(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023128298
(43)【公開日】2023-09-14
(54)【発明の名称】ホースの製造方法およびマンドレル
(51)【国際特許分類】
B29D 23/00 20060101AFI20230907BHJP
B29C 33/76 20060101ALI20230907BHJP
【FI】
B29D23/00
B29C33/76
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022032556
(22)【出願日】2022-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】栗原 誠也
【テーマコード(参考)】
4F202
4F213
【Fターム(参考)】
4F202AA45
4F202AD16
4F202AG03
4F202AG08
4F202AJ03
4F202AJ09
4F202CA27
4F202CB01
4F213AA45
4F213AD16
4F213AG03
4F213AG08
4F213AJ03
4F213AJ09
4F213WA06
4F213WA39
4F213WA87
4F213WB01
(57)【要約】
【課題】加硫後のホースからマンドレルをより確実に除去し易くしてホースの生産性が向上するホースの製造方法およびこの製造方法に用いるマンドレルを提供する。
【解決手段】マンドレル1の外周面2a上に成形したホース成形体4Aを加硫装置10によって加硫する加硫工程で、ホース成形体4Aが所定の加硫状態になった以降に、マンドレル1の少なくとも最外周の樹脂層2を溶融させた状態にして、溶融させた樹脂を除去装置11によってホース4の内部から除去し、その後、マンドレル1の溶融していない芯部3をホース4の内部から除去する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンドレルの外周面上に成形したホース成形体を加硫してホースを製造するホースの製造方法において、
前記ホース成形体の加硫工程で前記ホース成形体が所定の加硫状態になった以降に、前記マンドレルの少なくとも最外周の樹脂層を溶融させた状態にして、または、前記マンドレルとして樹脂製のマンドレルを使用してその少なくとも芯部を溶融させた状態にして、前記マンドレルを加硫した前記ホースから除去するホースの製造方法。
【請求項2】
溶融させた状態の前記樹脂層または前記芯部を前記ホースの内部から除去する除去工程の後に、溶融していない前記マンドレルの部分を前記ホースの内部から引き抜く請求項1に記載のホースの製造方法。
【請求項3】
最外周の前記樹脂層のみを溶融させる請求項1または2に記載のホースの製造方法。
【請求項4】
樹脂製の前記マンドレルのすべてを溶融させる請求項1に記載のホースの製造方法。
【請求項5】
樹脂繊維からなる補強コードにより形成された補強層を有する前記ホース成形体を成形する請求項1~4のいずれかに記載のホースの製造方法。
【請求項6】
外周面上に成形されたホース成形体とともに加硫装置の内部に配置されるマンドレルにおいて、
前記加硫装置を用いた前記ホース成形体の加硫工程で前記ホース成形体が所定の加硫状態になった以降に、溶融された状態にされる少なくとも最外周の樹脂層を有する、または、全体が樹脂で形成されていて前記ホース成形体が所定の加硫状態になった以降に、溶融された状態にされる少なくとも芯部を有するマンドレル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホースの製造方法およびマンドレルに関し、さらに詳しくは、加硫後のホースからマンドレルをより確実に除去し易くしてホースの生産性を向上させることができるホースの製造方法およびこの製造方法に用いるマンドレルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ホースを製造する際には、棒状のマンドレルが使用されている。マンドレルの外周面上には順次、ホース構成部材が積層されてホース成形体が成形され、次いで、ホース成形体を加硫することによりホースが製造される。加硫後のホースからはマンドレルが引き抜かれる。
【0003】
加硫後のホースの内周面はマンドレルの外周面に密着するため、マンドレルをホースから引き抜き難くなる不具合が生じることがある。この不具合を防止するために、マンドレルの外周面の粗さを適切に設定する対策が種々提案されている(例えば、特許文献1)。しかしながら、ホースの仕様の違いに起因して、マンドレルが引抜き易くなる外周面の適切な表面粗さが異なるため、マンドレルを円滑に引き抜くことができないことがある。また、ホースの仕様毎に、使用するマンドレルの外周面の適切な表面粗さを把握し、この適切な表面粗さのマンドレルを準備する必要もある。それ故、加硫後のホースからマンドレルをより確実に除去し易くしてホースの生産性を向上させるには改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、加硫後のホースからマンドレルをより確実に除去し易くしてホースの生産性を向上させることができるホースの製造方法およびこの製造方法に用いるマンドレルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明のホースの製造方法は、マンドレルの外周面上に成形したホース成形体を加硫してホースを製造するホースの製造方法において、前記ホース成形体の加硫工程で前記ホース成形体が所定の加硫状態になった以降に、前記マンドレルの少なくとも最外周の樹脂層を溶融させた状態にして、または、前記マンドレルとして樹脂製のマンドレルを使用してその少なくとも芯部を溶融させた状態にして、前記マンドレルを加硫した前記ホースから除去することを特徴とする。
【0007】
本発明のマンドレルは、外周面上に成形されたホース成形体とともに加硫装置の内部に配置されるマンドレルにおいて、前記加硫装置を用いた前記ホース成形体の加硫工程で前記ホース成形体が所定の加硫状態になった以降に、溶融された状態にされる少なくとも最外周の樹脂層を有する、または、全体が樹脂で形成されていて前記ホース成形体が所定の加硫状態になった以降に、溶融された状態にされる少なくとも芯部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、前記ホース成形体の加硫工程で前記ホース成形体が所定の加硫状態になった以降に、前記マンドレルの少なくとも最外周の樹脂層を溶融させた状態、または、前記マンドレルとして樹脂製のマンドレルを使用してその少なくとも芯部を溶融させた状態にする。この状態にしたマンドレルは、加硫後のホースからより確実に除去し易くなるため、ホースの生産性を向上させるには有利になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明のマンドレルと一部切り欠いたホース成形体とを模式的に例示する側面図である。
【
図2】
図1のマンドレルおよびホース成形体を横断面視で例示する説明図である。
【
図3】
図1のホース成形体を加硫して製造されたホースを、一部を切り欠いて模式的に例示する側面図である。
【
図4】
図1のホース成形体の加硫工程を例示する説明図である。
【
図5】
図4のマンドレルの最外周の樹脂層を溶融させて除去する工程を例示する説明図である。
【
図6】
図5のホース成形体を加硫したホースの内部からマンドレルの芯部を除去する工程を例示する説明図である。
【
図7】別の実施形態のマンドレルと一部切り欠いたホース成形体とを模式的に例示する側面図である。
【
図8】
図7のマンドレルおよびホース成形体を横断面視で例示する説明図である。
【
図9】
図7のホース成形体の加硫工程を例示する説明図である。
【
図10】
図9のマンドレルの芯部を溶融させて除去する工程を例示する説明図である。
【
図11】
図10のホース成形体を加硫したホースの内部からマンドレルの外周層を除去する工程を例示する説明図である。
【
図12】別の実施形態のマンドレルと一部切り欠いたホース成形体とを模式的に例示する側面図である。
【
図13】
図12のマンドレルおよびホース成形体を横断面視で例示する説明図である。
【
図14】
図12のホース成形体の加硫工程を例示する説明図である。
【
図15】
図14のマンドレルの全体を溶融させてホースから除去する工程を例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のホースの製造方法およびマンドレルを、図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0011】
本発明のホースの製造方法では、
図1~
図2に例示する本発明のマンドレル1の外周面上に成形されたホース成形体4Aを加硫することにより、
図3に例示するホース4が製造される。尚、図中の一点鎖線CLは、ホース4(ホース成形体4A)の横断面中心を通るホース軸心を示している。このホース4は、最内周側に位置する内面層5と最外周側に位置する外面層8との間に補強層6および中間ゴム層7が介在していて、円筒状の内面層5、補強層6、中間ゴム層7、外面層8がそれぞれ同軸上に積層されている。内面層5の内周側がホース4の流路になり、内周面5aが流路を流れる流体に接触することになる。
【0012】
内面層5は、例えばNBR系ゴム、SBRゴム、ENRゴム等の各種ゴムにより形成され、6ナイロンやポリオレフィン系樹脂、フッ素樹脂等の各種樹脂により形成されることもある。内面層5を形成する材質(ゴムや樹脂の種類)や層厚などは、ホース4に対する要求性能に応じて適宜決定される。
【0013】
補強層6は補強コード6aにより形成される。補強コード6aとして、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ポリエチレンナフタレート(PEN)繊維、アラミド繊維、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール(PBO)繊維、66ナイロン繊維、レーヨン繊維、ビニロン繊維、綿繊維などの非金属の繊維が、単独、または、複数種類を混合して使用される。補強コード6aとして、ワイヤ等の金属線が使用されることもある。
【0014】
図3に例示する補強層6は、補強コード6aがホース軸心CLに対して所定角度で傾斜して編組されたブレード構造になっている。補強層6は、ブレード構造に限定されず、補強コード6aをホース軸心CLに対して所定角度で傾斜させて螺旋状に巻き付けて形成されたスパイラル構造の場合もある。このホース4は2層の補強層6を有しているが、補強層6は単層の場合も3層以上の場合もある。補強コード6aの仕様(材質や線径など)、補強層6の積層数は、ホース4に対する要求性能に応じて適宜決定される。
【0015】
中間ゴム層7は、隣り合って積層される補強層6どうしを強固に接合するとともに、それぞれの補強層6を形成している補強コード6aどうしが接触して損耗することを回避する緩衝材として機能する。中間ゴム層7は、ホース製造で使用されている公知の仕様のものを用いればよい。中間ゴム層7は必須の構成部材ではなく省略されることもある。
【0016】
外面層8は例えば、CRゴム、EPDMゴム、SBRゴム等の各種ゴムや各種樹脂により形成される。外面層8を形成する材質(ゴムや樹脂の種類)や層厚などは、ホース4に対する要求性能に応じて適宜決定される。
【0017】
棒状のマンドレル1はホース4を製造する際には芯材として使用される。マンドレル1は全体が樹脂により形成されている仕様にすることも、一部(芯部3)が金属により形成されている仕様にすることもできる。いずれの場合も、マンドレル1の最外周に位置する外周層2は樹脂により形成された仕様にする。マンドレル1を形成する樹脂としては例えば、ポリメチルペンテン、6ナイロン、11ナイロン、12ナイロン、ポリプロピレン、ポリエステル等を例示できる。マンドレル1の一部(芯部3)を形成する金属としては例えば、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム等を例示できる。マンドレル1の全体を樹脂製にすると、軽量化および曲げ剛性が小さくなるので取扱い性(作業性)の向上には有利になる。
【0018】
マンドレル1の外径や長さは、製造するホース4の仕様によって異なるので特に限定されないが、外径は例えば3mm~50mmである。マンドレル1の長さは例えば、20m~200mであり、全体が樹脂製のマンドレル1であると長くし易い。
【0019】
この実施形態のマンドレル1は、円柱状の芯部3と、芯部3の外周面を被覆する円筒状の外周層2とを有している。芯部3以外の部分が外周層2になる。芯部3は円柱状に限らず円筒状にすることもできる。外周層2の層厚は例えば1mm以上にする。外周層2の層厚の上限は特に限定されないが例えば5mm以下である。
【0020】
芯部3は樹脂製または金属製であり、外周層2は樹脂製である。外周層2の溶融温度A2は芯部3の溶融温度A3よりも低い。即ち、このマンドレル1は、外周層2が芯部3よりも溶融し易い仕様になっている。また、外周層2の溶融温度A2はホース成形体4Aの加硫工程での最高の加硫温度T2以下、かつ、芯部3の溶融温度A3は加硫温度T2よりも高くなっている。
【0021】
以下、このマンドレル1を用いて、ホース4を製造する手順の一例を説明する。
【0022】
ホース4を製造する際には
図1、2に例示するように、棒状のマンドレル1を芯材として、公知の方法により、マンドレル1の外周側に内面層5、補強層6、中間ゴム層7、補強層6、外面層8を構成するそれぞれの部材を順次積層して、マンドレル1の外周面2a上にホース成形体4Aを成形する。ホース成形体4Aの最内周面(内周面5a)は、マンドレル1の最外周面(外周面2a)に接触した状態になる。
【0023】
次いで、ホース成形体4Aを加硫する際には、ホース成形体4Aの最外周面に、外型として機能する被覆材9を積層してホース成形体4Aを全長に渡って被覆材9により覆う。被覆材9はホース製造で使用されている公知のものを使用すればよく、ポリメチルペンテンや11ナイロンなどによって形成される。
【0024】
次いで、
図4に例示するように、被覆材9により被覆されたホース成形体4Aをマンドレル1とともに加硫装置10の内部に配置する。加硫装置10としては、加硫函などのホース製造で使用されている公知の仕様のものを使用すればよい。
【0025】
このホース成形体4Aには溶融樹脂の除去装置11が取り付けられる。除去装置11は、吸引ポンプなどの吸引手段11aと、ホース成形体4Aの長手方向一端部に装着されるヘッド部11bと、ホース成形体4Aの長手方向端端部に装着される蓋部11dとを有している。ホース成形体4Aの内部は、装着されたヘッド部11bおよび蓋部11dによって封止された状態になる。ヘッド部11bは配管を通じて吸引手段11aに接続される。ヘッド部11bには、吸引手段11aに連通する貫通路11cが形成されていて、この貫通路11cの端部が外周層2の位置にセットされる。
【0026】
このホース成形体4Aは、加硫装置10の内部で所定の加圧下または常圧下で所定の温度に加熱されることにより、ホース成形体4Aを構成する未加硫ゴムが加硫される。ホース成形体4Aの加硫工程では、ホース成形体4Aが所定の加硫状態になった以降に、マンドレル1の少なくとも最外周の樹脂層(即ち、外周層2)を溶融させた状態にする。この実施形態ではホース成形体4Aが所定の加硫状態になった以降に、外周層2のみを溶融させる。
【0027】
詳述すると、所定の加硫温度T1でホース成形体4Aを加硫することで、ホース成形体4Aの未加硫ゴムの加硫反応をある程度進行させて、ホース成形体4Aの形状が実質的に変化しなくなった状態(所定の加硫状態)にする。ホース成形体4Aを加硫温度T1でこの所定の加硫状態にする所定の加硫時間D1は、事前のテスト加硫やシミュレーション解析などによって予め把握できる。
【0028】
その後、加硫温度T1をT2に上昇させて加硫工程をさらに所定の加硫時間D2継続し、ホース成形体4Aを完全に加硫してホース4を製造する。即ち、ホース4を製造するために加硫工程でホース成形体4Aに対して付与する必要な熱履歴を、加硫温度T1×加硫時間D1の工程と、加硫温度T2×加硫時間D2の工程とによってホース成形体4Aに付与する。
【0029】
加硫温度T1、T2は概ね140℃~200℃の範囲である。加硫温度T2は、加硫温度T1よりも例えば10℃以上高くするとよい。
【0030】
加硫温度T1は、外周層2を形成している樹脂の溶融温度A2よりも低く設定される。加硫温度T2は、外周層2を形成している樹脂の溶融温度A2以上、かつ、芯部3を形成している材質(樹脂または金属)の溶融温度A3よりも低く設定される。したがって、加硫温度をT2に上昇させると外周層2は溶融し、芯部3は溶融することがない。
【0031】
図5に例示するように、外周層2を形成している樹脂が溶融している状態で、吸引手段11aを稼働させることにより、溶融させた樹脂をホース4の内部から除去する。これにより、マンドレル1の外径は小さくなり、マンドレル1(芯部3)の外周面とホース4の内周面5aとの間には隙間が形成される。外周層2の層厚が過大であるとホース4の内部から除去する溶融樹脂の多量になり、この層厚が過小であるとマンドレル1(芯部3)の外周面とホース4の内周面5aとの間に隙間を形成し難くなる。そのため、外周層2の適切な層厚は事前テストなどを行って把握しておくとよい。尚、マンドレル1の外周面とホース4の内周面5aとの間に隙間が形成できれば、外周層2を形成している樹脂をすべてホース4の内部から除去しなくてもよい。
【0032】
次いで、
図6に例示するように、溶融していないマンドレル1の部分(即ち、芯部3)をホース4の内部から引き抜く。例えば公知の方法で、ホース4の長手方向一端側から内部に水圧を付与して長手方向他端側から芯部3を引き抜く。また、被覆材9はホース4が製造された後に公知の方法でホース4から除去する。
【0033】
この実施形態では上述したように、ホース成形体4Aが所定の加硫状態になった以降に、溶融された状態にされる少なくとも樹脂製の外周層2を有するマンドレル1を使用する。そして、外周層2の溶融させた樹脂をホース4の内部から除去することで、加硫したホース4の内周面5aとマンドレル1の外周面との間に隙間が形成されるので、両者の密着状態を確実に回避することができる。そのため、加硫後のホース4からマンドレル1をより確実に除去し易くなり、マンドレル1を除去する工程に要する時間を短縮できる。これに伴い、ホース4の生産性を向上させるには有利になる。
【0034】
使用した芯部3の外周面には再度、樹脂を積層して外周層2を形成することで、マンドレル1として再生させることができる。再生させたマンドレル1は新たなホース4を製造する際に用いることができる。
【0035】
図7、
図8に例示するマンドレル1の別の実施形態は、円柱状の芯部3と、芯部3の外周面を被覆する円筒状の外周層2とを有している。この実施形態では、マンドレル1の全体が樹脂により形成されているので外周層2および芯部3は樹脂により形成されている。この実施形態では、外周層2の溶融温度A2は芯部3の溶融温度A3よりも高い。即ち、このマンドレル1は、芯部3が外周層2よりも溶融し易い仕様になっている。また、芯部3の溶融温度A3はホース成形体4Aの加硫工程での最高の加硫温度T2以下、かつ、外周層2の溶融温度A2は加硫温度T2よりも高くなっている。
【0036】
この実施形態では、ホース成形体4Aの補強層6が、補強コード6aをホース軸心CLに対して所定角度で傾斜させて螺旋状に巻き付けて形成されたスパイラル構造になっている。この補強層6は先の実施形態のようにブレード構造の場合もある。
【0037】
このマンドレル1を用いて、ホース4を製造するには、
図7、
図8に例示するように、先の実施形態と同様の手順によって、マンドレル1の外周面2a上にホース成形体4Aを成形する。次いで、ホース成形体4Aを加硫する際には、先の実施形態と同様の手順によって、
図9に例示するように、被覆材9により被覆されたホース成形体4Aをマンドレル1とともに加硫装置10の内部に配置する。
【0038】
このホース成形体4Aの長手方向一端部にはヘッド部11bが装着され、ホース成形体4Aの長手方向端端部には蓋部11dが装着される。ホース成形体4Aの内部は、装着されたヘッド部11bおよび蓋部11dによって封止された状態になる。ヘッド部11bに形成されている貫通路11cの端部が芯部3の位置にセットされる。
【0039】
ホース成形体4Aの加硫工程では、ホース成形体4Aが所定の加硫状態になった以降に、マンドレル1の少なくとも芯部3を溶融させた状態にする。この実施形態ではホース成形体4Aが所定の加硫状態になった以降に、芯部3のみを溶融させる。
【0040】
詳述すると、先の実施形態と同様に、所定の加硫温度T1でホース成形体4Aを加硫することで、未加硫ゴムの加硫反応をある程度進行させて、ホース成形体4Aの形状が実質的に変化しなくなった状態(所定の加硫状態)にする。その後、加硫温度T1をT2に上昇させて加硫工程をさらに所定の加硫時間D2継続し、ホース成形体4Aを完全に加硫してホース4を製造する
【0041】
加硫温度T1は、芯部3を形成している樹脂の溶融温度A3よりも低く設定される。加硫温度T2は、芯部3を形成している樹脂の溶融温度A3以上、かつ、外周層2を形成している樹脂の溶融温度A2よりも低く設定される。したがって、加硫温度をT2に上昇させると芯部3は溶融し、外周層2は溶融しない。
【0042】
図10に例示するように、芯部3を形成している樹脂が溶融している状態で、吸引手段11aを稼働させることにより、溶融させた樹脂をホース4の内部から除去する。これにより、樹脂製のマンドレル1は実質的に外周層2のみが残存して円筒状(中空形状)になるので縮径変形し易くなる。残存した外周層2を縮径変形させ易くするために、外周層2の層厚を例えば3mm以下にすることが好ましい。尚、後述するマンドレル1の引抜き工程において、マンドレル1を縮径変形させてマンドレル1(外周層2)の外周面2aとホース4の内周面5aとの間に隙間を形成できるのであれば、芯部3を形成している樹脂をすべてホース4の内部から除去しなくてもよい。
【0043】
次いで、
図11に例示するように、溶融していないマンドレル1の部分(即ち、外周層2)をホース4の内部から引き抜く。外周層2をホース4の内部から引き抜くには公知の方法を用いればよい。
【0044】
この実施形態では上述したように、ホース成形体4Aが所定の加硫状態になった以降に、溶融された状態にされる少なくとも芯部3を有するマンドレル1を使用する。このマンドレル1(外周層2)の外周面2aとホース4の内周面5aとが密着していても、加硫されたホース4を屈曲させたり外周側からホース軸心に向かって押圧することで、マンドレル1が縮径変形するので、両者の間には隙間が形成し易くなる。そのため、加硫後のホース4からマンドレル1をより確実に除去し易くなり、マンドレル1を除去する工程に要する時間を短縮できる。これに伴い、ホース4の生産性を向上させるには有利になる。
【0045】
使用した外周層2の内部には再度、樹脂を充填して芯部3を形成することで、マンドレル1として再生させることができる。再生させたマンドレル1は新たなホース4を製造する際に用いることができる。
【0046】
図12、
図13に例示するマンドレル1の別の実施形態は、全体が同一樹脂により形成されている円柱状のマンドレル1である。即ち、今までの実施形態とは異なり、芯部3と外周層2とが区別されていない構造である。このマンドレル1は円筒状にすることもできる。このマンドレル1の溶融温度A1はホース成形体4Aの加硫工程での最高加硫温度T2以下になっている。
【0047】
このマンドレル1を用いて、ホース4を製造するには、
図12、
図13に例示するように、先の実施形態と同様の手順によって、マンドレル1の外周面2a上にホース成形体4Aを成形する。次いで、ホース成形体4Aを加硫する際には、先の実施形態と同様の手順によって、
図14に例示するように、被覆材9により被覆されたホース成形体4Aをマンドレル1とともに加硫装置10の内部に配置する。
【0048】
このホース成形体4Aの長手方向一端部にはヘッド部11bが装着され、ホース成形体4Aの長手方向端端部には蓋部11dが装着される。ホース成形体4Aの内部は、装着されたヘッド部11bおよび蓋部11dによって封止された状態になる。ヘッド部11bに形成されている貫通路11cの端部がマンドレル1(ホース成形体4Aの内周側部分)の位置にセットされる。
【0049】
ホース成形体4Aの加硫工程では、ホース成形体4Aが所定の加硫状態になった以降に、マンドレル1の全体を溶融させた状態にする。
【0050】
詳述すると、先の実施形態と同様に、所定の加硫温度T1でホース成形体4Aを加硫することで、未加硫ゴムの加硫反応をある程度進行させて、ホース成形体4Aの形状が実質的に変化しなくなった状態(所定の加硫状態)にする。その後、加硫温度T1をT2に上昇させて加硫工程をさらに所定の加硫時間D2継続し、ホース成形体4Aを完全に加硫してホース4を製造する
【0051】
加硫温度T1は、マンドレル1を形成している樹脂の溶融温度A1よりも低く設定される。加硫温度T2は、マンドレル1を形成している樹脂の溶融温度A1以上に設定される。したがって、加硫温度をT2に上昇させるとマンドレル1の全体が溶融する。
【0052】
図15に例示するように、マンドレル1を形成している樹脂が溶融している状態で、吸引手段11aを稼働させることにより、溶融させた樹脂をホース4の内部から除去する。これにより、加硫されたホース4の内部は中空になる。尚、マンドレル1を形成している樹脂をすべてホース4の内部から除去することが望ましいが、多少残存してもよい。ホース4の内部に樹脂が残存した場合は、例えば公知の方法でホース4の長手方向一端側から内部に水圧を付与して長手方向他端側から排出させて除去する。
【0053】
この実施形態では、除去装置11によって、マンドレル1を形成している樹脂を除去することで、加硫後のホース4からマンドレル1を除去することができるため、マンドレル1を除去する工程に要する時間を短縮できる。これに伴い、ホース4の生産性を向上させるには有利になる。
【0054】
ホース4の内部から除去した樹脂は、再利用してマンドレル1として再生させることができる。再生させたマンドレル1は新たなホース4を製造する際に用いることができる。
【0055】
樹脂繊維からなる補強コード6aにより形成された補強層6を有するホース成形体4Aを成形して加硫してホース4を製造すると、ホース4の製造後に補強コード6aが熱収縮する。その結果、マンドレル1の外周面2aとホース4の内周面5aとがより強く密着して、ホース4からマンドレル1を引抜き難くなる。本発明によれば、このような仕様のホース4を製造する場合であっても、ホース4からマンドレル1を除去し易くなる。したがって、本発明は、このような仕様のホース4を製造する際には特に有益である。
【符号の説明】
【0056】
1 マンドレル
2 外周層(最外周の樹脂層)
2a 外周面
3 芯部
4 ホース
4A ホース成形体
5 内面層
5a 内周面
6 補強層
6a 補強コード
7 中間ゴム層
8 外面層
9 被覆材
10 加硫装置
11 溶融樹脂の除去装置
11a 吸引手段
11b ヘッド部
11c 貫通路
11d 蓋部