(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128273
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】貯蔵庫
(51)【国際特許分類】
A23L 3/3445 20060101AFI20230907BHJP
F25D 23/00 20060101ALI20230907BHJP
F25D 11/00 20060101ALI20230907BHJP
A23L 3/36 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
A23L3/3445
F25D23/00 302Z
F25D11/00 101B
A23L3/36 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022032514
(22)【出願日】2022-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000194893
【氏名又は名称】ホシザキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲田 雅司
【テーマコード(参考)】
3L045
3L345
4B021
4B022
【Fターム(参考)】
3L045AA04
3L045CA02
3L045DA02
3L045EA01
3L045KA11
3L045LA01
3L045PA02
3L045PA03
3L045PA04
3L345AA02
3L345AA12
3L345BB01
3L345CC01
3L345DD51
3L345KK02
3L345KK03
3L345KK04
4B021LP10
4B021MC03
4B021MC10
4B021MK03
4B021MK08
4B021MP10
4B022LA04
4B022LF09
4B022LT06
4B022LT13
(57)【要約】
【課題】特定の気体を好適に外部に排出できる貯蔵庫を提供する。
【解決手段】箱体10と、第1ユニット41及び第2ユニット51と、を備え、第1ユニット41は、箱体10内の気体を取り入れ可能な第1取入部42と、第1取入部42から取り入れた気体を、第1低気体と第1低気体よりも窒素の濃度が高い第1高気体とに分離する第1分離部45と、第1低気体を箱体10外に排出する第1排出部46と、第1高気体を箱体10内に流入させる第1流入部47と、を備え、第2ユニット51は、箱体10外の気体を取り入れ可能な第2取入部52と、第2取入部52から取り入れた気体を、第2低気体と第2低気体よりも窒素の濃度が高い第2高気体とに分離する第2分離部55と、第2低気体を箱体10内に流入させる第2流入部57と、第2高気体を箱体10外に排出する第2排出部56と、を備える、貯蔵庫1。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱体と、
第1ユニット及び第2ユニットと、を備え、
前記第1ユニットは、
前記箱体内の気体を取り入れ可能な第1取入部と、
前記第1取入部から取り入れた気体を、第1低気体と前記第1低気体よりも第1成分の濃度が高い第1高気体とに分離する第1分離部と、
前記第1低気体を前記箱体外に排出する第1排出部と、
前記第1高気体を前記箱体内に流入させる第1流入部と、を備え、
前記第2ユニットは、
前記箱体外の気体を取り入れ可能な第2取入部と、
前記第2取入部から取り入れた気体を、第2低気体と前記第2低気体よりも前記第1成分の濃度が高い第2高気体とに分離する第2分離部と、
前記第2低気体を前記箱体内に流入させる第2流入部と、
前記第2高気体を前記箱体外に排出する第2排出部と、を備える、貯蔵庫。
【請求項2】
前記第1高気体から第2成分を検出可能な第1検出部と、
制御部と、を備え、
前記第1取入部は、前記箱体内の気体を取り入れることと、前記箱体外の気体を取り入れることと、を切り替え可能な構成とされ、
前記制御部は、前記第1検出部が前記第1高気体から前記第2成分を検出した場合に、前記第1取入部によって取り入れる気体を、前記箱体内の気体から前記箱体外の気体に切り替える、請求項1に記載の貯蔵庫。
【請求項3】
前記第2取入部は、前記箱体外の気体を取り入れることと、前記箱体内の気体を取り入れることと、を切り替え可能な構成とされ、
前記制御部は、前記第1検出部が前記第1高気体から前記第2成分を検出した場合に、前記第2取入部によって取り入れる気体を、前記箱体外の気体から前記箱体内の気体に切り替える、請求項2に記載の貯蔵庫。
【請求項4】
前記第1ユニットは、前記第1流入部が前記第1高気体を前記箱体内に流入させる第1流入量を調節可能な第1バルブを備え、
前記制御部は、前記第1検出部が前記第1高気体から前記第2成分を検出した場合に、前記第1流入量が低下するように前記第1バルブを調節する、請求項2または請求項3に記載の貯蔵庫。
【請求項5】
前記箱体内の気体の圧力を計測する圧力計を備え、
前記第2ユニットは、前記第2流入部が前記第2低気体を前記箱体内に流入させる第2流入量を調節可能な第2バルブを備え、
前記制御部は、前記圧力計によって計測された圧力に基づいて、前記箱体内の気体の圧力と前記箱体外の気体の圧力とが等しくなるように、前記第2バルブにおいて前記第2流入量を調節する、請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の貯蔵庫。
【請求項6】
前記箱体内の気体から第3成分の濃度を検出可能な濃度計を備え、
前記第2ユニットは、前記第2流入部が前記第2低気体を前記箱体内に流入させる第2流入量を調節可能な第2バルブを備え、
前記制御部は、前記濃度計によって計測された前記第3成分の濃度に基づいて、前記箱体内の気体における前記第3成分の濃度と前記箱体外の気体における前記第3成分の濃度とが等しくなるように、前記第2バルブにおいて前記第2流入量を調節する、請求項2から請求項5のいずれか1項に記載の貯蔵庫。
【請求項7】
前記第1低気体から前記第2成分を検出可能な第2検出部を備え、
前記制御部は、前記第2検出部が前記第1低気体から前記第2成分を検出しなくなった場合に、前記第1取入部によって取り入れる気体を、前記箱体外の気体から前記箱体内の気体に切り替える、請求項2から請求項6のいずれか1項に記載の貯蔵庫。
【請求項8】
前記箱体内の気体から第2成分を検出可能な第3検出部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記第3検出部が前記第2成分を検出した場合に、前記第1取入部及び前記第2取入部による気体の取り入れを行い、
前記第3検出部が前記第2成分を検出しない場合に、前記第1取入部及び前記第2取入部による気体の取り入れを停止する、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の貯蔵庫。
【請求項9】
前記箱体は、
貯蔵対象物を貯蔵可能な貯蔵室と、
前記貯蔵室を冷却する冷気を生成する冷却器が配された冷却器室と、を備え、
前記第1流入部は、前記第1高気体を前記貯蔵室に流入させ、
前記第2流入部は、前記第2低気体を前記冷却器室に流入させる、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の貯蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、貯蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、貯蔵庫として、特許文献1に記載のものが知られている。具体的に、特許文献1には、扉によって密閉可能な箱体内に設けられ、食品を貯蔵するための貯蔵室と、酸素を選択的に透過する酸素選択透過膜を有する窒素富化空気発生装置と、を備える貯蔵庫(新鮮貯蔵庫)が、開示されている。この貯蔵庫は、貯蔵室の内部及び外部からの空気を圧送ポンプによって吸引して窒素富化空気発生装置に供給し、酸素選択透過膜を透過した酸素を外部に排出し、酸素選択透過膜を透過しなかった窒素富化空気を貯蔵室に供給することで、食品の鮮度を維持させる。窒素富化空気発生装置は、酸素選択透過膜に対する空気の透過方向を所定時間毎に切換えることで、酸素選択透過膜の表面近傍に蓄積する窒素を掃気して、酸素選択透過膜の性能を維持させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、食品等の貯蔵対象物に影響のある特定の気体(成分)は、透過膜等によって分離して貯蔵室の外部に排出することが望ましい。しかし、例えば、特定の気体が、透過膜への吸着速度は速いものの、透過速度が遅い場合等、透過膜と特定の気体の種類によっては、透過膜への特定の気体の供給が過多な状態(飽和状態)となることで、透過膜の分離能力が低下する。
【0005】
そのため、上記特許文献1に開示の構成のように、透過膜に対する気体の透過方向を切り替えることで、その低下した分離能力を回復させることが考えられる。ところが、透過方向を切り替えている間は、特定の気体が貯蔵室の内部に流入してしまう。また、特定の気体の分離や透過膜への透過方向の切り替え等に伴って、貯蔵室の内部と外部との間において、気体の圧力差や特定の気体以外の気体の濃度差が生じる虞がある。このような気体の圧力差が生じると、箱体に取り付けられた扉が開け難かったり、勝手に開いてしまったりする可能性がある。
【0006】
本開示は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、特定の気体を好適に外部に排出できる貯蔵庫を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、箱体と、第1ユニット及び第2ユニットと、を備え、前記第1ユニットは、前記箱体内の気体を取り入れ可能な第1取入部と、前記第1取入部から取り入れた気体を、第1低気体と前記第1低気体よりも第1成分の濃度が高い第1高気体とに分離する第1分離部と、前記第1低気体を前記箱体外に排出する第1排出部と、前記第1高気体を前記箱体内に流入させる第1流入部と、を備え、前記第2ユニットは、前記箱体外の気体を取り入れ可能な第2取入部と、前記第2取入部から取り入れた気体を、第2低気体と前記第2低気体よりも前記第1成分の濃度が高い第2高気体とに分離する第2分離部と、前記第2低気体を前記箱体内に流入させる第2流入部と、前記第2高気体を前記箱体外に排出する第2排出部と、を備える、貯蔵庫である。
【0008】
このような貯蔵庫によると、第1ユニットにおいて、第1取入部から箱体内の気体(内気)を取り入れ、内気のうち第1成分の濃度が相対的に高い第1高気体を、箱体内に流入させつつ、内気のうち第1成分以外の成分の濃度が相対的に高い第1低気体を、箱体外に排出することができる。また、第2ユニットにおいて、第2取入部から箱体外の気体(外気)を取り入れ、外気のうち第1成分以外の成分の濃度が相対的に高い第2低気体を、箱体内に流入させつつ、外気のうち第1成分の濃度が相対的に高い第2高気体を、箱体外に排出することができる。これにより、内気において外気よりも濃度が高い特定の成分(第2成分)が存在する場合、この第2成分を箱体外に排出してその濃度を低下させることができる。また、第1ユニットと第2ユニットとが相補的に気体の取り入れ・排出等を行うので、内気と外気との間において、気体の圧力差や第2成分以外の成分の濃度差を小さくすることができる。
【0009】
当該貯蔵庫は、前記第1高気体から第2成分を検出可能な第1検出部と、制御部と、を備え、前記第1取入部は、前記箱体内の気体を取り入れることと、前記箱体外の気体を取り入れることと、を切り替え可能な構成とされ、前記制御部は、前記第1検出部が前記第1高気体から前記第2成分を検出した場合に、前記第1取入部によって取り入れる気体を、前記箱体内の気体から前記箱体外の気体に切り替えることとしてもよい。
【0010】
例えば第1分離部に供給される第2成分が過多となり、第1分離部においてその分離能力が低下すると、第2成分が含まれる(第2成分が所定の濃度まで低下していない)第1高気体が箱体内に流入する可能性がある。しかしながら、上記のような貯蔵庫によると、第1検出部が第1高気体から第2成分を検出した場合に、第1取入部によって取り入れる気体を、内気から外気に切り替えることで、第1分離部における第2成分の供給過多の状態を解消して、その低下した分離能力を回復させることができる。
【0011】
上記構成において、前記第2取入部は、前記箱体外の気体を取り入れることと、前記箱体内の気体を取り入れることと、を切り替え可能な構成とされ、前記制御部は、前記第1検出部が前記第1高気体から前記第2成分を検出した場合に、前記第2取入部によって取り入れる気体を、前記箱体外の気体から前記箱体内の気体に切り替えることとしてもよい。
【0012】
このような貯蔵庫によると、第1取入部によって取り入れる気体が、内気から外気に切り替えられたとしても、第2取入部によって取り入れる気体を、外気から内気に切り替えることで、第1ユニットと第2ユニットとにおける相補関係を維持し、内気と外気との間において、気体の圧力差や第2成分以外の成分の濃度差を小さくすることができる。
【0013】
上記構成において、前記第1ユニットは、前記第1流入部が前記第1高気体を前記箱体内に流入させる第1流入量を調節可能な第1バルブを備え、前記制御部は、前記第1検出部が前記第1高気体から前記第2成分を検出した場合に、前記第1流入量が低下するように前記第1バルブを調節することとしてもよい。
【0014】
このような貯蔵庫によると、第1取入部から取り入れられた外気の一部が箱体内に流入することで箱体内の温度が変化してしまうことを抑制することができる。また、第1流入量が低下することにより、第2成分が供給過多となった第1分離部から第1排出部を経た箱体外への気体の排出量を相対的に高くすることができるので、第1分離部における第2成分の供給過多の状態の解消を促進することができる。
【0015】
当該貯蔵庫は、前記箱体内の気体の圧力を計測する圧力計を備え、前記第2ユニットは、前記第2流入部が前記第2低気体を前記箱体内に流入させる第2流入量を調節可能な第2バルブを備え、前記制御部は、前記圧力計によって計測された圧力に基づいて、前記箱体内の気体の圧力と前記箱体外の気体の圧力とが等しくなるように、前記第2バルブにおいて前記第2流入量を調節することとしてもよい。
【0016】
このような貯蔵庫によると、内気と外気との間に生じる気体の圧力差をより小さくすることができる。また、仮に圧力計が異常値を示した場合、第1ユニットと第2ユニットとが相補的に稼働していない等の異常状態を使用者が知ることができる。
【0017】
当該貯蔵庫は、前記箱体内の気体から第3成分の濃度を検出可能な濃度計を備え、前記第2ユニットは、前記第2流入部が前記第2低気体を前記箱体内に流入させる第2流入量を調節可能な第2バルブを備え、前記制御部は、前記濃度計によって計測された前記第3成分の濃度に基づいて、前記箱体内の気体における前記第3成分の濃度と前記箱体外の気体における前記第3成分の濃度とが等しくなるように、前記第2バルブにおいて前記第2流入量を調節することとしてもよい。
【0018】
このような貯蔵庫によると、内気と外気との間に生じる第3成分の濃度差を小さくすることができる。また、仮に濃度計が異常値を示した場合、第1ユニットと第2ユニットとが相補的に稼働していない等の異常状態として使用者が認知することができる。
【0019】
当該貯蔵庫は、前記第1低気体から前記第2成分を検出可能な第2検出部を備え、前記制御部は、前記第2検出部が前記第1低気体から前記第2成分を検出しなくなった場合に、前記第1取入部によって取り入れる気体を、前記箱体外の気体から前記箱体内の気体に切り替えることとしてもよい。
【0020】
このような貯蔵庫によると、第1分離部における第2成分の供給過多の状態が十分に解消され、その低下した分離能力が十分に回復した後に、第2成分を箱体外に排出する運転を再開することができる。
【0021】
当該貯蔵庫は、前記箱体内の気体から第2成分を検出可能な第3検出部と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記第3検出部が前記第2成分を検出した場合に、前記第1取入部及び前記第2取入部による気体の取り入れを行い、前記第3検出部が前記第2成分を検出しない場合に、前記第1取入部及び前記第2取入部による気体の取り入れを停止することとしてもよい。
【0022】
このような貯蔵庫によると、仮に内気に第2成分が存在しない場合(内気と外気との間で第2成分の濃度差がない場合)、第1ユニットと第2ユニットの運転を停止させて、省エネルギー化や内気の温度変化の抑制等を実現することができる。
【0023】
上記構成において、前記箱体は、貯蔵対象物を貯蔵可能な貯蔵室と、前記貯蔵室を冷却する冷気を生成する冷却器が配された冷却器室と、を備え、前記第1流入部は、前記第1高気体を前記貯蔵室に流入させ、前記第2流入部は、前記第2低気体を前記冷却器室に流入させることとしてもよい。
【0024】
このような貯蔵庫によると、第2低気体が貯蔵対象物に直接吹き付けられることを抑制し、実用的な貯蔵庫を提供することができる。
【発明の効果】
【0025】
本開示によれば、特定の気体を好適に外部に排出できる貯蔵庫を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図4】制御部が各部を制御する態様を示すフローチャート
【
図5】実施形態2に係る貯蔵庫において制御部が各部を制御する態様を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0027】
<実施形態1>
本開示の実施形態1を
図1から
図4によって説明する。本実施形態では、ホテルやレストラン等の調理場において使用される、テーブル型(横型)の貯蔵庫(食材保管庫)1を例示する。尚、矢印方向Uを上方、矢印方向Dを下方、矢印方向Lを左方、矢印方向Rを右方として各図を説明する。また、
図1では紙面手前側を前方(正面側)とし、紙面奥側を後方(背面側)とする。ただし、これらの方向は便宜的に定めたものに過ぎず、限定的に解釈すべきものではない。さらに、
図2に示すユニット群40は、その構成を分かりやすく説明するために、便宜的に貯蔵庫1の上方に概念図として示している。
【0028】
図1及び
図2に示すように、貯蔵庫1は、全体として横長の直方体形状をなし、上面を調理台として利用できるようにその形状等が設計されている。貯蔵庫1は、前面が開口した横長の箱体10と、この開口を閉じる扉14,14と、を備えている。箱体10は、ステンレス鋼板製の外箱11内に、ABS樹脂等の合成樹脂製の内箱12が嵌められ、外箱11と内箱12との間に発泡樹脂等の断熱材13が充填されてなる箱状の構造体である。箱体10の前面開口には、一対の断熱扉14,14が観音開き式に装着されている。扉14,14の断熱構造は、概ね箱体10と同様である。箱体10の内部には、食品等の貯蔵対象物を貯蔵可能な貯蔵室15と、貯蔵室15の左方に張り出す形で設けられた冷却器室20と、が形成されている。扉14,14を開閉することで、貯蔵対象物を貯蔵室15に出し入れすることができる。尚、以下の説明では、貯蔵室15の内部又は冷却器室20の内部のことを箱体10内と呼び、貯蔵室15の外側及び冷却器室20の外側のことを箱体10外と呼ぶことがある。
【0029】
箱体10の左側には、機械室30が設けられている。機械室30の前面上部には、操作部65が設置されている。操作部65は、制御部60(
図3参照)に電気的に接続されており、図示しない入力部(操作ボタン)及び表示部(液晶パネル)等が設けられている。この入力部によって、貯蔵庫1の各種動作の指示及び設定を行うことができ、表示部によって、貯蔵庫1の各部のステータス情報や運転条件等を表示することができる。機械室30の上方には、冷却器室20が配されている。
【0030】
冷却器室20には、冷却器21と、冷却ファン22と、庫内サーミスタ23と、が設置されている。機械室30には、圧縮機32、凝縮器33、凝縮器ファン34(
図1参照)、及び膨張弁(図示せず)等と、ユニット群40及び制御部60が収納されている。圧縮機32、凝縮器33、及び冷却器21は、冷媒が循環する冷媒管35で繋がれることで既知の冷凍サイクルを実現した冷凍装置31を構成している。冷却器21、冷却ファン22、庫内サーミスタ23、圧縮機32、凝縮器ファン34、及び膨張弁等は、制御部60に電気的に接続されている。
【0031】
図2に示すように、貯蔵室15の内部における左側には、冷却器室20の右側に位置する開口及び貯蔵室15の左下側壁を覆う形で上下に延びた板状のダクト24が設けられている。ダクト24の上端と貯蔵室15の天井との間に設けられた隙間は、吹出口26を形成している。ダクト24の下端と貯蔵室15の底面との間に設けられた隙間は、吸入口25を形成している。ダクト24は、貯蔵室15の気体を貯蔵室15の下方から冷却器21の下方まで導くことができる。冷却ファン22は、冷却器21に対して貯蔵室15側であって、ダクト24の上方に取り付けられている。冷却ファン22が駆動すると、冷却器21によって冷却された気体(生成された冷気)が冷却器室20から吹出口26を通って貯蔵室15へ送り出されることで、貯蔵室15が冷却される。貯蔵室15の気体は、吸入口25を通って冷却器室20に入り、冷却器21によって再び冷却される。
【0032】
貯蔵室15には、当該貯蔵室15の気体の圧力を計測する圧力計18と、当該貯蔵室15の気体から酸素(第3成分)の濃度を検出可能な酸素濃度計19と、が設けられている。これら圧力計18と酸素濃度計19は、制御部60に電気的に接続されている(
図3参照)。尚、貯蔵室15には、エチレンを検出可能であって制御部60に電気的に接続された第3センサ(第3検出部)17が設けられていてもよい。
【0033】
ユニット群40は、機械室30の内部に設置されているが、
図2では、貯蔵庫1の上方においてその構成を模式的に示している。ユニット群40は、第1ユニット41と第2ユニット51と、を備える。第1ユニット41は、第1取入部42と、第1ポンプ43と、第1フィルタユニット44と、第1分離部45と、を備え、これらが上流側(第1取入部42側)から順に配されて管によって接続されることで構成されている。また、第1ユニット41は、第1分離部45に接続した第1排出部46及び第1流入部47と、第1排出部46の途中に設けられた第2センサ(第2検出部)46Aと、第1流入部47の途中に設けられた第1センサ(第1検出部)47A及び第1センサ47Aよりも下流側(端部47C側)に設けられた第1バルブ47Bと、を備える。一方、第2ユニット51は、第2取入部52と、第2ポンプ53と、第2フィルタユニット54と、第2分離部55と、を備え、これらが上流側(第2取入部52側)から順に配されて管によって接続されることで構成されている。また、第2ユニット51は、第2分離部55に接続した第2排出部56及び第2流入部57と、第2流入部57の途中に設けられた第2バルブ57Bと、を備える。
【0034】
第1取入部42及び第2取入部52は、貯蔵室15(箱体10の内部)の気体を取り入れることと、箱体10の外部の気体を取り入れることと、を切り替え可能な構成とされる。具体的には、第1取入部42は、第1弁体42Cと、貯蔵室15と第1弁体42Cとを繋ぐ管であって、内気を流通可能な内気流路42Bと、箱体10の外部と第1弁体42Cとを繋ぐ管であって、外気を流通可能な外気流路42Aと、を備える。内気流路42Bの端部42B1は、貯蔵室15に挿通されている。第1弁体42Cは、屈曲した流路を内部に有する回転体を備えており、この回転体を回転させることにより、内気流路42Bから第1ポンプ43に内気が流れる流路(内気取入流路)と、外気流路42Aから第1ポンプ43に外気が流れる流路(外気取入流路)と、を切り替えることができる。第2取入部52は、第2弁体52Cと、内気流路52Bと、外気流路52Aと、を備える。第2取入部52は、第1取入部42と同様の構成とされるため、その詳細な説明を省略する。尚、
図2では、第1取入部42が、内気を取り入れる状態(内気取入流路)に切り替えられ、第2取入部52が、外気を取り入れる状態(外気取入流路)に切り替えられている。
【0035】
第1ポンプ43及び第2ポンプ53は、各取入部42,52から取り入れた気体を分離部45,55に向けて所定の流量で送る構成とされる。各フィルタユニット44,54は、ポンプ43,53から分離部45,55に向けて送られる気体から埃やゴミ等の異物及び水分を除去し、分離部45,55の分離能力の低下を抑制するために設けられている。各フィルタユニット44,54としては、例えば、粒径が1μm以上の粒子の捕集率が30%以上(典型的には、30~95%)の中性能フィルタ等と呼ばれるものを採用することができる。第1ポンプ43は、分離部45に送る気体の流量が、第2ポンプ53が分離部55に送る気体の流量と同じになる構成とされている(又は、制御部60によってそのように制御されている)。
【0036】
第1分離部45は、第1取入部42から取り入れられ、第1ポンプ43及びフィルタユニット44を通過した気体を、第1低気体と第1低気体よりも窒素(第1成分)の濃度が高い第1高気体とに分離する。第2分離部55は、第2取入部52から取り入れられ、第2ポンプ53及びフィルタユニット54を通過した気体を、第2低気体と第2低気体よりも窒素(第1成分)の濃度が高い第2高気体とに分離する。第1低気体及び第2低気体は、窒素の濃度が低い窒素プアガス(酸素リッチガス)であり、それ以外の成分の濃度が高いガスとされる。一方、第1高気体及び第2高気体は、窒素の濃度が高い窒素リッチガス(酸素プアガス)であり、それ以外の濃度が低いガスとされる。
【0037】
各分離部45,55における成分分離プロセス等は特に制限されず、例えば、深冷分離法、吸着分離法、及び膜分離法等を採用することができる。なかでも、比較的コンパクトであり、運転操作及びメンテナンスが容易であり、比較的小容量の気体の処理に適する等の特徴を有する、膜分離法を採用するとよい。各分離部45,55に用いられる分離膜としては、窒素とそれ以外の成分とを選択的に分離する分離膜を採用することができる。例えば、箱体10の内部又は外部の気体が空気の場合、各分離部45,55は、空気を、窒素の濃度が高い窒素リッチガス(酸素プアガス)としての第1高気体及び第2高気体と、窒素以外の成分である酸素(第3成分)やエチレン(第2成分)等の濃度が高い窒素プアガス(酸素リッチガス)としての第1低気体及び第2低気体と、に分離する。仮に、貯蔵対象物等から生じた成分(エチレン、硫化水素、アルコール、アセトアルデヒド等)が箱体10内に存在する場合、各分離部45,55は、これらの成分を含む(濃度が高い)窒素プアガス(酸素リッチガス)と、これらの成分を含まない(濃度が低い)窒素リッチガス(酸素プアガス)と、に空気を分離することができる。
【0038】
各分離部45,55に用いられる分離膜としては、熱的安定性、化学的安定性、及び機械的特性に優れることから、ポリイミド等の高分子を中空糸状に形成した膜を主体とする高分子分離膜を採用することができる。このような分離膜としては、例えば窒素と強い親和性を有する低分子化合物を保持体(キャリア)としてポリイミド膜に担持させることで、ポリイミドの一次構造(高分子鎖間隙)に基づく高い透過性と、キャリアに基づく選択性と、が同時に得られるようにしたものであってよい。また、このような分離膜としては、オキシエチレン基等の極性基を高分子鎖中に導入して溶解度選択性を向上させたものであってよい。さらに、このような分離膜としては、例えば、23℃において空気から窒素ガス濃度が95体積%以上、99.5体積%以上の窒素リッチガス(酸素プアガス)を生成することができる、ダイセル・エボニック株式会社製の「SEPURAN(登録商標) N2」を採用することができる。第1分離部45は、気体の分離比率が第2分離部55と同一となるものを用いてもよい。
【0039】
第1分離部45には、箱体10外に延びる管状の第1排出部46と、貯蔵室15に延びる管状の第1流入部47と、が接続されている。第1排出部46は、第1分離部45から第1低気体を箱体10外に排出する。第1排出部46の途中には、エチレンを検出可能な第2センサ(第2検出部)46Aが設けられている。第1流入部47は、第1分離部45から第1高気体を貯蔵室15に流入させる構成とされ、その端部47Cが、貯蔵室15に挿入されている。第1流入部47の途中には、エチレンを検出可能な第1センサ(第1検出部)47Aと、第1センサ47Aよりも下流側(端部47C側)に配され、当該第1流入部47が第1高気体を貯蔵室15に流入させる第1流入量を調節可能な第1バルブ47Bと、が設けられている。
【0040】
第2分離部55には、箱体10外に延びる管状の第2排出部56と、貯蔵室15に延びる管状の第2流入部57と、が接続されている。第2排出部56は、第2分離部55から第2高気体を箱体10外に排出する。第2流入部57は、第2分離部55から第2低気体を冷却器室20に流入させる構成とされ、その端部57Cが、冷却器室20に挿入されている。第2流入部57の途中には、当該第2流入部57が第2低気体を冷却器室20に流入させる第2流入量を調節可能な第2バルブ57Bが設けられている。
【0041】
図3に示すように、制御部60は、第1ユニット41において、第1弁体42C、第1ポンプ43、第1センサ47A、第2センサ46A、及び第1バルブ47Bに電気的に接続されており、これらを制御する。また、制御部60は、第2ユニット51において、第2弁体52C、第2ポンプ53、及び第2バルブ57Bに電気的に接続されており、これらを制御する。制御部60は、各種情報等を送受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(central processing unit:CPU)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、各種の情報を記憶する記憶部と、計時機能を有するタイマ等と、を有するマイクロコンピュータを主体として構成されている。制御部60は、各部に対し無線を介して通信可能に接続されていてもよい。
【0042】
続いて、制御部60が各部を制御する態様について、主に
図4に示すフローチャートに沿って説明する。まず、操作部65の入力部等が操作されて主電源が入り、ユニット群40が起動すると、制御部60は、第1取入部42から貯蔵室15の気体(内気)を取り入れる内気取入流路となるように第1弁体42Cを切り替え、第2取入部52から箱体10外の気体(外気)を取り入れる外気取入流路となるように第2弁体52Cを切り替える(S10)。そして、制御部60は、第1ポンプ43及び第2ポンプ53の運転を開始することにより、第1取入部42及び第2取入部52による気体の取り入れを開始する。尚、第1取入部42から内気を取り入れ、第2取入部52から外気を取り入れる運転を、第1モードと呼ぶ。第1モードでは、内気において外気よりも濃度が高い特定の成分(エチレン)が存在する場合、この特定の成分を箱体10外に排出してその濃度を低下させることができる。
【0043】
次に、制御部60は、第1センサ47Aが、第1流入部47を流れる第1高気体からエチレンを検出したか否かを判定する(S20)。制御部60は、第1センサ47Aが第1高気体からエチレンを検出した場合、S30に進み、そうでない場合、S20においてその判定を繰り返す。尚、制御部60は、第1センサ47Aが第1高気体からエチレンの濃度を定量的に検出し、そのエチレン濃度が一定の濃度以上である場合に、第1センサ47Aがエチレンを検出したと判定し、そのエチレン濃度が一定の濃度未満である場合に、第1センサ47Aがエチレンを検出していないと判定してもよい。
【0044】
S30では、制御部60が、第1弁体42Cを内気取入流路から外気取入流路となるように切り替えることで、第1取入部42によって取り入れる気体を、内気から外気に切り替える。また、制御部60は、第2弁体52Cを外気取入流路から内気取入流路となるように切り替えることで、第2取入部52によって取り入れる気体を、外気から内気に切り替える(S40)。尚、制御部60は、第1弁体42Cと第2弁体52Cとを同時に切り替えてもよく、第1弁体42Cの切り替えが終わり、所定時間経過後、第2弁体52Cを切り替えてもよい。また、第1取入部42から外気を取り入れ、第2取入部52から内気を取り入れる運転を、第2モードと呼ぶ。第2モードでは、第1分離部45において低下した分離能力を回復させることができる。
【0045】
さらに、制御部60は、第1流入量が低下するように第1バルブ47Bを締めて調節する(S50)。調節後の第1流入量は、調節前の第1流入量に比して僅かに低下する量でもよく、第1高気体が貯蔵室15に僅かに流入する量でもよく、第1高気体が貯蔵室15に流入しない量でもよい(制御部60が第1バルブ47Bを完全に締めてもよい)。
【0046】
次に、制御部60は、圧力計18によって計測された圧力に基づいて、内気の圧力と外気の圧力とが等しくなるように(圧力差が小さくなるように)、第2バルブ57Bを締める又は開くことで、第2流入量を調節する(S60)。例えば、外気が空気の場合、制御部60は、内気が大気圧に等しくなる(近づく)ように、第2バルブ57Bを調節する。また、外気が任意の気圧の場合、当該任意の気圧の値が操作部65に入力されることで、制御部60は、内気が当該任意の気圧に等しくなる(近づく)ように、第2バルブ57Bを調節する。
【0047】
また、制御部60は、酸素濃度計19によって計測された酸素濃度に基づいて、内気における酸素濃度と外気における酸素濃度とが等しくなるように(濃度差が小さくなるように)、第2バルブ57Bを締める又は開くことで、第2流入量を調節する(S60)。例えば、外気が空気の場合、制御部60は、内気における酸素濃度が大気における酸素濃度に等しくなる(近づく)ように、第2バルブ57Bを調節する。また、外気が任意の酸素濃度である場合、当該任意の酸素濃度の値が操作部65に入力されることで、制御部60は、内気が当該任意の酸素濃度に等しくなる(近づく)ように、第2バルブ57Bを調節する。
【0048】
次に、制御部60は、第2センサ46Aが、第1排出部46を流れる第1低気体からエチレンを検出したか否かを判定する(S70)。制御部60は、第2センサ46Aが第1低気体からエチレンを検出しない場合、S80に進み、そうでない場合、S70においてその判定を繰り返す。尚、制御部60は、第2センサ46Aが第1低気体からエチレンの濃度を定量的に検出し、そのエチレン濃度が一定の濃度以上である場合に、第2センサ46Aがエチレンを検出したと判定し、そのエチレン濃度が一定の濃度未満である場合に、第2センサ46Aがエチレンを検出していないと判定してもよい。
【0049】
S80では、第1弁体42Cを外気取入流路から内気取入流路となるように切り替えることで、第1取入部42によって取り入れる気体を、外気から内気に切り替える。また、制御部60は、第2弁体52Cを内気取入流路から外気取入流路となるように切り替えることで、第2取入部52によって取り入れる気体を、内気から外気に切り替える(S90)。尚、制御部60は、第1弁体42Cと第2弁体52Cとを同時に切り替えてもよく、第1弁体42Cの切り替えが終わり、所定時間経過後、第2弁体52Cを切り替えてもよい。S80及びS90を実行すると、第2モードから第1モードに変更されたこととなる。
【0050】
さらに、制御部60は、第1流入量が上昇するように第1バルブ47Bを開いて調節する(S100)。制御部60は、S50において第1流入量を低下させた分、当該S100において第1流入量を上昇させて、その第1流入量をS50よりも前の量に戻してもよい。
【0051】
次に、制御部60は、圧力計18によって計測された圧力に基づいて、内気の圧力と外気の圧力とが等しくなるように(圧力差が小さくなるように)、第2バルブ57Bを締める又は開くことで、第2流入量を調節する(S110)。また、制御部60は、酸素濃度計19によって計測された酸素濃度に基づいて、内気における酸素濃度と外気における酸素濃度とが等しくなるように(濃度差が小さくなるように)、第2バルブ57Bを締める又は開くことで、第2流入量を調節する(S110)。S110における第2流入量の具体的な調節態様は、S60における第2流入量の調節態様と同様でもよい。
【0052】
続いて、本実施形態の効果について説明する。本実施形態では、箱体10と、第1ユニット41及び第2ユニット51と、を備え、第1ユニット41は、箱体10内の気体を取り入れ可能な第1取入部42と、第1取入部42から取り入れた気体を、第1低気体と第1低気体よりも窒素(第1成分)の濃度が高い第1高気体とに分離する第1分離部45と、第1低気体を箱体10外に排出する第1排出部46と、第1高気体を箱体10内に流入させる第1流入部47と、を備え、第2ユニット51は、箱体10外の気体を取り入れ可能な第2取入部52と、第2取入部52から取り入れた気体を、第2低気体と第2低気体よりも窒素の濃度が高い第2高気体とに分離する第2分離部55と、第2低気体を箱体10内に流入させる第2流入部57と、第2高気体を箱体10外に排出する第2排出部56と、を備える、貯蔵庫1について示した。
【0053】
このような貯蔵庫1によると、第1ユニット41において、第1取入部42から内気を取り入れ、内気のうち窒素の濃度が相対的に高い第1高気体を、箱体10内に流入させつつ、内気のうち窒素以外の成分の濃度が相対的に高い第1低気体を、箱体10外に排出することができる。また、第2ユニット51において、第2取入部52から外気を取り入れ、外気のうち窒素以外の成分の濃度が相対的に高い第2低気体を、箱体10内に流入させつつ、外気のうち窒素の濃度が相対的に高い第2高気体を、箱体10外に排出することができる。これにより、内気において外気よりも濃度が高い特定の成分(第2成分)が存在する場合、この第2成分を箱体10外に排出してその濃度を低下させることができる。また、第1ユニット41と第2ユニット51とが相補的に気体の取り入れ・排出等を行うので、内気と外気との間において、気体の圧力差や第2成分以外の成分の濃度差を小さくすることができる。
【0054】
貯蔵庫1は、第1高気体からエチレン(第2成分)を検出可能な第1センサ47Aと、制御部60と、を備え、第1取入部42は、箱体10内の気体を取り入れることと、箱体10外の気体を取り入れることと、を切り替え可能な構成とされ、制御部60は、第1センサ47Aが第1高気体からエチレンを検出した場合に、第1取入部42によって取り入れる気体を、箱体10内の気体から箱体10外の気体に切り替える。
【0055】
例えば第1分離部45に供給されるエチレンが過多となり、第1分離部45においてその分離能力が低下すると、エチレンが含まれる(エチレンが所定の濃度まで低下していない)第1高気体が箱体10内に流入する可能性がある。特に、第1分離部45における気体の分離方法としてポリイミド膜を使用した膜分離法を採用した場合は、エチレンが分離膜に吸着する速度は速いものの、エチレンが分離膜を透過する速度が遅いことが考えられる。この分離膜に対しエチレンが供給過多となり、吸着したエチレンで分離膜が飽和状態となると、第1分離部45における気体の分離能力が一層低下する虞がある。しかしながら、上記のような貯蔵庫1によると、第1センサ47Aが第1高気体からエチレンを検出した場合に、第1取入部42によって取り入れる気体を、内気から外気に切り替えることで、第1分離部45に外気を送ることができる。仮に、外気にエチレンが含まれない場合(又は内気に比して外気のエチレンの濃度が低い場合)は、この外気を分離膜に通過させることで、分離膜に吸着したエチレンが第1排出部46側に徐々に抜けていき、エチレンを箱体10外へ排出させることできる。これにより、第1分離部45におけるエチレンの供給過多の状態(分離膜がエチレンで飽和した状態)を解消して、その低下した分離能力を回復させることができる。
【0056】
第2取入部52は、箱体10外の気体を取り入れることと、箱体10内の気体を取り入れることと、を切り替え可能な構成とされ、制御部60は、第1センサ47Aが第1高気体からエチレンを検出した場合に、第2取入部52によって取り入れる気体を、箱体10外の気体から箱体10内の気体に切り替える。
【0057】
このような貯蔵庫1によると、第1取入部42によって取り入れる気体が、内気から外気に切り替えられたとしても、第2取入部52によって取り入れる気体を、外気から内気に切り替えることで、第1ユニット41と第2ユニット51とにおける相補関係を維持し、内気と外気との間において、気体の圧力差やエチレン以外の成分の濃度差を小さくすることができる。
【0058】
第1ユニット41は、第1流入部47が第1高気体を箱体10内に流入させる第1流入量を調節可能な第1バルブ47Bを備え、制御部60は、第1センサ47Aが第1高気体からエチレンを検出した場合に、第1流入量が低下するように第1バルブ47Bを調節する。
【0059】
このような貯蔵庫1によると、第1取入部42から取り入れられた外気の一部が箱体10内に流入することで箱体10内の温度が変化してしまうことを抑制することができる。また、第1流入量が低下することにより、エチレンが供給過多となった第1分離部45から第1排出部46を経た箱体10外への気体の排出量を相対的に高くすることができるので、第1分離部45におけるエチレンの供給過多の状態の解消を促進することができる。
【0060】
貯蔵庫1は、箱体10内の気体の圧力を計測する圧力計18を備え、第2ユニット51は、第2流入部57が第2低気体を箱体10内に流入させる第2流入量を調節可能な第2バルブ57Bを備え、制御部60は、圧力計18によって計測された圧力に基づいて、箱体10内の気体の圧力と箱体10外の気体の圧力とが等しくなるように、第2バルブ57Bにおいて第2流入量を調節する。
【0061】
このような貯蔵庫1によると、内気と外気との間に生じる気体の圧力差をより小さくすることができる。また、仮に圧力計18が異常値を示した場合、第1ユニット41と第2ユニット51とが相補的に稼働していない等の異常状態を使用者が知ることができる。
【0062】
貯蔵庫1は、箱体10内の気体から酸素(第3成分)の濃度を検出可能な酸素濃度計19を備え、第2ユニット51は、第2流入部57が第2低気体を箱体10内に流入させる第2流入量を調節可能な第2バルブ57Bを備え、制御部60は、酸素濃度計19によって計測された酸素の濃度に基づいて、箱体10内の気体における酸素の濃度と箱体10外の気体における酸素の濃度とが等しくなるように、第2バルブ57Bにおいて第2流入量を調節する。
【0063】
このような貯蔵庫1によると、内気と外気との間に生じる酸素の濃度差を小さくすることができる。また、仮に酸素濃度計19が異常値を示した場合、第1ユニット41と第2ユニット51とが相補的に稼働していない等の異常状態として使用者が認知することができる。
【0064】
貯蔵庫1は、第1低気体からエチレンを検出可能な第2センサ46Aを備え、制御部60は、第2センサ46Aが第1低気体からエチレンを検出しなくなった場合に、第1取入部42によって取り入れる気体を、箱体10外の気体から箱体10内の気体に切り替える。
【0065】
このような貯蔵庫1によると、第1分離部45におけるエチレンの供給過多の状態が十分に解消され、その低下した分離能力が十分に回復した後に、エチレンを箱体10外に排出する運転を再開することができる。
【0066】
箱体10は、貯蔵対象物を貯蔵可能な貯蔵室15と、貯蔵室15を冷却する冷気を生成する冷却器21が配された冷却器室20と、を備え、第1流入部47は、第1高気体を貯蔵室15に流入させ、第2流入部57は、第2低気体を冷却器室20に流入させる。
【0067】
このような貯蔵庫1によると、第2低気体が貯蔵対象物に直接吹き付けられることを抑制し、実用的な貯蔵庫1を提供することができる。
【0068】
<実施形態2>
次に、本開示の実施形態2を説明する。尚、本実施形態では、上記実施形態と同じ部位には、同一の符号を用い、構造、作用及び効果について重複する説明は省略する。本実施形態では、貯蔵庫201における制御部260(
図3参照)が各部を制御する態様について、
図5のフローチャートに沿って説明する。尚、貯蔵庫201における貯蔵室15には、貯蔵室15の気体(内気)からエチレン(第2成分)を検出可能であって制御部260に電気的に接続された第3センサ(第3検出部)17が設けられている。
【0069】
まず、操作部65の入力部等が操作されて主電源が入り、ユニット群40が起動すると、制御部260は、第3センサ17が、内気からエチレンを検出したか否かを判定する(S200)。制御部260は、第3センサ17が内気からエチレンを検出した場合、S210に進み、そうでない場合、このプログラムを終了する。尚、制御部260は、第3センサ17が内気からエチレンの濃度を定量的に検出し、そのエチレン濃度が一定の濃度以上である場合に、第3センサ17がエチレンを検出したと判定し、そのエチレン濃度が一定の濃度未満である場合に、第3センサ17がエチレンを検出していないと判定してもよい。
【0070】
S210では、制御部260は、上記実施形態1におけるS10からS110と同じ流れで各部の制御を行う、気体取入運転を開始する。例えば、制御部260は、第3センサ17がエチレンを検出した場合に(S200でYES)、気体取入運転を開始し(S210)、第1取入部42から内気を取り入れ、第2取入部52から外気を取り入れ(S10)、S20に進む。制御部260は、S10からS110を実行して、気体取入運転S210を終えた後に、S220に進む。
【0071】
S220では、制御部260は、第3センサ17が、内気からエチレンを検出したか否かを再び判定する。制御部260は、第3センサ17が内気からエチレンを検出した場合、S210に進み、そうでない場合、S230に進む。S230では、制御部260は、第1ユニット41及び第2ユニット51の運転を停止する。具体的には、制御部260は、第1ポンプ43及び第2ポンプ53の運転を停止することにより、第1取入部42及び第2取入部52による気体の取り入れを停止する。
【0072】
このような貯蔵庫201によると、仮に内気にエチレンが存在しない場合(内気と外気との間でエチレンの濃度差がない場合)、第1ユニット41と第2ユニット51の運転を停止させて、省エネルギー化や内気の温度変化の抑制等を実現することができる。
【0073】
<他の実施形態>
本開示は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本開示の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0074】
(1)上記実施形態以外にも、分離部が分離する成分や各検出部が検出する成分は適宜変更可能である。例えば、第1成分が酸素、第3成分が窒素でもよく、第2成分が硫化水素、アルコール、又はアセトアルデヒド等、貯蔵対象物に影響を及ぼす成分であってもよい。
【0075】
(2)制御部は、時間ごとに取り入れる気体を変更するようにユニット群を制御してもよい。例えば、制御部は、所定時間経過が経過するごとに、第1取入部及び第2取入部において取り入れる気体を、内気又は外気に、交互に切り替えることとしてもよい。その場合、貯蔵庫は、第1検出部や第2検出部を備えていなくてもよい。
【0076】
(3)上記実施形態では、貯蔵庫として、観音開き式の扉を備える横型の食材保管庫を例示したか、これに限定されない。貯蔵庫としては、他にも、縦型の冷却貯蔵庫を例示することができる。この縦型の冷却貯蔵庫は、両開き式、片開き式、又はスライド式の扉を備えることとしてもよい。
【符号の説明】
【0077】
1,201…貯蔵庫、10…箱体、15…貯蔵室、17…第3センサ(第3検出部)、18…圧力計、19…酸素濃度計(濃度計)、20…冷却器室、21…冷却器、41…第1ユニット、42…第1取入部、45…第1分離部、46…第1排出部、46A…第2センサ(第2検出部)、47…第1流入部、47A…第1センサ(第1検出部)、47B…第1バルブ、51…第2ユニット、52…第2取入部、55…第2分離部、56…第2排出部、57…第2流入部、57B…第2バルブ、60,260…制御部