IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社竹中工務店の特許一覧

<>
  • 特開-工事用エレベータ 図1
  • 特開-工事用エレベータ 図2
  • 特開-工事用エレベータ 図3
  • 特開-工事用エレベータ 図4
  • 特開-工事用エレベータ 図5
  • 特開-工事用エレベータ 図6
  • 特開-工事用エレベータ 図7
  • 特開-工事用エレベータ 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128271
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】工事用エレベータ
(51)【国際特許分類】
   B66B 9/187 20060101AFI20230907BHJP
【FI】
B66B9/187 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022032509
(22)【出願日】2022-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】田中 良幸
(72)【発明者】
【氏名】奥野 啓史
(72)【発明者】
【氏名】神場 昌志
(72)【発明者】
【氏名】家下 輝也
(72)【発明者】
【氏名】池上 正樹
【テーマコード(参考)】
3F301
【Fターム(参考)】
3F301AA13
3F301CA06
(57)【要約】
【課題】連台の構成の簡素化及びコストの低減を図ることができながら、マスト単位部材を搬出階へスムーズに搬送することができ、マストの解体作業を効率よくスムーズに行うこと。
【解決手段】マスト2の上方側端部には、シーブ6を支持する連台7が備えられ、その連台7には、マスト2に対して搬器3と同じ側に、作業足場として利用自在な踊り場71が備えられ、マスト2は、構造物の躯体9側との間に間隔を隔て、その間隔に搬器及び連台7の踊り場71を位置させる状態で配設され、連台7の踊り場71は、構造物の躯体側端部91と踊り場71の端部との間に、荷下ろし対象物が通過可能な荷下ろし空間10とその荷下ろし対象物との干渉を防止する余剰空間11とを確保するように、踊り場71の端部が躯体側端部91から離間する側に離間されている。
【選択図】図4

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のマスト単位部材を上下方向に連結させたマストと、
そのマストに沿って昇降自在な搬器と、
その搬器とワイヤーを介して連結されたカウンターウエイトと、
搬器とカウンターウエイトとに連結されたワイヤーを巻き掛けて支持するシーブとが備えられ、
前記マストの上方側端部には、前記シーブを支持する連台が備えられ、
その連台には、マストに対して搬器と同じ側に、作業足場として利用自在な踊り場が備えられ、
前記マストは、構造物の躯体側との間に間隔を隔て、その間隔に搬器及び連台の踊り場を位置させる状態で配設され、
前記連台の踊り場は、構造物の躯体側端部と踊り場の端部との間に、荷下ろし対象物が通過可能な荷下ろし空間とその荷下ろし対象物との干渉を防止する余剰空間とを確保するように、踊り場の端部が躯体側端部から離間する側に離間されている工事用エレベータ。
【請求項2】
前記連台の踊り場は、躯体側に接近させた接近部位とその接近部位よりも躯体側から離間させた離間部位とを有する凹凸形状に形成され、
その離間部位と躯体側端部との間に、荷下ろし空間と余剰空間とが確保され、
その接近部位と躯体側とに亘って躯体側への乗り移り用の足場板を設置自在に構成されている請求項1に記載の工事用エレベータ。
【請求項3】
前記連台の踊り場には、接近部位及び離間部位に亘って手摺が備えられ、接近部位の手摺は、連台の踊り場における手摺として機能する通常状態と、接近部位と躯体側とに亘って設置された乗り移り用の足場板における手摺として機能する乗移状態とに切替自在に備えられている請求項2に記載の工事用エレベータ。
【請求項4】
前記連台には、踊り場よりも躯体側に突出させる状態で保持自在な突出足場が備えられている請求項1~3の何れか1項に記載の工事用エレベータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マストに沿って昇降自在な搬器が備えられた工事用エレベータに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような工事用エレベータは、建物等の構造物を構築する工事を行うために用いられ、例えば、搬器の高速化等のために、搬器とワイヤーを介して連結されたカウンターウエイトと、搬器とカウンターウエイトとに連結されたワイヤーを巻き掛けて支持するためのシーブとが備えられている。シーブを支持するために、マストの上方側端部には連台が備えられ、その連台が、駆動装置等によりマストに沿って昇降自在な自走式に構成されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
工事用エレベータは、複数のマスト単位部材を上下方向に連結することで、マストの長さを延長している。よって、工事の完了により工事用エレベータを撤去する場合には、搬器等をマストから取り外して解体する搬器等の解体作業を行ったのち、マスト単位部材を上方側から順次取り外して解体するマストの解体作業を行っている。
【0004】
マストの解体作業では、取り外し対象のマスト単位部材の下方側に連台を移動させ、その連台の踊り場を作業足場として利用して、マスト単位部材を取り外す作業を行い、取り外したマスト単位部材を1階等の搬出階に搬送している。
【0005】
特許文献1、2に記載の工事用エレベータでは、連台に、出退自在な移動台、及び、その移動台にてマスト単位部材を支持自在とする支持部等が備えられている。そこで、取り外したマスト単位部材を搬出階に搬送する際に、移動台の支持部にてマスト単位部材を支持させる状態で連台にマスト単位部材を載せて、その連台を搬出階に下降移動させることで、連台にて搬出階までマスト単位部材を運んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3315312号公報
【特許文献2】特許第4279389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1、2に記載の工事用エレベータでは、マストの解体作業において、連台にて搬出階まで取り外したマスト単位部材を運んでいるので、出退自在な移動台等を連台に備えることになり、連台の構成の複雑化及びコストアップを招くとともに、連台の大型化を招くことになる。
【0008】
また、連台にて搬出階までマスト単位部材を運んでいるので、マスト単位部材を搬送するたびに、昇降速度が速くない連台を、取り外し対象のマスト単位部材の存在箇所と搬出階との間で往復して昇降させなければならず、作業効率の低下に繋がることになる。
【0009】
そこで、マスト単位部材を搬出階に搬送する場合に、連台にて運ぶのではなく、例えば、マスト単位部材をワイヤー等で吊り下げ支持する状態で下降させることで、マスト単位部材を搬出階に搬送することができる。この場合には、ワイヤーを巻回させたウインチやワイヤーを巻き掛けて支持する滑車等、吊り下げ支持するための機器や部材を構造物の躯体側に設置し、ワイヤーをマスト単位部材に連結することで、マスト単位部材を吊り下げ支持している。そして、構造物の躯体側と工事用エレベータとの間に形成される隙間を、マスト単位部材を下降させるための荷下ろし空間として利用して、マスト単位部材を搬出階まで下降させる。
【0010】
このとき、構造物の躯体側と工事用エレベータとの間に形成される隙間は、躯体側と連台の踊り場の端部との間に形成されている隙間となるが、この隙間が小さくなると、マスト単位部材と躯体や連台とが干渉する可能性があり、マスト単位部材をスムーズに下降させることができなくなったり、マスト単位部材と躯体や連台とが接触してしまう等の問題が生じることになる。
【0011】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、連台の構成の簡素化及びコストの低減を図ることができながら、マスト単位部材を搬出階へスムーズに搬送することができ、マストの解体作業を効率よくスムーズに行うことができる工事用エレベータを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1特徴構成は、複数のマスト単位部材を上下方向に連結させたマストと、
そのマストに沿って昇降自在な搬器と、
その搬器とワイヤーを介して連結されたカウンターウエイトと、
搬器とカウンターウエイトとに連結されたワイヤーを巻き掛けて支持するシーブとが備えられ、
前記マストの上方側端部には、前記シーブを支持する連台が備えられ、
その連台には、マストに対して搬器と同じ側に、作業足場として利用自在な踊り場が備えられ、
前記マストは、構造物の躯体側との間に間隔を隔て、その間隔に搬器及び連台の踊り場を位置させる状態で配設され、
前記連台の踊り場は、構造物の躯体側端部と踊り場の端部との間に、荷下ろし対象物が通過可能な荷下ろし空間とその荷下ろし対象物との干渉を防止する余剰空間とを確保するように、踊り場の端部が躯体側端部から離間する側に離間されている点にある。
【0013】
本構成によれば、構造物の躯体側端部と踊り場の端部との間に、荷下ろし空間が確保されているので、マスト単位部材をワイヤー等で吊り下げ支持する状態で、荷下ろし空間を利用して、マスト単位部材を下降させることができる。よって、マストの解体作業において取り外したマスト単位部材を搬出階に搬送する場合に、連台にてマスト単位部材を運ぶのではなく、ワイヤー等で吊り下げ支持したマスト単位部材を、荷下ろし空間を利用して搬出階まで下降させることができる。これにより、連台に移動台や支持部等を備えなくてもよく、連台の構成の簡素化及びコストの低減を図ることができるとともに、連台の小型化を図ることも可能となる。
【0014】
しかも、本構成によれば、構造物の躯体側端部と踊り場の端部との間には、荷下ろし空間だけでなく、余剰空間も確保されているので、マスト単位部材を荷下ろし空間を利用して搬出階まで下降させる際に、マスト単位部材と躯体や連台との干渉を防止することができる。よって、マスト単位部材と躯体や連台との接触を防止しながら、マスト単位部材をスムーズに搬出階に下降させることができるので、マストの解体作業を効率よくスムーズに行うことができる。
【0015】
本発明の第2特徴構成は、前記連台の踊り場は、躯体側に接近させた接近部位とその接近部位よりも躯体側から離間させた離間部位とを有する凹凸形状に形成され、
その離間部位と躯体側端部との間に、荷下ろし空間と余剰空間とが確保され、
その接近部位と躯体側とに亘って躯体側への乗り移り用の足場板を設置自在に構成されている点にある。
【0016】
上述の如く、連台の踊り場と躯体側端部との間に、荷下ろし空間と余剰空間とを確保することで、荷下ろし空間と余剰空間とを利用して、マスト単位部材と躯体や連台との接触を防止しながら、マスト単位部材をスムーズに搬出階に下降させることができ、マストの解体作業を効率よくスムーズに行うことができる。
【0017】
一方、連台の踊り場と躯体側端部との間に、荷下ろし空間と余剰空間とを確保すると、連台の踊り場と躯体側端部との間の距離が大きくなってしまう。よって、連台の踊り場に存在する作業者が躯体側に乗り移るために、踊り場と躯体側とに亘って足場板を設置する場合に、その足場板の長さが長くなるので、足場板の設置作業の複雑化や足場板を安定して支持し難いものとなり、躯体側への乗り移りが行い難いものとなる。
【0018】
そこで、本構成によれば、連台の踊り場には、荷下ろし空間と余剰空間とを確保するための離間部位だけでなく、接近部位が備えられている。これにより、接近部位と躯体側端部との間の距離が短くなり、踊り場と躯体側とに亘って足場板を設置する場合に、その足場板の長さが短くなるので、足場板の設置作業の簡素化や足場板を安定して支持し易いものとなり、躯体側への乗り移りが行い易くなる。
【0019】
本発明の第3特徴構成は、前記連台の踊り場には、接近部位及び離間部位に亘って手摺が備えられ、接近部位の手摺は、連台の踊り場における手摺として機能する通常状態と、接近部位と躯体側とに亘って設置された乗り移り用の足場板における手摺として機能する乗移状態とに切替自在に備えられている点にある。
【0020】
本構成によれば、連台の踊り場における接近部位の手摺は、通常状態に切り替えて、連台の踊り場にて作業するとき等の手摺として利用することができながら、乗移状態に切り替えて、接近部位と躯体側とに亘って設置された足場板にて躯体側に乗り移るとき等の手摺として利用することができる。このように、接近部位の手摺に2つの機能を備えることができ、構成の簡素化及びコストの低減を図ることができる。
【0021】
本発明の第4特徴構成は、前記連台には、踊り場よりも躯体側に突出させる状態で保持自在な突出足場が備えられている点にある。
【0022】
本構成によれば、踊り場よりも躯体側に突出された突出足場が備えられているので、例えば、突出足場を利用して、ワイヤーを巻き掛けて支持する滑車等の吊り下げ支持部材を躯体側に取り付ける作業等を行うことができる。よって、マスト単位部材を吊り下げ支持するための機器や部材等の取付作業をスムーズにより安全に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】工事用エレベータの正面図
図2】工事用エレベータの側面図
図3】連台の正面図
図4】連台の平面図
図5】準備工程における作業状態を示す図
図6】第2解体工程における作業状態を示す図
図7】マスト単位部材を荷下ろしする状態での連台の平面図
図8】第2解体工程における搬出階での作業状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明に係る工事用エレベータの実施形態について図面に基づいて説明する。
この工事用エレベータ1は、図1及び図2に示すように、建物等の構造物を構築するために用いられ、マスト2と、そのマスト2に沿って昇降自在な搬器3と、搬器3とワイヤー4を介して連結されたカウンターウエイト5と、搬器3とカウンターウエイト5とに連結されたワイヤー4を巻き掛けて支持するシーブ6とが備えられている。マスト2の上方側端部には、シーブ6を支持する連台7が備えられている。
【0025】
マスト2の下端部がエレベータ基礎部8に連結されており、工事用エレベータ1がエレベータ基礎部8にて支持されている。マスト2は、複数のマスト単位部材21を上下方向に連結することで、上下方向での長さを延長自在に構成されている。マスト2は、搬器3及び連台7を昇降させるためのガイドレールとして機能する。
【0026】
搬器3は、人だけでなく、各種の資材等も積載可能な矩形箱型の籠体にて構成されている。搬器3の上面部には、その周囲を囲む状態で手摺31が備えられ、搬器3の上面部を作業足場として利用可能となっている。
【0027】
搬器3の上方側には、マスト2に沿って昇降自在な駆動フレーム32が備えられ、その駆動フレーム32には、駆動フレーム32を昇降駆動させるための駆動装置33(複数の駆動モータ)が備えられている。駆動フレーム32は、搬器3に連結されており、駆動装置33にて駆動フレーム32を昇降駆動させることで、駆動フレーム32と搬器3とが一体的に昇降される。
【0028】
ワイヤー4は、図1に示すように、その途中部位がシーブ6に巻き掛けられており、その一端部が駆動フレーム32に連結され、その他端部がカウンターウエイト5(図1に示すものでは、上下方向に2つのカウンターウエイト5を連結している)に連結されている。駆動フレーム32と一体的に搬器3を上昇させる際に、カウンターウエイト5が下降することになるので、カウンターウエイト5の荷重を利用して、駆動フレーム32と搬器3とが一体的に上昇する速度を向上し、搬器3の搬送速度の高速化を図っている。
【0029】
マスト2の上方側端部に備えられる連台7には、図1及び図2に示すように、作業足場として利用可能な踊り場71と、連台7に作業者等が乗り移るための梯子72とが備えられている。連台7の下方側には、マスト2に沿って昇降自在な支持フレーム73が延設されており、その支持フレーム73にて駆動装置74(駆動モータ)が備えられている。連台7は、駆動装置74の駆動によって、マスト2に沿って昇降駆動自在な自走式に構成されている。図4に示すように、固定具83を連台7とマスト2に亘って設置することで、上下方向でマスト2の所定位置に連台7を保持自在に備えられている。
【0030】
この工事用エレベータ1は、例えば、建物内のエレベータシャフト等、上下方向に連通する空間を利用して配設されている。マスト2は、図2に示すように、建物の躯体9側との間に間隔を隔てて配設されており、その間隔に搬器3及び連台7の踊り場71を位置させる状態で配設されている。ちなみに、この実施形態では、工事用エレベータ1が、建物内のエレベータシャフト等、上下方向に連通する空間を利用して配設されているので、図4に示すように、工事用エレベータ1の周囲に建物の躯体9が配設されている。また、図示は省略するが、マスト2は、上下方向の複数箇所で躯体9に連結されており、上下方向に延びる状態で躯体9に支持されている。
【0031】
連台7の踊り場71は、図4に示すように、平面視において、マスト2の左右両側と躯体9側との3方向を囲む形状に形成されている。踊り場71は、マスト2の左右両側に配設された左右一対の第1部位75と、躯体9側に配設されて左右一対の第1部位75を繋ぐ第2部位76とを有している。左右一対の第1部位75の夫々とマスト2との間にシーブ6が配設されており、マスト2の左右両側にシーブ6が配設されている。第2部位76は、躯体9側に接近させた接近部位77とその接近部位77よりも躯体9側から離間させた離間部位78とを有する凹凸形状に形成されている。
【0032】
離間部位78については、離間部位78と躯体側端部91との間に、荷下ろし空間10と余剰空間11とを確保するように、離間部位78の端部が躯体側端部91から離間する側に離間されている。荷下ろし空間10は、マスト単位部材21等の荷下ろし対象物が通過可能な空間となっており、余剰空間11は、マスト単位部材21等の荷下ろし対象物と踊り場71や躯体9との干渉を防止するための空間となっている。
【0033】
接近部位77については、離間部位78よりもその端部が躯体側端部91に接近しているが、接近部位77と躯体側端部91との間に余剰空間11だけを確保するように、接近部位77の端部が躯体側端部91から離間する側に離間されている。接近部位77の端部は、離間部位78の端部よりも、荷下ろし空間10に相当する長さだけ、躯体側端部91に接近している。
【0034】
踊り場71の左右方向で、離間部位78が接近部位77よりも長くなるように構成され、離間部位78が大半を占めており、接近部位77がごく一部となっている。離間部位78は、左右一対の第1部位75の一方側における外方側端部から、他方側における内方側端部までの長さを有しており、踊り場71において左右方向の一端側から中央部位を含む範囲に配設されている。それに対して、接近部位77は、左右一対の第1部位75の他方側における左右幅に相当する長さを有しており、踊り場71において左右方向の他端側に偏った範囲に配設されている。
【0035】
踊り場71における接近部位77は、離間部位78よりもその端部が躯体側端部91に接近しているので、図7に示すように、接近部位77と躯体9側とに亘って乗り移り用の足場板79を設置自在に構成されている。接近部位77と躯体9側とに亘って設置される足場板79によって、作業者等が連台7側から躯体9側へ乗り移り可能となっている。接近部位77には、足場板79を設置するための足場板設置部80が備えられている。例えば、その足場板設置部80(例えば、左右方向に延びる単管)に足場板79を引っ掛けて係合させることで、接近部位77に対して足場板79を安定した姿勢で設置自在となっている。
【0036】
踊り場71には、図3及び図4に示すように、第1部位75及び第2部位76の全周に亘って手摺81が備えられている。手摺81のうち、第2部位76における接近部位77の手摺82だけ、開閉式となっており、それ以外が固定式となっている。この接近部位77の開閉式の手摺82は、接近部位77において躯体9に対向する側に配設されており、上下方向に沿う軸心周りで揺動することで、閉状態と開状態とに切替自在に備えられている。図3及び図4に示すように、接近部位77の開閉式の手摺82を閉状態とすることで、連台7の踊り場71における手摺として機能する通常状態に切り替えられる。図7の一点鎖線にて示すように、接近部位77の開閉式の手摺82を開状態とすることで、接近部位77と躯体9側とに亘って設置された乗り移り用の足場板79における手摺として機能する乗移状態に切り替えられる。
【0037】
このような工事用エレベータ1は、工事の開始時に組み立てられて、工事の進捗状況等必要に応じて、マスト単位部材21を継ぎ足して連結してマスト2の長さを延長している。また、工事用エレベータ1は、工事の完了により工事用エレベータ1が解体されて除去されている。
【0038】
以下、図5図8に基づいて、工事用エレベータ1の解体作業について説明する。
工事用エレベータ1の解体作業では、図6図7に示すように、解体対象物をワイヤー等で吊り下げ支持しながら、解体対象物を解体して建物の1階等の搬出階93(図8参照)に搬出するようにしている。そのために、工事用エレベータ1の解体作業では、まず、解体対象物を吊り下げ支持可能するための準備工程を行い、その後、搬器3等を解体対象物とする第1解体工程、マスト2等を解体対象物とする第2解体工程、連台7等を解体対象物とする第3解体工程の順に各工程を行っている。
【0039】
準備工程では、図5に示すように、解体対象物を吊り下げ支持可能とするために、ワイヤー42を巻き掛ける滑車41等の吊り下げ支持部材を躯体9側に取り付け、その滑車41等に巻き掛けたワイヤー42の一端部を解体対象物に連結している。このとき、作業者は、連台7に備えられた突出足場84を利用して、躯体9における最上階の梁92等に滑車41を取り付けている。例えば、吊元となる滑車41の配設位置は、突出足場84の真上となるように、突出足場84を利用して作業者が梁92等に滑車41を取り付けている。突出足場84は、連台7の踊り場71よりも躯体9側に突出させる状態で保持自在に備えられている。この準備工程では、ワイヤー42を巻き上げたり、巻降ろしたりする電動ウインチ等の巻き上げ機も躯体9側に設置している。
【0040】
第1解体工程では、例えば、建物の1階等の搬出階93(図8参照)において、駆動フレーム32に備えられた駆動装置33や搬器3を取り外し(図1及び図2参照)、その取り外した駆動装置33や搬器3をワイヤー42にて吊り下げ支持してフォークリフト等に移し変えて搬送している。
【0041】
第2解体工程では、取り外し対象のマスト単位部材21の下方側に連台7を移動させて、その連台7の踊り場71を作業足場として利用して、図6に示すように、マスト単位部材21を取り外し、その取り外したマスト単位部材21にワイヤー42を連結して、矢印にて示すように、取り外したマスト単位部材21を吊り下げ支持している。そして、図8に示すように、マスト単位部材21を吊り下げ支持する状態で搬出階93まで下降させている。
【0042】
マスト単位部材21を搬出階93まで下降させる際に、図7に示すように、連台7の踊り場71における離間部位78と躯体側端部91との間に、荷下ろし空間10が確保されているので、図7において一点鎖線にて示すように、荷下ろし空間10を利用して、マスト単位部材21を下降させることができる。しかも、離間部位78と躯体側端部91との間には、荷下ろし空間10だけでなく、余剰空間11も確保されているので、マスト単位部材21と躯体9や連台7との接触を防止しながら、マスト単位部材21をスムーズに搬出階93まで下降させることができる。
【0043】
また、離間部位78は、連台7の左右方向でも踊り場71の一端部から中央部位を含む範囲に備えられているので、踊り場71の左右方向で大半を占めており、踊り場71の左右方向においても、荷下ろし空間10及び余剰空間11として、マスト単位部材21と躯体9や連台7との接触を防止できるだけの十分な空間が確保されている。ちなみに、滑車41の吊元は、踊り場71の左右方向で中央部位に相当する位置に配設されている。この点からも、踊り場71の一端部から中央部位を含む範囲に離間部位78を配設することで、マスト単位部材21を荷下ろしするための空間として、バランスのよい好適な荷下ろし空間10及び余剰空間11を確保することができる。
【0044】
図8に示すように、搬出階93では、チェーンブロック44やワイヤー45が設置されており、矢印に示すように、下降されたマスト単位部材21にワイヤー45の端部を連結させて、チェーンブロック44にてマスト単位部材21を引っ張り出し、台車46等にマスト単位部材21を積載させて搬送している。このとき、駆動フレーム32が搬出階93に合わせて設置されており、駆動フレーム32を作業足場43として利用している。
【0045】
このようにして、マスト単位部材21の取り外し、その取り外したマスト単位部材21を搬出階93まで下降させるという作業を繰り返し行い、上方側から順番にマスト単位部材21を解体している。この実施形態では、図8に示すように、駆動フレーム32が搬出階93に合わせて設置して作業足場43として利用しているので、駆動フレーム32を支持するために所定数のマスト単位部材21だけを残して、それ以外のマスト単位部材21を解体している。
【0046】
第3解体工程では、例えば、搬出階93において、駆動フレーム32、連台7、残したマスト単位部材21、エレベータ基礎部8等を取り外し、その取り外した各機器をワイヤー42にて吊り下げ支持して、チェーンブロック44等を用いながら各機器を引っ張り出して、フォークリフトや台車等に移し変えて搬出している。
【0047】
〔別実施形態〕
本発明の他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、夫々単独で適用することに限らず、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0048】
(1)上記実施形態では、連台7の踊り場71が、接近部位77と離間部位78とを有しているが、例えば、踊り場と躯体側端部との間に、荷下ろし空間と余剰空間とを確保していればよく、離間部位のみを有していてもよい。
【0049】
(2)上記実施形態では、接近部位77の手摺82が、通常状態と乗移状態とに切替自在に備えられているが、例えば、接近部位77の手摺82も、他の手摺81と同様に、固定式に構成することもできる。
【符号の説明】
【0050】
1 工事用エレベータ
2 マスト
3 搬器
4 ワイヤー
5 カウンターウエイト
6 シーブ
7 連台
9 躯体
10 荷下ろし空間
11 余剰空間
21 マスト単位部材
71 踊り場
77 接近部位
78 離間部位
79 足場板
81 手摺
82 接近部位の手摺
84 突出足場
91 躯体側端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8