(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128246
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
H04N 13/39 20180101AFI20230907BHJP
G02B 30/52 20200101ALI20230907BHJP
【FI】
H04N13/39
G02B30/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022032461
(22)【出願日】2022-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 文彦
【テーマコード(参考)】
2H199
5C061
【Fターム(参考)】
2H199BA23
2H199BB02
2H199BB17
2H199BB18
2H199BB45
2H199BB47
5C061AA06
5C061AB14
5C061AB16
(57)【要約】
【課題】立体画像の表示精度を向上させる。
【解決手段】表示装置10Eは、蛍光体を含有する複数の蛍光層と、蛍光体を含有しない複数の分離層とを交互に積層させた表示体12Cと、表示体12Cに積層方向に入射して蛍光体を励起する第1励起光20を面内方向の位置を変化させて照射する第1照射部16と、複数の蛍光層に面内方向に入射して蛍光体を励起する第2励起光88を積層方向の位置を変化させて照射する第2照射部90と、を備える。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光体を含有する複数の蛍光層と、蛍光体を含有しない複数の分離層とを交互に積層させた表示体と、
前記表示体に積層方向に入射して前記蛍光体を励起する第1励起光を面内方向の位置を変化させて照射する第1照射部と、
前記複数の蛍光層に前記面内方向に入射して前記蛍光体を励起する第2励起光を前記積層方向の位置を変化させて照射する第2照射部と、を備える表示装置。
【請求項2】
前記複数の分離層の屈折率は、前記複数の蛍光層の屈折率よりも低い、請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記複数の分離層の屈折率と前記複数の蛍光層の屈折率の差は、0.01以上0.05以下である、請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記第1励起光および前記第2励起光のそれぞれの光強度は、前記蛍光体の自然放射増幅光の閾値未満であり、
前記第1励起光および前記第2励起光の光強度の合計値は、前記蛍光体の自然放射増幅光の閾値以上である、請求項1から3のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項5】
前記複数の蛍光層のそれぞれの厚さと前記複数の分離層のそれぞれの厚さの合計は、前記第1励起光のレイリー長の1倍より大きく2倍より小さい、請求項1から4のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項6】
前記複数の蛍光層のそれぞれの厚さは、前記第1励起光の集光位置のスポットサイズの0.5倍以上2倍以下である、請求項1から5のいずれか一項に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
立体画像の表示装置として、量子ドットブロックを三次元的に組み合わせ、紫外光を照射する構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の先行技術では、量子ドットブロックに照射する紫外光の照射位置の制御について触れていない。意図した立体画像を精度良く表示するためには、照射位置を適切に制御することが好ましい。
【0005】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、立体画像の表示精度を向上させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様の表示装置は、蛍光体を含有する複数の蛍光層と、蛍光体を含有しない複数の分離層とを交互に積層させた表示体と、表示体に積層方向に入射して蛍光体を励起する第1励起光を面内方向の位置を変化させて照射する第1照射部と、複数の蛍光層に面内方向に入射して蛍光体を励起する第2励起光を積層方向の位置を変化させて照射する第2照射部と、を備える。
【0007】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、立体画像の表示精度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る表示装置の構成を模式的に示す図である。
【
図2】蛍光体の励起光強度と発光強度の関係を模式的に示すグラフである。
【
図3】蛍光層の厚さと励起光のレイリー長の関係を模式的に示す図である。
【
図4】第2実施形態に係る表示装置の構成を模式的に示す図である。
【
図5】第3実施形態に係る表示装置の構成を模式的に示す図である。
【
図6】第1集光位置、第2集光位置および第3集光位置の配置を模式的に示す図である。
【
図7】第4実施形態に係る表示体の構成を模式的に示す図である。
【
図8】蛍光層および分離層の厚さと励起光のレイリー長の関係を模式的に示す図である。
【
図9】第5実施形態における第1集光位置、第2集光位置および第3集光位置の配置を模式的に示す図である。
【
図10】第6実施形態に係る表示装置の構成を模式的に示す図である。
【
図11】第7実施形態に係る表示装置の構成を模式的に示す図である。
【
図12】第7実施形態に係る表示体および第2照射部の構成を模式的に示す図である。
【
図13】第8実施形態に係る表示装置の構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。かかる実施の形態に示す具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、図面において、本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。説明の理解を助けるため、各図面における各構成要素の寸法比は、必ずしも実際の寸法比と一致しない。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る表示装置10の構成を模式的に示す図である。表示装置10は、表示体12と、照射部16と、制御部18とを備える。表示装置10は、いわゆるボリュームディスプレイであり、表示体12の内部に立体像Sを描画するよう構成される。
【0012】
表示体12は、第1面13および第2面14を有し、第1面13から第2面14に向けてz方向に積層される複数の積層体30を含む。複数の積層体30のそれぞれは、第1蛍光層31、第2蛍光層32および第3蛍光層33を有する。表示体12は、第1蛍光層31、第2蛍光層32、第3蛍光層33、第1蛍光層31、第2蛍光層32、第3蛍光層33、・・・のように、複数の蛍光層が順に積層された構造を有する。例えば、複数の第2蛍光層32は、複数の第1蛍光層31と交互に配置され、複数の第3蛍光層33は、複数の第1蛍光層31および複数の第2蛍光層32と交互に配置される。
【0013】
第1蛍光層31は、可視域の発光波長を有する第1蛍光体を含有する蛍光層であり、例えば、発光色が赤色(R)である第1蛍光体を含む。第2蛍光層32は、第1蛍光体とは異なる可視域の発光波長を有する第2蛍光体を含有する蛍光層であり、例えば、発光色が緑色(G)である第2蛍光体を含む。第3蛍光層33は、第1蛍光体および第2蛍光体とは異なる可視域の発光波長を有する第3蛍光体を含有する蛍光層であり、例えば、発光色が青色(B)である第3蛍光体を含む。
【0014】
第1蛍光体、第2蛍光体および第3蛍光体の材料は特に問わないが、例えば、量子ドット蛍光体を用いることができる。量子ドット蛍光体を用いることで、第1蛍光体、第2蛍光体および第3蛍光体の励起波長を共通化し、第1蛍光体、第2蛍光体および第3蛍光体のそれぞれの発光波長(つまり発光色)を異ならせることができる。蛍光体の一例として、ハロゲン化セシウム鉛ペロブスカイト(CsPbX3、Xはハロゲンであり、Cl,Br,Iのいずれか、または、これらの混合)のナノ結晶粒子を用いることができ、励起波長を300nm~400nmの紫外光とし、RGBの発光波長を得ることができる。
【0015】
第1蛍光層31、第2蛍光層32および第3蛍光層33の母材は、可視光に対して透明な材料で構成され、樹脂材料やガラス材料で構成される。透明な母材に蛍光体を混ぜることで、第1蛍光層31、第2蛍光層32および第3蛍光層33のそれぞれを形成することができ、第1蛍光層31、第2蛍光層32および第3蛍光層33を順に積層することで、表示体12を形成できる。
【0016】
表示体12は、全体が中実な柱形状となるように構成され、円柱形状、多角柱形状または直方体形状となるように構成される。表示体12は、表示体12の内部を外から透視できるように表示体12の表面が鏡面仕上げとなるように構成される。表示体12は、複数の蛍光層31,32,33の界面が視認不可または視認困難となるように、複数の蛍光層31,32,33が一体となるように形成される。
【0017】
表示体12の大きさは特に限られないが、例えば、積層方向(z方向)のサイズを100mm~1000mm程度とし、積層方向に直交する方向(x方向およびy方向)のサイズを100mm~1000mm程度とすることができる。複数の蛍光層31,32,33のそれぞれの厚さは、例えば、10μm~10mm程度とすることができる。一例として、表示体12のx,y,z方向のサイズを200mmとし、複数の蛍光層31,32,33のそれぞれの厚さを200μmとすることができる。
【0018】
照射部16は、蛍光体を励起する励起光20を表示体12に照射する。励起光20は、表示体12の第1面13に入射し、表示体12の内部において励起光20の集光位置24が経時的に変化するように表示体12に照射される。照射部16は、光源40と、集光レンズ42と、レンズ駆動機構44と、ミラー46と、ミラー駆動機構48とを含む。
【0019】
光源40は、第1蛍光体、第2蛍光体および第3蛍光体を励起するための励起光20を生成する。光源40は、励起光20として、中心波長が300nm~400nmの範囲に含まれる紫外光を生成する。光源40の種類は問わないが、例えば、窒化ガリウム(GaN)系の半導体レーザまたは半導体LED(Light Emitting Diode)を光源40として用いることができる。
【0020】
集光レンズ42は、光源40により生成された励起光20を表示体12の内部に向けて集光させる。レンズ駆動機構44は、集光レンズ42の位置を光軸方向Aに変化させるよう構成される。レンズ駆動機構44は、集光レンズ42の位置を変化させることにより、励起光20の集光位置24を変化させる。レンズ駆動機構44は、励起光20の照射方向における集光位置24を可変にし、第1面13に交差する方向の集光位置24を可変にする。なお、集光レンズ42とレンズ駆動機構44の代わりに、焦点可変レンズを用いて、第1面13に交差する方向の集光位置24を可変にしてもよい。
【0021】
ミラー46は、集光レンズ42を通過した励起光20を表示体12に向けて反射させる。ミラー46は、励起光20が第1面13に入射するように励起光20を反射させる。ミラー駆動機構48は、ミラー46の向きを変化させるよう構成される。ミラー駆動機構48は、ミラー46の向きを2軸で可変とするよう構成され、ミラー46にて反射された励起光20の集光位置24を第1面13に沿った方向(x方向およびy方向)に変化させる。図示する例では、1枚のミラー46を用いているが、x方向に走査するための第1ミラーと、y方向に走査するための第2ミラーとを組み合わせてもよい。
【0022】
励起光20の集光位置24における光強度は、表示体12に含まれる蛍光体の自然放射増幅光(ASE;Amplified Spontaneous Emission)の閾値以上となるように設定され、例えば、自然放射増幅光の閾値(ASE閾値)の1.3倍以上1.5倍以下に設定される。自然放射増幅光(ASE)は、スーパールミネッセンスとも呼ばれ、励起光により蛍光体において反転分布が生成され、蛍光体の発光強度が増幅する現象のことをいう。自然放射増幅光の閾値(ASE閾値)は、ASEを生じさせるための励起光の最低光強度に相当する。
【0023】
図2は、蛍光体の励起光強度と発光強度の関係を模式的に示すグラフであり、蛍光体がハロゲン化セシウム鉛ペロブスカイトのナノ結晶である場合の一例を示す。蛍光体に照射される励起光の光強度がASE閾値(
図2では0.45mJ/cm
2)以上になると、励起光強度に対する発光強度の割合(傾き)が増加する。集光位置24における励起光強度をASE閾値以上とすることで、集光位置24における蛍光体の発光強度をより高めることができる。一方、集光位置24とは異なる箇所の励起光強度をASE閾値未満とすることで、集光位置24とは異なる箇所の蛍光体の発光強度を下げることができ、集光位置24とのコントラスト比を高めることができる。
【0024】
図3は、蛍光層の厚さと励起光20のレイリー長Zrの関係を模式的に示す図である。
図3は、第1蛍光層31に励起光20の集光位置24が一致する状態を示している。励起光20は、集光位置24において最小のビーム半径w
0を有し、集光位置24から離れるにつれてビーム半径が拡がるように構成される。レイリー長Zrは、集光位置24から励起光20のビーム半径が√2倍に拡がる位置28までの距離であり、Zr=πw
0
2/λと表すことができる。ここで、λは励起光20の波長である。最小のビーム半径w
0は、照射部16の光学系に依存し、例えば、1μm~30μm程度である。このとき、レイリー長Zrは、10μm~10mm程度である。
【0025】
レイリー長Zrの位置28では、ビーム半径が√2×w0になるため、ビーム強度が集光位置24の半分となる。集光位置24におけるビーム強度がASE閾値の1.3倍~1.5倍である場合、レイリー長Zrの位置28におけるビーム強度はASE閾値の0.65倍~0.75倍となり、ASEが生じなくなる。ここで、第1蛍光層31の厚さt1を励起光20のレイリー長Zrの2倍以上とすれば、第1蛍光層31の隣の蛍光層(第2蛍光層32および第3蛍光層33)におけるASEの発生を防ぐことができ、色にじみや描画コントラストの低下を抑制できる。
【0026】
図3では、第1蛍光層31に励起光20の集光位置24が一致する場合を示しているが、励起光20の集光位置24が第2蛍光層32や第3蛍光層33に一致する場合も同様である。第2蛍光層32の厚さt2は、第2蛍光層32に励起光20の集光位置24が一致するときの励起光20のレイリー長Zrの2倍以上である。第3蛍光層33の厚さt3は、第3蛍光層33に励起光20の集光位置24が一致するときの励起光20のレイリー長Zrの2倍以上である。第1蛍光層31、第2蛍光層32および第3蛍光層33のそれぞれの厚さt1,t2,t3の上限は特に問わないが、例えば、励起光20のレイリー長Zrの5倍以下、4倍以下または3倍以下である。
【0027】
第1蛍光層31、第2蛍光層32および第3蛍光層33のそれぞれの厚さt1,t2,t3は、表示体12内のz方向の位置に応じて異なってもよく、例えば、第1面13からの距離に応じて異なってもよい。
図1に示すように1枚の集光レンズ42の光軸方向Aの位置によって励起光20の集光位置24を変化させる場合、集光レンズ42の位置に応じて集光位置24におけるビーム径w
0が変化する。具体的には、集光位置24が第1面13から離れるにつれて(つまり、集光位置24が第2面14に近づくにつれて)、集光位置24におけるビーム径w
0が大きくなる。レイリー長Zrは、ビーム径w
0の2乗に比例するため、集光位置24が第1面13から離れるにつれて、レイリー長Zrが大きくなる。このような集光位置24のz方向の位置に応じたレイリー長Zrの変化に合わせて、複数の第1蛍光層31、複数の第2蛍光層32および複数の3蛍光層33のそれぞれの厚さt1,t2,t3を異ならせてもよい。つまり、複数の第1蛍光層31、複数の第2蛍光層32および複数の3蛍光層33のそれぞれの厚さt1,t2,t3は、第1面13から離れるにつれて大きくなるように構成されてもよい。
【0028】
図1に戻り、制御部18は、照射部16の動作を制御する。制御部18は、ハードウェア的には、コンピュータのCPUやメモリをはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現される。制御部18により提供される各種機能は、ハードウェアおよびソフトウェアの連携によって実現されうる。
【0029】
制御部18は、レンズ駆動機構44およびミラー駆動機構48の動作を制御することにより、励起光20の集光位置24を三次元(x方向、y方向およびz方向)で制御する。制御部18は、例えば、レンズ駆動機構44およびミラー駆動機構48を周期的に動作させることにより、表示体12の内部において励起光20の集光位置24が三次元走査されるようにする。
【0030】
制御部18は、例えば、励起光20の集光位置24に応じて光源40のオンオフを制御する。制御部18は、励起光20の集光位置24が表示体12の内部において描画すべき箇所となる場合に光源をオンにする。制御部18は、励起光20の集光位置24が表示体12の内部において描画すべきではない箇所となる場合に光源をオフにする。
【0031】
制御部18は、例えば、三次元画像データから生成される立体輪郭画像データに基づいて、光源40のオンオフおよび光源40の発光強度を制御する。立体輪郭画像データは、表示体12に描画すべき立体像Sの輪郭の三次元位置および表示色が指定されたデータである。制御部18は、隣接する第1蛍光層31、第2蛍光層32および第3蛍光層33のそれぞれに照射する励起光20の光強度を制御することにより表示色を制御する。具体的には、第1蛍光層31における赤色の発光量と、第2蛍光層32における緑色の発光量と、第3蛍光層33における青色の発光量とを制御することにより、発光位置にて赤色、緑色および青色が混ざり合うことによる発光色をフルカラーで制御する。
【0032】
表示装置10は、画像センサ50をさらに備えてもよい。画像センサ50は、CCDセンサやCMOSセンサなどの二次元の光検出器であり、励起光20のスポットサイズを計測するために設けられる。画像センサ50は、表示体12に隣接して第1面13に対応する位置に配置される。画像センサ50は、励起光20が入射可能な位置であれば、図示する場所とは異なる位置に設けられてもよい。
【0033】
制御部18は、画像センサ50に励起光20が入射するようにレンズ駆動機構44およびミラー駆動機構48を動作させる。制御部18は、集光レンズ42の位置を変化させながら、画像センサ50にて励起光20のサイズを計測することにより、励起光20のスポットサイズが最小となる集光レンズ42の位置を特定する。特定された集光レンズ42の位置は、励起光20の集光位置24を第1面13に一致させるためのz方向の位置決めの基準として用いることができる。制御部18は、画像センサ50の計測結果に基づいて、励起光20の集光位置24を較正することができる。
【0034】
表示装置10は、光センサ52をさらに備えてもよい。光センサ52は、波長別の光強度を計測可能となるよう構成される。光センサ52は、例えば、第1蛍光体の第1発光色(例えば赤色)の光強度と、第2蛍光体の第2発光色(例えば緑色)の光強度と、第3蛍光体の第3発光色(例えば青色)の光強度とをそれぞれ計測可能となるよう構成される。光センサ52は、例えば、赤色光を選択的に透過させる第1フィルタを有する第1センサ54と、緑色光を選択的に透過させる第2フィルタを有する第2センサ56と、青色光を選択的に透過させる第3フィルタを有する第3センサ58とを含む。光センサ52は、例えば、表示体12の第2面14に配置される。光センサ52は、表示体12にて生じる発光を検出可能な位置であれば、図示する場所とは異なる位置に設けられてもよい。
【0035】
制御部18は、レンズ駆動機構44を動作させて集光レンズ42の位置を変化させながら、光センサ52にて計測される第1発光色、第2発光色および第3発光色のそれぞれの光強度を取得する。励起光20の集光位置24を変化させることにより、第1蛍光層31、第2蛍光層32および第3蛍光層33のいずれに励起光20が強く集光されるかが変化し、第1発光色、第2発光色および第3発光色のそれぞれの光強度が変化する。例えば、光センサ52にて計測される第1発光色の光強度が最大(または極大)となる集光レンズ42の位置は、励起光20の集光位置24を第1蛍光層31に一致させるためのz方向の位置決めの基準として用いることができる。
【0036】
制御部18は、光センサ52の計測結果に基づいて、励起光20の集光位置24を較正できる。制御部18は、光センサ52の計測結果に基づいて、立体像Sの描画開始前に集光位置24を較正してもよい。制御部18は、光センサ52の計測結果に基づいて、立体像Sの描画途中や、動画となる立体像Sの各フレームを描画する間のタイミングに集光位置24を較正してもよい。光センサ52の計測結果に基づいて、励起光20の集光位置24を較正することにより、立体像Sを描画する位置精度を高めることができ、立体像Sの表示精度を向上できる。
【0037】
つづいて、表示装置10の動作について説明する。制御部18は、立体輪郭画像データを取得し、立体輪郭画像データに基づいて照射部16を動作させる。制御部18は、レンズ駆動機構44およびミラー駆動機構48の動作を制御して、表示体12の内部において励起光20の集光位置24を三次元走査する。制御部18は、励起光20の集光位置24に応じて、光源40の出力強度を制御し、立体輪郭画像データにより描画位置ごとに指定された表示色が実現されるようにする。これにより、立体輪郭画像データに対応する立体像Sを表示体12の内部に描画できる。
【0038】
制御部18は、動画データの各フレームに対応する立体輪郭画像データを取得し、フレームごとに異なる立体像Sが描画されるようにしてもよい。これにより、動画となる立体像Sが表示されるようにしてもよい。
【0039】
制御部18は、画像センサ50の計測結果に基づいて、励起光20の集光位置24を較正してもよい。制御部18は、画像センサ50の計測結果に基づいて、立体像Sの描画開始前に集光位置24を較正してもよい。制御部18は、画像センサ50の計測結果に基づいて、立体像Sの描画途中や、動画となる立体像Sの各フレームを描画する間のタイミングに集光位置24を較正してもよい。
【0040】
本実施形態によれば、複数の積層体30のそれぞれに含まれる第1蛍光層31、第2蛍光層32および第3蛍光層33のそれぞれの厚さt1,t2,t3をレイリー長Zrの2倍以上とすることにより、集光位置24とは異なる箇所での発光を抑制できる。これにより、隣接する異なる発光色の蛍光層での発光を抑制でき、色にじみやコントラスト低下を抑制できる。また、集光位置24における光強度を蛍光体のASE閾値の1.3倍以上1.5倍以下とすることにより、集光位置24にてASEによる強い発光を得るとともに、隣接する異なる発光色の蛍光層にてASEが生じないようにすることができ、色にじみやコントラスト低下を抑制できる。その結果、立体像Sの表示精度を向上できる。
【0041】
(第2実施形態)
図4は、第2実施形態に係る表示装置10Aの構成を模式的に示す図である。第2実施形態では、照射部16Aがコリメートレンズ41をさらに含む点で、上述の第1実施形態と相違する。以下、第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に説明し、第1実施形態との共通点は適宜省略する。
【0042】
表示装置10Aは、表示体12と、照射部16Aと、制御部18とを備える。表示装置10Bは、画像センサ50および光センサ52を備えてもよいし、備えなくてもよい。表示体12および制御部18は、第1実施形態と同様に構成される。
【0043】
照射部16Aは、光源40と、コリメートレンズ41と、集光レンズ42と、レンズ駆動機構44と、ミラー46と、ミラー駆動機構48とを含む。光源40、集光レンズ42、レンズ駆動機構44、ミラー46およびミラー駆動機構48は、第1実施形態と同様に構成される。
【0044】
コリメートレンズ41は、光源40により生成された励起光20を平行化する。集光レンズ42は、コリメートレンズ41により平行化された励起光20を表示体12の内部に向けて集光させる。レンズ駆動機構44は、集光レンズ42の位置を変化させることにより、励起光20の集光位置24を変化させる。
【0045】
本実施形態によれば、コリメートレンズ41を用いることにより、励起光20の集光位置24の変化に起因した集光位置24におけるビーム径w0およびレイリー長Zrの変化を抑制できる。本実施形態の一例によれば、コリメートレンズ41を用いて励起光20を平行化することにより、集光位置24におけるビーム径w0およびレイリー長Zrを一定にしたまま集光位置24を変化させることができる。その結果、複数の第1蛍光層31、複数の第2蛍光層32および複数の第3蛍光層33のそれぞれの厚さt1,t2,t3を一定にしつつ、これらの厚さt1,t2,t3がレイリー長Zrの2倍以上となるように構成できる。
【0046】
(第3実施形態)
図5は、第3実施形態に係る表示装置10Bの構成を模式的に示す図である。第3実施形態では、照射部16Bが複数の光源61,62,63を備える点で、上述の第2実施形態と相違する。以下、第3実施形態について、第2実施形態との相違点を中心に説明し、第2実施形態との共通点は適宜省略する。
【0047】
表示装置10Bは、表示体12と、照射部16Bと、制御部18とを備える。表示装置10Bは、画像センサ50および光センサ52を備えてもよいし、備えなくてもよい。表示体12、制御部18、画像センサ50および光センサ52は、第2実施形態と同様に構成される。
【0048】
照射部16Bは、第1光源61と、第2光源62と、第3光源63と、第1コリメートレンズ64と、第2コリメートレンズ65と、第3コリメートレンズ66と、第1ハーフミラー67と、第2ハーフミラー68と、第3ミラー69と、集光レンズ42と、レンズ駆動機構44と、ミラー46と、ミラー駆動機構48とを含む。集光レンズ42、レンズ駆動機構44、ミラー46およびミラー駆動機構48は、第2実施形態と同様に構成される。
【0049】
第1光源61は、第1蛍光層31に含まれる第1蛍光体を励起するための第1励起光21を生成する。第2光源62は、第2蛍光層32に含まれる第2蛍光体を励起するための第2励起光22を生成する。第3光源63は、第3蛍光層33に含まれる第3蛍光体を励起するための第3励起光23を生成する。第1励起光21、第2励起光22および第3励起光23は、中心波長が300nm~400nmの範囲に含まれる紫外光である。第1励起光21、第2励起光22および第3励起光23のそれぞれの中心波長は、同じであってもよいし、互いに異なってもよい。例えば、第1励起光21の中心波長が400nmであり、第2励起光22の中心波長が350nmであり、第3励起光23の中心波長が300nmであってもよい。第1光源61、第2光源62および第3光源63として、第1実施形態に係る光源40と同様、半導体レーザや半導体LEDを用いることができる。
【0050】
第1コリメートレンズ64は、第1光源61により生成された第1励起光21を平行化する。第2コリメートレンズ65は、第2光源62により生成された第2励起光22を平行化する。第3コリメートレンズ66は、第3光源63により生成された第3励起光23を平行化する。第1ハーフミラー67は、第1コリメートレンズ64により平行化された第1励起光21を集光レンズ42に向けて反射させる。第2ハーフミラー68は、第2コリメートレンズ65により平行化された第2励起光22を集光レンズ42に向けて反射させる。第2ハーフミラー68にて反射した第2励起光22は、第1ハーフミラー67を透過して集光レンズ42に向かう。第3ミラー69は、第3コリメートレンズ66により平行化された第3励起光23を集光レンズ42に向けて反射させる。第3ミラー69にて反射した第3励起光23は、第2ハーフミラー68および第1ハーフミラー67を透過して集光レンズ42に向かう。第1励起光21、第2励起光22および第3励起光23は、第1ハーフミラー67および第2ハーフミラー68によって同じ光路上に重畳されてから集光レンズ42に入射する。
【0051】
集光レンズ42は、第1励起光21、第2励起光22および第3励起光23が互いに重畳された励起光20を表示体12の内部に向けて集光させる。ミラー46は、集光レンズ42を通過した励起光20を表示体12に向けて反射させる。第1励起光21は、集光レンズ42によって第1集光位置25に集光される。第2励起光22は、集光レンズ42によって第2集光位置26に集光される。第3励起光23は、集光レンズ42によって第3集光位置27に集光される。
【0052】
第1集光位置25、第2集光位置26および第3集光位置27は、励起光20の照射方向(z方向)における位置がわずかに異なるように設定される。例えば、第1コリメートレンズ64、第2コリメートレンズ65および第3コリメートレンズ66による第1励起光21、第2励起光22および第3励起光23の平行化の度合いを微調整することにより、第1集光位置25、第2集光位置26および第3集光位置27を互いにずらすことができる。
【0053】
図6は、第1集光位置25、第2集光位置26および第3集光位置27の配置を模式的に示す図である。
図6は、第1励起光21の第1集光位置25が第1蛍光層31に一致する場合を示す。
図6の状態において、第2励起光22の第2集光位置26は、第2蛍光層32に一致し、第3励起光23の第3集光位置27は、第3蛍光層33に一致する。第1集光位置25、第2集光位置26および第3集光位置27の配置を
図6に示されるように設定することで、一つの積層体30に含まれる第1蛍光層31、第2蛍光層32および第3蛍光層33を同時に励起できる。また、第1励起光21、第2励起光22および第3励起光23のそれぞれの光強度を個別に設定することにより、第1蛍光層31における赤色の発光量と、第2蛍光層32における緑色の発光量と、第3蛍光層33における青色の発光量とを制御して、発光位置にて赤色、緑色および青色が混ざり合うことによる発光色をフルカラーで制御できる。
【0054】
図6の例において、第1集光位置25と第2集光位置26の間の距離は、第1蛍光層31と第2蛍光層32の中心間距離である第1ピッチp1に一致する。第1ピッチp1は、第1蛍光層31の厚さt1と第2蛍光層32の厚さt2の合計の半分(t1+t2)/2に一致する。また、第2集光位置26と第3集光位置27の間の距離は、第2蛍光層32と第3蛍光層33の中心間距離である第2ピッチp2に一致する。第2ピッチp2は、第2蛍光層32の厚さt2と第3蛍光層33の厚さt3の合計の半分(t2+t3)/2に一致する。第1ピッチp1は、第1蛍光層31の厚さt1または第2蛍光層32の厚さt2と一致してもよい。第2ピッチp2は、第2蛍光層32の厚さt2または第3蛍光層33の厚さt3と一致してもよい。
【0055】
本実施形態においても、蛍光層の厚さは、集光位置におけるレイリー長の2倍以上であることが好ましい。第1蛍光層31の厚さt1は、第1励起光21の第1集光位置25における第1レイリー長Zr1の2倍以上であり、第1レイリー長Zr1の5倍以下、4倍以下または3倍以下である。第1レイリー長Zr1は、第1励起光21のビーム径が第1集光位置25における最小ビーム径w01の√2倍となる位置である。第2蛍光層32の厚さt2は、第2励起光22の第2集光位置26における第2レイリー長Zr2の2倍以上であり、第2レイリー長Zr2の5倍以下、4倍以下または3倍以下である。第2レイリー長Zr2は、第2励起光22のビーム径が第2集光位置26における最小ビーム径w02の√2倍となる位置である。第3蛍光層33の厚さt3は、第3励起光23の第3集光位置27における第3レイリー長Zr3の2倍以上であり、第3レイリー長Zr3の5倍以下、4倍以下または3倍以下である。第3レイリー長Zr3は、第3励起光23のビーム径が第3集光位置27における最小ビーム径w03の√2倍となる位置である。
【0056】
本実施形態においても、励起光の集光位置における光強度は、蛍光体のASE閾値の1.3倍以上1.5倍以下であることが好ましい。第1励起光21の第1集光位置25における光強度は、第1蛍光層31に含まれる第1蛍光体のASE閾値の1.3倍以上1.5倍以下である。第1励起光21の光強度をこのように設定することにより、第1励起光21に起因して第1蛍光層31にてASEを生じさせるとともに、第1励起光21に起因して第2蛍光層32や第3蛍光層33にてASEが生じることを防止できる。同様に、第2励起光22の第2集光位置26における光強度は、第2蛍光層32に含まれる第2蛍光体のASE閾値の1.3倍以上1.5倍以下である。第2励起光22の光強度をこのように設定することにより、第2励起光22に起因して第2蛍光層32にてASEを生じさせるとともに、第2励起光22に起因して第1蛍光層31や第3蛍光層33にてASEが生じることを防止できる。また、第3励起光23の第3集光位置27における光強度は、第3蛍光層33に含まれる第3蛍光体のASE閾値の1.3倍以上1.5倍以下である。第3励起光23の光強度をこのように設定することにより、第3励起光23に起因して第3蛍光層33にてASEを生じさせるとともに、第3励起光23に起因して第1蛍光層31や第2蛍光層32にてASEが生じることを防止できる。その結果、色にじみや描画コントラストの低下を抑制でき、立体像Sの表示精度を向上できる。
【0057】
(第4実施形態)
第4実施形態は、発光色の異なる二つの蛍光層の間に、蛍光体を含有しない分離層が設けられる点で上述の第1実施形態と相違する。第4実施形態によれば、分離層を設けることにより、色にじみや描画コントラストの低下をより好適に抑制できる。第4実施形態によれば、分離層を設けることにより、発光色の異なる二つの蛍光層のピッチをより小さくできるため、より高精細な立体像Sの描画が可能となる。以下、第4実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に説明し、第1実施形態との共通点は適宜省略する。
【0058】
図7は、第4実施形態に係る表示体12Cの構成を模式的に示す図である。表示体12Cは、z方向に積層される複数の積層体30を含む。複数の積層体30のそれぞれは、第1蛍光層31、第1分離層34、第2蛍光層32、第2分離層35、第3蛍光層33および第3分離層36を含み、これらがz方向に順に積層されている。第1蛍光層31、第2蛍光層32および第3蛍光層33は、第1実施形態と同様に構成される。
【0059】
第1分離層34、第2分離層35および第3分離層36は、蛍光体を含有しない層であり、可視光に対して透明な樹脂材料やガラス材料で構成される。第1分離層34、第2分離層35および第3分離層36は、第1蛍光層31、第2蛍光層32および第3蛍光層33の母材と同じ材料で構成されることが好ましい。第1分離層34、第2分離層35および第3分離層36は、第1蛍光層31、第2蛍光層32または第3蛍光層33との界面が視認不可または視認困難となるように一体的に形成される。
【0060】
図8は、蛍光層および分離層の厚さと励起光20のレイリー長Zrの関係を模式的に示す図である。
図8は、
図3と同様、第1蛍光層31に励起光20の集光位置24が一致する状態を示している。
図8において、集光位置24からレイリー長Zrとなる位置28よりも第2蛍光層32が離れていれば、第2蛍光層32におけるASEの発生を防ぐことができる。したがって、第1蛍光層31の厚さt1の半分と第1分離層34の厚さt4の合計は、好ましくはレイリー長Zr以上である(つまり、t1/2+t4≧Zr)。同様に、第2蛍光層32の厚さt2の半分と第2分離層35の厚さt5の合計は、好ましくはレイリー長Zr以上であり(つまり、t2/2+t5≧Zr)、第3蛍光層33の厚さt3の半分と第3分離層36の厚さt6の合計は、好ましくはレイリー長Zr以上である(つまり、t3/2+t6≧Zr)。
【0061】
本実施形態では、第1分離層34を設けることにより、第1蛍光層31と第2蛍光層32の中心間距離である第1ピッチp1を第1実施形態に比べて小さくできる。
図3の第1実施形態では、第1蛍光層31および第2蛍光層32の厚さt1,t2をレイリー長Zrの2倍以上とする必要があったため、第1蛍光層31と第2蛍光層32の第1ピッチp1もレイリー長Zrの2倍以上となる。一方、
図8の第4実施形態では、第1蛍光層31と第2蛍光層32の第1ピッチp1をレイリー長Zrの1倍より大きく2倍より小さく設定することが可能となる。例えば、第1蛍光層31および第2蛍光層32の厚さt1,t2をレイリー長Zrとし(t1=t2=Zr)、第1分離層34の厚さt4をレイリー長Zrの半分とした(t4=Zr/2)場合、第2蛍光層32におけるASEの発生を防ぐための条件(t1/2+t4≧Zr)を満たしつつ、第1蛍光層31と第2蛍光層32の第1ピッチp1をレイリー長の1.5倍に設定できる。同様に、第2分離層35を設けることにより、第2蛍光層32と第3蛍光層33の中心間距離である第2ピッチp2をレイリー長Zrの1倍より大きく2倍より小さく設定することが可能となる。また、第3分離層36を設けることにより、第3蛍光層33と第1蛍光層31の中心間距離である第3ピッチp3をレイリー長Zrの1倍より大きく2倍より小さく設定することが可能となる。
【0062】
本実施形態において、第1ピッチp1は、第1蛍光層31(または第2蛍光層32)の厚さの半分とレイリー長Zrの合計と同じか、それより大きくてもよい(つまり、p1≧t1/2+Zr、または、p1≧t2/2+Zr)。同様に、第2ピッチp2は、第2蛍光層32(または第3蛍光層33)の厚さの半分とレイリー長Zrの合計と同じか、それより大きくてもよい(つまり、p2≧t2/2+Zr、または、p2≧t3/2+Zr)。また、第3ピッチp3は、第3蛍光層33(または第1蛍光層31)の厚さの半分とレイリー長Zrの合計と同じか、それより大きくてもよい(つまり、p3≧t3/2+Zr、または、p3≧t1/2+Zr)。
【0063】
第4実施形態において、集光位置24のz方向の位置に応じたレイリー長Zrの変化に合わせて、複数の第1蛍光層31、複数の第2蛍光層32および複数の3蛍光層33のそれぞれの厚さt1,t2,t3を異ならせてもよい。つまり、複数の第1蛍光層31、複数の第2蛍光層32および複数の3蛍光層33のそれぞれの厚さt1,t2,t3は、第1面13から離れるにつれて大きくなるように構成されてもよい。同様に、複数の第1分離層34、複数の第2分離層35および複数の第3分離層36のそれぞれの厚さt4,t5,t6は、第1面13から離れるにつれて大きくなるように構成されてもよい。
【0064】
第4実施形態の変形例として、第2実施形態に係る照射部16Aを用いてもよい。この場合、複数の第1蛍光層31、複数の第2蛍光層32および複数の3蛍光層33のそれぞれの厚さt1,t2,t3を一定にしてもよく、複数の第1分離層34、複数の第2分離層35および複数の第3分離層36のそれぞれの厚さt4,t5,t6を一定にしてもよい。
【0065】
(第5実施形態)
第5実施形態に係る表示装置は、第4実施形態に係る表示体12Cと、第3実施形態に係る照射部16Bと、制御部18とを備える。以下、第5実施形態について、第3実施形態および第4実施形態との相違点を中心に説明し、第3実施形態および第4実施形態との共通点は適宜省略する。
【0066】
図9は、第5実施形態における第1集光位置25、第2集光位置26および第3集光位置27の配置を模式的に示す図である。第5実施形態に係る表示体12Cは、第4実施形態と同様、積層体30が第1蛍光層31、第2蛍光層32、第3蛍光層33、第1分離層34、第2分離層35および第3分離層36を含むように構成される。
図9は、第1励起光21の第1集光位置25が第1蛍光層31に一致する場合を示す。
図9の状態において、第2励起光22の第2集光位置26は、第2蛍光層32に一致し、第3励起光23の第3集光位置27は、第3蛍光層33に一致する。
【0067】
図9の例において、第1集光位置25と第2集光位置26の間の距離は、第1蛍光層31と第2蛍光層32の中心間距離である第1ピッチp1に一致する。第1ピッチp1は、第1蛍光層31の厚さt1の半分と、第1分離層34の厚さt4と、第2蛍光層32の厚さt2の半分の合計(t1/2+t4+t2/2)に一致する。第1ピッチp1は、例えば、第1励起光21の第1レイリー長Zr1の1倍より大きく2倍より小さく、または、第2励起光22の第2レイリー長Zr2の1倍より大きく2倍より小さく設定できる。
図9の例では、第1分離層34において、第1集光位置25における第1レイリー長Zr1の範囲と、第2集光位置26における第2レイリー長Zr2の範囲とを重ねることができるため、
図6の場合に比べて、第1ピッチp1を小さくできる。その結果、発光色の異なる第1蛍光層31と第2蛍光層32をより近づけることができ、より高精細な立体像Sの描画が可能となる。第1ピッチp1は、第2蛍光層32(または第1蛍光層31)の厚さの半分と第1レイリー長Zr1(または第2レイリー長Zr2)の合計と同じか、それより大きくてもよい(つまり、p1≧t2/2+Zr1、または、p1≧t1/2+Zr1)。
【0068】
第2集光位置26と第3集光位置27の間の距離は、第2蛍光層32と第3蛍光層33の中心間距離である第2ピッチp2に一致する。第2ピッチp2は、第2蛍光層32の厚さt2の半分と、第2分離層35の厚さt5と、第3蛍光層33の厚さt3の半分の合計(t2/2+t5+t3/2)に一致する。第2ピッチp2は、例えば、第2励起光22の第2レイリー長Zr2の1倍より大きく2倍より小さく、または、第3励起光23の第3レイリー長Zr3の1倍より大きく2倍より小さく設定できる。第2ピッチp2は、第3蛍光層33(または第2蛍光層32)の厚さの半分と第2レイリー長Zr2(または第3レイリー長Zr3)の合計と同じか、それより大きくてもよい(つまり、p2≧t3/2+Zr2、または、p2≧t2/2+Zr3)。
【0069】
第3蛍光層33と第1蛍光層31の中心間距離である第3ピッチp3は、第3蛍光層33の厚さt3の半分と、第3分離層36の厚さt6と、第1蛍光層31の厚さt3の半分の合計(t3/2+t6+t1/2)に一致する。第3ピッチp3は、例えば、第3励起光23の第3レイリー長Zr3の1倍より大きく2倍より小さく、または、第1励起光21の第1レイリー長Zr1の1倍より大きく2倍より小さく設定できる。第3ピッチp2は、第1蛍光層31(または第3蛍光層33)の厚さの半分と第3レイリー長Zr3(または第1レイリー長Zr1)の合計と同じか、それより大きくてもよい(つまり、p3≧t1/2+Zr3、または、p3≧t3/2+Zr1)。
【0070】
なお、第1ピッチp1、第2ピッチp2および第3ピッチp3は、第1蛍光層31と第1分離層34の厚さの合計(t1+t4)と一致してもよいし、第2蛍光層32と第2分離層35の厚さの合計(t2+t5)と一致してもよいし、第3蛍光層33と第3分離層36の厚さの合計(t3+t6)と一致してもよい。
【0071】
(第6実施形態)
図10は、第6実施形態に係る表示装置10Dの構成を模式的に示す図である。第6実施形態では、表示体12の第1面13に向けて励起光20を照射する第1照射部16に加えて、表示体12の第2面14に向けて励起光80を照射する第2照射部17をさらに備える点で、上述の第1実施形態と相違する。以下、第6実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に説明し、第1実施形態との共通点は適宜省略する。
【0072】
表示装置10Dは、表示体12と、第1照射部16と、第2照射部17と、制御部18とを備える。第1照射部16は、表示体12の第1面13から中間面15の範囲において励起光20の集光位置24が可変となるように励起光20を照射する。第2照射部17は、表示体12の第2面14から中間面15の範囲において励起光80の集光位置84が可変となるように励起光80を照射する。中間面15は、第1面13と第2面14の間の任意の位置に設定され、例えば、第1面13と第2面14の中間に設定される。
【0073】
第2照射部17は、第1照射部16と同様に構成される。第2照射部17は、光源70と、集光レンズ72と、レンズ駆動機構74と、ミラー76と、ミラー駆動機構78とを含む。光源70は、光源40と同様に、第1蛍光体、第2蛍光体および第3蛍光体を励起するための励起光80を生成する。集光レンズ72は、光源70により生成された励起光80を表示体12の内部に向けて集光させる。レンズ駆動機構74は、集光レンズ72の位置を光軸方向Bに変化させ、励起光80の集光位置84を変化させる。ミラー76は、集光レンズ72を通過した励起光80が第2面14に入射するように励起光80を反射させる。ミラー駆動機構78は、ミラー76の向きを変化させ、ミラー76にて反射された励起光80の集光位置84を第2面14に沿った方向(x方向およびy方向)に変化させる。
【0074】
制御部18は、第1照射部16および第2照射部17の動作を制御する。制御部18は、立体輪郭画像データを取得し、立体輪郭画像データのうち第1面13から中間面15までの範囲を描画するデータに基づいて第1照射部16を動作させる。制御部18は、立体輪郭画像データのうち中間面15から第2面14までの範囲を描画するデータに基づいて第2照射部17を動作させる。本実施形態によれば、第1面13および第2面14のそれぞれに入射する励起光20,80を用いて立体像Sを描画できるため、励起光20のみを用いる場合に比べて描画を高速化できる。
【0075】
表示体12に含まれる第1蛍光層31、第2蛍光層32および第3蛍光層33のそれぞれの厚さt1,t2,t3は、z方向の位置に応じて異なってもよい。複数の第1蛍光層31、複数の第2蛍光層32および複数の第3蛍光層33のそれぞれの厚さt1,t2,t3は、第1面13から中間面15に向けて大きくなるように構成されてもよい。複数の第1蛍光層31、複数の第2蛍光層32および複数の第3蛍光層33のそれぞれの厚さt1,t2,t3は、第2面14から中間面15に向けて大きくなるように構成されてもよい。
【0076】
第6実施形態の変形例では、第1照射部16および第2照射部17として、第2実施形態に係る照射部16Aを用いてもよい。この場合、複数の第1蛍光層31、複数の第2蛍光層32および複数の第3蛍光層33のそれぞれの厚さt1,t2,t3を一定にしてもよい。また、第1照射部16および第2照射部17として、第3実施形態に係る照射部16Bを用いてもよい。その他、表示体12の代わりに、第4実施形態に係る表示体12Cを用いてもよい。
【0077】
(第7実施形態)
図11は、第7実施形態に係る表示装置10Eの構成を模式的に示す図である。第7実施形態では、第4実施形態および第5実施形態と同様の分離層を含む表示体12Cを備える。第7実施形態では、表示体12Cの第1面13に向けて第1励起光20を照射する第1照射部16に加えて、表示体12Cの側面86に向けて第2励起光88を照射する第2照射部90をさらに備える点で、上述の実施形態と相違する。以下、第7実施形態について、上述の実施形態との相違点を中心に説明し、上述の実施形態との共通点は適宜省略する。
【0078】
表示装置10Eは、表示体12Cと、第1照射部16と、第2照射部90と、制御部18とを備える。表示装置10Eは、画像センサ50および光センサ52を備えてもよいし、備えなくてもよい。第1照射部16は、第1実施形態に係る照射部16と同様に構成される。制御部18、画像センサ50および光センサ52も、第1実施形態と同様に構成される。
【0079】
表示体12Cは、側面86を有する。側面86は、第1面13と第2面14の間に設けられ、表示体12Cの積層方向に延びる。表示体12Cが直方体である場合、表示体12Cは四つの矩形の側面86を有する。表示体12Cが円柱である場合、表示体12Cは円筒面となる側面86を有する。
【0080】
第2照射部90は、表示体12Cの側方に設けられ、表示体12Cの側面86に向けて第2励起光88を照射する。第2照射部90は、複数の積層体30のいずれかに含まれる一つの蛍光層に向けて第2励起光88を照射する。第2励起光88は、照射対象となる蛍光層に面内方向に入射し、照射対象となる蛍光層に含まれる蛍光体を励起する。第2照射部90は、照射対象となる蛍光層の面内方向の全体にわたって第2励起光88を照射する。
【0081】
第2照射部90は、第2励起光88の積層方向の位置を変化させることにより、照射対象となる蛍光層を切り替えるよう構成される。第2照射部90は、複数の積層体30のいずれかに含まれる一つの蛍光層に選択的に第2励起光88を照射する。第2照射部90は、第1励起光20の集光位置24に対応する一つの蛍光層に向けて第2励起光88を照射する。
【0082】
第1励起光20の集光位置24では、第1励起光20および第2励起光88の双方の照射によって蛍光体が発光する。第1励起光20の集光位置24において、第1励起光20および第2励起光88のそれぞれの光強度は、蛍光体の自然放射増幅光の閾値未満(つまりASE閾値未満)である。第1励起光20の集光位置24において、第1励起光20および第2励起光88の光強度の合計値は、蛍光体の自然放射増幅光の閾値以上(つまりASE閾値以上)である。これにより、集光位置24にてASEによる強い発光を得るとともに、隣接する異なる発光色の蛍光層にてASEが生じないようにすることができ、色にじみやコントラスト低下を抑制できる。その結果、立体像Sの表示精度を向上できる。
【0083】
図12は、第7実施形態に係る表示体12Cおよび第2照射部90の構成を模式的に示す図である。表示体12Cは、z方向に積層される複数の積層体30を含む。複数の積層体30のそれぞれは、第1蛍光層31、第1分離層34、第2蛍光層32、第2分離層35、第3蛍光層33および第3分離層36を含み、これらがz方向に順に積層されている。第1蛍光層31、第2蛍光層32および第3蛍光層33は、第1実施形態と同様に構成される。
【0084】
第1分離層34、第2分離層35および第3分離層36は、蛍光体を含有しない層であり、可視光に対して透明な樹脂材料やガラス材料で構成される。第1分離層34、第2分離層35および第3分離層36(総称して分離層ともいう)の屈折率は、第1蛍光層31、第2蛍光層32および第3蛍光層33(総称して蛍光層ともいう)の屈折率よりも低い。分離層の屈折率は、蛍光層の屈折率よりもわずかに低い。分離層の屈折率と蛍光層の屈折率の差は、例えば0.01以上0.05以下であり、好ましくは0.02以上0.04以下である。
【0085】
第2照射部90は、複数の光源ユニット91,92,93を備える。第2照射部90は、複数の第1光源91と、複数の第2光源92と、複数の第3光源93とを備える。複数の第1光源91のそれぞれは、対応する第1蛍光層31に向けて第1蛍光層31の面内方向に第2励起光88を照射する。複数の第2光源92のそれぞれは、対応する第2蛍光層32に向けて第2蛍光層32の面内方向に第2励起光を照射する。複数の第3光源93のそれぞれは、対応する第3蛍光層33に向けて第3蛍光層33の面内方向に第2励起光を照射する。
【0086】
第1光源91は、第2励起光88を出力する発光素子94と、発光素子94から出力される第2励起光88をコリメートするコリメートレンズ95とを含む。発光素子94は、半導体レーザや半導体LEDである。コリメートレンズ95は、第1蛍光層31に入射する第2励起光88の配光角が所定値以下となるようにする。コリメートレンズ95によってコリメートされた第2励起光88の配光角は30度以下であり、好ましくは20度以下または10度以下である。第2光源92および第3光源93は、第1光源91と同様に構成される。
【0087】
第1光源91は、対応する第1蛍光層31に向けて第2励起光88を選択的に照射する。第1蛍光層31に入射する第2励起光88は、第1蛍光層31の界面にて反射しながら第1蛍光層31の内部を面内方向に進行する。第1蛍光層31の屈折率は、隣接する第1分離層34および第3分離層36の屈折率よりも高いため、第2励起光88は、第1蛍光層31の界面において全反射しうる。隣接する第1分離層34および第3分離層36と第1蛍光層31の屈折率差が0.01以上0.05以下である場合、第1蛍光層31の界面における臨界角は75度以上84度以下となる。したがって、第1蛍光層31にコリメートされた第2励起光88を入射させることにより、第1蛍光層31の外部に第2励起光88が漏れることを防止し、第1蛍光層31のみに選択的に第2励起光88を照射できる。
【0088】
第2光源92は、第1光源91と同様、対応する第2蛍光層32のみに選択的に第2励起光88を照射できる。また、第3光源93は、第1光源91と同様に、対応する第3蛍光層33のみに選択的に第2励起光88を照射できる。
【0089】
蛍光層と分離層の間に屈折率差がある場合、第1励起光20は、これらの層の界面にて反射されて損失となりうる。しかしながら、蛍光層と分離層の屈折率の差が0.01以上0.05以下である場合、蛍光層に入射する界面および蛍光層から出射する界面の双方を通過する第1励起光20の両面透過率は99.94%以上である。そのため、蛍光層と分離層の交互積層数が1000であっても全体で58%以上の透過率を実現できる。例えば、蛍光層と分離層の屈折率の差が0.025の場合、第1励起光20の両面透過率は99.98%以上であり、交互積層数が1,000である場合の透過率は87%以上となる。ここで、蛍光層と分離層の交互積層数が1,000となる場合とは、第1蛍光層31、第2蛍光層32および第3蛍光層33の層数の合計が1,000であり、第1分離層34、第2分離層35および第3分離層36の層数の合計が1,000である場合である。
【0090】
制御部18は、第1照射部16および第2照射部90の動作を制御する。制御部18は、立体輪郭画像データを取得し、立体輪郭画像データに基づいて第1照射部16および第2照射部90を動作させる。制御部18は、レンズ駆動機構44およびミラー駆動機構48の動作を制御して、表示体12Cの内部において第1励起光20の集光位置24を三次元走査する。制御部18は、第1励起光20の集光位置24に対応する蛍光層に第2励起光88が選択的に照射されるように第2照射部90を動作させる。制御部18は、第1励起光20の集光位置24に対応する蛍光層に第2励起光88を照射するための第1光源91,第2光源92または第3光源93を点灯させる。制御部18は、第1励起光20の集光位置24に応じて光源40の出力強度を制御し、立体輪郭画像データにより描画位置ごとに指定された表示色が実現されるようにする。制御部18は、第1励起光20の集光位置24に応じて発光素子94の出力強度を制御し、立体輪郭画像データにより描画位置ごとに指定された表示色が実現されるようにしてもよい。これにより、立体輪郭画像データに対応する立体像Sを表示体12の内部に描画できる。
【0091】
本実施形態によれば、第1励起光20と第2励起光88が重なる限定的な領域98においてASEを生じさせることができ、限定的な領域98の外側においてASEが生じることを防止できる。その結果、色にじみや描画コントラストの低下を抑制でき、立体像Sの表示精度を向上できる。例えば、第1蛍光層31の厚さt1が第1励起光20のレイリー長Zrよりも小さい場合であっても、隣接する第2蛍光層32や第3蛍光層33におけるASEの発生を好適に防止できる。本実施形態においても、第4実施形態や第5実施形態と同様、蛍光層と分離層の厚さの合計を第1励起光20のレイリー長Zrの1倍よりも大きく2倍より小さくしたとしても、第1励起光20の集光位置24とは異なる蛍光層におけるASEの発生を好適に防止できる。
【0092】
本実施形態において、蛍光層の厚さを第1励起光20の集光位置24におけるスポットサイズw0と同程度にすることにより、ASEが生じる領域98を球形に近い形状にできる。より具体的には、蛍光層の厚さを第1励起光20の集光位置24におけるスポットサイズw0の0.5倍以上2倍以下とすることにより、ASEが生じる領域98を球形に近い形状にできる。ASEが生じる領域98を球形に近い形状にすることにより、より高精細な立体像Sの描画が可能となる。
【0093】
第7実施形態の変形例として、複数の第2照射部90を用いてもよい。例えば、変形例に係る表示装置は、表示体12Cが有する複数の側面に第2励起光を照射する複数の第2照射部を備えてもよい。複数の第2照射部のそれぞれは、第1励起光20の集光位置24に対応する同一の蛍光層に向けて第2励起光を照射するように構成される。本変形例によれば、複数の側面から第2励起光を照射することにより、照射対象となる蛍光層の面内方向の全体にわたってより均一な第2励起光を照射できる。
【0094】
第7実施形態の変形例として、表示体12Cが有する複数の側面の少なくとも一つに第2励起光88を反射させる反射膜を設けてもよい。例えば、第2照射部90からの第2励起光88が入射する第1側面には反射膜を設けず、第1側面とは異なる第2側面に反射膜を設けてもよい。反射膜は、第2励起光88の波長を選択的に反射させ、蛍光層の発光波長を選択的に透過させるよう構成されてもよい。表示体12Cの側面に反射膜を設けることによって、照射対象となる蛍光層に第2励起光88をより効率的に照射できる。また、照射対象となる蛍光層の面内方向の全体にわたってより均一な第2励起光を照射できる。
【0095】
第7実施形態において、集光位置24のz方向の位置に応じたレイリー長Zrの変化に合わせて、複数の第1蛍光層31、複数の第2蛍光層32および複数の3蛍光層33のそれぞれの厚さt1,t2,t3を異ならせてもよい。つまり、複数の第1蛍光層31、複数の第2蛍光層32および複数の3蛍光層33のそれぞれの厚さt1,t2,t3は、第1面13から離れるにつれて大きくなるように構成されてもよい。同様に、複数の第1分離層34、複数の第2分離層35および複数の第3分離層36のそれぞれの厚さt4,t5,t6は、第1面13から離れるにつれて大きくなるように構成されてもよい。
【0096】
第7実施形態において、第2実施形態に係る照射部16Aを用いてもよい。この場合、複数の第1蛍光層31、複数の第2蛍光層32および複数の3蛍光層33のそれぞれの厚さt1,t2,t3を一定にしてもよく、複数の第1分離層34、複数の第2分離層35および複数の第3分離層36のそれぞれの厚さt4,t5,t6を一定にしてもよい。
【0097】
第7実施形態において、第3実施形態に係る照射部16Bを用いてもよい。この場合、第2照射部90は、第1集光位置25、第2集光位置26および第3集光位置27のそれぞれに対応する第1蛍光層31、第2蛍光層32および第3蛍光層33のそれぞれに同時に励起光を照射してもよい。例えば、第1光源91から第1蛍光層31に向けて第1蛍光体を励起するための第4励起光を照射し、第2光源92から第2蛍光層32に向けて第2蛍光体を励起するための第5励起光を照射し、第3光源93から第3蛍光層33に向けて第3蛍光体を励起するための第6励起光を照射してもよい。第4励起光、第5励起光および第6励起光は、発光波長が互いに同じであってもよいし、発光波長が互いに異なってもよい。
【0098】
(第8実施形態)
図13は、第8実施形態に係る表示装置10Fの構成を模式的に示す図である。第8実施形態に係る照射部16Fは、集光レンズ42およびレンズ駆動機構44を備えず、コリメートレンズ41によってコリメートされた第1励起光20Fを表示体12Cに照射するよう構成される。以下、第8実施形態について、上述の第7実施形態との相違点を中心に説明し、上述の第7実施形態との共通点は適宜省略する。
【0099】
表示装置10Fは、表示体12Cと、第1照射部16Fと、第2照射部90と、制御部18とを備える。表示装置10Fは、画像センサ50および光センサ52を備えてなくてもよい。表示体12C、第2照射部90および制御部18は、上述の第7実施形態と同様に構成される。
【0100】
第1照射部16Fは、光源40と、コリメートレンズ41と、ミラー46と、ミラー駆動機構48とを含む。第1照射部16Fは、集光レンズ42およびレンズ駆動機構44を含まない。ミラー46は、コリメートレンズ41によって平行化された第1励起光20Fを表示体12Cの第1面13に向けて反射させる。ミラー駆動機構48は、ミラー46の向きを変化させることにより、第1励起光20Fの面内方向(x方向およびy方向)の位置を変化させる。
【0101】
本実施形態において、第1励起光20Fおよび第2励起光88のそれぞれの光強度は、蛍光体の自然放射増幅光の閾値未満(つまりASE閾値未満)であり、第1励起光20および第2励起光88の光強度の合計値は、蛍光体の自然放射増幅光の閾値以上(つまりASE閾値以上)である。したがって、第1励起光20Fと第2励起光88が重なる交点100にてASEが生じ、交点100とは異なる箇所ではASEが生じない。
【0102】
制御部18は、第1照射部16Fおよび第2照射部90の動作を制御する。制御部18は、立体輪郭画像データを取得し、立体輪郭画像データに基づいて第1照射部16Fおよび第2照射部90を動作させる。制御部18は、ミラー駆動機構48の動作を制御して、表示体12Cの内部において第1励起光20Fの面内方向の位置を変化させる。制御部18は、第2照射部90の動作を制御し、第2励起光88の積層方向の位置を変化させる。これにより、制御部18は、立体像Sの輪郭を表示すべき三次元位置を制御する。制御部18は、第1励起光20Fの面内方向の位置および第2励起光88の積層方向の位置に応じて、第1励起光20Fおよび第2励起光88の少なくとも一方の出力強度を制御し、立体輪郭画像データにより描画位置ごとに指定された表示色が実現されるようにしてもよい。
【0103】
本実施形態によれば、第1励起光20の集光位置24を三次元制御する必要がなく、励起光20Fの照射方向を二次元のみで制御すればよいため、ASEが生じる交点100の三次元位置の制御が容易となる。
【0104】
以上、本発明を上述の実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、各表示例に示す構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。
【0105】
以下、本発明のいくつかの態様について述べる。
【0106】
[態様1]
蛍光体を含有する複数の蛍光層を第1面から第2面に向けて積層させた表示体であって、前記複数の蛍光層のそれぞれの厚さが前記第1面から離れるにつれて大きくなるように構成される表示体と、
前記表示体の前記第1面に入射して前記蛍光体を励起する励起光を、前記表示体内における前記励起光の集光位置を変化させて照射する照射部と、を備える表示装置。
[態様2]
前記複数の蛍光層のそれぞれの厚さは、前記複数の蛍光層のそれぞれに前記励起光の前記集光位置が一致するときの前記励起光のレイリー長の2倍以上である、態様1に記載の表示装置。
[態様3]
前記励起光の前記集光位置における光強度は、前記蛍光体の自然放射増幅光の閾値の1.3倍以上1.5倍以下である、態様1または2に記載の表示装置。
[態様4]
前記表示体は、前記複数の蛍光層と交互に積層され、蛍光体を含有しない複数の分離層をさらに含む、態様1から3のいずれか一つに記載の表示装置。
[態様5]
前記複数の分離層のそれぞれの厚さは、前記第1面から離れるにつれて大きくなるように構成される、態様4に記載の表示装置。
【0107】
[態様6]
第1蛍光体を含有する複数の第1蛍光層と、前記第1蛍光体とは発光波長の異なる第2蛍光体を含有する複数の第2蛍光層とを交互に積層させた表示体と、
前記表示体に入射して前記第1蛍光体を励起する第1励起光と、前記表示体に入射して前記第2蛍光体を励起する第2励起光とを重畳し、前記表示体内における前記第1励起光の第1集光位置および前記第2励起光の第2集光位置を変化させて照射する照射部と、を備える表示装置。
[態様7]
前記表示体内における前記第1集光位置と前記第2集光位置の間の距離は、前記第1蛍光層または前記第2蛍光層の厚さに一致する、態様6に記載の表示装置。
[態様8]
前記表示体内における前記第1集光位置と前記第2集光位置の間の距離は、前記第1蛍光層および前記第2蛍光層の厚さの合計の半分に一致する、態様6に記載の表示装置。
[態様9]
前記複数の第1蛍光層のそれぞれの厚さは、前記第1励起光のレイリー長の2倍以上であり、
前記複数の第2蛍光層のそれぞれの厚さは、前記第2励起光のレイリー長の2倍以上である、態様6から8のいずれか一つに記載の表示装置。
[態様10]
前記第1励起光の前記第1集光位置における光強度は、前記第1蛍光体の自然放射増幅光の閾値の1.3倍以上1.5倍以下であり、
前記第2励起光の前記第2集光位置における光強度は、前記第2蛍光体の自然放射増幅光の閾値の1.3倍以上1.5倍以下である、態様6から9のいずれか一つに記載の表示装置。
【0108】
[態様11]
複数の積層体を第1面から第2面に向けて積層させた表示体であって、前記複数の積層体のそれぞれが、蛍光体を含有する蛍光層と、蛍光体を含有しない分離層とを含む表示体と、
前記表示体に入射して前記蛍光体を励起する励起光を、前記表示体内における前記励起光の集光位置を変化させて照射する照射部と、を備える表示装置。
[態様12]
前記複数の積層体のそれぞれにおける前記蛍光層の厚さの半分と前記分離層の厚さの合計は、前記複数の積層体のそれぞれに前記励起光の集光位置が一致するときの前記励起光のレイリー長以上である、態様11に記載の表示装置。
[態様13]
前記複数の積層体のそれぞれに含まれる前記蛍光層の厚さと前記分離層の厚さの合計は、前記複数の積層体のそれぞれに前記励起光の集光位置が一致するときの前記励起光のレイリー長の1倍より大きく2倍より小さい、態様11または12に記載の表示装置。
[態様14]
前記励起光の前記集光位置における光強度は、前記蛍光体の自然放射増幅光の閾値の1.3倍以上1.5倍以下である、態様11から13のいずれか一つに記載の表示装置。
[態様15]
前記複数の積層体のそれぞれに含まれる前記分離層の厚さは、前記第1面から離れるにつれて大きくなる、態様11から14のいずれか一つに記載の表示装置。
【0109】
[態様16]
複数の積層体を積層させた表示体であって、前記複数の積層体のそれぞれが、第1蛍光体を含有する第1蛍光層と、蛍光体を含有しない第1分離層と、前記第1蛍光体とは発光波長の異なる第2蛍光体を含有する第2蛍光層と、蛍光体を含有しない第2分離層とを順に積層した構造を有する表示体と、
前記表示体に入射して前記第1蛍光体を励起する第1励起光と、前記表示体に入射して前記第2蛍光体を励起する第2励起光とを重畳し、前記表示体内における前記第1励起光の第1集光位置および前記第2励起光の第2集光位置を変化させて照射する照射部と、を備える表示装置。
[態様17]
前記表示体内における前記第1集光位置と前記第2集光位置の間の距離は、前記第2蛍光層の厚さの半分と前記第1励起光のレイリー長の合計以上、または、前記第1蛍光層の厚さの半分と前記第2励起光のレイリー長の合計以上である、態様16に記載の表示装置。
[態様18]
前記表示体内における前記第1集光位置と前記第2集光位置の間の距離は、前記第1蛍光層の厚さの半分、前記第1分離層の厚さ、および、前記第2蛍光層の厚さの半分の合計に一致する、態様16または17に記載の表示装置。
[態様19]
前記表示体内における前記第1集光位置と前記第2集光位置の間の距離は、前記第1励起光または前記第2励起光のレイリー長の1倍より大きく2倍より小さい、態様16から18のいずれか一つに記載の表示装置。
[態様20]
前記第1励起光の前記第1集光位置における光強度は、前記第1蛍光体の自然放射増幅光の閾値の1.3倍以上1.5倍以下であり、
前記第2励起光の前記第2集光位置における光強度は、前記第2蛍光体の自然放射増幅光の閾値の1.3倍以上1.5倍以下である、態様16から19のいずれか一つに記載の表示装置。
【0110】
[態様21]
蛍光体を含有する複数の蛍光層と、蛍光体を含有しない複数の分離層とを交互に積層させた表示体と、
前記表示体に積層方向に入射して前記蛍光体を励起する第1励起光を面内方向の位置を変化させて照射する第1照射部と、
前記複数の蛍光層に前記面内方向に入射して前記蛍光体を励起する第2励起光を前記積層方向の位置を変化させて照射する第2照射部と、を備える表示装置。
[態様22]
前記複数の分離層の屈折率は、前記複数の蛍光層の屈折率よりも低い、態様21に記載の表示装置。
[態様23]
前記複数の分離層の屈折率と前記複数の蛍光層の屈折率の差は、0.01以上0.05以下である、態様22に記載の表示装置。
[態様24]
前記第1励起光および前記第2励起光のそれぞれの光強度は、前記蛍光体の自然放射増幅光の閾値未満であり、
前記第1励起光および前記第2励起光の光強度の合計値は、前記蛍光体の自然放射増幅光の閾値以上である、態様21から23のいずれか一つに記載の表示装置。
[態様25]
前記複数の蛍光層のそれぞれの厚さと前記複数の分離層のそれぞれの厚さの合計は、前記第1励起光のレイリー長の1倍より大きく2倍より小さい、態様21から24のいずれか一つに記載の表示装置。
[態様26]
前記複数の蛍光層のそれぞれの厚さは、前記第1励起光の集光位置のスポットサイズの0.5倍以上2倍以下である、態様21から25のいずれか一つに記載の表示装置。
【符号の説明】
【0111】
10…表示装置、12…表示体、13…第1面、14…第2面、16…照射部、18…制御部、20…励起光、21…第1励起光、22…第2励起光、23…第3励起光、24…集光位置、25…第1集光位置、26…第2集光位置、27…第3集光位置、30…積層体、31…第1蛍光層、32…第2蛍光層、33…第3蛍光層、34…第1分離層、35…第2分離層、36…第3分離層、40…光源、41…コリメートレンズ、42…集光レンズ、44…レンズ駆動機構、46…ミラー、48…ミラー駆動機構、16B…照射部、61…第1光源、62…第2光源、63…第3光源、64…第1コリメートレンズ、65…第2コリメートレンズ、66…第3コリメートレンズ、67…第1ハーフミラー、68…第2ハーフミラー、69…第3ミラー。