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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128244
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】便性改善用の発酵組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/19 20160101AFI20230907BHJP
   A23C 9/12 20060101ALI20230907BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20230907BHJP
   A23L 33/17 20160101ALI20230907BHJP
【FI】
A23L33/19
A23C9/12
A23L33/10
A23L33/17
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022032459
(22)【出願日】2022-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000006127
【氏名又は名称】森永乳業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】守田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】岩本 洋
【テーマコード(参考)】
4B001
4B018
【Fターム(参考)】
4B001AC05
4B001BC01
4B001EC05
4B018LB07
4B018LB10
4B018MD20
4B018MD71
4B018ME02
4B018ME10
4B018ME11
4B018ME14
(57)【要約】      (修正有)
【課題】筋力を向上させながら便性を改善することができる飲食品を提供することを課題とする。
【解決手段】100g当たりのタンパク質含有量が4.0g以上である発酵組成物を、便性改善用途に供する。前記発酵組成物は、体脂肪の減少及び/又は増加抑制を期待する対象に摂取されることが好ましい。また、前記発酵組成物は、筋肉量の維持及び/又は低下抑制を期待する対象に摂取されることが好ましい。また、前記発酵組成物は、身体機能の向上を期待する対象に摂取されることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
100g当たりのタンパク質含有量が4.0g以上である、便性改善用の発酵組成物。
【請求項2】
体脂肪の減少及び/又は増加抑制を期待する対象に摂取される、請求項1に記載の便性改善用の発酵組成物。
【請求項3】
筋肉量の維持及び/又は低下抑制を期待する対象に摂取される、請求項1に記載の便性改善用の発酵組成物。
【請求項4】
身体機能の向上を期待する対象に摂取される、請求項1に記載の便性改善用の発酵組成物。
【請求項5】
100g当たりのタンパク質含有量が4.0g以上である、睡眠の質改善用の発酵組成物。
【請求項6】
100g当たりのタンパク質含有量が4.0g以上である、疲労改善用の発酵組成物。
【請求項7】
100g当たりのタンパク質含有量が4.0g以上である、肌状態改善用の発酵組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定量のタンパク質を含有する発酵組成物の、新たな用途に関する。
【背景技術】
【0002】
栄養素としてのタンパク質の重要性はよく知られている。近年、健康増進、QOL向上、スポーツ愛好等の目的で、筋肉を増加させるためにタンパク質を積極的に摂取することが一般的になっている。通常は、栄養バランスの良い食事を規則正しく摂ることが推奨されている。しかしながら、筋力トレーニングの前後など、高タンパク質の組成物を短時間で摂取する機会も増加傾向にある。
【0003】
しかしながら、タンパク質の過剰な摂取は、好ましくない体調変化を惹起する懸念がある。
具体的には、タンパク質の過剰摂取により、腸内菌叢が変化し、ビフィズス菌が減少することが報告されている(非特許文献1)。さらに、高タンパク質摂取は、炭水化物からタンパク質発酵にシフトさせ、腸内において体に有益な酪酸の濃度を低下させることも報告されている(非特許文献2)。また、たんぱく質補給食品の摂取が、便秘やお腹の張りと言った不調をもたらす可能性も報告されている(非特許文献3)。すなわち、タンパク質の過剰摂取は、腸内菌叢に変化をもたらし、便秘を引き起こしうる。
【0004】
ところで、発酵乳(ヨーグルト)は整腸作用を有することが知られている。また、最近では、発酵乳においても高タンパク質タイプの製品が発売されている。しかしながら、かかる高タンパク質タイプの発酵乳が、腸内菌叢にいかなる影響を与えるかについては十分な知見は存在しない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Diego Moreno-Perez et al., Nutrients, 2018, 10, 337.
【非特許文献2】Myrthe S. Gilbert et al., Am. J Physiol. Gastrointest. Liver. Physiol., 315: G159-G170, 2018.
【非特許文献3】高タンパク食品の開発と市場、p.33、2022年1月6日第1版、
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の通り、タンパク質摂取は筋力向上のために重要でありながら、大量に摂取することによる便秘の懸念がある。
かかる状況に鑑みて、本願発明は、筋力を向上させながら便性を改善することができる飲食品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、ヒト臨床試験においてタンパク質を多く含む発酵組成物を摂取すると、筋力の向上と便性の改善とを両立する効果が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の第一の態様は、100g当たりのタンパク質含有量が4.0g以上である、便性改善用の発酵組成物である。
本態様の組成物は、好ましくは体脂肪の減少及び/又は増加抑制を期待する対象に摂取される。
本態様の組成物は、好ましくは筋肉量の維持及び/又は低下抑制を期待する対象に摂取される。
本態様の組成物は、好ましくは身体機能の向上を期待する対象に摂取される。
本発明の第二の態様は、100g当たりのタンパク質含有量が4.0g以上である、睡眠の質改善用の発酵組成物である。
本発明の第三の態様は、100g当たりのタンパク質含有量が4.0g以上である、疲労改善用の発酵組成物である。
本発明の第四の態様は、100g当たりのタンパク質含有量が4.0g以上である、肌状態改善用の発酵組成物である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、筋肉量を維持し、体脂肪を増やさず、又は身体機能を向上させながら、便性を改善することができる。また、本発明の組成物が、睡眠の質、疲労、及び肌状態といったQOLに関する諸状態をも改善する効果をもたらすことも副次的に見出された。したがって、本発明によれば、安全かつ簡便な、健康及び美容に役立つ飲食品が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されず、本発明の範囲内で自由に変更することができるものである。
【0011】
本発明における「発酵組成物」は、主として乳原料を含む原料組成物を微生物で発酵させることにより製造されたものであり、好ましくは、乳発酵組成物である。より好ましくは、「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(乳等省令)」において、「乳またはこれと同等以上の無脂乳固形分を含む乳等を、乳酸菌または酵母で発酵させ、糊状または液状にしたもの、またはこれらを凍結させたもの」と定義される発酵乳(ヨーグルト)である。
【0012】
乳原料としては、哺乳類由来又は植物由来の乳を含む原料であって、微生物を用いて発酵させることにより発酵乳を製造できるものであれば特に制限されず、ウシ、ヤギ、ヒツジなどの生体から採取された乳や植物由来の乳又はその分画物又は加工品、好ましくは牛乳や豆乳又はその分画又は加工品、例えば部分脱脂乳、脱脂乳、脱脂濃縮乳、還元全乳、還元脱脂粉乳、還元部分脱脂乳、乳タンパク質濃縮物(MPC)、分離ミルクタンパク質(MPI)、ホエー、酸カゼイン、発酵乳又はクワルク等を製造した際に得られるカゼインホエー、酸ホエー、クワルクホエー、カゼイン、カゼインナトリウム、脱脂粉乳、全粉乳、ホエータンパク濃縮物(WPC)、ホエータンパク質分離物(WPI)、α-ラクトアルブミン、β-ラクトグロブリン、ラクトフェリン、バター、バターミルク、クリーム、ホエーペプチド、大豆ホエー等を挙げることができ、脱脂濃縮乳、MPC、MPI、脱脂粉乳が特に好ましい。
乳原料としてタンパク質含有量が高いものを用いて原料組成物を調製し、それを発酵に供することにより、製造される発酵組成物のタンパク質含有量を高めることができる。
乳原料は、発酵前に、常法に従って殺菌、均質化、冷却等を施してもよい。
【0013】
発酵組成物を製造する際、発酵菌としては、公知の、乳酸菌、ビフィズス菌、または酵母を使用できる。発酵菌は2種以上組み合せて使用することができる。
発酵菌として乳酸菌スターターを用いることが好ましい。例えば、ラクトバチルス・ブルガリクス(L.bulgaricus)、ラクトコッカス・ラクチス(L.lactis)、ストレプトコッカス・サーモフィラス(S.thermophilus)等のヨーグルト製造に通常用いられている乳酸菌スターターの1種または2種以上を用いることが好ましい。乳酸菌スターターを用いる場合、ビフィズス菌スターター、例えば、ビフィド
バクテリウム・ロンガム(B.longum)等を併用してもよい。これらのスターターは市販品から入手可能である。
【0014】
発酵組成物を製造する際、通常はpH5付近で発酵が行われる。
発酵終了時のpHは、通常は4.0~5.5、好ましくは4.2~5.0、より好ましくは4.4~4.8である。
また、発酵終了後(保存時を含む)のpHは特に制限されないが、好ましくは4.2~5.0、より好ましくは4.4~4.8であってよい。
【0015】
発酵組成物を製造する際、培養温度、培養時間等の発酵条件は、通常の発酵乳の製造と同様の条件を採用することができる。例えば、培養温度は30℃~45℃が好ましく、36℃~42℃がより好ましい。培養時間は、適宜設定することができるが、通常、3~18時間が好ましい。
通常、発酵終了は、10℃以下への急冷により行う。培養温度から10℃への急冷は、好ましくは1時間以内、より好ましくは30分以内、特に好ましくは10分以内に行うことが望ましい。
また、発酵終了後の発酵組成物を濃縮することにより、発酵組成物のタンパク質含有量を高めることができる。濃縮は、例えば、ろ過による水分除去、膜濃縮や遠心分離等により行われる。発酵組成物は、長期保存や物性安定のために、加熱殺菌を行ってもよい。加熱処理はバッチ殺菌、チューブラー殺菌、プレート殺菌など、一般的に用いられる加熱殺菌機を用いて行うことができる。加熱処理後は、速やかに冷却して目的の発酵乳を得る。
【0016】
本発明の発酵組成物は、いわゆる高タンパク質タイプであり、その100g当たり4.0g以上、好ましくは5.0g以上、さらに好ましくは6.0g以上のタンパク質を含有する。タンパク質含有量の上限は特に限定されないが、通常は100g当たり20.0g以下、より好ましくは16.0g以下、さらに好ましくは12.0g以下である。
また、本発明の発酵組成物は、これに含まれる無脂乳固形分に対して好ましくは40重量%以上、より好ましくは42重量%以上、さらに好ましくは45重量%以上のタンパク質を含有する。上限は特に限定されないが、通常は無脂乳固形分に対して好ましくは75重量%以下、より好ましくは72重量%以下、さらに好ましくは70重量%以下である。
ここで、無脂乳固形分とは、発酵組成物中の全固形分から脂質を除いた成分を意味し、例えば、タンパク質の他に灰分及び糖質が含まれる。
発酵組成物に含有されるタンパク質は、通常は発酵原料に由来する乳タンパク質である。
本明細書において、タンパク質含有量は、例えばケルダール法により測定することができる。
【0017】
本発明の発酵組成物は、組成物全体の好ましくは0~15重量%、より好ましくは1~10重量%、さらに好ましくは1~5重量%の脂質を含有する。
また、本発明の発酵組成物における水分量は、組成物全体の好ましくは70~90重量%、より好ましくは75~85重量%、さらに好ましくは75~80重量%である。
【0018】
本発明の発酵組成物は、本発明の効果を妨げない限りにおいて、通常飲食品に含有される又は添加される成分を含んでもよい。かかる成分としては、例えば食物繊維、オリゴ糖、安定剤、ゲル化剤、脂質、ビタミン、ミネラル、甘味料、香料、着色料、還元剤等が挙げられる。また、フルーツジュース、フルーツプレザーブ(果実又は果肉の砂糖煮)等を添加してもよい。
【0019】
食物繊維としては、飲食品中に元来存在する可食性のもの、物理的、酵素的若しくは化学的処理により得られたもの、又は合成されたものが挙げられる。また、食物繊維として
は、高分子水溶性食物繊維、低分子水溶性食物繊維、不溶性食物繊維のいずれでもよい。
具体的には、セルロース、カルボキシメチルセルロース、寒天、キサンタンガム、サイリウム種皮、ジュランガム、低分子アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、ポリデキストロース、アラビアガム、難消化性デキストリン、ビートファイバー、グァーガム、グァーガム酵素分解物、小麦胚芽、湿熱処理デンプン(難消化性デンプン)、レジスタントスターチ、タマリンドシードガム、ローカストビーンガム、プルラン、イヌリン等の多糖類が挙げられる。
【0020】
オリゴ糖としては、ラクチュロース、ラフィノース、トレハロース、ガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ビートオリゴ糖、ゲンチオリゴ糖、キシロオリゴ糖、大豆オリゴ糖又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0021】
本発明の発酵組成物は、タンパク質を多く含みながらもその摂取により便性を改善することができる。ここで、「便性」とは、対象の排便状態を示す概念であり、例えば、排便の頻度や便秘の程度といった指標により判断される。また、「便性改善」とは、本発明の発酵組成物の摂取により、非摂取の場合に比べて、排便頻度が増加すること、便通が改善すること、及び便秘が改善又は解消すること、を含む。
便性が改善したことは、本発明の発酵組成物を適用した対象(ヒト等)の主観的な評価や、該対象に対して評価者が主観的又は客観的に評価することで確認することができる。
そのため、本発明の発酵組成物は、便性改善用途に好適に供することができる。すなわち、本発明の発酵組成物は、便性改善用の発酵組成物、便通改善用の発酵組成物、排便促進用の発酵組成物、便秘改善用の発酵組成物、又は便秘解消用の発酵組成物である。
【0022】
本発明の発酵組成物は、その摂取により、体脂肪を増やすことなく、あるいは筋肉量(除脂肪体重)を維持しつつ、筋肉の質を向上させることができる。ここで筋肉の質が良いことは、同量の筋肉で筋力が増加することを指す。
そのため、本発明の発酵組成物は、体脂肪の減少及び/又は増加抑制を期待する対象、筋肉量の維持及び/又は低下抑制を期待する対象、あるいは身体機能の向上を期待する対象が、便性改善を期待して摂取するのに好適なものとなり得る。
ここで、身体機能は身体を動かして動作を行う能力であり、身体活動全般を行う能力を指す。身体機能の向上には具体的には握力の増加、歩行速度の増加、及び歩幅の増加等が含まれる。
【0023】
本発明の発酵組成物は、その摂取により睡眠の質を改善することができる。ここで睡眠の質とは、例えばOSAスコアで評価されるものを含み、具体的には起床時の眠気、入眠と睡眠の維持、夢み、睡眠による疲労回復、および睡眠時間を含む。睡眠の質の改善は、本発明の発酵組成物の摂取により、非摂取の場合に比べて、睡眠の質が向上すること、具体的には起床時の眠気の程度が低くなること、速やかに入眠し睡眠が長く又は深く維持されること、夢みの回数が減少すること、疲労が回復しやすくなること、睡眠時間が長くなることを含む。
睡眠の質が改善したことは、本発明の発酵組成物を適用した対象(ヒト等)の主観的な評価や、該対象に対して評価者が主観的又は客観的に評価することで確認することができる。客観的な評価としては、睡眠時の脳波等を周知の手法で測定することが挙げられるが、特に限定されない。
そのため、本発明の発酵組成物は、睡眠の質改善用途に好適に供することができる。
【0024】
本発明の発酵組成物は、その摂取により疲労を改善することができる。ここで疲労は通常は筋肉の疲労を指し、具体的には運動後の疲労感、運動による疲労の取れ具合、筋肉痛のなりやすさ、階段昇降の辛さ、重いものを持つことの辛さ、筋肉の減少の体感、むくみ、及び身体の冷えを含む。疲労の改善は、本発明の発酵組成物の摂取により、非摂取の場
合に比べて、疲労が解消又は低減することを含む。
疲労状態が改善したことは、本発明の発酵組成物を適用した対象(ヒト等)の主観的な評価や、該対象に対して評価者が主観的又は客観的に評価することで確認することができる。
そのため、本発明の発酵組成物は、疲労改善用途に好適に供することができる。
【0025】
本発明の発酵組成物は、その摂取により肌状態を改善することができる。ここで肌には、顔、爪、手指、腕、足、脚、髪、及び頭部などの、皮膚や表面が含まれる。肌状態の改善とは、本発明の組成物の適用前よりも肌を健康な又は良好な状態にすることをいう。具体的には、「肌の潤い」、「肌の乾燥状態」、「肌のキメ」、「肌のツヤ」、「肌の透明感」、「お化粧のり」、「肌の滑らかさ」、「肌のハリ」、「毛穴の開き」、「脂っぽさ」、「吹き出物・ニキビ」、「指先の状態(ひび割れ、さかむけ、冷え、乾燥)」、「手の状態(毛穴、ひび割れ、冷え、乾燥)」、「爪の状態(ツヤ、ささくれ、割れ、色味、伸び)」、「うでの状態(毛穴、むくみ、たるみ、かゆみ)」、「かかとの状態(ひび割れ、角質、かゆみ、水分状態)」、「脚の状態(冷え、むくみ、たるみ、黒ずみ)」、「髪の状態(パサつき、枝毛、まとまり、ツヤ、伸び)」、「頭皮の状態(かゆみ、ふけ、べたつき、乾燥)」を健康な又は良好な状態にすることを含む。
肌状態が改善したことは、本発明の発酵組成物を適用した対象(ヒト等)の主観的な評価や、該対象に対して評価者が主観的又は客観的に評価することで確認することができる。客観的な評価としては、肌の保水量、色素沈着量、肌の粘弾性等を周知の手法で測定することが挙げられるが、特に限定されない。
そのため、本発明の発酵組成物は、肌状態改善用途に好適に供することができる。
【0026】
本発明の発酵組成物は、便性改善、便通改善、排便促進、便秘改善、便秘解消、睡眠の質改善、疲労改善、又は肌状態改善という用途が表示された飲食品として提供・販売されることができる。
かかる「表示」行為には、需要者に対して前記用途を知らしめるための全ての行為が含まれ、前記用途を想起・類推させうるような表現であれば、表示の目的、表示の内容、表示する対象物・媒体等の如何に拘わらず、全て本発明における「表示」行為に該当する。
また、「表示」は、需要者が上記用途を直接的に認識できるような表現により行われることが好ましい。具体的には、飲食品に係る商品又は商品の包装に前記用途を記載したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引き渡しのために展示し、輸入する行為、商品に関する広告、価格表若しくは取引書類に上記用途を記載して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に上記用途を記載して電磁気的(インターネット等)方法により提供する行為等が挙げられる。
【0027】
一方、表示内容としては、行政等によって認可された表示(例えば、行政が定める各種制度に基づいて認可を受け、そのような認可に基づいた態様で行う表示等)であることが好ましい。また、そのような表示内容を、包装、容器、カタログ、パンフレット、POP等の販売現場における宣伝材、その他の書類等へ付することが好ましい。
【0028】
また、「表示」には、健康食品、機能性食品、経腸栄養食品、特別用途食品、保健機能食品、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品、医薬用部外品等としての表示も挙げられる。この中でも特に、消費者庁によって認可される表示、例えば、特定保健用食品、栄養機能食品、若しくは機能性表示食品に係る制度、又はこれらに類似する制度にて認可される表示等が挙げられる。具体的には、特定保健用食品としての表示、条件付き特定保健用食品としての表示、身体の構造や機能に影響を与える旨の表示、疾病リスク減少表示、科学的根拠に基づいた機能性の表示等を挙げることができ、より具体的には、健康増進法に規定する特別用途表示の許可等に関する内閣府令(平成二十一年八月三十一日内閣府令第五十七号)に定められた特定保健用食品としての表示(特に保健の用途の表示)
及びこれに類する表示が典型的な例である。
かかる表示としては、例えば、「便性改善用」、「便通改善用」、「便秘解消のために」、「体脂肪を減らす」、「体脂肪が気になる方に」、「筋肉量を維持するために」、「筋力アップのために」、「筋力アップしながらお腹も元気に」、「より良い睡眠のために」、「疲れが取れない方に」、「健やかな肌のために」等と表示することが挙げられる。
【0029】
本発明の組成物の摂取時期は、特に限定されず、摂取対象の状態に応じて適宜選択することができる。また、摂取期間も特に限定されず、日単位で連続又は断続的に摂取してよい。
本発明の組成物を摂取している期間は、特に運動量の負荷をかけずとも、日常的な運動量であっても前述した効果を得ることができる。
【0030】
本発明の組成物の摂取量は、摂取対象の年齢(月齢)、性別、状態、その他の条件等により適宜選択される。
本発明の組成物の摂取量は、タンパク質の摂取量として、成人において例えば、好ましくは4~20g/日、より好ましくは6~16g/日、さらに好ましくは8~12g/日の範囲と
なる量を目安とするのがよい。このように、特段多量を摂取せずとも、前述した効果を得ることができる。
なお、摂取の量や期間にかかわらず、本発明の組成物は1日1回又は複数回に分けて摂取することができる。
【0031】
また、本発明は、以下の態様も含む。
[1] 100g当たりのタンパク質含有量が4.0g以上である、便性改善用、便通改善用、排便促進用、便秘改善用及び/又は便秘解消用の発酵組成物。
[2] さらに体脂肪の減少及び/又は増加抑制のために用いられる、[1]に記載の発酵組成物。
[3] さらに筋肉量の維持及び/又は低下抑制のために用いられる、[1]に記載の発酵組成物。
[4] さらに身体機能の向上のために用いられる、[1]に記載の発酵組成物。
これらの態様において、発酵組成物は、便性改善、便通改善、排便促進、便秘改善及び/又は便秘解消の用途とともに、体脂肪の減少及び/もしくは増加抑制、筋肉量の維持及び/もしくは低下抑制、又は身体機能の向上の用途にも供される。
【実施例0032】
以下に実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0033】
20歳以上の女性49名を対象とし、発酵乳(森永乳業社製ギリシャヨーグルト「パルテノ」、タンパク質10.2g/100g/個)を1日1回1個ずつ、12週間継続摂取してもらった。摂取期間中は、セラバンドを用いた運動を推奨し、日常生活レベルの運動負荷となるように過ごしてもらった。
慢性疾患2名を除外した有効性解析対象者の詳細を表1に示す。また、対象者の57.4%が軽い運動の頻度が少ない(週に1~2日又はほとんどない)背景であった。摂取期間中のセラバンドを用いた運動の実施率は46.5%であり、1日の平均実施時間は11分間であった。
【0034】
【表1】
【0035】
発酵乳の摂取前(0週)と摂取期間(4、8、及び12週)において、体重・体組成及び身体機能の測定、並びに体感調査を行った。体感調査は、「便性」、「睡眠」、「肌の状態」、及び「疲労感」について対象者にアンケートを実施した。
便性については、排便頻度を回答してもらう他に、対象者に日本語版便秘評価尺度(J-CAS)で評価を実施してもらった。J-CASの所定の8項目をそれぞれ0~2点の3段階で評価し、全項目のスコアの合計を便秘評価尺度とした。便秘評価尺度のスコアが低いほど、便秘の程度が低いことを示す。
睡眠については、OSA睡眠調査票(山本由華吏, 田中秀樹, 高瀬美紀, 山崎勝男, 阿住一雄, 白川修一郎: 中高年・高齢者を対象としたOSA睡眠感調査票(MA版)の開発と標
準化. 脳と精神の医学 10: 401-409, 1999.)を使用し、対象者に各スコア(スコアが高
いほど良質な睡眠を示す)をつける評価を実施してもらった。
肌の状態については、各項目について7段階(1:とても悪い~7:とても良い)で対象者に評価を実施してもらった。
疲労感については、Chalder fatigue scaleを使用し、対象者に所定の14項目をそれぞれ0~4の4段階で評価してもらい、全項目スコアの合計を疲労スコアとした。疲労スコアが低いほど、疲労度が低いことを示す。
各アンケート項目で算出されるスコアについて、対応のあるt検定により統計学的有意差を検証した。
【0036】
発酵乳の摂取前及び摂取期間の評価ポイントでの各評価項目のスコアを表2~10に示す。
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】
【0039】
【表4】
【0040】
【表5】
【0041】
【表6】
【0042】
【表7】
【0043】
【表8】
【0044】
【表9】
【0045】
【表10】
【0046】
表2~3に示されるように、試験期間を通して筋肉量は維持されたが、体重や体脂肪は有意に低下した。また、身体機能が有意に向上し、筋力が増加したことが認められた。
表4に示されるように、便性、疲労感、肌の状態、および睡眠についてそれぞれ、改善や向上したとの体感が有意に認められた。