向レンズ
106 対物レンズ
108 撮像素子
118 光源部
121,122,123 発光部
121a,121b,122a,122b,123a,123b LED
131,132,133 光源駆動回路
131a,131b,131c 電流源回路(電流源)
135 光源制御部
137 ドライバ信号処理回路
139 検出部
141 検出回路
145 抵抗
147 オペアンプ
147a 非反転入力端子
147b 反転入力端子
147c 出力端子
150 給電線
150a 接続点
151,152,53 送り側の配線
154 配線
161 判定部
163 処理制御部
165 特定部
171 回路グランド
200 電子内視鏡用プロセッサ
202 システムコントローラ
204 メモリ
208 操作パネル
210,210a,210b 電源回路
216 画像処理部
300 モニタ