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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128295
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】採取キット及び採取方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20230907BHJP
   G01N 1/00 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
C12M1/00 A
G01N1/00 101K
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022032548
(22)【出願日】2022-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】小林 岳聖
(72)【発明者】
【氏名】片桐 麻友
(72)【発明者】
【氏名】丸田 千明
【テーマコード(参考)】
2G052
4B029
【Fターム(参考)】
2G052AA30
2G052AD26
2G052AD46
2G052CA20
2G052GA29
2G052JA09
4B029AA09
4B029BB11
4B029BB20
4B029HA05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】培養ボトルに採取する液体試料の量に過不足を生じさせにくく、また、使用者が誤って空気を混入させるリスクが抑えられた採取キットおよび採取方法を提供する。
【解決手段】採取キット10は、接続用チューブ12と、第1チャンバ室52及び第2チャンバ室54、を有するシリンジ14と、培養ボトルが接続可能なサンプリング用ホルダ16と、を備え、第1チャンバ室52と第2チャンバ室54とは、シリンジ14の幅方向に並列に配置され、シリンジ14は、ノズル46と、第1チャンバ室52及び第2チャンバ室54のいずれか一方をノズル46に選択的に連通させる切換機構24を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体試料を収容した医療用バッグが接続可能な接続用チューブと、
前記医療用バッグからの所定量の前記液体試料を収容する第1チャンバ室と、前記所定量の前記液体試料を収容する第2チャンバ室と、を有するシリンジと、
培養ボトルが接続可能なサンプリング用ホルダと、
前記接続用チューブと、前記シリンジと、前記サンプリング用ホルダと、を接続する流路接続部材と、を備え、
前記第1チャンバ室と前記第2チャンバ室とは、前記シリンジの幅方向に並列に配置され、
前記シリンジは、前記液体試料が流通するノズルと、
前記第1チャンバ室及び前記第2チャンバ室のいずれか一方を前記ノズルに選択的に連通させる切換機構と、を備える、採取キット。
【請求項2】
請求項1記載の採取キットであって、前記シリンジは、
前記第1チャンバ室の基端を閉塞する第1ガスケットと、
前記第1ガスケットに接続された第1プランジャと、
前記第2チャンバ室の基端を閉塞する第2ガスケットと、
前記第2ガスケットに接続された第2プランジャと、
を備える、採取キット。
【請求項3】
請求項1又は2記載の採取キットであって、前記シリンジは、軸線方向に延在し前記シリンジの内部を前記第1チャンバ室と前記第2チャンバ室とに仕切る仕切壁を有する、採取キット。
【請求項4】
請求項3記載の採取キットであって、前記切換機構は、前記第1チャンバ室及び前記第2チャンバ室の先端を閉塞する回動部材を有し、
前記回動部材は前記仕切壁に液密に当接しつつ回動する摺動面と、
回動位置に応じて前記第1チャンバ室又は前記第2チャンバ室と前記ノズルとを連通させる貫通孔と、を有する、採取キット。
【請求項5】
請求項4記載の採取キットであって、前記切換機構は、前記回動部材の外側部を露出させた操作部を有する、採取キット。
【請求項6】
請求項4記載の採取キットであって、前記切換機構は、前記回動部材の回転中心方向に延在するシャフトを有し、前記シャフトが前記シリンジの外方に露出した操作部を有する、採取キット。
【請求項7】
請求項6記載の採取キットであって、前記シャフトは前記仕切壁の内部を貫通して基端側に延在する、採取キット。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の採取キットを用いた採取方法であって、
前記接続用チューブに前記医療用バッグを接続するバッグ接続工程と、
前記シリンジの前記第1チャンバ室に前記所定量の前記液体試料を収容する第1収容工程と、
前記シリンジの前記第2チャンバ室に前記所定量の前記液体試料を収容する第2収容工程と、
前記医療用バッグを前記接続用チューブから切り離すバッグ分離工程と、
前記サンプリング用ホルダに好気培養ボトルを接続して前記第1チャンバ室の前記液体試料を前記好気培養ボトルに採取する第1採取工程と、
前記サンプリング用ホルダに嫌気培養ボトルを接続して前記第2チャンバ室の前記液体試料を前記嫌気培養ボトルに採取する第2採取工程と、
を有する、採取方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液製剤を検査用に採取する採取キット及び採取方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血液製剤の安全性を担保するために、血液製剤の出荷前に少量の液体試料を採取して培養検査が行われる。培養検査は、所定量の液体試料(血液製剤)を培養ボトルに採取し、培養ボトルを細菌の増殖に好適な30~40℃の温度環境で所定期間保管し、その後、培養ボトルの中の細菌の増殖を確認する。
【0003】
培養ボトルへの液体試料の採取には、専用の採取キットが用いられる。例えば、特許文献1は、血液バッグから液体試料を採取するための採取キットを開示する。この採取キットは、サンプル採取管に予め所定量の液体試料を採取する。次に、そのサンプル採取管の標線で液体試料の移送量を確認しながら、培養ボトルに液体試料を移送する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第8777921号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の採取キットは、培養ボトルの負圧による吸引で採取ボトルの液体試料の液面が素早く変化する。そのため、経験が浅い作業者は、一定量の液体試料を培養ボトルに計り採ることが難しく、培養ボトルに採取する液体試料の量に過不足を生じさせることがある。また、従来の採取キットでは、嫌気培養ボトルへの液体試料の移送の際に、使用者が誤って空気を混入させるリスクがある。
【0006】
本発明は、上記した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下の開示の一観点は、液体試料を収容した医療用バッグが接続可能な接続用チューブと、前記医療用バッグからの所定量の前記液体試料を収容する第1チャンバ室と、前記所定量の前記液体試料を収容する第2チャンバ室と、を有するシリンジと、培養ボトルが接続可能なサンプリング用ホルダと、前記接続用チューブと、前記シリンジと、前記サンプリング用ホルダと、を接続する流路接続部材と、を備え、前記第1チャンバ室と前記第2チャンバ室とは、前記シリンジの幅方向に並列に配置され、前記シリンジは、前記液体試料が流通するノズルと、前記第1チャンバ室及び前記第2チャンバ室のいずれか一方を前記ノズルに選択的に連通させる切換機構と、を備える、採取キットにある。
【0008】
別の一観点は、上記観点の採取キットを用いた採取方法であって、前記接続用チューブに前記医療用バッグを接続するバッグ接続工程と、前記シリンジの前記第1チャンバ室に前記所定量の前記液体試料を収容する第1収容工程と、前記シリンジの前記第2チャンバ室に前記所定量の前記液体試料を収容する第2収容工程と、前記医療用バッグを前記接続用チューブから切り離すバッグ分離工程と、前記サンプリング用ホルダに好気培養ボトルを接続して前記第1チャンバ室の前記液体試料を前記好気培養ボトルに採取する第1採取工程と、前記サンプリング用ホルダに嫌気培養ボトルを接続して前記第2チャンバ室の前記液体試料を前記嫌気培養ボトルに採取する第2採取工程と、を有する、採取方法にある。
【発明の効果】
【0009】
上記観点の採取キット及び採取方法は、経験が浅い作業者であっても正確な量の液体試料を培養ボトルに計り採ることができる。また、上記観点の採取キット及び採取方法は、嫌気培養ボトルへの液体試料の移送の際に、使用者が誤って空気を混入させるリスクを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1実施形態に係る採取キットの構成図である。
図2図2Aは、図1のシリンジの縦断面図であり、図2Bは、図1のシリンジの先端付近の分解斜視図である。
図3図3Aは、図1のシリンジのバレル本体の斜視図であり、図3Bは、図1のシリンジの第1プランジャ組立体及び第2プランジャ組立体を示す斜視図である。
図4図4Aは、図1の採取キットを用いた採取方法のバッグ接続工程の説明図であり、図4Bは第1収容工程におけるシリンジの動作説明図である。
図5図5Aは、第2収容工程の説明図であり、図5Bは、バッグ分離工程の説明図である。
図6図6Aは、第1採取工程の説明図であり、図6Bは第2採取工程の説明図である。
図7図7Aは、第2実施形態に係るシリンジの断面図であり、図7B図7Aのシリンジの基端付近の斜視図である。
図8図8Aは、第3実施形態に係るシリンジの先端付近の断面図であり、図8Bは、図8Aのシリンジの先端付近の斜視図である。
図9図9は、図1のシリンジの変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
図1に示す本実施形態に係る採取キット10は、例えば、血液製剤を製造する血液センター等の事業所で使用される。具体的には、採取キット10は、血液製剤の安全性を確認するための培養試験に用いられる。培養試験は、嫌気性菌の培養及び好気性菌の培養を行う。したがって、培養試験には、好気培養と嫌気培養とのそれぞれに用いる培養ボトル90(図6A図6B参照)が用いられる。採取キット10は、液体試料として、例えば血小板製剤を採取し、所定量(例えば、8ml又は10ml)ずつ好気培養ボトル92(図6A)及び嫌気培養ボトル94(図6B)に採取するために使用される。
【0012】
図1に示すように採取キット10は、接続用チューブ12と、シリンジ14と、サンプリング用ホルダ16と、流路接続部材18と、を備える。接続用チューブ12は、例えば、塩化ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂よりなる半透明の医療用チューブである。接続用チューブ12は、無菌接合装置を使用することで、内部を外気に曝すことなく他の医療用チューブとの接続を行うことができる。また、接続用チューブ12は、チューブシーラーを使用することで、内部を外気に曝すことなく他の医療用チューブからの分離と端部の封止を行える。
【0013】
接続用チューブ12は、上流側の第1端部12aと下流側の第2端部12bとを有する。第1端部12aは、初期状態(製品提供当初の状態)において溶着されて封止されている。第2端部12bは、流路接続部材18に接続されている。
【0014】
シリンジ14は、バレル本体20と、切換機構24と、ノズル部26と、第1プランジャ組立体28と、第2プランジャ組立体30とを有する。バレル本体20は、透明又は半透明な樹脂部材により形成されている。バレル本体20は、円筒状の筒状部32を有している。筒状部32は、内部に収容室34を有する。収容室34は、シリンジ14の軸線方向に延びる中空状の部分である。収容室34は、筒状部32の基端で開口する。
【0015】
なお、図9に示すように、シリンジ14は、バレル本体20の基端と、第1プランジャ組立体28とを接続する第1封止部材49aと、バレル本体20の基端と第2プランジャ組立体30とを接続する第2封止部材49bと、をさらに備えてもよい。第1封止部材49a及び第2封止部材49bは、柔軟な樹脂シート等によって形成された筒状の部材である。第1封止部材49aは、一端がバレル本体20の基端に接続され、他端が第1プランジャ組立体28の基端に接続される。第2封止部材49bは、一端がバレル本体20の基端に接続され、他端が第2プランジャ組立体30の基端に接続される。
【0016】
第1封止部材49a及び第2封止部材49bは、蛇腹状に形成されている。第1、第2封止部材49a、49bは、第1、第2プランジャ組立体28、30の位置に応じて蛇腹状に折り畳まれた形状から、筒状に伸長した形状に変形する。すなわち、第1、第2封止部材49a、49bは、蛇腹が伸展することで、第1、第2プランジャ組立体28、30の変位に追随する。
【0017】
第1、第2封止部材49a、49bは、第1、第2プランジャ組立体28、30とバレル本体20との隙間を外気から封止して、第1、第2収容室34a、34bの無菌性を維持する。封止部材49a、49bは、バレル本体20の内壁への菌付着を阻止することにより、血液製剤が無菌であるのにもかかわらず汚染があるとされてしまう、検査の擬陽性の発生を防止する。
【0018】
バレル本体20は、さらに仕切壁36と先端壁38とを有する。仕切壁36は、バレル本体20の中心軸線を通り径方向に直線状に延びて筒状部32に一体的に繋がる。仕切壁36は、筒状部32の基端から先端の範囲で軸線方向に延在する。仕切壁36は、収容室34を第1収容室34aと第2収容室34bとに仕切る。第1収容室34a及び第2収容室34bの各々は、軸線方向の基端側から見て半円形状を呈する。
【0019】
仕切壁36の先端は、先端壁38と一体的に繋がる。先端壁38は、筒状部32の先端に位置する。先端壁38は、第1収容室34a及び第2収容室34bの先端の一部を塞ぐ。先端壁38は、第1収容室34aに連通する開口部40aと、第2収容室34bに連通する開口部40bを有する。
【0020】
図2Bに示すように、先端壁38は、外周端面38aと、取付部38bとを有する。外周端面38aは、シリンジ14の軸線に対して垂直な面を有する。外周端面38aは、バレル本体20の外周に沿って周方向に円環状に延在する。取付部38bは、外周端面38aから軸線方向に円柱状に突出する。取付部38bの外側部には、ネジ溝38cが形成されている。取付部38bの先端面38dは、平滑な平坦面を有する。先端面38dは、切換機構24との摺動面を構成する。先端面38dにおいて、半円形状の開口部40aと、半円形状の開口部40bとが開口する。開口部40aと、開口部40bとは、仕切壁36によって隔てられる。
【0021】
図2Aに示すように、切換機構24は、バレル本体20の先端に配置される。図2Bに示すように、切換機構24は、円盤状の回動部材44を有する。回動部材44は、平滑な平坦面よりなる先端面44a及び基端面44bを有する。図2Aに示すように、基端面44bは取付部38bの先端面38d及び仕切壁36に液密に面接触しつつ摺動する。基端面44bは、中心部に回動部材44の回転中心を位置決めするピボット突起44cを有する。ピボット突起44cは、仕切壁36のピボット凹部36aに嵌ることで回動部材44の軸受構造を形成する。回動部材44の先端面44aは、ノズル部26の内端面50bに液密に当接して摺動する。
【0022】
回動部材44は、先端面44aと基端面44bとを貫通する貫通孔44fを有する。貫通孔44fは、開口部40a及び開口部40bに連通可能な位置に配置されている。回動部材44を回転させると、回動部材44の回転角度に応じて、貫通孔44fが開口部40a及び開口部40bのいずれか一方に連通する。なお、開口部40a及び開口部40bの両方との連通を防止するために、貫通孔44fの直径は、仕切壁36の厚さよりも小さい寸法を有する。
【0023】
回動部材44の外側部44dには、複数の縦溝44eが形成されている。回動部材44の縦溝44eを有する外側部44dは、図3Aに示すように、ノズル部26から露出する。使用者が、縦溝44eを有する外側部44dを通じて回動部材44を回転させることができる。
【0024】
図2Aに示すように、ノズル部26はノズル46と、マニホールド部48とを有する。マニホールド部48は、取付部38bと、回動部材44とを収容する、円柱状の凹部50を有する。凹部50の内周面50aは、取付部38bのネジ溝38cに螺合するネジ構造48bが形成されている。凹部50は、内端面50bを有する。マニホールド部48を取付部38bに取り付けると、内端面50bは、回動部材44を押圧して回動部材44を液密に封止する。マニホールド部48の中央には、合流部26aが形成されている。合流部26aは、先端に向かうにつれて徐々に縮径する漏斗形状を有する。合流部26aは、貫通孔44fと常に連通する。合流部26aの先端は、ノズル46の接続流路26bに連通する。マニホールド部48は、外周部の一部を切り欠いた切欠部48aを有する。図2Bに示すように、切欠部48aには、凹部50が露出する。図3Aに示すように、切欠部48aから、回動部材44の外側部44dが露出する。回動部材44の外側部44dを露出させた切欠部48aは、本実施形態の切換機構24の操作部25を構成する。
【0025】
図3Bに示すように、第1プランジャ組立体28は、第1ガスケット28aと、第1プランジャ28bとを有する。第1ガスケット28aは、軸線方向から見て半円形状を有する。図2Aに示すように、第1ガスケット28aは、第1収容室34aに収容される。第1ガスケット28aは、第1収容室34aの内壁に液密に当接して軸線方向に摺動する。第1ガスケット28aは、第1収容室34aを仕切ることにより、第1収容室34aに第1チャンバ室52を形成する。第1チャンバ室52の容積は、第1ガスケット28aの位置に応じて変化する。第1プランジャ28bは、第1ガスケット28aの基端側に組み付けられる。使用者の操作力を受けることで、第1プランジャ28bは第1ガスケット28aを先端又は基端方向に変位させる。
【0026】
図3Bに示すように、第2プランジャ組立体30は、第2ガスケット30aと第2プランジャ30bとを有する。図2Aに示すように、第2ガスケット30aは、第2収容室34bに収容される。第2ガスケット30aは、第2収容室34bを仕切ることで、第2収容室34bに第2チャンバ室54を形成する。第2チャンバ室54の容積は、第2ガスケット30aの位置に応じて変化する。第2ガスケット30aの位置は、第2プランジャ30bによって操作される。第2プランジャ組立体30は、第1プランジャ組立体28から分離しており、第1プランジャ組立体28から独立して変位する。
【0027】
第1プランジャ組立体28及び第2プランジャ組立体30は、初期状態において、最も先端側に位置する。第1ガスケット28a及び第2ガスケット30aは、先端壁38に当接する。
【0028】
サンプリング用ホルダ16は、培養ボトル90(図6A及び図6B参照)の首部を収容するホルダ部16aと、培養ボトル90の栓体を貫通可能な針管16bと、蓋体16cとを有する。培養ボトル90の首部をホルダ部16aに挿入することで、培養ボトル90がサンプリング用ホルダ16に接続される。針管16bは、培養ボトル90の栓体を貫通して培養ボトル90の内部と連通する。蓋体16cは、ヒンジを介してホルダ部16aに取り付けられている。蓋体16cは、初期状態においてホルダ部16aの開口を覆うことで、ホルダ部16aを密封する。蓋体16cは、針管16bへの菌付着を防止する。
【0029】
流路接続部材18は、接続用チューブ12と、シリンジ14と、サンプリング用ホルダ16とを選択的に接続する。流路接続部材18は、例えば三方活栓である。流路接続部材18は、第1位置において、接続用チューブ12とシリンジ14とを連通させ、サンプリング用ホルダ16との連通を阻止する。第2位置において、流路接続部材18は、シリンジ14とサンプリング用ホルダ16とを連通させる。
【0030】
本実施形態の採取キット10は、以上のように構成される。この採取キット10は、以下の採取方法に使用される。
【0031】
図4Aに示すように、本実施形態の採取方法は、まずバッグ接続工程に進む。この工程は、採取キット10の接続用チューブ12に、血小板製剤を収容した医療用バッグ100(血小板バッグ)を接続する工程を有する。この工程は、医療用バッグ100から延びるチューブ102と、接続用チューブ12とを無菌接合装置を用いて接合する操作を含む。
【0032】
次に、図4Bに示すように、採取方法は、第1収容工程に進む。第1収容工程は、シリンジ14の第1チャンバ室52に所定量の液体試料(例えば、血小板製剤)を収容する工程である。第1収容工程に先立って、流路接続部材18の三方活栓を操作して、接続用チューブ12とシリンジ14とを連通させる操作が行われる。また、切換機構24の回動部材44を回動させて、ノズル部26の接続流路26bとシリンジ14の第1チャンバ室52とを連通させる操作が行われる。
【0033】
次に、採取方法は、第1プランジャ組立体28を基端に引き込む操作に進む。この操作により、図4Bに示すように、貫通孔44fを通じて第1チャンバ室52に液体試料が流入する。第1採取工程は、第1ガスケット28aが所定位置に到達するまで行われる。第1採取工程により、所定量(例えば、8ml又は10ml)の液体試料が第1チャンバ室52に収容される。
【0034】
第1収容工程は、気泡除去操作を含んでもよい。気泡除去操作は、第1プランジャ組立体28を軸線方向に往復移動させる操作及び接続用チューブ12(チューブ102)を圧迫する操作により行われる。気泡の除去を容易にするために、図4Aに示すように、医療用バッグ100を採取キット10よりも上方に配置することが好ましい。
【0035】
第1収容工程が完了した後に、切換機構24を回動させて、貫通孔44fを第2収容室34bの開口部40bと重なる位置に移動させる操作が行われる。この操作により、第1チャンバ室52が回動部材44により閉塞される。また、第2チャンバ室54と接続流路26bとが連通する。
【0036】
次に、図5Aに示すように、採取方法は、第2収容工程に進む。第2収容工程は、第2チャンバ室54に所定量の液体試料を収容する工程である。この工程は、第2プランジャ組立体30を基端に引き込む操作を含む。この操作により、図示のように、第2チャンバ室54に所定量(例えば、8ml又は10ml)の液体試料が収容される。第2収容工程において、気泡の除去が行われてもよい。第2チャンバ室54の気泡の除去は、第2プランジャ組立体30を往復移動させる等の方法で行われる。第2収容工程を行っている間、第1チャンバ室52に収容された液体試料の量は、一定に保たれる。
【0037】
次に、採取方法は、バッグ分離工程に進む。バッグ分離工程は、チューブシーラー(不図示)を用いて接続用チューブ12を溶融させつつ切断する操作を含む。バッグ分離工程により、図5Bに描かれるように、採取キット10から医療用バッグ100(図5A)が切り離される。採取キット10から切り離された医療用バッグ100は、培養試験が完了するまで、血液センターで保管される。血液製剤の安全が確認された医療用バッグ100は、利用に供される。
【0038】
次に、図6Aに示すように、採取方法は、第1採取工程に進む。第1採取工程は、1本目の培養ボトル90に所定量の液体試料を採取する工程である。第1採取工程は、培養ボトル90のうち、好気培養に使用する好気培養ボトル92に液体試料を採取する。第1採取工程に先立って、流路接続部材18の三方活栓を移動させて、シリンジ14とサンプリング用ホルダ16とを連通させる操作が行われる。また、切換機構24の操作が行われ、第1チャンバ室52と接続流路26bとが接続される。
【0039】
その後、第1プランジャ組立体28をシリンジ14の先端に向けて前進させる操作が行われる。この操作により、第1チャンバ室52の液体試料が、好気培養ボトル92に採取される。第1ガスケット28aが先端壁38に当接することにより、第1採取工程が完了する。第1採取工程が行われている間、第2チャンバ室54は切換機構24によって閉塞される。したがって、第2チャンバ室54の容積は変化しない。
【0040】
第1採取工程により、好気培養ボトル92に所定量(8ml又は10ml)の液体試料が採取される。また、第1採取工程では、サンプリング用ホルダ16に残留する気泡が好気培養ボトル92に吸い出される。したがって、第1採取工程は、サンプリング用ホルダ16の内部の空気を液体試料で置換するプライミング工程を兼ねる。第1採取工程により、後の第2採取工程での嫌気培養ボトル94への空気の混入が防止される。
【0041】
次に、図6Bに示すように、第1採取工程の終了後に、好気培養ボトル92はサンプリング用ホルダ16から取り外される。その後、採取方法は、第2採取工程に進む。第2採取工程は、2本目の培養ボトル90に液体試料を採取する工程である。2本目の培養ボトル90として嫌気培養ボトル94は、サンプリング用ホルダ16に接続される。
【0042】
第2採取工程は、その後、第2プランジャ組立体30を先端側に押圧する操作に進む。この操作により、第2チャンバ室54に収容された液体試料が嫌気培養ボトル94に移送される。第2ガスケット30aが先端壁38に当接すると、第2採取工程が終了する。第2採取工程により、嫌気培養ボトル94に所定量(8ml又は10ml)の液体試料が採取される。
【0043】
その後、嫌気培養ボトル94がサンプリング用ホルダ16から取り外され、本実施形態の採取キット10を用いた採取方法が完了する。液体試料を採取した好気培養ボトル92及び嫌気培養ボトル94は、培養検査に供される。
【0044】
以上のように、本実施形態の採取キット10及び採取方法は、経験の浅い使用者でも、シリンジ14の操作により正確な量の液体試料を採取できる。また、シリンジ14は、第1チャンバ室52が第1ガスケット28aで仕切られ、さらに第2チャンバ室54が第2ガスケット30aで仕切られるため、培養ボトル90への空気の混入を防止できる。したがって、採取キット10及び採取方法は、シリンジ14に採取した略全量の液体試料を培養検査に利用でき、貴重な血液製剤(例えば、血小板製剤)の無駄を抑制できる。
【0045】
(第2実施形態)
図7A及び図7Bに示す本実施形態のシリンジ14Aは、図1に示す採取キット10(第1実施形態)のシリンジ14を置き換えて使用することができる。なお、本実施形態の説明では、シリンジ14A以外の図示と説明は省略される。
【0046】
図7A及び図7Bに示すように、シリンジ14Aは、切換機構24の回動操作を行うための操作ツマミ56を有する。操作ツマミ56は、回動部材44の回転中心に沿って基端に向けて延在するシャフト58の基端に接続されている。シャフト58は、仕切壁36の内部を貫通して回動部材44の中心に接続する。シャフト58の基端は仕切壁36の基端から基端に向けて突出する。シャフト58は、操作ツマミ56の回転力を回動部材44に伝える。
【0047】
回動部材44は、シャフト58に沿った軸回りに回動する。本実施形態では、ノズル部26Aのマニホールド部48Aには切欠部48aが設けられておらず、マニホールド部48Aは、回動部材44の外側部44dの全周を覆う。本実施形態の回動部材44は、外側部44dに縦溝44eを有さない。
【0048】
シリンジ14Aのその他の構成は、図2Aのシリンジ14と同様である。本実施形態のシリンジ14Aは、基端側に突出した操作ツマミ56で切換機構24の回動部材44の回動操作を行えるため、操作性が向上する。
【0049】
(第3実施形態)
図8A及び図8Bに示す本実施形態のシリンジ14Bは、図1に示す採取キット10(第1実施形態)のシリンジ14を置き換えて使用することができる。なお、本実施形態の説明では、シリンジ14B以外の図示と説明は省略される。
【0050】
シリンジ14Bは、バレル本体20Bの先端に、ノズル部26B及び切換機構24Bを有する。ノズル部26Bは、マニホールド部48Bとノズル46とを備える。マニホールド部48Bは、図8Bに示すように、球形状を有する。図8Aに示すように、マニホールド部48Bは、回動部材62を収容する円柱状の収容空間60を有する。収容空間60は、図8Aの紙面に垂直な方向に延在する。
【0051】
図8A及び図8Bに示すように、切換機構24Bは、円柱状の回動部材62と、シャフト58Bと、操作部64とを有する。回動部材62は、図8Aの紙面に垂直な方向に延びる円柱状の部材である。回動部材62は、マニホールド部48Bの収容空間60の全域を隙間なく埋める。回動部材62は円筒面よりなる外周面62bを有し、図8Aの紙面に垂直な軸線周りに回動する。外周面62bは、マニホールド部48Bの内面及び仕切壁36の下端と液密に当接して摺動する摺動面となる。
【0052】
回動部材62は、回転中心から径方向に延びた貫通孔62aを有する。貫通孔62aは、回転中心で120°屈曲している。図8Aに示す状態では、貫通孔62aは、第2チャンバ室54とノズル46とを連通させ、第2チャンバ室54は回動部材62により閉塞される。図8Aの状態から回動部材62を反時計回りに120°回転させると、回動部材62は、貫通孔62aで第1チャンバ室52をノズル46と連通させ、第2チャンバ室54を閉塞する。
【0053】
図8Bに示すように、シャフト58Bは、回動部材62の回転中心に沿って回動部材62から延び出ている。シャフト58Bは、マニホールド部48Bを貫通して、外部に露出する。シャフト58Bと回動部材62は、一体的に繋がっており、回動部材62はシャフト58Bと一体的に回動する。シャフト58Bの端部には、操作部64が形成されている。操作部64は、シャフト58Bの径方向に延在するレバーよりなる。
【0054】
シリンジ14Bのその他の構成は、図2Aのシリンジ14と同様である。本実施形態のシリンジ14Bは、側部に突出した操作部64で切換機構24Bの回動部材62の回動操作を行える。
【0055】
上記の諸実施形態は、以下のようにまとめられる。
【0056】
本実施形態の一観点は、液体試料を収容した医療用バッグ100が接続可能な接続用チューブ12と、前記医療用バッグからの所定量の前記液体試料を収容する第1チャンバ室52と、前記所定量の前記液体試料を収容する第2チャンバ室54と、を有するシリンジ14と、培養ボトル90が接続可能なサンプリング用ホルダ16と、前記接続用チューブと、前記シリンジと、前記サンプリング用ホルダと、を接続する流路接続部材18と、を備え、前記第1チャンバ室と前記第2チャンバ室とは、前記シリンジの幅方向に並列に配置され、前記シリンジは、前記液体試料が流通するノズル46と、前記第1チャンバ室及び前記第2チャンバ室のいずれか一方を前記ノズルに選択的に連通させる切換機構24、24A、24Bと、を備える採取キット10にある。
【0057】
上記の採取キットは、経験の浅い使用者であっても、第1チャンバ室と、第2チャンバ室とのそれぞれの容積に応じた量の液体試料を、好気培養ボトル及び嫌気培養ボトルに採取できる。これにより、採取キットは、液体試料の採取量のバラツキを抑制でき、不足の発生による液体試料の再採取を防止できる。また、採取キットは、シリンジの第1チャンバ室及び第2チャンバ室の液体試料が空気から分離されているため、培養ボトルへの空気の混入を防止できる。また、採取キットは、シリンジに採取した略全量の液体試料を培養検査に利用でき、貴重な血液製剤(例えば、血小板製剤)の無駄を抑制できる。
【0058】
上記の採取キットにおいて、前記シリンジは、前記第1チャンバ室の基端を閉塞する第1ガスケット28aと、前記第1ガスケットに接続された第1プランジャ28bと、前記第2チャンバ室の基端を閉塞する第2ガスケット30aと、前記第2ガスケットに接続された第2プランジャ30bと、を備えてもよい。この採取キットは、2つのチャンバ室の各々のプランジャを別個に操作することで、2本の培養ボトルに正確な量の液体試料を採取できる。
【0059】
上記の採取キットにおいて、前記シリンジは、軸線方向に延在し前記シリンジの内部を前記第1チャンバ室と前記第2チャンバ室とに仕切る仕切壁36を有してもよい。この採取キットは、1本の円筒状のシリンジの内部に2つのチャンバ室を形成することができるので、装置構成が小型化及び簡素化され、取り扱い性も向上する。
【0060】
上記の採取キットにおいて、前記切換機構は、前記第1チャンバ室及び前記第2チャンバ室の先端を閉塞する回動部材44、62を有し、前記回動部材は前記仕切壁に液密に当接しつつ回動する摺動面と、回動位置に応じて前記第1チャンバ室又は前記第2チャンバ室と前記ノズルとを連通させる貫通孔44f、62aと、を有してもよい。この採取キットは、一方のチャンバ室のプランジャを操作している間に他のチャンバ室を閉塞して液体試料の量の変化を防止することで、正確な量の液体試料の採取を可能とする。
【0061】
上記の採取キットにおいて、前記切換機構は、前記回動部材の外側部44dを露出させた操作部25を有してもよい。この採取キットは、簡単な構造で操作部を実現できるため、小型化及び製造コストの低減を可能とする。
【0062】
上記の採取キットにおいて、前記切換機構は、前記回動部材の回転中心方向に延在するシャフト58、58Bを有し、前記シャフトが前記シリンジの外方に露出した操作部を有してもよい。この採取キットは、シャフトを通じて回動部材を操作することができるため、操作部を取り扱い性に優れた部位に配置することができる。
【0063】
上記の採取キットにおいて、前記シャフトは前記仕切壁の内部を貫通して基端側に延在してもよい。この採取キットは、シリンジの基端から回動部材を操作できるため、取り扱い性に優れる。
【0064】
別の一観点は、上記の採取キットを用いた採取方法であって、前記接続用チューブに前記医療用バッグを接続するバッグ接続工程と、前記シリンジの前記第1チャンバ室に前記所定量の前記液体試料を収容する第1収容工程と、前記シリンジの前記第2チャンバ室に前記所定量の前記液体試料を収容する第2収容工程と、前記医療用バッグを前記接続用チューブから切り離すバッグ分離工程と、前記サンプリング用ホルダに好気培養ボトルを接続して前記第1チャンバ室の前記液体試料を前記好気培養ボトルに採取する第1採取工程と、前記サンプリング用ホルダに嫌気培養ボトルを接続して前記第2チャンバ室の前記液体試料を前記嫌気培養ボトルに採取する第2採取工程と、を有する、採取方法にある。
【0065】
上記の採取方法は、経験の浅い使用者であっても、第1チャンバ室と、第2チャンバ室とのそれぞれの容積に応じた量の液体試料を、好気培養ボトル及び嫌気培養ボトルに採取できる。また、上記の採取方法は、嫌気培養ボトルへの気泡の混入リスクを低減できる。
【0066】
なお、本発明は、上記した実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を取り得る。
【符号の説明】
【0067】
10…採取キット 12…接続用チューブ
14、14A、14B…シリンジ 16…サンプリング用ホルダ
18…流路接続部材 24、24A、24B…切換機構
25、64…操作部 36…仕切壁
44、62…回動部材 44f、62a…貫通孔
46…ノズル 52…第1チャンバ室
54…第2チャンバ室 58、58B…シャフト
90…培養ボトル 100…医療用バッグ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9