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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023012829
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】電磁波透過カバー
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/03 20060101AFI20230119BHJP
   G01S 13/931 20200101ALI20230119BHJP
【FI】
G01S7/03 246
G01S13/931
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021116542
(22)【出願日】2021-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591129508
【氏名又は名称】シライ電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】道家 真一
(72)【発明者】
【氏名】岡田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】中澤 綾香
(72)【発明者】
【氏名】村上 陽香
(72)【発明者】
【氏名】小林 廣史
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AB24
5J070AC02
5J070AC06
5J070AE01
5J070AE09
5J070AF03
5J070AK40
(57)【要約】
【課題】発熱分布の均一化と外観の向上とを両立させる。
【解決手段】電磁波透過カバーとしてのミリ波透過カバー20のヒータフィルム25は、導電性材料により形成された導電部32を備える。導電部32の第1電極部40及び第2電極部45は、ミリ波の透過領域Z1よりも外側であって、同透過領域Z1を挟んで対向する箇所に位置し、対向する方向に対し交差する方向へそれぞれ延びる。導電部32の複数のヒータ線部51,55の各々は、第1端部53,58及び第2端部54,62を有する。ヒータ線部51,55毎の第1端部53,58は第1電極部40に接続され、第2端部54,62は第2電極部45に接続される。第1電極部40及び第2電極部45は、ヒータ線部51,55の線幅よりも大きな線幅を有している。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波を送信及び受信する装置が搭載された乗物に適用され、前記電磁波の送信方向における前記装置の前方に配置され、かつ前記送信方向に複数の層が積層されてなる層構造を有し、複数の前記層の1つがヒータフィルムにより構成された電磁波透過カバーであって、
前記ヒータフィルムは、導電性材料により形成された導電部を備え、
前記導電部は、複数のヒータ線部、第1電極部及び第2電極部を備え、
前記第1電極部及び前記第2電極部は、前記電磁波の透過領域よりも外側であって、同透過領域を挟んで対向する箇所に位置しており、
前記第1電極部及び前記第2電極部が対向する方向を対向方向とし、前記対向方向に対し交差する方向を交差方向とした場合、前記第1電極部及び前記第2電極部はそれぞれ前記交差方向へ延びており、
複数の前記ヒータ線部の各々は、第1端部及び第2端部を有し、
前記ヒータ線部毎の前記第1端部は前記第1電極部に接続され、前記ヒータ線部毎の前記第2端部は前記第2電極部に接続され、
さらに、前記第1電極部及び前記第2電極部は、前記ヒータ線部の線幅よりも大きな線幅を有している電磁波透過カバー。
【請求項2】
前記第1電極部及び前記第2電極部の各々には、前記交差方向へ延びるスリットが形成されている請求項1に記載の電磁波透過カバー。
【請求項3】
複数の前記ヒータ線部のうち、前記交差方向における少なくとも中間部に位置する複数の前記ヒータ線部のそれぞれは、全体が前記対向方向に直線状に延びる直線部により構成され、
前記交差方向における少なくとも中間部に位置する複数の前記ヒータ線部毎の前記直線部は、前記交差方向に互いに平行に離間した状態で前記対向方向に延びている請求項1又は2に記載の電磁波透過カバー。
【請求項4】
前記交差方向における少なくとも中間部に位置する複数の前記ヒータ線部では、前記直線部が前記交差方向に一定間隔毎に形成されている請求項3に記載の電磁波透過カバー。
【請求項5】
前記第1電極部及び前記第2電極部の一方は他方から遠ざかる側へ膨らむように湾曲し、前記他方は前記一方から遠ざかる側へ膨らむように湾曲しており、
複数の前記ヒータ線部のうち、前記交差方向における両側部に位置する前記ヒータ線部は、全体が前記対向方向に直線状に延びる場合よりも長く形成されている請求項3又は4に記載の電磁波透過カバー。
【請求項6】
前記交差方向における両側部に位置する前記ヒータ線部は、
前記第1電極部及び前記第2電極部よりも前記交差方向における外側で前記対向方向に直線状に延びる直線部と、
前記直線部の一方の端部から前記第1電極部に向けて延び、かつ前記第1端部を有する第1延長部と、
前記直線部の他方の端部から前記第2電極部に向けて延び、かつ前記第2端部を有する第2延長部と
により構成され、前記第1延長部は前記第1端部において前記第1電極部に接続され、前記第2延長部は前記第2端部において前記第2電極部に接続されている請求項5に記載の電磁波透過カバー。
【請求項7】
前記導電部は、電力供給のための機器が接続されるプラス端子部及びマイナス端子部をさらに備え、
前記第1電極部は、前記プラス端子部に接続された第1プラス電極部と、前記第1プラス電極部から離間した状態で形成され、かつ前記マイナス端子部に接続された第1マイナス電極部とからなり、
前記第1プラス電極部及び前記第1マイナス電極部は、少なくとも前記交差方向に離間した状態で隣り合っており、
前記第2電極部は、前記第1プラス電極部及び前記第1マイナス電極部の間の中継電極部として、前記第1プラス電極部及び前記第1マイナス電極部に対向し、
一部の前記ヒータ線部の前記第1端部は前記第1プラス電極部に接続され、前記一部の前記ヒータ線部の前記第2端部は前記第2電極部に接続され、残部の前記ヒータ線部の前記第1端部は前記第1マイナス電極部に接続され、前記残部の前記ヒータ線部の前記第2端部は前記第2電極部に接続されている請求項1~6のいずれか1項に記載の電磁波透過カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミリ波等の電磁波を送信及び受信する装置を、電磁波の送信方向における前方から覆う電磁波透過カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
ミリ波等の電磁波を送信及び受信する装置が搭載された車両では、同装置から電磁波が車外へ向けて送信される。先行車両、歩行者等を含む車外の物体に当たって反射された電磁波は、上記装置によって受信される。そして、上記装置は、送信及び受信した電磁波により上記物体を認識し、車両と物体との距離、相対速度等を検出する。
【0003】
上記車両では、電磁波の送信方向における上記装置の前方に、電磁波を透過する電磁波透過カバーが配置される。上記電磁波透過カバーは、上記送信方向に複数の層が積層されてなる層構造を有し、上記装置を上記送信方向における前方から覆う。
【0004】
ここで、上記電磁波透過カバーに氷雪が付着すると電磁波が減衰され、上記装置の検出性能が低下する問題がある。そこで、ヒータフィルムを付加した電磁波透過カバーが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
ヒータフィルムは、導電性材料により形成された導電部を備える。導電部は、電極部と、電極部に接続されたヒータ線部とを備える。ヒータ線部は、互いに離間した状態で配置された複数の直線部と、隣り合う直線部の端部同士を繋ぐ円弧状の連結部とを備える。
【0006】
上記電磁波透過カバーによると、導電部に電力が供給されると、ヒータ線部が発熱する。そのため、電磁波透過カバーに氷雪が付着しても、ヒータ線部が発した熱によって氷雪を融解させ、氷雪の付着に起因する電磁波の減衰を抑制することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第6719506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、上記特許文献1に記載された電磁波透過カバーにおいて、電極部がヒータ線部と同程度の線幅を有していると、電極部が、通電によりヒータ線部と同様に発熱するおそれがある。この場合には、ヒータフィルムのうち発熱させたい領域を均一な発熱分布で発熱させることが難しい。また、上記特許文献1に記載された電磁波透過カバーでは、ヒータ線部の線幅が50μm~70μmと大きいため、ヒータ線部が視認されやすく、外観が低下する問題もある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する電磁波透過カバーは、電磁波を送信及び受信する装置が搭載された乗物に適用され、前記電磁波の送信方向における前記装置の前方に配置され、かつ前記送信方向に複数の層が積層されてなる層構造を有し、複数の前記層の1つがヒータフィルムにより構成された電磁波透過カバーであって、前記ヒータフィルムは、導電性材料により形成された導電部を備え、前記導電部は、複数のヒータ線部、第1電極部及び第2電極部を備え、前記第1電極部及び前記第2電極部は、前記電磁波の透過領域よりも外側であって、同透過領域を挟んで対向する箇所に位置しており、前記第1電極部及び前記第2電極部が対向する方向を対向方向とし、前記対向方向に対し交差する方向を交差方向とした場合、前記第1電極部及び前記第2電極部はそれぞれ前記交差方向へ延びており、複数の前記ヒータ線部の各々は、第1端部及び第2端部を有し、前記ヒータ線部毎の前記第1端部は前記第1電極部に接続され、前記ヒータ線部毎の前記第2端部は前記第2電極部に接続され、さらに、前記第1電極部及び前記第2電極部は、前記ヒータ線部の線幅よりも大きな線幅を有している。
【0010】
上記の構成によれば、電磁波透過カバーの導電部では、第1電極部、複数のヒータ線部及び第2電極部の順に電流が流れると、又はその逆に第2電極部、複数のヒータ線部及び第1電極部の順に電流が流れると、各ヒータ線部が発熱する。
【0011】
ここで、第1電極部及び第2電極部は、電磁波の透過領域よりも外側であって、同透過領域を挟んで対向する箇所に位置し、それぞれ対向方向に対し交差する交差方向へ延びている。複数のヒータ線部の各々は、第1電極部及び第2電極部の間に形成されていて、第1端部において第1電極部に接続され、第2端部において第2電極部に接続されている。このように、複数のヒータ線部は、広い領域に形成されている。そのため、ヒータフィルムの広い領域を発熱させることが可能となる。
【0012】
また、複数のヒータ線部は、第1電極部及び第2電極部に対し並列に接続されていることから、各ヒータ線部に対し同一の電圧が印加される。そのため、各ヒータ線部を均一に発熱させることが可能である。
【0013】
さらに、第1電極部及び第2電極部の各線幅が、ヒータ線部の線幅よりも大きいことから、第1電極部及び第2電極部の各抵抗がヒータ線部の抵抗よりも小さくなる。第1電極部及び第2電極部は、発熱してもヒータ線部ほど発熱しない。従って、ヒータフィルムをヒータ線部によって均一な発熱分布で発熱させることが可能である。
【0014】
また、ヒータ線部を第1電極部及び第2電極部に対し直列に接続する場合よりも、各ヒータ線部の線幅を小さくすることが可能となる。また、ヒータ線部の本数を多くすることで、1本当りのヒータ線部の線幅を小さくすることが可能となる。
【0015】
ヒータ線部の線幅が小さくなるに従い、同ヒータ線部が視認されにくくなり、ヒータフィルムひいては電磁波透過カバーの外観が向上する。
上記電磁波透過カバーにおいて、前記第1電極部及び前記第2電極部の各々には、前記交差方向へ延びるスリットが形成されていることが好ましい。
【0016】
上記の構成によれば、スリットの形成により、スリットが形成されないものに比べ第1電極部及び第2電極部が目立ちにくくなり、外観がさらに向上する。
また、ヒータフィルムのうち、第1電極部及び第2電極部の形成された箇所と、形成されていない箇所、特に第1電極部及び第2電極部とその周りの箇所とで剛性差が小さくなる。従って、ヒータフィルムのうち、第1電極部及び第2電極部の形成された箇所を曲げやすくすることが可能である。
【0017】
上記電磁波透過カバーにおいて、複数の前記ヒータ線部のうち、前記交差方向における少なくとも中間部に位置する複数の前記ヒータ線部のそれぞれは、全体が前記対向方向に直線状に延びる直線部により構成され、前記交差方向における少なくとも中間部に位置する複数の前記ヒータ線部毎の前記直線部は、前記交差方向に互いに平行に離間した状態で前記対向方向に延びていることが好ましい。
【0018】
上記の構成によれば、交差方向における少なくとも中間部に位置する複数のヒータ線部では、隣り合う直線部の間隔が対向方向に均一になる。そのため、上記間隔が上記対向方向に異なる場合に比べ、隣り合う直線部間を上記対向方向に均一な発熱分布で発熱させることが可能である。
【0019】
また、隣り合う直線部の間隔が上記対向方向に異なる場合に比べ、同直線部が視認されにくくなる。
上記電磁波透過カバーにおいて、前記交差方向における少なくとも中間部に位置する複数の前記ヒータ線部では、前記直線部が前記交差方向に一定間隔毎に形成されていることが好ましい。
【0020】
上記の構成によれば、交差方向における少なくとも中間部に位置する複数のヒータ線部では、隣り合う直線部の間隔が交差方向に均一となる。そのため、隣り合う直線部の間隔が交差方向に異なる場合に比べ、ヒータフィルムを交差方向に均一な発熱分布で発熱させることが容易となる。
【0021】
また、複数の直線部が交差方向に均等に配置されることとなり、隣り合う直線部の間隔が交差方向に異なる場合に比べ、ヒータ線部が視認されにくくなる。
上記電磁波透過カバーにおいて、前記第1電極部及び前記第2電極部の一方は他方から遠ざかる側へ膨らむように湾曲し、前記他方は前記一方から遠ざかる側へ膨らむように湾曲しており、複数の前記ヒータ線部のうち、前記交差方向における両側部に位置する前記ヒータ線部は、全体が前記対向方向に直線状に延びる場合よりも長く形成されていることが好ましい。
【0022】
第1電極部及び第2電極部が上記のように湾曲している場合、両電極部の間隔は上記交差方向における中央部で最も広くなる。上記間隔は、上記中央部から上記交差方向へ遠ざかるに従い狭くなる。
【0023】
これに伴い、上記交差方向における中央部では、他の部分よりもヒータ線部の直線部が長くなる。直線部の長さは、上記中央部から上記交差方向へ遠ざかるに従い短くなる。長さが短くなるに従い、ヒータ線部の発熱量が少なくなる。発熱は、上記交差方向における中央部では発熱量が多く、上記中央部から上記交差方向に遠ざかるに従い発熱量が少なくなる分布となる。
【0024】
この点、上記の構成によれば、複数のヒータ線部のうち、上記交差方向における両側部に位置するヒータ線部は、全体が上記対向方向に直線状に延びる場合よりも長く形成される。上記のように長くされることにより、上記両側部におけるヒータ線部の発熱量が多くなる。その分、上記交差方向における発熱分布のばらつきが小さくなる。
【0025】
上記電磁波透過カバーにおいて、前記交差方向における両側部に位置する前記ヒータ線部は、前記第1電極部及び前記第2電極部よりも前記交差方向における外側で前記対向方向に直線状に延びる直線部と、前記直線部の一方の端部から前記第1電極部に向けて延び、かつ前記第1端部を有する第1延長部と、前記直線部の他方の端部から前記第2電極部に向けて延び、かつ前記第2端部を有する第2延長部とにより構成され、前記第1延長部は前記第1端部において前記第1電極部に接続され、前記第2延長部は前記第2端部において前記第2電極部に接続されていることが好ましい。
【0026】
上記の構成によれば、上記交差方向における両側部に位置するヒータ線部は、直線部、第1延長部及び第2延長部により構成される。上記両側部のヒータ線部は、直線部のみにより構成される場合に比べ、第1延長部及び第2延長部の分長くなる。
【0027】
また、第1延長部の形成に伴い、交差方向における第1電極部の長さが短くなる。その分、第1電極部が目立ちにくくなり、外観がさらに向上する。また、第2延長部の形成に伴い、交差方向における第2電極部の長さが短くなる。その分、第2電極部が目立ちにくくなり、外観がさらに向上する。
【0028】
上記電磁波透過カバーにおいて、前記導電部は、電力供給のための機器が接続されるプラス端子部及びマイナス端子部をさらに備え、前記第1電極部は、前記プラス端子部に接続された第1プラス電極部と、前記第1プラス電極部から離間した状態で形成され、かつ前記マイナス端子部に接続された第1マイナス電極部とからなり、前記第1プラス電極部及び前記第1マイナス電極部は、少なくとも前記交差方向に離間した状態で隣り合っており、前記第2電極部は、前記第1プラス電極部及び前記第1マイナス電極部の間の中継電極部として、前記第1プラス電極部及び前記第1マイナス電極部に対向し、一部の前記ヒータ線部の前記第1端部は前記第1プラス電極部に接続され、前記一部の前記ヒータ線部の前記第2端部は前記第2電極部に接続され、残部の前記ヒータ線部の前記第1端部は前記第1マイナス電極部に接続され、前記残部の前記ヒータ線部の前記第2端部は前記第2電極部に接続されていることが好ましい。
【0029】
上記の構成によれば、機器から導電部に電力が供給されると、電流が、プラス端子部、第1プラス電極部、複数のヒータ線部のうち第1プラス電極部に接続されたもの、及び第2電極部の順に流れる。また、電流は、第2電極部、複数のヒータ線部のうち第1マイナス電極部に接続されたもの、第1マイナス電極部、及びマイナス端子部の順に流れる。第1プラス電極部から第2電極部に向かって流れる電流の方向と、第2電極部から第1マイナス電極部に向かって流れる電流の方向とは逆方向である。
【0030】
そのため、電流を複数のヒータ線部の全体に対し満遍なく流れさせることが可能となる。これに伴い、ヒータフィルムを、より均一な発熱分布で発熱させることが可能となる。
【発明の効果】
【0031】
上記電磁波透過カバーによれば、発熱分布の均一化と外観の向上とを両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】電磁波透過カバーを車両用のミリ波透過カバーに具体化した一実施形態において、そのミリ波透過カバーを、フロントグリルの一部とともに示す部分正面図。
図2】同実施形態のミリ波透過カバーをミリ波レーダ装置の一部とともに示す部分平断面図。
図3】同実施形態のヒータフィルムであって、レジスト層が形成される前の状態を示す背面図。
図4図3のA部を拡大して示す部分背面図。
図5図3のB部を拡大して示す部分背面図。
図6図3のC部を拡大して示す部分背面図。
図7図3のD部を拡大して示す部分背面図。
図8図3のE部を拡大して示す部分背面図。
図9図3のF部を拡大して示す部分背面図。
図10図3のG部を拡大して示す部分背面図。
図11図6のH部を拡大して示す部分背面図。
図12図7のI部を拡大して示す部分背面図。
図13図10のJ部を拡大して示す部分背面図。
図14図10のK部を拡大して示す部分背面図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、電磁波透過カバーを車両用のミリ波透過カバーに具体化した一実施形態について、図面を参照して説明する。
なお、以下の記載においては、車両の前進方向を前方とし、後進方向を後方として説明する。また、上下方向は車両の上下方向を意味し、左右方向は車幅方向であって車両の前進時の左右方向と一致するものとする。さらに、図2では、ミリ波透過カバーにおける各部を認識可能な大きさとするために、縮尺を適宜変更して各部を示している。
【0034】
図1及び図2に示すように、車両10の前部の左右方向における中央部分であって、フロントグリル11の後方には、電磁波を送信及び受信する装置として、前方監視用のミリ波レーダ装置13が搭載されている。図2では、ミリ波レーダ装置13の一部のみが図示されている。ミリ波レーダ装置13は、電磁波におけるミリ波を、車外のうち前方へ向けて送信し、かつ、車外の物体に当たって反射されたミリ波を受信する機能を有する。ミリ波とは、波長が1mm~10mmであり、周波数が30GHz~300GHzである電波をいう。
【0035】
なお、本実施形態では、上述したように、ミリ波レーダ装置13が車両10の前方に向けてミリ波を送信することから、ミリ波レーダ装置13によるミリ波の送信方向は、車両10の後方から前方へ向かう方向である。ミリ波の送信方向における前方は、車両10の前方と概ね合致し、同送信方向における後方は車両10の後方と概ね合致する。そのため、以後の記載では、ミリ波の送信方向における前方を単に「前方」、「前」等といい、同送信方向における後方を単に「後方」、「後」等というものとする。
【0036】
上記フロントグリル11の厚みは、一般的なフロントグリルと同様、一定ではない。また、フロントグリル11では、樹脂製基材の表面に金属めっき層が形成されることがある。フロントグリル11は、送信又は反射されたミリ波と干渉するおそれがある。このため、フロントグリル11において、ミリ波の送信方向におけるミリ波レーダ装置13の前方には、窓部12が開口されており、ここにミリ波透過カバー20が配置されている。ミリ波透過カバー20は、ミリ波レーダ装置13を前方から覆っている。
【0037】
ミリ波透過カバー20の主要部は、カバー本体部21によって構成されている。図2では、カバー本体部21の一部のみが図示されている。カバー本体部21は、これを前方から見た形状が、上下方向よりも左右方向の寸法の大きな楕円形状をなしている。カバー本体部21は、その前面が前方を向き、かつ後面が後方を向くように、起立した状態で配置される。カバー本体部21の前面は意匠面22を構成している。
【0038】
カバー本体部21の外周の縁部から内方へ離れた領域の一部は、ミリ波レーダ装置13から送信されるミリ波の透過領域Z1とされている(図3参照)。
カバー本体部21は、前後方向に複数の層が積層されてなる層構造を有している。複数の層は、カバー基材23、ヒータフィルム25及び保護部70を備えている。次に、各層について説明する。
【0039】
<カバー基材23>
カバー基材23は、電磁波透過性としてのミリ波透過性を有する樹脂材料を用いて樹脂成形することによって形成されている。カバー基材23の形成に用いられる樹脂材料は、透明であってもよいし、不透明であってもよい。本実施形態では、カバー基材23は、PC(ポリカーボネート)樹脂によって形成されているが、他の樹脂材料、例えば、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合)樹脂によって形成されてもよい。
【0040】
<ヒータフィルム25>
ヒータフィルム25は、ミリ波透過カバー20に融雪機能を付加するためのものであり、カバー基材23よりも前方に配置されている。ヒータフィルム25は、カバー基材23の前面の形状に対応した形状に賦形されている。ヒータフィルム25は、フィルム基材26、接着層31、導電部32及びレジスト層65を備えている。
【0041】
〈フィルム基材26>
フィルム基材26は、ヒータフィルム25の骨格部分をなす部分である。フィルム基材26は、ミリ波透過性を有し、かつ透明な樹脂材料によって形成されている。本実施形態では、フィルム基材26は、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂によって形成されている。
【0042】
図3は、レジスト層65が形成される前のヒータフィルム25を示している。図2及び図3に示すように、フィルム基材26は、本体部27及び接続部29を備えている。本体部27は、これを前方から見た形状が、カバー本体部21に対応した形状、すなわち、上下方向よりも左右方向の寸法の大きな楕円形状をなしている。本体部27の縁部28における上部28U及び下部28Lは、ミリ波の上記透過領域Z1よりも外側であって、その透過領域Z1を上下方向の両側から挟んで対向する箇所に位置している。
【0043】
ここで、楕円形状をなす本体部27の径方向のうち、中心O(長軸と短軸との交点)に近づく方向を「内方」といい、中心Oから遠ざかる方向を「外方」という。また、本体部27の縁部28に沿う方向を「周方向」というものとする。
【0044】
図10に示すように、接続部29は、電力供給のための機器82が接続される箇所であり、本体部27の縁部28の一部から上記径方向の外方へ延出している。
さらに、図3に示すように、上記下部28Lのうち、本体部27の中心Oの下方となる箇所を、「下部28Lの中央部28C」というものとする。
【0045】
本実施形態では、接続部29は、上記中央部28Cに対し左方へずれた箇所を基点として、上記径方向のうち斜め下左方へ向けて延びている。
<接着層31>
図2に示すように、接着層31は、導電部32をフィルム基材26に接着する機能を有しており、フィルム基材26における本体部27及び接続部29のそれぞれの後面の全面に形成されている。接着層31としては、例えば、OCA(OPTICAL CLEAR ADHESIVE)と呼ばれる透明なフィルム状の光学粘着シートを用いることができる。
【0046】
なお、上記カバー基材23、フィルム基材26及び接着層31における「透明」には、無色透明のほか、着色透明(有色透明)も含まれる。この点は、後述する保護部70の樹脂シート71及び接着層72に関しても同様である。
【0047】
<導電部32>
導電部32は、導電性材料からなる箔、例えば、銅箔、銀箔等によって形成されている。導電部32は、上記接着層31を介してフィルム基材26に接着されている。図3及び図10に示すように、導電部32は、一対の端子部と、第1電極部40及び第2電極部45と、複数のヒータ線部51,55とを備えている。
【0048】
[一対の端子部]
一対の端子部は、上記接続部29の後面に対し、接着層31を介してそれぞれ形成されたプラス端子部33及びマイナス端子部34からなる。
【0049】
図13及び図14に示すように、プラス端子部33及びマイナス端子部34は、互いに平行に離間した状態で配列された複数の第1導線部35と、各第1導線部35に対し交差し、かつ互いに平行に離間した状態で配列された複数の第2導線部36とを備えている。本実施形態では、各第1導線部35と各第2導線部36とが互いに直交している。隣り合う2本の第1導線部35と、隣り合う2本の第2導線部36とによって、正方形の網目が形成されている。プラス端子部33及びマイナス端子部34は、上記網目が縦横に並べられてなる網状をなしている。プラス端子部33及びマイナス端子部34は、互いに本体部27の上記周方向へ離間している。
【0050】
上記接続部29、プラス端子部33及びマイナス端子部34は、ミリ波透過カバー20に組込まれた状態では、図示はしないが、カバー基材23の縁部の下面に沿って後方へ折り曲げられる。
【0051】
図10に示すように、プラス端子部33の延出端部33a及びマイナス端子部34の延出端部34aは、後述するレジスト層65によって被覆されていない。これらの延出端部33a,34aのそれぞれに対しては、図示しないコネクタピンが、はんだ付け、接着、かしめ等の固定手段によって固定される。両延出端部33a,34a及び両コネクタピンは、カバー基材23よりも後方に配置されたソケット部81内に、フィルム基材26における接続部29の一部と一緒に配置される。
【0052】
[第1電極部40及び第2電極部45]
図3及び図10に示すように、第1電極部40及び第2電極部45は、上記本体部27の後面の縁部28に対し、接着層31を介してそれぞれ形成されている。第1電極部40及び第2電極部45は、ミリ波の上記透過領域Z1よりも外側であって、同透過領域Z1を上下方向の両側から挟んで対向する箇所に位置している。第1電極部40は、第1プラス電極部41及び第1マイナス電極部42によって構成されている。
【0053】
図5図7及び図12に示すように、第1プラス電極部41は、下部28Lに沿って略左右方向へ延びている。第1プラス電極部41は、下方へ膨らむように緩やかに湾曲している。第1プラス電極部41は、幅狭部41aと、幅狭部41aよりも線幅の大きな幅広部41bとを備えている。幅狭部41aは、上記中央部28Cの左方近傍から略左方へ延びている。幅広部41bは、上記中央部28Cの左方近傍から略右方へ延びている。
【0054】
図3及び図10に示すように、第1プラス電極部41は、幅狭部41aの左端部において上記プラス端子部33に接続されている。幅広部41bの右端部は、本体部27の右端部の近くに位置している。
【0055】
図7図9及び図10に示すように、第1マイナス電極部42は、下部28Lに沿って略左右方向へ延びている。第1マイナス電極部42は、下方へ膨らむように緩やかに湾曲している。第1マイナス電極部42は、下部28Lに沿う方向における自身の中間部において上記マイナス端子部34に接続されている。図3及び図9に示すように、幅広部42bの左端部は、本体部27の左端部の近くに位置している。
【0056】
図7及び図10に示すように、第1マイナス電極部42において、マイナス端子部34との接続部分よりも右方部分は、線幅の狭い幅狭部42aによって構成されている。幅狭部42aの右端部は、上記中央部28Cから左方へ離れた箇所に位置しており、幅広部41bから左方へ僅かに離間している。第1マイナス電極部42において、マイナス端子部34との接続部分よりも左方部分は、幅狭部42aよりも線幅の大きな幅広部42bによって構成されている。
【0057】
図10及び図12に示すように、第1プラス電極部41の幅狭部41aと、第1マイナス電極部42の幅狭部42aとは、上記径方向に離間した状態で並べられている。
一方、図3及び図6に示すように、第2電極部45は、第1プラス電極部41及び第1マイナス電極部42の間の中継電極部としての機能を有する。第2電極部45は、上記縁部28のうち、透過領域Z1を挟んで下部28Lに対向する箇所である上部28Uに対し、接着層31を介して形成されている。第2電極部45は、上記上部28Uに沿って略左右方向へ延びている。第2電極部45は、上方へ膨らむように緩やかに湾曲している。第2電極部45の線幅は、上部28Uに沿う方向である周方向に均一である。第2電極部45の右端部は、第1プラス電極部41の右端部の上方に位置している。第2電極部45の左端部は、第1マイナス電極部42の左端部の上方に位置している。
【0058】
上記のように、第1電極部40及び第2電極部45は、透過領域Z1を挟んで上下方向に対向している。ここで、本体部27の後面に沿う方向であって、第1電極部40及び第2電極部45が対向する方向を「対向方向」という。また、上記対向方向に対し交差する方向を「交差方向」というものとする。交差方向には、対向方向に対し直交する方向が含まれるほか、斜めに交差する方向も含まれる。本実施形態では、対向方向に対し略直交する方向である略左右方向が交差方向に該当する。
【0059】
図12及び図13に示すように、第1プラス電極部41及び第1マイナス電極部42のそれぞれには、上記下部28Lに沿って上記交差方向へ延びる複数のスリット43が形成されている。各スリット43は、下方へ膨らむように緩やかに湾曲しながら略左右方向へ延びている。スリット43は、下部28Lに沿う方向における第1プラス電極部41及び第1マイナス電極部42のそれぞれの複数箇所に形成されている。下部28Lに沿う方向に互いに隣り合うスリット43は、両スリット43間に設けられた連結部44を隔てて同方向へ離間している。また、スリット43は、上記径方向における第1プラス電極部41及び第1マイナス電極部42のそれぞれの複数箇所に形成されている。上記径方向の複数のスリット43は、互いに同方向に離間している。
【0060】
ここで、スリット43が形成されていないと仮定した場合の幅広部41bの実際の線幅から、全てのスリット43の幅を差し引いた値を、第1プラス電極部41の実質的な線幅とする。同様に、スリット43が形成されていないと仮定した場合の幅広部42bの実際の線幅から、全てのスリット43の幅を差し引いた値を、第1マイナス電極部42の実質的な線幅とする。第1プラス電極部41の実際の線幅及び実質的な線幅は、後述するヒータ線部51,55の線幅よりも大きい。第1マイナス電極部42の実際の線幅及び実質的な線幅についても同様に、ヒータ線部51,55の線幅よりも大きい。
【0061】
図11に示すように、第2電極部45には、上記上部28Uに沿って上記交差方向へ延びる複数のスリット46が形成されている。各スリット46は、上方へ膨らむように緩やかに湾曲しながら略左右方向に延びている。スリット46は、上部28Uに沿う方向における第2電極部45の複数箇所に形成されている。上部28Uに沿う方向に互いに隣り合うスリット46は、両スリット46間に設けられた連結部47を隔てて同方向へ離間している。また、スリット46は、上記径方向における第2電極部45の複数箇所に形成されている。上記径方向の複数のスリット46は、互いに同方向に離間している。
【0062】
ここで、スリット46が形成されていないと仮定した場合の第2電極部45の実際の線幅から、全てのスリット46の幅を差し引いた値を、第2電極部45の実質的な線幅とする。第2電極部45の実際の線幅及び実質的な線幅は、ヒータ線部51,55の線幅よりも大きい。
【0063】
[複数のヒータ線部51,55]
図3に示すように、複数のヒータ線部51,55は、上記交差方向における中間部と、両側部とで異なる形態を採っている。
【0064】
図3及び図7に示すように、上記中間部に位置する複数のヒータ線部51は、全体が、上記対向方向に直線状に延びる直線部52によって構成されている。各直線部52は、上記交差方向へ互いに離間した状態で形成されている。上記交差方向における中央部に位置するヒータ線部51の直線部52は、上記中心O上に位置、又は接近した箇所に位置している。
【0065】
図6及び図7に示すように、各ヒータ線部51は下端部に第1端部53を有し、上端部に第2端部54を有している。ヒータ線部51毎の第1端部53は第1電極部40に接続されている。より詳しくは、一部のヒータ線部51、この場合、上記交差方向における中央部に位置するヒータ線部51と、それよりも右側に位置するヒータ線部51とは、第1端部53において第1プラス電極部41に接続されている。残部のヒータ線部51、この場合、上記交差方向における中央部よりも左側に位置するヒータ線部51は、第1端部53において第1マイナス電極部42に接続されている。
【0066】
これに対し、ヒータ線部51毎の第2端部54は、第2電極部45に接続されている。
図3に示すように、互いに反対方向へ膨らむように湾曲している第1電極部40及び第2電極部45の間隔は、上記交差方向における中央部で最も広くなる。上記間隔は、上記中央部から上記交差方向へ遠ざかるに従い狭くなる。上記交差方向における中央部では、他の部分よりもヒータ線部51の長さが長くなる。ヒータ線部51の長さは、上記中央部から上記交差方向へ遠ざかるに従い短くなる。
【0067】
上記交差方向における両側部に位置するヒータ線部55、本実施形態では、側部毎に2本のヒータ線部55は、全体が上記対向方向に直線状に延びる場合よりも長く形成されている。各ヒータ線部55は、直線部56、第1延長部57及び第2延長部61により構成されている。ヒータ線部55毎の直線部56は、第1電極部40及び第2電極部45よりも上記交差方向における外側で上記対向方向へ直線状に延びている。各直線部56の両端部は、縁部28の下部28L及び上部28Uに位置している。
【0068】
側部毎の両ヒータ線部55の直線部56は、複数のヒータ線部51のいずれの直線部52よりも短い。また、側部毎の両直線部56の長さは、上記交差方向における中央部から遠いものの方が短い。
【0069】
ヒータ線部55毎の第1延長部57は、直線部56の下端部から上記下部28Lに沿って第1電極部40に向けて延びている。各第1延長部57は、下部28Lに対応して下方へ膨らむように緩やかに湾曲しており、第1端部58を有している。第1延長部57毎の第1端部58は、第1電極部40に対し側方から接続されている。同一の側部において隣り合う第1延長部57は、互いに上記径方向に離間している。また、上記両第1延長部57は、上記交差方向における中央部から遠い直線部56に接続されたものの方が長い。
【0070】
ヒータ線部55毎の第2延長部61は、直線部56の上端部から上記上部28Uに沿って第2電極部45に向けて延びている。各第2延長部61は、上部28Uに対応して上方へ膨らむように緩やかに湾曲しており、第2端部62を有している。第2延長部61毎の第2端部62は、第2電極部45に対し側方から接続されている。同一の側部において隣り合う第2延長部61は、互いに上記径方向に離間している。また、上記両第2延長部61は、上記交差方向における中央部から遠い直線部56に接続されたものの方が長い。
【0071】
上記のように第1延長部57及び第2延長部61が付加されることで、上記側部毎の2本のヒータ線部55の全長は、上記交差方向における中央部に位置するヒータ線部51の全長に近付けられている。
【0072】
本実施形態では、複数のヒータ線部51,55における直線部52,56が上記交差方向に一定間隔毎に形成されている。隣り合う直線部52,56の間隔は、上記交差方向に均一である。隣り合う直線部52,56の間隔は、ミリ波の透過性を確保するうえでは2mm以上であることが好ましい。ただし、上記間隔は過大になると、直線部52,56が発した熱が、隣り合う直線部52,56間の中央部分に伝わりにくくなる。そこで、上記間隔は、要求されるミリ波の透過性確保、発熱分布の均一化、抵抗値、意匠性等の観点から総合的に判断されて、設定されている。本実施形態では上記間隔が4mm程度に設定されている。
【0073】
各ヒータ線部51,55の線幅は、10μm程度に設定されている。
なお、本体部27のうち、上記交差方向における両端部分、表現を変えると、ヒータ線部55よりも外側の領域には、ヒータ線部が形成されていない。
【0074】
<レジスト層65>
図2及び図3に示すように、レジスト層65は絶縁材料からなり、導電部32のうち、プラス端子部33の延出端部33aと、マイナス端子部34の延出端部34aとは異なる箇所を被覆することで、同箇所に対し絶縁を施している。両延出端部33a,34aはレジスト層65から露出している。この露出した部分に対し、上述したコネクタピンが導通した状態で固定される。
【0075】
〈ヒータフィルム25の製作について〉
上記の構成を有するヒータフィルム25は、次のようにして製作される。
図2に示すフィルム基材26の後面に上記OCAが貼付けられることによって、接着層31が形成される。
【0076】
接着層31が形成された上記フィルム基材26と、導電性材料からなる箔、ここでは銅箔とが、ローラ等により、互いに接近する側へ押される。箔は、接着層31によりフィルム基材26に貼付けられる。
【0077】
次に、上記箔に対し、パターニング加工が行なわれる。パターニング加工は、フォトリソグラフィ及び光学マスクのプロセスを行なうことで、接着層31上の箔のうち、不要な部分を除去することで、上記導電部32を形成する加工法であり、線幅の小さなヒータ線部51,55の加工も可能である。
【0078】
導電部32のうち、延出端部33a,34aとは異なる箇所の周りにソルダーレレジスト等が塗布されることによってレジスト層65が形成される。
このようにして、フィルム基材26、接着層31、導電部32及びレジスト層65を備えてなるヒータフィルム25が作成される。
【0079】
なお、カバー基材23に対するヒータフィルム25の接合は、例えば、次のようにして行なわれる。ヒータフィルム25が、カバー基材23の前面の形状に対応した形状に賦形される。図2に示すように、ヒータフィルム25の後面にバインダ層67が貼り合わせられる。バインダ層67は、カバー基材23との結合が可能な樹脂材料、例えば、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)樹脂、上記ABS樹脂等によって形成される。
【0080】
バインダ層67が貼られた上記ヒータフィルム25がインサートとして金型内に配置される。金型内のバインダ層67よりも後方に溶融状態の樹脂材料が充填されて、カバー基材23がインサート成形される。この成形の際、バインダ層67に対し、溶融状態の樹脂材料から熱が伝わり、圧力が加わることで、同バインダ層67が接着力を発揮する。カバー基材23とヒータフィルム25との密着性がバインダ層67によって高められる。
【0081】
<保護部70>
保護部70は、樹脂シート71及び接着層72を備えており、シート状をなし、フィルム基材26よりも前方に配置されている。保護部70は、カバー本体部21に対し、前方から飛び石等による衝撃が加わった場合に、その衝撃からヒータフィルム25、特に導電部32を保護する役割を担っている。
【0082】
樹脂シート71は、ミリ波透過性を有する透明な樹脂材料によって形成されている。本実施形態では、樹脂シート71は、PC樹脂によって形成されている。樹脂シート71は、フィルム基材26の前面の形状に対応した形状に賦形されている。
【0083】
接着層72は、上記接着層31と同様、OCAによって形成されている。接着層72は、樹脂シート71をフィルム基材26の前面に対し、密着状態で接着している。
樹脂シート71の前面は、ミリ波透過カバー20の上記意匠面22を構成している。
【0084】
ミリ波透過カバー20は、上記カバー本体部21のほかに取付部(図示略)を備えており、この取付部においてフロントグリル11又は車体に取付けられている。
図10に示すように、さらに、上記ソケット部81に対し、電力供給のための上記機器82のコネクタ83が結合されている。この結合により、プラス端子部33及びマイナス端子部34がコネクタピンを介して機器82に対し電気的に接続されている。
【0085】
次に、上記のように構成された本実施形態の作用について説明する。また、作用に伴い生ずる効果についても併せて説明する。
図2に示すミリ波レーダ装置13からミリ波が送信されると、そのミリ波は、カバー本体部21の上記透過領域Z1における各部を透過する。透過したミリ波は、先行車両、歩行者等を含む車両前方の物体に当たって反射された後、再びカバー本体部21を透過し、ミリ波レーダ装置13によって受信される。ミリ波レーダ装置13は、送信及び受信した上記ミリ波に基づき、物体を認識し、車両10と同物体との距離、相対速度等を検出する。
【0086】
<ミリ波透過性の向上>
(1-1)図3に示すように、複数のヒータ線部51,55において、隣り合う直線部52,56の間隔が4mm程度に設定されている。そのため、ミリ波が隣り合う直線部52,56間を透過しやすい。直線部52,56が、ミリ波の透過の妨げとなりにくい。
【0087】
(1-2)ヒータ線部51,55が太いと、ミリ波がヒータ線部51,55によって反射されて減衰する。この点、本実施形態では、各ヒータ線部51,55の線幅が10μm程度に設定されている。そのため、ヒータ線部の線幅が50μm~70μmである特許文献1に比べ、ヒータ線部51,55でのミリ波の反射が抑制され、ミリ波が透過しやすい。この点でも各ヒータ線部51,55が、ミリ波の透過の妨げとなりにくい。
【0088】
(1-3)第1プラス電極部41、第1マイナス電極部42及び第2電極部45が、ミリ波の透過領域Z1よりも外側に位置している。そのため、第1プラス電極部41、第1マイナス電極部42及び第2電極部45のそれぞれの線幅は、ヒータ線部51,55の線幅よりも大きいが、ミリ波の透過の妨げとなりにくい。
【0089】
上記(1-1)~(1-3)により、本実施形態では、ヒータフィルム25の付加に伴うミリ波の透過性低下を抑制できる。
ここで、図1に示すカバー本体部21の意匠面22に氷雪が付着するとミリ波が減衰され、ミリ波レーダ装置13の検出性能が低下する。この点、本実施形態では、図10に示す機器82から電力が導電部32に供給される。
【0090】
図3に示す導電部32では、電流が、プラス端子部33、第1プラス電極部41、複数のヒータ線部51,55のうち第1プラス電極部41に接続されていて本体部27の右側部分に位置するもの、及び第2電極部45の順に流れる。また、電流は、第2電極部45、複数のヒータ線部51,55のうち第1マイナス電極部42に接続されていて本体部27の左側部分に位置するもの、第1マイナス電極部42、及びマイナス端子部34の順に流れる。
【0091】
各ヒータ線部51,55は、電流が流れることで発熱する。各ヒータ線部51,55が発した熱の一部は、図2において、接着層31、フィルム基材26及び保護部70を介して意匠面22に伝達される。この熱により、意匠面22に付着している氷雪が融解される。氷雪によるミリ波の減衰を抑制し、氷雪の付着が原因でミリ波レーダ装置13の検出性能が低下するのを抑制できる。
【0092】
<発熱分布の均一性向上>
(2-1)図3に示すように、第1電極部40及び第2電極部45は、それぞれ本体部27の縁部28の後方であって、互いに上下方向に対向する箇所に形成されている。第1電極部40及び第2電極部45の各右端部は、本体部27の右端部の近くに位置している。第1電極部40及び第2電極部45の各左端部は、本体部27の左端部の近くに位置している。さらに、複数のヒータ線部51,55の各々は、第1電極部40及び第2電極部45の間に形成されていて、第1端部53,58において第1電極部40に接続され、第2端部54,62において第2電極部45に接続されている。このように、複数のヒータ線部51,55は、フィルム基材26の広い領域に形成されている。そのため、ヒータフィルム25の広い領域を発熱させることができる。
【0093】
(2-2)また、複数のヒータ線部51,55は、第1電極部40及び第2電極部45に対し並列に接続されていることから、各ヒータ線部51,55に対し同一の電圧が印加される。そのため、各ヒータ線部51,55を均一に発熱させることができる。
【0094】
(2-3)さらに、第1電極部40及び第2電極部45の各々について、実際の線幅及び実質的な線幅が、ヒータ線部51,55の線幅よりも大きいことから、第1電極部40及び第2電極部45の各抵抗がヒータ線部51,55の抵抗よりも小さくなる。これに伴い、第1電極部40及び第2電極部45が発熱しても、ヒータ線部51,55ほど発熱しない。従って、ヒータフィルム25をヒータ線部51,55によって均一な発熱分布で発熱させることがより容易になる。
【0095】
(2-4)本実施形態では、隣り合う直線部52,56が、上記交差方向に互いに平行に離間した状態で対向方向へ延びている。隣り合う直線部52,56の間隔が上記対向方向に均一になる。そのため、上記間隔が上記対向方向に異なる場合に比べ、隣り合う直線部52,56間を上記対向方向に均一な発熱分布で発熱させることができる。
【0096】
(2-5)本実施形態では、直線部52,56が、上記交差方向に一定間隔毎に形成されている。そのため、隣り合う直線部52,56の間隔が上記交差方向に均一となる。従って、上記間隔が上記交差方向に異なる場合に比べ、ヒータフィルム25を上記交差方向に均一な発熱分布で発熱させることが容易となる。
【0097】
(2-6)第1電極部40及び第2電極部45が、互いに遠ざかる側へ膨らむように湾曲している。そのため、複数の直線部52,56のうち、上記交差方向における中央部に位置するものが最長となる。直線部52,56の長さは、上記中央部から上記交差方向へ遠ざかるに従い短くなる。長さが短くなるに従い、直線部52,56の発熱量が少なくなる。発熱は、上記交差方向における中央部では発熱量が多く、上記中央部から上記交差方向に遠ざかるに従い発熱量が少なくなる分布となる。
【0098】
この点、本実施形態では、上記交差方向における両側部に位置するヒータ線部55が、直線部56、第1延長部57及び第2延長部61により構成される。上記両側部のヒータ線部55は、直線部56のみにより構成される場合に比べ、すなわち、全体が上記対向方向に直線状に延びる場合よりも、第1延長部57及び第2延長部61の分長くなる。
【0099】
上記のように長くされることにより、ヒータ線部55の発熱量が多くなる。その分、上記交差方向における発熱分布のばらつきを小さくできる。
また、本実施形態では、ヒータ線部55の全長が、上記交差方向における中央部に位置していて最も長いものの長さに近付けられている。そのため、上記発熱分布のばらつきをより小さくすることができる。
【0100】
特に、上述したように、ヒータ線部55のうち、上記交差方向における中央部から遠いものほど直線部56が短くなる。しかし、ヒータ線部55のうち、上記交差方向における中央部から遠いものほど第1延長部57及び第2延長部61が長くなる。そのため、いずれのヒータ線部55についても、全長を、最も長いヒータ線部51の長さに近付けることができる。
【0101】
(2-7)本体部27の右半分では、電流を第1電極部40からヒータ線部51,55によって第2電極部45に向けて流れさせることができる。本体部27の左半分では、電流を第2電極部45からヒータ線部51,55によって第1電極部40に向けて流れさせることができる。
【0102】
そのため、電流を複数のヒータ線部51,55の全体に対し満遍なく流れさせることができる。ヒータフィルム25を、より均一な発熱分布で発熱させることができる。
ところで、図2に示すミリ波透過カバー20に対し車両10の前方から可視光が照射されると、その可視光は、透明な保護部70を透過し、ヒータフィルム25に照射される。可視光はフィルム基材26の本体部27を透過する。第1電極部40、第2電極部45及びヒータ線部51,55の形成されていない箇所に照射された可視光は透過する。第1電極部40、第2電極部45及びヒータ線部51,55に照射された可視光は、反射される。
【0103】
<ミリ波透過カバー20の外観向上>
(3-1)上記(2-2)で説明したように、複数のヒータ線部51,55が第1電極部40及び第2電極部45に対し並列に接続されている(図3参照)。このことから、ヒータ線部51,55を第1電極部40及び第2電極部45に対し直列に接続する場合よりも、各ヒータ線部51,55の線幅を小さくすることが可能となる。また、ヒータ線部51,55の本数を多くすることで、1本当りのヒータ線部51,55の線幅を小さくすることが可能となる。
【0104】
ヒータ線部51,55の線幅が小さくなるに従い、同ヒータ線部51,55が視認されにくくなる。そのため、ヒータフィルム25ひいてはミリ波透過カバー20の外観向上を図ることができる。
【0105】
(3-2)図3に示すように、第1プラス電極部41、第1マイナス電極部42及び第2電極部45は、本体部27の縁部28に形成されているため、同縁部28よりも径方向の内方に形成された場合よりも目立ちにくい。そのため、ミリ波透過カバー20の外観が一層向上する。
【0106】
(3-3)本実施形態では、図11図13に示すように、第1電極部40及び第2電極部45の各々に対し、縁部28に沿って上記交差方向へ延びるスリット43,46が形成されている。スリット43,46が形成されないものに比べ、第1電極部40及び第2電極部45が目立ちにくくなる。そのため、この点においても、ミリ波透過カバー20の外観がさらに向上する。
【0107】
(3-4)図3に示すように、隣り合う直線部52,56が、上記交差方向に互いに平行に離間した状態で上記対向方向に延びている。隣り合う直線部52,56の間隔が上記対向方向に均一になる。そのため、上記間隔が上記対向方向に異なる場合に比べ、直線部52,56が視認されにくくなる。そのため、この点においても、ミリ波透過カバー20の外観が向上する。
【0108】
(3-5)図3に示すように、複数の直線部52,56が上記交差方向に一定間隔毎に形成されている。そのため、複数の直線部52,56が上記交差方向に均等に配置されることとなり、隣り合う直線部52,56の間隔が交差方向に異なる場合に比べ、同直線部52,56が視認されにくくなる。この点においても、ミリ波透過カバー20の外観が向上する。
【0109】
(3-6)図3に示すように、上記交差方向における両側部に位置するヒータ線部55は、直線部56、第1延長部57及び第2延長部61により構成される。第1延長部57は、直線部56の下端部から第1電極部40に向けて延びている。第2延長部61は、直線部56の上端部から第2電極部45に向けて延びている。
【0110】
そのため、第1延長部57の形成に伴い第1電極部40が短くなり、その分、第1電極部40が目立ちにくくなり、外観がさらに向上する。また、第2延長部61の形成に伴い第2電極部45が短くなり、その分、第2電極部45が目立ちにくくなり、外観がさらに向上する。
【0111】
本実施形態によると、上記以外にも、次の効果が得られる。
(4-1)仮に、第1電極部40にスリット43が形成されず、第2電極部45にスリット46が形成されていないと、次の現象が起こるおそれがある。それは、ヒータフィルム25のうち、第1電極部40及び第2電極部45が形成されている箇所と、形成されていない箇所との剛性差が大きくなることである。ヒータフィルム25のうち、第1電極部40及び第2電極部45が形成されている箇所を、曲げ変形させにくい。
【0112】
この点、本実施形態では、図11図13に示すように、第1電極部40には、下部28Lに沿って上記交差方向へ延びるスリット43が形成され、第2電極部45には、上部28Uに沿って上記交差方向へ延びるスリット46が形成されている。
【0113】
そのため、ヒータフィルム25のうち、第1電極部40及び第2電極部45の形成された箇所と、形成されていない箇所、特に第1電極部40及び第2電極部45とその周りの箇所との剛性差が小さくなる。
【0114】
従って、ヒータフィルム25のうち、第1電極部40及び第2電極部45の形成された箇所を曲げやすくすることができる。
(4-2)仮に、ヒータ線部51,55を、第1プラス電極部41及び第1マイナス電極部42に対し、直列に接続した場合、ヒータ線部51,55は、例えば次のような構成となる。すなわち、ヒータ線部51,55は、複数の直線部と、隣り合う直線部の端部同士を連結する円弧状の連結部とによって構成される。
【0115】
ただし、この場合には、連結部をカバー本体部21の縁部28から径方向の内方へ離れた箇所に形成せざるを得ず、その分、発熱できる領域が小さくなる。
この点、本実施形態では、図3に示すように、第1プラス電極部41、第1マイナス電極部42及び第2電極部45を本体部27の縁部28の後方に形成している。ヒータ線部51の直線部52を下部28Lまで延ばして、第1電極部40に接続するとともに、上部28Uまで延ばして第2電極部45に接続している。
【0116】
また、ヒータ線部55の直線部56を下部28Lまで延ばして、同下部28Lに沿って延びる第1延長部57を介して第1電極部40に接続している。直線部56を上部28Uまで延ばして、同上部28Uに沿って延びる第2延長部61を介して第2電極部45に接続している。
【0117】
このように、直線部52,56が、下部28L及び上部28Uまで延びているため、上記のように直列に接続する場合に比べ、発熱できる領域が大きくなる。
(4-3)図10図13及び図14に示すように、本実施形態では、プラス端子部33及びマイナス端子部34を網状に形成している。
【0118】
そのため、外部から力を受けたときにプラス端子部33及びマイナス端子部34が撓んだり変形したりしやすい。従って、上記力を受けることで、プラス端子部33及びマイナス端子部34が割れ等を生ずるのを抑制できる。
【0119】
なお、上記実施形態は、これを以下のように変更した変形例として実施することもできる。上記実施形態及び以下の変形例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0120】
<カバー本体部21の形状について>
図1において、カバー本体部21を前方から見た形状が、上記実施形態とは異なる形状、例えば、円形、多角形等に変更されてもよい。
【0121】
<ヒータフィルム25の層構成について>
図2において、接着層31がフィルム基材26の前面に形成され、導電部32が接着層31の前面に形成されてもよい。この場合、フィルム基材26は、透明でない樹脂材料によって形成されてもよい。
【0122】
<接続部29の位置について>
図3及び図10において、接続部29が、本体部27の縁部28であって、上記実施形態とは異なる箇所、例えば、上部、側部、下部等から延出されてもよい。
【0123】
接続部29が、上記中央部28Cから下方へ延出される場合には、第1プラス電極部41に幅狭部41aが不要となり、第1マイナス電極部42に幅狭部42aが不要となる。第1プラス電極部41と第1マイナス電極部42とが上記径方向に隣接せず、下部28Lに沿う方向(周方向)にのみ隣接する。
【0124】
<第1電極部40及び第2電極部45について>
図3において、第1電極部40及び第2電極部45が、透過領域Z1よりも外側であることを条件に、上下方向とは異なる方向に対向した状態で配置されてもよい。例えば、第1電極部40及び第2電極部45が、左右方向に対向した状態で配置されてもよいし、鉛直線又は水平線に対し斜めに交差する線に沿う方向に対向した状態で配置されてもよい。
【0125】
これらの場合、上記変更に伴い、ヒータ線部51,55の直線部52,56が延びる方向も、上記対向方向に変更されてもよい。
・上記実施形態とは逆に、第1電極部40における右側部分が第1マイナス電極部42によって構成され、左側部分が第1プラス電極部41によって構成されてもよい。これに伴い、マイナス端子部34が接続部29の右側部分に設けられ、プラス端子部33が接続部29の左側部分に設けられる。
【0126】
この場合には、電流の流れ方向が上記実施形態とは逆になる。すなわち、ヒータフィルム25の左半分では、電流が第1電極部40から第2電極部45に向けて流れ、ヒータフィルム25の右半分では、電流が第2電極部45から第1電極部40に向けて流れる。
【0127】
図12及び図13において、第1プラス電極部41及び第1マイナス電極部42の少なくとも一方におけるスリット43が省略されてもよい。
同様に、図11において、第2電極部45のスリット46が省略されてもよい。
【0128】
・本体部27の縁部28の一部が直線状に形成され、縁部28のうち、上記一部に対向する箇所が、同一部から遠ざかる側へ膨らむように湾曲させられてもよい。
この場合、第1電極部40及び第2電極部45の形状も変更される。すなわち、第1電極部40及び第2電極部45の一方が直線状に形成され、他方が上記一方から遠ざかる側へ膨らむように湾曲する形状に形成される。
【0129】
<ヒータ線部51,55について>
・ヒータ線部51,55の直線部52,56は、上記対向方向に対し傾斜する方向へ延びてもよい。
【0130】
・側部毎のヒータ線部55の数が、上記実施形態とは異なる数に変更されてもよい。最小の数は0である。この変更に伴い、ヒータ線部51,55の総数が変化する。
ヒータ線部51,55の総数が変わらないという条件のもとで、ヒータ線部55の数が変更された場合、変更の対象となったヒータ線部55は、ヒータ線部51に置き換えられる。
【0131】
・ヒータ線部55の長さが、上記実施形態とは異なる手法で長くされてもよい。
図4及び図5において二点鎖線で示す変形例では、ヒータ線部55の直線部56が、上記交差方向の両方向へ振れながら、表現を変えると、蛇行しながら、上記対向方向へ延びる非直線部85に変更されている。
【0132】
また、図8及び図9において二点鎖線で示す変形例では、ヒータ線部55の直線部56が、上記交差方向へ繰り返し折れ曲がった、いわゆるジグザグ状の非直線部86に変更されている。
【0133】
上記いずれの変形例でも、非直線部85,86は直線部56よりも長くなる。
なお、上記のように、ヒータ線部55に非直線部85,86が設定される場合、ミリ波の透過性と外観に及ぼす影響が僅かですむように、設計されることが望ましい。
【0134】
また、上記設計に際しては、非直線部85,86を有するヒータ線部55の長さが、複数のヒータ線部51のうち、最も長いもの、すなわち、交差方向における中央部に位置するものの長さに近づくように設計がなされることが望ましい。
【0135】
上記のようにヒータ線部55が非直線部85,86を有することで、ミリ波透過カバー20の使用時に、カバー本体部21に対し、外部から上記対向方向における外方へ向かう力が加わった場合に、次の効果が期待できる。すなわち、上記の力により、非直線部85,86が引っ張られて変形する。しかし、非直線部85,86は伸びきった状態となりにくく、同非直線部85,86に過大なテンションが加わるのを抑制できる。
【0136】
図8及び図9において、第1延長部57及び第2延長部61の少なくとも一方が、円弧状に代えて直線状に形成されてもよい。
・第1延長部57及び第2延長部61の少なくとも一方についても、上記非直線部85,86と同様に、蛇行状又はジグザグ状に形成されてもよい。
【0137】
・ヒータ線部51についても、ヒータ線部55の非直線部85,86と同様に、直線部52が、蛇行状又はジグザグ状をなす非直線部に変更されてもよい。
・発熱分布の均一化のためには、直線部52,56間の間隔が、交差方向における中央部で最大となり、同中央部から遠ざかるに従い小さくされてもよい。
【0138】
また、上記交差方向における中間部では、上記間隔が同方向に一定にされ、上記交差方向における側部では、上記中間部よりも上記間隔が小さくされてもよい。
<導電部32の全体について>
・導電部32は、めっきにより形成された銅、銀等の金属皮膜を、エッチングによりパターニングして形成されたものであってもよい。
【0139】
<ミリ波透過カバー20の層構造について>
ミリ波透過カバー20は、ヒータフィルム25を含む複数の層が前後方向に積層された層構造を有する。この層構造における層の構成が、例えば、下記のように変更されてもよい。
【0140】
・フィルム基材26が、導電部32等を保護するうえで十分な厚みを有している場合、保護部70を省略可能である。
・レジスト層65が必要でなければ、同レジスト層65がバインダ層67によって形成されてもよい。表現を変えると、図2中、レジスト層65及びバインダ層67で図示されている箇所が、バインダ層67のみによって構成されてもよい。
【0141】
・バインダ層67は、ヒータフィルム25の後側にカバー基材23を樹脂成形する際に、ヒータフィルム25にカバー基材23に接着する接着層として設けられている。同様の接着層は、上記OCAによっても形成可能である。この場合、上記レジスト層65及びバインダ層67がOCAに置き換えられてもよい。
【0142】
・層構造においてヒータフィルム25とは異なる層の数が、上記実施形態とは異なる数に変更されてもよい。
・機能付加のために新たな層が追加されてもよい。
【0143】
ヒータフィルム25よりも前側に層が追加される場合、その層は、車両10の外部から同層を通してヒータフィルム25が透けて見えるようにするために、透明な樹脂材料によって形成される。
【0144】
ヒータフィルム25よりも後側に層が追加される場合、その層は、透明であってもよいし不透明であってもよい。
<その他>
・上記ミリ波透過カバー20は、車両10のエンブレム、オーナメント、マーク等に具体化することができる。
【0145】
・上記電磁波透過カバーは、車外の物体を検出するための電磁波を送信及び受信する装置が搭載された車両であれば適用可能である。この場合、装置が送信及び受信する電磁波には、ミリ波のほかにも、近赤外線等の電磁波が含まれる。
【0146】
・車外の物体を検出するための電磁波を送信及び受信する装置は、前方監視用以外にも、後方監視用、前側方監視用、又は後側方監視用の装置であってもよい。この場合、電磁波透過カバーは、電磁波の送信方向における上記装置の前方に配置される。
【0147】
・電磁波透過カバーは、電磁波を送信及び受信する装置が、車両とは異なる種類の乗物、例えば、航空機、船舶等の乗物に搭載された場合にも適用可能である。
【符号の説明】
【0148】
10…車両(乗物)
13…ミリ波レーダ装置(装置)
20…ミリ波透過カバー(電磁波透過カバー)
25…ヒータフィルム
32…導電部
33…プラス端子部
34…マイナス端子部
40…第1電極部
41…第1プラス電極部
42…第1マイナス電極部
43,46…スリット
45…第2電極部
51,55…ヒータ線部
52,56…直線部
53,58…第1端部
54,62…第2端部
57…第1延長部
61…第2延長部
82…機器
Z1…透過領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14