(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023012830
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】膝拘束装置
(51)【国際特許分類】
B60R 21/045 20060101AFI20230119BHJP
【FI】
B60R21/045 331
B60R21/045 332
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021116543
(22)【出願日】2021-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】高井 一
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼井 裕紀
(57)【要約】
【課題】膝の拘束時に収容部から収容物がインストルメントパネルの外部へ飛散するのを抑制する。
【解決手段】グローブボックス31は、インストルメントパネル13の後壁部14の窓部21を開放及び閉塞する蓋部32を備え、蓋部32の前方に収容部45を備える。蓋部32は、意匠面35を有するアウタ部材33と、アウタ部材33及び収容部45の間のインナ部材41とを備える。膝拘束装置60の蓋部駆動機構61は、助手席乗員P1の膝PKの非拘束時には蓋部32を、アウタ部材33がインナ部材41に接近した接近形態にする。また、蓋部駆動機構61は、接近形態の蓋部32による窓部21の閉塞時であって、膝PKの拘束時には、同蓋部32のアウタ部材33のみを、窓部21を閉塞する位置よりも後方へ移動させる。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のインストルメントパネルの後壁部のうち、助手席乗員の膝の前方となる箇所に設けられた窓部を開放及び閉塞する蓋部を備えるとともに、出入口を有する収容部を前記蓋部の前方に備えるグローブボックスに適用される膝拘束装置であって、
前記蓋部は、前記グローブボックスの意匠面を有するアウタ部材と、前記アウタ部材及び前記収容部の間に配置されたインナ部材とを備えており、
前記膝の非拘束時には、前記蓋部を、前記アウタ部材が前記インナ部材に対し接近された接近形態にし、前記接近形態の前記蓋部による前記窓部の閉塞時であって、前記膝の拘束時には、前記蓋部の前記アウタ部材のみを、前記窓部を閉塞する位置よりも後方へ移動させる蓋部駆動機構がさらに設けられている膝拘束装置。
【請求項2】
前記収容部は上端部に前記出入口を有し、
前記インナ部材は前記収容部に対し一体に形成されており、
前記インナ部材及び前記収容部を備えて構成されるボックス本体部は、前記収容部よりも下方に設けられた軸により、前記インストルメントパネルに回動可能に支持され、
前記窓部の前記開放及び閉塞は、前記ボックス本体部が、前記軸を中心として前後方向へ回動されることによりなされる請求項1に記載の膝拘束装置。
【請求項3】
前記収容部は、後端部に前記出入口を有し、
前記収容部は、前記出入口を前記窓部に連通させた状態で、前記インストルメントパネル内に固定され、
前記蓋部の下端部は、軸により、前記収容部又は前記インストルメントパネルに回動可能に支持され、
前記窓部の前記開放及び閉塞は、前記蓋部が、前記軸を中心として前後方向へ回動されることによりなされる請求項1に記載の膝拘束装置。
【請求項4】
前記窓部は、上側ほど後方に位置するように傾斜しており、
前記蓋部駆動機構は、前記膝の非拘束時には、前記アウタ部材を、上側ほど後方に位置するように傾斜した状態にし、
前記蓋部駆動機構は、前記膝の拘束時には、前記アウタ部材を平行移動させる平行移動機構部を備えている請求項1~3のいずれか1項に記載の膝拘束装置。
【請求項5】
前記平行移動機構部は、前記窓部の傾斜方向における前記インナ部材の複数箇所に設けられたピンと、前記傾斜方向における前記アウタ部材の複数箇所に設けられて、対応する前記ピンに対し摺動可能に係合されたガイド溝とを備えている請求項4に記載の膝拘束装置。
【請求項6】
前記平行移動機構部は、前記窓部の傾斜方向に互いに平行に離間した状態で配置されて、前記インナ部材及び前記アウタ部材に連結された複数のリンク部材を備え、
各リンク部材の前記インナ部材に対する連結は、同リンク部材の一方の端部を前記インナ部材に回動可能に支持する第1軸によりなされ、
各リンク部材の前記アウタ部材に対する連結は、同リンク部材の他方の端部を前記アウタ部材に回動可能に支持する第2軸によりなされている請求項4に記載の膝拘束装置。
【請求項7】
前記平行移動機構部は、互いに交差した状態で配置されて、前記インナ部材及び前記アウタ部材に連結された一対のリンク部材を備え、
両リンク部材は、交差部分で連結軸により回動可能に連結され、
各リンク部材の前記インナ部材に対する連結は、同リンク部材の一方の端部を前記インナ部材に回動可能に支持する第3軸によりなされ、
各リンク部材の前記アウタ部材に対する連結は、同リンク部材の他方の端部を前記アウタ部材に回動可能に支持する第4軸によりなされ、
一方の前記リンク部材を前記インナ部材に連結する前記第3軸は、同インナ部材に移動不能に設けられ、前記一方の前記リンク部材を前記アウタ部材に連結する前記第4軸は、同リンク部材を前記アウタ部材に対し、前記窓部の傾斜方向に移動可能に連結し、
他方の前記リンク部材を前記アウタ部材に連結する前記第4軸は、同アウタ部材に移動不能に設けられ、前記他方の前記リンク部材を前記インナ部材に連結する前記第3軸は、同リンク部材を前記インナ部材に対し、前記傾斜方向に移動可能に連結している請求項4に記載の膝拘束装置。
【請求項8】
前記インストルメントパネル内には、膨張用ガスにより後方へ膨張するエアバッグが配置されており、
前記アウタ部材は、膨張する前記エアバッグから後方へ向かう力を受ける受圧部を備えている請求項1~7のいずれか1項に記載の膝拘束装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前面衝突等により自動車に対し前方から衝撃が加わった場合に、助手席乗員の膝を前方から拘束する膝拘束装置に関する。
【背景技術】
【0002】
前面衝突等により自動車に対し前方から衝撃が加わると、乗員は慣性により前方へ移動しようとする。この乗員の膝を上記衝撃から保護する装置として、自動車に対し前方から衝撃が加わった場合に、膝を前方から拘束する膝拘束装置が種々提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、運転者の膝を拘束する膝拘束装置が記載されている。この膝拘束装置は、インストルメントパネルの後壁部のうち、運転者の膝の前方となる箇所が膝拘束体によって構成されている。膝拘束体は、インストルメントパネルから後方へ突出されて、膝を前方から拘束する。
【0004】
上記膝拘束装置は、運転者の膝を拘束することを前提として設計されている。
一方、インストルメントパネルのうち助手席乗員の膝の前方となる箇所には、車検証等の書類、小物類等を収容するグローブボックスが一般に設けられている。そのため、上記特許文献1に記載された膝拘束装置を、助手席乗員の膝を拘束する膝拘束装置に適用することが難しい。
【0005】
これに対し、特許文献2には、グローブボックスを利用した膝拘束装置が提案されている。インストルメントパネルの後壁部のうち、助手席乗員の膝の前方となる箇所には、窓部が開口されている。グローブボックスのボックス本体部は、蓋部と、蓋部の前方に一体に形成され、かつ上端が開放された収容部とを備える。ボックス本体部は、蓋部によって窓部を開放する位置と、窓部を閉塞する位置との間で移動可能である。そして、膝の拘束時には、蓋部が窓部を閉塞する位置よりも後方に位置するようにボックス本体部が後方へ移動される。そのため、蓋部によって膝が前方から拘束される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005-280461号公報
【特許文献2】特開2016-124324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、特許文献2の膝拘束装置の構成では、膝を拘束するためにボックス本体部が後方へ移動したとき、収容部の少なくとも一部がインストルメントパネルの外部へ出る。そのため、収容部に収容されていた収容物がグローブボックスの外部へ飛散するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する膝拘束装置は、自動車のインストルメントパネルの後壁部のうち、助手席乗員の膝の前方となる箇所に設けられた窓部を開放及び閉塞する蓋部を備えるとともに、出入口を有する収容部を前記蓋部の前方に備えるグローブボックスに適用される膝拘束装置であって、前記蓋部は、前記グローブボックスの意匠面を有するアウタ部材と、前記アウタ部材及び前記収容部の間に配置されたインナ部材とを備えており、前記膝の非拘束時には、前記蓋部を、前記アウタ部材が前記インナ部材に対し接近された接近形態にし、前記接近形態の前記蓋部による前記窓部の閉塞時であって、前記膝の拘束時には、前記蓋部の前記アウタ部材のみを、前記窓部を閉塞する位置よりも後方へ移動させる蓋部駆動機構がさらに設けられている。
【0009】
上記の構成によれば、膝の非拘束時には、蓋部駆動機構により、蓋部は、アウタ部材がインナ部材に対し接近された接近形態にされる。この接近形態の蓋部は、インストルメントパネルの窓部を開放する位置と、閉塞する位置との間で移動可能である。
【0010】
接近形態の蓋部による窓部の閉塞時であって、膝拘束装置による膝の拘束時には、蓋部駆動機構により、同蓋部のアウタ部材のみが、窓部を閉塞する位置よりも後方へ移動させられる。このアウタ部材が助手席乗員の膝に当たることにより、膝が前方から拘束される。このときには、インナ部材が窓部を閉塞している。収容部はインストルメントパネルの内部に位置する。そのため、収容部に収容物が収容されていても、その収容物はインストルメントパネルの外部へ飛散することを抑制される。
【0011】
上記膝拘束装置において、前記収容部は上端部に前記出入口を有し、前記インナ部材は前記収容部に対し一体に形成されており、前記インナ部材及び前記収容部を備えて構成されるボックス本体部は、前記収容部よりも下方に設けられた軸により、前記インストルメントパネルに回動可能に支持され、前記窓部の前記開放及び閉塞は、前記ボックス本体部が、前記軸を中心として前後方向へ回動されることによりなされることが好ましい。
【0012】
上記の構成によれば、ボックス本体部が、軸を中心として前後方向へ回動されることにより、蓋部が窓部に対し離間及び接近し、同蓋部による窓部の開放及び閉塞がなされる。
上記膝拘束装置において、前記収容部は、後端部に前記出入口を有し、前記収容部は、前記出入口を前記窓部に連通させた状態で、前記インストルメントパネル内に固定され、前記蓋部の下端部は、軸により、前記収容部又は前記インストルメントパネルに回動可能に支持され、前記窓部の前記開放及び閉塞は、前記蓋部が、前記軸を中心として前後方向へ回動されることによりなされることが好ましい。
【0013】
上記の構成によれば、蓋部が、軸を中心として前後方向へ回動されることにより、同蓋部が窓部に対し離間及び接近し、同蓋部による窓部の開放及び閉塞がなされる。
上記膝拘束装置において、前記窓部は、上側ほど後方に位置するように傾斜しており、前記蓋部駆動機構は、前記膝の非拘束時には、前記アウタ部材を、上側ほど後方に位置するように傾斜した状態にし、前記蓋部駆動機構は、前記膝の拘束時には、前記アウタ部材を平行移動させる平行移動機構部を備えていることが好ましい。
【0014】
上記の構成によれば、膝拘束装置の作動時には、アウタ部材が蓋部駆動機構の平行移動機構部により平行移動させられる。アウタ部材は、上側ほど後方に位置するように傾斜した状態、すなわち、膝と同様の傾斜状態にされる。そのため、膝がアウタ部材の広い領域によって受け止められ、膝の拘束が効率よく行なわれる。
【0015】
上記膝拘束装置において、前記平行移動機構部は、前記窓部の傾斜方向における前記インナ部材の複数箇所に設けられたピンと、前記傾斜方向における前記アウタ部材の複数箇所に設けられて、対応する前記ピンに対し摺動可能に係合されたガイド溝とを備えていることが好ましい。
【0016】
上記の構成によれば、アウタ部材に設けられた複数のガイド溝が、同ガイド溝に対応してインナ部材に設けられたピンに対し摺動することにより、アウタ部材は、上側ほど後方に位置するように傾斜した状態を保ちながら平行移動する。従って、膝の拘束時には、アウタ部材は、上側ほど後方に位置するように傾斜した状態で、膝を受け止めることが可能である。
【0017】
上記膝拘束装置において、前記平行移動機構部は、前記窓部の傾斜方向に互いに平行に離間した状態で配置されて、前記インナ部材及び前記アウタ部材に連結された複数のリンク部材を備え、各リンク部材の前記インナ部材に対する連結は、同リンク部材の一方の端部を前記インナ部材に回動可能に支持する第1軸によりなされ、各リンク部材の前記アウタ部材に対する連結は、同リンク部材の他方の端部を前記アウタ部材に回動可能に支持する第2軸によりなされていることが好ましい。
【0018】
上記の構成によれば、複数のリンク部材がそれぞれ第1軸を中心として同一の方向へ回動すると、アウタ部材は、上側ほど後方に位置するように傾斜した状態を保ちながら平行移動する。従って、膝の拘束時には、アウタ部材は、窓部を閉塞する位置よりも後方で、上側ほど後方に位置するように傾斜した状態で、膝を受け止めることが可能である。
【0019】
上記膝拘束装置において、前記平行移動機構部は、互いに交差した状態で配置されて、前記インナ部材及び前記アウタ部材に連結された一対のリンク部材を備え、両リンク部材は、交差部分で連結軸により回動可能に連結され、各リンク部材の前記インナ部材に対する連結は、同リンク部材の一方の端部を前記インナ部材に回動可能に支持する第3軸によりなされ、各リンク部材の前記アウタ部材に対する連結は、同リンク部材の他方の端部を前記アウタ部材に回動可能に支持する第4軸によりなされ、一方の前記リンク部材を前記インナ部材に連結する前記第3軸は、同インナ部材に移動不能に設けられ、前記一方の前記リンク部材を前記アウタ部材に連結する前記第4軸は、同リンク部材を前記アウタ部材に対し、前記窓部の傾斜方向に移動可能に連結し、他方の前記リンク部材を前記アウタ部材に連結する前記第4軸は、同アウタ部材に移動不能に設けられ、前記他方の前記リンク部材を前記インナ部材に連結する前記第3軸は、同リンク部材を前記インナ部材に対し、前記傾斜方向に移動可能に連結していることが好ましい。
【0020】
上記の構成によれば、一方の第3軸は、インナ部材に対し移動不能であるが、他方の第3軸は、インナ部材に対し窓部の傾斜方向に移動可能である。そのため、後者の第3軸を上記傾斜方向へ移動させることで、前者の第3軸に対し、上記傾斜方向に沿って接近及び離間させることが可能である。
【0021】
また、一方の第4軸は、アウタ部材に対し移動不能であるが、他方の第4軸は、アウタ部材に対し上記傾斜方向に移動可能である。そのため、後者の第4軸を上記傾斜方向へ移動させることで、前者の第4軸に対し、上記傾斜方向に沿って接近及び離間させることが可能である。
【0022】
そして、第3軸及び第4軸の上記移動により、両第3軸間の間隔が変化し、両第4軸間の間隔が変化するとともに、両リンク部材のなす角度が変化する。アウタ部材は、上側ほど後方に位置するように傾斜した状態を保ちながら平行移動する。従って、膝の拘束時に、アウタ部材を後方へ平行移動させることで、上側ほど後方に位置するように傾斜したアウタ部材によって、膝を受け止めることが可能である。
【0023】
上記膝拘束装置において、前記インストルメントパネル内には、膨張用ガスにより後方へ膨張するエアバッグが配置されており、前記アウタ部材は、膨張する前記エアバッグから後方へ向かう力を受ける受圧部を備えていることが好ましい。
【0024】
上記の構成によれば、インストルメントパネル内に配置されたエアバッグが膨張用ガスにより膨張すると、アウタ部材に設けられた受圧部に対し、エアバッグから後方へ向かう力が加わる。この力により、窓部を閉塞している接近形態の蓋部のアウタ部材のみが、窓部を閉塞する位置よりも後方へ移動させられる。
【発明の効果】
【0025】
上記膝拘束装置によれば、膝の拘束時に収容部から収容物がインストルメントパネルの外部へ飛散するのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】第1実施形態において、膝拘束装置がグローブボックスに設けられた自動車の車室の前部を示す部分斜視図である。
【
図2】第1実施形態において、膝の非拘束時に、窓部が接近形態の蓋部によって閉塞された状態を示す部分正面図である。
【
図5】第1実施形態において、
図3の状態から接近形態の蓋部が窓部を開放する位置へ回動された状態を示す部分側断面図である。
【
図6】
図3に対応する図であり、膝の拘束時に、接近形態の蓋部のアウタ部材のみが、窓部を閉塞する位置よりも後方へ移動された状態を示す部分側断面図である。
【
図7】
図4に対応する図であり、膝の拘束時に、接近形態の蓋部のアウタ部材のみが、窓部を閉塞する位置よりも後方へ移動された状態を示す部分側断面図である。
【
図8】第1実施形態において、膝の非拘束時に、窓部が接近形態の蓋部により閉塞された状態を蓋部駆動機構とともに示す部分側断面図である。
【
図9】第1実施形態において、膝の拘束時に、接近形態の蓋部のアウタ部材のみが、窓部を閉塞する位置よりも後方へ移動された状態を蓋部駆動機構とともに示す部分側断面図である。
【
図10】膝拘束装置の第2実施形態を示す図であり、膝の非拘束時に、窓部が接近形態の蓋部によって閉塞された状態を示す部分側断面図である。
【
図11】第2実施形態において、膝の非拘束時に、接近形態の蓋部が窓部を開放する位置へ回動された状態を示す部分側断面図である。
【
図12】第2実施形態において、膝の非拘束時に、窓部が接近形態の蓋部によって閉塞された状態を蓋部駆動機構とともに示す部分側断面図である。
【
図13】第2実施形態において、膝の拘束時に、接近形態の蓋部のアウタ部材のみが、窓部を閉塞する位置よりも後方へ移動された状態を蓋部駆動機構とともに示す部分側断面図である。
【
図14】第2実施形態の第1変形例を示す図であり、膝の非拘束時に、窓部が接近形態の蓋部によって閉塞された状態を蓋部駆動機構とともに示す部分側断面図である。
【
図15】第1変形例を示す図であり、膝の拘束時に、接近形態の窓部のアウタ部材のみが、窓部を閉塞する位置よりも後方へ移動された状態を蓋部駆動機構とともに示す部分側断面図である。
【
図16】第2実施形態の第2変形例を示す図であり、膝の非拘束時に、窓部が接近形態の蓋部によって閉塞された状態を蓋部駆動機構とともに示す部分側断面図である。
【
図17】第2変形例を示す図であり、膝の拘束時に、接近形態の蓋部のアウタ部材のみが、窓部を閉塞する位置よりも後方へ移動された状態を蓋部駆動機構とともに示す部分側断面図である。
【
図18】第2実施形態の第3変形例を示す図であり、膝の非拘束時に、窓部が接近形態の蓋部によって閉塞された状態を蓋部駆動機構とともに示す部分側断面図である。
【
図19】第3変形例を示す図であり、膝の拘束時に、接近形態の蓋部のアウタ部材のみが、窓部を閉塞する位置よりも後方へ移動された状態を蓋部駆動機構とともに示す部分側断面図である。
【
図20】第2実施形態の第4変形例を示す図であり、膝の非拘束時に、窓部が接近形態の蓋部によって閉塞された状態を蓋部駆動機構とともに示す部分側断面図である。
【
図21】第4変形例を示す図であり、膝の拘束時に、接近形態の蓋部のアウタ部材のみが、窓部を閉塞する位置よりも後方へ移動された状態を蓋部駆動機構とともに示す部分側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(第1実施形態)
以下、膝拘束装置の第1実施形態について、
図1~
図9を参照して説明する。
なお、以下の記載においては、自動車の前進方向を前方とし、後進方向を後方として説明する。また、上下方向は自動車の上下方向を意味し、左右方向は車幅方向であって自動車の前進時の左右方向と一致するものとする。また、助手席には、衝突試験用のダミーと同様の体格を有する乗員(以下「助手席乗員」という)が、予め定められた正規の姿勢で着座し、シートベルト装置によって拘束されているものとする。
【0028】
図1及び
図2に示すように、自動車10の車室11内において図示しない助手席の前方であって、ウインドシールド12の下方には、インストルメントパネル13が配置されている。インストルメントパネル13の後壁部14は、上側ほど後方に位置するように、水平面に対し傾斜している(
図3参照)。
【0029】
インストルメントパネル13において、助手席の前方となる箇所の一部は、インパネロア15によって構成されている。
図2~
図4に示すように、インパネロア15は、左右方向に互いに離間した状態で前方及び上下方向へ延びる一対の側壁部16を備えている。インパネロア15は、両側壁部16間の後端部に窓部21を有している。窓部21は、上記後壁部14と同様、上側ほど後方に位置するように、水平面に対し傾斜している。また、インパネロア15は、両側壁部16間の後下部に、左右方向に延びる軸22を有している。
【0030】
図3に示すように、インストルメントパネル13の内部には、エアバッグ装置25が配置されている。エアバッグ装置25は、膨張用ガスを発生するインフレータ26と、インフレータ26から噴出される膨張用ガスにより、後方へ展開及び膨張するエアバッグ27とを備えている。エアバッグ27は、折り畳まれることによりコンパクトな形態にされて配置されている。なお、
図3では、エアバッグ装置25が簡略化して図示されている。
【0031】
インパネロア15には、蓋部32及び収容部45を備えるグローブボックス31が設けられている。蓋部32は、グローブボックス31の後端部を構成しており、上記窓部21を開放及び閉塞する。収容部45は、車検証等の書類、小物類等からなる収容物を収容する部分であり、蓋部32の前方に隣接している。収容部45の前端部及び上端部は開放されている。収容部45の上端の開放部分は、上記収容物の出入口46を構成している。
【0032】
上記蓋部32は、アウタ部材33及びインナ部材41を備えている。アウタ部材33は、アウタ本体部34と、アウタ本体部34の上部の前方に配置されて、同アウタ本体部34に固定された受圧部36とを備えている。アウタ本体部34の後面は、グローブボックス31の意匠面35を構成している。受圧部36は、アウタ部材33のうち、展開及び膨張する上記エアバッグ27から後方へ向かう力を受ける箇所である。
【0033】
インナ部材41は、アウタ部材33と収容部45との間に配置されている。インナ部材41は、収容部45の前端部の開放部分を塞いだ状態で、同収容部45に対し一体に形成されている。インナ部材41及び収容部45によりボックス本体部47が構成されている。ボックス本体部47において、収容部45よりも下方には軸受部(図示略)が設けられている。ボックス本体部47は、軸受部において、上記軸22に支持されている。ボックス本体部47は、軸22を中心として、閉位置及び開位置の間で回動可能である。閉位置は、
図3及び
図4に示すように、蓋部32が、上側ほど後方に位置するように、水平面に対し傾斜した状態にされて、窓部21を閉塞する位置である。開位置は、
図5において実線で示すように、蓋部32が略水平な状態にされて、窓部21が大きく開放される位置である。
【0034】
さらに、
図2及び
図7に示すように、ボックス本体部47及びインパネロア15の間には、同ボックス本体部47をインパネロア15に対し、解除可能に連結するための連結機構部51が設けられている。連結機構部51は、一対の係合孔部17、操作ハンドル52、一対のロックピン53及び伝達機構55を備えている。
【0035】
各係合孔部17は、インパネロア15の上記両側壁部16を左右方向に貫通している。操作ハンドル52は、インナ部材41の後上部に設けられ、かつ後端が開放された凹部42に配置されている。操作ハンドル52は、インナ部材41に対し、上下方向へ回動可能に支持されている。一対のロックピン53は、インナ部材41により左右方向へ移動可能に支持されている。
【0036】
ここで、連結機構部51の構成部材、部分等を特定するために、左右方向のうち、両側壁部16間の中央部に近づく方向を「内」、「内方」等といい、同中央部から遠ざかる方向を「外」、「外方」等というものとする。
【0037】
伝達機構55は、操作ハンドル52の上下方向の回動を、左右方向であって互いに反対方向の直線運動に変換して両ロックピン53に伝達する機能を担っている。伝達機構55は、操作ハンドル52が回動操作されないときには、各ロックピン53をインナ部材41から外方へ突出させて、対応する係合孔部17に係合させる。この係合により、ボックス本体部47がインパネロア15に対し連結されて、軸22を中心とするボックス本体部47の回動が規制される。
【0038】
伝達機構55は、操作ハンドル52が上方へ回動操作されると、各ロックピン53を内方へ移動させて係合孔部17から後退させる。伝達機構55は、ボックス本体部47のインパネロア15に対する連結を解除させる。そのため、軸22を中心として、ボックス本体部47を、閉位置及び開位置の間で回動させることが可能となる。
【0039】
上記グローブボックス31には、前面衝突等により、自動車10に対し前方から所定値以上の大きさの衝撃が加わった場合に、助手席乗員P1の膝PKを前方から拘束してその膝PKを衝撃から保護する膝拘束装置60が設けられている。
【0040】
図2~
図4に示すように、膝拘束装置60の一部は、上記アウタ部材33及びインナ部材41によって構成されている。膝拘束装置60は、さらに、
図8及び
図9に示すように、蓋部32を次のように駆動する蓋部駆動機構61を備えている。
【0041】
・膝PKの非拘束時(
図8)には、蓋部32を、アウタ部材33がインナ部材41に対し接近した接近形態にする。接近形態では、アウタ部材33がインナ部材41に対し、接触又は接触に近い状態で接近する。
【0042】
・接近形態の蓋部32による窓部21の閉塞時であって、膝拘束装置60による膝PKの拘束時(
図9)には、同蓋部32のアウタ部材33のみを、窓部21を閉塞する位置よりも後方へ移動させる。
【0043】
蓋部駆動機構61は平行移動機構部62を備えている。
図8に示すように、平行移動機構部62は、膝PKの非拘束時には、アウタ部材33を、上側ほど後方に位置するように傾斜した状態にする。また、
図9に示すように、平行移動機構部62は、膝PKの拘束時には、アウタ部材33を後下方へ平行移動させる。なお、
図8及び
図9では、膝PKは、前方からの衝撃により前方へ移動したときの状態で図示されている。この点は、
図6、
図7、及び後述する
図12~
図21に関しても同様である。
【0044】
図8及び
図9に示すように、平行移動機構部62は、複数のピン63と、ピン63と同数のガイド溝64とを備えている。複数のピン63は、インナ部材41において、窓部21の傾斜方向に互いに離間した複数箇所に設けられており、それぞれ左右方向へ延びている。ガイド溝64は、アウタ部材33において、上記傾斜方向に互いに離間した複数箇所に設けられている。各ガイド溝64の大部分は、下側ほど後方に位置するように、水平面に対し傾斜している。
【0045】
ガイド溝64及びピン63の各形状、ガイド溝64のピン63との係合箇所等は、次の関係を満たすように設定されている。各ガイド溝64は、膝PKの非拘束時(
図8)には、同ガイド溝64の後端部において、対応するピン63に係合する。各ガイド溝64は、膝PKの拘束時(
図9)には、同ガイド溝64の前端部において、対応するピン63に係合する。
【0046】
なお、図示はしないが、膝拘束装置60は、膝PKの非拘束時には、蓋部32を接近形態に保持し、膝PKの拘束時にのみアウタ部材33を後方へ移動させる機構を備えている。
【0047】
図3に示すように、膝拘束装置60は、さらに衝撃センサ71及び制御装置72を備えている。衝撃センサ71は加速度センサ等からなり、自動車10に対し前方から加えられる衝撃を検出する。制御装置72は、コンピュータプログラム(ソフトウエア)に従って動作する1つ以上のプロセッサ、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する1つ以上の専用のハードウエア回路、あるいはそれらの組合わせ、を含む回路として構成されている。制御装置72は、衝撃センサ71からの検出信号に基づきインフレータ26の作動を制御する。本実施形態では、制御装置72は、衝撃センサ71が自動車10に対し前方から所定値以上の大きさの衝撃が加わったことを検出した場合に、インフレータ26に対し、同インフレータ26を作動させるための作動信号を出力する。
【0048】
次に、上記のように構成された第1実施形態の作用について説明する。また、作用に伴い生ずる効果についても併せて説明する。
<膝拘束装置60の非作動時>
前面衝突等により、自動車10に対し前方から衝撃が加わらないときには、制御装置72からインフレータ26に対し作動信号が出力されない。インフレータ26から膨張用ガスが噴出されず、エアバッグ27が、折り畳まれた状態に保持される。受圧部36に対し、エアバッグ27による後方へ向かう力が加えられない。
【0049】
図8に示すように、蓋部駆動機構61では、各ガイド溝64が、同ガイド溝64の後端部において、対応するピン63に係合する。
(1A-1)このとき、
図2に示す操作ハンドル52を上方へ回動させる操作が行なわれないと、連結機構部51では、各ロックピン53が、対応する係合孔部17に係合され続ける。ボックス本体部47は、閉位置に保持される。
図3及び
図4に示すように、蓋部32は、上側ほど後方に位置するように、水平面に対し傾斜した状態となって、同様の形態で傾斜した窓部21に接近して、同窓部21を閉塞する。
【0050】
そのため、蓋部32が、窓部21及び後壁部14から後方へ突出しない。グローブボックス31の外観は、膝拘束装置60を有しないタイプのグローブボックスが窓部を閉塞しているときの外観と同様となる。
【0051】
蓋部32よりも前方の収容部45は、インストルメントパネル13の内部に位置する。
(1A-2)これに対し、
図2に示す操作ハンドル52を上方へ回動させる操作が行なわれると、連結機構部51では、各ロックピン53が内方へ移動して係合孔部17から後退する。ボックス本体部47のインパネロア15に対する連結が解除される。そのため、ボックス本体部47を、閉位置及び開位置の間で回動させることが可能になる。
【0052】
図5において二点鎖線で示すように、閉位置にあるボックス本体部47を、軸22を中心として後方へ回動させると、同
図5において実線で示すように、接近形態の蓋部32が後方へ移動する。蓋部32が窓部21から離間し、同窓部21が開放される。ボックス本体部47が開位置まで回動されると、蓋部32が略水平状態となる。
【0053】
また、ボックス本体部47の上記回動に伴い、収容部45もまた軸22を中心として後方へ回動する。インストルメントパネル13の内部に位置していた出入口46の一部が、上記回動に伴い窓部21よりも後方へ出て、開放される。ボックス本体部47が開位置まで回動されると、出入口46が大きく開放される。
【0054】
そのため、開放された出入口46から収容部45内に、収容物を収容したり、収容部45内の収容物を出入口46からインストルメントパネル13の外部へ取り出したりすることが可能となる。
【0055】
また、
図5において実線で示すように、上記開位置にあるボックス本体部47を、軸22を中心として前方へ回動させると、蓋部32が上側ほど後方に位置するように傾斜した状態となる。蓋部32が前方へ移動して窓部21に接近する。ボックス本体部47の回動に伴い、蓋部32の水平面に対しなす角度が徐々に大きくなる。
【0056】
図5において二点鎖線で示すように、ボックス本体部47が閉位置まで回動されると、蓋部32が窓部21に接近し、同窓部21を閉塞する。このとき、
図2に示す連結機構部51では、各ロックピン53が外方へ移動し、対応する係合孔部17に係合される。ボックス本体部47が連結機構部51によってインパネロア15に連結される。そのため、ボックス本体部47は、閉位置に保持される。
【0057】
<膝拘束装置60の作動時>
図3及び
図4において、接近形態の蓋部32による窓部21の閉塞時に自動車10に対し、前面衝突等により、前方から衝撃が加わると、助手席乗員P1は慣性により前方へ移動しようとする。膝PKは、
図6~
図9において二点鎖線で示すように、前方へ移動しようとする。
【0058】
これに対し、自動車10に所定値以上の大きさの衝撃が加わったことが、
図3に示す衝撃センサ71によって検出されると、制御装置72からインフレータ26に対し作動信号が出力される。インフレータ26から膨張用ガスが噴出され、エアバッグ27に供給される。膨張用ガスが供給されたエアバッグ27は、後方へ展開及び膨張する。エアバッグ27の後方へ向かう力が受圧部36を介してアウタ部材33に加わる。
【0059】
インナ部材41は、
図2に示す連結機構部51によってインパネロア15に連結され続け、閉位置に保持される。
(1B-1)そのため、
図6及び
図7に示すように、エアバッグ27から受ける上記力により、窓部21を閉塞している接近形態の蓋部32のアウタ部材33のみが、窓部21を閉塞する位置よりも後方へ移動される。
【0060】
このように、エアバッグ27が展開及び膨張する際の圧力を利用することで、後方へ向かう力を受圧部36に加えることができる。
アウタ部材33が、上記衝撃に応じて前方へ移動しようとする膝PKに当たる。アウタ部材33の膝PKとの接触により、膝PKの前方移動が抑制され、膝PKが衝撃から保護される。
【0061】
(1B-2)特に、
図8及び
図9に示すように、後方へ向かう力を受けたアウタ部材33は、平行移動機構部62によって、同力を受ける前の姿勢、すなわち、上側ほど後方に位置するように傾斜した姿勢を保ちながら後下方へ平行移動させられる。アウタ部材33は、膝PKと同様の傾斜状態にされる。そのため、膝PKをアウタ部材33の広い領域によって受け止めることができ、膝PKの拘束を効率よく行なうことができる。
【0062】
(1B-3)第1実施形態では、
図8及び
図9に示すように、アウタ部材33のガイド溝64が、インナ部材41のピン63に対し摺動することにより、同アウタ部材33が、上側ほど後方に位置するように傾斜した状態を保ちながら平行移動する。従って、膝PKの拘束時には、アウタ部材33は、上側ほど後方に位置するように傾斜した状態で、膝PKを受け止めることが可能である。
【0063】
(1B-4)このとき、インナ部材41は、連結機構部51によって窓部21を閉塞する位置に保持される。収容部45はインストルメントパネル13の内部に位置する。そのため、収容部45に収容物が収容されていても、その収容物がインストルメントパネル13の外部へ飛散するのを抑制できる。
【0064】
(1Bー5)第1実施形態では、
図5に示すボックス本体部47が軸22を中心として回動することにより、窓部21を開放及び閉塞するタイプのグローブボックス31に対し、上記
図8及び
図9に示す蓋部駆動機構61を設けている。
【0065】
そのため、自動車用グローブボックスとして広く採用されている上記タイプのグローブボックス31において、膝PKを拘束するとともに、収容物の飛散を抑制する上記効果を得ることができる。
【0066】
(第2実施形態)
次に、膝拘束装置の第2実施形態について、
図10~
図13を参照して説明する。
第2実施形態では、グローブボックス81の構成が第1実施形態のグローブボックス31と異なっている。
【0067】
図10~
図13は、上記
図4と同様、操作ハンドル52を通る断面におけるグローブボックス81の断面構造を示している。上記
図3のように、受圧部を通る断面におけるグローブボックス81の断面構造については、図示が省略されている。また、図示はしないが、インストルメントパネル13の内部には、第1実施形態と同様のエアバッグ装置が配置されている。
【0068】
図10に示すように、インパネロア15には、蓋部82及び収容部88を備えるグローブボックス81が設けられている。
収容部88の後端部は開放されている。収容部88の後端の上記開放部分は、収容物の出入口89を構成している。収容部88は、出入口89を窓部21に連通させた状態で、インストルメントパネル13内に固定されている。
【0069】
蓋部82は、アウタ部材83及びインナ部材86を備えている。アウタ部材83は、アウタ本体部84と、アウタ本体部84の上部の前方に配置されて、同アウタ本体部84に固定された図示しない受圧部とを備えている。アウタ本体部84の後面は、グローブボックス81の意匠面85を構成している。受圧部は、第1実施形態と同様に、アウタ部材83のうち、展開及び膨張する上記エアバッグから後方へ向かう力を受ける箇所である。
【0070】
インナ部材86は、アウタ部材83及び収容部88の間に配置されている。インナ部材86は、収容部88とは別に形成されている。この点において、第2実施形態は、インナ部材41が収容部45に一体に形成されて、同収容部45と一緒に回動する第1実施形態と異なっている。
【0071】
インナ部材86は、下端部において、インパネロア15の上記軸22に支持されているが、収容部88に対し軸により回動可能に支持されてもよい。インナ部材86は、軸22を中心として、閉位置及び開位置の間で回動可能である。閉位置は、
図10に示すように、インナ部材86が上側ほど後方に位置するように、水平面に対し傾斜した状態にされて、窓部21及び出入口89を閉塞する位置である。開位置は、
図11において実線で示すように、インナ部材86が略水平状態にされて、窓部21及び出入口89を大きく開放させる位置である。
【0072】
さらに、インナ部材86及びインパネロア15の間には、同インナ部材86をインパネロア15に対し、解除可能に連結するための連結機構部51が設けられている。連結機構部51は、第1実施形態と同様の構成を有している。
【0073】
図12及び
図13に示すように、第2実施形態の蓋部駆動機構61は、第1実施形態と同様、平行移動機構部62を備えている。平行移動機構部62は、複数のピン63と、ピン63と同数のガイド溝64とを備えている。複数のピン63は、インナ部材86において、窓部21の傾斜方向に互いに離間した複数箇所に設けられており、それぞれ左右方向へ延びている。ガイド溝64は、アウタ部材83において、上記傾斜方向に互いに離間した複数箇所に設けられている。各ガイド溝64の大部分は、下側ほど後方に位置するように、水平面に対し傾斜している。各ガイド溝64は、対応するピン63に対し摺動可能に係合されている。
【0074】
上記以外の構成は、第1実施形態と同様である。そのため、第1実施形態で説明したものと同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
次に、上記のように構成された第2実施形態の作用について説明する。また、作用に伴い生ずる効果についても併せて説明する。なお、第1実施形態に対応する作用及び効果については、括弧内の最後部の数字に「´」を付ける。例えば、第1実施形態の(1A-1)に対応する作用及び効果については、(1A-1´)と記載する。
【0075】
<膝拘束装置90の非作動時>
前面衝突等により、自動車10に対し前方から衝撃が加わらないときには、制御装置72は、インフレータ26に作動信号を出力しない。そのため、受圧部を通じてアウタ部材83に対し、後方へ向かう力が加えられない。
【0076】
図12に示すように、各ガイド溝64は、同ガイド溝64の後端部において、対応するピン63に係合する。このときには、蓋部駆動機構61により、蓋部82は、アウタ部材83がインナ部材86に対し接近した接近形態にされる。接近形態では、第1実施形態と同様、アウタ部材83がインナ部材86に対し、接触又は接触に近い状態で接近する。
【0077】
(1A-1´)このとき、操作ハンドル52を上方へ回動させる操作が行なわれないと、連結機構部51では、各ロックピン53が、対応する係合孔部17に係合され続ける。接近形態の蓋部82は、上側ほど後方に位置するように、水平面に対し傾斜した状態に保持されて、同様の形態で傾斜した窓部21を閉塞し続ける。
【0078】
そのため、蓋部82が窓部21及び後壁部14から後方へ突出しない。グローブボックス81の外観は、膝拘束装置90を有しないグローブボックスが窓部を閉塞しているときの外観と同様となる。
【0079】
(1A-2´)これに対し、操作ハンドル52を上方へ回動させる操作が行なわれると、連結機構部51では、各ロックピン53が内方へ移動して係合孔部17から後退する。インナ部材86のインパネロア15に対する連結が解除される。そのため、接近形態の蓋部82を回動させることが可能になる。
【0080】
図11において二点鎖線で示すように、閉位置にある接近形態の蓋部82を、軸22を中心として後方へ回動させると、同
図11において実線で示すように、同蓋部82が窓部21から後方へ離間し、同窓部21が開放される。
【0081】
ただし、収容部88はインパネロア15内に固定されているため、第1実施形態とは異なり、回動しない。上記のように接近形態の蓋部82が後方へ回動されると、窓部21に加え出入口89も開放される。
【0082】
そのため、開放された窓部21及び出入口89から収容部88内に、収容物を収容したり、収容部88内の収容物を、出入口89及び窓部21からインストルメントパネル13の外部へ取り出したりすることが可能となる。
【0083】
また、出入口89及び窓部21を開放している接近形態の蓋部82を、軸22を中心として前方へ回動させると、同蓋部82が上側ほど後方に位置するように傾斜した状態となる。さらに、接近形態の蓋部82を前方へ回動させると、同蓋部82は窓部21に接近する。蓋部82の水平面に対しなす角度が徐々に大きくなる。蓋部82は、
図11において二点鎖線で示す位置まで回動されると、窓部21及び出入口89を閉塞する。
【0084】
このとき、連結機構部51では、各ロックピン53が外方へ移動して係合孔部17に係合する。蓋部82が連結機構部51によってインパネロア15に連結される。そのため、蓋部82は、出入口89及び窓部21を閉塞した状態に保持される。
【0085】
<膝拘束装置90の作動時>
自動車10に対し、前面衝突等により、前方から衝撃が加わると、助手席乗員P1は慣性により前方へ移動しようとする。
【0086】
これに対し、自動車10に所定値以上の大きさの衝撃が加わったことが衝撃センサ71によって検出されると、制御装置72からインフレータ26に作動信号が出力される。インフレータ26から膨張用ガスが噴出され、この膨張用ガスを供給されたエアバッグ27が展開及び膨張する。エアバッグ27から後方へ向かう力が、受圧部を介してアウタ本体部84に加えられる。
【0087】
図13に示すように、上記力により、アウタ部材83が、閉位置よりも後方へ移動される。しかも、アウタ部材83は、ピン63及びガイド溝64の組み合わせからなる平行移動機構部62により、同力を受ける前の姿勢、すなわち、上側ほど後方に位置するように傾斜した姿勢を保ちながら後方へ平行移動する。アウタ部材83は、膝PKと同様の傾斜状態にされる。
【0088】
インナ部材86は、連結機構部51によってインパネロア15に連結され続け、閉位置に保持される。窓部21及び出入口89は、ともにインナ部材86によって閉塞され続ける。
【0089】
そのため、第2実施形態によると、第1実施形態における上記(1B-1)~(1B-4)と同様の作用及び効果が得られる。第2実施形態によると、そのほかにも、次の作用及び効果が得られる。
【0090】
(1B-5´)第2実施形態では、蓋部82(インナ部材86)が軸22を中心として回動することにより窓部21及び出入口89を開放及び閉塞するタイプのグローブボックス81に対し、上記蓋部駆動機構61を設けている。
【0091】
そのため、自動車用グローブボックスとして広く採用されている上記タイプのグローブボックス81において、膝PKを拘束するとともに、収容物の飛散を抑制する上記効果を得ることができる。
【0092】
(第1変形例)
次に、第2実施形態の第1変形例について、
図14及び
図15を参照して説明する。第1変形例では、蓋部駆動機構61の構成が上記第2実施形態と異なっている。
【0093】
蓋部駆動機構61は、第2実施形態と同様、平行移動機構部62を備えている。平行移動機構部62は、複数のリンク部材91を備えている。複数のリンク部材91は、窓部21の傾斜方向に互いに離間した複数箇所において、平行な状態で配置されている。複数のリンク部材91は、インナ部材86及びアウタ部材83を連結している。
【0094】
各リンク部材91のインナ部材86に対する連結は、同リンク部材91の一方の端部をインナ部材86に回動可能に支持する第1軸92によりなされている。各リンク部材91のアウタ部材83に対する連結は、同リンク部材91の他方の端部をアウタ部材83に回動可能に支持する第2軸93によりなされている。
【0095】
第1変形例では、膝PKの非拘束時(
図14)には、第2軸93が第1軸92の後上方に位置することで、各リンク部材91が上側ほど後方に位置するように、水平面に対し傾斜した状態にされる。
【0096】
また、膝PKの拘束時(
図15)には、第2軸93が第1軸92の後下方に位置することで、各リンク部材91が下側ほど後方に位置するように、水平面に対し傾斜した状態にされる。
【0097】
上記以外の構成は第2実施形態と同様である。そのため、第2実施形態で説明したものと同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
従って、第1変形例によると、第2実施形態と同様の効果が得られる。
【0098】
特に、第1変形例では、膝PKの拘束時には、各リンク部材91が第1軸92を中心として
図14の時計周り方向へ回動する。アウタ部材83は、上側ほど後方に位置するように傾斜した状態を保ちながら後下方へ平行移動する。従って、
図15に示すように、膝PKの拘束時には、アウタ部材83は、上側ほど後方に位置するように傾斜した状態で、膝PKを受け止めることができる。
【0099】
(第2変形例)
次に、第2実施形態の第2変形例について、
図16及び
図17を参照して説明する。第2変形例では、蓋部駆動機構61の構成が第1変形例と異なっている。
【0100】
第2変形例では、各リンク部材91をインナ部材86に連結する第1軸92の位置と、各リンク部材91をアウタ部材83に連結する第2軸93の位置とが第1変形例と異なっている。
【0101】
第2変形例では、膝PKの非拘束時(
図16)には、第2軸93が第1軸92の前下方に位置することで、各リンク部材91が上側ほど後方に位置するように、水平面に対し傾斜した状態にされる。
【0102】
また、膝PKの拘束時(
図17)には、第2軸93が第1軸92の略下方に位置することで、各リンク部材91が鉛直に近い状態にされる。
上記以外の構成は第1変形例と同様である。そのため、第1変形例で説明したものと同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0103】
従って、第2変形例によると、膝PKの拘束時には、各リンク部材91が第1軸92を中心として、
図16の反時計周り方向へ回動する。アウタ部材83は、上側ほど後方に位置するように傾斜した状態を保ちながら後方へ平行移動する。従って、第2変形例によっても、第1変形例と同様に、膝PKの拘束時には、アウタ部材83は、上側ほど後方に位置するように傾斜した状態で、膝PKを受け止めることができる。
【0104】
なお、第2変形例では、膝PKの拘束時に、各リンク部材91が第1変形例とは逆方向へ回動する。そのため、アウタ部材83は第1変形例よりも高い箇所へ移動し、膝PKのより高い箇所に接触して、その膝PKを拘束する。
【0105】
(第3変形例)
次に、第2実施形態の第3変形例について、
図18及び
図19を参照して説明する。第3変形例では、蓋部駆動機構61の構成が第2実施形態と異なっている。
【0106】
蓋部駆動機構61は、第2実施形態と同様、平行移動機構部62を備えている。平行移動機構部62は、互いに交差した状態で配置されて、インナ部材86及びアウタ部材83に連結された一対のリンク部材94,101を備えている。両リンク部材94,101は、交差部分で連結軸98により回動可能に連結されている。各リンク部材94,101のインナ部材86に対する連結は、同リンク部材94,101の一方の端部をインナ部材86に回動可能に支持する第3軸95,102によりなされている。各リンク部材94,101のアウタ部材83に対する連結は、同リンク部材94,101の他方の端部をアウタ部材83に回動可能に支持する第4軸96,103によりなされている。
【0107】
第3変形例では、一方のリンク部材94のインナ部材86に対する連結は、同リンク部材94の上端部をインナ部材86に回動可能に支持する第3軸95によりなされている。この第3軸95はインナ部材86に移動不能に設けられている。上記リンク部材94のアウタ部材83に対する連結は、同リンク部材94の下端部に設けられた第4軸96によりなされている。この第4軸96は、リンク部材94をアウタ部材83に対し、窓部21の傾斜方向に移動可能に連結している。より詳しくは、アウタ部材83には、上記傾斜方向に延びる長孔97が形成されており、上記第4軸96がこの長孔97に移動可能に係合されている。
【0108】
他方のリンク部材101のアウタ部材83に対する連結は、同リンク部材101の上端に設けられた第4軸103によってなされている。この第4軸103はアウタ部材83に移動不能に設けられている。リンク部材101のインナ部材86に対する連結は、同リンク部材101の下端部に設けられた第3軸102になされている。この第3軸102は、リンク部材101をインナ部材86に対し、上記傾斜方向に移動可能に連結している。より詳しくは、インナ部材86には、上記傾斜方向に延びる長孔104が形成されており、上記第3軸102がこの長孔104に移動可能に係合されている。
【0109】
上記以外の構成は第2実施形態と同様である。そのため、第2実施形態で説明したものと同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
従って、第3変形例によると、第2実施形態と同様の効果が得られる。
【0110】
また、一方の第3軸95は、インナ部材86に対し移動不能であるが、他方の第3軸102は、インナ部材86に対し窓部21の傾斜方向に移動可能である。そのため、後者の第3軸102を上記傾斜方向へ移動させることで、前者の第3軸95に対し、上記傾斜方向に沿って接近及び離間させることが可能である。
【0111】
また、一方の第4軸103は、アウタ部材83に対し移動不能であるが、他方の第4軸96は、アウタ部材83に対し上記傾斜方向に移動可能である。そのため、後者の第4軸96を上記傾斜方向へ移動させることで、前者の第4軸103に対し、上記傾斜方向に沿って接近及び離間させることが可能である。
【0112】
そして、第3軸102及び第4軸96の上記移動により、両第3軸95,102間の間隔が変化し、両第4軸96,103間の間隔が変化するとともに、両リンク部材94,101のなす角度が変化する。第4軸103が第3軸95に対し接近及び離間し、第4軸96が第3軸102に対し接近及び離間する。第4軸96,103が連結されたアウタ部材83は、上側ほど後方に位置するように傾斜した状態を保ちながら平行移動する。従って、膝PKの拘束時に、アウタ部材83を後方へ平行移動させることができる。窓部21の後方で上側ほど後方に位置するように傾斜したアウタ部材83によって、膝PKを受け止めることができる。
【0113】
(第4変形例)
次に、第2実施形態の第4変形例について、
図20及び
図21を参照して説明する。第4変形例では、蓋部駆動機構61の構成が第2実施形態と異なっている。
【0114】
蓋部駆動機構61は、インナ部材86に設けられたガイド溝106と、アウタ部材83に設けられて、上記ガイド溝106に摺動可能に係合されたピン105とを備えている。これに加え、蓋部駆動機構61は、ピン105及びガイド溝106から窓部21の傾斜方向の一方、第4変形例では前下方へ離れた箇所で、アウタ部材83をインナ部材86に連結するテザークリップ107を備えている。
【0115】
テザークリップ107は、可撓性を有する材料によって形成された紐状のテザー部を備えている。テザー部の一方の端部は、インナ部材86に固定されている。テザー部は、アウタ部材83にあけられた係止孔に挿通されている。テザー部の他方の端部には、返しのついたアンカー部が設けられている。テザークリップ107のテザー部は、膝拘束装置90の非作動時(
図20)には弛緩状態となる。テザークリップ107は、膝拘束装置90の作動時(
図21)には、後方へ移動するアウタ部材83によって、アンカー部を通じて引っ張られて緊張状態となる。
【0116】
上記以外の構成は第2実施形態と同様である。そのため、第2実施形態で説明したものと同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
従って、第4変形例によると、第2実施形態と同様の効果が得られる。
【0117】
特に、第4変形例では、膝PKの拘束時(
図21)には、ピン105がガイド溝106に対し摺動することにより、アウタ部材83の動きが規制される。また、テザークリップ107が、後方へ動くアウタ部材83によって引っ張られて緊張状態になると、それ以上、アウタ部材83が後方へ動くことが規制される。膝PKの拘束時には、上記のように動きを規制されたアウタ部材83によって膝PKを受け止めることが可能である。
【0118】
なお、上記実施形態は、これを以下のように変更した変形例として実施することもできる。上記実施形態及び以下の変形例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0119】
・グローブボックスが、第1及び第2実施形態とは異なる構成を有するタイプに変更されてもよい。
例えば、グローブボックスは、穴部と引出し式の収容箱部とを備えるタイプであってもよい。このタイプのグローブボックスにおける穴部は、上記後壁部14において開口され、かつ前方へ延びる。穴部の後端部の開口部分は窓部を構成する。
【0120】
収容箱部は、蓋部と、蓋部の前方に設けられ、かつ上端に出入口を有する収容部とを備える。蓋部は、意匠面を有するアウタ部材と、アウタ部材及び収容部の間に配置されたインナ部材とを備える。インナ部材は収容部に対し一体に形成される。収容箱部は、穴部に前後方向へスライド可能に配置される。このスライドに伴い、蓋部により窓部が開放及び閉塞される。
【0121】
この場合にも、蓋部駆動機構を設ける。そして、膝の非拘束時には、蓋部駆動機構により蓋部を、アウタ部材がインナ部材に対し接近された接近形態にする。また、接近形態の蓋部による窓部の閉塞時であって、膝の拘束時には、蓋部駆動機構により蓋部のアウタ部材のみを、窓部を閉塞する位置よりも後方へ移動させる。
【0122】
・第1実施形態、第2実施形態、及び第1~第4変形例において、エアバッグ27は、折り畳まれずに配置されてもよい。この場合、エアバッグ27は展開せずに膨張する。膨張するエアバッグ27から後方へ向かう力が、受圧部36を介してアウタ部材33,83に加えられる。
【0123】
・第1実施形態、第2実施形態、及び第1~第4変形例において、アウタ部材83の受圧部36に対し、後方へ向かう力を加える駆動源として、エアバッグ27とは異なる種類のアクチュエータが用いられてもよい。
【0124】
・第1及び第2実施形態とは逆に、ピン63がアウタ部材33に設けられ、ガイド溝64がインナ部材41に設けられてもよい。
【符号の説明】
【0125】
10…自動車
13…インストルメントパネル
14…後壁部
21…窓部
22…軸
27…エアバッグ
31,81…グローブボックス
32,82…蓋部
33,83…アウタ部材
35,85…意匠面
36…受圧部
41,86…インナ部材
45,88…収容部
46,89…出入口
47…ボックス本体部
60,90…膝拘束装置
61…蓋部駆動機構
62…平行移動機構部
63,105…ピン
64,106…ガイド溝
91,94,101…リンク部材
92…第1軸
93…第2軸
95,102…第3軸
96,103…第4軸
98…連結軸
P1…助手席乗員
PK…膝