(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128257
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】クロロプレン系重合体ラテックス、浸漬成形体、クロロプレン系重合体ラテックスの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 53/02 20060101AFI20230907BHJP
C08L 11/02 20060101ALI20230907BHJP
C08F 297/00 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
C08L53/02
C08L11/02
C08F297/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022032485
(22)【出願日】2022-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】下斗米 伊吹
(72)【発明者】
【氏名】西野 渉
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 実沙樹
【テーマコード(参考)】
4J002
4J026
【Fターム(参考)】
4J002AC092
4J002BP011
4J002GB01
4J002GC00
4J002HA07
4J026HA06
4J026HA24
4J026HA39
4J026HB18
4J026HB24
4J026HB39
4J026HB45
4J026HB48
4J026HE01
(57)【要約】
【課題】柔軟性が高く、かつ、優れた破断時引張強さ及び破断時伸びを有する浸漬成形体を得ることができるクロロプレン系重合体ラテックスを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明によれば、クロロプレン系ブロック共重合体Aと、クロロプレン系重合体Bを含むクロロプレン系重合体ラテックスであって、前記クロロプレン系ブロック共重合体Aは、単独重合時にガラス転移温度が80℃以上の重合体が得られる単量体由来の重合体ブロックA1を5~30質量%と、クロロプレン系重合体ブロックA2を70~95質量%を含み、前記クロロプレン系重合体Bは、クロロプレンに由来する単量体単位を有する重合体であり、ゲル浸透クロマトグラフィー測定において、トルエン可溶分の重量平均分子量が7,000~80,000である、クロロプレン系重合体ラテックスが提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロロプレン系ブロック共重合体Aと、クロロプレン系重合体Bを含むクロロプレン系重合体ラテックスであって、
前記クロロプレン系ブロック共重合体Aは、単独重合時にガラス転移温度が80℃以上の重合体が得られる単量体由来の重合体ブロックA1を5~30質量%と、クロロプレン系重合体ブロックA2を70~95質量%を含み、
前記クロロプレン系重合体Bは、クロロプレンに由来する単量体単位を有する重合体であり、ゲル浸透クロマトグラフィー測定において、トルエン可溶分の重量平均分子量が7,000~80,000である、
クロロプレン系重合体ラテックス。
【請求項2】
前記クロロプレン系重合体ラテックスを含む浸漬成形体を、130℃で30分熱処理して得られるフィルムの、JIS K 6251に基づき測定した100%伸長時モジュラスが、0.85MPa以下である、請求項1に記載のクロロプレン系重合体ラテックス。
【請求項3】
前記クロロプレン系重合体ラテックスを含む浸漬成形体を、130℃で30分熱処理して得られるフィルムの、JIS K 6251に基づき測定した破断時引張強さが、14.0MPa以上である、請求項1又は2に記載のクロロプレン系重合体ラテックス。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のクロロプレン系重合体ラテックスを含む、浸漬成形体。
【請求項5】
クロロプレン系ブロック共重合体Aと、クロロプレン系重合体Bを含むクロロプレン系重合体ラテックスの製造方法であって、
前記クロロプレン系重合体ラテックスの製造方法は、前記クロロプレン系ブロック共重合体Aを含むラテックスAと、前記クロロプレン系重合体Bを含むラテックスBを混合するラテックス混合工程を含み、
前記クロロプレン系ブロック共重合体Aは、単独重合時にガラス転移温度が80℃以上の重合体が得られる単量体由来の重合体ブロックA1を5~30質量%と、クロロプレン系重合体ブロックA2を70~95質量%を含み、
前記クロロプレン系重合体Bは、クロロプレンに由来する単量体単位を有する重合体であり、ゲル浸透クロマトグラフィー測定において、トルエン可溶分の重量平均分子量が7,000~80,000である、
クロロプレン系重合体ラテックスの製造方法。
【請求項6】
前記クロロプレン系重合体ラテックスは、前記クロロプレン系ブロック共重合体Aと、前記クロロプレン系重合体Bとの合計100質量%に対し、前記クロロプレン系ブロック共重合体Aを70~95質量%、前記クロロプレン系重合体Bを3~30質量%含む、請求項5に記載のクロロプレン系重合体ラテックスの製造方法。
【請求項7】
前記クロロプレン系ブロック共重合体Aのトルエン不溶分が2~60質量%である、請求項5又は6に記載のクロロプレン系重合体ラテックスの製造方法。
【請求項8】
前記クロロプレン系重合体ラテックスは、浸漬成形体用である、請求項5~7のいずれか一項に記載のクロロプレン系重合体ラテックスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロロプレン系重合体ラテックス、浸漬成形体、クロロプレン系重合体ラテックスの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
クロロプレン系重合体や、クロロプレン系重合体ラテックスは、浸漬成形体(浸漬製品)、繊維処理剤、紙加工剤、粘着剤、接着剤、弾性アスファルト(改質アスファルト)、弾性セメント等の種々の分野で利用されている。特に浸漬成形体では、家庭用、産業用、手術用等の各種手袋の主原料としてクロロプレン系重合体が用いられている。手袋の用途においては、従来天然ゴムが主に使用されていたが、天然ゴムに含まれるタンパク質等によるアレルギーが問題となるため、合成ゴム手袋の使用が勧められてきた。中でも、クロロプレン系重合体は、風合い等において天然ゴムに近い物性を有するため、天然ゴムからの代替材料として検討されている(例えば、下記特許文献1~2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開2019/009038号
【特許文献2】特開2019-143002号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、クロロプレン系重合体ラテックスを用いて得られる浸漬成形体は、天然ゴム又はイソプレンゴムを用いた浸漬成形体と比べて柔軟性が劣る場合があった。そのため、柔軟性の高い浸漬成形体を得ることができる、クロロプレン系重合体ラテックスが望まれている。しかしながら、柔軟性が高く、かつ、優れた破断時引張強さ及び破断時伸びを有する浸漬成形体を得ることができるクロロプレン系重合体ラテックスを得ることは難しかった。
【0005】
そこで本発明は、柔軟性が高く、かつ、優れた破断時引張強さ及び破断時伸びを有する浸漬成形体を得ることができるクロロプレン系重合体ラテックスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、クロロプレン系ブロック共重合体Aと、クロロプレン系重合体Bを含むクロロプレン系重合体ラテックスであって、前記クロロプレン系ブロック共重合体Aは、単独重合時にガラス転移温度が80℃以上の重合体が得られる単量体由来の重合体ブロックA1を5~30質量%と、クロロプレン系重合体ブロックA2を70~95質量%を含み、前記クロロプレン系重合体Bは、クロロプレンに由来する単量体単位を有する重合体であり、ゲル浸透クロマトグラフィー測定において、トルエン可溶分の重量平均分子量が7,000~80,000である、クロロプレン系重合体ラテックスが提供される。
【0007】
本発明者らは、鋭意検討を行ったところ、クロロプレン系重合体ラテックスに、特定の構造を有するクロロプレン系ブロック共重合体Aと、特定の重量平均分子量であるクロロプレン系重合体Bとを配合することにより、柔軟性が高く、かつ、優れた破断時引張強さ及び破断時伸びを有する浸漬成形体を得ることができるクロロプレン系重合体ラテックスとなることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
以下、本観点による、種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
【0009】
好ましくは、前記クロロプレン系重合体ラテックスを含む浸漬成形体を、130℃で30分熱処理して得られるフィルムの、JISK6251に基づき測定した100%伸長時モジュラスが、0.85MPa以下である、前記記載のクロロプレン系重合体ラテックスである。
好ましくは、前記クロロプレン系重合体ラテックスを含む浸漬成形体を、130℃で30分熱処理して得られるフィルムの、JISK6251に基づき測定した破断時引張強さが、14.0MPa以上である、前記記載のクロロプレン系重合体ラテックスである。
【0010】
本発明の別の観点によれば、前記記載のクロロプレン系重合体ラテックスを含む、浸漬成形体が提供される。
【0011】
また、本発明の別の観点によれば、クロロプレン系ブロック共重合体Aと、クロロプレン系重合体Bを含むクロロプレン系重合体ラテックスの製造方法であって、クロロプレン系重合体ラテックスの製造方法は、前記クロロプレン系ブロック共重合体Aを含むラテックスAと、前記クロロプレン系重合体Bを含むラテックスBを混合するラテックス混合工程を含み、前記クロロプレン系ブロック共重合体Aは、単独重合時にガラス転移温度が80℃以上の重合体が得られる単量体由来の重合体ブロックA1を5~30質量%と、クロロプレン系重合体ブロックA2を70~95質量%を含み、前記クロロプレン系重合体Bは、クロロプレンに由来する単量体単位を有する重合体であり、ゲル浸透クロマトグラフィー測定において、トルエン可溶分の重量平均分子量が7,000~80,000である、クロロプレン系重合体ラテックスの製造方法が提供される。
好ましくは、前記クロロプレン系重合体ラテックスは、前記クロロプレン系ブロック共重合体Aと、前記クロロプレン系重合体Bとの合計100質量%に対し、前記クロロプレン系ブロック共重合体Aを70~95質量%、前記クロロプレン系重合体Bを3~30質量%含む、前記記載のクロロプレン系重合体ラテックスの製造方法である。
好ましくは、前記クロロプレン系ブロック共重合体Aのトルエン不溶分が2~60質量%である、前記記載のクロロプレン系重合体ラテックスの製造方法である。
好ましくは、前記クロロプレン系重合体ラテックスは、浸漬成形体用である、前記記載のクロロプレン系重合体ラテックスの製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、柔軟性が高く、かつ、優れた破断時引張強さ及び破断時伸びを有する浸漬成形体を得ることができるクロロプレン系重合体ラテックスが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を例示して本発明について詳細な説明をする。本発明は、これらの記載によりなんら限定されるものではない。以下に示す本発明の実施形態の各特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0014】
1.クロロプレン系重合体ラテックス
本発明に係るクロロプレン系重合体ラテックスは、クロロプレン系ブロック共重合体Aと、クロロプレン系重合体Bを含む。
1.1 クロロプレン系ブロック共重合体A
本発明に係るクロロプレン系ブロック共重合体Aは、単独重合時にガラス転移温度が80℃以上の重合体が得られる単量体由来の重合体ブロックA1を5~30質量%と、クロロプレン系重合体ブロックA2を70~95質量%を含む。
【0015】
1.1.1 重合体ブロックA1
重合体ブロックA1は、単独重合時にガラス転移温度が80℃以上の重合体が得られる単量体由来の重合体ブロックである。このような単量体を用いる重合体ブロックとすることで、得られる浸漬成形体の破断時引張強さが向上する。好ましくは、単独重合時にガラス転移温度が85℃以上の重合体が得られる単量体を用いるとよい。成形性の観点からは、単独重合時にガラス転移温度が150℃以下の重合体が得られる単量体であれば好ましく、特に好ましくは120℃以下の重合体が得られる単量体である。該単量体の単独重合時の重合体のガラス転移温度は、例えば、80、85、90、95、100、105、110、120、130、140、150℃であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0016】
なお、本明細書においてガラス転移温度とは、JIS K 7121に準拠して測定した補外ガラス転移終了温度(Teg)であり、一例として、示差走査熱量計を用い、DSC1(Mettler Toledo社製)を用いて測定することができ、具体的には実施例に記載の方法で測定することができる。
【0017】
重合体ブロックA1が、単量体A1を重合することで得られる重合体ブロックである場合、単量体A1を単独重合して、重量平均分子量10,000~100,000のホモポリマーA1としたとき、該ホモポリマーA1が、上記ガラス転移温度を有する単量体であることが好ましく、重量平均分子量10,000~50,000のホモポリマーA1としたとき、該ホモポリマーA1が、上記ガラス転移温度を有する単量体であることがより好ましい。
【0018】
重合体ブロックA1を構成する単量体単位としては、芳香族ビニル単量体単位、メタクリル酸メチル単量体単位、アクリロニトリル単量体単位が挙げられる。好ましくは芳香族ビニル単量体に由来する単位が用いられ、スチレン単位が好適に用いられる。重合体ブロックA1は、本発明の目的を損なわない範囲において、これら単量体同士の共重合により得られる重合体ブロック、またはこれら単量体と共重合可能な単量体単位からなる重合体ブロックであっても構わない。
【0019】
重合体ブロックA1の重量平均分子量は、得られるクロロプレン系ブロック共重合体の機械的特性や成形性の観点から、10,000以上であることが好ましい。重合体ブロックA1の重量平均分子量は、例えば、10,000、15,000、20,000、25,000、30,000、35,000、40,000、45,000、50,000、55,000、60,000、65,000、70,000、75,000、80,000、85,000、90,000、95,000、100,000であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
重合体ブロックA1の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて測定されるポリスチレン換算の値とすることができ、実施例に記載の方法で測定することができる。
【0020】
1.1.2 クロロプレン系重合体ブロックA2
クロロプレン系重合体ブロックA2は、クロロプレン単量体(2-クロロ-1,3-ブタジエン)に由来する単量体単位を含む。クロロプレン系重合体ブロックA2は、クロロプレン単量体単位を主体とするブロックとすることができる。本発明の一実施形態に係るクロロプレン系重合体ブロックA2は、クロロプレン系重合体ブロックA2を100質量%としたとき、クロロプレンに由来する単量体単位を90質量%以上含むものとできる。また、クロロプレン系重合体ブロックA2は、本発明の目的を損なわない範囲において、クロロプレン単量体単位以外の構造を有しても良い。
本発明の一実施形態に係るクロロプレン系重合体ブロックA2は、多官能性単量体に由来する単量体単位を有していても良い。また、クロロプレン系重合体ブロックA2は、クロロプレン単量体単位、多官能性単量体単位、及びこれらの単量体と共重合可能な単量体単位を含む重合体ブロックであってもよい。
【0021】
本発明の一実施形態に係るクロロプレン系重合体ブロックA2中の各単量体単位の含有量は、特に限定するものではないが、好ましくはクロロプレン単量体単位90~99.95質量%、多官能性単量体単位0.05~10質量%である。クロロプレン系重合体ブロックA2中の多官能性単量体単位の含有量は、例えば、0.05、0.50、1.00、2.00、3.00、4.00、5.00、6.00、7.00、8.00、9.00、10.00質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0022】
本発明の一実施形態に係る多官能性単量体は、分子中にラジカル性重合基を2個以上有する化合物とできる。多官能性単量体は、互いに独立した複数の重合性置換基を有することが好ましい。多官能性単量体は、少なくとも1組の非共役である重合性置換基を有することが好ましい。複数の重合性置換基のうち、少なくとも1組の重合性置換基は、互いが、少なくとも原子を1個以上挟み離間されていることが好ましく、3個以上挟み離間されていることが好ましく、5個以上挟み離間されていることが好ましい。重合性置換基はビニル基とすることができ、炭素炭素二重結合とすることができる。得られるクロロプレン系ブロック共重合体の柔軟性、及び破断時引張強さ、及び成形性の観点から、化学式(1)で表される単量体や、芳香族ポリエン単量体が好適に用いられる。
化学式(1)で表される単量体としては、1,9-ノナンジオールジメタクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、N,N'-ジアクリロイル-4,7,10-トリオキサ-1,13-トリデカンジアミンが特に好適に用いられる。芳香族ポリエン単量体としては、10以上30以下の炭素数を持ち、複数の二重結合(ビニル基)と単数又は複数の芳香族基を有した芳香族ポリエンであり、例えば、o-ジビニルベンゼン、p-ジビニルベンゼン、m-ジビニルベンゼン、1,4-ジビニルナフタレン、3,4-ジビニルナフタレン、2,6-ジビニルナフタレン、1,2-ジビニル-3,4-ジメチルベンゼン、1,3-ジビニル-4,5,8-トリブチルナフタレン等、芳香族ポリエン単量体に由来する単位が挙げられ、好ましくはオルトジビニルベンゼン単位、パラジビニルベンゼン単位及びメタジビニルベンゼン単位のいずれか1種類又は2種類以上の混合物が好適に用いられる。
【0023】
【0024】
化学式(1)中、R1及びR2はそれぞれ独立して水素、塩素、置換もしくは無置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、メルカプト基、ヘテロシクリル基のいずれかを表す。W1は飽和もしくは不飽和の炭化水素基、環状炭化水素基、ヘテロ原子を含む飽和もしくは不飽和の炭化水素基、環状炭化水素基のいずれかを表す。Z1は酸素、硫黄もしくは-NR0-で表される構造を表す。R0は水素、塩素、置換もしくは無置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、メルカプト基、ヘテロシクリル基のいずれかを表す。
【0025】
クロロプレン単量体及び多官能性単量体と共重合可能な単量体としては、例えば、2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン、1-クロロ-1,3-ブタジエン、スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、イソプレン、ブタジエンを挙げることができる。
また、多官能性単量体は、2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン、1-クロロ-1,3-ブタジエン、スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、イソプレン、ブタジエンを含まないものとすることもできる。
【0026】
本発明の一実施形態に係るクロロプレン系重合体ブロックA2は、クロロプレン単量体単位及び2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン、1-クロロ-1,3-ブタジエン、スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、イソプレン、ブタジエン以外の多官能性単量体に由来する多官能性単量体単位を有するものとできる。また、本発明の一実施形態に係るクロロプレン系ブロック共重合体Aは、一例として、
・クロロプレン単量体単位
・2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン、1-クロロ-1,3-ブタジエン、スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、イソプレン、ブタジエン以外の多官能性単量体に由来する多官能性単量体単位
・クロロプレン単量体単位及び多官能性単量体単位と共重合可能な単量体単位
を有するものとできる。
すなわち、本発明の一実施形態に係るクロロプレン系ブロック共重合体Aは、
・クロロプレン単量体単位
・2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン、1-クロロ-1,3-ブタジエン、スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、イソプレン、ブタジエン以外の多官能性単量体に由来する多官能性単量体単位としての1,9-ノナンジオールジアクリレートに由来する多官能性単量体単位、
を含むことができ、さらに、
・クロロプレン単量体単位及び多官能性単量体単位と共重合可能な単量体単位としての2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエンに由来する単量体単位
を含んでいても良い。
【0027】
1.1.3 クロロプレン系ブロック共重合体A中の各単量体単位の含有率
本発明に係るクロロプレン系ブロック共重合体Aは、クロロプレン系ブロック共重合体Aを100質量%としたとき、重合体ブロックA1を5~30質量%、クロロプレン系重合体ブロックA2を70~95質量%含む。クロロプレン系ブロック共重合体A中の、重合体ブロックA1の含有率は、例えば、5、10、15、20、25、30質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。クロロプレン系ブロック共重合体A中の、クロロプレン系重合体ブロックA2の含有率は、例えば、70、75、80、85、90質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。重合体ブロックA1の含有率が上記下限以上であり、クロロプレン系重合体ブロックA2の含有率が上記上限以下である場合に、得られるラテックスを含む浸漬成形体の破断時引張強さを向上させることができる。また、重合体ブロックA1の含有率が上記上限以下であり、クロロプレン系重合体ブロックA2の含有率が上記下限以上である場合に、破断時伸び及び100%伸長時モジュラスを向上させることができる。
【0028】
また、本発明の一実施形態に係るクロロプレン系ブロック共重合体Aは、2種類以上の異なるクロロプレン系ブロック共重合体Aを含んでも良い。クロロプレン系ブロック共重合体Aが、2種類以上の異なるクロロプレン系重合体の混合物である場合、各ブロックの含有率とは、クロロプレン系ブロック共重合体Aに含まれるすべての各ブロックの合計を意味する。
【0029】
本発明の一実施形態に係るクロロプレン系ブロック共重合体Aは、重合体ブロックA1及びクロロプレン系重合体ブロックA2を含み、本発明の目的を損なわない範囲において、他の重合体ブロックを含むこともできる。また、本発明の一実施形態に係るクロロプレン系ブロック共重合体Aは、重合体ブロックA1及びクロロプレン系重合体ブロックA2からなるものとすることができ、他の重合体ブロックを含まないものとすることができる。クロロプレン系ブロック共重合体Aは、重合体ブロックA1-クロロプレン系重合体ブロックA2のジブロック共重合体とすることができる。
【0030】
クロロプレン系ブロック共重合体Aのトルエン可溶分の重量平均分子量は、特に制限はないが、成形加工性の観点から、好ましくは5~60万であり、特に好ましくは10~50万である。クロロプレン系ブロック共重合体Aのトルエン可溶分の重量平均分子量は、例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60万であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。クロロプレン系ブロック共重合体Aのトルエン可溶分の重量平均分子量は、クロロプレン系ブロック共重合体Aを含むラテックスを凍結乾燥させることにより得られた乾燥物をトルエンに溶解させ分離したゾル分を用いてゲル浸透クロマトグラフィー測定することで求めることができ、具体的には、実施例に記載の方法で求めることができる。
【0031】
クロロプレン系ブロック共重合体Aのトルエン不溶分は、2~60質量%であることが好ましい。トルエン不溶分は、例えば、2、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。クロロプレン系ブロック共重合体Aのトルエン不溶分は、クロロプレン系ブロック共重合体Aを含むラテックスを凍結乾燥させることにより得られた乾燥物の質量をXgとし、凍結乾燥後のラテックスを、コニカルビーカーに入れて、トルエンで溶解した混合物から分離したゲル分をYgとしたとき、以下の式で求めることができ、具体的には、実施例に記載の方法で求めることができる。
トルエン不溶分=Y/X×100(%)
【0032】
クロロプレン系ブロック共重合体Aの重量平均分子量及びトルエン不溶分は、クロロプレン系ブロック共重合体A重合時の原料の種類及び量、並びに重合条件を調整することで制御することができる。
【0033】
1.2 クロロプレン系重合体B
本発明に係るクロロプレン系重合体Bは、クロロプレンに由来する単量体単位を有する重合体であり、ゲル浸透クロマトグラフィー測定において、トルエン可溶分の重量平均分子量が7,000~80,000である。すなわち、本発明に係るクロロプレン系重合体ラテックスは、トルエン可溶分の重量平均分子量が7,000~80,000であるピークを有する。
【0034】
本発明に係るクロロプレン系重合体とは、2-クロロ-1,3-ブタジエン(以下、クロロプレンとも称する)に由来する単量体単位を含む重合体のことである。また、本発明の一実施形態に係るクロロプレン系重合体Bは、クロロプレンと、クロロプレンと共重合可能な他の単量体との共重合体とすることもでき、他の単量体としては、1-クロロ-1,3-ブタジエン、2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン、イソプレン、スチレン、メタクリル酸、アクリロニトリル、硫黄などを挙げることができ、他の単量体として、これらを2種類以上併用してもよい。
【0035】
本発明の一実施形態に係るクロロプレン系重合体Bは、2種類以上の異なるクロロプレン系重合体を混合させることで得てもよい。クロロプレン系重合体Bは、クロロプレンに由来する単量体単位を含み、さらに、2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエンに由来する単量体単位を含むことが好ましい。また、クロロプレン系重合体Bは、クロロプレンの単独重合体、及び、クロロプレンと1-クロロ-1,3-ブタジエンに由来する単量体単位を含む共重合体からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有することが好ましく、クロロプレンの単独重合体、及び、クロロプレンと1-クロロ-1,3-ブタジエンに由来する単量体単位からなる共重合体からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有することが好ましい。
【0036】
本発明の一実施形態に係るクロロプレン系重合体Bは、クロロプレン系重合体Bを100質量%としたとき、クロロプレンに由来する単量体単位を50~100質量%含むものとでき、70~100質量%含むことが好ましい。クロロプレンに由来する単量体単位の含有量は、例えば、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0037】
本発明の一実施形態に係るクロロプレン系重合体Bは、クロロプレン系重合体ラテックス組成物に含まれるクロロプレン系重合体を100質量%としたとき、2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエンに由来する単量体単位を0~30質量%含むものとできる。2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエンに由来する単量体単位の含有量は、例えば、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0038】
なお、クロロプレン系重合体Bが、2種類以上の異なるクロロプレン系重合体の混合物である場合、各単量体単位の含有量とは、クロロプレン系重合体Bに含まれる各単量体単位の合計を意味する。
【0039】
クロロプレン系重合体Bは、トルエン可溶分の重量平均分子量が、7,000~80,000である。すなわち、本発明に係るクロロプレン系重合体ラテックスは、トルエン可溶分の重量平均分子量が、7,000~80,000にピークを有する。クロロプレン系重合体Bは、トルエン可溶分の重量平均分子量のが、例えば、7,000、8,000、9,000、10,000、20,000、30,000、40,000、50,000、60,000、70,000、80,000であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。本発明の一実施形態に係るクロロプレン系重合体Bは、トルエン可溶分の重量平均分子量が、上記数値範囲内であってよい。クロロプレン系重合体Bのトルエン可溶分の重量平均分子量は、クロロプレン系重合体Bを含むラテックスを凍結乾燥させることにより得られた乾燥物をトルエンに溶解させ分離したゾル分を用いてゲル浸透クロマトグラフィー測定を行うことで求めることができ、具体的には、実施例に記載の方法で求めることができる。
【0040】
クロロプレン系重合体Bのトルエン不溶分は、1~20質量%であることが好ましい。トルエン不溶分は、例えば、2、5、10、15、20質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。クロロプレン系重合体Bのトルエン不溶分は、上記したクロロプレン系ブロック共重合体Aのトルエン不溶分と同様の方法で求めることができる。クロロプレン系重合体Bの重量平均分子量及びトルエン不溶分は、クロロプレン系重合体B重合時の原料の種類及び量、並びに重合条件を調整することで制御することができる。
【0041】
1.3 クロロプレン系重合体ラテックス中のクロロプレン系ブロック共重合体A及びクロロプレン系重合体Bの含有率
本発明の一実施形態に係るクロロプレン系重合体ラテックスは、クロロプレン系ブロック共重合体Aと、クロロプレン系重合体Bとの合計100質量%に対し、クロロプレン系ブロック共重合体Aを70~95質量%、クロロプレン系重合体Bを5~30質量%含むことが好ましく、クロロプレン系ブロック共重合体Aを83~93質量%、クロロプレン系重合体Bを7~17質量%含むことがより好ましい。クロロプレン系ブロック共重合体Aと、クロロプレン系重合体Bとの合計100質量%に対するクロロプレン系ブロック共重合体Aの含有率は、例えば、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。クロロプレン系ブロック共重合体Aと、クロロプレン系重合体Bとの合計100質量%に対するクロロプレン系重合体Bの含有率は、例えば、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
クロロプレン系ブロック共重合体Aと、クロロプレン系重合体Bの配合比を上記数値範囲内とすることにより、より柔軟性、破断時引張強さ及び破断時伸びのバランスに優れる浸漬成形体を得ることができるクロロプレン系重合体ラテックスを得ることができる。
【0042】
1.4 クロロプレン系重合体ラテックスの特性
本発明の一実施形態に係るクロロプレン系重合体ラテックスは、該クロロプレン系重合体ラテックスを含む浸漬成形体を、130℃で30分間熱処理して得られるフィルムの、JIS K 6251に基づき測定した破断時引張強さが14.0MPa以上となることが好ましい。破断時引張強さは、例えば、14、15、16、17、18、19、20、25、30MPaであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0043】
本発明の一実施形態に係るクロロプレン系重合体ラテックスは、該クロロプレン系重合体ラテックスを含む浸漬成形体を、130℃で30分間熱処理して得られるフィルムの、JIS K 6251に基づき測定した破断時伸びが900%以上であることが好ましい。破断時伸びは、例えば、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0044】
本発明の一実施形態に係るクロロプレン系重合体ラテックスは、該クロロプレン系重合体ラテックスを含む浸漬成形体を、130℃で30分間熱処理して得られるフィルムの、JIS K 6251に基づき測定した100%伸長時モジュラスが、0.85MPa以下であることが好ましい。100%伸長時モジュラスは、例えば、0.30、0.40、0.50、0.60、0.70、0.80、0.85MPaであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0045】
引張強度、破断時伸び、100%伸長時モジュラスを測定するため浸漬成形体及びフィルムは、クロロプレン系重合体ラテックスに、必要に応じて、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、界面活性剤、及び水等を加えてクロロプレン系重合体ラテックス組成物を調整し、該クロロプレン系重合体ラテックス組成物に、凝固液を付着させた陶器を浸漬させることによって得ることができる。クロロプレン系重合体ラテックス組成物は、加硫剤及び加硫促進剤を含まないものすることもできる。クロロプレン系重合体ラテックス組成物、浸漬成形体及びフィルムは、具体的には実施例に記載の方法で得ることができる。
【0046】
上記フィルムの破断時引張強さ、破断時伸び、100%伸長時モジュラスを調整するには、クロロプレン系ブロック共重合体Aと、クロロプレン系重合体Bの配合比を調整したり、クロロプレン系ブロック共重合体A及びクロロプレン系重合体B中の、各ブロック及び単量体単位の種類及び量、並びに分子量及びトルエン不溶分等を調整したりすればよい。特には、クロロプレン系ブロック共重合体Aの配合量を増加させることで、破断時引張強さを向上させることができる。また、クロロプレン系重合体Bの配合量を増加させることで、100%伸長時モジュラスを低下させ、浸漬成形体に柔軟性を付与することができる。
【0047】
本発明の一実施形態に係るクロロプレン系重合体ラテックスは、該クロロプレン系重合体ラテックスを含む浸漬成形体を、130℃で30分間熱処理して得られるフィルムが上記の特徴を有することを活かし、浸漬成形体用とできる。
【0048】
2.クロロプレン系重合体ラテックスの製造方法
本発明の一実施形態に係るクロロプレン系重合体ラテックスの製造方法は、
クロロプレン系ブロック共重合体Aと、クロロプレン系重合体Bを含むクロロプレン系重合体ラテックスの製造方法であって、
クロロプレン系重合体ラテックスの製造方法は、前記クロロプレン系ブロック共重合体Aを含むラテックスAと、前記クロロプレン系重合体Bを含むラテックスBを混合するラテックス混合工程を含み、
前記クロロプレン系ブロック共重合体Aは、単独重合時にガラス転移温度が80℃以上の重合体が得られる単量体由来の重合体ブロック5~30質量%と、クロロプレン系重合体ブロック70~95質量%を含み、
前記クロロプレン系重合体Bは、クロロプレンに由来する単量体単位を有する重合体であり、ゲル浸透クロマトグラフィー測定において、トルエン可溶分の重量平均分子量が7,000~80,000である。
【0049】
本発明の一実施形態に係る製造方法は、クロロプレン系ブロック共重合体Aを重合し、クロロプレン系ブロック共重合体Aを含むラテックスを得る工程及びクロロプレン系重合体Bを重合し、クロロプレン系重合体Bを含むラテックスBを得る工程をさらに含むことができる。
【0050】
2.1 クロロプレン系ブロック共重合体Aを含むラテックスAの製造方法
本発明に係るクロロプレン系ブロック共重合体Aを含むラテックスAは、溶液重合、乳化重合、塊状重合等公知の方法で製造できるが、乳化重合が好適である。
【0051】
重合方法は、所望のクロロプレン系ブロック共重合体Aが得られれば特に限定されないが、重合体ブロックA1を合成する重合工程a-1の後に、クロロプレン系重合体ブロックA2を合成する重合工程a-2を行う、二段階の重合工程を経る製造方法により製造することが好ましい。
【0052】
(重合工程a-1)
重合工程a-1では、重合体ブロックA1を構成する単量体をリビングラジカル重合して重合体ブロックA1を合成することができる。重合体ブロックA1を構成する単量体としては、上記した単量体を挙げることができる。上記したように、ここで得られる重合体ブロックA1は、上記した重量平均分子量及びガラス転移温度を有することが好ましい。
【0053】
乳化剤としては、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤等が挙げられる。アニオン性乳化剤としては、牛脂脂肪酸カリウム、部分水添牛脂脂肪酸カリウム、オレイン酸カリウム、オレイン酸ナトリウム等の脂肪酸塩;ロジン酸カリウム、ロジン酸ナトリウム、水添ロジン酸カリウム、水添ロジン酸ナトリウム等の樹脂酸塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;β-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩などが挙げられる。ノニオン性乳化剤としては、ポリエチレングリコールエステル型乳化剤、ポリビニルアルコール等が挙げられる。これらの中でも、アニオン性乳化剤が好ましく、樹脂酸塩が好ましく、ロジン酸及びロジン酸塩であるロジン酸類が好ましく、ロジン酸カリウム及びロジン酸ナトリウムからなる群より選ばれる少なくとも一種がより好ましい。これらの乳化剤は、1種類又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0054】
ラジカル重合開始剤としては、公知のラジカル重合開始剤を用いることができ、例えば過硫酸カリウム、過酸化ベンゾイル、過酸化水素、アゾ系化合物などがある。重合温度は、単量体の種類に応じて適宜決定すればよいが、10~100℃が好ましく、20~80℃が特に好ましい。
【0055】
(重合工程a-2)
重合工程a-2では、上記重合工程a-1で得られた重合体ブロックA1を含むラテックスに、クロロプレン単量体、並びに、必要に応じて多官能性単量体及びその他の単量体を添加して重合することで目的のクロロプレン系ブロック共重合体Aを含むラテックスを得ることができる。クロロプレン単量体、及び多官能性単量体は、一括添加でも分添でも構わない。クロロプレン単量体、及び多官能性単量体の配合量は、得られるクロロプレン系ブロック共重合体A中の、重合体ブロックA1、クロロプレン系重合体ブロックA2の含有率が上記の数値範囲内になるよう、添加することが好ましい。
重合工程a-2の重合温度は、重合制御のしやすさの観点から10~50℃であることが好ましい。
重合反応は重合停止剤を加えることにより停止させる。重合停止剤としては、例えばチオジフェニルアミン、N,N-ジエチルヒドロキシルアミン、4-第3ブチルカテコール、2,2'-メチレンビス-4-メチル-6-第3-ブチルフェノール等がある。重合終了後の未反応単量体は、常法の減圧蒸留等の方法で除去することができる。
【0056】
重合工程a-1及び/又はa-2は、公知のRAFT剤の存在下で重合を行うことができ、得られるクロロプレン系ブロック共重合体A1は、下記化学式(2)、又は化学式(3)で表される構造の官能基を有することができる。
【0057】
【化2】
(化学式(2)中、R
3は水素、塩素、置換もしくは無置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、メルカプト基、ヘテロシクリル基のいずれかを表す。)
【化3】
【0058】
上記化学式(2)、又は化学式(3)で表される末端構造は、公知のRAFT剤の存在下で重合を行うことで、クロロプレン系ブロック共重合体Aに導入される。上記化学式(2)で表される構造を導く化合物は特に限定されるものではなく一般的な化合物を使用することができ、例えばジチオカルバメート類、ジチオエステル類が挙げられる。具体的にはベンジル1-ピロールカルボジチオエート(慣用名:ベンジル1-ピロールジチオカルバメート)、ベンジルフェニルカルボジチオエート、1-ベンジル-N,Nジメチル-4-アミノジチオベンゾエート、1-ベンジル-4-メトキシジチオベンゾエート、1-フェニルエチルイミダゾールカルボジチオエート(慣用名:1-フェニルエチルイミダゾールジチオカルバメート)、ベンジル-1-(2-ピロリジノン)カルボジチオエート(慣用名:ベンジル-1-(2-ピロリジノン)ジチオカルバメート)、ベンジルフタルイミジルカルボジチオエート、(慣用名:ベンジルフタルイミジルジチオカルバメート)、2-シアノプロプ-2-イル-1-ピロールカルボジチオエート、(慣用名:2-シアノプロプ-2-イル-1-ピロールジチオカルバメート)、2-シアノブト-2-イル-1-ピロールカルボジチオエート、(慣用名:2-シアノブト-2-イル-1-ピロールジチオカルバメート)、ベンジル-1-イミダゾールカルボジチオエート、(慣用名ベンジル-1-イミダゾールジチオカルバメート)、2-シアノプロプ-2-イル-N,N-ジメチルジチオカルバメート、ベンジル-N,N-ジエチルジチオカルバメート、シアノメチル-1-(2-ピロリドン)ジチオカルバメート、2-(エトキシカルボニルベンジル)プロプ-2-イル-N,N-ジエチルジチオカルバメート、1-フェニルエチルジチオベンゾエート、2-フェニルプロプ-2-イルジチオベンゾエート、1-酢酸-1-イル-エチルジチオベンゾエート、1-(4-メトキシフェニル)エチルジチオベンゾエート、ベンジルジチオアセテート、エトキシカルボニルメチルジチオアセタート、2-(エトキシカルボニル)プロプ-2-イルジチオベンゾエート、2-シアノプロプ-2-イルジチオベンゾエート、tert-ブチルジチオベンゾエート、2,4,4-トリメチルペンタ-2-イルジチオベンゾエート、2-(4-クロロフェニル)-プロプ-2-イルジチオベンゾエート、3-ビニルベンジルジチオベンゾエート、4-ビニルベンジルジチオベンゾエート、ベンジルジエトキシホスフィニルジチオフォルマート、tert-ブチルトリチオペルベンゾエート、2-フェニルプロプ-2-イル-4-クロロジチオベンゾエート、ナフタレン-1-カルボン酸-1-メチル-1-フェニル-エチルエステル、4-シアノ-4-メチル-4-チオベンジルスルファニル酪酸、ジベンジルテトラチオテレフタラート、カルボキシメチルジチオベンゾエート、ジチオベンゾエート末端基を持つポリ(酸化エチレン)、4-シアノ-4-メチル-4-チオベンジルスルファニル酪酸末端基を持つポリ(酸化エチレン)、2-[(2-フェニルエタンチオイル)スルファニル]プロパン酸、2-[(2-フェニルエタンチオイル)スルファニル]コハク酸、3,5-ジメチル-1H-ピラゾール-1-カルボジチオエートカリウム、シアノメチル-3,5-ジメチル-1H-ピラゾール-1-カルボジチオエート、シアノメチルメチル-(フェニル)ジチオカルバメート、ベンジル-4-クロロジチオベンゾエート、フェニルメチル-4-クロロジチオベンゾエート4-ニトロベンジル-4-クロロジチオベンゾエート、フェニルプロプ-2-イル-4-クロロジチオベンゾエート、1-シアノ-1-メチルエチル-4-クロロジチオベンゾエート、3-クロロ-2-ブテニル-4-クロロジチオベンゾエート、2-クロロ-2-ブテニルジチオベンゾエート、ベンジルジチオアセテート、3-クロロ-2-ブテニル-1H-ピロール-1-ジチオカルボン酸、2-シアノブタン-2-イル4-クロロ-3,5-ジメチル-1H-ピラゾール-1-カルボジチオエート、シアノメチルメチル(フェニル)カルバモジチオエートが挙げられる。これらのなかでも特に好ましくは、ベンジル1-ピロールカルボジチオエート、ベンジルフェニルカルボジチオエートが用いられる。
【0059】
上記化学式(3)で表される構造を導く化合物は、特に限定されるものではなく一般的な化合物を使用することができ、例えば、2-シアノ-2-プロピルドデシルトリチオカルボナート、ジベンジルトリチオカルボナート、ブチルベンジルトリチオカルボナート、2-[[(ブチルチオ)チオキソメチル]チオ]プロピオン酸、2-[[(ドデシルチオ)チオキソメチル]チオ]プロピオン酸、2-[[(ブチルチオ)チオキソメチル]チオ]コハク酸、2-[[(ドデシルチオ)チオキソメチル]チオ]コハク酸、2-[[(ドデシルチオ)チオキソメチル]チオ]-2-メチルプロピオン酸、2,2′-[カルボノチオイルビス(チオ)]ビス[2-メチルプロピオン酸]、2-アミノ-1-メチル-2-オキソエチルブチルトリチオカルボナート、ベンジル2-[(2-ヒドロキシエチル)アミノ]-1-メチル-2-オキソエチルトリチオカルボナート、3-[[[(tert-ブチル)チオ]チオキソメチル]チオ]プロピオン酸、シアノメチルドデシルトリチオカルボナート、ジエチルアミノベンジルトリチオカルボナート、ジブチルアミノベンジルトリチオカルボナートなどのトリチオカルボナート類が挙げられる。これらのなかでも特に好ましくは、ジベンジルトリチオカルボナート、ブチルベンジルトリチオカルボナートが用いられる。
【0060】
2.2 クロロプレン系重合体Bを含むラテックスBの製造方法
本発明に係るクロロプレン系重合体Bを含むラテックスBは、溶液重合、乳化重合、塊状重合等公知の方法で製造できるが、乳化重合が好適である。
【0061】
クロロプレン系重合体Bを重合する重合工程では、単量体は、クロロプレンを含み、クロロプレンと共重合可能な他の単量体を含むこともできる。クロロプレンと共重合可能な他の単量体としては、上記した単量体を挙げることができる。
【0062】
各単量体の種類及び仕込み量は、得られる重合体中の各単量体が上記した数値範囲内となるように調整することが好ましい。一例として、クロロプレン系重合体ラテックスに含まれるクロロプレン系重合体の2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエンの共重合量は、クロロプレン系重合体に含まれるクロロプレン単量体と2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエンとの合計100質量%に対して0~30質量%の範囲とすることもでき、この場合、乳化重合開始前の2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエンの仕込み量を、クロロプレン単量体と2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン単量体との合計100質量部に対して0~30質量部の範囲とすることが好ましい。重合制御の観点から、クロロプレン単量体と2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン単量体との合計100質量部に対して、2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエンの仕込み量を、5~25質量部とすることがより好ましい。
【0063】
重合工程では、原料単量体を、連鎖移動剤、水、アルカリ(例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の金属水酸化物)、乳化剤(分散剤)、還元剤(例えば亜硫酸水素ナトリウム)、重合開始剤などと共に反応缶中に投入して重合させることができる。
【0064】
乳化重合に際して用いる連鎖移動剤の種類は、特に限定されるものではなく、例えばn-ドデシルメルカプタンやtert-ドデシルメルカプタン等の長鎖アルキルメルカプタン類、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィドやジエチルキサントゲンジスルフィド等のジアルキルキサントゲンジスルフィド類、ヨードホルム等のように、クロロプレンの乳化重合に一般的に使用されている公知の連鎖移動剤を使用することができる。連鎖移動剤としては、長鎖アルキルメルカプタン類が好ましく、n-ドデシルメルカプタンがより好ましい。連鎖移動剤の種類及び量を調整することで、得られるクロロプレン系重合体ラテックスの重量平均分子量を調整することができる。
【0065】
本発明に係るクロロプレン系重合体Bは、重量平均分子量が7,000~80,000である。重量平均分子量が7,000~80,000であるクロロプレン系重合体Bを得る観点から、乳化重合開始前の連鎖移動剤の仕込み量を、単量体100質量部に対して0.5~10.0質量部とすることが好ましい。連鎖移動剤の仕込み量は、例えば、0.5、1.0、2.0、3.0、4.0、5.0、6.0、7.0、8.0、9.0、10.0質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0066】
乳化剤としては、重合工程a-1、a-2で列挙した乳化剤を用いることができ、乳化剤の使用量は、重合工程で使用する単量体100質量部に対し、好ましくは1.0~6.5質量部である。
【0067】
乳化重合の重合温度は、5~55℃の範囲内とすることが好ましい。5℃以上だと乳化液が凍結せず、55℃以下だとクロロプレン単量体の蒸散や沸騰がない点から好ましい。
【0068】
重合開始剤としては、通常のラジカル重合で用いられる過硫酸カリウム、過酸化ベンゾイル、過硫酸アンモニウム及び過酸化水素等を用いることができる。
【0069】
重合転化率は50~95%の範囲とすることが好ましい。重合反応は、重合停止剤を加えることにより停止させる。重合転化率が50%以上であると、トルエン不溶分は増加しやすく、得られる浸漬成形膜の強度が高くなりやすい。また生産コストの観点で有利である。重合転化率が95%未満であれば、未反応の単量体の減少による重合反応性の低下を回避し、生産性の低下を避けることができる。
【0070】
重合停止剤としては、例えばN,N-ジエチルヒドロキシルアミン、チオジフェニルアミン、4-tert-ブチルカテコール、2,2'-メチレンビス-4-メチル-6-tert-ブチルフェノール等がある。乳化重合終了後の未反応単量体は、常法の減圧蒸留等の方法で除去することができる。
【0071】
2.3 クロロプレン系重合体ラテックスの混合工程
本発明の一実施形態に係るクロロプレン系重合体ラテックスの混合工程は、上記で得られたクロロプレン系ブロック共重合体Aを含むラテックスAと、クロロプレン系重合体Bを含むラテックスBを混合するラテックス混合工程を含む。
混合工程では、前記クロロプレン系ブロック共重合体Aと、前記クロロプレン系重合体Bとの合計100質量%に対し、前記クロロプレン系ブロック共重合体Aを70~95質量%、前記クロロプレン系重合体Bを3~30質量%混合することが好ましく、クロロプレン系ブロック共重合体Aを83~93質量%、クロロプレン系重合体Bを7~17質量%混合することがより好ましい。
【0072】
混合工程では、クロロプレン系ブロック共重合体Aを含むラテックスAと、クロロプレン系重合体Bを含むラテックスBを含む原料を、公知の方法で混合することができ、例えば、パドル翼用いて30~300rpmで20秒~3分間、一例としては、100rpmで1分間攪拌混合させることで、クロロプレン系重合体ラテックスを得てもよい。
【0073】
本発明の一実施形態に係るラテックスは、上記クロロプレン系ブロック共重合体Aの製造方法で述べた重合方法で得た重合終了時の液、及びクロロプレン系重合体Bの製造方法で述べた重合方法で得た重合終了時の液を、そのままラテックスとして使用する方法、又は回収したクロロプレン系ブロック共重合体を、乳化剤を用いて強制的に乳化させてラテックスを得る方法等により得ることができるが、重合で得た重合終了時の液をそのままラテックスとして使用する方法が、簡便にラテックスを得ることができるため好適である。
【0074】
また、本発明の一実施形態の製造方法により得られるラテックスA、ラテックスB及びクロロプレン系重合体ラテックスには、本発明の効果を阻害しない範囲で、重合後に凍結安定剤、乳化安定剤、粘度調整剤、酸化防止剤、防腐剤などを任意に添加することができる。
【0075】
3.クロロプレン系重合体ラテックス組成物
本発明の一実施形態に係るクロロプレン系重合体ラテックス組成物は、本実施形態に係るクロロプレン系重合体ラテックスを含有する。本発明の一実施形態に係るクロロプレン系重合体ラテックス組成物は、さらに、pH調整剤、凍結安定剤、乳化安定剤、粘度調整剤、老化防止剤、防腐剤等を含有してよい。
【0076】
本発明の一実施形態に係るクロロプレン系重合体ラテックス組成物は、さらに加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤(酸化防止剤、例えばオゾン老化防止剤)、充填剤、可塑剤、顔料、着色剤、湿潤剤、消泡剤等の添加剤を含有してよい。本発明の一実施形態に係るクロロプレン系重合体ラテックス組成物は、クロロプレン系重合体ラテックスとこれらの添加剤とを含有する浸漬成形体用の組成物であってよい。本実施形態に係るクロロプレン系重合体ラテックス組成物は、これらの添加剤を混合する前の態様として、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、充填剤、可塑剤、顔料、着色剤、湿潤剤、及び、消泡剤からなる群より選ばれる少なくとも一種の添加剤を含有しない態様であってもよい。本発明の一実施形態に係るクロロプレン系重合体ラテックス組成物は、加硫剤及び加硫促進剤を含まないこともできる。本発明の一実施形態に係るクロロプレン系重合体ラテックスは、加硫剤及び加硫促進剤の添加量が少なくても、又は、加硫剤及び加硫促進剤用いなくても柔軟性が高く、かつ、優れた破断時引張強さ及び破断時伸びを有する浸漬成形体を得ることができる。
【0077】
加硫剤を用いる場合、加硫剤としては、硫黄(分子状硫黄。例えば、S8等の環状硫黄);酸化亜鉛、酸化鉛、四酸化三鉛等の金属酸化物;酸化マグネシウムなどが挙げられる。加硫剤の含有量は、架橋が充分に進行しやすく、浸漬成形体の引張強度、モジュラス等を好適に得やすい観点、及び、浸漬成形体の好適な触感を得やすい観点から、クロロプレン系ブロック共重合体A及びクロロプレン系重合体Bの固形分の合計100質量部に対して0.5~10質量部であってよい。加硫剤は、1種類又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0078】
加硫促進剤を用いる場合、加硫促進剤としては、チウラム系、ジチオカルバミン酸塩系、チオウレア系、グアニジン系、キサントゲン酸塩系、チアゾール系等の加硫促進剤が挙げられる。加硫促進剤は、適切な強度が得られる観点から、クロロプレン系ブロック共重合体A及びクロロプレン系重合体Bの固形分の合計100質量部に対して0.5~5質量部であってよい。加硫促進剤は、1種類又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0079】
老化防止剤としては、オクチル化ジフェニルアミン、p-(p-トルエン-スルホニルアミド)ジフェニルアミン、4,4'-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、N,N'-ジフェニル-p-フェニレジアミン(DPPD)、N-イソプロピル-N'-フェニル-p-フェニレンジアミン(IPPD)等のジフェニルアミン系化合物などが挙げられる。オゾン老化防止剤としては、N,N'-ジフェニル-p-フェニレジアミン(DPPD)、N-イソプロピル-N'-フェニル-p-フェニレンジアミン(IPPD)等が挙げられる。老化防止剤としては、医療用手袋等のように外観(特に色調)又は衛生性が重視される場合には、ビンダードフェノール系老化防止剤を用いることができる。老化防止剤の含有量は、老化防止効果を充分に得やすい観点から、クロロプレン系ブロック共重合体A及びクロロプレン系重合体Bの固形分の合計100質量部に対して0.1~5質量部であってよい。
【0080】
4.浸漬成形体
本発明の一実施形態に係る浸漬成形体は、上記に記載のクロロプレン系重合体ラテックスを含むことができ、クロロプレン系ブロック共重合体A及びクロロプレン系重合体Bを含むことができる。
本発明の一実施形態に係るクロロプレン系重合体ラテックス組成物を加硫することにより加硫物を得ることができる。本発明の一実施形態に係る加硫物は、本発明の一実施形態に係るクロロプレン系重合体ラテックス組成物の加硫物とでき、本発明の一実施形態に係るクロロプレン系重合体ラテックス組成物を加硫して得られたものとできる。本実施形態に係る加硫物は、フィルム形状であってよい。
【0081】
本発明の一実施形態に係る浸漬成形体は、本発明の一実施形態に係るクロロプレン系重合体ラテックス組成物の浸漬成形体とできる。本発明の一実施形態に係る浸漬成形体は、本発明の一実施形態に係るクロロプレン系重合体ラテックス組成物を用いた浸漬成形体とでき、本発明の一実施形態に係るクロロプレン系重合体ラテックス組成物を浸漬成形して得られるものとできる。本発明の一実施形態に係る浸漬成形体は、基材上に形成された浸漬成形膜とできる。本発明の一実施形態に係る浸漬成形体は、柔軟性が非常に高く、充分な破断時引張強さ及び破断時伸びをそれぞれ有する。具体的には、上記した100%伸長時モジュラス、破断時引張強さ及び破断時伸びを有するものとできる。本実施形態に係る加硫物の成形体であってよい。本実施形態に係る浸漬成形体は、手袋、風船、カテーテル又は長靴であってよい。
【0082】
浸漬成形体の厚さ(例えば最小の厚さ)は、0.01~0.50mm、0.10~0.50mm、0.10~0.30mm、又は、0.10~0.25mmであってよい。浸漬成形体の厚さは、成形型をクロロプレン系重合体ラテックス組成物に浸漬する時間、クロロプレン系重合体ラテックス組成物の固形分濃度等によって調整することができる。浸漬成形体の厚さを薄くしたい場合、浸漬時間を短縮し、又は、クロロプレン系重合体ラテックス組成物の固形分濃度を低くすればよい。
【0083】
本実施形態に係る浸漬成形体の製造方法では、本実施形態に係るクロロプレン系重合体ラテックス組成物を浸漬成形する。本実施形態に係る浸漬成形体を製造する際の成形方法としては、公知の方法を使用することが可能であり、単純浸漬法、凝着浸漬法、感熱浸漬法、電着法等が挙げられる。製造しやすい観点、及び、一定の厚さの浸漬成形体が得られやすい観点から、凝着浸漬法を用いることができる。具体的には、凝集剤をコーティングした成形型をクロロプレン系重合体ラテックス組成物に浸漬し、クロロプレン系重合体ラテックス組成物を凝固させる。そして、浸出により水溶性不純物を除去した後に乾燥させ、さらに、加硫することにより浸漬成形膜(ゴム被膜)を形成した後に浸漬成形膜を離型する。これにより、フィルム状の浸漬成形体を得ることができる。
【実施例0084】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定して解釈されるものではない。
【0085】
(クロロプレン系ブロック共重合体A-Iの合成)
(重合工程a-1)重合体ブロックA1-Iの合成
容量10L、攪拌機及び加熱冷却用ジャケット付のオートクレーブを用いて重合を行った。純水131質量部、不均化ロジン酸カリウム(ハリマ化成グループ株式会社製)5.8質量部、水酸化カリウム0.08質量部、β-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩(花王株式会社製、商品名:デモールN)0.66質量部、スチレン単量体13質量部、ブチルベンジルトリチオカーボネート0.16質量部を仕込み、内温80℃にし窒素気流下にて200rpmで攪拌した。重合開始剤として2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]2塩化水素(富士フイルム和光純薬株式会社製、商品名:VA-044)0.1質量部を添加して重合を開始した。物性測定のために、得られたラテックスを20mlサンプリングし、残りのラテックスは重合工程a-2に使用した。
【0086】
サンプリングしたラテックスは、多量のメタノールに混合することで樹脂分を析出させ、濾過、乾燥して重合体ブロックA1-Iのサンプルを得た。得られたサンプルより重合体ブロックA1-Iの重量平均分子量を分析により求めた。重量平均分子量は23,000であった。また、重合体ブロックA1-Iのガラス転移温度は、97℃であった。なお、測定方法については後述する。
【0087】
(重合工程a-2)クロロプレン系重合体ブロックA2-Iの合成(クロロプレン系ブロック共重合体A-Iの合成)
重合工程a-1の後、内温が45℃まで下がったところで、クロロプレン単量体98質量部、及び1,9-ノナンジオールジアクリレート2質量部を2時間かけてゆっくり添加し重合を行った。クロロプレン単量体の重合率90%となった時点で重合停止剤であるN,N-ジエチルヒドロキシルアミンの10重量%水溶液を添加することで重合を停止させ、減圧蒸留により未反応のクロロプレン単量体を除去した。物性測定のために、得られたラテックスを20mlサンプリングし、残りのラテックスを評価用のフィルム作製に供した。
【0088】
サンプリングしたラテックスは、多量のメタノールに混合することで樹脂分を析出させ、濾過、乾燥してクロロプレン系ブロック共重合体A1のサンプルを得た。得られたサンプルよりクロロプレン系ブロック共重合体A1の重合体ブロックA1-Iとクロロプレン系重合体ブロックA2-Iの含有量(質量%)、トルエン可溶分の重量平均分子量、及びトルエン不溶分を分析により求めた。分析結果を表1に示す。なお、測定方法については後述する。
【0089】
(クロロプレン系ブロック共重合体A-IIの合成)
(重合工程a-1)重合体ブロックA1-IIの合成
容量10L、攪拌機及び加熱冷却用ジャケット付のオートクレーブを用いて重合を行った。純水105質量部、不均化ロジン酸カリウム(ハリマ化成グループ株式会社製)4.7質量部、水酸化カリウム0.07質量部、β-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩(花王株式会社製、商品名:デモールN)0.53質量部、スチレン単量体10質量部、ブチルベンジルトリチオカーボネート0.13質量部を仕込み、内温80℃にし窒素気流下にて200rpmで攪拌した。重合開始剤として2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]2塩化水素(富士フイルム和光純薬株式会社製、商品名:VA-044)0.08質量部を添加して重合を開始した。物性測定のために、得られたラテックスを20mlサンプリングし、残りのラテックスは重合工程a-2に使用した。
【0090】
サンプリングしたラテックスは、多量のメタノールに混合することで樹脂分を析出させ、濾過、乾燥して重合体ブロックA1-IIのサンプルを得た。得られたサンプルより重合体ブロックA1-IIの重量平均分子量を分析により求めた。重量平均分子量は21,000であった。また、重合体ブロックA1-IIのガラス転移温度は、97℃であった。なお、測定方法については後述する。
【0091】
(重合工程a-2)クロロプレン系重合体ブロックA2-IIの合成(クロロプレン系ブロック共重合体A-IIの合成)
重合工程a-1の後、内温が45℃まで下がったところで、クロロプレン単量体98質量部、及び1,9-ノナンジオールジアクリレート 2質量部を2時間かけてゆっくり添加し重合を行った。クロロプレン単量体の重合率80%となった時点で重合停止剤であるN,N-ジエチルヒドロキシルアミンの10重量%水溶液を添加することで重合を停止させ、減圧蒸留により未反応のクロロプレン単量体を除去した。物性測定のために、得られたラテックスを20mlサンプリングし、残りのラテックスを評価用のフィルムの作製に供した。
【0092】
サンプリングしたラテックスは、多量のメタノールに混合することで樹脂分を析出させ、濾過、乾燥してクロロプレン系ブロック共重合体A-IIのサンプルを得た。得られたサンプルよりクロロプレン系ブロック共重合体A-IIの重合体ブロックA1-IIとクロロプレン系重合体ブロックA2-IIの含有量(質量%)、トルエン可溶分の重量平均分子量、及びトルエン不溶分を分析により求めた。分析結果を表1に示す。
【0093】
(クロロプレン系ブロック共重合体A-IIIの合成)
(重合工程a-1)重合体ブロックA1-IIIの合成
容量10L、攪拌機及び加熱冷却用ジャケット付のオートクレーブを用いて重合を行った。純水149質量部、不均化ロジン酸カリウム(ハリマ化成グループ株式会社製)6.6質量部、水酸化カリウム0.09質量部、β-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩(花王株式会社製、商品名:デモールN)0.74質量部、スチレン単量体14質量部、ブチルベンジルトリチオカーボネート0.16質量部を仕込み、内温80℃にし窒素気流下にて200rpmで攪拌した。重合開始剤として2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]2塩化水素(富士フイルム和光純薬株式会社製、商品名:VA-044)0.1質量部を添加して重合を開始した。物性測定のために、得られたラテックスを20mlサンプリングし、残りのラテックスは重合工程a-2に使用した。
【0094】
サンプリングしたラテックスは、多量のメタノールに混合することで樹脂分を析出させ、濾過、乾燥して重合体ブロックA1-IIIのサンプルを得た。得られたサンプルより重合体ブロックA1-IIIの重量平均分子量を分析により求めた。重量平均分子量は26,300であった。また、重合体ブロックA3-1のガラス転移温度は、98℃であった。なお、測定方法については後述する。
【0095】
(重合工程a-2)クロロプレン系重合体ブロックA2-IIIの合成(クロロプレン系ブロック共重合体A-IIIの合成)
重合工程a-1の後、内温が45℃まで下がったところで、クロロプレン単量体98質量部、及び1,9-ノナンジオールジアクリレート 2質量部を2時間かけてゆっくり添加し重合を行った。クロロプレン単量体の重合率84%となった時点で重合停止剤であるN,N-ジエチルヒドロキシルアミンの10重量%水溶液を添加することで重合を停止させ、減圧蒸留により未反応のクロロプレン単量体を除去した。物性測定のために、得られたラテックスを20mlサンプリングし、残りのラテックスを評価用のフィルムの作製に供した。
【0096】
サンプリングしたラテックスは、多量のメタノールに混合することで樹脂分を析出させ、濾過、乾燥してクロロプレン系ブロック共重合体A-IIIのサンプルを得た。得られたサンプルよりクロロプレン系ブロック共重合体A-IIIの重合体ブロックA1-IIIとクロロプレン系重合体ブロックA2-IIIの含有量(質量%)、トルエン可溶分の重量平均分子量、及びトルエン不溶分を分析により求めた。分析結果を表1に示す。
【0097】
(クロロプレン系ブロック共重合体A-IVの合成)
(重合工程a-1)重合体ブロックA1-IVの合成
容量10L、攪拌機及び加熱冷却用ジャケット付のオートクレーブを用いて重合を行った。純水95質量部、不均化ロジン酸カリウム(ハリマ化成グループ株式会社製)4.2質量部、水酸化カリウム0.06質量部、β-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩(花王株式会社製、商品名:デモールN)0.47質量部、スチレン単量体9.4質量部、ブチルベンジルトリチオカーボネート0.16質量部を仕込み、内温80℃にし窒素気流下にて200rpmで攪拌した。重合開始剤として2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]2塩化水素(富士フイルム和光純薬株式会社製、商品名:VA-044)0.1質量部を添加して重合を開始した。物性測定のために、得られたラテックスを20mlサンプリングし、残りのラテックスは重合工程a-2に使用した。
【0098】
サンプリングしたラテックスは、多量のメタノールに混合することで樹脂分を析出させ、濾過、乾燥して重合体ブロックA1-IVのサンプルを得た。得られたサンプルより重合体ブロックA1-IVの重量平均分子量を分析により求めた。重量平均分子量は18,000であった。また、重合体ブロックA1-IVのガラス転移温度は、91℃であった。なお、測定方法については後述する。
【0099】
(重合工程a-2)クロロプレン系重合体ブロックA2-IVの合成(クロロプレン系ブロック共重合体A-IVの合成)
重合工程a-1の後、内温が45℃まで下がったところで、クロロプレン単量体98質量部、及び1,9-ノナンジオールジアクリレート 2質量部を2時間かけてゆっくり添加し重合を行った。クロロプレン単量体の重合率91%となった時点で重合停止剤であるN,N-ジエチルヒドロキシルアミンの10重量%水溶液を添加することで重合を停止させ、減圧蒸留により未反応のクロロプレン単量体を除去した。物性測定のために、得られたラテックスを20mlサンプリングし、残りのラテックスを評価用のフィルムの作製に供した。
【0100】
サンプリングしたラテックスは、多量のメタノールに混合することで樹脂分を析出させ、濾過、乾燥してクロロプレン系ブロック共重合体A-IVのサンプルを得た。得られたサンプルよりクロロプレン系ブロック共重合体A-IVの重合体ブロックA1-IVとクロロプレン系重合体ブロックA2-IVの含有量(質量%)、トルエン可溶分の重量平均分子量、及びトルエン不溶分を分析により求めた。分析結果を表1に示す。
【0101】
(クロロプレン系ブロック共重合体A-Vの合成)
(重合工程a-1)重合体ブロックA-Vの合成
容量10L、攪拌機及び加熱冷却用ジャケット付のオートクレーブを用いて重合を行った。純水174質量部、不均化ロジン酸カリウム(ハリマ化成グループ株式会社製)7.7質量部、水酸化カリウム0.11質量部、β-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩(花王株式会社製、商品名:デモールN)0.87質量部、スチレン単量体17質量部、ブチルベンジルトリチオカーボネート0.16質量部を仕込み、内温80℃にし窒素気流下にて200rpmで攪拌した。重合開始剤として2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]2塩化水素(富士フイルム和光純薬株式会社製、商品名:VA-044)0.1質量部を添加して重合を開始した。物性測定のために、得られたラテックスを20mlサンプリングし、残りのラテックスは重合工程a-2に使用した。
【0102】
サンプリングしたラテックスは、多量のメタノールに混合することで樹脂分を析出させ、濾過、乾燥して重合体ブロックA1-Vのサンプルを得た。得られたサンプルより重合体ブロックA1-Vの重量平均分子量を分析により求めた。重量平均分子量は29,700であった。また、重合体ブロックA1-Vのガラス転移温度は、98℃であった。なお、測定方法については後述する。
【0103】
(重合工程a-2)クロロプレン系重合体ブロックA2-Vの合成(クロロプレン系ブロック共重合体A-Vの合成)
重合工程a-1の後、内温が45℃まで下がったところで、クロロプレン単量体98質量部、及び1,9-ノナンジオールジアクリレート 2質量部を2時間かけてゆっくり添加し重合を行った。クロロプレン単量体の重合率82%となった時点で重合停止剤であるN,N-ジエチルヒドロキシルアミンの10重量%水溶液を添加することで重合を停止させ、減圧蒸留により未反応のクロロプレン単量体を除去した。物性測定のために、得られたラテックスを20mlサンプリングし、残りのラテックスを評価用のフィルムの作製に供した。
【0104】
サンプリングしたラテックスは、多量のメタノールに混合することで樹脂分を析出させ、濾過、乾燥してクロロプレン系ブロック共重合体A-Vのサンプルを得た。得られたサンプルよりクロロプレン系ブロック共重合体A-Vの重合体ブロックA1-Vとクロロプレン系重合体ブロックA2-Vの含有量(質量%)、トルエン可溶分の重量平均分子量、及びトルエン不溶分を分析により求めた。分析結果を表1に示す。
【0105】
(クロロプレン系ブロック共重合体A-VIの合成)
(重合工程a-1)重合体ブロックA1-VIの合成
容量10L、攪拌機及び加熱冷却用ジャケット付のオートクレーブを用いて重合を行った。純水105質量部、不均化ロジン酸カリウム(ハリマ化成グループ株式会社製)17質量部、水酸化カリウム0.25質量部、β-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩(花王株式会社製、商品名:デモールN)1.9質量部、スチレン単量体37質量部、ブチルベンジルトリチオカーボネート0.16質量部を仕込み、内温80℃にし窒素気流下にて200rpmで攪拌した。重合開始剤として2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]2塩化水素(富士フイルム和光純薬株式会社製、商品名:VA-044)0.1質量部を添加して重合を開始した。物性測定のために、得られたラテックスを20mlサンプリングし、残りのラテックスは重合工程a-2に使用した。
【0106】
サンプリングしたラテックスは、多量のメタノールに混合することで樹脂分を析出させ、濾過、乾燥して重合体ブロックA1-VIのサンプルを得た。得られたサンプルより重合体ブロックA1-VIの重量平均分子量を分析により求めた。重量平均分子量は64,000であった。また、重合体ブロックA1-VIのガラス転移温度は、100℃であった。なお、測定方法については後述する。
【0107】
(重合工程a-2)クロロプレン系重合体ブロックA2-VIの合成(クロロプレン系ブロック共重合体A-VIの合成)
重合工程a-1の後、内温が45℃まで下がったところで、クロロプレン単量体98質量部、及び1,9-ノナンジオールジアクリレート 2質量部を2時間かけてゆっくり添加し重合を行った。クロロプレン単量体の重合率72%となった時点で重合停止剤であるN,N-ジエチルヒドロキシルアミンの10重量%水溶液を添加することで重合を停止させ、減圧蒸留により未反応のクロロプレン単量体を除去した。物性測定のために、得られたラテックスを20mlサンプリングし、残りのラテックスを評価用のフィルムの作製に供した。
【0108】
サンプリングしたラテックスは、多量のメタノールに混合することで樹脂分を析出させ、濾過、乾燥してクロロプレン系ブロック共重合体A-VIのサンプルを得た。得られたサンプルより、クロロプレン系ブロック共重合体A-VIの重合体ブロックA1-VIとクロロプレン系重合体ブロックA2-VIの含有量(質量%)、トルエン可溶分の重量平均分子量、及びトルエン不溶分を分析により求めた。分析結果を表1に示す。
【0109】
(クロロプレン系ブロック共重合体A-VIIの合成)
(重合工程a-1)重合体ブロックA1-VIIの合成
容量10L、攪拌機及び加熱冷却用ジャケット付のオートクレーブを用いて重合を行った。純水23質量部、不均化ロジン酸カリウム(ハリマ化成グループ株式会社製)1.0質量部、水酸化カリウム0.01質量部、β-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩(花王株式会社製、商品名:デモールN)0.11質量部、スチレン単量体2.2質量部、ブチルベンジルトリチオカーボネート0.04質量部を仕込み、内温80℃にし窒素気流下にて200rpmで攪拌した。重合開始剤として2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]2塩化水素(富士フイルム和光純薬株式会社製、商品名:VA-044)0.025質量部を添加して重合を開始した。物性測定のために、得られたラテックスを20mlサンプリングし、残りのラテックスは重合工程a-2に使用した。
【0110】
サンプリングしたラテックスは、多量のメタノールに混合することで樹脂分を析出させ、濾過、乾燥して重合体ブロックA1-VIIのサンプルを得た。得られたサンプルより重合体ブロックA1-VIIの重量平均分子量を分析により求めた。重量平均分子量は18,000であった。また、重合体ブロックA1-VIIのガラス転移温度は、96℃であった。
【0111】
(重合工程a-2)クロロプレン系重合体ブロックA2-VIの合成(クロロプレン系ブロック共重合体A-VIIの合成)
重合工程a-1の後、内温が45℃まで下がったところで、純水77質量部、不均化ロジン酸カリウム(ハリマ化成グループ株式会社製)3.2質量部、水酸化カリウム0.05質量部、β-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩(花王株式会社製、商品名:デモールN)0.36質量部を添加し、クロロプレン単量体98質量部、及び1,9-ノナンジオールジアクリレート 2質量部を2時間かけてゆっくり添加し重合を行った。クロロプレン単量体の重合率79%となった時点で重合停止剤であるN,N-ジエチルヒドロキシルアミンの10重量%水溶液を添加することで重合を停止させ、減圧蒸留により未反応のクロロプレン単量体を除去した。物性測定のために、得られたラテックスを20mlサンプリングし、残りのラテックスを評価用のフィルムの作製に供した。
【0112】
サンプリングしたラテックスは、多量のメタノールに混合することで樹脂分を析出させ、濾過、乾燥してクロロプレン系ブロック共重合体A-VIIのサンプルを得た。得られたサンプルより、クロロプレン系ブロック共重合体A-VIIの重合体ブロックA1-VIIとクロロプレン系重合体ブロックA2-VIIの含有量(質量%)、トルエン可溶分の重量平均分子量、及びトルエン不溶分を分析により求めた。分析結果を表1に示す。
【0113】
【0114】
(クロロプレン系重合体B-Iの合成)
容量10L、攪拌機及び加熱冷却用ジャケット付のオートクレーブを用いて重合を行った。クロロプレン90.5質量部、2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン9.5質量部、n-ドデシルメルカプタン5.0質量部、純水90質量部、不均化ロジン(荒川化学工業株式会社製、商品名:ロンヂスK-25)4.8質量部、水酸化カリウム0.78質量部、β-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩(花王株式会社製、商品名:デモールN)0.40質量部、及び、亜硫酸水素ナトリウム0.50質量部を混合した。重合開始剤として過硫酸カリウム0.1質量部を添加した後、重合温度40℃にて窒素気流下で重合を行った。重合率60%となった時点で、重合停止剤であるN,N-ジエチルヒドロキシルアミン0.01質量部を加えて重合を停止させ、未反応単量体の除去、及び、濃縮操作により、固形分濃度60%のクロロプレン系重合体B-Iを得た。クロロプレン系重合体B-Iのトルエン可溶分の分子量、及びトルエン不溶分を分析により求めた。分析結果を表2に示す。
【0115】
(クロロプレン系重合体B-II~B-Vの合成)
クロロプレン系重合体B-Iの合成において、使用する原料等の種類及び量、重合条件を表2のとおりとした以外はクロロプレン系重合体B-Iの合成と同様に、クロロプレン系重合体B-II~B-Vを合成した。
【0116】
【0117】
(実施例1)
クロロプレン系ブロック共重合体A及びクロロプレン系重合体BをA/B=85/15(固形分の質量比)で混合し、混合クロロプレン系重合体ラテックスを得た。なお、混合クロロプレン系重合体ラテックスのトルエン可溶分のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定を行った結果、重量平均分子量(Mw)が196,000である第一ピーク、及び、重量平均分子量(Mw)が16,000である第二ピークが確認された。
【0118】
(実施例2~9、比較例1~5)
クロロプレン系ブロック共重合体A及びクロロプレン系重合体Bを表3及び表4に記載の割合で混合し、混合クロロプレン系重合体ラテックスを得た。
【0119】
【0120】
【0121】
<分析>
(スチレン重合体ブロックA1の重量平均分子量)
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて測定されるポリスチレン換算の値であり、下記記載の測定条件における測定値である。
装置名:HLC-8320(東ソー株式会社製)
カラム:TSKgel GMHHR-Hを3本直列
温度:40℃
検出:示差屈折率
溶媒:テトラヒドロフラン
検量線:標準ポリスチレン(PS)を用いて作成
【0122】
(スチレン重合体ブロックA1のガラス転移温度)
ガラス転移温度は、JIS K 7121に準拠して示差走査熱量計を用い、以下の方法で測定した。
装置名:DSC1(Mettler Toledo社製)
手順:50ml/minの窒素気流下で、昇温速度10℃/minで120℃まで昇温して、10分間120℃に保った後、-60℃まで冷却し、昇温速度10℃/minで120℃まで昇温して得られたDSC曲線から、高温側のペースラインを低温側に延長した直線と、ピークの高温側の曲線にこう配が最大になるような点で引いた接線との交点の温度をガラス転移温度とした。
【0123】
(クロロプレン系ブロック共重合体Aのスチレン重合体ブロックA1とクロロプレン系重合体ブロックA2の含有率測定)
熱分解ガスクロマトグラフと1H-NMRを用い、以下の方法で測定した。
熱分解ガスクロマトグラフ
装置名:HP5890-II
カラム:DB-5 0.25mmφ×30m(膜厚1.0μm)
カラム温度:50℃(5min)→10℃/min→150℃→25℃/min→300℃
注入口温度:250℃
検出器温度:280℃
検出器:FID
1H-NMR
装置名:JNM-ECX-400(日本電子株式会社製)
手順:スチレン重合体ブロックA1と多官能性単量体単位を含まないクロロプレン系重合体ブロックA2からなるクロロプレン系ブロック共重合体を熱分解ガスクロマトグラフで測定し、スチレン重合体ブロックA1由来のピークとクロロプレン系重合体ブロックA2由来のピークの面積比と、1H-NMRを測定して得られたクロロプレン系ブロック共重合体A中の重合体ブロックA1とクロロプレン系重合体ブロックA2の含有量から検量線を作成した。サンプリングしたラテックスをメタノールに混合して析出したクロロプレン系ブロック共重合体のサンプルを熱分解ガスクロマトグラフで測定し、重合体ブロックA1由来のピークとクロロプレン系重合体ブロックA2由来のピークの面積比から、上記で作成した検量線を用いてクロロプレン系ブロック共重合体A中の重合体ブロックA1とクロロプレン系重合体ブロックA2の含有量を求めた。
【0124】
(クロロプレン系重合体Bの2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン単量体単位の含有率)
クロロプレン系重合体B中の2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン単量体単位の含有率を仕込み量から算出した。
なお、クロロプレン系重合体B中の2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン単量体単位の含有率は、クロロプレン系重合体Bを含むラテックスを凍結乾燥させて得たクロロプレン系重合体Bの熱分解ガスクロマトグラフを測定することで求めることができる。
<熱分解ガスクロマトグラフの測定>
熱分解ガスクロマトグラフは以下の測定条件で実施できる。
・使用カラム:DB-5 0.25mmφ×30m(膜厚1.0μm)
・カラム温度:50℃→10℃/min→120℃→25℃/min→300℃
・注入口温度:270℃
・検出器温度:280℃
・試料量:0.05mg
【0125】
(クロロプレン系ブロック共重合体A、クロロプレン系重合体Bのトルエン可溶分の分子量)
クロロプレン系ブロック共重合体Aを含むラテックス、及び、クロロプレン系重合体Bを含むラテックスを凍結乾燥させることにより得られた乾燥物20mgをトルエン20mlに12時間以上溶解させてゾルを分離させた。その後、分離したゾルをTHF溶液20mlに溶解することで試料を得て、下記の条件でゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定を行った。重量平均分子量(Mw)の算出は、ポリスチレン換算で求めた。
測定装置:東ソー株式会社製、ゲル浸透クロマトグラフ(HLC-8320)
カラム:東ソー株式会社製、TSKgel GMHHR-Hを3本直列
検出:示差屈折率
溶媒:テトラヒドロフラン
検量線:標準ポリスチレン(PS)を用いて作成
【0126】
(トルエン不溶分)
クロロプレン系ブロック共重合体Aを含むラテックス、及び、クロロプレン系重合体Bを含むラテックスを凍結乾燥し、精秤した。得られた凍結乾燥後の質量をXgとした。凍結乾燥後のラテックスを、コニカルビーカーに入れて、23℃で16時間、トルエンで溶解した(ラテックスとトルエンの合計100質量%に対し、ラテックスが0.6質量%となるように調整)。得られたクロロプレン系重合体ラテックスとトルエンの混合物から、遠心分離機を使用し、さらに200メッシュの金網を使用して、ゲル分を分離した。得られたゲル分を風乾後、110℃雰囲気下で、1時間乾燥し、精秤した。乾燥後のゲル分の質量をYgとした。以下の式に従って、トルエン不溶分を算出した。結果を表1に示す。
トルエン不溶分=Y/X×100(%)
【0127】
<浸漬成形体(フィルム)の作製>
(混合クロロプレン系重合体ラテックス組成物の調製)
陶器製ボールミルを用いて、老化防止剤(OMNOVA SOLUTIONS社製、商品名:Wingstay-L)2質量部、β-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩(花王株式会社製、商品名:デモールN)0.1質量部、及び、水3.2質量部を20℃で16時間混合することにより固形分濃度40質量%の水分散液を調製した。上述の各実施例で得られた混合クロロプレン系重合体ラテックス中のクロロプレン系ブロック共重合体A及びクロロプレン系重合体Bの合計100質量部(固形分換算)にこの水分散液の固形分2.1質量部を混合した後、水を加えて全体の固形分濃度を30質量%に調整することにより成形用クロロプレン系重合体ラテックス組成物を作製した。
【0128】
(フィルムの作製)
外径50mmの陶器製の筒を、水62質量部、硝酸カリウム四水和物35質量部、及び炭酸カルシウム3質量部を混合した凝固液に1秒間浸して取り出した。4分間乾燥させた後、上記で調製したラテックスに2分間浸した。その後45℃の流水で1分間洗浄し、130℃で30分間熱処理して水分を除去し、引張試験用のフィルム(140×150mm、厚み:0.2mm)を作製した。
【0129】
(物性の評価)
作製したフィルムを、130℃で30分間熱処理した後にJIS K 6251に基づき100%伸長時モジュラス、破断時引張強さ及び破断時伸びを測定した。結果を表3及び4に示す。なお、比較例4では、円筒から剥離可能な強度をもったフィルムの作製ができなかった。